説明

眼内薬物送達のためのリザーバデバイス

【課題】後眼房および他のアクセスが制限されている領域への治療剤の送達に特に好適である低侵襲性で再充填可能な持続的送達デバイスを提供する。
【解決手段】剤の持続放出を可能にする送達デバイス1であって、後眼房および内耳などのアクセスが制限されている領域への剤の持続放出に特に有用なデバイス。送達デバイスは低侵襲性で、再充填可能であり、処置部位に容易に固定することができる。送達デバイスは、剤の挿入のためにその近位端3に注入ポート5を有する中空体10、剤を保持するためのリザーバ2、およびリザーバから患者への剤の持続送達のための送達機構6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年6月21日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国仮出願第60/297,499号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、改善された送達デバイスと使用方法に関する。より具体的には、本発明は、低侵襲性で、再充填可能な持続的送達デバイスであって、特に、後眼房などのアクセスが制限されている領域への治療剤の送達に好適なものに関する。
【背景技術】
【0003】
眼への薬剤の送達は、多くの難問を呈する。全身性に投与された薬剤の眼への吸収は血液眼球関門、即ち網膜色素上皮と血管内皮細胞とのタイトジャンクションによって制限されている。高い全身投与量によって比較的少ない量がこの血液眼関門を通過できるが、患者を全身毒性のリスクにさらすことになる。薬物の局所送達は、角膜と強膜との複雑な疎水/親水特性により、しばしば眼への吸収が制限される結果となる。さらに、局所剤は瞬きの機構により機械的に除去され、1滴のうちわずかおよそ15%しか吸収されない。局所的に投与された薬剤の後眼房への拡散は起こるが、多くの場合治療レベル以下である。薬物の硝子体内注入は、後部へ高濃度で薬物を送達する有効な手段である。しかしながら、これらの繰り返される眼内注入は感染、出血および網膜剥離のリスクを有する。患者も、この手技を継続するのがいささか困難であることを見出す。
【0004】
後眼房への治療剤の局所的・持続的送達は、いくつかの眼の慢性疾患の管理において極めて重要である。こうした要求に応えるため、眼の硝子体領域への眼内挿入のための薬物送達デバイスがいくつか開発された。
米国特許第4,300,557号は、例えば、送達すべき薬物を充填することが可能なシリコーンカプセルの形態の眼内インプラントについて記載している。カプセルは、眼に切開を施し、カプセルを挿入し、切開部分を閉鎖することにより、眼の硝子体領域に挿入される。カプセルはしばらくの間その場所に止まり、眼に第2の外科的切開を加え、デバイスを取り出すことにより、除去することができる。カプセルは、眼の表面を通り、眼の外部へ延びる、その後の薬物の注入に便利な付着したチューブを有する。硝子体内では、デバイスは固定されておらず、自由に動き回ることができる。
【0005】
米国特許第5,378,475号(しばしばVitrasertと呼ばれる)は、眼の硝子体領域への挿入のために開発されたデバイスについて記載しており、それはT.J. Smith et al., Sustained-Release Ganciclovir, Arch. Ophthalmol, 110, 255-258 (1992)およびG.E. Sanborn, et al., Sustained-Release Ganciclovir Therapy for Treatment of Cytomegalovirus Retinitis. Use of an Intravitreal Device, Arch. Ophthalmol, 110, 188-195 (1992)に記載されている。このデバイスは、異なる浸透性を有する2つのコーティングで囲まれた薬剤の内部コアからなっている。薬物はこれらのコーティングの1つにある小開口部を通じて拡散し、低次放出速度(near-order release kinetics)が達成される。該デバイスは、3.5〜5.0mmの強膜切開を通じて、毛様体扁平部領域に移植される。インプラントは薬物が枯渇すると、6ヶ月ごとに手術室で除去し交換しなければならない。これらの手技により、およそ25%の合併症が生じる。該デバイスは膜拡散薬物送達システムであり、放出速度を仲介するためのEVA/PVAポリマーに依存している。したがって、多くの剤は、該システムの速度制御材料を介したこれらの浸透速度が、有用な効果を生ずるには小さすぎるので、かかるシステムから有効に送達されることができない。他の剤は、剤の特定の化学特性により、拡散性デバイスによっては満足に送達されることができない。これは、塩(そのイオン的特徴により)、そして、保存およびかかるシステムからの送達に好適な組成物に調剤することができない不安定な極性化合物を包含する。
【0006】
米国特許第5,098,443号は、眼球壁に設けられた切開を通じて挿入されるか、眼球の周囲に縫合される一連のC型リングについて記載している。これらのリングは、薬物の微粒子を含有する生分解性ポリマーから形成され得る。あるいは、インプラントは薬物が内部に配置され、浸透圧により緩徐に放出される、中空の柔軟な高分子性の繭の形態であり得る。固定装置は記載されていない。
【0007】
米国特許第5,466,233号は、眼内薬物送達のための鋲(tack)について記載している。このデバイスは、端部が硝子体腔に位置する一方、頭部は眼の外部に残り、強膜表面に当接している。薬物はデバイスの硝子体端に含有され、また、生分解性または非生分解性の足場(scaffold)に含有されることができる。あるいは、該デバイスは、薬物が充填された中空のコアを有することができ、薬物は眼内へ鋲の壁を通じて拡散することができる。このコアは再充填可能である。鋲の頭部はさらに強膜を固定するための縫合孔を有することができる。
【0008】
