説明

真空脱ガス設備の煙道ダクト内付着物の除去装置

【課題】設置スペースが十分に確保できない場合であっても、煙道ダクト内付着物を除去する際に作業者の作業負担を軽減することができる真空脱ガス装置の煙道ダクト内付着物の除去装置を提供する。
【解決手段】除去装置1は、真空脱ガス設備に含まれる処理槽2の、煙道ダクト3とは反対側に設けられたマンホール4から煙道ダクト内付着物を除去する除去装置であって、マンホール4から処理槽2を経て煙道ダクト3に達するチゼル5を備えたブレーカー60と、ブレーカー60の向きを俯仰可能、且つ左右に旋回可能に調整できるようにブレーカー60を支持した調整機構と、ブレーカー60の反力を受けるように配置されたブレーキと、を有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス設備(RH)の煙道ダクト内付着物の除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、単槽タイプの真空脱ガス設備の煙道ダクト内に付着したダストや地金(以下、「煙道ダクト内付着物」ともいう。)を短時間で除去する方法としては、マンホールサイズが大きくとることができるダストセパレーター側から特許文献1の図1に示されるようにフォークリフトに治具を取り付けたものや、同文献の図4に示されるように専用機械装置等の大掛かりな装置(以下、単に「大型除去装置」ともいう。)を設置して、煙道ダクト内付着物を除去する方法が用いられてきた。上記方法としては、例えば前記特許文献1の他に同2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−121171号公報
【特許文献2】特開2009−120898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の大型除去装置を用いた除去方法では、大型除去装置を設置するための十分なスペースを確保する必要がある。そのため、十分なスペースが確保できない場合には、処理槽の、ダストセパレーター側とは反対側に設けられたマンホールから煙道ダクト内付着物を除去することとなる。ところが、処理槽に設けられたマンホールのサイズには耐火物の強度上の制限があり、マンホールのサイズを大きくとれない場合がある。この場合、煙道ダクト内付着物の除去は、処理槽に設けられたマンホールに入る長さのチゼルを取り付けたブレーカーを使っての人力による手作業となる。
【0005】
この場合、煙道に届かせるために長尺チゼルが取り付けられたブレーカーを使用する必要があるが、この長尺チゼルは一般的に重量がある。このため、ブレーカーが不安定となり、除去作業が難しくなるといった課題がある。また、人力による除去作業は、重労働で作業者への負担が大きいといった課題もある。さらに、大型除去装置を用いた除去作業は、マンホールサイズが大きくとれるダストセパレーター側からは可能であるが、これは大型除去装置を設置する十分なスペースが確保されていることが前提となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、設置スペースが十分に確保できない場合(つまり、設置スペースが少ない場合)であっても、煙道ダクト内付着物を除去する際に作業者の作業負担を軽減することができる真空脱ガス装置の煙道ダクト内付着物の除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、真空脱ガス設備に含まれる処理槽の、煙道ダクトとは反対側に設けられたマンホールから煙道ダクト内付着物を除去する除去装置であって、前記マンホールから前記処理槽を経て前記煙道ダクトに達するチゼルを備えたブレーカーと、前記ブレーカーの向きを俯仰可能、且つ左右に旋回可能に調整できるように同ブレーカーを支持した調整機構と、前記ブレーカーの反力を受けるように配置されたブレーキと、を有することを特徴とする真空脱ガス設備の煙道ダクト内付着物の除去装置である。
