説明

真空蒸発方法、真空蒸発装置及び真空蒸発エレメント

【課題】処理効率の高い真空蒸発方法を提供する。
【解決手段】真空容器3内において被処理液から揮発性物質等を真空蒸発させる真空蒸発方法であって、真空容器内に収納した液透過多孔質膜の一方側に導入した被処理液を、他方側の気相を真空ポンプ5により減圧することによって気相側に透過させ、透過した被処理液に含有される揮発性物質等を真空蒸発させる。気相側に透過した被処理液から揮発性物質等を蒸発させるので、揮発性物質等だけを蒸発させる場合に比べて揮発性物質等が透過膜から受ける影響が少ない。このため、処理効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体透過多孔質膜を用いた真空蒸発方法、真空蒸発装置及び真空蒸発装置に用いる真空蒸発エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
脱気膜を用いた真空蒸発装置として、特許文献1に記載された装置(以下、適宜「従来の装置」という)がある。従来の装置は、処理すべき液を気体透過膜の一方の側に導入し、他方の側の気相を減圧することにより、液中に含有される気体ないし揮発性物質を気相側へ除去するモジュールにより構成されている。従来の装置は、さらに、減圧した気相側に搬送ガスとしての空気を導入するためのエアブリーダーが設けられている。特許文献1には、エアブリーダーは、脱気を促進するための手段であって、そこから導入されたガスが、気体透過膜を透過した揮発性物質を効率よく運び去るような位置に設けられることが好ましい、との記載、さらに、気体透過膜として、平膜、中空糸膜、管状膜の非多孔質膜や多孔質膜を適用できる、との記載がある。
【特許文献1】特許第2949732号公報(第3頁第3欄及び第4欄参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の装置が備える気体透過膜では、そもそも気体ないし揮発性物質の膜透過速度が不十分であるため満足できる除去を行うことができず、そのため、処理効率が悪いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、気体透過膜の代わりに液透過膜を用いることにより、気相側に被処理液を透過させ、その透過させた被処理液に含まれる気体ないし揮発物質を蒸発させるようにすれば、膜透過速度を速めることができ、その結果、処理効率を高められることを知得した。その詳しい内容については、項を改めて説明する。なお、何れかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、その記載順や発明カテゴリーの相違に関わらず、可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。
【0005】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る真空蒸発方法(以下、適宜「請求項1の真空蒸発方法」という)は、真空容器(充分な強度を持った気密容器を含む)に収納した液透過多孔質膜の一方側に導入した被処理液を、他方側の気相を真空ポンプにより減圧することによって気相側に透過させ、透過した被処理液に含有される気体ないし揮発性物質(以下、両者を「揮発性物質等」とよぶ場合がある)を真空蒸発させることを特徴とする。
【0006】
請求項1の真空蒸発方法によれば、まず、真空容器内の液透過多孔質膜の一方側に被処理液が導入される。併せて液透過多孔質膜の他方側の気相が真空ポンプにより減圧されると、その圧力差によって一方側にあった被処理液が液透過多孔質膜を透過する。すなわち、被処理液は液透過多孔質膜の孔を抜けて気相側に滲み出る。気相側に出た被処理液からは、そこに含有されている揮発性物質等が真空蒸発する。蒸発した揮発性物質等は真空ポンプの吸引力により真空容器外へ排出される。気相側に出た被処理液から揮発物質等を真空蒸発させるので、透過する際に揮発物質等が液透過多孔質膜からほとんど影響を受けない。この点において、影響を受け易い気体透過膜に比べて蒸発速度、ひいては、処理効率を高めることができる。この点は、後掲する実験によって立証する。ここで、「真空蒸発」とは、気相の圧力を減圧して被処理液から揮発性物質等を分離する方法のことをいう。蒸発の一種であるが、常圧蒸発のように温度を上昇させて揮発性物質等を分離する方法とはことなり、熱を必要とせず、被処理液の再生に当たって冷却する必要もない。もっとも、加温を完全排除する趣旨ではない。被処理液や含有される揮発性物質等の種類、さらに、処理環境の違い等にもよるが、被処理液を加温(たとえば、40〜50℃)することにより、真空蒸発をより効果的に行いうる場合もある。
【0007】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る真空蒸発方法(以下、適宜「請求項2の真空蒸発方法」という)は、請求項1の真空蒸発方法であって、前記気相側に気体導入機構から蒸発促進気体を導入することを特徴とする。蒸発促進気体として好適なものには、たとえば、空気、窒素、アルゴン、さらにヘリウム等がある。
【0008】
請求項2の真空蒸発方法によれば、請求項の真空蒸発方法の作用効果に加え、蒸発促進気体の導入により、処理効率を高めることができる。すなわち、被処理液から蒸発した揮発性物質等は、高真空の中では気体流動がないためのそのまま被処理液の表面近傍に滞留してしまい、その滞留が、後続する揮発性物質等の蒸発を妨げる。そこで、蒸発促進気体を導入して、気体流動を生じさせ、これにより、滞留している揮発性物質等を拭い去って被処理液表面を露出させて後続する蒸発を促進する。これが、処理効率の高まる理由であると考えられる。
【0009】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る真空蒸発方法(以下、適宜「請求項3の真空蒸発方法」という)は、請求項1または2の真空蒸発方法であって、前記気相側に透過した被処理液によって、前記液透過多孔質膜表面に被処理液膜を形成することを特徴とする。すなわち、気相側に透過した被処理液の態様は、液透過多孔質膜の孔径や気孔率、さらに、真空度等によっては異なりを見せるが、被処理液の透過量(滲み出し量)を調整することにより、液透過膜表面が満遍なく濡れた状態、すなわち、被処理液膜を形成することが好ましい。
【0010】
請求項3の真空蒸発方法によれば、請求項1または2の真空蒸発方法の作用効果に加え、被処理液膜を形成することにより、気相側に露出する被処理液の表面積を可及的に広くすることができる。広くすることにより、広くした分だけ揮発性物質等が蒸発し易い環境が形成される。
【0011】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る真空蒸発方法(以下、適宜「請求項4の真空蒸発方法」という)は、請求項3の真空蒸発方法であって、前記被処理液膜を構成した被処理液を除去することによって前記液透過多孔質膜表面に新たな被処理液膜を形成することを特徴とする。被処理液膜は、液透過多孔質膜の孔から滲み出た点在する滴群によって形成される場合や、これらの滴群が互いに連結して層が形成される場合等、がある。
