説明

眼球内薬物送達のための移植物

眼球内薬物送達を行い炎症性または変性疾患を治療するための移植物。1実施形態では、移植物は、第1の末端部分および反対側の第2の末端部分を有し、第1の末端部分に第1の開口部と第2の末端部分に反対側の第2の開口部とを備えたキャビティを形成する本体部分、およびキャビティ内に収容される固形物質を含み、固形物質は、デポー製剤材料および有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤からなる。移植物が生体の目に埋め込まれると、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が長期間にわたって第1の開口部および反対側の第2の開口部のうちの少なくとも一方を通して移植物の周囲環境に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、眼内移植物に関するものであり、より具体的には、眼球内疾患治療用の放出可能な少なくとも1つの化合物または薬剤を内部に備えた移植物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願は、米国を除くすべての国における出願人としてアイルランドの法人であるテラカイン コーポレイション(Therakine Corporation)の名前で、また米国のみ指定の出願人としてそれぞれ米国在住のアンドレアズ・レイフ(Andreas Reiff)、スコット・エム・ハンプトン(Scott M. Hampton)、およびリチャード・ペイン(Richard Payne)の名前で2005年11月16日にPCT国際特許出願として出願中である。
【0003】
(関連特許出願への相互参照)
本願は、本願明細書に援用する2004年11月24日出願のスコット・エム・ハンプトン(Scott M. Hampton)およびアンドレアズ・レイフ(Andreas Reiff)による「EYE IMPLANT WITH MEDICINE RELEASE」という表題の米国仮特許出願第60/630,751号の利益を、米国特許法第119条(e)に準じて主張するものである。
【0004】
参照文献がある場合、特許、特許出願、およびさまざまな出版物を含みうるものであり、本発明の説明において引用され、説明される。このような参照文献の引用および/または説明は、本発明の説明をわかりやすくすることのみを目的として述べられており、このような参照文献が本明細書で説明されている本発明の「従来技術」であるということを認めるものではない。本明細書で引用され説明されているすべての参照文献は、それぞれの参照文献が参照により個別に組み込まれているのと同じ程度で本願明細書に援用される。注記しておくと、これ以降、「[n]」は、参照文献一覧表に引用されているn番目の参照文献を表す。例えば、[10]は、参照文献一覧表に引用されている10番目の参照文献、つまり、フランクス・ダブリュー・エー(Franks WA.) リム・ジー・エー(Limb GA.) スタンフォード・エム・アール(Stanford MR.)オーグルビー・ジェー(Ogilvie J.) ウォルステンクロフト・アール・エー(Wolstencroft RA.) チグネル・エー・エイチ(Chignell AH.) デュモン・ディー・シー(Dumonde DC)、「Cytokines in human intraocular inflammation」、Current Eye Research.第11巻、追補:187〜91ページ、1992年である。
【0005】
(発明の背景)
目の多くの慢性疾患は、視力喪失または失明を含む長期にわたる損傷を引き起こすかもしれず、また引き起こす可能性がある。2つの主要な疾患カテゴリとして、非感染性慢性炎症性眼疾患と、加齢性黄斑変性症または糖尿病性網膜症などの変性血管障害とに区別することができる。最近の研究により、炎症機序が目の変性疾患に関わっていることが示唆されており[19、20、21、22、23]、したがってこれらのカテゴリは、略式というよりも描写的であり、重複した特徴を持ちうることが示唆されている。
【0006】
第1のカテゴリである、炎症性眼疾患では、目を自己攻撃性白血球の侵入から遮蔽するバリアが自己免疫プロセスにより破られ、「目にとって異物である」白血球が目に侵入し
てその内層を攻撃することが可能となる。ブドウ膜炎という用語は、感染由来または自己免疫由来の約50の異なる実体からなる、眼内の炎症を意味する。眼内の炎症は、一般に、ブドウ膜と呼ばれる、生体の目の中間層に発生する。ブドウ膜は、虹彩、毛様体、および脈絡膜を含む。覆っている網膜の炎症である網膜炎、または視神経の炎症である視神経炎は、ブドウ膜炎を伴って発生する場合もあるし、伴わずに発生する場合もある。原発性ブドウ膜炎(「特発性」)は、原因不明の眼内炎症を指す(症例のおおよそ40%が第三次医療施設において見られる)。二次性ブドウ膜炎(ブドウ膜炎について何らかの説明を伴うすべての症例)は、周知の感染原因(例えば、トキソプラズマ症またはCMV網膜炎)の全身性疾患(例えば、強直性脊椎炎またはサルコイドージス)に関連する炎症性眼症状、または眼科症候群(例えば、フックス症候群(Fuchs uveitis syndrome)、散弾網脈絡膜症候群(Birdshot syndrome)、または匐行性脈絡膜炎)と定義される炎症性眼症状の主な原因となっている。眼球内リンパ腫などの仮面症候群は、原発性または二次性ブドウ膜炎とは異なる。
【0007】
ブドウ膜炎の病因および発症機序は、まだ完全には理解されていない。ブドウ膜炎は、感染、悪性腫瘍、毒素への曝露、および自己免疫疾患が原因であると考えられる。免疫機構のかく乱は、長い間、眼内の炎症に中心的役割を果たしていると疑われていた。感染物との関連が特定され得ない内因性ブドウ膜炎の症例の大半において、これまで自己免疫が原因であろうと信じられてきた。
【0008】
動物から集められた臨床データから、自己免疫性ブドウ膜炎に対する感受性は、レチナール抗原に対する自己反応性T細胞のTh1優勢型の応答により引き起こされることが示唆される。Th1細胞は、主に、INFγ、IL2、12、18などのサイトカインを産出するが、TNFは、細胞媒介性自己免疫と主に関連している。眼球および全身でIL−1βおよびTNFのレベルが著しく高いことは、局所的な眼球での応答だけでなく、全身性の応答もあることを示唆している。IL−1βおよびTNFが存在すると、ひとたび血液眼球関門が破られて眼球抗原が全身性免疫系に曝されてしまえば、眼の炎症の発症機序に一定の役割を果たす可能性がある。特に、IL−6およびIL−1は、眼の慢性炎症に関連する病理学的過程において局所的増幅シグナルとして作用しうる。さらに、IL2、IL4、IL6、IL8、IL12、IL15、IL17、IL18などの他の炎症性サイトカインおよびマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)などのケモカインは、眼の慢性炎症に重要な役割を果たす。
【0009】
ブドウ膜炎の発生は、最近10年間に増大しつつあるようであり、115.3/100,000人の期間有病率で約52.4/100,000人・年である。毎年約420,000人のアメリカ人が、ブドウ膜炎に苦しんでいる。ブドウ膜炎の発生率と有病率は、小児年齢層で最も低く、年齢とともに上昇し、65歳以上の患者で最高となる。
【0010】
ブドウ膜炎の眼の合併症は、特に、このような眼の合併症に気づかず、および/または不適切な治療をされた場合に、失明という深刻な取り返しのつかない事態を引き起こす。最もよくある合併症のいくつかとして、白内障、緑内障、網膜剥離、類嚢胞黄斑浮腫、網膜、視神経、および虹彩の新血管形成がある。
【0011】
成人のブドウ膜炎の長期転帰は、プロスペクティブ研究が利用できないため、不明である。自己免疫症(若年性関節リウマチなど)の小児集団では、5年後の永久的失明の危険性は、局所ステロイド療法および全身免疫抑制療法による積極的治療にも関わらず、約10%で変わらないままである。約30%は、著しく視力を喪失し、一生補助を必要とする。ブドウ膜炎は、痛みと光感受性を引き起こすため、生活の質に対する影響は、「穏やかな」症例の場合であっても、数字が示す以上にかなり重大である。
【0012】
慢性眼疾患の第2のカテゴリ、変性血管障害では、加齢に関係する因子または代謝因子により血管が閉塞し、眼の重要部分に血液が供給されなくなる。その結果、眼は、血液供給の不足を補うため、閉塞した古い血管の周りに新しい血管を急速に形成し始める。しかし残念なことに、これらの修復機序は不十分であることが多く、新しく形成された血管は多くの場合破裂し、その結果、血液が目の中に流れ込み、網膜剥離を引き起こす。
【0013】
変性カテゴリにおける最も重要な疾患は、加齢性黄斑変性症および糖尿病性網膜症とともに、類嚢胞黄斑浮腫を含む。
黄斑変性症は、先進国世界の高齢者集団における最も一般的な失明原因である。黄斑変性症では、黄斑部の感光細胞が正常に機能せず、時間が経つうちに働きを停止してしまう。黄斑変性症は、60歳を超える高齢者に最も多く発生し、この場合、加齢性黄斑変性症(AMDまたはARMD)と呼ばれるが、子供を含む全年齢で発症しうる。AMDの最も一般的な初期兆候として視力がかすみ、次に、直線が波打って見えるようになり、そして最後に、視力および感色性を失うに至る。黄斑部は、中心の視野を与える網膜の一部であり、変性すると、視力が部分的に失われるか、または完全に失われる。AMD症例の約85〜90%は、ドルーゼンと呼ばれる脂肪性沈着物の黄色っぽい斑点が黄斑部上に見える乾燥型または萎縮型である。AMD症例の残りは、滲出型であり、網膜の背後の目の一部である脈絡膜内に新たに形成する血管から網膜内に漏出があるためそう呼ばれる。通常は、脈絡膜内の血管は、栄養物を網膜に届け、廃棄物を網膜から運び去る。ときには、黄斑部の下にある脈絡膜内の細かい血管が増殖し始めるが、これは、脈絡膜血管新生、またはCNVと呼ばれる過程である。原因は不明である。これらの血管は増殖すると漏出を生じ、黄斑部内の細胞は損傷を受けて死滅することがある。レーザー光凝固術は、眼科医が黄斑下新血管形成由来の漏出の治療を行うために使用する手技である。残念なことに、滲出型AMDの患者の約半分しか、レーザー光凝固術の対象とならず、レーザー光凝固術は、滲出型黄斑変性症の治療として行われるうちの約半分しか効果がない。効果がある場合、効き目は、平均して約1年間持続する。
【0014】
糖尿病性網膜症は、65歳未満のアメリカ人の間の後天的失明の主な原因である。糖尿病性網膜症は、糖尿病が発症した後、いつの時点でも発生しうる。糖尿病性網膜症で損傷を受けた血管は、2通りの仕方で失明を引き起こす可能性がある。脆い異常血管が成長して血液を目の中心部に漏出し、かすみ目をもたらしうる。これは、増殖性網膜症であり、第4の、そして最も進行した疾病段階である。流体が、鮮明な正中正面視覚を生じる目の部分である黄斑部の中心内に漏出する可能性もある。該流体は、黄斑部を腫脹させ、かすみ目をもたらす。この症状は、黄斑浮腫と呼ばれる。これは、糖尿病性網膜症のどの段階でも発生しうるが、病状が進行するとともに発生する可能性が高くなる。増殖性網膜症の人々の約半分は、黄斑浮腫も患っている。
【0015】
網膜の所見は、大小さまざまな出血(網膜自体の小さな出血)、微細動脈瘤(毛細血管の嚢状突起物)、滲出物(血管が漏出しやすくなった結果生じる網膜沈着物)を含む。1型(若年発症)糖尿病におけるこの症状の発症は、糖尿病の発病後3年または4年より前には希にしか存在しない。2型(成人発症)糖尿病では、この症状の診断時点で背景の糖尿病性網膜症が存在している場合がある。この失明の大半は、眼科医による適切な検査と治療で予防できる。しかし残念なことに、評価および管理を適切にされていない患者、または何らかの理由により眼科医にきちんと診てもらえない人は、失明する危険性が最も高い。
【0016】
さまざまな治療法の選択肢が、これら2つのカテゴリの疾患を患っている患者向けに、開発されている。
炎症性眼疾患の場合、非感染性および/または自己免疫性ブドウ膜炎の治療は、局所ステロイド点眼薬および/またはコルチコステロイドを、抗菌剤および毛様筋調節薬の点眼
剤と併用して投与することを含む。大半の患者が患うブドウ膜炎は穏やかなものであるが、ブドウ膜炎は数ヶ月と長引くこともあり(数年間続くことも多い)、虹彩またはレンズに対する後遺症は希なことではない。緑内障(眼球内の圧力増大)は、ステロイド点眼薬の別の副作用であり、さらに患者の視界を制限する可能性がある。場合によっては、目の周りの組織にステロイドを注射する必要があるかもしれない。これが効果を有しない場合、コルチコステロイドを経口投与することがあるが、体重増加(顔面への脂肪沈着物発生を含む)、感染の危険性増大、骨粗鬆症、衰弱、糖尿病、あざができやすく創傷治癒が遅い、にきび、塩類貯留、および高血圧症などのよく知られている副作用がある。目に及ぶ他の危険としては、白内障と緑内障がある。
【0017】
臨床的研究により、免疫系の要素を調節するように設計された抗体を使用すると、目の炎症状態および変性状態において好ましい結果が得られることが証明されている。しかし、抗体化合物は、静脈内(IV)または皮下注射のいずれかにより全身投与しなければならない。この全身への使用の問題点は、全身性感染症、結核の再燃、および多発性硬化症の患者の脳における脱髄の危険性である。さらに、目は、血液に対する天然の関門を備えた適切に遮蔽された器官であるため、抗体を使った治療では、関節リウマチで必要とされる投薬量よりもかなり多い投薬量を必要とする。そのため、このような治療にかかる費用は、きわめて高くなる可能性がある。
【0018】
炎症性眼疾患の場合、治療は、慢性炎症性眼疾患を調節する抗サイトカインまたは抗ケモカインを使用することにより円滑になり、多数のこのような薬物が、全身使用され、よい成果を上げている。しかし、静脈注射などの全身使用は、費用がかかり、副作用を伴い、必ず効果があるというわけではない。これらの薬物を本発明のいくつかの実施形態によるデバイスおよび方法を介して直接目に投与することにより、全身性の副作用を回避し、炎症の局所制御を改善することができる。それに加えて、本発明では局所炎症の調節のみを行えるため、患者の免疫系は実質的に変わることがない。
【0019】
ほかにも独自の特徴があるが、中でも変性血管障害を持つ患者については、本発明により、目に直接薬物を送達することができるが、抗サイトカインまたは抗ケモカインを使用する代わりに、タンパク質阻害剤、いわゆるMAPキナーゼ阻害剤を使用することにより、新しい血管の形成をもたらす細胞内シグナルを正確に阻害する。タンパク質阻害剤は、長期間にわたって眼内に直接送達される。このことにより、さらに、目からの破局的出血または目への破局的出血を防ぐことができ、また網膜を再付着するのに高価なレーザー手術を使わなくて済む。これらの薬物は、すでに固形腫瘍の治療に役立っており、該治療においては新しい血管の形成を妨げることによって成長中の腫瘍への血液供給を断ち、腫瘍を死に至らせる。炎症は、黄斑変性症などの変性眼疾患の要因として関わっているとされており、これらの疾患の効果的な治療を行うには、複数の薬剤を使用して、炎症および新たな血管形成を調節する必要があると思われる。
【0020】
炎症および細胞形質転換に関わる細胞内シグナル伝達経路、ならびに同経路の自己免疫疾患との関係は、まだ探索が始まったばかりである。リンパ球および自己免疫疾患に関わる細胞における原形質膜から核へのシグナル伝達に関わる酵素の同定は、リンパ球の分化ならびに発生時細胞および成熟細胞における自己と非自己の識別に関与する機序を将来理解するうえで大きく寄与する可能性が高い。
【0021】
