説明

真空冷却装置および真空冷却方法

【課題】 炊飯された温かい米飯のようなデンプン主体の穀物調理物を真空冷却しても、粘りの発生を防止し、食味や食感を損ねることのない真空冷却装置の提供。
【解決手段】 被冷却物1が収容される処理槽2、処理槽2内を減圧する減圧手段3、減圧下の処理槽2内を復圧する復圧手段4、処理槽2内の圧力を検出する圧力センサ5、被冷却物1の温度を検出する温度センサ6、減圧手段3の減圧能力を変更する制御手段7を備える。処理槽2内への収容時の被冷却物1の温度に基づき、その温度相当の飽和蒸気圧力P2になるまで減圧能力は制限せずに処理槽2内を減圧する。その後、設定圧力P1または設定温度T1になるまで減圧能力は制限し、その後、目標圧力または目標温度になるまでは減圧能力は制限しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空冷却装置および真空冷却方法に関するものである。特に、コンビニエンスストアなどで販売される弁当用米飯やおにぎりを冷却するのに適した真空冷却装置と真空冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯された温かい米飯を真空冷却する場合、従来は、下記特許文献1に開示されるように、なるべく早く強制的に冷却することが望ましいと考えられていた。そのため、従来の真空冷却装置は、その減圧能力をフルに活用して、処理槽内の空気を外部へ真空引きし続ける構成とされていた。
【特許文献1】特許第3442030号公報 (段落番号0002−0003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特に米飯類の場合、ある温度より高い領域で、急激に真空冷却がなされると、米粒中からデンプンが外部へ出てしまい、粘りの強い状態となる。そのため、食味や食感を損ねるものであった。
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、炊飯された米飯のようなデンプン主体の穀物調理物を真空冷却しても、粘りの発生を防止し、食味や食感を損ねることのない真空冷却装置および真空冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被冷却物が収容される処理槽と、この処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧下の前記処理槽内を復圧する復圧手段と、前記処理槽内の圧力を検出する圧力センサ、および/または、前記被冷却物の温度を検出する温度センサと、前記圧力センサまたは前記温度センサからの検出信号に基づき、設定圧力または設定温度の前後において前記減圧手段の減圧能力を変更する制御手段とを備えることを特徴とする真空冷却装置である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、設定圧力または設定温度の前後において、減圧速度を変えることができる。従って、設定圧力または設定温度と、その前後における各減圧速度とを調整することで、被冷却物の食味や食感を損ねることなく、必要最小限の冷却時間で被冷却物の真空冷却を図ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記設定圧力または前記設定温度以上における減圧能力を、それ未満における減圧能力よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の真空冷却装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、設定圧力または設定温度以上の領域では、冷却速度を遅くする一方、設定圧力または設定温度未満の領域では、冷却速度を速くすることができる。これにより、特に米飯類の真空冷却時における粘りの発生を防止し、食味や食感を良好に維持することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記設定圧力または前記設定温度以上における減圧能力を制限し、前記設定圧力または前記設定温度未満における減圧能力を制限しないことを特徴とする請求項2に記載の真空冷却装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、設定圧力または設定温度未満の領域では、減圧手段の能力をフルに発揮させて、被冷却物を急冷することができる。