【0012】
請求項4の真空蒸発方法によれば、請求項3の真空蒸発方法の作用効果に加え、被処理液膜の入れ替えにより、新たに被処理液膜表面が露出することによって揮発性物質等がさらに蒸発し易い環境が形成される。すなわち、入れ替え前の被処理液膜から揮発性物質等が蒸発すれば、当該被処理液膜を形成する被処理液の揮発性物質等の濃度が低下若しくはゼロになりそれ以上蒸発しにくい若しくは蒸発しない状態になるが、ここで、被処理液膜が入れ替われば、高い濃度の揮発性物質等を含有する被処理液膜が登場して、蒸発し易い環境が形成される。この繰り返しが、処理効率のさらなる向上につながる。なお、被処理液膜の除去は、先行する被処理液膜の除去が完了した後に後続する被処理液膜を形成する場合に加え、両者が徐々に入れ替わる場合や、前者に後者が混入しつつ入れ替わる場合等、その態様を問わない。
【0013】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る真空蒸発方法(以下、適宜「請求項5の真空蒸発方法」という)は、請求項4の真空蒸発方法であって、前記被処理液の除去が、被処理液の自重流下によることを特徴とする。
【0014】
請求項5の真空蒸発方法によれば、請求項4の真空蒸発方法の作用効果に加え、液透過多孔質膜から気相側に透過した被処理液は、表面張力によって液透過多孔質膜表面に留まろうとするが、重力作用(蒸発促進気体が導入された場合はその衝突作用も含む)が、その表面張力に打ち勝ったときに、液透過多孔質膜表面を伝って自重流下する。自重流下によって、先行する被処理液膜が移動して後続する被処理液膜を露出させる。
【0015】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る真空蒸発方法(以下、適宜「請求項6の真空蒸発方法」という)は、請求項5の真空蒸発方法であって、自重流下した前記被処理液を、前記真空容器外で回収することを特徴とする。
【0016】
請求項6の真空蒸発方法によれば、請求項5の真空蒸発方法の作用効果に加え、被処理液膜が自重流下することによって、液透過多孔質膜の下方、すなわち、真空容器の底部には処理した被処理液が落下することになるが、この被処理液を回収すれば、被処理液の安全回収又は再利用を図ることができる。すなわち、処理後の被処理液は、それに含有されていた揮発性物質等の一部又は全部が真空蒸発によって蒸発によって、再利用可能な被処理液に再生することができる。被処理液の再生が、環境問題の改善と処理費用削減に寄与することは言うまでもない。導入した被処理液(液透過多孔質膜の一方側にある被処理液)が残存する場合は、この残存処理液を上記落下処理液と併せて回収するようにすることもできる。ただし、単に回収だけが目的であれば配慮する必要は必ずしもないが、被処理液再生をも目的とするのであれば残存処理液が揮発性物質等を含有するかしないか、含有するのであればその濃度に配慮する必要がある。含有する揮発性物質等の濃度が高すぎると、そのままでは被処理液としての再利用に不適切な場合が考えられるからである。そのままでは再利用に不適切な残存処理液については、再度の処理を施すことによって再利用可能に再生することが好ましい。
【0017】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係る真空蒸発方法(以下、適宜「請求項7の真空蒸発方法」という)は、請求項1乃至6何れかの真空蒸発方法であって、蒸発した気体ないし揮発性物質を、前記真空容器と前記真空ポンプとの間又は前記真空容器の下流側で回収することを特徴とする。
【0018】
請求項7の真空蒸発方法によれば、請求項1乃至6何れかの真空蒸発方法の作用効果に加え、蒸発した揮発性物質等を回収することによって、揮発性物質等の安全回収又は再利用を図ることができる。
【0019】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項8の真空蒸発装置」という)は、被処理液に含有される気体ないし揮発性物質を真空蒸発するための真空蒸発装置である。具体的には、真空容器と、当該真空容器内部を減圧するための真空ポンプと、当該真空容器内部に収納された少なくとも1個(2個以上でもよい)の真空蒸発エレメントと、当該真空蒸発エレメントが備える液透過多孔質膜と、当該液透過多孔質膜によって当該真空容器内部の気相側から隔てられた液流路と、当該真空容器外部から当該液流路内部に被処理液を導入するための液体導入機構と、を含めて構成してある。
【0020】
請求項8の真空蒸発装置によれば、真空ポンプの駆動により真空容器内の液透過多孔質膜の一方側に被処理液が導入される。併せて液透過多孔質膜の他方側の気相が真空ポンプにより減圧されると、被処理液が液透過多孔質膜を透過する。すなわち、被処理液は液透過多孔質膜の孔を抜けて気相側に滲み出る。気相側に出た被処理液からは、そこに含有されている揮発性物質等が真空蒸発する。蒸発した揮発性物質等は真空ポンプの吸引力により真空容器外へ排出される。気相側に出た被処理液から揮発物質等を真空蒸発させるので、透過する際に揮発物質等が液透過多孔質膜からほとんど影響を受けない。この点において、影響を受け易い気体透過膜に比べて蒸発速度、すなわち、処理効率を高めることができる。この点は、後掲する実験によって立証する。
【0021】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項9の真空蒸発装置」という)には、請求項8の装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記真空容器内部の当該気相側に蒸発促進用気体を導入するための気体導入機構を、さらに含めて構成してある。
【0022】
請求項9の真空蒸発装置によれば、請求項8の真空蒸発装置の作用効果に加え、蒸発促進気体の導入により、処理効率を高めることができる。すなわち、被処理液から蒸発した揮発性物質等は、高真空の中では気体流動がないためのそのまま被処理液の表面近傍に滞留してしまい、その滞留が、後続する揮発性物質等の蒸発を妨げる。そこで、蒸発促進気体を導入して、気体流動を生じさせ、これにより、滞留している揮発性物質等を拭い去って被処理液表面を露出させて後続する蒸発を促進する。これが、処理効率の高まる理由であると考えられる。
【0023】
(請求項10記載の発明の特徴)
請求項10記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項10の真空蒸発装置」という)には、請求項8又は9の真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記気相側に透過した被処理液が、前記液透過多孔質膜表面に被処理液膜を形成するように構成してある。被処理液膜の形成は、主として多孔質膜の孔径と気相側の真空度(真空ポンプの設定)の適切な選択によって行われる。
【0024】
請求項10の真空蒸発装置によれば、請求項8又は9の真空蒸発装置の作用効果に加え、被処理液膜形成によって気相側に露出する被処理液の表面積を可及的に広くすることができる。広くすることにより、広くした分だけ揮発性物質等が蒸発し易い環境が形成される。