これらの経路に関わる、選択的キナーゼまたは下流転写因子と呼ばれる酵素の化学的操作は、新規な治療的介入の独自の機会となる。特定のシグナル伝達または転写因子標的の阻害により、多くの自己免疫疾患に関わる永続化機序を遮断することが可能である。該当する経路の遮断を行うことで、リンフォカイン遺伝子発現などの細胞応答や、細胞によるTNFその他の炎症性サイトカインの放出を阻害することによるホメオスタシスの再確立
の機会が得られるということもありうる。
【0022】
認識する抗原および実行するエフェクタ機能に違いがあるにも関わらず、Bリンパ球およびTリンパ球は、顕著に類似したシグナル伝達成分を利用して応答を開始する。シグナル伝達経路が高い多様性を持っているとしても、シグナル伝達経路は所定の転写因子または転写因子ファミリに対する異常なほどの特異性を示す。多数の転写因子ファミリ、例えば活性化タンパク質1(AP−1)/活性化転写因子2(ATF2)、核因子κB(NF−κB)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、および核ホルモン受容体のファミリなどが、炎症を背景とした遺伝子発現の重要な調節因子と考えられている。
【0023】
エンドトキシン誘発ブドウ膜炎(EIU)などのブドウ膜炎の動物モデルにおいて、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)経路と呼ばれるシグナル伝達経路は、網膜の炎症に重要な役割を果たしている。
【0024】
さらに、他のマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケードは、細胞内シグナル伝達に関わる主要なタンパク質キナーゼファミリの1つであり、ベーチェット病(BD)およびブドウ膜炎の患者の血清中の抗内皮細胞抗体(AECA)の活性化に関与すると考えられている。IgM亜型のAECAは、TNFαまたはIL−1αなどの炎症性サイトカインの助けとは無関係に、内皮細胞(HDMEC)を直接活性化することにより、脈管炎およびBDの炎症性病変の誘発における発病要因となりうる。これらの抗体は、リンパ球を誘引して血流を出て目に浸潤させることにより、慢性炎症反応の永続化を助長する。MAPKカスケード経路の酵素を阻害すると、抗体産生が停止した。
【0025】
まとめると、ブドウ膜炎の治療に小分子阻害剤が役割を果たすという証拠はまだほとんど明らかにされていないが、予備的証拠から、小分子阻害剤が、近い将来ブドウ膜炎の治療に重要な役割を果たす可能性が示唆されている。
【0026】
説明されている疾患のすべてに複数のシグナル伝達経路が関与していることが知られているため、これらの疾患に対する最も効果的な局所治療は、その炎症および/または変性を引き起こすその疾病疾患の経路に選択的な複数の化合物を使用することである可能性が非常に高い。炎症および新血管形成の別々のプロセスが同時に発生することが示されていても、変性眼疾患に対する現在の治療パラダイムでは、単一の化合物が通常は全身的に投与されてきた。抗サイトカイン、抗ケモカイン、キナーゼ阻害剤、および他のシグナル調節剤の組合せを使用して局所に送達することにより複数の経路を標的とすることで、これらの眼疾患を治療して、安全性を確保しつつ優れた成果をもたらすことを可能とし、失明の主要原因の治療に対する新しいアプローチが得られる。これらの疾患は複合的なので、最良の治療法の選択肢が、複数の化合物を放出する単一の埋め込み送達デバイスであるのか、単一の化合物のみをそれぞれ放出し、それぞれにおいて医師が特定の治療プロファイルに合わせて治療を修正することができる、埋め込み送達デバイスの集合体であるのかはまだはっきりしていない。
【0027】
したがって、前述の不備および不適切を解消する今まで取り組まれていなかったニーズが、当技術分野に存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、眼球内薬物送達のための移植物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
1態様では、本発明は、眼内の炎症性または変性疾患の治療のための眼球内薬物送達用の移植物に関する。1実施形態では、移植物は本体部分を備える。本体部分は、第1の末端部分、反対側の第2の末端部分、外面、内面、および第1の末端部分と第2の末端部分との間に定義される長さLを有する。本体部分は、第1の末端部分に第1の開口部、第2の末端部分に反対側の第2の開口部を備えたキャビティを形成する。1実施形態では、本体部分の断面は、円形、正方形、楕円形、または多角形である。移植物はさらにキャビティ内に固形物を含み、該固形物は、デポー製剤材料と、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤からなる。
【0030】
移植物は、さらに、少なくとも1つの治療化合物または薬剤が移植物の周囲環境へ制御放出される際に通る本体部分の第1の開口部を覆う第1の膜、および少なくとも1つの治療化合物または薬剤が移植物の周囲環境へ制御放出される際に通る本体部分の第2の開口部を覆う第2の膜をも備えることが可能である。第1の膜および第2の膜はそれぞれ、生分解性物質で作られる。
【0031】
1実施形態では、移植物は、生体の後眼房の硝子体または他の部分に移植され、移植物のキャビティが、第1の開口部および反対側の第2の開口部のうちの少なくとも一方を通して後眼房の硝子体または他の部分と流体連絡するようになされる。移植物が生体の目に埋め込まれると、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が長期間にわたって第1の開口部および反対側の第2の開口部のうちの少なくとも一方を通して移植物の周囲環境に放出される。1実施形態では、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質を含むデポー製剤材料を通した拡散、および該デポー製剤材料の溶解により移植物の周囲環境に放出される。
【0032】
1実施形態では、移植物の本体部分は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および生体適合性移植可能ポリマーから選択された不活性ポリマー材料から作られる。
【0033】
他の実施形態では、移植物の本体部分は、有効な量の少なくとも1つの治療化合物が移植物の周囲環境に放出されたときに、本体部分がin situで徐々に再吸収されるかまたは分解するように、生体分解性物質から作られる。生体分解性物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック(Pluronic)類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール(carbopol)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質を含む。
【0034】
1実施形態では、可溶性結合剤物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、糖類および変性糖類例えばトレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック
類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの共重合体または組合せのうち少なくとも1つを含む。
【0035】
1実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、少なくとも1つの、腫瘍壊死因子α(TNFα)の作用に特異的または機能的に対抗する生体免疫調節剤または抗炎症薬;インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−17、およびインターロイキン−18を含むインターロイキン;MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体(Cognate receptor)、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3の作用に特異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ;構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等のケモカインまたは合成分子;腫瘍増殖因子(TGF)および関係する抗炎症性増殖因子;副刺激分子阻害剤、例えば、CTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤;接着分子阻害剤、例えば、α4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤、αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、および熱ショックタンパク質を含む。
【0036】
少なくとも1つの治療化合物または薬剤はさらに、炎症および血管形成を低減または阻害するために、以下のシグナル経路調節剤のうちの少なくとも1つを含んでもよいし、またはシグナル経路に関わるものでもよく、例えば、NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性化経路、すべてのRho媒介経路、およびすべてのNIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路ならびに他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路などを阻害または遮断する小分子阻害剤を含む。
【0037】
他の実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、上述の薬剤の任意の組合せを含む。
他の実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、抗体、ナノボディ、抗体断片、シグナル伝達経路阻害剤、転写因子阻害剤、受容体拮抗薬、小分子阻害剤、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの細胞表面受容体のアロステリック調節因子、細胞表面受容体内在化誘導因子、ならびにGPCR逆作動薬などのうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
他の態様では、本発明は、眼球内薬物送達のための移植物に関する。1実施形態では、移植物は、外面と内面とを有する本体部分を有し、内面は少なくとも1つの開口部を備えたキャビティを形成する。1実施形態では、本体部分の外面は、半球体の幾何学的形状を
有する。移植物は、さらに、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤をキャビティ内に収容し、移植物が生体の目に埋め込まれると、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、長期間にわたって少なくとも1つの開口部を通して移植物の周囲環境に放出される。
【0039】
移植物はさらに可溶性結合剤物質を有し、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は該可溶性結合剤物質により安定化され、キャビティ内に収容される化合物を形成する。可溶性結合剤物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、糖類および変性糖類、例えばトレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの共重合体または組合せのうち少なくとも1つを含む。
【0040】
1実施形態では、移植物は、少なくとも1つの治療化合物または薬剤が移植物の周囲環境へ制御放出される際に通る本体部分の少なくとも1つの開口部を覆う膜を備えることが可能であり、前記膜は、生体分解性物質から作られる。
【0041】
1実施形態の移植物の本体部分は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および類似の生体適合性移植可能人工ポリマーからなる群から選択された不活性ポリマー材料から作られる。
【0042】
他の実施形態では、本体部分は、有効な量の少なくとも1つの治療化合物が移植物の周囲環境に放出されたときに、本体部分がin situで徐々に再吸収されるかまたは分解するような生体分解性物質から作られる。生体分解性物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの任意の共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質からなる。
【0043】
1実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、少なくとも1つの、腫瘍壊死因子α(TNFα)の作用に特異的または機能的に対抗する少なくとも1つの免疫調節剤または抗炎症薬;インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−17、およびインターロイキン−18を含むインターロイキン;MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP 1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3の作用に特
異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ;構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等のケモカインまたは合成分子;腫瘍増殖因子(TGF)および関係する抗炎症性増殖因子;CTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質を含む副刺激分子阻害剤;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤;α4−インテグリン阻害剤を含む接着分子阻害剤;PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤;αメラニン細胞刺激ホルモン(αMSH);抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1;熱ショックタンパク質を含む。
【0044】
少なくとも1つの治療化合物または薬剤はさらに、炎症および血管形成を低減または阻害するために、以下のシグナル経路調節剤のうちの少なくとも1つを含んでもよいし、または以下の経路に関与するものであってもよく、例えば、NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性化経路、すべてのRho媒介経路、およびすべてのNIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路、ならびに他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路などを阻害または遮断する小分子阻害剤を含みうる。
【0045】
