説明

真空用光ファイバコネクタ及び光ファイバ端末構造体

【課題】真空機器の気密性を損なうことなく、測定器(エンコーダなど)の計測情報を光ファイバ束で真空機器の内部から外部へ取り出すことができ、且つ、大気側で光ファイバ束に係る部材の破損が生じても交換が容易にできて真空機器の大気開放の必要がない。
【解決手段】真空フランジ104に取付られると共に、光ファイバ束106が取付けられる第1導波用コネクタ110を収納するポートフランジ(128、130)と、該ポートフランジ(128、130)の外側に配置される光学透明体136と、該ポートフランジ(128、130)に対して嵌合形状(144)が形成されると共に、光ファイバ束150が取付けられる第2導波用コネクタ146を収納する取付部材140と、を備え、前記第1、第2導波用コネクタ110、146の光結合がなされる光軸Oに直交する少なくとも2方向で、該第1、第2導波用コネクタ110、146とが位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空用光ファイバコネクタ及び光ファイバ端末構造体に係り、特に、計測情報を光ファイバ束で真空機器の内部から外部へ取り出すための真空用光ファイバコネクタに用いるのに好適な、不具合の生じた構成部品の交換を容易とする真空用光ファイバコネクタ及び光ファイバ端末構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡、電子描画装置、スパッタ、蒸着装置、真空露光装置などの、真空機器の内部に測長用センサ等(光電式エンコーダ、レーザー干渉測長器等)を組込み、そこで得られた計測情報を光ファイバ束で真空機器の内部から外部へ取り出す場合は、真空機器の内部と外部との光ファイバ接続が重要となる。基本的には、光ファイバ束の被覆部分を除去し、むき出しの状態で真空機器の真空フランジに接着して真空シーリングすればよいが、真空保持のための強度などの点から、例えば、特許文献1に示す構成が提案されている。その構成を図7に模式的に示して、以下に説明する。
【0003】
図7に示す如く、真空機器2の真空フランジ4に開口が設けられ、その開口の真空機器2の外部側に、筒状の保持具8が真空漏れしないように取付け固定される。光ファイバ束6は、中間で被覆が除去され、その部分に接着剤が塗りこめられて、固定パイプ10が固定される。そして、保持具8と固定パイプ10との間にOリング12などが挿入されて、固定パイプ10が保持具8に圧入される。このため、真空機器2を真空状態とすれば、光ファイバ束6と固定パイプ10との間には接着剤、固定パイプ10と保持具8との間にはOリング12が存在することで、大気に対して真空機器2の内部を真空状態に保つことが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−61944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す真空を保持する方法は、固定パイプ10へ光ファイバ束6を接着をするため、使用する接着剤についての知識と準備、そして充填・接着作業等が必要である。即ち、シーリングの性能(気密性)の確保とアウトガス等の真空機器等への影響を除去するには、接着に対する熟練した技術を必要として、そのシーリング作業は手間がかかるものであった。このため、真空機器の使用者が自ら光ファイバ束6に係る部材を修理・改良することは極めて困難であった。
【0006】
また、大気側(真空機器2の外部)の光ファイバ束6に係る部材の一部が破損して交換する場合においても、真空機器2を止めて、真空機器2内部を大気開放して、真空機器2の内部に存在する光ファイバ束6に係る部材についても交換しなければならないという問題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、真空機器の気密性を損なうことなく、測定器(エンコーダなど)の計測情報を光ファイバ束で真空機器の内部から外部へ取り出すことができ、且つ、大気側で光ファイバ束に係る部材の破損が生じてもその交換が容易にできて真空機器の大気開放の必要がない真空用光ファイバコネクタ及び光ファイバ端末構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、計測情報を光ファイバ束で真空機器の内部から外部へ取り出すための真空用光ファイバコネクタにおいて、前記真空機器の真空フランジに取付られると共に、該真空機器の内部の光ファイバ束が取付けられる第1導波用コネクタを収納するポートフランジと、該真空機器に対して該ポートフランジの外側に配置される光学透明体と、該ポートフランジに対して嵌合形状が形成されると共に、該真空機器の外部の光ファイバ束が取付けられる第2導波用コネクタを収納する取付部材と、を備え、前記光学透明体を介して互いに対峙する前記第1導波用コネクタと第2導波用コネクタとの光結合がなされる光軸に直交する少なくとも2方向で、該第1導波用コネクタと第2導波用コネクタが位置決めされたことにより、前記課題を解決したものである。