説明

真空開閉弁

【課題】ピストンの外周面とシリンダの内周面との隙間を、ピストンの動作と共に追従するベロフラムで密閉し、流体によりピストンを駆動させて開閉する真空開閉弁において、耐久性のある真空開閉弁を提供する。
【解決手段】真空容器2と真空ポンプ5との間に接続し、弁座73に対し弁体であるOリング79の開度を変化させて真空容器2内の真空圧力を制御する真空開閉弁10であって、ピストン40の外周面とシリンダ30の内周面31との所定の隙間を、ピストン40の動作と共に追従するベロフラム50で密閉し、流体によりピストン40を駆動させて開閉する真空開閉弁10であって、ベロフラム50が所定の傾斜角度θ2で形成されていること、ピストン40の外周が、所定の傾斜角度θで形成されていること、弁体が弁座と当接する位置にあるときに、ピストンと接触するベロフラムの内周径と、ピストンの外周径が等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器と真空ポンプとの間に接続し、開度を変化させて真空容器内のガスの真空圧力を制御する真空開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、半導体製造工程において、ウエハを配置した真空チャンバ内に、プロセスガスとバージガスとを交互に給気・排気させる真空圧力制御システム等が提案されている。このような真空圧力制御システムには、真空チャンバと真空ポンプとの間に真空開閉弁が接続されている。この真空開閉弁は、開度を変化させて、真空チャンバ内に供給するプロセスガスの真空圧力を制御している(特許文献1参照)。
【0003】
従来の真空開閉弁について、図11〜図15を用いて簡単に説明する。図11は、本出願人が提案した特許文献1の真空圧力制御システムに構成された真空開閉弁100を示す断面図である。図12は、図11中、R部の拡大図であり、閉弁状態におけるベロフラム150の形態を説明するための説明図である。図13は、従来のベロフラム150を示す断面図である。図14は、従来のベロフラム150のうち、基布151Bの織り目を説明する説明図である。
真空開閉弁100では、駆動エアがエア収容室AS内に供給され、ピストン140が上昇(図11中、上方)すると、ピストンロッド147を介してピストン140と連結するポペット弁体176がピストン140のストローク方向に上昇し、ポペット弁体176が弁座173から離れて開弁するようになっている。このピストン140は、そのスティックスリップの発生を防止するため、単動空気圧シリンダ130内をこれと非接触で駆動する。ピストン140と単動空気圧シリンダ130との隙間145は、ピストン140の動作と共に追従するベロフラム150で密閉され、エア収容室AS内の気密性が確保されるようになっている。
【0004】
このベロフラム150は、ピストン140のボア方向から見たときのベロフラム150の断面形状を、図13に示す略台形形状とされている。ベロフラム150は、インサート成形によりゴムにポリエステル等の基布151Bを埋設して成形されている。この基布151Bは、図14に示すように、糸を縦方向及び横方向にそれぞれ1本ずつ格子状に交差した平織りの網目を有したものである。ベロフラム150は、中央部152をピストン140の受圧面142に固着し、フランジ部153を単動空気圧シリンダ130のフランジ保持部132で固定させている。このベロフラム150のうち、フランジ部153から深く折り返されて中央部152に向けて延びる環状の単一テーパ面154は、軸線AXに沿う仮想線Nとのなす角度を単一テーパ角θpの単一の傾斜面とされている。
【0005】
なお、従来のベロフラム150の形状に略台形を採用する理由として、次の2つの理由が挙げられる。
(1)ベロフラム150を具備した真空開閉弁100では、ピストン140の外周面におけるピストン外周径dpが、所定の隙間145を有した分だけ単動空気圧シリンダ130の内径よりも小さく、ベロフラム150の単一テーパ面154がピストン150の上死点の位置までピストン150の駆動に伴って伸びる。
(2)真空開閉弁100では、閉弁すると、ベロフラム150における中央部152とフランジ部153とがほぼ同じ高さに位置し、単一テーパ面154は、図11及び図12に示すように、ピストン140と単動空気圧シリンダ130との隙間145の中で、山折
り状に折り返される。
これらのことから、単一テーパ面154を、ピストン150のストローク方向に沿う軸線AX、すなわち仮想線Nに対し、所定の単一テーパ角θpで傾斜した単一の傾斜面にすることで、ベロフラム150が、真空開閉弁100の開閉動作に伴って伸縮し易くなるからである。
【0006】
一方、ベロフラムで駆動される真空開閉弁については、特許文献2の第1図、及び特許文献3の図2、図5、図6に開示されている。また、ベロフラムが角度が異なる傾斜面を備えることについては、特許文献4の第1図、第4図、特許文献5の第3図、及び特許文献6の第2図、第5図に開示されている。
また、トリコット織りの基布をインサート成形するによりベロフラムを形成することは、特許文献7、及び特許文献8に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9-72458号公報
【特許文献2】特開2002-132354号公報
【特許文献3】特開平07-150623号公報
【特許文献4】特開昭56-049462号公報
【特許文献5】実開昭61-140296号公報
【特許文献6】実開昭60-055466号公報
【特許文献7】特開平10-317262号公報
【特許文献8】特開平10-132077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、真空開閉弁100では、以下に掲げる問題がある。
(1)図11及び図12は、真空開閉弁が閉じた状態の位置である。その状態で、駆動エアがエア収容室ASに供給されると、駆動エアによる加圧力が、ベロフラム150の中央部152及び、ピストン140と単動空気圧シリンダ130との隙間145の中で折り返された単一テーパ面154にかかって、ピストン140を上昇させる。