上記態様によれば、手動用ブレーカーを利用できる。このため、上記態様に係る除去装置であれば、従来の大型除去装置を用いる方法と比較してコンパクトな除去装置となる。よって、設置スペースが小さい場合であっても、上記態様に係る除去装置を設置することができる。
【0008】
また、上記態様に係る除去装置であれば、ブレーカーの向き(つまり、チゼルの長軸方向)を俯仰可能、且つ旋回可能に調整できる。このため、ブレーカーを目的とする方向に自在に向けることができる。よって、処理槽に設けられたマンホールから挿入したチゼルの先端を目的とする煙道ダクト内付着物に押し当てることができ、煙道ダクト内付着物を除去することができる。
さらに、上記態様に係る除去装置であれば、ブレーカーの反力を受けるようにブレーキが配置されているため、ブレーカーの反力を低減することができる。よって、煙道ダクト内付着物を除去する際、作業者の作業負担を低減させることができるほか、チゼルの打撃力の低減を抑制できる。
【0009】
また、本発明の別の態様は、前記調整機構は、前記ブレーカーの向きを、前記マンホールから前記煙道ダクトに向かう方向に沿う前後方向と、前記マンホールから前記煙道ダクトに向かう方向に対して左右方向と、上下方向と3つの方向のうち少なくとも一つの方向をさらに自在に調整できるように配置されていることとしても良い。
上記態様によれば、ブレーカーの向きをさらに前後、左右、昇降のうち少なくとも一つを自在に調整できる。このため、上記態様に係る除去装置であれば、ブレーカーの位置(つまり、チゼルの先端の位置)を自在に決めることができる。よって、処理槽に設けられたマンホールから挿入したチゼルの先端を目的とする煙道ダクト内付着物に押し当てることができ、煙道ダクト内付着物を確実に除去することができる。
【0010】
また、本発明の別の態様は、真空脱ガス設備に含まれる処理槽の、煙道ダクトとは反対側に設けられたマンホールから煙道ダクト内付着物を除去する除去装置であって、前記マンホールから前記処理槽を経て前記煙道ダクトに達するチゼルを備えたブレーカーと、前記ブレーカーを俯仰可能に支持する俯仰調整機構と、前記俯仰調整機構を前記マンホールから前記煙道ダクトに向かう前方向に対して、左右方向に旋回可能に支持する旋回調整機構と、前記旋回調整機構を前記左右方向に移動可能に支持する左右調整機構と、前記左右調整機構を昇降可能に支持する昇降調整機構と、前記昇降調整機構を前記真空脱ガス設備のある建屋の一部に前後方向に移動可能に支持する前後調整機構と、さらに、前記ブレーカーを所定の位置と向きに固定するブレーキとを備えたことを特徴とする真空脱ガス設備の煙道ダクト内付着物の除去装置である。
【0011】
上記態様によれば、手動用ブレーカーを利用できる。このため、上記態様に係る除去装置であれば、従来の大型除去装置を用いる方法と比較してコンパクトな除去装置となる。よって、設置スペースが小さい場合であっても、上記態様に係る除去装置を設置することができる。
また、上記態様に係る除去装置であれば、ブレーカーの向きと位置を目的とする向きと位置に固定することができる。よって、処理槽に設けられたマンホールから挿入したチゼルの先端を目的とする煙道ダクト内付着物に押し当てることができ、煙道ダクト内付着物を除去することができる。さらに、備えられたブレーキで、ブレーカーの反力を低減することもできる。よって、煙道ダクト内付着物を除去する際、作業者の作業負担を低減させることができるほか、チゼルの打撃力の低減を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、手動ブレーカーをそのまま利用できるため、除去装置の大きさをコンパクトにすることができる。このため、設備スペースが少ない場合であっても除去作業が可能となり、据付場所の制約を減少することができる。さらに、重量がある長尺チゼルをブレーカーに取り付けた場合であっても、ブレーカーの方向(つまり、チゼルの長軸方向)及びブレーカーの位置(つまり、チゼルの先端の位置)を任意に決めて支持することができる。このため、処理槽に設けられたマンホールから挿入したチゼルの先端を目的とする煙道ダクト内付着物に押し当てることができ、煙道ダクト内付着物を除去することができる。また、ブレーカー反力はブレーキで受けるため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る除去装置を用いた作業状態を示す図である。