他の実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、少なくとも2つの治療化合物からなり、そのうち少なくとも1つは、生体の目に関係する炎症性および/または自己免疫性障害に関わるシグナル伝達経路を同時かつ相乗的に遮断することにより炎症性疾患を治療する抗サイトカインまたは抗ケモカインである。
【0046】
さらに他の実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、抗体、ナノボディ、抗体断片、シグナル伝達経路阻害剤、転写因子阻害剤、受容体拮抗薬、小分子阻害剤、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、干渉RNA、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの細胞表面受容体のアロステリック調節因子、細胞表面受容体内在化誘導因子、およびGPCR逆作動薬のうちの少なくとも1つを含む。
【0047】
1実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、移植物の周囲環境に放出可能な複数の粒子の形態をとる。
1実施形態では、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質を通した拡散、および該可溶性結合剤物質の溶解により移植物の周囲環境に放出される。
【0048】
1実施形態では、移植物が生体の目の中に埋め込まれる場合、移植物は生体の後眼房の硝子体または他の部分に、またはその周辺に配置され、移植物のキャビティが、少なくとも1つの開口部を通して後眼房の硝子体または他の部分と流体連絡するようになされる。
【0049】
さらに他の態様では、本発明は、眼科用移植物に関する。1実施形態では、眼科用移植物は、第1の物質と、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を含む第2の物質とを含み、第1の物質および第2の物質は固体を形成するように構成され、眼科用移植物が生体の目に埋め込まれると有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が長期間にわたって移植物の周囲環境に放出されうる。眼科用移植物は、有効な量の少なくとも
1つの治療化合物または薬剤を含有する第3の物質を含みうる。
【0050】
1実施形態では、第1の物質および第2の物質は層構造に形成される。他の実施形態では、第1の物質、第2の物質、および第3の物質が層構造に形成される。眼科用移植物が生体の目に埋め込まれると、異なる層内の物質は、異なる速度で、それぞれに、または次々に、眼科用移植物の周囲環境に放出される。
【0051】
別例として、第1の物質および第2の物質はウェハ状構造に形成される。第1の物質および第2の物質は固体に形成され、任意のある部位における該物質の密度が、ほぼ、第1の物質の密度と第2の物質の密度とのうちの一方であるようになされる。
【0052】
1実施形態では、第1の物質は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および類似の生体適合性移植可能人工ポリマーの群から選択された不活性ポリマー材料からなる。
【0053】
他の実施形態の第1の物質は、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が眼科用移植物の環境に放出されたときに、第1の物質がin situで徐々に分解または溶解するような生体分解性物質からなる。生体分解性物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの任意の共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質からなる。
【0054】
第2の物質はさらに可溶性結合剤物質を含む。少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質で安定化される。1実施形態の可溶性結合剤物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンなどの変性多糖類、糖類および変性糖類、例えばトレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの共重合体または組合せのうち少なくとも1つを含む。
【0055】
有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質を通した拡散、および該可溶性結合剤物質の溶解により眼科用移植物の周囲環境に放出される。
1実施形態では、眼科用移植物が生体の目の中に埋め込まれる場合、眼科用移植物は、生体の後眼房の硝子体または他の部分に、またはその周辺に配置される。
【0056】
他の態様では、本発明は、眼内または眼の周辺の炎症性および変性疾患を治療する方法に関する。1実施形態では、この方法は、第1の物質と有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を含む第2の物質とを有する眼科用移植物を提供する工程であって、第
1の物質および第2の物質が固体を形成するように構成される工程を含む。さらに、この方法は、生体の目の中に眼科用移植物を埋め込む工程を含む。有効な量の少なくとも1つの治療化合物は、長期間にわたり眼科用移植物の周囲環境に放出可能である。この方法は、さらに、目の中に眼科用移植物を残す工程も含む。
【0057】
1実施形態では、第1の物質は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および類似の生体適合性移植可能人工ポリマーの群から選択された不活性ポリマー材料からなる。他の実施形態では、第1の物質は、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が眼科用移植物の周囲環境に放出されたときに、第1の物質がin situで徐々に分解または溶解するような生体分解性物質からなる。
【0058】
第2の物質はさらに可溶性結合剤物質を含み、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質で安定化される。有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質を通した拡散、および該可溶性結合剤物質の溶解により眼科用移植物の周囲環境に放出される。
【0059】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面とともに好ましい実施形態についての以下の説明を読むことで明らかになるが、ここに記載されている変更形態および修正形態は、本開示の新規な概念の精神および範囲から逸脱することなくなされうる。
【0060】
添付の図面は、本発明の1つまたは複数の実施形態を例示するものであり、記述された説明と併せて、本発明の原理を説明するために使用される。図面全体を通して、可能な限り、実施形態の同一または類似の要素を指すために同じ参照番号が使用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
(発明の詳細な説明)
本発明を以下の実施例においてより具体的に説明するが、該実施例は単なる例示として意図されている。というのも、該実施例の多数の修正形態および変更形態が当業者には明らかであるからである。次に、本発明のさまざまな実施形態について、詳しく説明する。図1〜10の図面を参照すると、類似の番号は、図面全体を通して類似の要素を示している。本明細書の説明において、また特許請求の範囲全体を通して使用されているように、「1つの(a)(an)」、および「その(the)」の意味は、文脈上そうでないことが明確でない限り、複数形の参照を含む。また、本明細書の説明中および特許請求の範囲全体を通して使用されているように、「〜の中に(in)」の意味は、文脈上そうでないことが明確でない限り、「〜の中に(in)」および「〜上に(on)」を含む。さらに、本明細書では、読者の便宜のため標題または副題が使用される場合があるが、これらは本発明の範囲に対し影響を持たないものとする。さらに、本明細書で使用されるいくつかの用語について以下により具体的に定義する。
【0062】
定義
本明細書中で使用される用語は、一般的に、本発明の文脈の範囲内で、またそれぞれの用語が使用される特定の文脈において、当技術分野における通常の意味を有する。
【0063】
本発明の装置および方法、およびそれらの製造方法および使用方法を説明するにあたって、実施者のための追加の手引きとなるように、本発明を説明するために使用されるいくつかの用語について以下に説明するか、または明細書の他の場所で説明する。便宜上、いくつかの用語は、例えば斜体および/または引用符を使用して強調表示される場合がある。強調表示を使用しても、用語の範囲および意味に影響を及ぼさず、用語の範囲および意
味は、同じ文脈では、強調表示されようとされまいと同じである。同じ内容が複数の言いまわしで述べられることは理解されるであろう。したがって、別の言葉および同義語が、本明細書で説明されている1以上の用語に対し使用される場合があり、ある用語が本明細書において詳述または解説されるかどうかについては特別な意味はない。いくつかの用語に対し同義語が用意される。1つまたは複数の同義語が使用されても、他の同義語を使用できないわけではない。ここで説明されている用語の例など、本明細書のどこで使用される例も、単なる例示であり、決して、本発明または例示されている用語の範囲および意味を制限するものではない。同様に、本発明は、本明細書で取り上げられているさまざまな実施形態に限定されるものではない。さらに、副題を使用して、本明細書の読者が明細書を通覧しやすいようにしているが、副題を使用したとしても、本発明の範囲に影響が及ぶわけではない。
【0064】
本明細書で使用されているような、「おおよそ、約、ほぼ(around,about,approximately」は、一般的に、所定の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味するものとする。本明細書で使用する数量は、近似値である、つまり、断りのない限り「おおよそ、約、ほぼ(around,about,approximately」という用語が推察されるものである。
【0065】
本明細書で使用されているように、「ブドウ膜炎」という用語は、一般的に、感染由来または自己免疫由来の少なくとも50の異なる実体からなる眼内の炎症を指し、原発性ブドウ膜炎(「特発性」)は、不明原因の眼内炎症を指す(症例のおおよそ40%が第三次医療施設において見られる)。二次性ブドウ膜炎(ブドウ膜炎について何らかの説明を伴うすべての症例)は、周知の感染原因(例えば、トキソプラズマ症またはCMV網膜炎)の全身性疾患(例えば、強直性脊椎炎またはサルコイドージス)に関連する炎症性眼症状、または眼科症候群(例えば、フックス症候群、散弾網脈絡膜症候群、または匐行性脈絡膜炎)と定義される炎症性眼症状の主な原因となっている。眼球内リンパ腫などの仮面症候群は、原発性または二次性ブドウ膜炎とは異なる。
【0066】
「化合物」という用語は、細胞、神経、または組織などの生体系に影響を有する可能性のある、2以上の元素の化学結合を指す。本発明の実施に関係すると考えられる化合物の例として、以下の例示リスト内のものが挙げられる。
【0067】
抗炎症性化合物:
a)抗サイトカイン
抗腫瘍壊死因子α(TNFα)、例えば
(1)エタナーセプト(Etanercept)(p75 TNFr融合タンパク質)
(2)インフリキシマブ(Infliximab)(キメラ抗TNF Mab)
(3)アダリムマブ(Adalimumab)(ヒト抗TNF Mab)
(4)ワナーセプト(Onercept)(可溶性p55 TNFr)
または、抗体、ナノボディ、抗体断片、および受容体拮抗薬などの他の化合物。
【0068】
抗インターロイキン−1、例えば
(1)アナキンラ(Anakinra)(IL−1 1型受容体拮抗薬)
(2)IL1トラップ(リジェネロン社(Regeneron)、IL−1 1型受容体+IL−1融合タンパク質)または他の化合物。
【0069】
抗インターロイキン−2、例えば
(1)ダクリズマブ(Daclizumab)または他の化合物。
抗インターロイキン−4、例えば
(1)ヒト抗IL−4抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
(2)ヒト抗IL−4抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
または、他の化合物。
【0070】
抗インターロイキン−6、例えば
(1)MRA(中外製薬株式会社/ロッシュ社(Chugai Pharmaceuticals/Roche))または他の化合物。
【0071】
抗インターロイキン−8、例えば
(1)抗EGF−R抗体(C225)または他の化合物。
抗インターロイキン−12、例えば
(1)ヒト抗IL−12抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
(2)ヒト抗IL−12抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
または、他の化合物。
【0072】
抗インターロイキン−15、例えば
(1)ヒト抗IL−15抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
(2)ヒト抗IL−15抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
または、他の化合物。
【0073】
抗インターロイキン−17、例えば
(1)ヒト抗IL−17抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
(2)ヒト抗IL−17抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
または、他の化合物。
【0074】
抗インターロイキン−18、例えば
(1)ヒト抗IL−18抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
(2)ヒト抗IL−18抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))
または、他の化合物。
【0075】
b)サイトカイン
インターロイキン10および12。
c)TGFβおよび関係する抗炎症性増殖因子
d)抗ケモカイン/抗金属プロテアーゼ
MCP−1(9−76)
Groα(8−73)
V MIPII
CXCR4
Met−CCL5
Met−RANTES
経口CCR1拮抗薬およびその他
ならびに、以下のケモカインおよび金属プロテアーゼまたはその受容体:
RANTES(CCL5)
MIP1α(CCL3)
IP10(CXCL10)
VEGF
MCP 1−4(CCL1,CCL8,CCL7,CCL13)
CINC
同族受容体
GRO
CXCR4
ストローマ細胞由来因子−1
CCR4、CCR5、およびCXCR3など
を拮抗作用的に抑制する他のすべての潜在的化合物。
【0076】
e)副刺激分子阻害剤:
CTLA4 Ig
エファリズマブ(Efalizumab)(抗CD11a)はLFA1の固有のCD11a鎖に結合する
アレファセプト(抗CD2) LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質およびその他。
【0077】
f)一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤。