このとき、単一テーパ面154は、エア収容室AS内への駆動エアの供給により、図12に示す山折りされた形態から、単一テーパ面154の一部がピストン140の外周面と単動空気圧シリンダ130の内周面に向けて膨らんだ形態になる(図15参照)。
ベロフラム150の形状は略台形であり、単一の単一テーパ面154がピストン140の外周面よりも軸線AXの径方向外側にあるため、ベロフラム150における軸線AX方向の同じ位置では、この位置における径方向の、ベロフラム150のピストン140と接触する面におけるテーパ面径長Dpは、図16に2点鎖線で示すように、ピストン外周径dpよりも大きい。ベロフラム150は、テーパ面を備えているが、ピストン140は円筒形状であるため、ベロフラム150の最短径をピストン140の直径に合わせざる得ないため、図12に示す位置における、πDpとπdpとの差は大きくなってしまう。
すなわち、単一テーパ面154における周方向の長さ(単一テーパ面周長)πDpは、ピストン140の外周面における周方向の長さ(ピストン外周面周長)πdpよりも長くなるので、ベロフラム150の一部で、ピストン140の外周面に接触しない部分がシワ発生部159となって発生する。
【0009】
このシワ発生部159は、単一テーパ面周長πDpとピストン外周面周長πdpとの周長の差が大きくなるに従い大きなものとなる。また、ベロフラム150の単一テーパ面154に沿ってピストン140の外周面に向けてかかる加圧力は、シワ発生部159における単一テーパ面154とピストン140の外周面との間をなす内部空間内の圧力よりも大きい。
このため、シワ発生部159では、単一テーパ面154に沿って加圧力がかかると、単一テーパ面154の一部は、加圧力により自身同士が互いに重なるまたは近づくように押圧された状態で、ピストン140の外周面付近からピストン140の径方向外側に向けて延出し、径方向の最も外側にある屈曲部位159Bで深く折り曲げられた形態で折り畳まれる。径方向外側に向けて単一テーパ面154が長く延びた形態になると、生成したシワ発生部159の屈曲部位159Bでは、単一テーパ面154は鋭角状に折り曲げられる傾向となり、屈曲部位159Bに過度な曲げ応力がかかることもある。
【0010】
図16に示すように、屈曲部位159Bが形成されている状態で、図15に示すピストン140が上昇すると、図16に示す屈曲部位159Bが、ピストン140に接触する側から、単動空気圧シリンダ130の内壁面に接触する側に移動する。屈曲部位159Bは、この移動により、180度が方向転換されることになる。屈曲部位159Bは、単動空気圧シリンダ130の内壁面側では、内壁面の内径が十分大きいため、屈曲部位159Bは屈曲が解消される。しかし、屈曲部位159Bが、180度方向転換されるときに、屈曲部位159Bが集中応力を受ける。真空開閉弁が駆動される毎に、この集中応力を繰り返し受けるため、ベロフラム150に縦方向の亀裂が発生するのである。
本出願人は、世界中で本発明に係る真空開閉弁を販売しているが、ベロフラム150の耐久性に問題があったが、その原因の究明が難しかった。実験を重ねることにより、上記原因を究明したのである。
【0011】
(2)さらに、ベロフラム150の基布は、図14に示す平織りの網目であり、網目方向の可撓性が低く、ベロフラム150自身が自在に屈曲し難いため、シワ発生部159は、駆動エアの供給時に単一テーパ面154の周囲上に比較的大きなシワとなって局部的に存在する(図16参照)。すると、閉弁する際に、シワ発生部159で山折りされた単一テーパ面154の基布同士が擦れ合い、頂部158からの亀裂がシワ発生部159にまで経時的に成長して、ベロフラム150の基布が破れてしまう。
【0012】
この(1)及び(2)の問題により、エア収容室AS内に供給された駆動エアがベロフラム150を通じて漏れてしまい、真空開閉弁100の開度が制御できなくなる問題があった。このため、ベロフラム150を頻繁に交換しなければならず、耐久性のある真空開閉弁が求められていた。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ピストンの外周面とシリンダの内周面との隙間を、ピストンの動作と共に追従するベロフラムで密閉し、流体によりピストンを駆動させて開閉する真空開閉弁において、耐久性のある真空開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題点を解決するために、本発明の真空開閉弁は、次の構成を有している。
(1)真空容器と真空ポンプとの間に接続し、弁座に対し弁体の開度を変化させて前記真空容器内の真空圧力を制御する真空開閉弁であって、ピストンの外周面とシリンダの内周面との所定の隙間を、ピストンの動作と共に追従するベロフラムで密閉し、流体によりピストンを駆動させて開閉する真空開閉弁であって、ベロフラムのピストンと接触する内周面が所定の第1傾斜角度で形成されていること、ピストンの外周面が、所定の第2傾斜角度で形成されていること、弁体が弁座と当接する位置にあるときに、ベロフラムのピストンと接触する内周径と、ピストンの外周径が等しいこと、を特徴とする。
(2)(1)に記載する真空開閉弁において、前記第1傾斜角度と前記第2傾斜角度が等しいことを特徴する。
【0015】
(3)(1)または(1)に記載する真空開閉弁において、前記ベロフラムは、中心断面の断面形状において、前記ピストンのストローク方向に沿う軸線とのなす角度が異なる傾斜面を2つ備えていること、前記傾斜面のうち、角度の小さな傾斜面の傾斜角度が、前記第1傾斜角度であること、を特徴とする。
(4)(3)に記載の真空開閉弁において、前記ベロフラムは、径方向の周縁に前記シリンダに固定する固定部を有すること、前記テーパ面同士を繋ぐ変曲部は、前記ベロフラムにおける前記軸線方向中央の位置より、前記固定部側に位置すること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)に記載する真空開閉弁のいずれか1つにおいて、前記ベロフラムが、前記弁体と前記ピストンとを接続するロッドの外周と嵌合することにより、前記ベロフラムを位置決めする嵌合孔を備えることを特徴とする。
【0016】