【図2】本実施形態に係る除去装置の側面図である。
【図3】本実施形態に係る除去装置の上面図である。
【図4】本実施形態に係る除去装置の正面図(図2におけるD−D断面図)である。
【図5】図2におけるL−L断面図である。
【図6】図2におけるK−K断面図である。
【図7】図2におけるE−E断面図である。
【図8】図2におけるF−F断面図である。
【図9】図11におけるG−G断面図である。
【図10】図11におけるH−H断面図である。
【図11】図2におけるC−C断面図である。
【図12】図2におけるB−B断面図である。
【図13】図2におけるA−A断面図である。
【図14】図3におけるJ−J断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(煙道ダクト内付着物の除去装置)
図1は、本発明の実施形態に係る煙道ダクト内付着物の除去装置(以下、単に「除去装置」ともいう。)1を用いた作業状態を示す図である。図1には、真空脱ガス設備の処理槽2と、処理槽2と連通する煙道ダクト3と、処理槽2の、煙道ダクト3と対向する側に設けられたマンホール4が示されており、前記煙道ダクト3の図1における右側には図示しないダストセパレーターが連続している。マンホール4の外側には、レール6上に除去装置1が走行可能に支持されていて、この除去装置1の一部をなすチゼル5が前記マンホール4から処理槽2を経て煙道ダクト3にまで挿入されている。係る除去装置1は、作業者7が操作するようになっている。
【0015】
そして、この除去装置1は、チゼル5が設けられたブレーカー60と、ブレーカー60の向きを俯仰可能に支持する後述の俯仰調整機構50と、ブレーカー60の向きを旋回可能に支持する後述の旋回調整機構40と、ブレーカー60の位置を左右方向に移動可能に支持する後述の左右調整機構30と、ブレーカー60の位置を昇降可能に支持する後述の昇降調整機構20と、ブレーカー60の位置を前後方向に移動可能に支持する後述の前後調整機構10と、ブレーカー60の反力を受けるように組込まれた複数のブレーキとを含んで構成されている。
【0016】
なお、上記の「前後方向」については、マンホール4から煙道ダクト3に向かう方向を前方向とし、これと逆方向を後方向とする。「左右方向」については、マンホール4から煙道ダクト3に向かう方向、つまり前方向に対して左右の方向を指すものとする。
この除去装置1を用いて除去作業する際には、図1に示すように、レール6上を走行可能に搭載された除去装置1をマンホール4側に向かって作業者7が人力で押して、チゼル5を処理槽2に設けられたマンホール4から煙道ダクト3に向かって挿入する。そして、上記各調整機構10、20、30、40、50を用いて、チゼル5の先端を目的とする煙道ダクト内付着物に押し当てるとともに、ブレーカー60を作動させる。こうして、煙道ダクト内付着物を粉砕し、それらを煙道ダクト3内から除去する。
【0017】
以下、本実施形態に係る除去装置1の構造の詳細について、図1〜図14を参照しつつ説明する。本実施形態に係る除去装置1は、上述したように、チゼル5が設けられたブレーカー60と、俯仰調整機構50と、旋回調整機構40と、左右調整機構30と、昇降調整機構20と、前後調整機構10と、ブレーキとを含んで構成されているので、以下においてこれらを説明する。
(前後調整機構10及びその動作)
図1及び図4に示すように、2本のレール6はマンホール4の中心から煙道ダクト3の中心に向かう方向と平行になるように、例えば処理槽2等が設けられている建屋の床に固定されて水平に配置されている。このレール6は、図4〜図8に示すように、断面視でI型をしたレールである。そして、この2本のレール6の間にはこれらと平行をなして、図4〜図9に示すように、ピンラック17が1本配置されている。このピンラック17は、後述するピンギア13と噛み合うように直線状に配置された形状となっている。