なお、ここでの光結合とは、対峙する第1導波用コネクタと第2導波用コネクタを介して、真空機器の内部と外部の光ファイバ束とがお互いに光信号を伝送可能であることを意味することとする。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、前記ポートフランジが、第1導波用コネクタを保持する補助部材と、該補助部材を前記光軸に直交する少なくとも2方向で位置決めして収納する接続フランジと、を備えることとしたものである。
【0010】
又、本願の請求項3に係る発明は、前記光学透明体が、両面が反射防止処理された平行平面ガラスであることとしたものである。
【0011】
又、本願の請求項4に係る発明は、前記光ファイバ束が複数の光ファイバから構成され、該光ファイバが複数の孔を有するパイプ体のそれぞれの孔に挿入固定され、該パイプ体に挿入固定された複数の光ファイバの端面に、反射防止処理された1枚の反射防止板が取付けられた光ファイバ端末構造体としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真空機器の気密性を損なうことなく、光ファイバ束を組込むことが可能となる。本発明は、真空機器の真空フランジに付けられた一般的な真空窓(ビューイングポート)と同様の真空密封構造のため、熟練した接着材の扱い等の特別な気密処理を不要とすることができる。このため、修理等のための引取り処理を特に必要としない。そして、光ファイバ束に係る部材が真空機器の内部と外部とで独立しているので、それらの脱着が容易である。このため、部品交換や修理などのメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0013】
同時に、気密性を保つための特殊な接着加工費用、一部破損に際しての全ての部材交換費用、真空機器の真空解除に伴う費用等が低減でき、本発明に係る真空用光ファイバコネクタの導入後、特に維持に対して、費用を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1実施形態について、図1〜図3を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る真空用光ファイバコネクタの断面模式図、図2は同じく第1導波用コネクタの断面模式図、図3は同じく光ファイバ端末構造体及び反射防止体の模式図である。
【0016】
最初に、本実施形態に係る真空用光ファイバコネクタの全体構造について、図1を用いて説明する。
【0017】
真空用光ファイバコネクタ100は、真空機器102の内部の光ファイバ束106が取付けられる第1導波用コネクタ110を収納するポートフランジと、真空機器102に対してポートフランジの外側に配置される光学透明体136と、ポートフランジに対して嵌合形状(後述)が形成されると共に、真空機器102の外部の光ファイバ束150が取付けられる第2導波用コネクタ146を収納する取付部材140と、を備える。ここで、ポートフランジは、第1導波用コネクタ110を保持する補助部材128と、補助部材128を光軸Oに直交する少なくとも2方向で位置決めして収納する接続フランジ130と、を備える。そして、真空用光ファイバコネクタ100は、光学透明体136を介して互いに対峙する第1導波用コネクタ110と第2導波用コネクタ146との光結合がなされる光軸Oに直交する少なくとも2方向で、第1導波用コネクタ110と第2導波用コネクタ146とが位置決めされている。そのため、真空用光ファイバコネクタ100は、真空機器102の内部で得られた計測情報を光ファイバ束106、150で真空機器102の内部から外部へ取り出すことができる。以下に、各構成要素について詳細に説明する。
【0018】
前記ポートフランジは、上述した如く、補助部材128と接続フランジ130とを備える。
【0019】
前記補助部材128は、図1に示す如く、光軸Oに沿って開口129が設けられた縁128Aを備える長さd1の筒状部材である。補助部材128の縁128Aは、補助部材128が接続フランジ130の開口132に嵌入された際に、接続フランジ130の開口132の縁130Aに係止される。その開口132の縁130Aと密接する部分128Bには、図示せぬ嵌合形状が光軸Oを基準として設けられている。補助部材128の開口129の内面にも、光軸Oを基準とする図示せぬ嵌合形状が設けられている。このため、補助部材128は、第1導波用コネクタ110が脱着自在に開口129に嵌入された際には、第1導波用コネクタ110の特定の位置(光軸O方向のほぼ中央)を位置決め固定することができる。なお、補助部材128は、長さd1に亘り第1導波用コネクタ110を支持している。このため、光ファイバ束106によって光軸Oに直交する応力が補助部材128にかけられても、第1導波用コネクタ110は、光軸Oに対して直交する少なくとも2方向に対しては、がたつかずに安定に支持される。