g)その他
接着分子阻害剤:α4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンの阻害剤、ICAM1、VCAM、およびその他など。
【0078】
αメラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)
抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、熱ショックタンパク質。
抗血管新生/抗変性化合物:
a)NF−κB阻害剤、例えば
ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)
プロテアソーム阻害剤、MG−132
ロリプラム、4型ホスホジエステラーゼ阻害剤
CM101
およびその他。
【0079】
b)転写因子、例えば
活性化タンパク質1(AP1)
活性化転写因子2(ATF2)
活性化T細胞の核因子(NF−AT)
転写因子STAT
p53
転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)
核ホルモン受容体
の阻害剤。
【0080】
c)以下の細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば:
PTEN
PI3キナーゼ
P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ
すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)
ERKシグナル伝達経路
JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)
すべてのRAS活性化経路
すべてのRho媒介経路
NIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2
を阻害または遮断する小分子阻害剤。
【0081】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、ブドウ膜炎の大半の動物モデルにおいて極めて重要な役割を果たす。それに加えて、TNFαは大半のサイトカインおよびケモカインを調節し、間接的に炎症過程に影響を及ぼす。複数の臨床試験から、TNFの阻害は、ブドウ膜炎その他の眼の炎症状態、例えばベーチェット病(BD)を治療する際に有益であることが実証された[13,16]。現在利用可能なTNF阻害剤には、エタナーセプト(p75
TNFr融合タンパク質)、インフリキシマブ(キメラ抗TNF Mab)、アダリムマブ(ヒト抗TNF Mab)、およびワナーセプト(可溶性p55 TNFr)がある。さまざまな自己免疫疾患に対し現在施されている投薬量は、エタナーセプト:50mgを週1回、皮下投与(SQ)、または小児の場合0.8mg/kg/週;アダリムマブ:40mgを隔週(EOW)で、皮下投与(SQ)、または小児の場合約1mg/kg/週;ならびにインフリキシマブ:3〜10mg/kgを0、2、6週目とその後1ヶ月おきに静脈内投与(IV)、である。インフリキシマブは、脈絡膜血管新生[19]、黄斑浮腫[20,23]、黄斑変性症[21]、および網膜静脈分枝閉塞症[22]などの変性疾患の患者の視力を改善することが証明されている。
【0082】
インターロイキン−1(IL−1)は、エンドトキシン誘発ブドウ膜炎においてTNFαよりも重要な役割を有するようであり、IL−1βは、LPS誘発ブドウ膜炎の主要なメディエータの1つである。IL−1は、眼の慢性炎症に関連する病理学的過程において局所増幅シグナルとして作用しうる[10]。IL−1βは、RVE細胞間の密着接合帯を開き、おそらくは経内皮小胞輸送を高めることにより、血液脳関門(BRB)を破る。現在利用可能なIL−1阻害剤は、[1]アナキンラ(IL−1 1型受容体拮抗薬)およびIL1トラップ(リジェネロン社(Regeneron)、IL−1 1型受容体+IL−1融合タンパク質)を含む。それに加えて、合成IL−1遮断薬(CK−138、139)は、ラットのIL−1α誘発ブドウ膜炎の治療に効果がある。さまざまな自己免疫疾患に対し現在施用されている投薬量は、アナキンラ:100mg/日、SQ、または小児の場合、約1mg/kg/日である。
【0083】
IL−2は、マイトジェンまたは抗原による活性化の後にT細胞により産生されるT細胞増殖因子として最初に同定されている。それ以降、IL−2は、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球活性化キラー(LAK)細胞、単球/マクロファージ、および乏突起膠細胞の増殖および分化を促すことも証明されている。アミノ酸配列レベルでは、ブタ生体のIL−2とヒトのIL−2との間には約72%の類似度、ラットのIL−2とマウスのIL−2との間には約80%の類似度がある。IL−2は、T細胞の刺激後に発現され、通常使用されるT細胞活性化のマーカーである。IL−2の周知の主要な生理学的作用は、Tリンパ球増殖因子として作用することである。水中および血清中の高いIL−2レベルが、ブドウ膜炎、特に、急性前部ブドウ膜炎およびBDの患者において観察されている[2,9,11]。血清IL2レベルの抑制は、さまざまな形態のブドウ膜炎の動物およびヒトに有益であることが証明されている[1]。現在利用可能なIL−2阻害剤には、ダクリズマブ(モノクローナル抗体)があり、ダクリズマブは、活性化されたリンパ球表面上のヒト・インターロイキン(IL)−2受容体のαサブユニット(CD25)に結合してIL−2の結合を防止することによりその作用を発揮する。移植拒絶反応
に対し現在施用されている投薬量は、小児および成人について、1投与あたり1mg/kg、全5回である。
【0084】
IL−4は、活性化T細胞、肥満細胞、および好塩基球により産生される多面発現性サイトカインである。IL−4は、B細胞刺激因子(BSF1)とともに、B細胞分化因子(BCDF)として最初に同定された。それ以降、IL−4は、B細胞およびT細胞、単球、マクロファージ、肥満細胞、骨髄性前駆細胞、赤芽球前駆細胞、線維芽細胞、および内皮細胞を含む、造血細胞および非造血細胞に対する複数の生物学的効果を有することが示された。ラット、マウス、およびヒトIL−4の活性は、種特異的である。IL−4は、ある種の条件下で、IFNγおよび他の炎症性サイトカインの産生を誘発しうる。IL−4は、免疫応答の誘発および自己免疫に対する用量依存的な異なる効果を示しうる。IL4は、in vivoでの内皮細胞によるIL6およびことによると他のサイトカインの産生の調節において重要なサイトカインである。IL−4分泌細胞は、活発なBDにおいては著しく増加する。活発なBDおよび寛解期BDの患者では、IL−4の血清レベルが増大していた。BDの患者からのPBMCは、より高いレベルのIL−4を産生した。それに加えて、IL−4は、EAUの後期に重要な役割を果たす。同様に、IL−4による治療では、ブドウ膜炎の進行は、HSP誘発ブドウ膜炎のラットに関して68%から30.4%に著しく減少した。さらに、併発白内障の患者の房水では、IL−4レベルは著しく上昇している。抗インターロイキン−4(IL−4)としては、ヒト抗IL−4抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、ヒト抗IL−4抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、または他の化合物が挙げられる。
【0085】
IL−6は、インターフェロン−b2、26kDaタンパク質、B細胞刺激因子2(BSF−2)、ハイブリドーマ/形質細胞腫増殖因子、肝細胞刺激因子、細胞傷害性T細胞分化因子、およびマクロファージ−顆粒球誘発因子2A(MGI−2A)としても知られている。IL−6は、宿主防衛、急性期反応、免疫応答、および造血に重要な役割を果たす多機能タンパク質である[4,8,14,18]。IL−6は、T細胞、B細胞、単球/マクロファージ、線維芽細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、星状細胞、血管内皮細胞、およびさまざまな腫瘍細胞を含む、さまざまな正常細胞および形質転換細胞により発現される。IL−6は、VKHにおいて炎症性メディエータとして重要な役割を果たす[15]。それに加えて、特に、IL−6レベルは、レーザー光凝固術の後に著しく高まり、IL−6は、術後炎症の発生に大きく関わる支配的要因の1つである。関節炎に対し現在施用されている投薬量は、小児および成人に対し、8mg/kg/回である。抗インターロイキン−6(IL−6)としては、MRA(中外製薬株式会社)または他の化合物が挙げられる。IL−6は、黄斑変性症および分岐静脈閉塞の両方において増加するいくつかの前炎症性シグナル伝達分子の1つである[21,22]。
【0086】
IL−8は、好中球走化因子(NCF)、好中球活性化タンパク質(NAP)、単球由来好中球走化因子(MDNCF)、T細胞走化因子(TCF)、顆粒球走化性タンパク質(GCP)、および白血球付着阻害剤(LAI)とも呼ばれる。単球/マクロファージ、T細胞、好中球、線維芽細胞、内皮細胞、ケラチン生成細胞、肝細胞、軟骨細胞、および各種の腫瘍細胞株を含む多くの種類の細胞が、IL−1、TNF、LPS、およびウイルスへの曝露などの広範にわたる炎症誘発性刺激に応答してIL−8を産生することができる。IL−8は、ケモカインのCXCサブファミリの一員である。IL−8は、眼内の炎症の進行に関与し、顆粒球は、眼内炎におけるIL−8の有力な供給源と考えられている[7]。IL−8は、EIUにおける白血球の動員のための走化性シグナルに関わっている。抗IL−8抗体治療は、ウサギのEIUを部分的に遮断する。IL−8は、術後炎症の発生の支配的要因の1つである。IL−8を介した機序はBDの眼障害に関与しており、細胞結合型IL−8と疾患活動性との間には密接な関係がある。抗インターロイキン−
8(IL−8)は、抗EGF−R抗体(C225)または他の化合物を有する。
【0087】
IL−12は、ナチュラルキラー細胞刺激因子(NKSF)または細胞傷害性リンパ球成熟因子(CLMF)とも呼ばれ、40kDa(p40)サブユニットおよび35kDa(p35)サブユニットからなるヘテロ二量体の多面発現性サイトカインである。IL−12のp40サブユニットは、IL−12と類似の生物活性ならびにIL−12と異なる生物活性を有する別のヘテロ二量体サイトカインであるIL−23により共有される。IL−12は、マクロファージおよびB細胞により産生され、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞に対し多重効果を有することが証明されている。マウスIL−12は、ヒトとマウスの両方の細胞に活性を有するが、ヒトIL−12は、マウス細胞には活性でない。IL−12は、細胞傷害性のT細胞反応を促進し、NK細胞の溶解作用を高め、T細胞およびNK細胞の両方によるインターフェロンγの分泌を誘発する。IL−12は、眼内の炎症の発生および持続に中心的役割を果たす。IL−12は、目のエンドトキシン誘発炎症に対し阻害効果を有し、IL−12がある種の形態の炎症性眼疾患において免疫調節機能を持ちうることが示唆される。非腫瘍性病因のブドウ膜炎の患者の硝子体液および/または房水中のIL−12が高レベルであることが観察されている[5,6]。血清IL−12レベルは、治療時において一般的な臨床的改善との関連を有する。それに加えて、IL−12はBDの発症機序に大きな役割を果たしており、IL−12血漿レベルと疾患の活動性には相関があり、したがって抗IL−12またはIL−12前駆体(pro−IL−12)またはIL−12そのものを、特定の臨床症状に応じて使用することができる。抗インターロイキン−12(IL−12)には、ヒト抗IL−12抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、ヒト抗IL−12抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、または他の化合物が挙げられる。
【0088】
IL−15は、T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー細胞の刺激活性など、IL−2と多くの生物学的特性を共有する。ヒトIL−15は、サルIL−15およびマウスIL−15と、それぞれ約97%および73%の配列同一性を有する。ヒトおよびサルのいずれのIL−15も、マウスの細胞に対し活性を有する。IL−15のmRNAは多種多様な細胞および組織により発現され、最も多量に発現するのは接着性末梢血単核細胞、線維芽細胞、および上皮細胞である。IL−15は、T細胞の増殖、B細胞の成熟、ナチュラルキラー細胞の細胞毒性を誘発する新しいサイトカインであり、腫瘍壊死因子α(TNFα)の上流で作用して炎症性疾患の発症機序に中心的役割を果たす可能性がある。IL−15は、RA患者、特に、長期間疾病を患っている患者では高く、RA滑膜炎の永続化に関与する。IL−15およびインターロイキン18(IL18)は、先天性免疫応答において主にマクロファージにより産生されるサイトカインであり、その後適応免疫に深く影響を及ぼす。それに加えて、このサイトカインは、病的瘢痕形成の生物学的作用に重要な役割を果たし、アポトーシスの調節に関与する。ブドウ膜炎におけるその正確な役割はまだ明らかでない。抗インターロイキン−15(IL−15)としては、ヒト抗IL−15抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、ヒト抗IL−15抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、または他の化合物が挙げられる。
【0089】
IL−17は、CTLA−8とも呼ばれ、ヘルペスウイルス・サイミリのORF13遺伝子によりコードされるタンパク質との高度な相同性を示すT細胞発現多面発現性サイトカインである。組換え型および天然型IL−17のいずれも、ジスルフィド結合ホモ二量体として存在することが証明されている。アミノ酸レベルでは、ヒトIL−17は、ヘルペス・ウイルスとラットIL−17に対してそれぞれ72%および63%の配列同一性を示している。IL−17ファミリは、IL−17、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E(IL−25)、およびIL−17Fを含む、少なくとも6つのメ
ンバーからなる。IL−17ファミリのすべてのメンバーが、空間的に保存されている一組のシステイン残基を共有しており、このことは、IL−17ファミリのメンバーがシステイン・ノット・スーパーファミリ(cysteine knot superfamily)に関係している可能性があることを示唆している。IL−17は、複数の前炎症性サイトカインの発現を上方制御し、ウイルス感染時の免疫応答を調節する。IL17は、炎症性関節疾病における軟骨コラーゲン分解を上流で媒介する強力な因子として作用しうるが、ブドウ膜炎におけるその正確な役割は明らかでない。活発なBDは、寛解BDに比べてIL−17の増加が大きいことにより特徴付けられた。抗インターロイキン−17(IL−17)としては、ヒト抗IL−17抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、ヒト抗IL−17抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、または他の化合物を含む。
【0090】