急冷することで、雑菌の繁殖を抑えることができ、しかも冷却時間の短縮を図ることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記処理槽内への収容時の被冷却物の温度に基づき、その温度相当の飽和蒸気圧力になるまで減圧能力を制限しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空冷却装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、減圧開始時に、まず被冷却物の温度相当の飽和蒸気圧力まで一気に減圧することができる。この間においては、被冷却物からの水分蒸発はないので、このような急激な減圧を行っても、被冷却物は真空冷却されることはない。そのため、冷却速度を速めた場合に生じる食味や食感への悪影響は防止される。しかも、冷却時間の短縮を図ることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、炊飯された温かい米飯類の冷却を図る方法であって、前記米飯類を処理槽内へ収容する工程、前記処理槽内が設定圧力になるまで、または前記米飯類が設定温度になるまで、前記処理槽内を減圧する第一減圧工程、この減圧速度よりも速い速度で前記処理槽内をさらに減圧する第二減圧工程を含むことを特徴とする真空冷却方法である。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、設定圧力または設定温度以上の領域では、冷却速度を比較的遅くする一方、設定圧力または設定温度未満の領域では、冷却速度を比較的速くすることができる。これにより、特に米飯類の真空冷却時における粘りの発生を防止し、食味や食感を良好に維持することができる。
【0015】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記処理槽内への収容時の米飯類の温度を計測する工程をさらに含み、前記第一減圧工程を、前記処理槽内への収容時に計測された温度相当の飽和蒸気圧力まで前記処理槽内を減圧する減圧工程Aとこの減圧工程Aの次工程の減圧工程Bとに分け、前記減圧工程Aの減圧速度を前記減圧工程Bの減圧速度よりも速くしたことを特徴とする請求項5に記載の真空冷却方法である。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、まず減圧工程Aにより、冷却対象である米飯類の温度相当の飽和蒸気圧力まで一気に減圧することができる。この間においては、米飯類からの水分蒸発はないので、このような急激な減圧を行っても、米飯類は真空冷却されることはない。そして、その後の減圧工程Bでは、減圧速度を落とすことで、食味や食感への悪影響は防止される。このようにして、米飯類のようなデンプン主体の穀物調理物でも、食味や食感を損ねることなく、短時間に真空冷却処理することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の真空冷却装置および真空冷却方法によれば、炊飯された米飯のようなデンプン主体の穀物調理物を真空冷却した場合でも、前記穀物調理物からの粘りの発生を防止し、食味や食感を損ねることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明の真空冷却装置および真空冷却方法は、デンプン主体の穀物調理物の真空冷却、特に弁当用米飯やおにぎりなどの米飯類の真空冷却に好適に用いられる。具体的には、炊飯された温かい米飯を、トレーなどの米飯容器に小分けし、あるいはおにぎりに成形した後、所望温度まで冷却するのに用いられる。米飯容器は、典型的には上方へ開口した容器とされ、通気性のある素材により形成するのが好ましい。
【0020】