【0020】
前記接続フランジ130は、図1に示す如く、光軸Oに沿って開口132が設けられた円盤形状の部材である。接続フランジ130は、Oリング162を介して、一般的に用いられている大きさの真空フランジ104に取付けられている。補助部材128に面する接続フランジ130の部分130A、130Bには、光軸Oを基準として図示せぬ嵌合形状が、補助部材128の部分128Bに対応して設けられて、補助部材128が脱着可能に嵌入される。補助部材128が嵌入された際には、光軸Oを基準として補助部材128を位置決め固定することができる。このとき、部分130Aと部分130Bとは異なる角度(例えば、直角)で補助部材128の部分128Bと密接している。更に、開口132に補助部材128が嵌入される長さd2は、例えば、(d1/2)<d2と長い。このため、補助部材128に対して光軸Oに直交する方向で応力が加わっても、接続フランジ130は、補助部材128を光軸O方向に安定して保持することができる。なお、接続フランジ130は、補助部材128を長さd2に亘り支持するため、開口132周辺が厚肉に形成されている。真空フランジ104の反対側であって、光軸Oから離れた接続フランジ130上には光軸Oを基準とする円環状の突部134が形成されている。
【0021】
前記光学透明体136は、例えば、その両面が光ファイバ束106、150によって伝送される光の反射を防止する反射防止膜が施された円形の平行平面ガラスである。光学透明体136は、図1に示す如く、Oリング164を介して、真空機器102に対して接続フランジ130(ポートフランジ)の外側であって、接続フランジ130の突部134の内側に配置されている。なお、光学透明体136は、Oリング166を介して、取付部材140により接続フランジ130に予圧固定されている。
【0022】
前記取付部材140は、図1に示す如く、光軸Oに沿って開口142が設けられた円盤形状の部材である。開口142周辺は第2導波用コネクタ146を支持するため、厚肉(長さd4)に形成されている。開口142の内面には、光軸Oを基準として図示せぬ嵌合形状が設けられている。そして、第2導波用コネクタ110が嵌入された際には当該嵌合形状が、第2導波用コネクタ146の特定の位置(光軸O方向でほぼ中央)を脱着可能に位置決め固定することができる。なお、取付部材140は長さd4に亘り第2導波用コネクタ146を支持している。このため、光ファイバ束150によって応力がかかっても、光軸Oに対して直交する少なくとも2方向に対しては、第2導波用コネクタ146をがたつかずに安定に支持することができる。
【0023】
取付部材140は、図1に示す如く、接続フランジ130側に、突部134に対応した円環状の受部144(接続フランジ130の突部134に対しての嵌合形状)を備えて、受部144と突部134とは、いんろう構造を構成している。具体的には、受部144は光学透明体136の外周にあって、突部134の内面134Aと接するように光軸Oを基準として受部144が設けられている。そして、その突部134と受部144の接する部分134A、144Aの一箇所以上で、接続フランジ130に対して取付部材140が回転せずに光軸O方向に摺動可能な形状(例えば、スプライン結合のための形状等)が設けられている。なお、突部134は、受部144の内側で接するようにしてもよい。このとき、突部134と受部144とは、互いに光軸Oに沿って長さd3で密接しているので、光軸Oに対して直交する2軸方向においてがたつかずに安定した位置決めがなされている。なお、真空フランジ104と接続フランジ130と取付部材140とは適当な箇所においてそれぞれがボルトで固定されている。
【0024】
前記第1、第2導波用コネクタ(以下、単に導波用コネクタとも称する)110、146は、図2に示す如く、同じ構造であり、ケーシング112と、コリメータレンズ114と、光ファイバ端末構造体116と、を有する。前記ケーシング112は、コリメータレンズ114と光ファイバ端末構造体116をその内部で支持する。前記コリメータレンズ114は、光ファイバ端末構造体116からの出射される光をコリメート光114Aとする、あるいは、コリメート光114Aを光ファイバ端末構造体116へ入射させるためのレンズである。
【0025】