IL−18は、インターフェロンγ誘発因子(IGIF)およびIL−1gとも呼ばれ、IL−12とは生物活性を共有し、IL−1タンパク質ファミリとは構造的類似性を共有するサイトカインである。ブタIL−18のcDNAは、ヒトのIL−18前駆体(pro−IL−18)と77%の配列同一性を共有する前駆体分子(pro−IL−18)をコードする。IL−18前駆体(pro−IL−18)は、疎水性シグナルペプチドを欠いているが、IL−1bプロドメインと類似のリーダー配列を含む。IL−18は、目の中では虹彩の上皮細胞、毛様体、および網膜内で発現されるが、目におけるその役割ははっきりしていない。IL−18の上方制御はBDの1つの特徴であり、IL−18が、局所的炎症反応に関与する可能性のあることを示唆している。活発なBDは、寛解BDに比べてIL−18およびIFN−γの増加が大きいことにより特徴付けられた。抗インターロイキン−18(IL−18)には、ヒト抗IL−18抗体、大腸菌由来ヤギIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、ヒト抗IL−18抗体、大腸菌由来ネズミIgG(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D systems))、または他の化合物が挙げられる。
【0091】
腫瘍増殖因子β2、TGFβ−2は、フックの異虹彩色性毛様体炎などの眼の炎症において正常よりも低くなる[12]。病因は不明であるが、硝子体において正常レベルに回復すれば重症度を下げるのに役立つ可能性がある。というのも、この化合物は一部の動物において神経防護作用を有することが知られているからである。インターフェロンγ、IFNγは、前部ブドウ膜炎および虹彩炎の発症機序に関与する可能性のある虹彩細胞上のHLA抗原の誘導性発現を媒介する因子の1つである可能性がある[17]。
【0092】
抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ(ACM):MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3などの作用に特異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ。
【0093】
ケモカイン[走化性サイトカインおよびマトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)]は、少なくとも40〜50種の低分子量タンパク質(通常は6〜14KD)の複雑なスーパーファミリを構成する。ケモカインは、さまざまな細胞標的および生物学的反応を有する。慢性ブドウ膜炎の患者には高レベルのMMPが見られ、このような目によく見られる損傷の一因となっている。MMPは、細胞外マトリックスの成分に結合した前炎症性サイトカインを放出することができ、また膜結合型TNFαの切断により活性TNFαの分泌を促進するため、MMPがいくつかのブドウ膜炎症例の慢性化に寄与することが考え
られる。IL−1β、IL−12、およびIL−1raの量は、MMP−2およびMMP−9のレベルと相関している。CXCケモカインGROは、ウサギのLPS誘発ブドウ膜炎における好中球の浸潤に欠かせない。GRO産生のほとんどは、TNFαおよびIL−1により媒介される。GROおよびIL−8は、協調的に作用して好中球浸潤を媒介する。
【0094】
ケモカインのいくつかの代表例としては、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、およびストローマ細胞由来因子−1がある。
【0095】
ケモカイン拮抗薬は、MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、vMIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTESの形態で利用可能であり、関節炎および糸球体腎炎のラット・モデルだけでなく、アテローム性動脈硬化症、脊髄損傷、および腫瘍のネズミ・モデルにおいて有益であることが証明された。
【0096】
サイトカイン(CK):IL−10は、上記のサイトカインの多くの作用を低減することが判明している抗炎症性または炎症調節性サイトカインである[3]。IL−12は、通常は炎症誘発性であるが、特定の免疫反応の抑制に調節的な役割も有することを示す証拠がいくつかある。構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等の分子を使用する治療は、いくつかの病状における炎症を軽減するのに役立つ可能性がある。
【0097】
他のシグナル経路調節剤:他のシグナル経路分子は当業者によく知られており、以下に列挙する因子は、限定的なものでも完全なものでもないが、該因子の調節が眼球組織の炎症および/または変性を制御する際に有用であると考えられるものである。該因子は、副刺激分子阻害剤、例えばCTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤;接着分子阻害剤、例えばα4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤、αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、および熱ショックタンパク質;NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101など;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性化経路、すべてのRho媒介経路、およびすべてのNIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路、ならびに他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路を阻害または遮断する小分子阻害剤、を含む。
【0098】
「薬剤(剤)」という用語は、細胞、神経、または組織などの生体系に影響を持つ可能性のある何らかのものとして広い意味で定義される。例えば、薬剤は、化学剤とすることができる。薬剤は、さらに、生物剤であってもよい。薬剤は、少なくとも1つの知られている成分からなりうる。薬剤は、さらに、物理的変化を生じさせるものであってもよい。薬剤の他の例は、生物兵器剤、化学兵器剤、細菌剤、ウイルス剤、他の病原微生物、これから新たに作られる、または人工の危険な薬剤、急性有毒産業化学物質(TICS)、有毒工業材料(TIMS)などを含む。好ましくは、本発明を実施するために生物剤または
薬理作用物質を使用する。本発明の実施に関係しうる薬剤の種類の例は、抗体、ナノボディ、抗体断片、シグナル伝達経路阻害剤、転写因子阻害剤、受容体拮抗薬、小分子阻害剤、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの細胞表面受容体のアロステリック調節因子、細胞表面受容体内在化誘導因子、およびGPCR逆作動薬を含む。
【0099】
「不活性ポリマー材料」という用語は、限定はしないが、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および類似の生体適合性移植可能人工ポリマーのうちの1つなど、生体適合性非分解ポリマーを指す。
【0100】
「生体分解性物質」という用語は、変性多糖類、例えばデンプン、セルロース、およびキトサン、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの共重合体または組合せから選択することができる物質、加えて当業者によく知られ科学文献および技術文献に記載されている他の物質を指す。
【0101】
「可溶性結合剤」という用語は、当業者が利用できる多くの選択肢をもれなく列挙したものではないが次に挙げるものから選択される材料を指す。すなわち、変性多糖類、例えばデンプン、セルロース、およびキトサン、糖類および変性糖類、例えば、トレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの任意の共重合体または組合せ。
【0102】
「デポー製剤材料」という用語は、生体分解性物質、可溶性結合剤、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む材料を指す。
(好適な実施形態の説明)
本発明は、とりわけ、視力喪失または失明を含む長期にわたる損傷を引き起こすかもしれず、また引き起こす可能性がある目の慢性疾患の治療に関する。
【0103】
さまざまな治療法の選択肢が、これらの疾患を患っている患者向けに、開発されている。炎症性眼疾患の場合、例えば、患者は、局所ステロイド点眼薬に加えて免疫抑制薬物の組合せで治療される。この治療の3つの大きな欠点は、患者が感染しやすい状態のままに残される場合があること、患者の内部器官、特に肝臓と腎臓に損傷を引き起こすおそれがあること、白内障を引き起こし、また目の眼内圧(緑内障)を高める可能性があることである。さらに、変性血管障害の場合、既存の療法は一般的には効果がない。
【0104】
本発明では、炎症性および/または変性眼疾患のための異なるアプローチ、および実現可能な優れた治療法を提供する。シグナル経路を調節する薬物を本発明のいくつかの実施
形態によるデバイスおよび方法を介して直接目に送達することにより、全身性副作用を回避し、その部位の疾病の正確な治療を行えるようにする。
【0105】
そのため、とりわけ、本発明により、モノクローナル抗体またはキナーゼ阻害剤などの化合物または薬剤を患者または動物などの生体の目に直接送達することができるため、免疫系を抑制することなくシグナル経路を調節して炎症を抑制することにより慢性眼疾患を劇的に軽減することが可能になり、また新しい血管の形成を劇的に低減して、出血および網膜剥離を防止することが可能になる。
【0106】
本発明の範囲を制限することを意図せずに、本発明のさまざまな実施形態について以下に説明する。
本発明は、第1の物質と、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を含む第2の物質とを有する移植物を開示する。移植物が生体の目に埋め込まれる場合、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、眼の炎症および/または変性眼疾患の治療のため長期間にわたって移植物の周囲環境に放出可能である。
【0107】
図1を参照すると、本発明の1実施形態による移植物100が示されている。この実施形態では、移植物100は、本体部分102を含む。本体部分102は、第1の末端部分104、反対側の第2の末端部分106、外面108、内面110、および第1の末端部分104と第2の末端部分106との間に定義される長さLを有する。本体部分102は、第1の末端部分104に第1の開口部112a、第2の末端部分106に反対側の第2の開口部112bを備えたキャビティ112を形成する。この実施形態では、本体部分102は、円形の断面を有する。本体部分102は、正方形、楕円形、または多角形などの他の断面形状も有しうる。
【0108】
移植物100は、さらに、キャビティ112内に収容される固形物120を含む。固形物120は、デポー製剤材料および有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤122を含み、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、デポー製剤材料を通した拡散および該材料の溶解により移植物100の周囲環境に放出される。デポー製剤材料は、可溶性結合剤物質を有する。
【0109】
移植物は、さらに、少なくとも1つの治療化合物または薬剤が移植物100の周囲環境へ制御放出される際に通る本体部分102の第1の開口部112aを覆う第1の膜、および少なくとも1つの治療化合物または薬剤が移植物100の周囲環境へ制御放出される際に通る本体部分102の第2の開口部112bを覆う第2の膜をも備えることが可能である。第1の膜および第2の膜は、それぞれ、生体分解性物質で作られる。
【0110】
1実施形態では、移植物100の本体部分102は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および生体適合性移植可能ポリマーから選択された不活性ポリマー材料から作られる。この実施形態については、本体部分102は、存在した状態のままであり、有効な量の少なくとも1つの治療化合物が移植物100の周囲環境に放出されたとき、またその後に、その物理的形態をほぼ保っている。
【0111】
他の実施形態では、移植物100の本体部分102は生体分解性物質から作られ、有効な量の少なくとも1つの治療化合物が移植物100の周囲環境に放出されたとき、本体部分102がin situで徐々に再吸収されるか、または分解するようになっている。つまり、この実施形態については、本体部分102は徐々に消失し、有効な量の少なくとも1つの治療化合物が移植物100の周囲環境に放出されたとき、またその後に、その物理的形態ではもはや存在しない。生体分解性物質は、変性多糖類、フィブリン、フィブロ
ネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質を含む。変性多糖類は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む。
【0112】
可溶性結合剤物質は、変性多糖類、糖類および変性糖類、例えば、トレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの共重合体または組合せのうち少なくとも1つからなる。変性多糖類は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む。
【0113】
1実施形態では、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、以下のシグナル伝達経路調節剤の群のうちの少なくとも1つを含むものでもよいし、または腫瘍壊死因子α(TNFα)の作用に特異的または機能的に対抗する以下のシグナル伝達経路に関与するものでもよい。すなわち、インターロイキン、例えばインターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−17、およびインターロイキン−18;MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3の作用に特異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ;構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等のケモカインまたは合成分子;腫瘍増殖因子(TGF)および関係する抗炎症性増殖因子、副刺激分子阻害剤、例えば、CTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤、接着分子阻害剤、例えば、α4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤、αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、および熱ショックタンパク質;NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101など;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;以下の細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性化経路、すべてのRho媒介経路、およびすべての関係するN