本実施形態の真空冷却装置は、被冷却物が収容される処理槽と、この処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記処理槽内を大気圧まで復圧する復圧手段とを備える。前記処理槽の内部空間は、そこに収容される被冷却物を前記減圧手段にて真空冷却するための領域として機能することから、「冷却空間」と呼ぶことができる。被冷却物としては、米飯容器に盛り付けられた温かい米飯、または、温かい米飯で成形されたおにぎりなどの米飯類が挙げられる。
【0021】
前記処理槽は、被冷却物を収容して必要により密閉可能な中空容器であり、形状および被冷却物を出し入れするための開口位置は特に限定されない。本実施形態の処理槽は、扉により開閉可能な中空ボックス状である。被冷却物は通常、処理槽内に設けられる棚板に載せ置かれる。この棚板は、処理槽自体に備えられるものでもよいし、処理槽に出し入れされるワゴンに備えられるものでもよい。
【0022】
被冷却物の底部からの真空冷却を容易かつ確実になすために、前記棚板に凸部もしくは凹部または貫通穴を形成するのがよい。凸部または凹部を形成する場合、被冷却物を棚板から浮かせることで、被冷却物の底面からの蒸気抜きや減圧を可能にする。但し、被冷却物を収容する米飯容器などの各種容器を用いる場合には、前記棚板ではなくこの容器の底面に、凸部などを形成してもよい。
【0023】
前記処理槽は、扉により開閉可能な中空ボックス状に限らず、板状のプレートとこのプレートに対し開閉可能な蓋体とを備え、プレートに蓋体を気密状態に被せることで、前記冷却空間を形成する構成であってもよい。この場合、前記プレートは、たとえば円形または略矩形の板状で水平に配置され、その上面には前記棚板に形成するのと同様の凸部または凹部を形成するのがよい。また、前記蓋体は、下方へ開口して形成されており、前記プレートのほぼ全体を覆う偏平なドーム形とされる。前記プレートと前記蓋体とは、近接離隔方向に相対移動可能に構成され、前記プレートへの前記蓋体の着脱が可能とされている。前記プレートには、温かい米飯が盛り付けられた米飯容器、または温かい米飯により成形されたおにぎりが載せ置かれる。処理槽の形式を問わず、いずれの場合も、処理槽内の冷却空間には、前記減圧手段の減圧ライン、および前記復圧手段の復圧ラインが接続される。
【0024】
前記減圧手段は、処理槽内の空気を外部へ吸引排気することで、処理槽内を減圧する手段である。この減圧手段は、典型的には、真空ポンプおよび/またはエゼクタを備えて構成される。真空ポンプを用いる場合には、真空ポンプの手前に熱交換器を備えておくことで、被冷却物から発生する蒸気を冷却、凝縮させて減圧能力を高めることができる。この減圧手段は、真空ポンプやエゼクタによる吸引量や、熱交換器による凝縮量を可変に構成することで、減圧能力が調整可能である。
【0025】
前記復圧手段は、減圧手段により減圧された処理槽内を復圧する手段である。具体的には、減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を大気圧まで復圧することができる。処理槽内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。この復圧手段は、処理槽内へ供給する空気量を調整可能に構成するのが好ましい。
【0026】
さらに、本実施形態の真空冷却装置には、前記処理槽内の圧力を検出する圧力センサが備えられる。前記処理槽内の圧力は、温度を検出して圧力に換算することで検出可能であるので、この発明における圧力センサは、温度センサを含むものとして使用している。また、前記処理槽内に収容される被冷却物の温度を計測する温度センサをも備えるのが好ましい。この温度センサは、処理槽内に収容された状態の被冷却物の温度を計測するが、被冷却物を処理槽内へ収容する直前に計測できる位置に設けてもよい。
【0027】
そして、前記圧力センサや前記温度センサの出力を利用して、前記減圧手段および前記復圧手段を制御して、被冷却物の真空冷却処理がなされる。具体的には、減圧手段により処理槽内を減圧して、処理槽内の被冷却物の真空冷却を図った後、復圧手段により処理槽内を大気圧まで復圧する。これら制御は、真空冷却装置に備えられた制御手段としての制御器により、所定の手順(プログラム)に従い実行される。この際、制御器自身が把握する時間をも考慮して制御できる。また、前記減圧手段の作動は、被冷却物の温度や処理槽内の圧力以外に、被冷却物の数または量に基づいて制御してもよい。