【0025】
(請求項11記載の発明の特徴)
請求項11記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項11の真空蒸発装置」という)には、請求項10の真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記被処理液膜を構成した被処理液を自重流下させることによって前記液透過多孔質膜表面に逐次新たな被処理液膜を形成するように構成してある。
【0026】
請求項11の真空蒸発装置によれば、請求項10の真空蒸発装置の作用効果に加え、被処理液膜の入れ替えにより、新たに被処理液膜表面が露出することによって揮発性物質等がさらに蒸発し易い環境が形成される。すなわち、被処理液膜から揮発性物質等が蒸発すれば、当該被処理液膜を形成する被処理液の揮発性物質等の濃度が低下若しくはゼロになりそれ以上蒸発しにくい若しくは蒸発しない状態になるが、ここで、当該被処理液膜が新たな被処理液膜と入れ替われば、高い濃度の揮発性物質等を含有する被処理液膜が登場して、蒸発し易い環境が形成される。この繰り返しが、処理効率のさらなる向上につながる。
【0027】
(請求項12記載の発明の特徴)
請求項12記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項12の真空蒸発装置」という)には、請求項11の真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記真空蒸発エレメントを複数個厚み方向に積層してある。ここで、当該真空蒸発エレメント各々が備える液透過多孔質膜が、前記液流路を挟んで対向する一方の多孔質膜片と他方の多孔質膜片を含めて構成してあり、当該一方の多孔質膜片と当該他方の多孔質膜片とは、被処理液の通過による圧力変形を抑制するために当該流体流路全域に渡って散在形成した融着点部又は接着点部によって接着してある。したがって、融着点部又は接着点部の位置や個数等に伴って、液流路の形状が変化する。液流路や必ずしも一筋である必要はなく二次元方向若しくは三次元方向に並ぶ複数筋でもよい。また、直線筋である必要は必ずしもなく、屈曲を含む筋であることを妨げない。
【0028】
請求項12の真空蒸発装置によれば、請求項11の真空蒸発装置の作用効果に加え、融着点部又は接着点部の働きにより液透過多孔質膜(一方及び他方の多孔質膜片)の圧力変形を抑制することができる。この圧力変形は、それらによって隔てられた液流路内を被処理液が通過すると、その圧力によって液透過多孔質膜が膨張させられることによって生じる。この膨張が過度なものになると、積層された液透過多孔質膜(一方及び他方の多孔質膜片)同士が近づきすぎて接触したり、両者間に透過した被処理液が滞留したりする事態を招き、これを許すと通気不良により揮発性物質の蒸発に悪影響を与えかねない。液透過多孔質膜の膨張抑制は、このような悪影響を有効に排除する。
【0029】
(請求項13記載の発明の特徴)
請求項13記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項13の真空蒸発装置」という)には、請求項11の真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記真空蒸発エレメントを複数個厚み方向に積層してある。ここで、当該真空蒸発エレメント各々が備える液透過多孔質膜が、前記液流路を構成する通液シートを挟んで対向する一方の多孔質膜片と他方の多孔質膜片を含めて構成してあり、当該通液シートと当該一方の多孔質膜片及び他方の多孔質膜片とは、被処理液の通過による圧力変形を抑制するために当該通液シート全域に渡って散在形成した融着点部又は接着点部によって接着してある。
【0030】
請求項13の真空蒸発装置によれば、請求項11の真空蒸発装置の作用効果に加え、融着点部又は接着点部の働きにより液透過多孔質膜(一方及び他方の多孔質膜片)の圧力変形を抑制することができる。この圧力変形は、それらによって隔てられた液流路(通液シート)内を被処理液が通過すると、その圧力によって液透過多孔質膜が膨張させられることによって生じる。この膨張が過度なものになると、積層された液透過多孔質膜(一方及び他方の多孔質膜片)同士が近づきすぎて接触したり、両者間に透過した被処理液が滞留したりする事態を招き、これを許すと通気不良により揮発性物質の蒸発に悪影響を与えかねない。液透過多孔質膜の膨張抑制は、このような悪影響を有効に排除する。
【0031】
(請求項14記載の発明の特徴)
請求項14記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項14の真空蒸発装置」という)には、請求項12又は13の真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記一方の多孔質膜片と前記他方の多孔質膜片とを、ほぼ逆さU字形又はほぼ長方形の枠体によって周囲から支持させてある。これに加え、当該枠体が、前記液膜を構成する被処理液が自重流下する方向に長い一対の長辺部を含めて構成してあり、当該一対の長辺部各々には、当該一方の多孔質膜片及び当該他方の多孔質膜片のうち少なくとも一方の表面(両面でもよいし何れか一方の面でもよい)を覆うように突出する複数の短尺スペーサー片を長さ方向所望間隔隔てて設けてある。さらに、当該枠体の当該一対の長辺部以外の上端部位には、被処理液を当該液流路に供給するための供給口を形成してあり、当該複数の短尺スペーサーが、積層によって隣接する真空蒸発エレメントの多孔質膜片間に隙間を形成して使用時に通風を確保可能な形状に形成してある。
【0032】
請求項14の真空蒸発装置によれば、請求項12又は13の真空蒸発装置の作用効果に加え、一方の多孔質膜と他方の多孔質膜からなる液透過多孔質膜が、その周囲を枠体によって支持される。短尺スペーサー片各々は、液透過多孔質膜の周囲から一方又は双方の表面中央に向けて突出し、隣接する多孔質膜片(液透過多孔質膜)間を密着させずに両者間に隙間を形成させ、これにより、両者間の使用時における通風を確保する。通風確保は、液透過多孔質膜を透過した被処理液から揮発性物質等が蒸発することを促進する。スペーサー片を短尺としたのは、各スペーサー先端が枠体の長辺部間の中央にまで届かない長さ、換言すれば、液透過多孔質膜の幅方向(被処理液の自重流下を横断する方向)の中央領域を塞がない長さに設定してあることを意味する。中央領域を塞ぐと、被処理液膜(被処理液)の流下の妨げになるので、妨げとならないようにするためである。通風と被処理液の流下を確保することにより、揮発性物質の被処理液からの蒸発の効率を高めることができる。
【0033】
(請求項15記載の発明の特徴)
請求項15記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項15の真空蒸発装置」という)には、請求項14の真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記気体導入機構が、前記真空容器内に収納された1又は2以上のハウジングを含めて構成してあり、当該ハウジング各々が、厚み方向に積層した複数の真空蒸発エレメントを収納可能、かつ、収納した当該複数の真空蒸発エレメントの周囲を蒸発促進用気体が通過可能に構成してある。
