説明

真贋判定支援装置、真贋判定装置、及びプログラム

【課題】真贋の高精度な判定に寄与する真贋判定支援装置、真贋判定装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】ランダムパターンを有する固有の特徴を表面に備えた用紙Pの表面の予め定められた領域20に対して交差するように配置されてランダムパターンを含む予め定められた領域20に対応する鏡像を生成する鏡面体18と、予め定められた領域20及び鏡面体18で生成された鏡像を特定の撮影面に撮影するカメラ16と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定支援装置、真贋判定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物品表面を照明する光の方向及び撮像方向の少なくとも一方を異ならせて物品表面の再現不能な微細な特徴を含む特徴画像を同一撮像範囲について複数個撮像する撮像手段と、撮像手段によって基準の物品表面の特徴画像が複数個撮像されたときに、撮像された複数個の特徴画像または撮像された複数個の特徴画像に含まれる特徴を示す特徴情報を複数個の特徴画像毎に登録する登録手段と、撮像手段によって確認対象の物品表面の特徴画像が基準の物品を撮像したときと同じ条件で複数個撮像されたときに、撮像された複数個の特徴画像の各々と登録された基準の物品の複数個の特徴画像の各々とを比較した比較結果、又は撮像された複数個の特徴画像に含まれる特徴の各々との比較結果に基づいて、確認対象の物品が、登録された基準の物品であるか否かを判定する判定手段と、を含む物品確認装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−34747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、真贋の高精度な判定を簡易に実現する、真贋判定支援装置、真贋判定装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の真贋判定支援装置を、無作為性を有する固有の特徴を表面に備えた固体の該表面における前記特徴を含む定められた領域に対応する鏡像を生成する鏡面体と、前記領域及び前記鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する撮影手段と、を含んで構成した。
【0006】
請求項1に記載の真贋判定支援装置を、請求項2に記載の発明のように、前記特徴の陰影が形成されるように前記領域を照明する照明手段を更に含み、前記鏡面体を、前記陰影を含む前記領域に対応する鏡像が生成されるように配置したものとしても良い。
【0007】
請求項2に記載の真贋判定支援装置を、請求項3に記載の発明のように、前記照明手段を、更に、前記鏡面体を直接照明しない位置に配置したものとしても良い。
【0008】
請求項4に記載の真贋判定支援装置を、無作為性を有する固有の特徴を表面に備えた固体の該表面における前記特徴を含む定められた領域に対応する鏡像を生成する複数の鏡面体と、前記領域及び前記複数の鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する撮影手段と、を含んで構成した。
【0009】
請求項4に記載の真贋判定支援装置を、請求項5に記載の発明のように、前記特徴の陰影が形成されるように前記領域を照明する照明手段を更に含み、前記複数の鏡面体を、前記陰影を含む前記領域に対応する鏡像が生成されるように配置したものとしても良い。
【0010】
請求項5に記載の真贋判定支援装置を、請求項6に記載の発明のように、前記照明手段を、更に、前記複数の鏡面体を直接照明しない位置に配置したものとしても良い。
【0011】
請求項7に記載の真贋判定装置を、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を含み、前記撮影手段が、真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影し、前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段を含んで構成した。
【0012】
請求項8に記載の真贋判定装置を、請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を含み、前記撮影手段は、真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記複数の鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影し、前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段を含んで構成した。