【0028】
次に、前記真空冷却装置を用いた本発明の真空冷却方法について説明する。本実施形態の真空冷却方法は、所定温度より高い品温領域では、冷却速度を遅くする一方、その温度未満では冷却速度を速くして被冷却物を急冷する。但し、温度に代えて、その温度に相当する圧力を目標値として制御することもできる。前記所定温度は、適宜に設定されるが、米飯類の場合にはたとえば65〜70℃の範囲で選択された設定温度が採用される。設定温度の前後において減圧速度を変えるために、前記制御手段は前記減圧手段の減圧能力を変更する。
【0029】
減圧能力を変更する方法は特に問わないが、減圧ラインの開度を調整したり、熱交換器への冷却水の給水量や水温を変えたり、真空ポンプの吸入口への外部からの空気流入の有無や量を変えたり、インバータを用いて真空ポンプの回転数を変えたり、真空ポンプを間欠的に止めたり、エゼクタを作動させるための水や蒸気の供給の有無や量を変えたり、処理槽内などへ外部から空気導入しながら減圧する場合にはその空気導入の有無や量を変えたりして行うことができる。これらは、複数の方法を組み合わせてもよい。
【0030】
制御手段は、温度センサにより被冷却物の温度、または圧力センサにより処理槽内の圧力を常時把握する。そして、設定温度または設定圧力の前後において、減圧手段を制御して減圧能力を変更する。具体的には、設定圧力または設定温度以上における減圧能力を、その設定圧力または設定温度未満における減圧能力よりも制限する。この際、設定圧力または設定温度以上における減圧能力のみを制限し、設定圧力または設定温度未満では、減圧手段の能力をフルに効かせて減圧するのがよい。このようにして設定圧力または設定温度以上における領域での急激な真空冷却を防止することで、米粒からデンプンが外部へ出ることが防止され、食味や食感の優れた米飯類を得ることができる。
【0031】
このような真空冷却方法に加えて、真空冷却開始直後、処理槽内への収容時の被冷却物の温度相当の飽和蒸気圧力に処理槽内の圧力が下がるまで、処理槽内の急激な減圧を行ってもよい。これには、減圧手段の能力をフルに効かせて減圧するのがよい。被冷却物の温度相当の飽和蒸気圧力より高圧下においては、被冷却物からの水分蒸発はなく、このような急激な減圧を行っても、被冷却物は真空冷却されることはない。そのため、冷却速度を速めた場合に生じる食味や食感への悪影響は防止される。しかも、冷却時間の短縮を図ることができる。
【実施例】
【0032】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。但し、本発明の真空冷却装置および真空冷却方法は、下記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
【0033】
図1は、本発明の真空冷却装置の一実施例を示す概略構造図であり、一部を断面にして示している。この図に示すように、本実施例の真空冷却装置は、被冷却物1を収容する処理槽2と、処理槽2内を減圧する減圧手段3と、減圧下の処理槽2内へ外気を導入して復圧する復圧手段4と、処理槽2内の圧力を計測する圧力センサ5と、前記被冷却物1の温度を計測する温度センサ6と、これらセンサ5,6による検出信号を利用して前記減圧手段3や前記復圧手段4を制御する制御器7とを主要部として備える。前記温度センサ6は、被冷却物1の温度を非接触で計測するものでもよいが、図示例では被冷却物1に差し込まれて計測するものである。
【0034】
本実施例の真空冷却装置は、デンプン主体の穀物調理物の真空冷却に適する。特に、弁当用米飯またはおにぎりなどの米飯類の真空冷却に適する。そこで、本実施例では、米飯類を被冷却物1とする場合について説明するが、被冷却物1はこれに限らず、ジャガイモなどのイモ類や、麦などの穀物などでもよい。
【0035】
図示例では、炊飯された温かい米飯1が米飯容器8に盛り付けられた後、その米飯容器8のまま処理槽2内へ収容されて真空冷却される状態を示している。本実施例の米飯容器8は、上方へのみ開口した浅い略矩形の箱状に形成されており、不織布または「ゴアテックス」(登録商標)などの通気性のある素材により形成されている。