前記光ファイバ端末構造体116は、図3(A)に示す如く、光ファイバ束106、150から単離された個々の光ファイバ108をパイプ体118に挿入固定して、そのパイプ体118の端面に反射防止板122を屈折率整合材120によって接着(取付)したものである。反射防止板122は、図3(C)に示す如く、汎用的なガラス板(例えばソーダガラス等)の片側に光ファイバ108で伝送される光の反射を防止する反射防止膜が被膜された反射防止体124を破線Lに沿ってカットした個片である。このように、反射防止体124は平面状なので、反射防止板122を一括して多数個製造することができ、安価に且つ均質な反射防止板122を製造することができる。図3(B)に示す構造体の端面に屈折率整合材120を塗布して、そこにこの反射防止体124からカットされた反射防止板122を貼り付けたものが、図3(D)に示す本実施形態における光ファイバ端末構造体116である。パイプ体118としては、例えば、フェルール等を用いることができる。なお、反射防止板122の屈折率を光ファイバ108の屈折率と同程度とした場合においては、波面収差の影響は少ないので、光結合する際のロスを最小限に抑えることができる。
【0026】
次に、本実施形態における作用について以下に説明する。
【0027】
真空フランジ104に接続フランジ130、接続フランジ130に光学透明体136が、それぞれOリング162、164を介して接続されている。真空機器102内が真空にされた場合には、光軸Oに沿って光学透明体136は真空機器102側に吸引されることになるが、通常の真空機器に用いられる真空窓とは、同様の構成で同様の状況となる。このため、真空機器102の真空度を高く保持することができる。このとき、本実施形態では真空機器102に真空を封止するための接着剤を用いていないため、接着剤による不十分な封止やアウトガスによって、真空機器102の気密性を損なうことなく、光ファイバ束106を組込んでも高真空に保つことができる。又、接着剤を使用していないので、その接着剤を扱うための熟練した処理を不要とすることができる。このため、修理等のための引取り処理を特に必要としない。そして、光ファイバ束106、150に係わる部材が真空機器102の内部と外部とで独立しているので、その脱着が容易である。このため、大気側(真空機器102の外部)での光ファイバ束150に係る部材に破損が生じても交換が容易であり、真空機器102の大気開放の必要がない。即ち、部品交換や修理等のメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0028】
同時に、気密性を保つための特殊な接着加工費用、一部破損に対しての全ての部材交換費用、真空機器の真空解除に伴う費用等が削減でき、真空用光ファイバコネクタ100の導入後の、特に取付維持に対して費用を低減することが可能となる。
【0029】
このとき、第1導波用コネクタ110と第2導波用コネクタ146とはそれぞれ対峙する面にコリメータレンズ114を備えている。即ち、光軸O方向において第1導波用コネクタ110と第2導波用コネクタ146との距離が変動したとしても、お互いの光結合を良好に保持することができる。このため、本実施形態は、真空機器102の内部の計測情報を真空機器102外部へ確実に導くことができ、特に、パワー光伝送に使用することが好適である。
【0030】
又、導波用コネクタ110、146と、補助部材128と、接続フランジ130と、取付部材140とにおける係止・嵌合構造は、すべて光軸Oを基準としているので、第1導波用コネクタ110と第2導波用コネクタ146とは高精度に位置決めがなされているので、更に高効率な光結合を実現することができる。
【0031】
又、接続フランジ130と取付部材140においてその突部134と受部144とで、いんろう構造を構成するので、取付部材140の脱着を繰り返してもその位置再現性は良好であるので、高効率な光結合を容易に再現できる。
【0032】
又、接続フランジ130は一般的に用いられる大きさの真空フランジ104に合わせて製造されているので、他の真空機器の一般的に用いられる大きさの真空フランジにも使用することができる。又、導波用コネクタ110、146は、同じ構成であるため、兼用することができ、真空用光ファイバコネクタ100を安価に製造することができる。又、第1導波用コネクタ110と補助部材128、及び補助部材128と接続フランジ130、真空フランジ104と接続フランジ130、接続フランジ130と取付部材140、取付部材140と第2導波用コネクタ146とは脱着が自在であるため、破損した部材だけ容易に迅速に交換することが可能である。
【0033】