【0034】
請求項15の真空蒸発装置によれば、請求項14の真空蒸発装置の作用効果に加え、ハウジングの作用により真空蒸発エレメント周囲に対して蒸発促進用気体を集中的に供給することができる。すなわち、積層した複数の真空蒸発エレメントの周囲に蒸発促進用気体を供給すると、その蒸発促進用気体は、短尺スペース片によって形成された多孔質膜片間の隙間を通過する。つまり、多孔質膜表面周囲に蒸発促進用気体を効率よく供給することができる。真空容器内に散在させるよりもハウジング内に集中させたほうが、真空蒸発エレメントに効率よく蒸発促進用気体が行き渡るので、揮発性物質等の蒸発がさらに促進され、これによって、蒸発効率がさらに向上する。
【0035】
(請求項16記載の発明の特徴)
請求項16記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項16の真空蒸発装置」という)には、請求項11乃至15何れかの真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記真空容器には、前記液流路を通過した被処理液及び前記液膜を形成した被処理液を外部へ排出するための液体排出機構を、さらに設けてある。
【0036】
請求項16の真空蒸発装置によれば、請求項11乃至15何れかの真空蒸発装置の作用効果に加え、被処理液膜を形成した被処理液が自重流下することによって、液透過多孔質膜の下方、すなわち、真空容器の底部には処理した被処理液が落下することになるが、この処理後の被処理液を回収すれば、被処理液の安全回収又は再利用を図ることができる。すなわち、処理後の被処理液は、それに含有されていた揮発性物質等の一部又は全部が真空蒸発によって蒸発によって、再利用可能な被処理液に再生することができる。被処理液の再生が、環境問題の改善と処理費用削減に寄与することは言うまでもない。
【0037】
(請求項17記載の発明の特徴)
請求項17記載の発明に係る真空蒸発装置(以下、適宜「請求項17の真空蒸発装置」という)には、請求項8乃至16何れかの真空蒸発装置の基本構成と同じく構成してあることに加え、前記真空容器と前記真空ポンプとの間又は前記真空容器の下流側に、蒸発した気体ないし揮発性物質を回収するための回収機構を設けてある。
【0038】
請求項17の真空蒸発装置は、請求項8乃至16何れかの真空蒸発装置の作用効果に加え、蒸発した揮発性物質等を回収することによって、揮発性物質等の安全回収又は再利用を図ることができる。
【0039】
(請求項18記載の発明の特徴)
請求項18記載の発明に係る真空蒸発エレメント(以下、適宜「請求項18の真空蒸発エレメント」という)は、請求項8乃至17何れかに記載した真空蒸発装置に使用可能な真空蒸発エレメントである。
【0040】
請求項18の真空蒸発エレメントによれば、請求項8乃至17何れかの真空蒸発装置に用いることにより、これらの真空蒸発装置各々が持つ作用効果を奏することができる。したがって、効率的な処理に大きく貢献する。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、処理効率を大幅に高めることのできる真空蒸発方法及び真空蒸発装置、さらに、そのような真空蒸発装置に用いる真空蒸発エレメントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
ここで、各図を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下、適宜「本実施形態」という)について説明する。図1は、真空蒸発装置の概略構造を示す図である。図2は、真空容器の平面図である。図3は、真空容器の収納物を示すための概略正面図である。図4は、ハウジングの斜視図である。図5は、真空蒸発エレメントの正面図である。図6は、真空蒸発エレメント正面の部分拡大図である。図7は、図6に示す部分拡大図の断面図である。図8は、膜体の部分拡大正面図である。図9は、図8に示す膜体のX−X断面図である。図10は、積層した真空蒸発エレメント群の部分側面図である。図11は、被処理液と蒸発促進気体の流れを示すための真空蒸発器の概略正面図である。図12は、膜体の変形例を示す縦断面図である。図13は、真空蒸発エレメントの変形例を示す正面図である。図14は、図13に示す真空蒸発エレメントの背面図である。図15は、図13に示す真空蒸発エレメントを積層した状態を示す右側面図である。図16は、気体透過膜を用いたときの揮発性物質の時系列濃度変化を示す図表である。
図17は、液体透過膜を用いたときの揮発性物質の時系列濃度変化を示す図表である。図18は、液体透過膜を用いたときの揮発性物質濃度と真空度との関係を示す図表である。図19は、液体透過膜を用いたときの揮発性物質の時系列濃度変化を示す図表である。
【0043】
(真空蒸発装置の概略構造)
図1を参照しながら、本実施形態に係る真空蒸発方法を実施するための真空蒸発装置(以下、単に「蒸発装置」という)の概略構造について説明する。蒸発装置1は、真空容器3と、真空ポンプ5と、液体導入機構7と、気体導入機構9と、液体排出機構11と、回収機構13と、真空蒸発器15と、真空蒸発エレメント51(真空蒸発エレメント群51)と、から概ね構成してある。真空容器3は、真空蒸発エレメント群51を収納する容器であり、真空ポンプ5により内部(気相側)が減圧されるようになっている。液体導入機構7は、真空容器3の内部に配した液流路69(後述する)内部に、真空容器3の外部から導入した被処理液Liを供給するための機構である。気体導入機構9は、真空容器3内部の気相側に蒸発促進用気体Aを導入するための機構である。液体排出機構11は、真空容器3内部から処理後の被処理液Loを外部へ排出するための機構である。回収機構13は、蒸発させた揮発性物質等を冷却等によって回収するための機構である。本実施形態の回収機構13は真空ポンプ5の下流側(排気側)に配してあるが、たとえば、真空容器3と真空ポンプ5との間に配してもよい。真空蒸発器15は、真空蒸発エレメント群51をその主要部材とするものであって、真空容器3内に収納されている。
【0044】
(真空蒸発器の構造)
図1乃至4に示すように、真空容器3の中には、複数の真空蒸発器15を,...収納してある。各真空蒸発器15は、互いに同じ形状に形成してあるので、以下の説明は、特に断らない限り、1個の真空蒸発器15について説明する。真空蒸発器15は、複数の真空蒸発エレメント51(真空蒸発エレメント群51)と、この真空蒸発エレメント群51を収納するためのハウジング31と、ハウジング31の上に設置した集気ボックス37と、により概ね構成してある。真空蒸発器15は、少なくとも1個あれば足りるが、本実施形態では8個とした。その数は、たとえば、真空容器3の容量、被処理液の液量等に合わせて適宜増減してよい。
【0045】
(真空蒸発エレメントの構造)