【0018】
そして、図1及び図2に示すように、この2本のレール6上に除去装置1が走行可能に搭載されている。除去装置1には手押し式台車(以下、単に「台車」ともいう。)11が組込まれており、図8〜図10に示すように、台車11にはこれに車軸12aを介して懸架されてレール6を転動する4つの車輪12と、台車11に回転軸13aを介して支持された1つのピンギア13と、ピンギア13と同じ回転軸13aに配置されてピンギア13と一体に回転する1つのディスク14とがそれぞれ取り付けられており、また前記ディスク14の回転を止める1台の油圧ディスクブレーキ(つまり、走行用ブレーキ)70も台車11に取り付けられている。例えば4つの車輪12は台車11の四隅に設けられ、ピンギア13はピンラック17上に噛み合うようにして設けられている。そして、ディスク14は回転軸13aに取り付けられ、且つ車輪12とピンギア13との間に設けられ、油圧ディスクブレーキ70はディスク14を挟むようにして設けられている。
【0019】
この台車11はレール6上を走行可能であるため、この台車11を含む除去装置1全体を人力により押し引きしてマンホール4側から煙道ダクト3側に向かって前方に、または煙道ダクト3側からにマンホール4側に向かって後方に、それぞれ自在に移動させることができる。つまり、台車11と台車11に設けられた車輪12とが、本実施形態に係る除去装置1における前後調整機構10となっている。
なお、台車11には下向きのレール用ワイヤブラシ11aとピンラック用ワイヤブラシ11bが設けられていて、付着物の除去をしている。
【0020】
(走行用ブレーキ70とその動作)
図8〜図10に示すように、台車11が前後移動する際には、ピンギア13はピンラック17と噛み合いながら回転している。このため、油圧ディスクブレーキ70を作動させて(つまり、油圧ディスクブレーキ70でディスク14を挟んで)ディスク14の回転を止めるとピンギア13の回転も同時に止まるので、ピンラック17とピンギア13とが噛み合ったまま停止状態を維持できる。このため、除去装置1を前後方向の任意の位置に配置し、前記ブレーキ70を作動させてその位置決めをすることができる。よって、ブレーカー60に設けられたチゼル5の先端を前後方向において煙道ダクト3内の任意の位置に配置することができる。さらに、この台車11に設けられた油圧ディスクブレーキ70で、煙道ダクト内付着物を除去する際に発生する前後方向のブレーカー反力を受けることもできる。
【0021】
なお、この台車11の四隅には、図6(a)及び(b)に示すように、除去装置1の浮上がりを押える4つの浮上がり押え15が設けられている。浮上がり押え15は、図6(b)に示すように、レール6の上部幅広部分を抱いて挟み込むようにして設けられている。これにより、煙道ダクト内付着物を除去する際に発生するブレーカー60の浮上がりを抑えることができる。
【0022】
また、図4及び図11に示すように、この台車11の概ね中央部には昇降台座収容部16が固着されており、この昇降台座収容部16に後述する昇降調整機構20の一部である昇降台座21の垂直ガイド部21aが収容されている。昇降台座収容部16は断面が四角の垂直をなす筒状のものであり、昇降台座収容部16の4面には1面当たり上下左右に合計4つのローラー16aがそれぞれ配置されている。このローラー16aによって昇降台座21の垂直ガイド部21aは垂直方向に案内され、昇降台座収容部16に収容される。このため、台車11の前後移動と連動して、台車11に搭載された昇降調整機構20やブレーカー60等も前後移動して、それらの前後方向の位置が決められる。
【0023】
(昇降調整機構20とその動作)
昇降調整機構20は、図4に示すように、2本の伸縮可能な油圧シリンダー22と、油圧シリンダーによって昇降する1台の昇降台座21とを含んで構成されている。