又、反射防止板122は、パイプ体118に支持された光ファイバ108の端面に一括して屈折率整合材120によって貼り付けられている。このため、各光ファイバ108の端面から出射される光の方向は、ばらつきのない一定の方向とすることが容易である。又、個々の光ファイバ108の端面に反射防止膜が成膜された場合に比べて、個々の光ファイバ108端面内の反射防止膜の厚みの不均一や、光ファイバ108毎の反射防止膜のばらつきを低減することができる。更に、光ファイバ108の端面に反射防止膜を形成するための特殊な低温成膜装置を必要とせず、又、汎用的なガラス板を使用できる。即ち、反射防止板122は、汎用な成膜設備で、安く且つ歩留まり高く作ることができる。又、反射防止膜の成膜が失敗した場合においても、ガラス板はその再生が容易であり成膜のやり直しも容易である。更に、光ファイバ端末構造体116は、複数の光ファイバ108を備えているので、光ファイバ108を伝送させる情報量を飛躍的に増大させることができる。又、パイプ体118に保持された光ファイバ108の端面には、屈折率整合材120を介して反射防止板122が取付けられているため、光ファイバ108の端面は平坦研磨又は高精度切断(スプライス用切断)でもよいし、そのような平坦な端面でない端面カットだけで使用することもできる。即ち、光ファイバ端末構造体116は、単一の光ファイバに反射防止膜を直接付けたものを束ねた場合に比べて、低コストで且つ光損失の少ない光ファイバ端末構造体を提供することができる。
【0034】
本実施形態においては、導波用コネクタ110、146が、図2に示す如く、ケーシング112によってコリメータレンズ114と光ファイバ端末構造体116とを支持していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図4(A)に示す本発明の第2実施形態においては、導波用コネクタ110Aは、ケーシング112Aによって、コリメータレンズ114Bを保持したレンズ保持体112Bと、光ファイバ端末構造体116とを支持する構造である。この場合には、コリメータレンズ114Bを自在に且つ容易に交換することが可能である。例えば、図4(B)に示す如く、光軸O方向においてコリメータレンズ114Bを、光学系に応じて最適なものとするように変更可能である。即ち、その空間導波に係わるレンズは市販のものを用いても良いし、特別なものを用いてもよいので、レンズ設計の仕様変更の自由度を大きく広げることができる。
【0035】
又、上記実施形態においては、パイプ体118は、図3(D)に示す如く、円筒形状であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5(B)に示す本発明の第3実施形態の如く、パイプ体118Aが直方体の形状であっても良い。その際には図5(A)に示す構造体に、パイプ体118Aの外形に合わせて切断された反射防止板122Aが貼り付けられて使用されることとなる。
【0036】
又、上記実施形態においては、図6(A)に示す如く、接続フランジ130の光軸Oを中心として1箇所のみ開口132を有するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図6(B)に示す本発明の第4実施形態においては、開口133を3つ有し、いずれか1つ以上の開口133に対して、本発明を適用することもできる。この場合においては、図6(B)に示す如く光学透明体137の厚みt2を、第1実施形態から第3実施形態に適用された光学透明体136の厚みt1に比べて、少なくすることができる。このときには、コリメータレンズを使用しなくても第1導波用コネクタと第2導波用コネクタとを光結合させることができる構成を取ることも可能である。逆に、コリメータレンズによるコリメートされた光の光結合が良好であれば、ガラス厚t1、t2を厚くすることも可能である。
【0037】
又、上記実施形態においては、Oリング162、164、166が真空封止するために用いられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばエラストマシールやガスケット等を使用することもできる。
【0038】
又、上記実施形態においては、第1導波用コネクタ110と補助部材128、補助部材128と接続フランジ130、接続フランジ130と取付部材140、取付部材140と第2導波用コネクタ146との位置決め構造について嵌合形状等としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、位置決めピン、平行ピンの一種で焼き入れ硬化した精度の高いピン(ダウンエルピン)等を使用して、位置決めを行うことも可能である。なお、接続フランジ130と取付部材140との位置決めにおいては、いんろう構造を説明したが、その構造は、図1に示した突部134及び受部144の構造に限定されるものではなく、広く嵌合形状を満たすものであれば特に限定されるものではない。
【0039】
又、上記実施形態においては、第1導波用コネクタ110と第2導波用コネクタ146とを同一としていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1導波用コネクタは補助部材と一体形成されたケーシングで構成されていても構わないし、第2導波用コネクタは取付部材と一体形成されたケーシングで構成されていて、それぞれが脱着できない構造でもかまわない。