眼に治療剤を送達することが可能な眼内デバイスは存在するが、後眼房に制御された持続的な送達を達成し、強膜の長い全層切開を要することなく移植および除去可能であり、患者に必要以上の刺激または不快感を生じさせず、眼の硝子体領域で安定であり、再充填可能であり、用量を調節することができ(titratable)、そして、広範な小分子、遺伝子およびタンパク質治療剤を送達することが可能なデバイスについては、依然として必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、送達デバイスと使用方法を提供する。より具体的には、本発明は、低侵襲性で再充填可能な持続的送達デバイスに関する。本発明の送達デバイスは、後眼房および他のアクセスが制限されている領域への治療剤の送達に特に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本送達デバイスの例示的な態様は、剤の挿入のために近位端に注入ポートを有するリザーバを備える。デバイスを所望の位置に縫合または他の方法で固定するために、強膜ハブ(scleral hub)または類似の固定要素が、近位端近傍にさらに設置することができる。注入ポートを通じてリザーバに挿入された剤は、リザーバに沿っておよび/またはリザーバの遠位端に位置する送達機構によって処置部位に送達される。例えば、1つの態様では、剤は、例えば、リザーバを剤に透過性の材料で形成するか、または、例えば、リザーバに、剤が流出し得る1または2以上の開口部を設けることにより、リザーバを通じて送達され得る。別の態様では、送達機構は、例えば、リザーバの遠位端を半透膜で形成するか、またはリザーバの遠位端に1個または2個以上の開口部を設けることにより、リザーバの遠位端に位置する。リザーバは、小切開を通じて挿入するためにリザーバを圧縮できるように、好ましくは柔軟な材料で製造される。ひとたび切開の内部に入ると、リザーバは自動的に展開することができ、および/または、剤が注入ポートを通じて注入されると、リザーバは剤が充填されるにつれて展開することができる。
【0011】
薬物送達デバイスは、リザーバの内部に中空体またはチューブをさらに備えることができ、ここで、中空体またはチューブの近位端が注入ポートを形成する。この態様では、中空体またはチューブは小切開を介したデバイスの挿入を容易にする構造的な剛性を提供することができる。リザーバカバーは、少なくとも中空体またはチューブの全長の一部をカバーし、そして、中空体またはチューブのサイズよりは大きくない小切開を介したデバイスの挿入を可能にするために、中空体またはチューブの周囲に折り畳まれ、巻回されおよび/または圧縮されることができるように、柔軟であることが好ましい。中空体またはチューブにおける少なくとも1つの開口部は、中空体またはチューブの内容物とリザーバとの間の連通を提供し、剤が注入ポートを通じて挿入された場合、それは中空体またはチューブを通じ、1または2以上の開口部を通じて、リザーバ内に移動する。剤がリザーバに充填されると、リザーバが展開する。1つの態様では、中空体またはチューブの遠位端は、リザーバの外部に延び、送達ポートを形成しており、これを通じて患者に剤が送達される。別の態様では、治療剤は、例えば、剤に透過性の材料でリザーバを形成するか、または、例えば剤が流出できる1または2以上の開口部をリザーバに設けることにより、リザーバを通じて患者に送達される。強膜ハブまたは類似の固定要素を、デバイスを所望の位置に縫合または別様に固定するために、中空体またはチューブの近位端近傍にさらに設置することができる。
【0012】
剤の送達のための方法もまた開示される。特に、該方法は、種々の眼症状、例えば、網膜剥離、脈管の閉塞、増殖性網膜症、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、脈絡膜炎および網膜炎などの炎症、変性疾患、脈管疾患、および新生物を含む種々の腫瘍などを処置するために眼に剤を送達することを含む。
【0013】
本方法は、眼に小切開を加え、処置部位へのアクセスを提供することを含む。送達デバイスは「空」の状態で提供され、リザーバは空であり、好ましくは図1Aに示すように強固に圧縮されている。送達デバイスが、閉鎖のためにわずかな縫合を要するか、縫合を要しない小切開を通過できるように、リザーバを圧縮するのが望ましい。つぎに、送達デバイスをまず遠位端から、強膜ハブまたは固定機構が切開に当接するまで、切開を通じて挿入する。その後、強膜ハブまたは固定機構を強膜に縫合または固定し、デバイスを処置部位に保持するのを補助することができる。ひとたび切開の内部に入ると、リザーバは自動的に展開し得る。次に、治療剤を、剤を含むシリンジまたは類似の機構を用い、注入ポートを通じてデバイス中に注入する。剤はリザーバに移動し、それによりさらにリザーバを展開する。ひとたびリザーバが所望のレベルまで充填されると、シリンジを注入ポートから取り外し、注入ポートを閉鎖することができる。その後、剤は送達ポートを通じて、またはリザーバを通じて患者に送達される。リザーバの内容物を患者に送達後、さらなる剤の送達のためにデバイスを再充填するかまたは除去することができる。除去時、リザーバは空か圧縮されているのが好ましく、これにより、デバイスを、閉鎖のためにわずかな縫合を要するか、縫合を要しない小切開を通じて除去することができる。
【0014】
具体的な適用に依存して、該デバイスは、例えば、種々の大きさのリザーバや、剤に対する種々の浸透性を有するリザーバ、小さなもしくは大きな径の送達開口部もしくはポート、および速度制御カバーを有する送達ポートを提供することにより、所望の用量の剤を特定の速度で送達するように設計することができる。
【0015】
本送達デバイスおよび使用方法は低侵襲性である。特に、該送達デバイスは形状が小さく、小さな開口部から挿入することができる。かかる挿入手技は、より侵襲的な手術に伴うリスクを排除し、さらに、かかる手技を診療室の設備で行うことを可能にする。また、該デバイスは小さな挿入部位から除去することができ、強膜を閉鎖するためにわずかな縫合を要するか、縫合を要さない。これは、移植と除去の両方について手術を要していた最先端の技術に対する劇的な改善である。
【0016】
さらに、眼内送達のための多くの既存のデバイスでは、治療剤がインプラントの構造内に組み込まれ、拡散またはキャリアの生体内崩壊を介して放出されるところ、本発明の送達デバイスは、注入により容易に充填および再充填される再充填可能なデバイスである。この特徴により、医師は個々の患者の必要にあわせて投与量を容易に調節することができる。さらに、本デバイスにおいては、製造過程において剤をデバイスの構造中に移植することが回避されるので、単一のデバイスを広範な剤に用いることができる。
さらにまた、本送達デバイスを用いた剤の放出は、必ずしも膜拡散により制御されるわけではないので、イオン性薬物もしくはタンパク質などの、高分子膜を通じて容易に透過しない剤の送達に、本デバイスは適している。
本発明の他の側面および態様は以下で述べられている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の一態様による空の送達デバイスを説明した図である。
【図1B】剤を保持している図1Aの送達デバイスを説明した図である。
【図2】図1Aおよび1Bのデバイスの、眼内における最終的な位置を表した図である。