(6)(1)乃至(5)に記載の真空開閉弁のいずれか1つにおいて、前記ベロフラムは、ゴムに、前記ベロラムの面に沿った方向に可撓性のある織り目を有する基布をインサート成形したゴム成形部材からなる、ことを特徴とする。
(7)(6)に記載の真空開閉弁において、前記基布の前記織り目はトリコット織りである、ことを特徴とする。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の真空開閉弁において、前記ベロフラムは、径方向中央部にその厚さ方向に突出する凸部を有し、前記ピストンは、そのボア方向の受圧面に凹設された凹部を有し、前記ベロフラムと前記ピストンとは、前記凸部と前記凹部との嵌合で、同心軸上に位置決めして固着されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
(1)真空容器と真空ポンプとの間に接続し、弁座に対し弁体の開度を変化させて真空容器内の真空圧力を制御する真空開閉弁であって、ピストンの外周面とシリンダの内周面との所定の隙間を、ピストンの動作と共に追従するベロフラムで密閉し、流体によりピストンを駆動させて開閉する真空開閉弁であって、ベロフラムのピストンと接触する内周面が所定の第1傾斜角度で形成されていること、ピストンの外周面が、所定の第2傾斜角度で形成されていること、弁体が弁座と当接する位置にあるときに、ピストンと接触するベロフラムの内周径と、ピストンの外周径が等しいこと、を特徴とするので、真空開閉弁が閉じた状態で、駆動エアがシリンダ内に入れられ、ベロフラムにエア圧がかかったときに、ベロフラムの内周径とピストンの外周径とが等しいため、ベロフラムに屈曲が全く発生することがない。
従来は、ピストンを円筒形状としていたため、ピストン端面に対応する位置におけるベロフラムのピストンと接触する内周径をピストンの外周径より大きくせざるを得なかった。本発明では、ピストンの外周に傾斜面を設けることにより、初めて、真空開閉弁が閉じている位置において、ベロフラム内周径とピストン外周径とを同じ長さとすることが可能となった。
【0018】
(2)また、ベロフラムの第1傾斜角度とピストンの第2傾斜角度を等しくしているので、ピストンがある距離移動したときに、その状態でも、ベロフラムの内周径とピストンの外周径とが等しくなるため、ベロフラムに屈曲が発生することがない。第1傾斜角度が第2傾斜角度より少し大きくても、弁体が弁座と当接する位置にあるときに、ピストンと接触するベロフラムの内周径と、ピストンの外周径が等しいならば、ベロフラムの耐久性は、格段に向上することを、本出願人は実験により確認している。第1傾斜角度と第2傾斜角度とを等しくすれば、さらに、耐久性が向上することを、本出願人は実験により確認している。
【0019】
(3)に記載する本発明の真空開閉弁では、ベロフラムは、ピストンのボア方向から見たときの断面形状において、ピストンのストローク方向に沿う軸線とのなす角度が異なるテーパ面を少なくとも2つ備える形状となっているので、例えば、テーパ面を2つとする場合、上記角度について、第1テーパ角θ1を、従来のベロフラムにおける単一の単一テーパ角θpよりも大きく(θp<θ1)することで、第2テーパ角θ2を単一テーパ角θpよりも小さく(θ2<θp)できる。
この場合、上記軸線に対して第1テーパ角θ1で傾斜した第1テーパ面をシリンダの内周面側に、上記軸線に対して第2テーパ角θ2で傾斜した第2テーパ面をピストンの外周面側に、それぞれ位置する形態にベロフラムを形成することにより、特にベロフラムの第2テーパ面の傾斜角度を、ピストンの外周面のテーパ面の傾斜角度と等しくすることができる。
したがって、ベロフラムは、角度が異なるテーパ面を少なくとも2つ備えているので、真空開閉弁の開閉動作に伴う伸縮性を維持することができると共に、シワに起因して発生する亀裂によりベロフラムが短期に破損することが抑制できる。
【0020】
ところで、当該真空開閉弁が開弁または閉弁するにあたり、ベロフラムのテーパ面が山折り状に折り返されたとき、テーパ面が折り返される部分は、ピストンの駆動に伴ってテーパ面がピストンの上死点または下死点の位置まで伸びた状態のときの、ストローク方向の中央付近に位置する。
(4)に記載する本発明の真空開閉弁では、テーパ面同士を繋ぐ変曲部は、ベロフラムにおける軸線方向中央の位置より固定部側に位置するので、ベロフラムのテーパ面が山折り状に折り返されたときでも、変曲部で折り返されることはない。
当該真空開閉弁が繰り返し開閉しても、ベロフラムのテーパ面のうち、他の部分よりも応力が集中し易い変曲部に、繰り返し折り返すことが行われないので、変曲部で繰り返し折り返すことに起因したベロフラムの劣化(ベロフラムを構成する材料の疲労)の発生が防止できる。
したがって、ベロフラムが早期に損傷することを抑制することができる。
【0021】
また、(5)に記載する真空開閉弁では、前記ベロフラムが、前記弁体と前記ピストンとを接続するロッドの外周と嵌合することにより、前記ベロフラムを位置決めする嵌合孔を備える。
これにより、ロッドを介して、ピストンとベロフラムの位置決めを正確に行うことができる。
【0022】
また、(6)に記載する本発明の真空開閉弁では、ベロフラムは、ゴムに、ベロフラムの面に沿った方向に可撓性のある織り目を有する基布をインサート成形したゴム成形部材からなる。
これにより、ゴムで気密性を、流体の加圧力に抗する強度を基布で持ち合わせながら、ピストンの動作及びピストンの形状に対応して自在に屈曲し易いベロフラムとなる。
【0023】
また、(7)に記載する本発明の真空開閉弁では、ベロフラムにおける基布の織り目がトリコット織りであるので、流体の加圧時に、ベロフラムは、ピストンの動作及びピストンの形状に対応して自在に屈曲し易くなる。
特に、本発明の真空開閉弁では、流体の加圧時に、ベロフラムのテーパ面がピストンの外周面側に膨らんだときには、ベロフラムは、ピストンの外周面の形状に沿うように自在に屈曲易くなる。