【0040】
又、上記実施形態においては、光学透明体136は、両面が反射防止処理された平行平板ガラスであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光学透明体は、真空機器において真空引きされたときに撓んだ際に光導波に影響を与えないような外径形状であれば構わない。
【0041】
又、上記実施形態においては、屈折率整合材120は接着性を有するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、屈折率整合材はグリース又はオイルであっても構わない。この場合においては、光ファイバ端末構造体の外部に機構部を備えて反射防止板を支持する形状をとることもできる。
【0042】
又、上記実施形態においては、光ファイバ束106、150は複数の光ファイバ108から構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1本の光ファイバで光ファイバ束が構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空用光ファイバコネクタの断面模式図
【図2】同じく第1導波用コネクタの断面模式図
【図3】同じく光ファイバ端末構造体及び反射防止体の模式図
【図4】本発明の第2実施形態に係る導波用コネクタの断面模式図
【図5】本発明の第3実施形態に係る光ファイバ端末構造体の模式図
【図6】本発明の第1〜第4実施形態に係る接続フランジの模式図
【図7】背景技術に係る真空機器と光ファイバ束を表す模式図
【符号の説明】
【0044】
2、102…真空機器
4、104…真空フランジ
6、106、150…光ファイバ束
10…固定パイプ
100…真空用光ファイバコネクタ
108…光ファイバ
110、110A、146…導波用コネクタ
112、112A…ケーシング
114、114B…コリメータレンズ
116、116A…光ファイバ端末構造体
118、118A…パイプ体
120…接着剤
122、122A…反射防止板
124…反射防止体
128…補助部材
129、132、133、142…開口
130、131…接続フランジ
134…突部
136、137…光学透明体
140…取付部材
144…受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測情報を光ファイバ束で真空機器の内部から外部へ取り出すための真空用光ファイバコネクタにおいて、
前記真空機器の真空フランジに取付られると共に、該真空機器の内部の光ファイバ束が取付けられる第1導波用コネクタを収納するポートフランジと、
該真空機器に対して該ポートフランジの外側に配置される光学透明体と、
該ポートフランジに対して嵌合形状が形成されると共に、該真空機器の外部の光ファイバ束が取付けられる第2導波用コネクタを収納する取付部材と、を備え、
前記光学透明体を介して互いに対峙する前記第1導波用コネクタと第2導波用コネクタとの光結合がなされる光軸に直交する少なくとも2方向で、該第1導波用コネクタと第2導波用コネクタとが位置決めされていることを特徴とする真空用光ファイバコネクタ。
【請求項2】
前記ポートフランジは、第1導波用コネクタを保持する補助部材と、該補助部材を前記光軸に直交する少なくとも2方向で位置決めして収納する接続フランジと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の真空用光ファイバコネクタ。
【請求項3】
前記光学透明体は、両面が反射防止処理された平行平面ガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空用光ファイバコネクタ。
【請求項4】
前記光ファイバ束が複数の光ファイバから構成され、
該光ファイバが複数の孔を有するパイプ体のそれぞれの孔に挿入固定され、
該パイプ体に挿入固定された複数の光ファイバの端面に、反射防止処理された1枚の反射防止板が取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の真空用光ファイバコネクタに用いられる光ファイバ端末構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−217062(P2009−217062A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61702(P2008−61702)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】