油圧シリンダー22は台車11上に固定されており、その上端は昇降台座21の下向きの面に下から当たって接している。このため、油圧シリンダー22を作動させ伸縮させることで、昇降台座収容部16に収容されている昇降台座21の垂直ガイド部21aをローラー16aで案内して昇降させることができる。よって、昇降台座21の昇降と連動して、昇降台座21に搭載された、後述する左右調整機構30やブレーカー60等も昇降する。ここで、油圧シリンダー22の伸縮量を決定して昇降台座21の高さ位置を決めることにより、ブレーカー60の高さは決められる。
なお、この昇降台座21には、図2及び図4に示すように、これに隣接して同一の高さにディスク24が固定され、さらに昇降台座21には左右方向に延在させて配置された2本のレール23が設けられている。このレール23は、左右調整機構30の一部である横行台座31に設けられた4つの車輪32を走行可能に係合するためのものである。
【0024】
(左右調整機構30とその動作)
左右調整機構30は、図4に示すように、1台の横行台座31と、横行台座31にそのブラケット31aを介して設けられた4つの車輪32と、前記昇降台座21に設けられて前記車輪32が案内されるレール23とを含んで構成されている。
横行台座31に設けられた4つの車輪32は、昇降台座21に設けられた2本のレール23に嵌め込まれている(図2を参照)。2本のレール23は、開口部が個別に前方と後方を向いた溝型をなし、その開口部に車輪32が係合されている。このため、人が押すことによって横行台座31はこのレール23に沿って、左右に移動することができる。よって、横行台座31の移動と連動して、横行台座31に搭載された、後述する旋回調整機構40やブレーカー60等も左右に移動する。
【0025】
(横行用ブレーキ71とその動作)
この横行台座31には、そのブラケット31bを介して油圧ディスクブレーキ(つまり、横行用ブレーキ)71が設けられている(図2及び図12を参照)。この油圧ディスクブレーキ71を作動させて昇降台座31に設けられたディスク24を挟むことで、横行台座31の左右方向への横行移動を止めることができる。こうすることで、横行台座31の上部に搭載されたブレーカー60を左右の任意の位置に配置することができる。よって、ブレーカー60に設けられたチゼル5の先端を煙道ダクト3内の左右の任意の位置に配置することができる。さらに、油圧ディスクブレーキ71で、煙道ダクト内付着物を除去する際に発生する左右方向のブレーカー反力に耐えることもできる。
なお、この横行台座31には、図4に示すように、旋回軸受41と油圧ディスクブレーキ(つまり、旋回用ブレーキ)72とが設けられており、この油圧ディスクブレーキ72で後述する旋回台座42に設けられたディスク43を挟むことができる。
【0026】
(旋回調整機構40とその動作)
旋回調整機構40は、図3及び図4に示すように前記横行台座31上に旋回軸受41を介して設けられた1台の旋回台座42を中心にして構成されている。旋回軸受41は横行台座31の概ね中央部に配置され、この軸受41の外輪41aが横行台座31上に固定され、その内輪41bが旋回台座42の下面に固着されている。かくして、旋回台座42は、横行台座31上に旋回軸受41を介して旋回可能に搭載されている。このため、旋回台座42の上部に搭載された俯仰調整機構50及びブレーカー60は、旋回台座42を介して旋回することができる。よって、作業者7がブレーカー60後端のハンドルグリップ61を持ってブレーカー60を旋回させることができる。
なお、この旋回台座42には、図3に示すようにディスク43が固着されている。このディスク43は、横行台座31の設けられた油圧ディスクブレーキ72で挟まれるためのものである。
【0027】
(旋回用ブレーキ72とその動作)
図4に示した前記油圧ディスクブレーキ72を作動させ、ディスク43を油圧ディスクブレーキ72で挟むことで、旋回台座42を任意の方向に回転させた状態で固定することができる。よって、旋回台座42の旋回に連動して、旋回台座42上に搭載されたブレーカー60の向きを目的とする方向に固定することができる。このため、チゼル5の先端を煙道ダクト3内の任意の位置に配置することができる。さらに、油圧ディスクブレーキ72で、煙道ダクト内付着物を除去する際に発生する旋回方向のブレーカー反力に耐えることもできる。