IK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路、ならびに他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路を阻害または遮断する小分子阻害剤が挙げられる。
【0114】
1実施形態では、移植物100は、生体の後眼房の硝子体または他の部分に、またはその周辺に移植され、移植物100のキャビティ112は、第1の開口部112aおよび反対側の第2の開口部112bのうちの少なくとも一方を通して後眼房の硝子体または他の部分と流体連絡するようになされる。
【0115】
移植物100を配置する他の移植部位は、小帯隙、毛様小帯後隙、ブドウ膜、後眼房の脈絡膜、毛様体、小帯、扁平部、毛様体突起、毛様体筋、小柱網、強膜内もしくは結膜内または強膜と結膜の境界、解剖学的に見て前眼房内、シュレム管、角膜の縁または縁の近くが挙げられる。
【0116】
移植物100が、生体の目に埋め込まれる場合、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が、可溶性結合剤を通した拡散または同剤の溶解により、長期間にわたって第1の開口部112aおよび反対側の第2の開口部112bのうちの少なくとも一方を通して移植物100の周囲環境に放出される。少なくとも1つの治療化合物または薬剤の放出速度、例えば1×10U/日は、移植物100のキャビティ112の内径、少なくとも1つの治療化合物または薬剤の密度、および結合剤の溶解速度を変えることにより制御可能である。送達される少なくとも1つの治療化合物または薬剤の全量は、移植物100の本体部分102の長さを調整することにより制御可能である。移植物100は、目の中に残しておくことも、取り除くことも、その場で(in situで)分解させることも可能である。
【0117】
図2を参照すると、他の実施形態である本発明の移植物200が示されている。移植物200は、デポー製剤材料を含む本体部分210を備える。本体部分210は、外面220と内面230を有し、内面230は、少なくとも1つの開口部240を備えたキャビティ260を形成する。1実施形態では、本体部分210の外面220は、半球体の幾何学的形状を有する。本体部分210の外面220は、他の幾何学的形状をとってもよい。移植物200は、さらに、キャビティ260内に有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を収容するようになっている。少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、デポー製剤材料により安定化され、キャビティ260内に収容される化合物250を形成する。移植物200が生体の目に埋め込まれると、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、長期間にわたって少なくとも1つの開口部240を通して移植物200の周囲環境に放出される。
【0118】
任意選択で、移植物200は、少なくとも1つの治療化合物または薬剤が移植物200の周囲環境へ制御放出される際に通る本体部分210の少なくとも1つの開口部240を覆う膜を備える。膜は、生体分解性物質から作ることができる。
【0119】
1実施形態の移植物の本体部分210は、不活性ポリマー材料を含む非生体分解性物質から作ることもできる。
好ましくは、半球状移植物200は、アルギン酸塩などの生体分解性ゲル物質で形成され、同物質の中には少なくとも1つの治療化合物または薬剤(活性薬剤)が予め分散されている。半球状移植物200は、活性薬剤に対し非浸透性であるコーティングで覆われる。コーティング中の開口部240は、半球状移植物200の平坦な側の中心近くに配置される。エタナーセプト、抗TNFα化合物、MCP−1(9−76)、またはケモカイン拮抗薬などの活性薬剤は、生体分解性物質を通して拡散することにより開口部240から放出される。活性薬剤放出の速度および総量は、開口部240のサイズ、移植物200のサイズ、活性薬剤の密度、およびアルギン酸塩の拡散係数を変えることにより制御される
。治療の終了後(例えば、90日後)、コーティングを含む移植物200全体が、徐々に再吸収されるか、またはその場で分解する。
【0120】
図3は、代替実施形態である本発明の移植物300を示している。この実施形態では、移植物300は、第1の末端304、反対側の第2の末端306、内面308、および外面310を有する生体適合性ポリイミド管302の形態で形成される。内面308は、キャビティ312をその中に形成する。管302は、多角形の断面を有する。管302は、他の種類の断面を有してもよいし、他の何らかの生体適合性物質から形成されてもよい。管302のキャビティ312は、適切な安定化溶液314中の活性薬剤、例えばアダリムマブ、抗TNFα抗体および抗IL−1または抗IL−6などの化合物で満たされる。管302の第1の末端304および第2の末端306が、それぞれ膜312aおよび312bで密封されることにより、活性薬剤322の周辺組織への放出が、長時間、例えば2ヶ月間、治療レベルに制御される。移植物300は、目の中に残すことも、取り除くことも可能であり、または非分解性物質の代わりに分解性物質を使用することにより、その場で再吸収させることも可能である。
【0121】
図4は、他の実施形態である本発明の移植物400を示している。この実施形態では、移植物400は、ポリ無水物などの生体分解性物質と、活性薬剤、例えばモノクローナル抗体とを有する固形の多面プリズム430の形態で形成される。活性薬剤は、固形の多面プリズム430内に分散され、安定化されている。移植物400の活性薬剤は、時間が経つうちに、プリズム430を通した拡散およびプリズム430の分解により放出される。図4A〜4Cに示されているように、時間とともに治療が進むにつれ、移植物400は、穏やかに分解し、移植物400のサイズが縮小する。例えば、図4Aは、移植物400の初期のサイズ(第1の状態)を表し、図4Bは、その後の移植物400のサイズ(第2の状態)を表し、図4Cは、図4Bよりも後の時点の移植物400のサイズ(第3の状態)を表している。1実施形態では、活性薬剤放出の速度および総量は、移植物400のサイズ、活性薬剤の密度、および生体分解性物質の分解速度を、個別にまたは組み合せて変更することにより制御可能である。
【0122】
図5を参照すると、本発明の1実施形態による移植物500が示されている。移植物500は、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)などの生体分解性物質を備えた円筒形多孔性ウェハ510の形態で形成されており、該円筒形多孔性ウェハ510内に活性薬剤530の集合体520が多数分散され安定化されている。円筒形多孔性ウェハ510は、高さH、直径Dを有する。活性薬剤530は、350:20:1の比でTNFα、IL2、およびIL4に対する拮抗薬を含み、移植物500を通した拡散および移植物500の分解により放出される。活性薬剤放出の速度および総量は、空隙率、様々なHおよび/またはDを有することによる移植物500のサイズ、活性薬剤の密度、および生体分解性物質の分解速度を変えることにより制御される。埋め込まれた後、移植物500は徐々に分解され、最終的にその場で消失する。
【0123】
図6は、他の実施形態である本発明の移植物600を示している。移植物600は、生体分解性物質、例えば、修飾キトサンを備えた中空多面体620内に形成される。移植物600は、中空多面体620の表面上に形成された多数の開口部640を有する。活性薬剤、例えば、RNAアプタマーは、ポリ(L)リシンの小胞660内に封入されて中空多面体620内に詰められる。移植物600が、患者または実験用動物などの生体の目の事前に選択された移植部位に埋め込まれた後、活性薬剤は、多数の開口部640を通して中空多面体620の内側から放出される。小胞660から活性薬剤を放出した後、移植物600は、徐々に分解され、最終的にはその場で再吸収される。
【0124】
図7を参照すると、代替実施形態である移植物700が示されている。この実施形態で
は、移植物700は、それぞれ異なる放出プロファイルを有する物質の組合せにより包含された活性薬剤、例えば、合成抗体断片を含む。例えば、薬剤は、多孔性の生体分解性ポリ(オルト)エステル710内に分散され、このエステルは薬剤を6ヶ月かけて放出する。細孔には、ゼラチン720内に分散された薬剤が充填され、該ゼラチンは、例えば2週間かけて薬剤を放出する。代替実施形態では、薬剤は、異なる速度で溶解する異なる物質の層730の中に分散され、それぞれの層が溶解するにつれて放出速度を段階的に制御することが可能となっている。層は、次々に、またはそれぞれ同じ速度もしくは異なる速度で溶解させることが可能である。
【0125】
図8を参照すると、本発明の1実施形態による移植物800が示されている。この実施形態では、移植物800は、例えば、カルボキシメチルセルロースおよび硫酸プロタミンのような反対の電荷を有する多価電解質810および820が交互に並んだ層内で浸透性および/または分解が制御される化合物を使用して層状構造内に封入された、ペプチドなどの活性薬剤を含む。移植物800が移植部位に埋め込まれると、異なる層内の物質は、異なる速度で、それぞれに、または次々に、移植物800の周囲環境に放出される。
【0126】
図9は、純粋な化合物またはデポー製剤材料中の化合物が層状にコーティングされた粒子910内に安定化されている活性薬剤を含み、該粒子がデンプン・カーボネートなどの分解可能なマトリックス920の中に封入されている移植物900を示している。粒子910が分解し、マトリックスが分解するよりも速い速度で活性薬剤を放出した後にスポンジ状構造930が残り、該構造は治療期間後に完全に再吸収される。
【0127】
図10は、他の実施形態である本発明の移植物1000を示している。移植物1000は、純粋な化合物またはデポー製剤材料中の化合物が層状にコーティングされた粒子1002内に安定化されている活性薬剤からなる。活性薬剤は、デンプン・カーボネートなどの分解可能なマトリックス1004内に封入される。マトリックス1004は分解し、粒子1002を放出し、次いで該粒子が、粒子のデポー製剤材料とコーティングの種類および厚さの両方に応じた速度で活性薬剤を放出し始める。
【0128】
本発明の他の態様は、目の中またはその周辺の炎症性および変性疾患を治療する方法を提供する。1実施形態では、この方法は、第1の物質と、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を含む第2の物質とを有する眼科用移植物を提供する工程を含み、第1の物質および第2の物質は、固体を形成するように構成され、該眼科用移植物が生体の目に埋め込まれると、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、長期間にわたって移植物の周囲環境に放出可能である。さらに、この方法は、生体の目の中に眼科用移植物を移植する工程を含む。有効な量の少なくとも1つの治療化合物は、長期間にわたり眼科用移植物の周囲環境に放出可能である。この方法は、さらに、目の中に眼科用移植物を残す工程も含む。
【0129】
第1の物質は、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が眼科用移植物の周囲環境に放出されたときに、第1の物質がin situで徐々に分解するか、または溶解するような不活性ポリマー材料または生体分解性物質を含む。
【0130】
第2の物質は、さらに、可溶性結合剤物質を含み、該物質により、少なくとも1つの治療化合物または薬剤が安定化される。有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質を通した拡散、または同物質の溶解により眼科用移植物の周囲環境に放出される。
【0131】
本発明の例示的な実施形態についての以上の説明は、例示および説明のみを目的として提示されており、網羅的であることや、本発明を開示されている正確な形態に限定するこ
とを意図するものではない。上記の教示に照らして、多数の修正形態および変更形態が可能である。
【0132】
これらの実施形態は、本発明の原理およびその実用的用途を説明するために選択および記述されており、当業者が、考え付いた特定の用途に適するように、本発明およびさまざまな実施形態をさまざまな修正形態とともに利用することができるようになされたものである。代替実施形態は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明が関係する分野の当業者には明白なことである。従って、本発明の範囲は、上記の説明および該説明における例示的な実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲により定義される。
【0133】
【表1】




【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1A】本発明の1実施形態による移植物の概略斜視図。
【図1B】本発明の1実施形態による移植物の概略断面図。
【図2A】本発明の他の実施形態による移植物の概略斜視図。
【図2B】本発明の他の実施形態による移植物の概略断面図。
【図3A】本発明のさらに他の実施形態による移植物の概略斜視図。
【図3B】本発明のさらに他の実施形態による移植物の概略断面図。
【図4A】本発明の代替実施形態による移植物の第1の状態の概略図。
【図4B】本発明の代替実施形態による移植物の第2の状態の概略図。
【図4C】本発明の代替実施形態による移植物の第3の状態の概略図。
【図5A】本発明の1実施形態による移植物の概略斜視図。
【図5B】本発明の1実施形態による移植物の概略断面図。
【図6A】本発明の他の実施形態による移植物の概略斜視図。
【図6B】本発明の他の実施形態による移植物の概略部分断面図。
【図6C】本発明の他の実施形態による移植物の中の化合物および/または薬剤が周囲環境に放出されることを示す略図。
【図7A】本発明の代替実施形態による移植物の概略斜視図。
【図7B】本発明の代替実施形態による移植物の概略断面図。
【図8】本発明の他の実施形態による移植物の略図。
【図9A】本発明のさらに他の実施形態による移植物の第1の状態の略図。
【図9B】本発明のさらに他の実施形態による移植物の第2の状態の略図。
【図10A】本発明の1実施形態による移植物の概略断面図。
【図10B】本発明の1実施形態による移植物中の化合物および/または薬剤の略図。
【図10C】本発明の1実施形態による移植物中の化合物および/または薬剤の略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性または変性眼疾患を治療するための、眼球内薬物送達用移植物であって、
a.第1の末端部分、反対側の第2の末端部分、外面、内面、および該第1の末端部分と該第2の末端部分との間に定義される長さLを有し、該第1の末端部分に第1の開口部、該第2の末端部分に反対側の第2の開口部を備えたキャビティを形成する、本体部分と、
b.該キャビティ内に収容される固形物であって、デポー製剤材料および有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤からなる固形物と
からなり、