【図3】本発明の別の態様による、デバイスの眼内における最終的な位置を表した図である。
【図4A】本発明の別の態様による空の送達デバイスを説明した図である。
【図4B】剤を保持している図4Aの送達デバイスを説明した図である。
【図5】本発明の送達デバイスの挿入用に、眼の中にアクセスを提供するために結膜を後ろに引く一技法を説明した、眼の概略断面図である。
【0018】
発明の詳細な説明
同等の参照文字が同等の部分を示している、図面中の種々の図を参照すると、そこには、本発明による送達デバイス1の種々の図が示してある。
図1〜3に示すとおり、送達デバイス1は、近位端3と遠位端4とを有するリザーバ2を備えている。リザーバ2の近位端3近傍に位置するのは、リザーバ1内への所望の剤の注入のための注入ポート5である。注入ポート5を通じて注入された剤は、処置部位に送達機構6を通じて送達される。
【0019】
送達デバイス1は、少なくとも部分的にリザーバ2に収められている中空体またはチューブ10をさらに備えることができる。中空体またはチューブ10は、近位端11と遠位端12とを有する。好ましくは、中空体またはチューブ10の近位端11は、図1〜3に示すとおり、リザーバ2の外側に延び、剤がそれを通じてデバイス内に注入される注入ポート5として機能する。
【0020】
リザーバ2の製造に用いられる材料は特に制限されないが、ただし、これらの材料は生体適合性であり、好ましくはデバイスが接触することになる体液および組織に不溶性である。いくつかの態様では、リザーバ2の製造に用いられる材料が、閉鎖のためにわずかな縫合を要するか、縫合を要しない小切開を通過するために、リザーバ2が折り畳まれ、巻回されおよび/または圧縮されることができるように柔軟であることがさらに好ましい。ひとたび切開の内部に入ると、リザーバ2はある程度まで自動的に展開するかまたは広がる。加えて、剤が注入ポート5を通じてリザーバ2内に注入されると、リザーバ2は展開しまたは広がり、剤で充填されるにつれて拡張することができる。
【0021】
1つの好ましい態様においては、リザーバ2はバルーンの形態であり、弾性材料(elastic material)で製造されている。剤が注入ポート5に注入されると、剤は拡張可能なリザーバ2またはバルーンへ移行し、それによりリザーバ2またはバルーンを膨張させ、拡張させる。リザーバ2内の剤に対する弾性材料の圧力は、送達機構6を介した剤の送達のための駆動力を提供する。弾性リザーバを形成するのに用いるための好適な材料はよく知られており、当業者が容易に決定することができる。例えば、ある好適なものは、PETなどの薄壁の非膨張性材料、および、ポリウレタンなどのよりエラストマー性の(more elastomeric)材料を含む。リザーバ2がPETなどの材料で製造されている場合、送達機構6を介した流れは、第1次的には拡散および/または眼内圧の力により駆動される。リザーバ2がポリウレタンなどの材料で製造されている場合、剤の送達は、少なくとも部分的に、リザーバ2を形成する材料のスプリング様の特性により駆動されることができる。
【0022】
1つの態様においては、送達機構は、少なくともリザーバ2の一部を含む。例えば、これは、リザーバ2の少なくとも一部を、剤に透過性の材料で製造することにより達成することができる。かかる材料は、具体的な適用および送達されるべき剤に依存して変わり得、当業者が容易に決定することができる。例として、いくつかの好適な透過性材料は、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリロニトリルのコポリマー、ポリ塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ナイロン、セルロース、ゼラチン、シリコーンゴムおよび多孔性ラバーを包含し得る。
【0023】
剤の送達の特定の速度を提供するために特定の材料を選択することができ、これは当業者が容易に決定することができる。剤の送達速度はまた、リザーバ2の、剤に透過性の材料で形成されたパーセンテージを変化させることにより、増加または減少させることができる。好ましくは、より遅い送達速度を提供するには、リザーバ2は50%以下の透過性材料で製造することができる。例えば、リザーバ2は、1%、5%、10%、20%、30%、40%または50%の透過性材料で製造することができる。より早い送達速度のためには、リザーバは50%より多い透過性材料で製造することができる。例えば、リザーバ2は、51%、55%、60%、70%、80%、90%または100%の透過性材料で製造することができる。
【0024】
多の態様では、例えば、図4Bに示すとおり、送達機構6は、リザーバ2に、例えば、レーザー、熱線、ドリル装置または類似の機構によって形成された1または2以上の開口部7を備えている。1または2以上の開口部7は、リザーバ2の全長にわたって、および/または、リザーバ2の遠位端4に位置することができる。1または2以上の開口部7の数および大きさは、剤の所望の送達速度に依存して変えることができ、当業者が容易に決定することができる。
【0025】
送達デバイス1が中空体またはチューブ10を含む場合、中空体またはチューブ10の遠位端12は、図1〜3に示すように、リザーバ2の外側に延びていてもよく、剤がそれを通じて処置部位に送達される送達機構6として機能することができる。この態様において、1または2以上の開口部13は、中空体またはチューブ10の壁を貫いて設けられ、中空体またはチューブ10の内容物とリザーバ2との間の連通を提供している。したがって、剤が、注入ポート5を形成する中空体またはチューブ10の近位端11を通じて注入されると、剤は中空体またはチューブ10を通じ、リザーバ2中に、中空体またはチューブ10の壁の1または2以上の開口部13を通じて流入する。好ましくは、デバイス1は、剤が送達デバイス1中に注入されたときに、注入ポート5を通じて注入された剤のすべてまたは大部分が、中空体またはチューブ10の遠位端を通じてデバイスの外部に直接移行するよりもむしろ、中空体またはチューブ10を通じてリザーバ2中に移行するように設計される。これは、例えば、送達機構6よりも大きい、または送達機構6よりも大きい剤の流量に適合した、1または2以上の開口部13を中空体またはチューブ10の壁に設けることにより達成することができる。あるいは、バルブ(示されていない)または類似の機構を、剤の注入中、送達機構6を閉鎖するために、送達機構に設置することができる。
【0026】
好ましい態様では、中空体またはチューブ10の遠位端12は、剤のデバイスからの制御された送達を提供するように設計される。これは、例えば、遠位端12に小孔を設けることにより、および/または、例えば、遠位端12に被覆またはライニング(示されていない)を設置することにより達成することができ、ここで、該被覆またはライニングは、剤に対する特定の多孔性を有し、または、該被覆またはライニングは拡散または速度制限膜(rate-limiting membrane)、マトリックス材料または類似の材料で製造されている。