なお、旋回台座42には、図3に示すように、油圧ディスクブレーキ73が設けられており、この油圧ディスクブレーキ73で後述するブレーカー60の俯仰と連動するディスク63を挟むことができる。
【0028】
(俯仰調整機構50とその動作)
俯仰調整機構50は、図2及び図3に示すように、俯仰軸受装置51aをそれぞれ含む2台のブレーカー支持部51とブレーカー60の水平軸52とで構成されている。ブレーカー支持部51は旋回台座42の概ね中央部の左右に搭載されており、ブレーカー支持部51上の軸受装置51aでブレーカー60を左右に貫通している水平軸52を回転可能に支持している。このため、ブレーカー60を俯仰可能としている。ブレーカー60の俯仰は、ハンドグリップ61を手動で上下させてブレーカー60を水平軸52中心に俯仰させて行う。
【0029】
(俯仰用ブレーキ73とその動作)
また、図3及び図14に示すように、旋回台座42に配置された1台の油圧ディスクブレーキ73を作動させ、この油圧ディスクブレーキ73で後述するブレーカー60の水平軸52に固定されたディスク63を挟むことで、ブレーカー60の俯仰方向の向きを任意の方向に固定することができる。このため、チゼル5の先端を煙道ダクト3内の任意の位置に配置することができる。さらに、油圧ディスクブレーキ73で、煙道ダクト内付着物を除去する際に発生する俯仰方向のブレーカー反力に耐えることもできる。
【0030】
(ブレーカー60)
図3に示すように、ブレーカー60は、チゼル5を備える1台のブレーカー本体64と、ブレーカー本体64を覆うブレーカーケース65と、ブレーカー60の俯仰と連動する1枚のディスク63とを含んでいる。
また、ブレーカー60後端に設けられたハンドグリップ61周辺には、ブレーカー60のON/OFF、旋回・俯仰・横行の各ブレーキのON/OFF、走行ブレーキのON/OFF、油圧シリンダー22による昇降のON/OFFの各操作スイッチが配置されている。このため、作業者7はブレーカー60の後側の床上にいて、ハンドグリップ61に手を掛けたり、台車11を押した姿勢のまま各作動操作ができる。
また、ブレーカー60の先端に設けられたチゼル5は取り換え可能なように取り付けられている。
【0031】
以上のように、上記の除去装置1であれば、ブレーカー60の向き及びブレーカー60の位置を自在に決めることができる。このため、処理槽2に設けられたマンホール4から挿入したチゼル5の先端を目的とする煙道ダクト内付着物に押し当てることができるので、そのままブレーカー60を作動させることにより煙道ダクト内付着物を粉砕し除去することができる。また、この除去装置1であれば、ブレーカー60の反力を受けるように複数のブレーキが組込まれているので、ブレーカー60の反力を低減することができる。よって、ブレーカー60の支持及び操作のための体力と反力を受けるための必要な体力が何れも減少するから煙道ダクト内付着物を除去する際、作業者7の作業負担を低減させることができる。また、この除去装置1であれば、例えば手動用ブレーカーを俯仰調整機構50に搭載して利用できるため、従来の大型除去装置を用いる方法と比較してコンパクトな除去装置とすることができる。よって、設置スペースが小さい場合であっても、容易に除去装置1を設置することができる。
【0032】
さらに、本発明の実施形態に係る除去装置1であれば、従来の大型除去装置を設置する場合よりも大幅に安価なコストで設置することもできる。また、本除去装置1を移動させる場合も容易である。また、ブレーカー60のハンドグリップ61周辺に各種の操作スイッチを配置しているので操作性も良い。
なお、上記実施形態において、レール6は建屋の床に固定されて配置されている旨を説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、レール6は建屋の天井に配置されていても良いし、壁に配置されていても良い。また、除去装置1が移動可能に搭載されるのであれば、レール6に限定されるものでもない。
【0033】