【0036】
処理槽2は、ドア(不図示)により開閉可能な中空ボックス状である。前記ドアは、開き戸、引き戸、または上下方向に可動するシャッター式のいずれでも採用可能である。処理槽2内には、棚板9,9…が上下に複数段、それぞれ水平に設けられる。被冷却物1は、これら棚板9に載せ置かれる。但し、処理槽2内にワゴン(不図示)を出し入れ可能とし、そのワゴンの棚板に被冷却物1を載せるようにしてもよい。
【0037】
いずれの場合も、各棚板9には、その板面に対し垂直に、複数の貫通穴10,10…が形成されている。米飯容器8は通気性のある素材により形成されているので、真空冷却中には前記貫通穴10を介して、米飯1の下面からも真空引きおよび蒸気抜きが図られる。但し、この貫通穴10に代えて、棚板9の上面に複数の凸部または凹部(不図示)を形成して、米飯容器8を棚板9の上面から浮かせるように保持してもよい。凸部または凹部により、米飯容器8の下面に隙間が配置され、この隙間を介して真空引きや蒸気抜きが可能とされる。また、被冷却物1によっては、それが入れられる容器8内の下面に、前記凸部または凹部を形成してもよい。
【0038】
処理槽2には、処理槽2内の空気を外部へ真空引きして処理槽2内を減圧する減圧手段3が、真空引き用配管としての減圧ライン11を介して接続される。減圧手段3としては、真空ポンプ、蒸気エゼクタまたは水エゼクタなどを用いることができる。これらは、複数種類のものを組み合わせて用いることもできる。本実施例では、蒸気エゼクタ12と熱交換器13と真空ポンプ14とを組み合わせて減圧手段3を構成している。
【0039】
蒸気エゼクタ12は、処理槽2に吸入口15が接続されており、その蒸気エゼクタ12の出口16には、熱交換器13と逆止弁17を介して真空ポンプ14が接続される。従って、真空ポンプ14を作動させつつ蒸気エゼクタ12の入口18から出口16へ向けて蒸気を噴射させ、熱交換器13による冷却、凝縮作用を行わせることで、吸入口15が接続された処理槽2内の空気を外部へ吸引排出し、処理槽2内を減圧することができる。
【0040】
そのために、蒸気エゼクタ12の入口18には、蒸気供給用配管としての給蒸ライン19を介して、ボイラなどの給蒸手段(不図示)から蒸気が供給可能とされる。給蒸ライン19の中途には、給蒸操作弁20が設けられている。この給蒸操作弁20は、電磁弁のような開閉を切り替えるだけのものでもよいが、比例制御弁またはモータバルブなどのように、開度調整も可能なものが好ましい。給蒸操作弁20が開度調整可能な場合には、蒸気エゼクタ12の入口18への蒸気供給の有無だけでなく、その蒸気供給量を変更して減圧能力を調整することができる。
【0041】
真空ポンプ14としては、本実施例では水封式真空ポンプが用いられる。この真空ポンプ14には、封水給水弁21を介して水が供給され、真空ポンプ14からの排水は、排水口(不図示)へ排出される。この封水給水弁21は、電磁弁からなり、真空ポンプ14に連動して開閉される。
【0042】
また、熱交換器13にも、熱交給水弁22を介して水道水などの冷却水が供給され、排水口(不図示)へ排出される。熱交換器13に冷却水が供給されることで、減圧ライン11中の蒸気を冷却し凝縮させ、真空ポンプ14による減圧能力を高めることができる。前記熱交給水弁22は、電磁弁のような開閉を切り替えるだけのものでもよいが、比例制御弁またはモータバルブなどのように、開度調整も可能なものが好ましい。熱交給水弁22が開度調整可能な場合には、熱交換器13への給水の有無だけでなく、その給水量を変更して減圧能力を調整することができる。
【0043】
処理槽2には、減圧手段3にて減圧された後、復圧するための復圧手段4が接続されている。本実施例の復圧手段4は、処理槽2に接続された外気導入用配管としての復圧ライン23が、除菌フィルター24を介して外気と連通可能に設けられている。この復圧ライン23の中途には、復圧操作弁25が開閉可能に設けられており、この復圧操作弁25の開放により、処理槽2内は大気圧に開放可能とされる。復圧操作弁25は、比例制御弁またはモータバルブなどのように、開度調整も可能なものが好ましく、その開き具合によって処理槽2内を徐々に昇圧することができる。