該移植物が生体の目に埋め込まれると、該有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が長期間にわたって該第1の開口部および反対側の該第2の開口部のうちの少なくとも一方を通して該移植物の周囲環境に放出されることを特徴とする移植物。
【請求項2】
前記本体部分は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および生体適合性移植可能ポリマーから選択された不活性ポリマー材料から作られる請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前記本体部分は、前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が前記移植物の周囲環境に放出されたときに、前記本体部分がin situで徐々に再吸収されるかまたは分解するような生体分解性物質から作られる請求項1に記載の移植物。
【請求項4】
前記生体分解性物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの任意の共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質からなる請求項3に記載の移植物。
【請求項5】
前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、可溶性結合剤物質を含む前記デポー製剤材料を通した拡散および同デポー製剤材料の溶解により前記移植物の周囲環境に放出される請求項1に記載の移植物。
【請求項6】
前記可溶性結合剤物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、糖類および変性糖類、例えば、トレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの任意の共重合体または組合せのうち少なくとも1つからなる請求項5に記載の移植物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、腫瘍壊死因子α(TNFα)の作用に
特異的または機能的に対抗するシグナル伝達経路に関する以下のシグナル伝達経路調節剤のうちの少なくとも1つからなり、該シグナル伝達経路調節剤は、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−17、およびインターロイキン−18を含むインターロイキン;MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3の作用に特異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ;構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等のケモカインまたは合成分子;腫瘍増殖因子(TGF)および関係する抗炎症性増殖因子;副刺激分子阻害剤、例えばCTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤;接着分子阻害剤、例えばα4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤;αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH);抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、熱ショックタンパク質;NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101など;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;以下の細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性経路、すべてのRho媒介経路、およびすべての関係するNIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路など、または他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路を阻害または遮断する小分子阻害剤を含む、請求項5に記載の移植物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、少なくとも2つの治療化合物からなり、そのうち少なくとも1つは、生体の目に関係する炎症性障害および変性障害のうち少なくともいずれか一方に関与するシグナル伝達経路を同時かつ相乗的に遮断することにより炎症性疾患を治療するための、抗サイトカインまたは抗ケモカインである、請求項5に記載の移植物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、抗体、ナノボディ、抗体断片、シグナル伝達経路阻害剤、転写因子阻害剤、受容体拮抗薬、小分子阻害剤、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの細胞表面受容体のアロステリック調節因子、細胞表面受容体内在化誘導因子、およびGPCR逆作動薬のうちの少なくとも1つからなる請求項5に記載の移植物。
【請求項10】
前記移植物が生体の目の中に埋め込まれる場合、前記移植物は、生体の後眼房の硝子体または他の部分に、またはその周辺に配置され、前記移植物の前記キャビティが、第1の開口部および反対側の第2の開口部のうちの少なくとも一方を通して後眼房の硝子体または他の部分と流体連絡するようになされる、請求項1に記載の移植物。
【請求項11】
前記本体部分は円形の断面を有する請求項1に記載の移植物。
【請求項12】
前記本体部分は正方形の断面を有する請求項1に記載の移植物。
【請求項13】
前記本体部分は楕円形の断面を有する請求項1に記載の移植物。
【請求項14】
前記本体部分は三角形の断面を有する請求項1に記載の移植物。
【請求項15】
前記本体部分は多角形の断面を有する請求項1に記載の移植物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤が前記移植物の周囲環境へ制御放出される際に通る前記本体部分の前記第1の開口部を覆う第1の膜をさらに備える、請求項1に記載の移植物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤が前記移植物の周囲環境へ制御放出される際に通る前記本体部分の前記第2の開口部を覆う第2の膜をさらに備える、請求項16に記載の移植物。
【請求項18】
前記第1の膜および前記第2の膜はそれぞれ生体分解性物質で作られる、請求項17に記載の移植物。
【請求項19】
眼球内薬物送達のための移植物であって、
a.外面と内面とを有し、該内面は少なくとも1つの開口部を備えたキャビティを形成する、本体部分と、
b.前記キャビティ内に収容された、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤と
からなり、前記移植物が生体の目に埋め込まれたときに、有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が、長期間にわたって前記少なくとも1つの開口部を通して移植物の周囲環境に放出される、移植物。
【請求項20】
前記本体部分は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および類似の生体適合性移植可能人工ポリマーの群から選択された不活性ポリマー材料から作られる請求項19に記載の移植物。
【請求項21】
前記本体部分は、前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物が前記移植物の周囲環境に放出されたときに、前記本体部分がin situで徐々に再吸収されるかまたは分解するような生体分解性物質から作られる、請求項19に記載の移植物。
【請求項22】
前記生体分解性物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの任意の共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質からなる請求項21に記載の移植物。
【請求項23】
可溶性結合剤物質をさらに有し、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、該可溶性結合剤物質により安定化され、前記キャビティ内に収容される化合物を形成する、請求項
19に記載の移植物。
【請求項24】
前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、前記可溶性結合剤物質を通した拡散および前記可溶性結合剤物質の溶解により前記移植物の周囲環境に放出される、請求項23に記載の移植物。
【請求項25】
前記可溶性結合剤物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、糖類および変性糖類、例えば、トレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの任意の共重合体または組合せのうち少なくとも1つからなる請求項23に記載の移植物。
【請求項26】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、腫瘍壊死因子α(TNFα)の作用に特異的または機能的に対抗するシグナル伝達経路に関する以下のシグナル伝達経路調節剤のうちの少なくとも1つからなり、該シグナル伝達経路調節剤は、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−17、およびインターロイキン−18を含むインターロイキン;MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3の作用に特異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ;構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等のケモカインまたは合成分子;腫瘍増殖因子(TGF)および関係する抗炎症性増殖因子;副刺激分子阻害剤、例えばCTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤;接着分子阻害剤、例えばα4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤;αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH);抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、熱ショックタンパク質;NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101など;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;以下の細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性経路、すべてのRho媒介経路、およびすべての関係するNIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路など、または他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路のうち少なくともいずれかを阻害または遮断する小分子阻害剤を含む、請求項19に記載の移植物。
【請求項27】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、少なくとも2つの治療化合物からなり、そのうち少なくとも1つは、生体の目に関係する炎症性障害および変性障害のうち少なくともいずれか一方に関与するシグナル伝達経路を同時かつ相乗的に遮断することにより
炎症性疾患を治療するための、抗サイトカインまたは抗ケモカインである、請求項19に記載の移植物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、抗体、ナノボディ、抗体断片、シグナル伝達経路阻害剤、転写因子阻害剤、受容体拮抗薬、小分子阻害剤、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの細胞表面受容体のアロステリック調節因子、細胞表面受容体内在化誘導因子、およびGPCR逆作動薬のうちの少なくとも1つからなる請求項19に記載の移植物。
【請求項29】
前記移植物が生体の目の中に埋め込まれる場合、前記移植物は、生体の後眼房の硝子体または他の部分に、またはその周辺に配置され、前記移植物の前記キャビティが、前記少なくとも1つの開口部を通して後眼房の硝子体または他の部分と流体連絡するようになされる、請求項19に記載の移植物。
【請求項30】
前記本体部分の前記外面は半球体の幾何学的形状を有する、請求項19に記載の移植物。
【請求項31】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、前記移植物の周囲環境に放出可能な複数の粒子の形態である請求項19に記載の移植物。
【請求項32】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤が前記移植物の周囲環境へ制御放出される際に通る前記本体部分の前記少なくとも1つの開口部を覆う膜をさらに備える、請求項19に記載の移植物。
【請求項33】
前記膜は生体分解性物質から作られる、請求項32に記載の移植物。
【請求項34】
眼科用移植物であって、
a.第1の物質と、
b.有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を含む第2の物質と
からなり、
該第1の物質および該第2の物質は固体を形成するように構成され、前記眼科用移植物が生体の目に埋め込まれる場合、該有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は長期間にわたって該移植物の周囲環境に放出可能である、眼科用移植物。
【請求項35】
前記第1の物質は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および類似の生体適合性移植可能人工ポリマーの群から選択された不活性ポリマー材料からなる、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項36】
前記第1の物質は、前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が前記眼科用移植物の周囲環境に放出されたときに、前記第1の物質がin situで徐々に分解するかまたは溶解するような生体分解性物質からなる、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項37】
前記生体分解性物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)
、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの任意の共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質からなる、請求項36に記載の眼科用移植物。
【請求項38】