【0013】
請求項7又は請求項8に記載の真贋判定装置を、請求項9に記載の発明のように、前記撮影手段によって撮影されて得られた画像に含まれる前記鏡像を示す画像の歪みを補正する補正手段を更に含み、前記出力手段が、前記補正手段によって補正された画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力するものとしても良い。
【0014】
請求項10に記載のプログラムを、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を有する真贋判定装置を制御するコンピュータを、真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段として機能させるためのものとした。
【0015】
請求項11に記載のプログラムを、請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を有する真贋判定装置を制御するコンピュータを、真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記複数の鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段として機能させるためのとした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、請求項4、請求項7、請求項8、請求項10、及び請求項11に係る発明によれば、固体の表面の定められた領域及びこの領域に対応する鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する構成を有しない場合に比べ、真贋の高精度な判定が簡易に実現される、という効果が得られる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、固体の表面の特徴の陰影が形成されるように固体の表面の定められた領域を照明し、陰影を含む領域に対応する鏡像が生成されるように鏡面体を配置する構成を有しない場合に比べ、真贋の高精度な判定が簡易に実現される、という効果が得られる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、鏡面体を直接照明しない位置に照明手段を配置する構成を有しない場合に比べ、真贋の高精度な判定に寄与する、という効果が得られる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、固体の表面の特徴の陰影が形成されるように固体の表面の定められた領域を照明し、陰影を含む領域に対応する鏡像が生成されるように複数の鏡面体を配置する構成を有しない場合に比べ、真贋の高精度な判定が簡易に実現される、という効果が得られる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、複数の鏡面体を直接照明しない位置に照明手段を配置する構成を有しない場合に比べ、真贋の高精度な判定に寄与する、という効果が得られる。
【0021】
請求項9に係る発明によれば、撮影手段によって撮影されて得られた画像に含まれる鏡像を示す画像の歪みを補正する補正手段を有しない場合に比べ、真贋が高精度に判定される、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態に係る真贋判定装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態に係る真贋判定装置を用いた真贋の判定対象とされる用紙の構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】光源によって用紙の表面の予め定められた領域に光が照射された状態の一例を示す模式図であり、(A)は予め定められた領域を側方から見た状態を示し、(B)は予め定められた領域を上方から見た状態を示す。
【図4】実施の形態に係る真贋判定装置の電気系の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】実施の形態に係るマスターデータ登録処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係る特徴情報抽出処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態に係る真贋判定装置のカメラによって撮影されて得られた特徴画像に対して量子化・標本化を実施して得た特徴画像の一例を示す模式図である。
