説明

真空脱ガス設備のブースターのダスト付着防止方法

【課題】真空脱ガス設備の真空排気装置のブースター内においてダストが水分により付着して固化するのを防止することである。
【解決手段】溶鋼の真空脱ガス処理設備の真空槽1から排ガスを排出して減圧する真空排気設備のブースター13のダスト付着防止方法おいて、ブースター13内を高圧水洗浄してダストを除去し、次いで真空脱ガス処理前で待機中の保熱されている真空槽1の排熱をブースター13内部に引き込んで乾燥させた後に真空脱ガス処理を開始することによってダストがブースター内表面に付着して固着するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼などの溶融金属を真空減圧下で精錬するために使用される真空脱ガス槽を減圧するために使用される真空排気設備のブースターにダストが付着するのを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼などの溶融金属を清浄化したり、あるいは高純度化したりするために、RH法やDH法により真空減圧下での精錬が実施されている(特許文献1参照)。
【0003】
図1に示す溶鋼の真空脱ガス設備において、RH真空脱ガス装置の真空槽1の上部には真空槽1からガスを排出して減圧するための真空排気設備が排気ダクト8を介して連結されている。
【0004】
排気ダクト8の下流側にはダストを含む排ガスを冷却するガスクーラー9が接続され、ガスクーラー9にはダストを捕集するダストセパレーター10が接続されている。ダストセパレーター10の排ガス出側にダクト12に接続され真空排気設備のブースター13に接続されている。ブースター13は、蒸気を噴射させて真空槽1からの排ガスを吸引し、排気する。ブースター13の下流には、コンデンサー14、エジェクター15、コンデンサー16、真空ポンプ17が順次接続され、排ガスは待機放散される。
【0005】
真空槽1で真空脱ガス処理中に発生したダストは、排ガスとともに真空排気設備により吸引され、ダストセパレータ10で分離されるが、微粉径のダストは排ガスとともにブースター13内に入って内面に付着し、堆積して固化する。その結果、真空排気設備の真空排気能力の低下を招いていた。そこで、ブースター13の真空排気能力を安定的に確保するために、真空脱ガス処理がバッチ操業であるので、その休止期間を利用してブースター内に高圧洗浄水を噴射してダストを押し流して洗浄した後、次のバッチの真空脱ガス処理を開始していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−254042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の操業では、高圧水洗浄後のブースター内面に水分が付着した状態のままで次のバッチの真空脱ガス処理を開始していたため、ブースターに吸引されたダストがブースター内表面に水分を含んだ状態で付着し、堆積し、熱により固着して除去しにくい状態となり、安定した真空排気能力を確保できない場合があった。また、ダストが固化するためダストの除去作業が容易ではなく、手間がかかっていた。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、真空脱ガス設備の真空排気装置のブースター内においてダストが水分により付着して固化するのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶鋼の真空脱ガス処理設備の真空槽から排ガスを排出して減圧する真空排気設備のブースターのダスト付着防止方法おいて、ブースター内を高圧水洗浄してダストを除去し、次いで真空脱ガス処理前で待機中の保熱されている真空槽の排熱をブースター内部に引き込んで乾燥させた後に真空脱ガス処理を開始することによってダストがブースター内表面に付着して固着するのを防止することを特徴とする。
【0010】
通常、RH非処理中は遮断弁を閉とした状態で真空槽内を保熱している。高圧水洗浄後に一時的に遮断弁を開として真空槽内の熱源をブースターまで引き込み、ブースター内部を乾燥させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、通常、RH非処理中は遮断弁を閉とした状態で真空槽内を保熱していることから、高圧水洗浄後に一時的に遮断弁を開として真空槽内の熱源をブースターまで引き込み、ブースター内部を乾燥させることにより、ブースター内面への水分によるダストの付着、固着を防止できるので、定期修理時のメンテナンス頻度が減るとともに、ダスト除去作業が軽減される。
【0012】
また本発明によってブースター内のダスト付着を低減させてダストの堆積を防ぐことができるので、真空排気の能力を安定的に確保でき、安定した真空脱ガス処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用する真空脱ガス設備の概略を示す図である。