このため、本発明の真空開閉弁のベロフラムでは、ピストンのストローク方向の任意位置で、テーパ面の周方向の長さと、ピストンの外周面における周方向の長さとの差により、テーパ面に生じるシワは、従来の真空開閉弁のベロフラムと比して小さくできる。しかも、このシワは、従来の真空開閉弁のベロフラムのように、ベロフラムの単一テーパ面の周囲上で局所的に比較的大きなシワとなって存在せず、従来のベロフラムに生じるシワよりも小さく抑制されて、テーパ面の周囲上に散在するようになる。このため、当該真空開閉弁を開弁または閉弁する際に、シワとなった部分での、山折りされたテーパ面同士の接触を回避し易くなり、基布同士の擦れ合いの発生を抑制することができる。
したがって、たとえテーパ面のうち山折りされた部分で亀裂が発生したとしても、この亀裂の成長により、山折りされたテーパ面の基布同士の擦れ合うことに起因した、ベロフラムの損傷を抑制することができる。
なお、トリコット織りとは、例えば、畝のように、山の部分と谷の部分とが所定方向に交互に連続して配置した形態の糸の織り目である畝織りや、メリヤスの織り目等と同様な形態の織り方であり、織物に柔軟性、弾力性や伸縮性を持たせた織り方である。
【0024】
また、(8)に記載する本発明の真空開閉弁では、ベロフラムは、径方向中央部にその厚さ方向に突出する凸部を有し、ピストンは、そのボア方向の受圧面に凹設された凹部を有し、ベロフラムとピストンとは、凸部と凹部との嵌合で、同心軸上に位置決めして固着されている。
これにより、ベロフラムの径方向中央部とピストンの受圧面との相対的な位置ずれが生じないので、ベロフラムのテーパ面は、ピストンと動作に合わせて、テーパ面の周方向において均等に屈曲したり伸びたりすることができる。このため、ピストンの駆動を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る真空開閉弁を具体化した実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図9は、真空開閉弁10が用いられた構成真空圧力制御システム1の構成を示す概略図である。
真空圧力制御システム1は、半導体製造工程でウエハ8を表面処理するにあたり、ウエハ8を配置した真空チャンバ2内にプロセスガスとバージガスとを交互に給気・排気させる真空圧力制御システムである。この真空圧力制御システム1は、図9に示すように、真空チャンバ2(真空容器)、真空ポンプ5、駆動エアARを供給するエア供給源6、真空開閉弁10、この真空開閉弁10の弁開度VLを制御するサーボ弁(図示しない)、及び、真空開閉弁10等と電気的に接続する真空圧力制御装置7等から構成されている。
真空チャンバ2のガス給入口2aには、真空チャンバ2内に配置したウエハ8に表面処理をするときに用いるプロセスガスの供給源と、真空チャンバ2内のプロセスガスをパージするのに用いる窒素ガスの供給源とが並列に接続している。
一方、真空チャンバ2のガス排気口2bには、真空開閉弁10と、遮断弁4を介してチャンバ用圧力センサ3とが並列に接続している。チャンバ用圧力センサ3は、真空圧力制御装置7と電気的に接続しており、真空チャンバ2内のプロセスガス等の真空圧力を計測する。また、真空開閉弁10は真空ポンプ5とも接続している。
【0026】
真空開閉弁10について、図1〜図6を用いて説明する。
図1は、本実施形態の真空開閉弁10に構成されたベロフラム50をピストン40のボア方向BRから見たときの断面図で示す説明図である。図2は、ベロフラム50をなすゴム成形部材51の構成を説明するための説明図であり、図1中、一点鎖線内を拡大して示した断面図である。図3は、図2に示すゴム成形部材51のうち、基布51Bの織り目を説明する説明図である。図4は、真空開閉弁10の構成を説明する説明図であり、閉弁状態を示す図である。図5は、図1に示す真空開閉弁10の開弁状態を示す図である。図6が、図4におけるP部の拡大図である。
本実施形態の真空開閉弁10は、エア供給源6から図示しないサーボ弁を通じてエア収容室AS内に供給される駆動エアARにより、弁開度VLを変化させて、真空チャンバ2内のプロセスガス等の真空圧力を制御する真空開閉弁として用いられている。
この真空開閉弁10は、その軸線AX方向、すなわちポペット弁体76が開閉する弁シフト方向(図4及び図5中、上下方向)のうち、開弁側(図4及び図5中、上方)に位置するパイロットシリンダ部20、及び、閉弁側(図4及び図5中、下方)に位置するベローズ式ポペット弁部70からなる。
【0027】
パイロットシリンダ部20は、さらに単動空気圧シリンダ30、シリンダ支持部32、エア収容室AS、ピストン40、復帰バネ47及びベロフラム50等からなる。
真空開閉弁10では、駆動エアARがエア収容室ASに供給されると、ピストン40は、単動空気圧シリンダ30内をそのシリンダ内周面31と非接触で、軸線AX方向に沿うストローク方向STに駆動するようになっている。ピストン40の外周面41のピストン外周径dpは、単動空気圧シリンダ30のシリンダ内周面31の径より所定の大きさだけ小さくなっている。このピストン40の受圧面43には、ストローク方向STに環状の凹部44が凹設されている。このピストン40の外周面41と単動空気圧シリンダ30のシリンダ内周面31との間にある所定の隙間45は、後に詳述するように、図1に示すベロフラム50によって密閉され、エア収容室AS内の気密性が確保されるようになっている。
なお、ピストン40は、単動空気圧シリンダ30のシリンダ内周面31と非接触で駆動するので、ピストン40のスティックスリップが発生せず、ピストン40は、高い応答性と正確な位置精度で単動空気圧シリンダ30内を駆動することができる。
【0028】
このピストン40は、復帰バネ47により弁シフト方向の閉弁側に付勢されている。駆動エアARがエア収容室ASに供給されないとき、ピストン40は、復帰バネ47による付勢力により、下死点に位置する(図4参照)。その一方、駆動エアARがエア収容室ASに供給されると、ピストン40は、復帰バネ47による付勢力に抗して、弁シフト方向の開弁側に移動する(図5参照)。
また、真空開閉弁10には、ピストン40が弁シフト方向に移動したとき、ピストン40が下死点の位置から上死点に向けて変位した分のピストン40の変位量、すなわち真空開閉弁10の開弁度VLを非接触で計測する変位センサ81が設けられている(図4及び図5参照)。この変位センサ81は、真空圧力制御装置7と電気的に接続している。
【0029】