【図8】実施の形態に係る真贋判定処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る鏡面体の配置に係る変形例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための実施の形態の一例について詳細に説明する。
【0024】
[ランダムパターン]
まず、本実施の形態を説明するのに先立ち、固体の物品自体が元来有している無作為性を有する特徴、すなわち、再現不能な微細な凹凸の特徴(以下、ランダムパターンと称す)について説明する。
【0025】
例えば、不織布では、繊維が複雑に絡み合ってできたものであり、この繊維によるパターンは二つとない固有の存在である。すなわち、不織布から繊維によるランダムパターンが観測される。また、紙も植物繊維が複雑に絡み合って作られるため、不織布のように紙からも紙毎に固有のランダムパターンが観測される。
【0026】
また、カーボン充填した黒色のゴム表面、ICパッケージ用のセラミック表面、金属微粒子分散のUV硬化型塗料の塗膜(所謂ラメ塗装)表面からも、表面の微小なクラックや材料の微粒子等によってランダムパターンが観測される。また、ステンレス鋼材表面からもヘアライン処理やサンドブラスト処理等、表面仕上げ時に作られたランダムパターンが観測される。また、皮革も自然の状態でその表面にランダムな皺が形成されているため、この皺がランダムパターンとして観測される。
【0027】
このように、ランダムパターンは各種の物品から観測される。このランダムパターンは、意図的に作ったものではなく、物品そのものの成り立ち、製造工程、或いは製造後などで不作為にできたものであり、そのパターンが全く同じである物品が複数存在するとは考え難い。また、同一のものを故意に作り出すことは困難と思われる。すなわち、同一の工程を経て製造・物流された物品であっても、微視的には、物品ごとにランダムパターンが異なる。特に、上述したようなランダムパターンは、顕微鏡レベルの微細なパターンであり、これを偽造することは容易ではない。また、ゴム表面や皮革表面、或いは不織布といった形状が変化し易い軟らかい素材のランダムパターンも、外力が加わらない状態では安定である。
【0028】
本実施の形態は、上記のような物品が元来有するランダムなパターンを、各物品の真贋を判定するための情報として利用するものである。このような微細なランダムパターンの読み取りには、触針法、電子顕微鏡観察法等幾つかの方法が考えられるが、物品保護の観点から未処理、非破壊であることが望ましい。光を利用する方法はこの点で優れている。以下、光を利用してランダムパターンを読み取って、物品の真贋を判定する真贋判定装置について説明する。
【0029】
[全体構成]
本実施の形態に係る真贋判定装置10(図1及び図2参照)は、マスターデータ登録機能及び真贋判定機能を有している。マスターデータ登録機能は、登録対象の物品表面のランダムパターンを含む予め定められた領域を撮影領域として撮影し、撮影して得た画像(以下、特徴画像と呼称)から物品表面のランダムパターンの特徴を示す特徴情報を抽出して真贋の判定に供する基準対象物品に関するマスターデータとして登録する機能である。真贋判定機能は、真贋の判定対象の物品の表面を撮影し、撮影して得た特徴画像から物品表面のランダムパターンの特徴を示すサンプルデータとしての特徴情報を抽出して、予め登録されているマスターデータとしての特徴情報と比較することにより物品の真贋を判定する機能である。なお、ここで言う物品表面のランダムパターンとは、外部から撮影される物品の再現不能な微細な特徴をいう。例えば、外側が下層の微細な特徴が撮影される程度に透明な保護膜で覆われている物品の場合には、透明な保護膜自体に現れている再現不能な微細な特徴と、透明な保護膜の下層に現れている再現不能な微細な特徴の双方の特徴を含む。具体的に例示すると、現在金融機関等で広く使用されているキャッシュカードやクレジットカード等のカードが挙げられる。このカードには、例えばラメ状の微細な地紋が現れた塗装の上に、ハードコート等の透明層が固着されているタイプのものがある。従って、このような物品の場合には、保護膜自体に現れた凹凸等の微細なランダムパターンと、保護膜の下層の微細な地紋(ランダムパターン)との双方が含まれる。
【0030】
本実施の形態では、真贋判定対象の物品として、用紙P(図1参照)を例に挙げて説明するが、これに限らず、例えばプラスチックカードにテープ状(ストライプ)の磁気記録媒体を貼り付けたキャッシュカードやクレジットカード等の磁気カード(以下、カード)などの物品として流通する固体であれば如何なるものであっても良い。
【0031】