また、上記実施形態において、除去装置1は、床上から上方に向けて前後調整機構10と昇降調整機構20と左右調整機構30と旋回調整機構40と俯仰調整機構50とが順次配置されている旨を説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、前後調整機構10の上に左右調整機構30が配置されていても良いし、前後調整機構10の上に旋回調整機構40が配置されていても良い。
本発明の実施形態に係る除去装置1は、製鉄所製鋼工場の真空脱ガス設備(単槽型)の煙道ダクト内付着物の除去作業に用いることができる。また、大型除去装置を用いた場合と比較して、安価である。
【符号の説明】
【0034】
1…除去装置
2…処理槽
3…煙道ダクト
4…マンホール
5…チゼル
6…レール
7…作業者
10…前後調整機構
11…台車
11a…レール用ワイヤブラシ
11b…ピンラック用ワイヤブラシ
12…車輪
12a…車軸
13…ピンギア
13a…回転軸
14…ディスク
15…浮上がり押え
16…昇降台座収容部
16a…ローラー
17…ピンラック
20…昇降調整機構
21…昇降台座
21a…垂直ガイド部
22…油圧シリンダー
23…レール
24…ディスク
30…左右調整機構
31…横行台座
31a…ブラケット
31b…ブラケット
32…車輪
40…旋回調整機構
41…旋回軸受
41a…旋回軸受の外輪
41b…旋回軸受の内輪
42…旋回台座
43…ディスク
50…俯仰調整機構
51…ブレーカー支持部
51a…俯仰軸受装置
52…水平軸
60…ブレーカー
61…ハンドグリップ
63…ディスク
64…ブレーカー本体
65…ブレーカーケース
70…走行用油圧ディスクブレーキ
71…横行用油圧ディスクブレーキ
72…旋回用油圧ディスクブレーキ
73…俯仰用油圧ディスクブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス設備に含まれる処理槽の、煙道ダクトとは反対側に設けられたマンホールから煙道ダクト内付着物を除去する除去装置であって、
前記マンホールから前記処理槽を経て前記煙道ダクトに達するチゼルを備えたブレーカーと、
前記ブレーカーの向きを俯仰可能、且つ左右に旋回可能に調整できるように同ブレーカーを支持した調整機構と、
前記ブレーカーの反力を受けるように配置されたブレーキと、を有することを特徴とする真空脱ガス設備の煙道ダクト内付着物の除去装置。
【請求項2】
前記調整機構は、前記ブレーカーの向きを、前記マンホールから前記煙道ダクトに向かう方向に沿う前後方向と、前記マンホールから前記煙道ダクトに向かう方向に対して左右方向と、上下方向と3つの方向のうち少なくとも一つの方向をさらに自在に調整できるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の真空脱ガス設備の煙道ダクト内付着物の除去装置。
【請求項3】
真空脱ガス設備に含まれる処理槽の、煙道ダクトとは反対側に設けられたマンホールから煙道ダクト内付着物を除去する除去装置であって、
前記マンホールから前記処理槽を経て前記煙道ダクトに達するチゼルを備えたブレーカーと、
前記ブレーカーを俯仰可能に支持する俯仰調整機構と、
前記俯仰調整機構を前記マンホールから前記煙道ダクトに向かう前方向に対して、左右方向に旋回可能に支持する旋回調整機構と、
前記旋回調整機構を前記左右方向に移動可能に支持する左右調整機構と、
前記左右調整機構を昇降可能に支持する昇降調整機構と、
前記昇降調整機構を前記真空脱ガス設備のある建屋の一部に前後方向に移動可能に支持する前後調整機構と、
さらに、前記ブレーカーを所定の位置と向きに固定するブレーキとを備えたことを特徴とする真空脱ガス設備の煙道ダクト内付着物の除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−79435(P2013−79435A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220905(P2011−220905)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】