ベロフラム50は、ゴム51Aに、図3に示すトリコット織りの織り目を有する基布51Bをインサート成したゴム成形部材51からなるベロフラムである(図1及び図2参照)。なお、トリコット織りとは、図3に示すように、例えば、畝のように、山の部分と谷の部分とが所定方向に交互に連続して配置した形態の糸の織り目である畝織りや、メリヤスの織り目等と同様な形態の織り方であり、織物に柔軟性、弾力性や伸縮性を持たせた織り方である。
ベロフラム50は、エア収容室AS内に駆動エアARが供給されると、ピストン40の受圧面43における有効受圧面積を一定不変に保持するように伸縮できるようになっている。このベロフラム50は、ゴム成形部材51で構成することにより、エア収容室ASに供給された駆動エアARによる加圧力に抗する強度を基布51Bに、気密性をゴム51Aに、それぞれ持たせている。このゴム成形部材51に用いられるゴム51Aとしては、例えば、天然ゴムのほか、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エーテル−チオエーテルゴム、多硫化系ゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等の合成ゴムが挙げられる。また、基布51Bとしては、例えば、ポリアミド(6ナイロン、66ナイロン等)、アラミド、ポリエステル、綿等の糸を、トリコット織りの織り目のように、ベロフラム50(ゴム成形部材51)の表面51a、51bに沿った方向に可撓性を有する織り目で織り上げたものが挙げられる。
【0030】
ベロフラム50は、本実施形態では、図1に示すように、ピストン40のボア方向BR(図4及び図5中、左右方向)から見たときの断面形状において、ピストン40のストローク方向ST方向(図4及び図5中、上下方向)に沿う軸線AXとのなす角度が互いに異なる2つの第1テーパ面55A、第2テーパ面55Bを備えている。また、このベロフラム50は、径方向(ピストン40のボア方向BR)の外周縁に位置する環状のフランジ部54(固定部)、及び、このフランジ部54との間に第1,第2テーパ面55A,55Bを挟んで径方向中央に位置する中央部52(径方向中央部)を有している。
第1テーパ面55Aは、フランジ部54の径方向内側の傾斜起点部位54Sより折り返
された傾斜面で、軸線AXと平行な仮想線Mとのなす角度を第1傾斜角θ1(0<θ1<90°)とする環状の傾斜面となっている。第2テーパ面55Bは、この仮想線Mとのなす角度を第2傾斜角θ2(0<θ2<θ1)とする環状の傾斜面となっている。第1テーパ面55Aと第2テーパ面55Bとは、変曲部56で連続して繋がっており、この変曲部56は、図1に示す状態のベロフラム50において、その軸線AX方向の中央位置よりフランジ部54側に位置している。この変曲部56がこのような位置にある理由として、真空開閉弁100が閉弁するに際に、ベロフラム50の第2テーパ面55Bは、ピストン40が上死点の位置まで移動しこの移動に伴って第2テーパ面55Bがピストンの上死点の位置まで伸びた状態になったときの、ストローク方向STの中央付近の位置で、山折り状に折り返されるからである。
また、中央部52は、ピストン40のボア方向BR(図4及び図5中、左右方向)に沿う方向に第2テーパ面55Bから連続して繋がっている。この中央部52には、後述するピストンロッド48を挿通する貫通孔57が穿孔されており、中央部52の厚さ方向(図1中、上下方向)に突出する凸部53が貫通孔57の周囲に環状に凸設されている。貫通孔57の大きさは、ロッド47の外周と嵌合するように、高い精度で形成されている。
【0031】
ベロフラム50は、図6に示すように、その凸部53をピストン40の凹部44内に嵌め合わせることで、ピストン40と位置決めされている。このベロフラム50は、その中央部52をピストン40の受圧面42に当接させた状態で、この中央部52をピストン40と板状の固定具46との間に挟み込み、ピストン40と固定具46とのねじ結合により固定されている。
また、このベロフラム50のフランジ部54は、フランジ保持部32で単動空気圧シリンダ30及びシリンダ支持部32に挟んで固着されている。
【0032】
真空開閉弁10では、ピストン40が下死点の位置にあるとき、すなわち駆動エアARがエア収容室ASに供給されていないとき、ベロフラム50のフランジ部54と中央部52とがストローク方向STのほぼ同じ位置になる(図4参照)。すると、図4、図6及び図7に示すように、第2テーパ面55Bは、ピストン40とシリンダ30との隙間45で、頂部58で山折り状に折り返される。
一方、駆動エアARがエア収容室ASに供給されると、第2テーパ面55Bは、図6及び図7に示すように、頂部58で山折りされた状態で、図7に二点差線で示すように、単動空気圧シリンダ30のシリンダ内周面31とピストン40の外周面41に沿うように膨らみながら、ピストン40のストローク方向ST方向の上死点側(図6及び図7中、上方)に向けて伸び、図5に示す状態にまで伸びる。
このように、ベロフラム50は、フランジ部54をフランジ保持部32で、中央部52をピストン40の受圧面42に、それぞれ固着した状態で、第1,第2テーパ面55A,55Bをピストン40とシリンダ30との隙間45に位置させて、ピストン40の駆動に追従して折り畳まれたり伸びたりしながら、この隙間45を密閉している。
【0033】
図6は、図4の部分拡大図であり、図4は、Oリング79が弁座73と完全に当接した弁閉状態を示している。従って、図7は、弁閉状態におけるベロフラム50の形状を示している。
Oリング79が弁座73に完全に当接している弁閉状態において、駆動エアARを供給すると、ベロフラム50は、図7の2点鎖線で示すような位置となり、ベロフラム50が、ピストン40と接触する点が少し変化する。本発明では、ベロフラム50が、ピストン40と接触する位置(高さL1で示す位置、すなわち、図7の2点鎖線で示すベロフラム50がピストン40と接触する上端位置)におけるベロフラム50の内周径をW2としている。
一方、ピストン40の断面図を図7に示す。ピストン40の外形は、先端部がθの角度を持つ先細りのピストンテーパ面40aを形成している。この角度θは、ベロフラム50の第2テーパ角θ2と等しくしている。ピストンテーパ面40aは、全体の下半分くらい形成されている。上半分は、ベロフラム50と接触することがないから、テーパとする必要がないのである。