図1は、本実施の形態に係る真贋判定装置10の構成の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、真贋判定装置10は、内部に光密な空間を有する筐体12を備えており、筐体12には外部から用紙Pが挿入されるスリット12aが形成されている。筐体12の外壁にはスリット12aを塞ぐ保護蓋(図示省略)が着脱自在に取り付けられており、スリット12aが保護蓋で塞がれると筐体12の内部が光密な状態となる。
【0032】
また、真贋判定装置10は、光源14、カメラ16、及び鏡面体18を備えている。光源14は、予め定められた波長域の光を照射するものであり、筐体12の外部からスロット12aに挿入されて予め定められた位置(以下、この位置を「撮影位置」という。)に配置された用紙Pの表面に対して光を照射して用紙Pの表面を照明するように配置されている。光源14としては、例えば、LED、ハロゲンランプ、蛍光灯、又はキセノン放電管などが適用される。また、カメラ16は、被写体を撮影するCCD(charge coupled device:電荷結合素子)を含んで構成された撮影面16aを有し、この撮影面16aに被写体としての用紙Pの表面の一部及び後述の鏡像を撮影して特徴画像を取得する。なお、本実施の形態では、単一の撮影面16aとしているが、これに限らず、撮影面16aは複数であっても良い。但し、この場合、1台のカメラ16が1回の撮影で用いる複数の撮影面16aを含んで構成される必要がある。
【0033】
図2には、本実施の形態に係る真贋判定装置10による真贋判定の対象とされる用紙Pの形態例が示されている。図2に示すように、用紙Pは、長方形状であり、その中央部には用紙Pの外輪郭から予め定められた距離(例えば5mm)だけ内側にオフセットされることで形成された領域であって、プリンタなどによって画像が形成される長方形状の画像形成領域が設けられている。また、用紙Pの表面において、用紙Pの長手方向の一辺とその一辺に隣接する画像形成領域の一辺とで挟まれる余白領域にはカメラ16によって撮影される予め定められた領域20が設けられている。なお、図2に示す例では説明の便宜上、破線を用いて画像形成領域及び予め定められた領域20を描いたが、実際の用紙Pには破線が描かれているわけではない。
【0034】
図3には、光源14によって用紙Pの表面の予め定められた領域20に光が照射された状態の一例が示されている。図3に示すように、光源14は、用紙Pの表面の予め定められた領域20の平面領域に対して予め定められた傾斜角度から予め定められた領域20を照明するように配置され、光源14からは予め定められた波長域の光が発せられる。光源14から発せられた光が予め定められた領域20に含まれるランダムパターンを構成している微細な凸凹のパターンの凸部20aに当たると、凸部20aの陰影が形成される。なお、本実施の形態では、凸部20aの陰影が形成されるように予め定められた領域20の平面領域に対して30度斜め上方から光を照射する場合の形態例を挙げて説明しているが、これに限らず、凸部20aの陰影が形成されるように光を照射する位置であれば如何なる位置に光源14を配置しても良い。
【0035】
図1に示す鏡面体18は、用紙Pの表面の予め定められた領域20に対して交差するように配置された鏡面領域14aを有しており、鏡面領域14aには、凸部20aの陰影と共にランダムパターンを含む予め定められた領域20に対応する鏡像が生成される。また、図1に示すカメラ16は、予め定められた領域20及び鏡面領域14aで生成された鏡像を単一の被写体として併せて撮影面16aに撮影して特徴画像を取得する。鏡面領域14aで生成された鏡像とは、凸部20aの陰影を含むランダムパターンの特徴のことであり、この鏡像には、カメラ16によって実際の予め定められた領域20を直接撮影して得られる画像には現れない用紙Pの特徴(ランダムパターンの特徴)が現れる。逆に、カメラ16によって実際の予め定められた領域20を直接撮影して得られる画像に含まれる実像を示す画像には、鏡像に現れない用紙Pの特徴が現れる。
【0036】
図4は、本実施の形態に係る真贋判定装置10の電気系の構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、真贋判定装置10は、CPU30、RAM32、ROM34、二次記憶部36、UI(ユーザ・インタフェース)パネル38、外部I/F(インタフェース)40、内部I/F42を備えている。
【0037】
CPU30は、ROM34に記憶されたプログラムを実行し、真贋判定装置10全体の動作を制御する。なお、ROM34に記憶されたプログラムには、マスターデータ登録機能を働かせるためのマスターデータ登録処理プログラムや、真贋判定機能を働かせるための真贋判定処理プログラムが含まれている。
【0038】