【0027】
中空体またはチューブ10の遠位端12がリザーバ2の外側に延びている別の態様では、遠位端12とリザーバ2の両方が送達機構6を形成するように、デバイスを設計することも可能である。したがって、例えば、遠位端12は、上記のとおり剤を送達するように設計することができ、そして、例えば、リザーバ2は透過性材料で製造することができ、または1または2以上の開口部7をリザーバ2に形成することができる。さらにまた、リザーバ2の外側に延びた中空体またはチューブ10の遠位端12を有することが可能であり、ここで、遠位端12は閉鎖され、送達機構として機能しないが、むしろ、リザーバ2が、例えば、リザーバ2を透過性材料で製造するか、またはリザーバ2に1または2以上の開口部7を形成することにより、送達機構6として機能する。
【0028】
デバイス1が中空体またはチューブ10を含む別の態様では、中空体またはチューブ10の遠位端12は、図4Aまたは4Bに示すとおり、リザーバ2内に含まれてもよい。この態様においては、送達機構6は、例えばリザーバ2の少なくとも一部またはリザーバ2全体を剤に透過性の材料で形成することにより、リザーバ2の少なくとも一部を含むことができ、または、上記のとおり1または2以上の開口部7をリザーバ2に設けることができる。この態様においては、遠位端12は、剤がそれを通じて注入ポート5からリザーバ2中へ移動する開口部を有してもよい。剤がそれを通じて注入ポート5からリザーバ2中へ移動する少なくとも1つの開口部13を、代替的に、または、追加的に中空体またはチューブ10に沿って設けてもよい。
【0029】
中空体またはチューブ10は、好ましくは硬質であり、切開を介したデバイス1の容易な移植のために、リザーバ2の下で構造的な支持を提供する。したがって、中空体またはチューブ10は、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニチノール、ポリマーおよび他の類似の材料を含む硬質材料で形成してもよい。図1〜4Bに示すとおり、中空体またはチューブ10は、好ましくは円筒形の形状であり、円形の断面を有する。しかしながら、中空体またはチューブ10の形状は制限されておらず、代替的に、例えば、正方形、長方形、八角形または他の断面形状を有してもよい。
【0030】
リザーバ2は中空体またはチューブ10に接着され、使用中に中空体またはチューブ10から離れない流体密封性のシールを形成し、これにより、中空体またはチューブ10とリザーバ2との間から、剤がデバイスの外に漏れるのが防止される。これは、種々の接着剤およびエポキシを用いることで達成できる。
【0031】
送達デバイス1の注入ポート5は、シリンジの針または類似の注入機構が注入ポート5を通じて挿入され、シリンジまたは注入機構内に収められた剤が注入ポート5を介しリザーバ2中に注入できるように設計される。注入ポート5は、剤のシリンジ針または注入機構の周囲からの注入ポート外への漏出を防止し、送達デバイス1中への剤の無菌的な注入を提供するために、好ましくはシリンジの針または注入機構の周囲に密接するシールを形成する。所望により、それを通じてシリンジ針または注入機構が挿入されることができ、シリンジ針または注入機構の周囲に密接するシールを形成する接続材(fitting)またはカラー(collar)(示されていない)を注入ポート5に取り付けることができる。
【0032】
薬物送達デバイス1中への剤の注入後、シリンジ針または注入機構は注入ポート5から取り外され、注入ポート5は密封される。これは、剤の注入のために取り外すことができ、剤が注入されたら再び設置することができる取り外し可能なカバー(示されていない)を注入ポート5上に設けることにより達成できる。好ましい態様では、注入ポート5は、それを通じて針または注入機構を挿入することができ、針または注入機構が取り外されたときに自動的に密封される、注入可能な自己密封型の材料で構成される。かかる材料は知られており、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマーおよびポリオレフィンを含む。
【0033】
図1〜4Bに示すとおり、例えば強膜ハブなどの固定機構8を、デバイス1を送達部位の近傍に安定化させるのを補助するために、注入ポート5の近傍に設置することができる。好ましくは、送達デバイス1は、固定機構8が切開部に当接するまで切開部に挿入される。1つの態様においては、図1〜4Bに示すとおり、固定機構8は、中空体またはチューブ10の近位端11からの延長部の形態である。これらの延長部は、図2〜3が示すとおり、切開部を囲む表面上に残っている。これらの延長部は、任意の形態、例えば、円形、長方形、三角形などであってよく、その上にデバイス1が安定的に位置する表面を提供するため、および、切開を囲む表面に縫合しまたは他の方法で固定できる部分を提供するために大きさを設定することができる。延長部は、中空体またはチューブ10からほぼ垂直に延びるように示されているが、延長部はかかる配置に限定されず、例えば、眼の表面の曲率に適合するように、デバイスから曲がって出ていてもよい。固定機構8の全体の形状および大きさは、眼の表面または接触している他の体の領域への刺激および損傷が最小化される限りは制限されない。
【0034】
図3に示すとおり、送達デバイス1は、治療剤を標的部位に直接送達するために、第一端16と第二端18を有するチューブ14をさらに含むことができる。例えば、チューブ14の第一端16は、リザーバ2の遠位端4または中空体もしくはチューブ10の遠位端12に接続されていてもよく、そして、チューブの第二端18は、標的部位(例えば、脈絡膜および網膜色素上皮細胞)に固定されまたは該標的部位の近くに設置されていてもよい。チューブ14は、送達速度を制限し、網膜の損傷を最小化し、そして、剤の漏出を最小化するように大きさを設定することができる。チューブ14は、送達デバイス1の小さな動きが網膜に伝達されないように、好ましくは柔軟な材料で製造され、これにより網膜の裂傷、剥離および他の損傷のリスクが最小化される。
【0035】
いくつかの態様では、剤をリザーバ2およびチューブ14の両方を通じて送達することもまた望ましいだろう。かかる態様では、例えば、リザーバ2の遠位端4または中空体またはチューブ10の遠位端12から延びるチューブ14に加えて、リザーバ2の少なくとも一部を剤に透過性の材料で製造することができ、または、リザーバ2は、上記のように、それを通じて剤がリザーバ2から送達され得る1または2以上の開口部7を有することができる。