真空蒸発エレメント51は複数あるが、どれも同じ構造を有するものであるから、ここでは、特に断らない限り、1個の真空蒸発エレメント51について説明を行う。図5乃至11に示すように、真空蒸発エレメント51は、大きく分けてほぼ矩形シート状の膜体53と膜体53を周囲から支持する枠体55とから構成してある。
【0046】
(膜体の構造)
図8および9から理解されるように、膜体53は、何れも液透過多孔質膜からなる一方の多孔質膜片61と、他方の多孔質膜片63と、両者間に挟まれた通液シート65と、多数の接着点部67(接着点部群67)と、から概ね構成してある。多孔質膜片61と多孔質膜片63とは何れもほぼ矩形であり、対向する両膜の間に通液シート65を挟みこんである。この状態で多孔質膜片63と多孔質膜片65の周囲は、開口部71(図7(c)参照)を除いて熱融着によって閉鎖してある(図9参照)。多孔質膜片61と通液シート65の一方の面側との間には両者を接着するために塗布した接着剤からなる接着点部67,...を散在させてある。多孔質膜片63と通液シート65の他方の面側との間にも同じく接着点部67,...を散在させてある。通液シート65は、自らを挟む両多孔質膜片61,63の間にあって液流路69を形成する。すなわち、液流路69は、ほぼ通液シート65によって占有された状態になっている。液流路69の中を通過する被処理液は、多孔質膜片61と多孔質膜片63とによって真空容器3内の気相側から隔てられる。被処理液が液流路69(通液シート65)の中を通過するとその液圧が多孔質膜片61と多孔質膜片63をそれぞれ外方向に働いて多孔質膜片61と多孔質膜片63を外方向(図5(b)の左右方向)に広げようとするが、これを過度に許すと隣接する他の真空蒸発エレメント51の多孔質膜片に接近しすぎたり、ときには接触したりしてしまう。この接近や接触は隣接する多孔質膜間の隙間(空間、間隙)を狭めたり閉鎖したりして両者間の通風を妨げ、その結果、蒸発促進用気体の機能を損ねる恐れがある。上記隙間に被処理液が進行したときは、その被処理液が、通風をさらに悪化させる。被処理液の通過による多孔質膜片の圧力変形を抑制するための一つの方策として、上記接着点部群67を設けたのである。多孔質膜片61,63は、真空容器3内の気相側減圧による圧力差との兼ね合いから、その圧力差によって被処理液が透過するように孔径等を設定する。透過した被処理液は、両多孔質膜61,63の表面に被処理液膜75を形成する(図9参照)。被処理液膜75は、多孔質膜片61,63が持つ孔径、気相側減圧の度合い等に応じて、その構成態様が異なる場合がある。すなわち、処理膜71は、被処理液の透過量が比較的少ない場合は散在する被処理液の雫の集合体により構成され、また、透過量増加によって隣接する処理液の雫同士が一体化したものにより構成される。
【0047】
多孔質膜片61,63には、主として有機溶剤、油たとえばDEHA(Di−2−ethlhexyl Adipate)等の液体を透過する高分子多孔質フィルムを好適に用いることができる。このような高分子多孔質フィルムとしては、典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン/ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の疎水性多孔質膜が挙げられるが、耐熱性、耐薬品性等の観点から多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜が特に好ましい。多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜は、厚み1〜500μm(好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは5〜50μm)、空孔率5〜95%、孔径0.01〜15μmの範囲のものが好ましく使用されるが、ガス透過性、耐液性、強度との兼ね合いから厚み5〜50μm、空孔率60〜90%、孔径0.1〜3μmのものがより好ましい。また、このような多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜は、延伸法、溶剤抽出法、キャスティング法などの従来公知の製法により製造することができるが、特に延伸法が、膜の強度に優れ、比較的製造コストが安いため好ましい。延伸法による多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の製造方法は、特開昭46−7284号、特開昭50−22881号、特表平03−504876号等の各公報に開示されている、従来公知の方法を用いることができる。なお、高分子多孔質フィルムの代わりに高分子多孔質膜チューブ等を用いることもできる。
【0048】
(枠体の構造)
図5に示すように、枠体55は、合成樹脂の一体成形した薄板を2枚合わせしてほぼU字形状に形成してある。枠体55は、膜体53の周囲を囲むように三方から支持する。枠体55をほぼU字形状に形成したのは、U字を逆さにして開放端を下方に向けることによって、被処理液膜75を構成する被処理液が多孔質膜片61,63の表面を自重流下したときに、多孔質膜片61,63の下端から離れて滴下(落下)しやすいようするためである。すなわち、枠体55をカタカナの「ロ」の字形状(長方形)に形成することもできるが、そのように形成すると枠体55下端に位置する横辺(図示を省略)の上端に被処理液が溜まって滴下しづらい状況となるが、その横辺を省略することにより、被処理液の溜まりをなくして滴下しやすくなる。図5乃至7を参照しながら、具体的な構造を説明する。枠体55は、その上端にほぼ矩形の連結部56と、連結部56の両端から下方向(被処理液が自重流下する方向)に長い一対の長辺部55a,55bと、を含めて構成してある。長辺部55a,55bの下端同士は連結せずに開放端としてある。長辺部55a,55b各々は、多孔質膜片61および多孔質膜片63の各表面(すなわち、膜体53の両面、図5(b)参照)を覆うように突出する複数の短尺スペーサー片57,...を長さ方向所望間隔を隔てて設けてある。つまり、多孔質膜片61,63表面の幅方向中央領域(図5においてSで示す領域)は上下方向に渡って短尺スペーサー57,...に覆われていない。覆われないように構成した理由は、上述した横辺省略の理由と同様に、溜まりを少なくすることにより被処理液を滴下しやすくするためである。短尺ながらも短尺スペーサー片57,...を設けることにより、その上端に被処理液が溜まりやすくなるが、それにも関わらず、これらを設けたのは、隣接する長辺部55a(55b)と他の長辺部55a(55b)との間に隙間g(図10参照)を形成することによって積層によって隣接する真空蒸発エレメント51,...同士の各多孔質膜片61,...63,...同士の接触を妨げ、両者間の通風を確保するためである(図10参照)。通風確保という点で上掲した接着点部67,...とその目的を同じくする。各短尺スペーサー片57の突出長さ寸法は、短すぎると通風確保を充分に発揮させられないことが考えられる一方、長すぎると被処理液の滴下確保の障害となり得ることから、通風確保と滴下確保という両目的の調和の観点から決定するとよい。一方、多孔質膜片61,63表面から見た各短尺スペーサー片57の高さ寸法は、高ければ高いだけ通風確保しやすいが、その分、厚みが増して大型化するとともに被処理液が溜まり易くなるから、これも両目的の調和の観点から決定するとよい。なお、本実施形態では通風確保に万全を期するために短尺スペーサー片57,...と接着点部67,...とを併設したが、通風が充分に確保できるのであれば、上記二者のうち何れか一方を省略することを妨げるものではない。