RAM32は、ワークメモリであって、撮影された特徴画像やこの特徴画像から抽出した特徴情報等を一時的に記憶する領域を含む。二次記憶部36は、装置の電源スイッチが切られても保持しなければならない各種情報を記憶するものであり、例えばハードディクス装置及びフラッシュメモリなどが適用される。UIパネル38は、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等から構成され、各種情報がディスプレイの表示面に表示されると共に、ユーザによってタッチパネルが触れられることにより各種情報や指示を受け付ける。
【0039】
CPU30、RAM32、ROM34、二次記憶部36及びUIパネル38は互いにシステムバス46を介して接続されている。従って、CPU30は、RAM32、ROM34及び二次記憶部36へのアクセスと、UIパネル38への各種情報の表示と、UIパネル38に対するユーザの操作指示内容の把握と、を各々行う。
【0040】
外部I/F40は、外部装置44に接続されており、外部装置44とデータの授受を行うためのインタフェースである。外部I/F40もまたシステムバス46に接続されている。従って、CPU30は、外部I/F40を介して外部装置44に用紙Pの特徴情報を登録させるために、用紙Pの特徴情報を送信したり、外部I/F40を介して外部装置44から登録済の用紙Pの特徴情報を真贋判定装置10で使用するために受信したりする。
【0041】
内部I/F42は、光源14及びカメラ16に接続されており、光源14及びカメラ16とデータの授受を行うためのインタフェースである。内部I/F42もまたシステムバス26に接続されている。従って、CPU30は、内部I/F42を介した光源14の点灯タイミング(光の照射タイミング)の制御と、光源14の点灯状態の把握と、内部I/F42を介したカメラ16の撮影タイミングの制御と、カメラ16によって撮影されて得られた特徴画像の取得と、を各々行う。
【0042】
[真贋判定装置の動作]
次に、真贋判定装置10の動作を説明する。用紙Pの真贋を判定するためには、本物とされる用紙Pが有するランダムパターンの特徴を予め登録しておく必要がある。そこで、先ず、図5を参照して、真贋判定装置10において実行されるマスターデータ登録処理について説明する。なお、このマスターデータ登録処理は、ROM34に記憶されているマスターデータ登録処理プログラムがCPU30によって実行されることで実現される。
【0043】
図5は、本実施の形態に係るマスターデータ登録処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、錯綜を回避するために、真贋の判定対象とされる用紙Pと比較される用紙P(真贋の判定の基準となる用紙P)が撮影位置に配置されている場合について説明する。
【0044】
図5のステップ100では、予め定められた領域20に対する光の照射開始を光源14に指示した後、ステップ102に移行する。上記ステップ100の処理に応じて、光源14は、予め定められた領域20に対して光の照射を開始する。ステップ102では、カメラ16に対して撮影開始を指示した後、ステップ104に移行する。上記ステップ102の処理に応じて、カメラ16は、予め定められた領域20及びこの予め定められた領域20に対応する鏡像を併せて単一の被写体として撮影を開始する。なお、ここでは、一例として、特徴画像が400dpiの解像度で撮影されるものとする。ステップ104では、撮影が終了するまで待機する。カメラ16が予め定められた領域20及びこの予め定められた領域20に対応する鏡像を単一の被写体として併せて撮影して特徴画像を取得すると、ステップ104は肯定判定となってステップ106に移行する。ステップ106では、光源14に対して予め定められた領域20に対する光の照射終了を指示した後、ステップ108に移行する。上記ステップ106の処理に応じて、光源14は、予め定められた領域20に対して光の照射を終了する。
【0045】
ステップ108では、特徴情報抽出処理を実行する。ここで、図6を参照して、特徴情報抽出処理を実行しているときの真贋判定装置10の作用を説明する。なお、図6は、CPU30により実行される特徴情報抽出処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートであり、この特徴情報抽出処理プログラムはROM34に予め記憶されている。
【0046】