【0036】
送達デバイス1の寸法は、デバイスの意図された用途に依存しており、当業者が容易に見出すことができる。一例として、送達デバイス1が眼に治療剤を送達するのに用いられる場合、デバイスは、好ましくは直径約0.25mm〜約1mmの範囲、より好ましくは直径0.5mm未満の小切開を通じて挿入されるために設計され、これにより、手技を完了する際、強膜の閉鎖のためにわずかな縫合を要するかまたは縫合を要しない。したがって、リザーバ2が圧縮されたデバイス1の断面は、好ましくは直径約0.25mm〜約1mmの範囲であり、そして、より好ましくは直径0.5mmより大きくない。好ましくは、中空体またはチューブ10は約0.5〜約1.0mmの範囲の直径を有し、そして、1.0mmより大きくない全体の断面を提供するために、リザーバ2を中空体またはチューブ10に圧縮することができる。中空体またはチューブ10が管状ではない場合、断面の最大寸法を、この目的のための直径を近似するのに用いることができる。剤を後眼房に送達するのに用いる場合、固定機構8が毛様体扁平部領域の強膜に縫合または他の方法で固定された場合に、送達機構6が後眼房の近傍に位置するように、デバイス1は、好ましくは約0.5cm〜約1.5cmの範囲の長さを有する。
【0037】
デバイス1に備えられている場合、チューブ14の寸法はデバイスの意図された用途に依存しており、当業者が容易に見出すことができる。一例として、剤を眼の脈絡膜および網膜色素上皮細胞に送達するのに用いる場合、チューブ14は、好ましくは、送達速度を制限し、網膜の損傷を最小化し、そして、剤の漏出を最小化するような大きさとする。したがって、チューブ14は、好ましくは約1cm〜約2.5cmの範囲の長さ、約0.1mm未満の外径、および、約0.001mm〜約0.007mm、そしてより好ましくは約0.001mm〜約0.005mmの範囲の内径を有する。
【0038】
本発明の送達デバイス1の使用は、眼に治療剤を持続放出することにより慢性疾患を処置する方法に関する以下の議論から、および、図1〜5を参照して、さらに理解することができる。
送達デバイス1は、一般的に以下の手順で用いられる。送達デバイス1はリザーバ2が空の状態、好ましくは図1A〜4Aに示すとおり圧縮された状態で用意される。中空体またはチューブ10がデバイスに備えられている場合、送達デバイス1が閉鎖のためにわずかの縫合を要するか、または縫合を要しないアクセス用の小切開を通じて移植および除去されることを可能にする薄型の形状を提供するために、リザーバ2は、好ましくは、図1Aに示すとおり、中空体またはチューブ10の周囲に圧縮される。治療剤の標的部位への直接送達のためにチューブ14が用いられている場合、チューブ14の第一端16はリザーバ2の遠位端4または中空体もしくはチューブ10の遠位端12に接続される。
【0039】
処置部位へのアクセスを提供するために切開が加えられる。例えば、治療剤を後眼房に送達するのに用いられる場合、送達デバイス1の挿入のために、強膜切開が設けられる。強膜切開を設けるために、慣用の技術を用いることができる。かかる技法は、結膜44の切開と、強膜46を介した毛様体扁平部の強膜切開を要する。図5に示すとおり、結膜44の切開は、典型的には、強膜46の広い領域を露出させるために、眼42の周囲の結膜44を後方に引くこと、および結膜44をこの後方に引いた状態で把持または固定することを含む(結膜の正常な位置を仮想的に(in phantom)示す)。換言すると、強膜46は、毛様体扁平部の強膜切開を設けるべき領域についてのみ露出されているのではない。該手順に用いられる手術器具は、その後、これらの切開の中を通過する。したがって、該手順のために作られた切開は、該手順に必要な器具に合わせて十分大きく設けなければならない。
【0040】
あるいは、強膜切開の創出は、その教示が参照により本明細書に組み込まれるU.S.S.N. 09/523,767に記載されたような、無縫合手術法、そしてひいてはデバイスを可能にする位置決め装置および方法を用いることにより達成することができる。特に、かかる方法およびデバイスは、器具が挿入される開口部を密閉するための縫合の使用を必要としない。位置決め装置は、結膜および強膜を通じて挿入され、1または2以上の進入孔を形成する。好ましくは、位置決め装置は、手技に用いられる手術器具がそれを通じて眼の中に挿入される金属製またはポリイミド製のカニューレである。
その後、送達デバイス1は、手で、または、例えばシリンジ様デバイスなどの当業者に知られた種々の挿入デバイスを用いて、切開を通じて挿入される。ひとたび安全に眼の内部に入ると、本適用においてチューブ14が用いられている場合、チューブ14を処置位置に設置するために、マイクロ鉗子または類似の設置機構を用いてもよい。
【0041】
その後、固定機構8を、送達デバイス1を所定の場所に保持するために、強膜に縫合または他の方法で固定することができる。注入ポート5を閉鎖するためにカバーが用いられている場合には、この時点で取り除かれ、そして、もしシリンジまたは他の注入機構の周囲への密接を提供するためのカラーが用いられている場合には、注入ポート5上に取り付けられる。次に、シリンジまたは他の注入機構が、剤を送達デバイス1中に注入するために、注入ポート5に接続される。注入ポート5が、シリンジの針または他の注入機構がそれを通じて挿入されることができ、そして、針または他の注入機構が取り外されたときに自動的に密封される注入可能な自己密閉型の材料で構成されている場合は、針または他の注入機構を単純に注入ポート5を通じて挿入し、剤を注入する。注入後、結膜を、デバイスの遠位端をカバーするために整えることができる。
【0042】