【0049】
図5乃至7を用いて連結部56について説明する。連結部56は、上述したようにほぼ矩形に形成してあり、その中心部には矩形の通液貫通孔56hを貫通させてある。通液貫通孔56hは、膜体53の開口部71(図7(c)(d)参照)と連通している。真空容器3の外部から液体導入機構7により導入された被処理液は、通液貫通孔56hを介して液流路69に供給できるようになっている。連結部56,...は、積層したときに互いに密着して連なった通液貫通孔56h,...同士を連通するように構成してある。
【0050】
(ハウジングの構造)
図2乃至4に示すように、本実施形態のハウジング31は、縦長長方体の外観形状に形成してあり、その底部(図4では隠れて見えない)は開口してある。開口した理由は、そこから被処理液を滴下排出できるようにするためと、後述する蒸発促進用気体を流入させられるようにするためである。したがって、底部は、被処理液を滴下排出させ、蒸発促進用気体を流入させることのできる他の形態(たとえば、底部を網目状に形成する)を適宜採用することもできる。ハウジング31は、真空容器3内で使用に耐え得る強度の素材、たとえば、合成樹脂や金属等によって、使用に耐えうる構造に構成する。図4に示すように、ハウジング31は、図4に示すように、真空蒸発エレメント51,...を厚み方向に密着積層した状態で収納してあり、見方を変えれば、ハウジング31は、上から被せたときにこれらの真空蒸発エレメント51,...を、その周りに気体(蒸発促進用気体)が通過できる隙間Gを介してほぼ完全に被覆する(底部は開口)大きさに形成してあることが分かる(図11参照)。ハウジング31の上部一端側には、液体導入機構7の一部を構成する液体導入管33を設けてある。液体導入管33は、被処理液をハウジング31内に導入するための部材である。
【0051】
ハウジング31が備える側板のうち真空蒸発エレメント51,...の積層方向(図4の左右方向)に沿って延びる両側板31a,31bには、複数(本実施形態では4×2の8本)の気体排出管35,...を設けてある。気体排出管35,...は、ハウジング31内部と集気ボックス37内を連通する。集気ボックス37内部には吸気管39を連通してあり、各ハウジング31(各集気ボックス37)の各吸気管39は、集合吸気管41を介して真空容器3外部にある真空ポンプ5(図1参照)に接続してある。
【0052】
ハウジング31を備える真空蒸発器15の数を8個としたことは前掲したとおりであるが、その8個の真空蒸発器15,...は、図2乃至4に示すように、4個ずつ高さ方向に2段重ねに配してある。上段の4個及び下段の4個は、それぞれが真空容器3内に水平設置した網板43,43の上に載置してある。網板43は、各真空蒸発器15のハウジング31を下方から支持するとともに、その底部開口からの被処理液の滴下を許容する機能を有している。被処理液の滴下を許容する構造であれば、網板以外の支持部材(たとえば、スノコ、孔あき板、その他これらに類するもの)を適宜使用してもよい。
【0053】
(気体導入機構の構造)
一方、真空容器3の下部側面には、上記したハウジング31とともに気体導入機構9を構成するリーク弁9aを取り付けてある。真空ポンプ5を駆動させて真空容器3の気相側を減圧した状態でリーク弁9aを開放すると、蒸発促進用気体(本実施形態では空気)を吸引導入するようになっている。導入された蒸発促進用気体は、その導入分だけ気相側を昇圧させる一方、集合吸気管41、吸気管39、集気ボックス37、気体排出管35,...、ハウジング31という気相側経路を介して真空容器3外へ吸引される。すなわち、蒸発促進用気体は、上記吸引により、導入された大部分が強制的にハウジング31内を通過させられるようになっていて、真空蒸発エレメント群51の周囲に蒸発促進用気体を効率よく行き渡らせるようになっている。
【0054】
(液体導入機構の構造)
図1,4及び11を参照しながら、液体導入機構7の詳細構造について説明する。液体導入機構7は、被処理液を貯留しておく貯留タンク7aと、貯留タンク7aに保留してある被処理液を送液するための送液ポンプ7b,7bおよび送液ポンプ7b,7bの下流側に接続した送液管7c,7cと、配液構造34,...(図11参照)と、により概ね構成してある。上記構成により、貯留タンク7aに貯留された被処理液は、送液ポンプ7b,7bにより送液管7c,7cを介して液体導入管33,...に送液され、さらに配液構造34,...を介して各ハウジング31内に導入される。配液構造34は、液体導入管33と、液体導入管33にその一端を連通する連通管33aと、連通管33aの他端に連通するカップリング33bと、を含めて構成してある。カップリング33bは積層した真空蒸発エレメント51,...のうち最も液体導入管33に近いものの連結部56外側に固定してある。これにより、その通液貫通孔56hと連通する他の通液貫通孔56h,...を介して各膜体53の液流路69,...に被処理液(図11に示す白抜き矢印)を配液が可能となる。カップリング33bから最も離れた連結部56の通液貫通孔56hは、その連結部56の外側から閉鎖部材(図示を省略)を用いて閉鎖してある。カップリング33bから閉鎖部材までの通液連通孔56h,...の閉鎖状態を保ち被処理液の漏れ出しを防ぐためである。液流路69,...に供給された被処理液は、各膜体51(多孔質膜片61,63)を透過してその表面に被処理液膜75を構成しつつ自重流下してやがてハウジング31,...の底部開口と網板43,43の網目を抜けて真空容器3の底部上に溜まるようになっている。この点は、既に述べたとおりである。なお、図11において、膜体53の上に示す白抜き矢印は、透過した被処理液が流下する様子を擬似的に示すものであって、実際には、上述した被処理液膜75が形成される。図11に示す矢印は、真空容器15内における蒸発促進気体の流れを示す。
【0055】
(液体排出機構の構造)
図1、3および4を参照しながら液体排出機構11の詳細構造を説明する。液体排出機構11は、真空容器3の底部に設けた排液管81と、排液管81と連通する排液タンク83と、排液タンク83に貯留された排液である被処理液を排液貯留槽87に送液するための排液ポンプ85とから概ね構成してある。真空容器3の内部(気相側)と排液タンク83内は同圧になるため、真空容器3の底部に溜まった被処理液は自重落下して排液タンク83内に貯留される。排液タンク83内に貯留された被処理液は排液ポンプ85によって排液貯溜槽87に送液されるようになっている。排液貯溜槽87に貯留された被処理液は、揮発性物質等を含まないか含んでいてもわずかであるから、再利用に供することができる。
【0056】
(膜体の変形例)