【0034】
すなわち、W1は、Oリング97が弁座73に当接した弁閉状態において、駆動エアARを供給した時の、ピストンの外周がベロフラム50と接触している上端での、ピストンの外周径である。
W2は、Oリング97が弁座73に当接した弁閉状態において、駆動エアARを供給した時の、ベロフラム50がピストン40と接触している上端での、ベロフラム50のピストン40と接触している内周径である。
図7に示すように、ピストン先端からL1の距離の位置における、ピストン40の外周径をW1としている。ピストン先端からL1の距離は、図7の2点鎖線で示すベロフラム50において、ベロフラム50がピストン40と接触している上端位置である。
ここで、図4に示す弁閉状態において、ベロフラム50のW2と、ピストン40のW1とを等しい長さとしている。
【0035】
次に、ベローズ式ポペット弁部70について説明する。
このベローズ式ポペット弁部70は、弁本体71、ベローズ75、ポペット弁体76、Oリング保持部材77及びOリング79等からなる。
ピストン40の径方向中央部には、ピストンロッド48が連結しており、このピストンロッド48とピストン40との間はOリング49でシールされている。このピストンロッド48は、ベローズ式ポペット弁部70に向けて延伸してピストンロッド48の開弁側端部でポペット弁体76と連結しており、ポペット弁体76は、ピストン40のストローク方向STの駆動に伴って、ピストン40と共に弁シフト方向に動くようになっている。ベローズ75は、軸線AX方向の一端側(図4及び図5中、上方)にある端部を固定し、他端側をポペット弁体76に取り付けて、ピストンロッド48の径方向外側を覆う形態で、ポペット弁体76の弁シフト方向の駆動に伴って伸縮するように取付られている。
【0036】
ポペット弁体76とOリング保持部材77とは、ポペット弁体76の閉弁側(図4及び図5中、下方)で固着され、ポペット弁体76及びOリング保持部材77によって形成された環状のOリング取付部78が設けられている。Oリング79は、Oリング取付部78に配設され、弁本体71の弁座73と接触可能となっている。この弁本体71は、真空ポンプ5に接続する第1ポート72、及び、真空チャンバ2のガス排気口2bに接続する第2ポート74を有している。
真空開閉弁10では、駆動エアARがエア収容室ASに供給されないときには、ピストン40は、復帰バネ47による付勢力により下死点に位置するため、ピストン40と連結するポペット弁体76は、Oリング79を介して弁座73を押圧する。これにより、ポペット弁体76で第1ポート72を塞いで真空開閉弁10は閉弁(弁開度VL=0)する。
一方、駆動エアARがエア収容室ASに供給されると、ピストン40は、復帰バネ47による付勢力に抗して、弁シフト方向の開弁側に移動するため、Oリング79と共にポペット弁体76も開弁側に移動し、弁座73から離れる。これにより、真空開閉弁10は開弁(弁開度VL>0)し、第1ポート72と第2ポートとが連通する。真空開閉弁10が開弁すると、真空ポンプ5は、真空チャンバ2内にあるプロセスガスまたは窒素ガスを吸引することができるようになる。
【0037】
本実施形態の真空開閉弁10では、ベロフラム50は、ピストン40のボア方向BRから見たときの断面形状において、軸線AXとのなす角度が第1傾斜角θ1である第1テーパ面55A、及び、第2傾斜角θ2である第2テーパ面55Bを備えた形状となっている。
ここで、ベロフラム50における軸線AXに沿う仮想線Mと第1,第2テーパ面55A,55Bとの間の第1,第2テーパ角θ1,θ2について、本実施形態の真空開閉弁10のベロフラム50と従来の真空開閉弁100のベロフラム150とを比較して考察する。
真空開閉弁10では、前述したように、第1テーパ面55Aと軸線AX(仮想線M)とのなす角は第1テーパ角θ1(0<θ1<90°)である。また、第2テーパ面55Bと軸線AX(仮想線M)とのなす角は第2テーパ角θ2(0<θ2<θ1)であるので、第2テーパ面55Bにおいて、軸線AXに沿う方向の任意位置における径方向の長さを第2テーパ面径長D2、この位置における周方向の長さは第2テーパ面周長πD2となる。
一方、従来の真空開閉弁100では、ベロフラム150における単一テーパ面154は単一であるので、この単一テーパ面154とベロフラム150の軸線AXに沿う仮想線Nとのなす角は単一テーパ角θp(0<θp<90°)である(図14参照)。これにより、単一テーパ面154において、ピストンのストローク方向の任意位置における径方向の長さは単一テーパ面径長Dp、この位置における周方向の長さは単一テーパ面周長πDpとなる(図16参照)。
【0038】
本実施形態の真空開閉弁10では、第1テーパ角θ1を単一テーパ角θpよりも大きく(θp<θ1)することで、第2テーパ角θ2は、単一テーパ角θpよりも小さく(θ2<θp)できる。つまり、第1テーパ角θ1、第2テーパ角θ2及び単一テーパ角θpの大きさについて、θ2<θp<θ1…式(1)の関係が成り立つ。この真空開閉弁10のベロフラム50は、この式(1)に基づいて、軸線AXに対して第1テーパ角θ1で傾斜した第1テーパ面55Aを単動空気圧シリンダ30のシリンダ内周面31側に、軸線AXに対して第2テーパ角θ2で傾斜した第2テーパ面55Bをピストン40の外周面41側に、それぞれ位置する形態に成形されている。
一方、ピストン40のピストンテーパ面40aは、ベロフラム50の第2テーパ面55Bと同じ傾斜角度で形成されている。図7に示すように、Oリング79が弁座73に完全に当接している弁閉状態において、駆動エアARを供給したときに、ベロフラム50が図7の2点鎖線で示すような位置となる。そのとき、ベロフラム50とピストン40の接触する上端において、ベロフラム50のピストン40と接触する内周径W2と、ベロフラム50と接触するピストン40の外周径W1とが等しくしているので、駆動エアARを入れたときに、ベロフラム50とピストン40とは、図9に示すように、ぴったりと密着した状態となり、屈曲が全く発生しない。