デバイスを、例えば網膜剥離、閉塞、増殖性網膜症、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、脈絡膜炎および網膜炎などの炎症、変性疾患、脈管疾患ならびに新生物を含む種々の腫瘍などの種々の眼症状の処置のために、眼に剤を送達するのに用いる場合、眼に送達するのに適したいくつかの剤は、例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシンおよびペニシリンなどの抗生剤、アンホテリシンBおよびミコナゾールなどの抗真菌薬、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾールおよびスルフイソキサゾール、ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウムなどの抗菌薬、イドクスウリジン、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビルおよびインターフェロンなどの抗ウイルス薬、ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウムなどの抗菌剤、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、セチリジン、ピリラミンおよびプロフェンピリダミンなどの抗アレルギー薬、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21−リン酸塩、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸塩、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベタメタゾンおよびトリアムシノロンなどの抗炎症薬、サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェンおよびピロキシカムなどの非ステロイド系抗炎症薬、フェニレフリン、ナファゾリンおよびテトラヒドロゾリンなどの充血除去薬、ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エスクリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、ホスホリンヨウ素(phospholine iodine)、および臭化デメカリウムなどの縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬、硫酸アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピン(eucatropine)、およびヒドロキシアンフェタミンなどの散瞳薬、エピネフリンなどの交感神経作動薬、カルムスチン、シスプラチンおよびフルオロウラシルなどの抗新生物薬、ワクチンおよび免疫刺激剤などの免疫学的薬物、エストロゲン、エストラジオール、黄体ホルモン(progestational)、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモンおよびペプチドおよびバソプレッシン、視床下部の放出因子などのホルモン剤、マレイン酸チモロール、レボブノロールHClおよびベタキソロールHClなどのベータ遮断薬、上皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ、ソマトトロピンおよびフィブロネクチンなどの増殖因子、ジクロフェナミド、アセタゾラミドおよびメタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害薬、アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ(anecortave acetate)、トロンボスポンジンおよび抗VEGF抗体などの血管新生阻害薬、ならびに、プロスタグランジン、抗プロスタグランジンおよびプロスタグランジン前駆体などの他の治療剤を含み得る。
【0043】
いくつかの適用においては、剤に添加物がさらに含まれていてもよく、例えば、いくつかの好適な添加物は、水、生理食塩水、デキストロース、キャリア、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤または他の類似の材料を含み得る。
【0044】
送達デバイス1が、リザーバ2の近位端3の近傍に設置された注入ポート5を有するリザーバ2を備えた1つの態様においては、注入ポート5を通じて注入された剤は、リザーバ2中へ移動する。リザーバ2が弾性材料で製造されている場合は、リザーバ2は充填されるにつれて膨張/拡張する。剤が注入されたら、針または他の注入機構は注入ポートから取り外され、注入ポート5は密封される。その後、リザーバ2の剤は送達機構6を介して徐々に送達される。チューブ14が備えられている場合、剤はチューブ14および/またはリザーバ2を通じて送達される。ひとたび治療剤が処置領域に送達されたら、送達デバイス1をさらなる送達のために再充填するか、または、症状の処置のために必要な用量の剤が送達されている場合には、取り除くことができる。必要であれば、リザーバ2をさらに圧縮するために吸引装置または類似の機構(示されていない)を用いることができ、これにより、強膜を閉鎖するのにわずかな縫合を要するか、縫合を要しない小切開部を通じた送達デバイス1の除去が可能となる。
【0045】
中空体またはチューブ10をさらに備えた態様においては、注入ポート5を通じて注入された剤は、中空体またはチューブ10を通じてリザーバ2中に、中空体またはチューブ10の1または2以上の開口部13か、または、中空体またはチューブの遠位端12を通じて移動する。次に、針または他の注入機構が注入ポート5から取り外され、そして、注入ポート5は密封される。その後、リザーバ2内の剤は、リザーバ2を通じておよび/または中空体またはチューブ10の遠位端12を通じて徐々に処置領域に送達される。チューブ14を含む場合、剤はチューブ14および/またはリザーバ2を通じて送達される。ひとたび治療剤が処置領域に送達されたら、送達デバイス1をさらなる送達のために再充填するか、または、症状の処置のために必要な用量の剤が送達されている場合には、取り除くことができる。必要であれば、リザーバ2を中空体またはチューブ10の周囲にさらに圧縮するために吸引装置または類似の機構(示されていない)を用いることができ、これにより、強膜を閉鎖するのにわずかな縫合を要するか、縫合を要しない小切開部を通じて送達デバイス1の除去が可能となる。
【0046】
本発明は、眼への適用に制限されず、内耳などの他のアクセスが制限されている部位に特に有用である。
本発明はまた、1または2以上の本発明のデバイスを含むキットであって、好ましくは無菌条件下で包装されたものを包含する。本発明のキットはまた、本デバイスとともに用いるための、好ましくは無菌条件で包装された、例えば1または2以上のチューブ14、1または2以上のリザーバ2、固定機構8を強膜に縫合または固定する手段など、および/または本デバイスおよびキットの他の構成要素を使用するための説明書を含むことができる。
【0047】
本明細書で言及されたすべての文献は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
上記した本発明の説明は単にその一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲または思想から離れることなく、変更および改変を行うことができると解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼の内部に剤を送達するための持続的送達デバイスであって、