【0044】
減圧手段3、復圧手段4、圧力センサ5および温度センサ6は、制御器7に接続されている。制御器7は、圧力センサ5や温度センサ6からの検出信号、また所望により自らが把握する経過時間などに基づき、減圧手段3や復圧手段4を制御する。具体的には、給蒸操作弁20、真空ポンプ14、封水給水弁21、熱交給水弁22、復圧操作弁25、圧力センサ5および温度センサ6などは、制御器7に接続されている。そして、制御器7は、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽2内の被冷却物1(米飯容器8に入れられた温かい米飯1)の真空冷却処理を実行する。
【0045】
真空冷却装置は、下記(A)〜(J)などの内、いずれか一以上の構成を備えることで、処理槽2内の空気を外部へ真空引きする減圧手段3の減圧能力を変更可能とされている。
【0046】
(A) 給蒸操作弁20を操作することで、蒸気エゼクタ12の入口18への蒸気供給の有無または蒸気供給量を変更する。蒸気エゼクタ12に代えて水エゼクタを利用する場合も同様である。
【0047】
(B) インバータを用い真空ポンプ14の回転数を変更する。この際、前記制御器7はインバータを介して真空ポンプ14を制御する。
【0048】
(C) 真空ポンプ14を連続的に作動させるか、間欠的に止めるかにより、減圧能力を変更する。
【0049】
(D) 真空ポンプ14の吸入口に、外部から空気を導入するか否かや、その導入空気量を変更する。これと同様に、処理槽2内または蒸気エゼクタ12の吸入口15などに、外部から空気を導入するか否かや、その導入空気量を変更してもよい。
【0050】
(E) 熱交換器13へ供給する冷却水の水温を変更する。
【0051】
(F) 熱交給水弁22を操作することで、熱交換器13へ供給する冷却水の水量を変更する。
【0052】
(G) 前記(F)の変形例として、図2に示すように、熱交換器13への給水ラインを本管26とオリフィス27付きの分岐管28との二系統とし、そのいずれを用いるかにより、熱交換器13へ供給する冷却水の水量を変更する。すなわち、図2は、熱交換器13への給水ラインの変形例を示す図であり、処理槽2などを省略して示している。この図に示すように、給水ラインの本管26には、その中途から分岐して再び前記本管26へ接続される分岐管28が設けられる。そして、本管26および分岐管28には、それぞれその管路を開閉する電磁弁29,30が設けられるとともに、分岐管28には、その流量を調整するオリフィス27が設けられている。従って、減圧能力を制限しつつ処理槽2内の減圧を図りたい場合には、本管用電磁弁29を閉じた状態で分岐管用電磁弁30を開ければよいし、処理槽2内の減圧を速やかに行いたい場合には、分岐管用電磁弁30を閉じた状態で本管用電磁弁29を開ければよい。本管用電磁弁29および分岐管用電磁弁30の開閉操作は、制御器7によりなされる。ところで、同様の構成を減圧ライン11の中途(図1における蒸気エゼクタ12と熱交換器13との間)に採用して、減圧ライン11の本管または分岐管のいずれの管路を用いるかにより減圧能力を変更してもよい。
【0053】
(H) 前記(F)または(G)の変形例として、図3に示すように、熱交換器13への給水ラインを本管26と手動バルブ31付きの分岐管28との二系統とし、そのいずれを用いるかにより、熱交換器13へ供給する冷却水の水量を変更する。すなわち、図3は、熱交換器13への給水ラインの変形例を示す図であり、処理槽2などを省略して示している。この図3では、図2と共通する箇所には同一の符号を付している。この図3に示すように、給水ラインの本管26には、その中途から分岐して再び前記本管26へ接続される分岐管28が設けられる。そして、本管26および分岐管28には、それぞれその管路を開閉する電磁弁29,30が設けられるとともに、分岐管28には、開度を調整可能な手動バルブ31が設けられている。従って、減圧能力を制限しつつ処理槽2内の減圧を図りたい場合には、本管用電磁弁29を閉じた状態で分岐管用電磁弁30を開ければよいし、処理槽2内の減圧を速やかに行いたい場合には、分岐管用電磁弁30を閉じた状態で本管用電磁弁29を開ければよい。本管用電磁弁29および分岐管用電磁弁30の開閉操作は、制御器7によりなされる。ところで、同様の構成を減圧ライン11の中途(図1における蒸気エゼクタ12と熱交換器13との間)に採用して、減圧ライン11の本管または分岐管のいずれの管路を用いるかにより減圧能力を変更してもよい。