図6のステップ108Aでは、上記ステップ102,104の処理によってカメラ16に取得させた特徴画像に対して量子化及び標本化を実施する。つまり、特徴画像を予め定められた個数のピクセルとしてのメッシュ(例えばメッシュ数d=縦M×横N)に区切ることによって量子化を実施し、各メッシュをある濃度値(濃度レベルq)で代表させることで標本化を実施し、一例として図7に示すように鏡面体18で鏡像を示す特徴画像及び予め定められた領域20の実像を示す特徴画像を含んで構成されたモザイク状の特徴画像に変換する。図7に示す例では、実像を示す特徴画像よりも鏡像を示す特徴画像の方が陰影部分に相当する画素数が多くなっている。これは、鏡像を示す特徴画像には陰影を含む画像が含まれており、実像を示す特徴画像よりも暗くなる(濃淡で言うと“濃”の部分が多くなる)からである。なお、本実施の形態では、上記ステップ108Aの処理によって、特徴画像が20×20ピクセル毎に量子化され、2階調に標本化される。
【0047】
次のステップ108Bでは、上記ステップ108Aの処理によって量子化及び標本化された特徴画像について、j番目のメッシュの濃度をXとして、特徴画像のランダムパターンを、X=(X,X,・・・・・X(tは転置を表す)なる特徴ベクトルで記述する。本実施の形態では、この特徴ベクトルを特徴情報としている。この特徴ベクトルの各要素は対応するピクセル毎に濃度を与える。従って、特徴画像のランダムパターンは特徴ベクトルによって張られた特徴空間上の1点として表されることになる。前述したように、用紙Pは、微視的には異なるランダムパターンを有するため、特徴ベクトルも用紙P毎に固有の特徴を表すものとなる。すなわち、各用紙Pのランダムパターンの特徴は特徴ベクトルによって表現される。なお、特徴ベクトルに代えて、全ベクトルから分散共分散行列又は相関行列を求めて、これを特徴情報としても良い。上記ステップ108Bの処理の実行が終了すると、本特徴情報抽出処理プログラムを終了してマスターデータ登録処理プログラムのステップ110に移行する。
【0048】
ステップ110では、上記ステップ108Bの処理によって得られた特徴情報を真贋判定の基準となる特徴情報として用いるマスターデータとして二次記憶部18に記憶することにより登録した後、本マスターデータ登録処理を終了する。
【0049】
次に、図8を参照しながら用紙Pの真贋を判定する動作について説明する。本実施の形態に係る真贋判定装置10では、用紙Pの真贋を判定する場合にCPU30によって真贋判定処理プログラムが実行される。図8は、本実施の形態に係る真贋判定処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、錯綜を回避するために、真贋の判定対象とされる用紙Pが撮影位置に配置されている場合について説明する。
【0050】
図8のステップ200では、上記ステップ100の処理に相当する処理を実行した後、ステップ202に移行する。ステップ202では、上記ステップ102の処理に相当する処理を実行した後、ステップ204に移行する。ステップ204では、上記ステップ104の処理に相当する処理を実行した後、ステップ206に移行する。ステップ206では、上記ステップ106の処理に相当する処理を実行した後、ステップ208に移行する。ステップ208では、上記ステップ108の処理に相当する処理を実行した後、ステップ210に移行する。なお、上記ステップ208では、図6に示すフローチャートの処理を実行することになるが、この場合、ステップ108Bでは、真贋の判定対象とされる用紙Pの予め定められた領域20の特徴情報をサンプルデータとして算出することになる。
【0051】
ステップ210では、二次記憶部18からマスターデータとしての特徴情報を読み出した後、ステップ212に移行する。ステップ212では、“上記ステップ210の処理によって読み出されたマスターデータとしての特徴情報”≒“上記ステップ208の処理を実行することによって得られたサンプルデータとしての特徴情報”という関係が成立しているか否かを判定し、肯定判定となった場合にはステップ214に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ216に移行する。ステップ214では、真贋の判定対象とされた用紙Pが本物であることを示す本物通知信号を出力した後、本真贋判定処理プログラムを終了する。ステップ216では、真贋の判定対象とされた用紙Pが偽物であることを示す偽物通知信号を出力した後、本真贋判定処理プログラムを終了する。
【0052】