その後、ベロフラム50が、ピストン40と接触する点が変化するが、ピストン40のピストンテーパ面40aは、ベロフラム50の第2テーパ面55Bと同じ傾斜角度で形成されているので、常に、ベロフラム50とピストン40とが密着した状態を保持する。
【0039】
このようなシワ発生部59が、従来のベロフラム150に生じたシワ発生部159と比較して、全く発生しないので、ピストン40が移動した時に、応力集中が発生することがなく、何度繰り返しても、従来のようなピストン40の移動方向に亀裂が発生することができることがない。本出願人は、繰り返しテストで確認したが、従来の数十倍の繰り返し回数を実験しても、従来のような亀裂が全く発生しないことを確認した。
【0040】
以上、詳細に説明したように、本実施の形態の真空開閉弁によれば、真空容器2と真空ポンプ5との間に接続し、弁座73に対し弁体であるOリング79の開度を変化させて真空容器2内の真空圧力を制御する真空開閉弁10であって、ピストン40の外周面とシリンダ30の内周面31との所定の隙間を、ピストン40の動作と共に追従するベロフラム50で密閉し、流体によりピストン40を駆動させて開閉する真空開閉弁10であって、ベロフラム50が所定の傾斜角度θ2で形成されていること、ピストン40の外周が、ベ所定の傾斜角度θで形成されていること、弁体が弁座と当接する位置にあるときに、ピストンと接触するベロフラムの内周径と、ピストンの外周径が等しいこと、を特徴とするので、真空開閉弁が閉じた状態で、駆動エアがシリンダ内に入れられ、ベロフラムにエア圧がかかったときに、ベロフラムの内周径とピストンの外周径とが等しいため、ベロフラムに屈曲が全く発生することがない。
従来は、ピストンを円筒形状としていたため、ピストン端面に対応する位置におけるベロフラムのピストンと接触する内周径をピストンの外周径より大きくせざるを得なかった。本発明では、ピストンの外周に傾斜面を設けることにより、初めて、真空開閉弁が閉じている位置において、ベロフラム内周径とピストン外周径とを同じ長さとすることが可能となった。
【0041】
また、ベロフラム40のピストン40と接触する内周面の第1傾斜角度θ2と、ピストン40の第2傾斜角度θを等しくしているので、ピストン40がある距離移動したときに、その状態でも、ベロフラム40のピストン40と接触する内周径とピストン40の外周径とが等しくなるため、ベロフラム50に屈曲が発生することがない。
第1傾斜角度θ2が第2傾斜角度θより少し大きくても、弁体であるOリング97が弁座73と当接する位置にあるときに、ピストン40と接触するベロフラム50の内周径と、ピストン40の外周径が等しいならば、ベロフラム50の耐久性は、格段に向上することを、本出願人は実験により確認している。第1傾斜角度θ2と第2傾斜角度θとを等しくすれば、さらに、耐久性が向上することを、本出願人は実験により確認している。
【0042】
また、ベロフラム50は、第1テーパ面55A及び第2テーパ面55Bの2つを備えているので、真空開閉弁10の開閉動作に伴う伸縮性を維持することができると共に、シワに起因して発生する亀裂によりベロフラム50が短期に破損することが抑制できる。
また、真空開閉弁10では、第1テーパ面55A及び第2テーパ面55B同士を繋ぐ変曲部56は、ベロフラム50における軸線AXの中央位置より、フランジ部54側に位置するので、ベロフラム50の第2テーパ面55Bが山折り状に折り返されたときでも、変曲部56で折り返されることはない。
当該真空開閉弁10が繰り返し開閉しても、ベロフラム50の第1,第2テーパ面55A,55Bのうち、他の部分よりも応力が集中し易い変曲部56に、第2テーパ面55Bの折り返しが繰り返し行なわれないので、変曲部56で繰り返し折り返すことに起因したベロフラム50の劣化(ゴム成形部材51の材料疲労)の発生が防止できる。
したがって、ベロフラム50が早期に損傷することを抑制することができる。
【0043】
また、本実施例の真空開閉弁10では、ベロフラム50が、弁体であるOリング79を保持するポペット弁体76とピストン40とを接続するロッド48の外周と嵌合することにより、ベロフラム50をピストン40に対して位置決めする嵌合孔57を備えているので、ベロフラム50を容易かつ正確にピストン40に位置決めすることができる。
また、真空開閉弁10では、ベロフラム50は、インサート成形により、ゴム51Aに、ベロフラム50の表面51aに沿った方向に可撓性のあるトリコット織りの織り目を有する基布51Bを埋設したゴム成形部材51からなる。
これにより、ゴム51Aで気密性を、駆動エアARの加圧力に抗する強度を基布51Bで持ち合わせると共に、ピストン40の動作及びピストン40の外周面41の形状に合わせて自在に屈曲し易いベロフラム50となる。
特に、本実施形態の真空開閉弁10では、ベロフラム50における基布51Bの織り目はトリコット織りであるので、駆動エアARの供給時に、ベロフラム50の第2テーパ面55Bがピストン40の外周面41に沿って膨らんだときには、ベロフラム50は、ピストン40の外周面41の形状に沿うように屈曲易くなる。
また、真空開閉弁10では、ベロフラム50とピストン40とは、凸部53と凹部44との嵌合で、同心軸上に位置決めして固着されている。
これにより、ベロフラム50の中央部52とピストン40の受圧面43との相対的な位置ずれが生じないので、ベロフラム50の第1,第2テーパ面55A,55Bは、ピストン40と動作に合わせて、第1,第2テーパ面55A,55Bの周方向において均等に屈曲したり伸びたりすることができる。このため、ピストン40の駆動を適切に行うことができ、ベロフラム50でピストン40の外周面41と単動空気圧シリンダ30のシリンダ内周面31との隙間45を適切な状態で密閉することができる。
【0044】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいう
までもない。
例えば、本実施形態では、ピストン40の凹部44を受圧面43に、及びベロフラム50の凸部53を中央部52に、いずれも環状の形態で設けた。しかしながら、ピストンの凹部及びベロフラムの凸部は、ピストンの凹部とベロフラムの凸部との嵌合により両者が位置決めされる形態であれば良く、ピストンに凹部をベロフラムに凸部を配設する位置や、凹部及び凸部の形態は、適宜変更可能である。