図12を参照しながら、膜体の変形例について説明する。変形例に係る膜体53´が、図9に示す膜体53と異なる点は、膜体53が有する通液シート65を膜体53´が有していない点である。したがって、膜体53´について説明するに当り、膜体53と機能的に共通する部分については図9に示す符号と同じ符号を図12に示すにとどめ、説明は省略する。すなわち、膜体53´を構成する一方の多孔質膜片61と他方の多孔質膜片63とは、膜体53´のほぼ全域に渡って散在する接着点部67,...によって互いに接着してあり、両多孔質膜片61,63に挟まれていて接着点部67,...を有しない部分が液流路69´となる。接着点部67,...は、膜体53のそれらと同様に、液流路69内を被処理液が通過するときの膜体53´の圧力変形を防止する役目を担っている。多孔質膜片61及び多孔質膜63が液流路液流路69´は液流路69よりも狭いが、被処理液の種類や処理量等に応じて選択し使用することができる。膜体53´の表面に被処理液膜75が形成される点は膜体53と異ならない。
【0057】
(真空蒸発エレメントの変形例)
図13乃至15を参照しながら、真空蒸発エレメントの変形例について説明する。本変形例に係る枠体55´と先に説明した真空蒸発エレメント55とが大きく異なる点は、後者では両面に設けてある短尺スペーサー片を前者では一方の面のみに設けた点である。したがって、真空蒸発エレメント57´について説明するに当り、真空蒸発エレメント57と機能的に共通する部分については図9に示す符号と同じ符号を図12に示すにとどめ、説明は省略する。枠体55´は、合成樹脂の一体成形によりほぼU字形状に形成してある。枠体55´は、膜体53の周囲を囲むように三方から支持する。枠体55´をほぼU字形状に形成したのは、枠体55をそのように形成した理由と異ならない。具体的な構造を説明する。枠体55は、その上端にほぼ矩形の連結部56´と、連結部56´の両端から下方向(被処理液が自重流下する方向)に長い一対の長辺部55´a,55´bと、を含めて構成してある。長辺部55´a,55´bの下端同士は連結せずに開放端としてある。連結部56´は、その両端を長辺部55´a,55´bと一体化した連結基部56´aと、連結基部56´aとほぼ同じ形状で連結基部56´aにヒンジ結合した開閉板部56´bとから構成してある。開閉板部56´bの開閉は、連結部56´に対する膜体55の着脱の便宜のためである。長辺部55´a,55´b各々は、多孔質膜片61(多孔質膜63でもよい。図13参照)の表面を覆うように突出する複数の短尺スペーサー片57´,...を長さ方向所望間隔を隔てて設けてある。短尺スペーサー片57´,...が多孔質膜片61の中央領域Sを覆わないように短尺に形成した理由は、短尺スペーサー片57,...の説明の際に述べたので、詳細は省略する。短尺スペーサー片57,...の働きにより、隣接する長辺部55´a,55´b間には通風確保のための隙間gが形成される。符号56´hは、連結部56´を貫通する通液貫通孔を示す。
【実施例1】
【0058】
図1に示す真空蒸発装置1を用いて実施例について述べる。真空蒸発エレメントは、図13に示すものを用いた。ここでは、揮発性物質等としてトルエン(Toluene)を溶かした被処理液(DEHA(Di−2−ethlhexyl Adipate))を、0.1L/minの流量で送液ポンプ7bによって真空蒸発ユニット51の液流路69内に導入し、真空ポンプ5(大晃機械工業製TDA−010:真空到達度6.5Pa)を用いてDEHAからトルエンを真空蒸発によって分離した。真空ポンプ5から排出されるトルエンを、乾燥空気によって希釈し流量1.0L/minとし、図外のTVOC計による測定を行った。真空蒸発エレメント51の膜体53(多孔質膜片61,63)は、液透過膜である気孔率85%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜を用いた。比較例として、気体透過膜であるシリコン膜を用いた。なお、いずれの場合も被処理液のトルエン濃度(Toluene/DEHA)は10g/Lとした。
【0059】
比較例となる気体透過膜を用いた真空蒸発方法では、被処理液に含有される揮発性物質(VOC)の膜透過速度が律則であるため、その蒸発速度が遅い。一方、膜体53は、透過する揮発性物質にほとんど影響を与えないため揮発性物質の蒸発速度が格段に早く、被処理液からほぼリアルタイムな揮発性物質の分離回収が期待できる。実際に被処理液からトルエンを回収したところ、図16及び17に示す結果を得た。すなわち、図16に示すように、シリコン膜を用いたときは15Paの高真空にしても実験開始後1分経過したところでトルエン濃度は約200ppmまでしか上がらず、その後減少に転じて7分経過後に70ppm前後で安定した。トルエン回収率は0.03%であった。このようにシリコン膜を用いた場合は、蒸発速度が遅く、ほとんどトルエンを回収できなかった。一方、気孔率85%の多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜を用いた場合は、図17に示すように、実験開始後4分前後で蒸発したトルエンの濃度が5000ppmを超え、その後減少して15分過ぎから200ppm前後で安定した。トルエンの回収率は、0.08%になった。このときの真空度は、30Paであった。
【実施例2】
【0060】
次に、上記と同様の装置を用いて蒸発するトルエン濃度と真空度との関係に着目した。用いた膜は、多孔質PTFE膜である。被処理液中のトルエン濃度(Toluene/DEHA)は、1g/Lとした。図18に示すように、30Paの高真空よりも、1000〜2000Pa程度の比較的真空度の低い領域で、蒸発するトルエン濃度は2桁以上高くなった。これは、30Pa前後の高真空では真空容器3内での空気流動が生じないため、被処理液から蒸発した揮発性物質が多孔質PTFE膜もしくはその表面に付着した被処理液膜の表面または表面近傍に滞留した状態となり、この滞留した揮発性物質が被処理液からの揮発性物質の後発的蒸発を妨げているからであると考えられる。そこで、真空容器3が備えるリーク弁9aを制御しながら開放して意図的に所望量の空気を真空容器3の気相側にリークすることによって、真空度を1500Paに保ちつつ、リークした空気の流動を生じさせた。すなわち、表面又は近傍に滞留する揮発性物質を空気の流動によって拭い去って、被処理液からの揮発性物質の後発的蒸発を促進させるためである。この方法によれば、図19に示すように、真空ポンプ5の排気ガス中のトルエン濃度は4,300ppmとなり、トルエン蒸発量を2桁以上向上させることができた。また、被処理液からのトルエンの回収率は69%となり、被処理液からのトルエンの分離回収をほぼリアルタイムとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】真空蒸発装置の概略構造を示す図である。
【図2】真空容器の平面図である。
【図3】真空容器の収納物を示すための概略正面図である。
【図4】ハウジングの斜視図である。
【図5】真空蒸発エレメントの正面図である。
【図6】真空蒸発エレメント正面の部分拡大図である。
【図7】図6に示す部分拡大図の断面図である。
【図8】膜体の部分拡大正面図である。
【図9】図8に示す膜体のX−X断面図である。
【図10】積層した真空蒸発エレメント群の部分側面図である。