本実施の形態では、上記ステップ214の処理によって出力された本物通知信号の出力先及び上記ステップ216の処理によって出力された偽物通知信号の出力先を共にUIパネル38としている。本実施の形態に係るUIパネル38では、上記ステップ214の処理によって出力された本物通知信号を受けて、例えば用紙Pが本物であることを示すメッセージ(例えば「用紙は本物です。」)を表示し、上記ステップ216の処理によって出力された偽物通知信号を受けて、例えば用紙Pが偽物であることを示すメッセージ(例えば「用紙は偽物です。」)を表示する。なお、この表示形態は一例であり、この他の表示形態であっても良い。例えば、スピーカによって音声で真贋の判定結果を可聴表示したり、プリンタによって用紙に印字することで真贋の判定結果を永久可視表示したりしても良い。また、UIパネル38による可視表示、スピーカによる可聴表示、及びプリンタによる永久可視表示の少なくとも2表示形態を組み合わせても良い。また、真贋の判定結果を可読性を有する文字情報として表示する形態に限らず、真贋の判定結果をバーコードやQRコードなどの画像のように暗号化して出力するようにしても良い。また、上記ステップ216の処理によって出力された本物通知信号の出力先及び上記ステップ218の処理によって出力された偽物通知信号の出力先を外部装置30とし、外部装置30の記憶領域に本物通知信号及び偽物通知信号を記憶させても良い。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係る真贋判定装置10によれば、予め定められた領域20の実像を示す特徴画像及び予め定められた領域20に対応する鏡像を示す特徴画像を含んで構成された特徴画像を用いて真贋の判定を実施しているので、予め定められた領域20の鏡像を示す特徴画像を用いて真贋の判定を実施しない場合に比べ、用紙Pの真贋が高精度に判定されることになる。また、異なる角度から撮影をしなくても1回の撮影で複数方向から用紙Pの特徴が得られる。
【0054】
なお、上記実施の形態では、鏡像を示す特徴画像及び実像を示す特徴画像に対して差別することなく量子化及び標本化を実施する形態例を挙げて説明したが、鏡面領域18aが平面形状でない面(例えば湾曲面)を有している場合、撮影して得られた鏡像を示す特徴画像に歪みが含まれることになる。その場合は、量子化及び標本化を実施する前段階で、鏡像を示す特徴画像及び実像を示す特徴画像のうちの鏡像を示す特徴画像に対して、歪みを補正するために予め定められた歪み補正係数を乗じることによって特徴画像に含まれる歪みを補正してから、量子化及び標本化を実施するようにしても良い。
【0055】
また、上記実施の形態では、単一の鏡面体18で生成された鏡像を撮影する形態例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば図9に示すように複数の鏡面体で生成された鏡像を撮影しても良い。図9には、予め定められた領域20を上方から見た概略平面図が示されている。図9に示す例では、予め定められた領域20に対して異なる位置で交差するように、かつ、いわゆる三面鏡が構成されるように鏡面体50A〜50Cを配置している。この場合も上記実施の形態で説明したように、光源14は、凸部20aの陰影が形成されると共に鏡面体50A〜50Cの鏡面領域を直接照明しないように予め定められた領域20を照明し、カメラ16は、鏡面体50A〜50Cの各鏡面領域で生成された鏡像及び鏡像に含まれない用紙Pの特徴を含む予め定められた領域20を被写体として撮影して特徴画像を取得する。なお、図9に示す形態はあくまでも一例であり、三面鏡を構成しなくても良い。例えば、鏡面体50Cを取り除いて鏡面体50A,50Bを繋ぎ合わせて2面鏡を構成しても良いし、4枚以上の鏡面体を繋ぎ合わせて予め定められた領域20の実像からは得ることが難しい用紙Pの特徴が撮影されるようにしても良い。このように複数の鏡面体を用いることで、予め定められた領域20の実像からは得られない用紙Pの表面の特徴が撮影されるので、より一層高精度な真贋判定がなされることになる。
【0056】
また、上記実施の形態では、光源14により予め定められた領域20を照明する場合の形態例を挙げて説明したが、必ずしも予め定められた領域20を照明する必要はなく、一方向からの撮影では捉えられない用紙Pの表面の特徴を鏡面体18で生成される鏡像から得られるように構成されていれば良い。しかし、上記実施の形態で説明したように光源14により予め定められた領域20を斜め方向から照明した方が凸部20aの陰影が現れるので、陰影が現れない場合に比べて明確な情報が多く得られる。
【0057】
また、上記実施の形態では、CPU30によってマスターデータ登録処理プログラム及び真贋判定処理プログラムが実行されることによりマスターデータ登録処理プログラム及び真贋判定処理プログラムの各ステップの処理を実現するソフトウェア的な形態を例示したが、これに限らず、各種回路(一例として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))を接続して構成されるハードウェア的な形態や、ソフトウェア的な形態とハードウェア的な形態とを組み合わせた形態が挙げられる。
【0058】