【図2】真空脱ガス処理とブースターの高圧水洗浄および乾燥のサイクルタイムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
本実施例において、図1に示すように、RH真空脱ガス処理は、従来法と同様に、取鍋4を上昇させてRH真空脱ガス装置の真空槽1の下部に設けられている上昇管2及び下降管3を取鍋4内の溶鋼5に浸漬させつつ、真空排気設備を用いて真空槽1内を減圧する。真空槽内を減圧することにより溶鋼は真空槽内に吸い上げられる。上昇管2内に不活性ガスを吹き込むことにより鍋内の溶鋼は上昇管2で真空槽1内に吸い上げ、吸い上げられた溶鋼5は下降管3から取鍋5内に戻る。この課程の中において溶鋼中のガスが真空槽内で溶鋼から分離し、真空排気設備で大気へ排気される。
【0016】
RH真空脱ガス処理はバッチ処理なので、真空槽1の上昇管2及び下降管3が溶鋼に浸漬していない非処理中には、真空槽1内をバーナ6により保熱している。
【0017】
真空槽1は真空槽1内で発生するダストを含む排ガスを排気するための排気口7に排気ダクト8が連結され、排気ダクト8はその下流に配置されている真空排気設備に接続されている。
【0018】
排気ダクト8には排ガスを冷却するためのガスクーラー9が接続されている。ガスクーラー9に次いで排ガス中のダストを捕集するためのダストセパレーター10が接続されている。ダストセパレーター10の排ガスの出側には、非処理中には排ガスの吸引を遮断する遮断弁11が設けられている。
【0019】
ダストセパレーター10の下流側には、ダクト12を介してブースター13、コンデンサー14、エジェクター15、コンデンサー16、真空ポンプ17から構成される真空排気装置が接続されている。ブースター13は、ブースター内に高圧洗浄水を噴射する高圧洗浄水ノズル(図示せず)が設けられている。
【0020】
次ぎに、本発明の真空脱ガス処理とブースターの高圧水洗浄及び乾燥の手順について説明する。
【0021】
図2において、取鍋Aについて、真空槽1の上昇管2及び下降管3を取鍋A内の溶鋼5に浸漬させ、アルゴンガスを上昇管2に吹き込んで溶鋼5を真空槽1と取鍋5との間で還流させて脱ガス処理する。精錬する鋼種にもよるが、本実施例では、例えば20分〜30分脱ガス処理する。この間、ダストセパレーター10の遮断弁11は開いてブースター13で排ガスを吸引している。
【0022】
脱ガス処理が完了すると、遮断弁11を閉じ、ダストセパレーター10を大気圧に戻して溶鋼の還流を停止する。真空槽1内は、次のバッチの取鍋Bのチャージに備えて、バーナ6で保熱する。
【0023】
脱ガス処理が完了して遮断弁11が閉じられると、ブースター13の内部には高圧洗浄水ノズルから高圧洗浄水が噴射されてブースター13の内面に付着しているダストが押し流され除去されて洗浄される。
【0024】
洗浄が完了すると、ダストセパレーター10の遮断弁11を開いてブースター13の内部に保熱されている真空槽1の排熱を引き込み、ブースター13の内面を加熱して水分を蒸発させて乾燥させる。高圧水洗浄及びこれに引き続く乾燥は、約10分程度で完了する。
【0025】
ブースターの洗浄・乾燥後、取鍋Bの真空脱ガス処理を開始する。このとき、ブースター13の内表面は乾燥しているためにダストが付着して固着するのを防止できるので、次の高圧水洗浄に手間をかけることなく、容易にダストを除去することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:真空槽
2:上昇管
3:下降管
4:取鍋
5:溶鋼
6:バーナ
7:排気口
8:排気ダクト
9:ガスクーラー
10:ダストセパレーター
11:遮断弁
12:ダクト
13:ブースター
14:コンデンサー
15:エジェクター
16:コンデンサー
17:真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス処理設備の真空槽から排ガスを排出して減圧する真空排気設備のブースターのダスト付着防止方法おいて、
ブースター内を高圧水洗浄してダストを除去し、次いで真空脱ガス処理前で待機中の保熱されている真空槽の排熱をブースター内部に引き込んで乾燥させた後に真空脱ガス処理を開始することによってダストがブースター内表面に付着して固着するのを防止することを特徴とする真空脱ガス設備のブースターのダスト付着防止方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−127149(P2011−127149A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284376(P2009−284376)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】