【図11】被処理液と蒸発促進気体の流れを示すための真空蒸発器の概略正面図である。
【図12】膜体の変形例を示す縦断面図である。
【図13】真空蒸発エレメントの変形例を示す正面図である。
【図14】図13に示す真空蒸発エレメントの背面図である。
【図15】図13に示す真空蒸発エレメントを積層した状態を示す右側面図である。
【図16】気体透過膜を用いたときの揮発性物質の時系列濃度変化を示す図表である。
【図17】液体透過膜を用いたときの揮発性物質の時系列濃度変化を示す図表である。
【図18】液体透過膜を用いたときの揮発性物質濃度と真空度との関係を示す図表である。
【図19】液体透過膜を用いたときの揮発性物質の時系列濃度変化を示す図表である。
【符号の説明】
【0062】
1 真空蒸発装置
3 真空容器
5 真空ポンプ
7 液体導入機構
9 気体導入機構
11 液体排出機構
13 回収機構
15 真空蒸発器
31 ハウジング
33 液体導入管
34 配液構造
35 気体排出管
37 集気ボックス
39 吸気管
41 集合吸気管
43 網板
51 真空蒸発エレメント
53,53´ 膜体
55,55´ 枠体
56 連結部
57 短尺スペーサー片
61 (一方の)多孔質膜片
63 (他方の)多孔質膜片
65 通液シート
67 接着点部
69 液流路
71 開口部
75 被処理液膜
81 排液管
83 排液タンク
85 排液ポンプ
87 排液貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に収納した液透過多孔質膜の一方側に導入した被処理液を、他方側の気相を真空ポンプにより減圧することによって気相側に透過させ、透過した被処理液に含有される気体ないし揮発性物質を真空蒸発させる
ことを特徴とする真空蒸発方法。
【請求項2】
前記気相側に気体導入機構から蒸発促進気体を導入する
ことを特徴とする請求項1記載の真空蒸発方法。
【請求項3】
前記気相側に透過した被処理液によって、前記液透過多孔質膜表面に被処理液膜を形成する
ことを特徴とする請求項1または2記載の真空蒸発方法。
【請求項4】
前記被処理液膜を構成した被処理液を除去することによって前記液透過多孔質膜表面に新たな被処理液膜を形成する
ことを特徴とする請求項3記載の真空蒸発方法。
【請求項5】
前記被処理液の除去が、被処理液の自重流下による
ことを特徴とする請求項4記載の真空蒸発方法。
【請求項6】
自重流下した前記被処理液を、前記真空容器外で回収する
ことを特徴とする請求項5記載の真空蒸発方法。
【請求項7】
蒸発した気体ないし揮発性物質を、前記真空容器と前記真空ポンプとの間又は前記真空ポンプの下流側で回収する
ことを特徴とする請求項1乃至6何れか記載の真空蒸発方法。
【請求項8】
被処理液に含有される気体ないし揮発性物質を真空蒸発するための真空蒸発装置であって、
真空容器と、
当該真空容器内部を減圧するための真空ポンプと、
当該真空容器内部に収納された少なくとも1個の真空蒸発エレメントと、
当該真空蒸発エレメントが備える液透過多孔質膜と、
当該液透過多孔質膜によって当該真空容器内部の気相側から隔てられた液流路と、
当該真空容器外部から当該液流路内部に被処理液を導入するための液体導入機構と、
を含めて構成してある
ことを特徴とする真空蒸発装置。
【請求項9】
前記真空容器内部の当該気相側に蒸発促進用気体を導入するための気体導入機構を、さらに含めて構成してある
ことを特徴とする請求項8記載の真空蒸発装置。
【請求項10】
前記気相側に透過した被処理液が、前記液透過多孔質膜表面に被処理液膜を形成するように構成してある
ことを特徴とする請求項8又は9記載の真空蒸発装置。
【請求項11】
前記被処理液膜を構成した被処理液を自重流下させることによって前記液透過多孔質膜表面に逐次新たな被処理液膜を形成するように構成してある
ことを特徴とする請求項10記載の真空蒸発装置。
【請求項12】
前記真空蒸発エレメントを複数個厚み方向に積層してあり、
当該真空蒸発エレメント各々が備える液透過多孔質膜が、前記液流路を挟んで対向する一方の多孔質膜片と他方の多孔質膜片を含めて構成してあり、
当該一方の多孔質膜片と当該他方の多孔質膜片とは、被処理液の通過による圧力変形を抑制するために当該流体流路全域に渡って散在形成した融着点部又は接着点部によって接着してある
ことを特徴とする請求項11記載の真空蒸発装置。
【請求項13】
前記真空蒸発エレメントを複数個厚み方向に積層してあり、
当該真空蒸発エレメント各々が備える液透過多孔質膜が、前記液流路を構成する通液シートを挟んで対向する一方の多孔質膜片と他方の多孔質膜片を含めて構成してあり、
当該通液シートと当該一方の多孔質膜片及び他方の多孔質膜片とは、被処理液の通過による圧力変形を抑制するために当該通液シート全域に渡って散在形成した融着点部又は接着点部によって接着してある
ことを特徴とする請求項11記載の真空蒸発装置。
【請求項14】
前記一方の多孔質膜片と前記他方の多孔質膜片とを、ほぼ逆さU字形又はほぼ長方形の枠体によって周囲から支持させてあり、
当該枠体が、前記液膜を構成する被処理液が自重流下する方向に長い一対の長辺部を含めて構成してあり、
当該一対の長辺部各々には、当該一方の多孔質膜片及び当該他方の多孔質膜片のうち少なくとも一方の表面を覆うように突出する複数の短尺スペーサー片を長さ方向所望間隔隔てて設けてあり、
当該枠体の当該一対の長辺部以外の上端部位には、被処理液を当該液流路に供給するための供給口を形成してあり、
当該複数の短尺スペーサーが、積層によって隣接する真空蒸発エレメントの多孔質膜片間に隙間を形成して使用時に通風を確保可能な形状に形成してある
ことを特徴とする請求項12又は13記載の真空蒸発装置。
【請求項15】
前記気体導入機構が、前記真空容器内に収納された1又は2以上のハウジングを含めて構成してあり
当該ハウジング各々が、厚み方向に積層した複数の真空蒸発エレメントを収納可能、かつ、収納した当該複数の真空蒸発エレメントの周囲を蒸発促進用気体が通過可能に構成してある
ことを特徴とする請求項14記載の真空蒸発装置。
【請求項16】
前記真空容器には、前記被処理液膜を形成した被処理液を外部へ排出するための液体排出機構を、さらに設けてある
ことを特徴とする請求項11乃至15何れか記載の真空蒸発装置。
【請求項17】
前記真空容器と前記真空ポンプとの間又は前記真空ポンプの下流側に、蒸発した気体ないし揮発性物質を回収するための回収機構を設けてある
ことを特徴とする請求項8乃至16何れか記載の真空蒸発装置。
【請求項18】
請求項8乃至17何れかに記載した真空蒸発装置に使用可能な真空蒸発エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−262108(P2009−262108A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118019(P2008−118019)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(508042663)株式会社STAC (2)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】