前記第2の物質は可溶性結合剤物質をさらに含み、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、該可溶性結合剤物質で安定化される、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項39】
前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、前記可溶性結合剤物質を通した拡散および前記可溶性結合剤物質の溶解により前記眼科用移植物の周囲環境に放出される、請求項38に記載の眼科用移植物。
【請求項40】
前記可溶性結合剤物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、糖類および変性糖類、例えば、トレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの任意の共重合体または組合せのうち少なくとも1つからなる請求項38に記載の眼科用移植物。
【請求項41】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、腫瘍壊死因子α(TNFα)の作用に特異的または機能的に対抗するシグナル伝達経路に関する以下のシグナル伝達経路調節剤のうちの少なくとも1つからなり、該シグナル伝達経路調節剤は、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−17、およびインターロイキン−18を含むインターロイキン;MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RANTES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3の作用に特異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ;構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等のケモカインまたは合成分子;腫瘍増殖因子(TGF)および関係する抗炎症性増殖因子;副刺激分子阻害剤、例えばCTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤;接着分子阻害剤、例えばα4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤;αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH);抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、熱ショックタンパク質;NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101など;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;以下の細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグ
ナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性経路、すべてのRho媒介経路、およびすべての関係するNIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路など、および他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路を阻害または遮断する小分子阻害剤を含む、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項42】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、少なくとも2つの治療化合物からなり、そのうち少なくとも1つは、生体の目に関係する炎症性障害および変性障害のうち少なくともいずれか一方に関与するシグナル伝達経路を同時かつ相乗的に遮断することにより炎症性疾患を治療するための、抗サイトカインまたは抗ケモカインである、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項43】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、抗体、ナノボディ、抗体断片、シグナル伝達経路阻害剤、転写因子阻害剤、受容体拮抗薬、小分子阻害剤、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの細胞表面受容体のアロステリック調節因子、細胞表面受容体内在化誘導因子、およびGPCR逆作動薬のうちの少なくとも1つからなる請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項44】
前記眼科用移植物が生体の目の中に埋め込まれる場合、前記眼科用移植物は、生体の後眼房の硝子体または他の部分に、またはその周辺に配置される、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項45】
前記第1の物質および前記第2の物質は層構造に形成される、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項46】
有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を含む第3の物質をさらに含む、請求項45に記載の眼科用移植物。
【請求項47】
前記第1の物質、前記第2の物質、および前記第3の物質は層構造に形成される、請求項46に記載の眼科用移植物。
【請求項48】
前記眼科用移植物が生体の目に埋め込まれる場合、異なる層内の物質は、異なる速度で、それぞれに、または次々に前記眼科用移植物の周囲環境に放出される、請求項45に記載の眼科用移植物。
【請求項49】
前記第1の物質および前記第2の物質はウェハ状構造に形成される、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項50】
前記第1の物質および前記第2の物質は固体に形成され、任意のある部位における該物質の密度が、ほぼ、第1の物質の密度と第2の物質の密度とのうちの一方であるようになされる、請求項34に記載の眼科用移植物。
【請求項51】
眼またはその周辺の炎症性疾患または変性疾患を治療する方法であって、
a.眼科用移植物であって、
(i)第1の物質と、
(ii)有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤を含む第2の物質と
を有し、
前記第1の物質および前記第2の物質は固体を形成するように構成されることを特徴とする眼科用移植物を提供する工程と、
b.該眼科用移植物を生体の目の中に埋め込む工程であって、
該有効な量の少なくとも1つの治療化合物は、長期間にわたり該眼科用移植物の周囲環
境に放出可能であることを特徴とする工程と
からなる方法。
【請求項52】
前記眼の中に前記眼科用移植物を残す工程をさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の物質は、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、シロキサン、その他のアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、これらの化合物の共重合体、および類似の生体適合性移植可能人工ポリマーの群から選択された不活性ポリマー材料からなる請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記第1の物質は、前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤が前記眼科用移植物の周囲環境に放出されたときに、前記第1の物質がin situで徐々に分解するかまたは溶解するような生体分解性物質からなる請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記生体分解性物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性ポリエステル、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)、変性アルギン酸塩、カルボポール、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(リシン)、トリグリセリド、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、トリグリセリド、グルタミン酸とロイシンの共重合体、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカン酸)、タンパク質、ポリペプチド、プロテオグリカン、多価電解質、およびこれらの任意の共重合体または組合せから選択された生体分解性ポリマー物質からなる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の物質は可溶性結合剤物質をさらに含み、少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、該可溶性結合剤物質で安定化される、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記有効な量の少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、前記可溶性結合剤物質を通した拡散および前記可溶性結合剤物質の溶解により前記眼科用移植物の周囲環境に放出される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記可溶性結合剤物質は、デンプン、セルロース、およびキトサンを含む変性多糖類、糖類および変性糖類、例えば、トレハロース、ショ糖、ショ糖エステル、ポリアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、グリセロール、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、コラゲノイド、酒石酸塩、ジェラン・ガム、ヘパリン、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デキストラン、マルトデキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ブチレンオキサイド)、プルロニック類、変性アルギン酸塩ヒドロゲル、カルボポール、ポリ(リシン)、タンパク質、ポリペプチド、多価電解質、プロテオグリカン、およびこれらの任意の共重合体または組合せのうち少なくとも1つからなる請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、腫瘍壊死因子α(TNFα)の作用に特異的または機能的に対抗するシグナル伝達経路に関する以下のシグナル伝達経路調節剤のうちの少なくとも1つからなり、該シグナル伝達経路調節剤は、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−17、およびインターロイキン−18を含むインターロイキン;MCP−1(9−76)、Groα(8−73)、V MIPII、CXCR4、Met−CCL5、Met−RAN
TES、CCR1、RANTES(CCL5)、MIP1α(CCL3)、IP10(CXCL10)、VEGF、MCP1−4(CCL1、CCL8、CCL7、CCL13)、CINC、同族受容体、GRO、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1、CCR4、CCR5、およびCXCR3の作用に特異的または機能的に対抗する抗ケモカインおよび抗金属プロテアーゼ;構造的または機能的にインターロイキン−10およびインターロイキン−12と同等のケモカインまたは合成分子;腫瘍増殖因子(TGF)および関係する抗炎症性増殖因子;副刺激分子阻害剤、例えばCTLA4 Ig、抗CD11、抗CD2、LFA3eおよびIgGFcの融合タンパク質;一酸化窒素(NO)または誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤;接着分子阻害剤、例えばα4−インテグリン阻害剤、PセレクチンまたはEセレクチンまたはICAM1またはVCAMの阻害剤;αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH);抗HSP60またはヘムオキシゲナーゼ(HO)−1、熱ショックタンパク質;NF−κB阻害剤、例えば、ピロリジン・ジチオカルバマート(PTDC)、プロテアソーム阻害剤のMG−132、ロリプラム(4型ホスホジエステラーゼ阻害剤)、CM101など;活性化タンパク質1(AP1)、活性化転写因子2(ATF2)、活性化T細胞の核因子(NF−AT)、転写因子STAT、p53、転写因子Etsファミリ(Elk−1およびSAP−1)、核ホルモン受容体などの他の転写因子の阻害剤;以下の細胞内シグナル伝達経路または調節酵素/キナーゼ、例えば、PTEN、PI3キナーゼ、P38MAPキナーゼおよび他のMAPキナーゼ、すべてのストレス感受性タンパク質キナーゼ(SAPK)、ERKシグナル伝達経路、JNKシグナル伝達経路(JNK1、JNK2)、すべてのRAS活性経路、すべてのRho媒介経路、およびすべての関係するNIK、MEKK−1、IKK−1、IKK−2経路など、および他の細胞内および細胞外シグナル伝達経路を阻害または遮断する小分子阻害剤を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の物質は、少なくとも2つの治療化合物からなり、そのうち少なくとも1つは、生体の目に関係する炎症性障害および変性障害のうち少なくともいずれか一方に関与するシグナル伝達経路を同時かつ相乗的に遮断することにより炎症疾患を治療するための、抗サイトカインまたは抗ケモカインである、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つの治療化合物または薬剤は、抗体、ナノボディ、抗体断片、シグナル伝達経路阻害剤、転写因子阻害剤、受容体拮抗薬、小分子阻害剤、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの細胞表面受容体のアロステリック調節因子、細胞表面受容体内在化誘導因子、およびGPCR逆作動薬のうちの少なくとも1つからなる請求項51に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公表番号】特表2008−521489(P2008−521489A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543173(P2007−543173)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/041330
【国際公開番号】WO2006/057859
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507168937)テラカイン コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】THERAKINE CORPORATION
【Fターム(参考)】