また、上記実施の形態では、マスターデータ登録処理プログラム及び真贋判定処理プログラムがROM34に予め記憶されている場合の形態例を挙げて説明したが、これに限らず、これらのプログラムをCD−ROMやDVD−ROM、USBメモリなどのコンピュータによって読み取られる記録媒体に格納した状態で提供する形態を適用しても良いし、有線又は無線による通信手段を介して配信する形態を適用しても良い。
【符号の説明】
【0059】
10 真贋判定装置
14 光源
16 カメラ
18 鏡面体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無作為性を有する固有の特徴を表面に備えた固体の該表面における前記特徴を含む定められた領域に対応する鏡像を生成する鏡面体と、
前記領域及び前記鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する撮影手段と、
を含む真贋判定支援装置。
【請求項2】
前記特徴の陰影が形成されるように前記領域を照明する照明手段を更に含み、
前記鏡面体を、前記陰影を含む前記領域に対応する鏡像が生成されるように配置した請求項1に記載の真贋判定支援装置。
【請求項3】
前記照明手段を、更に、前記鏡面体を直接照明しない位置に配置した請求項2に記載の真贋判定支援装置。
【請求項4】
無作為性を有する固有の特徴を表面に備えた固体の該表面における前記特徴を含む定められた領域に対応する鏡像を生成する複数の鏡面体と、
前記領域及び前記複数の鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する撮影手段と、
を含む真贋判定支援装置。
【請求項5】
前記特徴の陰影が形成されるように前記領域を照明する照明手段を更に含み、
前記複数の鏡面体を、前記陰影を含む前記領域に対応する鏡像が生成されるように配置した請求項4に記載の真贋判定支援装置。
【請求項6】
前記照明手段を、更に、前記複数の鏡面体を直接照明しない位置に配置した請求項5に記載の真贋判定支援装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を含み、
前記撮影手段は、真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影し、
前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段を含む真贋判定装置。
【請求項8】
請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を含み、
前記撮影手段は、真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記複数の鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影し、
前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段を含む真贋判定装置。
【請求項9】
前記撮影手段によって撮影されて得られた画像に含まれる前記鏡像を示す画像の歪みを補正する補正手段を更に含み、
前記出力手段は、前記補正手段によって補正された画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する請求項7又は請求項8に記載の真贋判定支援装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を有する真贋判定装置を制御するコンピュータを、
真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の真贋判定支援装置を有する真贋判定装置を制御するコンピュータを、
真贋の判定基準とされる固体である基準対象固体及び真贋の判定対象とされる固体である判定対象固体の各々の前記領域及び前記複数の鏡面体で生成された鏡像を併せて特定の撮影面に撮影する前記撮影手段によって前記判定対象固体が撮影されて得られた画像が、前記撮影手段によって前記基準対象固体が撮影されて得られた画像に相当する場合に前記判定対象固体が偽物でないことを示す信号を出力し、相当しない場合に前記判定対象固体が偽物であることを示す信号を出力する出力手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−12160(P2013−12160A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146009(P2011−146009)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】