近位端と遠位端とを有するリザーバ、
リザーバ中に剤を注入するための、リザーバの近位端近傍の注入ポート、および
剤をリザーバから患者の眼の内部に所望の速度で送達するための送達機構
を備えた、前記送達デバイス。
【請求項2】
送達機構が、リザーバに少なくとも1つの開口部を備えている、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
送達機構が、リザーバの遠位端に単一の開口部を備えている、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
リザーバの少なくとも1つの開口部の大きさおよび/または数が、剤の送達速度を制御する、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項5】
リザーバの少なくとも1つの開口部を通じた剤の送達速度を制御するための機構をさらに備えている、請求項2または3に記載の送達デバイス。
【請求項6】
治療剤の送達速度を制御するための機構が、リザーバの少なくとも1つの開口部をカバーする多孔性のライニングを備えている、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項7】
治療剤の送達速度を制御するための機構が、リザーバの少なくとも1つの開口部をカバーするマトリックス材料、拡散制限材料または速度制限膜を備えている、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項8】
送達機構が、剤に透過性の材料で製造されたリザーバの部分を少なくとも備えている、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項9】
リザーバの、剤に透過性の材料で製造されたパーセンテージが、剤の送達速度を制御する、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項10】
送達機構が、リザーバの遠位端から延びる中空チューブを含む、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項11】
注入ポートの近傍に、送達デバイスを所定の場所に固定するためのハブをさらに備えた、請求項1〜10のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項12】
リザーバに少なくとも部分的に収められた中空体をさらに備えた、請求項1〜11のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項13】
中空体が近位端と遠位端とを有し、中空体の近位端がリザーバの外部に延び、かつ、注入ポートを備えている、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項14】
中空体の遠位端がリザーバの外部に延び、かつ、送達機構を備えている、請求項12または13に記載の送達デバイス。
【請求項15】
リザーバに収められた中空体の部分に少なくとも1つの開口部をさらに備え、それにより、該少なくとも1つの開口部が、中空体の内容物とリザーバの内容物との間の連通を提供する、請求項14に記載の送達デバイス。
【請求項16】
リザーバが、リザーバの折り畳み、巻回および/または圧縮を可能にする柔軟な材料で製造されている、請求項1〜15のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項17】
リザーバが弾性材料で製造されており、それにより、剤が充填された場合にリザーバが拡張する、請求項16に記載の送達デバイス。
【請求項18】
リザーバ内の剤に対する弾性材料の圧力が、送達機構を通じた剤の送達のための駆動力を提供する、請求項17に記載の送達デバイス。
【請求項19】
患者に剤を送達するための持続的送達デバイスであって、
近位端と遠位端とを有する中空体、
中空体の近位端における、剤注入用の注入ポート、
中空体の少なくとも一部をカバーする柔軟なリザーバ、および
中空体とリザーバとの間の連通を提供するための、中空体における少なくとも1つの開口部、
患者に剤を送達するための送達機構
を備え、リザーバと連通する該送達機構によって、治療剤が注入ポートを通じて注入され、リザーバに移動し、そして、注入ポートを閉鎖すると、治療剤が送達機構を通じて所望の速度でリザーバから流出する、前記送達デバイス。
【請求項20】
中空体の遠位端がリザーバの外部に延び、かつ、送達機構を備えている、請求項19に記載の送達デバイス。
【請求項21】
送達機構を通じた剤の送達速度を制御する機構をさらに備えた、請求項19または20に記載の送達デバイス。
【請求項22】
剤の送達速度を制御する機構が、該送達機構をカバーする多孔性ライニングを備えている、請求項21に記載の送達デバイス。
【請求項23】
剤の送達速度を制御する機構が、該送達機構をカバーするマトリックス材料、拡散制限材料または速度制限膜を備えている、請求項21に記載の送達デバイス。
【請求項24】
送達機構が中空体の遠位端を含み、かつ、剤の送達速度を制御する機構が、該中空体の遠位端に複数の開口部を形成することを含む、請求項21に記載の送達デバイス。
【請求項25】
中空体の遠位端における複数の開口部の大きさおよび/または数が、剤の送達速度を制御する、請求項24に記載の送達デバイス。
【請求項26】
送達機構が、剤に透過性の材料で製造されたリザーバの部分を少なくとも含む、請求項19に記載の送達デバイス。
【請求項27】
リザーバの、剤に透過性の材料で製造されたパーセンテージが、剤の送達速度を制御する、請求項26に記載の送達デバイス。
【請求項28】
送達機構が、リザーバにおける少なくとも1つの開口部を含む、請求項19に記載の送達デバイス。
【請求項29】
送達機構が、リザーバの遠位端の単一の開口部を含む、請求項28に記載の送達デバイス。
【請求項30】
リザーバにおける少なくとも1つの開口部の大きさおよび/または数が、剤の送達速度を制御する、請求項28に記載の送達デバイス。
【請求項31】
送達機構が、中空体の遠位端から延びている中空チューブである、請求項19に記載の送達デバイス。
【請求項32】
デバイスを処置領域に固定するためのハブをさらに備えた、請求項19〜31のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項33】
中空体が硬質である、請求項19〜32のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項34】