【0054】
(I) 減圧ライン11の中途(図1における蒸気エゼクタ12と熱交換器13との間)に、比例制御弁またはモータバルブなどのように、開度調整可能な減圧操作弁(不図示)を設け、この減圧操作弁の開度を変更する。
【0055】
(J) 減圧手段3を並列に二系統設け、そのいずれか一系統のみで減圧するか、両系統を用いて減圧するかにより、減圧能力を変更する。
【0056】
以上のいずれか一以上の構成を用いて、減圧手段3の減圧能力すなわち減圧速度を変更することができる。但し、減圧能力を変更できれば、他の構成を採用することもできる。
【0057】
図4は、本実施例の真空冷却装置の運転時における処理槽2内の圧力変化の一例を示す図である。本実施例の真空冷却装置の使用に際しては、まず処理槽2内に被冷却物1を収容する。この初期状態では、給蒸操作弁20、封水給水弁21、熱交給水弁22は閉じられ、蒸気エゼクタ12および真空ポンプ14は作動を停止しており、復圧操作弁25は開かれている。そして、この状態から、処理槽2の扉を閉め、復圧操作弁25を閉じた状態で、減圧手段3を作動させて被冷却物1の真空冷却が行われる。
【0058】
この際、図4に示すように、被冷却物1が設定温度T1(たとえば65℃)になるまでは、減圧能力を制限することで、比較的遅い減圧速度で真空冷却がなされる(第一減圧工程)。そして、被冷却物1が前記設定温度T1にまで下がった後は、減圧能力の制限をなくすか緩めることで、比較的速い減圧速度で真空冷却がなされる(第二減圧工程)。
【0059】
本実施例では、被冷却物1が設定温度T1になるまで第一減圧工程では、減圧能力を制限することで減圧速度を遅くし、その後の第二減圧工程では減圧能力をフルに効かせて、真空冷却が図られる。具体的には、制御器7は、温度センサ6の出力に基づき、被冷却物1が設定温度T1になるまでは、減圧能力を制限しつつ減圧手段3を作動させる一方、被冷却物1が設定温度T1に達した後は、減圧能力の制限を解除して減圧手段3を作動させ、所望の冷却目標温度に達するまで真空冷却処理を行う。そしてその後、復圧操作弁25を開いて、処理槽2内を大気圧まで復圧する。但し、温度センサ6に代えて、圧力センサ5を用いて、前記設定温度T1に相当する設定圧力P1まで、また、前記冷却目標温度に相当する冷却目標圧力まで真空冷却を行ってもよい。
【0060】
高温域において急激な真空冷却を行うと、米粒中からデンプンが外部へ出て粘りの強い状態となってしまうが、本実施例では、設定温度T1以上の高温域においては、減圧速度を制限することでそのような不都合が回避され、食味や食感の優れた米飯類を提供することができる。
【0061】
図5は、本実施例の真空冷却装置の運転時における処理槽2内の圧力変化の他の例を示す図である。本実施例の場合、前記第一減圧工程を、処理槽2内への被冷却物1の収容時に計測された温度相当の飽和蒸気圧力まで前記処理槽2内を減圧する減圧工程Aとこの減圧工程Aの次工程の減圧工程Bとに分け、前記減圧工程Aの減圧速度を前記減圧工程Bの減圧速度よりも速くしている。すなわち、処理槽2内の減圧開始直後は、処理槽2内の圧力が、処理槽2内への収容時の被冷却物1の温度(T2)相当の飽和蒸気圧力P2になるまで、処理槽2内を急激に減圧する(減圧工程A)。具体的には、制御器7は、温度センサ6の出力に基づき、真空冷却開始時の被冷却物1の温度を計測し、その温度が飽和蒸気温度である圧力まで、減圧能力をフルに効かせて処理槽2を減圧する。
【0062】
たとえば、被冷却物1の初期温度が80℃であれば、80℃相当の飽和蒸気圧力である473.6hPaまで減圧する間は、減圧能力を制限しないで、処理槽2内を急速に減圧する。この間においては、被冷却物1からの水分蒸発はないので、このような急激な減圧を行っても、被冷却物1は真空冷却されることはない。そのため、冷却速度を速めた場合に生じる食味や食感への悪影響は防止される。しかも、冷却時間の短縮を図ることができる。