また、本実施形態では、ベロフラム50において、傾斜起点部位54Sと変曲部56との間を、仮想線Mとのなす角度を第1傾斜角θ1とする環状の第1テーパ面55Aとした。しかしながら、ベロフラムのうち、固定部とテーパ面との間にある面形状を、ピストンのボア方向から見たときの断面形状で、円弧形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態の真空開閉弁の構成されたベロフラムを示す断面図である。
【図2】本実施形態のベロフラムをなすゴム成形部材を説明するための説明図である。
【図3】本実施形態のベロフラムのうち、基布の織り目を説明する説明図である。
【図4】本実施形態の真空開閉弁の構成を説明する説明図であり、閉弁状態を示す図である。
【図5】本実施形態の真空開閉弁の構成を説明する説明図であり、開弁状態を示す図である。
【図6】図4中、P部の拡大図である。
【図7】図6中、Q部を示す図であり、ピストンの外周面とシリンダの内周面との隙間の様子を拡大して示す説明図である。
【図8】ピストン40の形状を示す断面図である。
【図9】図6のA−A矢視断面図であり、加圧時におけるベロフラムの形態を説明するための説明図である。
【図10】本実施形態の真空開閉弁を有する真空圧力制御システムの構成を説明する説明図である。
【図11】従来の真空開閉弁の構成を説明する説明図である。
【図12】図11中、R部の拡大図である。
【図13】従来のベロフラムを示す断面図である。
【図14】従来のベロフラムのうち、基布の織り目を説明する説明図である。
【図15】従来のベロフラムを示す断面図であり、加圧時におけるベロフラムの形態を説明するための説明図である。
【図16】図15のB−B矢視断面図である。
【符号の説明】
【0046】
2 真空チャンバ(真空容器)
5 真空ポンプ
10 真空開閉弁
31 シリンダ内周面
ST ストローク方向
41 外周面
43 受圧面
44 凹部
45 隙間
46 固定具
50 ベロフラム(ダイアフラム)
51 ゴム成形部材
51a、51b 表面
51A ゴム51
51B 基布51
52 中央部(径方向中央部)
53 凸部
54 フランジ部
54S 傾斜起点部位
56 変曲部
AR 駆動エア(流体)
AX 軸線
BR ボア方向
W1 Oリング97が弁座73に当接した弁閉状態において、駆動エアARを供給した時の、ピストンの外周がベロフラム50と接触している上端での、ピストンの外周径
W2 Oリング97が弁座73に当接した弁閉状態において、駆動エアARを供給した時の、ベロフラム50がピストン40と接触している上端での、ベロフラム50のピストン40と接触している内周径
θ1 第1テーパ角
θ2 第2テーパ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と真空ポンプとの間に接続し、弁座に対し弁体の開度を変化させて前記真空容器内の真空圧力を制御する真空開閉弁であって、ピストンの外周面とシリンダの内周面との所定の隙間を、ピストンの動作と共に追従するベロフラムで密閉し、流体によりピストンを駆動させて開閉する真空開閉弁において、
前記ベロフラムの前記ピストンと接触する内周面が所定の第1傾斜角度で形成されていること、
前記ピストンの外周面が、所定の第2傾斜角度で形成されていること、
前記弁体が前記弁座と当接する位置にあるときに、前記ベロフラムの前記ピストンと接触する内周径と、前記ピストンの外周径が等しいこと、
を特徴とする真空開閉弁。
【請求項2】
請求項1に記載する真空開閉弁において、
前記第1傾斜角度と、前記第2傾斜角度が等しいことを特徴とする真空開閉弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する真空開閉弁において、
前記ベロフラムは、中心断面の断面形状において、前記ピストンのストローク方向に沿う軸線とのなす角度が異なる傾斜面を2つ備えていること、
前記傾斜面のうち、角度の小さな傾斜面の傾斜角度が、前記第1傾斜角度であること、
を特徴とする真空開閉弁。
【請求項4】
請求項3に記載の真空開閉弁において、
前記ベロフラムは、径方向の周縁に前記シリンダに固定する固定部を有すること、
前記傾斜面同士を繋ぐ変曲部は、前記ベロフラムにおける前記軸線方向中央の位置より、前記固定部側に位置すること、
を特徴とする真空開閉弁。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載する真空開閉弁のいずれか1つにおいて、
前記ベロフラムが、前記弁体と前記ピストンとを接続するロッドの外周と嵌合することにより、前記ベロフラムを位置決めする嵌合孔を備えることを特徴とする真空開閉弁。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の真空開閉弁のいずれか1つにおいて、
前記ベロフラムは、ゴムに、前記ベロフラムの面に沿った方向に可撓性のある織り目を有する基布をインサート成形したゴム成形部材からなる、ことを特徴とする真空開閉弁。
【請求項7】
請求項6に記載の真空開閉弁において、
前記基布の前記織り目はトリコット織りである、ことを特徴とする真空開閉弁。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の真空開閉弁において、
前記ベロフラムは、径方向中央部にその厚さ方向に突出する凸部を有し、
前記ピストンは、そのボア方向の受圧面に凹設された凹部を有し、
前記ベロフラムと前記ピストンとは、前記凸部と前記凹部との嵌合で、同心軸上に位置決めして固着されている、ことを特徴とする真空開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−74681(P2009−74681A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126832(P2008−126832)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】