中空体が円筒形の形状である、請求項19〜33のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項35】
注入ポートが、注入可能な自己密封型の材料で製造されている、請求項19〜33のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項36】
注入可能な自己密封型の材料が、シリコーンゴム、シリコーンエラストマーおよびポリオレフィンから選択される、請求項35に記載の送達デバイス。
【請求項37】
デバイスが、閉鎖するのにわずかな縫合を要するか、または縫合を要しない切開を通じて挿入できる、請求項1〜36のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項38】
空の送達デバイスの断面の最大寸法が、約0.25mm〜約1mmの範囲である、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項39】
空の送達デバイスの断面の最大寸法が、約0.25mm〜約0.5mmの範囲である、請求項38に記載の送達デバイス。
【請求項40】
デバイスが、約0.5cm〜1.5cmの範囲の長さを有する、請求項1〜39のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項41】
中空チューブが、約1cm〜約2.5cmの範囲の長さを有する、請求項10〜31のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項42】
中空チューブが、約0.1mm未満の外径、および約0.001mm〜約0.007mmの範囲の内径を有する、請求項10、31または41のいずれかに記載の送達デバイス。
【請求項43】
中空チューブが、約0.001mm〜約0.005mmの範囲の内径を有する、請求項42に記載の送達デバイス。
【請求項44】
剤を収めているリザーバのエラストマー性を利用して、剤をリザーバから処置部位へ所望の速度で送達する、持続的送達デバイス。
【請求項45】
持続的送達デバイスであって、
エラストマー性材料で製造されたリザーバであって、該リザーバが近位端および遠位端を有するもの、
リザーバの近位端近傍の、リザーバ中への剤の注入のための注入ポート、および
剤をリザーバから患者の眼の内部に所望の速度で送達するための送達機構
を備え、それにより、該送達デバイスが、剤を所望の速度で送達するためにリザーバのエラストマー特性を用いる、前記送達デバイス。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれかに記載の送達デバイスを1種または2種以上含む、医療デバイスキット。
【請求項47】
1種または2種以上の送達デバイスが無菌条件下で包装されている、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
剤を持続的に放出するための方法であって、該方法が、
(a)近位端と遠位端とを有する柔軟なリザーバであって、該リザーバが空であるもの、
リザーバの近位端近傍の、剤をリザーバに注入するための注入ポート、および
剤をリザーバから患者へ送達するための送達機構
を備えた持続的送達デバイスを提供する工程、
(b)処置領域にアクセスするために患者に切開を設ける工程、
(c)柔軟なリザーバを挿入のために圧縮する工程、
(d)送達デバイスを、注入ポートが切開の外部に残るように、切開を通じて処置領域に挿入する工程、
(e)剤を注入ポートを通じて注入するために、注入機構を用いる工程、
(f)治療剤がリザーバ中に流入させる工程、
(g)注入機構を注入ポートから取り外し、注入ポートを閉鎖する工程、
(h)治療剤がリザーバの外へ、および、送達機構を通じて患者へ移動することを可能にする工程、
(i)随意的に工程(c)〜(h)を1回または2回以上繰り返す工程、および
(j)送達デバイスを処置領域から除去する工程、
を含む、前記方法。
【請求項49】
剤を持続的に送達するための方法であって、該方法が、
(a)近位端と遠位端とを有する中空体、
中空体の近位端近傍の、剤をリザーバに注入するための注入ポート、
中空体の少なくとも一部分をカバーする柔軟なリザーバであって、該リザーバが空であるもの、および
剤をリザーバから患者へ送達するための送達機構
を備えた持続的送達デバイスを提供する工程、
(b)処置領域にアクセスするために患者に切開を設ける工程、
(c)挿入のために柔軟なリザーバを中空体の周囲に圧縮する工程、
(d)送達デバイスを、注入ポートが切開の外部に残るように、切開を通じて処置領域に挿入する工程、
(e)剤を注入ポートを通じて注入するために、注入機構を用いる工程、
(f)治療剤が中空体を通じ、中空体における少なくとも1つの開口部を通じて、リザーバ中に流入することを可能にする工程、
(g)注入機構を注入ポートから取り外し、注入ポートを閉鎖する工程、
(h)治療剤がリザーバの外へ、および、送達機構を通じて患者へ移動することを可能にする工程、
(i)随意的に工程(c)〜(h)を1回または2回以上繰り返す工程、および
(j)送達デバイスを処置領域から除去する工程、
を含む、前記方法。
【請求項50】
剤を持続的に送達するための方法であって、請求項1〜45のいずれかに記載の持続的送達デバイスを切開を通じて処置領域に挿入し、リザーバを充填するために治療剤を注入ポートを通じて該デバイスに注入し、そして、該送達デバイスが処置部位に所定の速度で剤を送達することを可能にすることにより、該デバイスを用いることを含む、前記方法。
【請求項51】
剤を収めているリザーバのエラストマー特性を用いて、剤をリザーバから処置部位に所定の速度で送達することを含む、剤を持続的に放出するための方法。
【請求項52】
請求項1〜45のいずれかに記載の持続的送達デバイスを用いて、1または2以上の治療剤を患者の眼に送達することを含む、眼症状を処置するための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96056(P2012−96056A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2591(P2012−2591)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2010−157037(P2010−157037)の分割
【原出願日】平成14年6月12日(2002.6.12)
【出願人】(500361342)ジョンズ ホプキンズ ユニヴァーシティ スクール オヴ メディシン (3)
【Fターム(参考)】