【0063】
被冷却物1の初期温度T2相当の飽和蒸気圧力P2まで達したことが圧力センサ5により検出されると、前記図4の場合と同様に、設定圧力P1(または設定温度T1)になるまで、減圧能力を制限しつつ真空冷却を図る減圧工程Bを行った後、前記第二減圧工程,すなわち減圧能力を制限せずに所望の目標圧力(または目標温度)まで処理槽2内を減圧して、被冷却物1を真空冷却処理する。そして、真空冷却完了後には、復圧操作弁25を開いて、処理槽2内を大気圧まで復圧すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の真空冷却装置の一実施例を示す概略構造図であり、一部を断面にして示している。
【図2】図1の真空冷却装置における熱交換器への給水ラインの変形例を示す図であり、処理槽などを省略して示している。
【図3】図1の真空冷却装置における熱交換器への給水ラインの変形例を示す図であり、処理槽などを省略して示している。
【図4】図1の真空冷却装置の運転時における処理槽内の圧力変化の一例を示す図である。
【図5】図1の真空冷却装置の運転時における処理槽内の圧力変化の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 被冷却物(米飯類など)
2 処理槽
3 減圧手段
4 復圧手段
5 圧力センサ
6 温度センサ
7 制御手段(制御器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物が収容される処理槽と、
この処理槽内を減圧する減圧手段と、
減圧下の前記処理槽内を復圧する復圧手段と、
前記処理槽内の圧力を検出する圧力センサ、および/または、前記被冷却物の温度を検出する温度センサと、
前記圧力センサまたは前記温度センサからの検出信号に基づき、設定圧力または設定温度の前後において前記減圧手段の減圧能力を変更する制御手段と
を備えることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
前記設定圧力または前記設定温度以上における減圧能力を、それ未満における減圧能力よりも小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却装置。
【請求項3】
前記設定圧力または前記設定温度以上における減圧能力を制限し、前記設定圧力または前記設定温度未満における減圧能力を制限しない
ことを特徴とする請求項2に記載の真空冷却装置。
【請求項4】
前記処理槽内への収容時の被冷却物の温度に基づき、その温度相当の飽和蒸気圧力になるまで減圧能力を制限しない
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空冷却装置。
【請求項5】
炊飯された温かい米飯類の冷却を図る方法であって、
前記米飯類を処理槽内へ収容する工程、
前記処理槽内が設定圧力になるまで、または前記米飯類が設定温度になるまで、前記処理槽内を減圧する第一減圧工程、
この減圧速度よりも速い速度で前記処理槽内をさらに減圧する第二減圧工程
を含むことを特徴とする真空冷却方法。
【請求項6】
前記処理槽内への収容時の米飯類の温度を計測する工程をさらに含み、
前記第一減圧工程を、前記処理槽内への収容時に計測された温度相当の飽和蒸気圧力まで前記処理槽内を減圧する減圧工程Aとこの減圧工程Aの次工程の減圧工程Bとに分け、前記減圧工程Aの減圧速度を前記減圧工程Bの減圧速度よりも速くした
ことを特徴とする請求項5に記載の真空冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−349287(P2006−349287A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177882(P2005−177882)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】