説明

眼科薬物送達のためのデバイス、システム、および方法

眼組織に薬物を送達するためのデバイス、システム、および技術を記載する。少なくともいくつかの態様において、末端構成要素(例えば、ニードルまたはカテーテルの開端)を、眼組織に移植し、一つまたは複数の薬物を送達するために使用する。送達される薬物は、同様に移植される供給源に由来してもよく、または外部供給源から(例えば、ポートを介して)導入してもよい。固体および液体薬物製剤の両方を使用してもよい。あるいは、眼インプラントは、眼組織内へ薬物を放出する薄膜コーティングを含むことができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2006年7月20に出願されかつ「Devices, Systems and Methods for Ophthalmic Drug Delivery」と題される米国特許仮出願第60/807,900号(代理人整理番号006501.00023)の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物は、それらが必要とされる場所に局所的に送達される場合に、ヒトまたは動物の体において最も効率的に働くことは周知である。全身的に送達される場合、すべての組織が大量の薬物に曝露されるので、副作用のはるかに高い可能性がある。しかしながら、罹患エリアが体の内側にある場合、局部的薬物送達は課題を提示する。解剖学的に難しいエリアに位置する組織への局所的送達は、しばしば特殊な注射デバイスを必要とする。これは、とりわけ、目への注射に当てはまる。
【0003】
眼疾患の多くの処置は、目の表面への溶液(液滴で)の局所適用に頼る。局所薬物適用の有用性は、角膜上皮によって提供される重要なフラックスバリアならびに排液および涙液ターンオーバーの結果として生じる急速で広域な前角膜損失によって限定される。典型的には、局所に適用される薬物の5%未満が、角膜に浸透すると推定されている。
【0004】
局所製剤としての高濃度の薬物の送達が効果的であることが分かっているが、後眼部における組織への治療的用量の薬物の送達は、いまだに重要な課題である。加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、緑内障、および網膜色素変性症を含む、後部に影響を及ぼす多くの疾患がある。硝子体内注射は、後部の組織へ薬物を送達することに対する、および治療的組織薬物レベルを達成するための、最も直接的なアプローチを提供する。しかしながら、繰り返し注射が、しばしば必要とされる。ほとんどの患者は、そのような注射が非常に不快であることを見出すと考えられる。繰り返し注射は、網膜剥離、出血、眼内炎、および白内障などの副作用を引き起こす可能性もある。繰り返し注射は、感染症に対する潜在性も増加させる。
【発明の概要】
【0005】
本概要は、単純化された形式で、詳細な説明において以下でさらに記載する概念の選択を紹介するために提供する。本概要は、特許請求の対象の鍵となる特長または本質的な特長を同定することを意図しておらず、それは、特許請求の対象の範囲を決定することにおける補助として使用されることも意図していない。
【0006】
少なくともいくつかの態様において、目に薬物を送達するためのデバイスは、ポンプ、フィルター、および流体運搬システムなどの構成要素を含む。少なくともいくつかの態様に従うデバイスを、数日などであるがそれに限定されない時間の比較的長い期間にわたって、目に薬物の複数のボーラス用量または継続的な注入を送達するために使用してもよい。
【0007】
本発明のいくつかの態様は、目への薬物の標的送達のために使用してもよい移植可能な薬物送達システムを含む。そのようなシステムを使用して、短期間または長期間(例えば、数か月または数年)、断続的にまたは継続的に、少容量の薬物を目に送達してもよい。いくつかの態様において、移植される浸透圧ポンプは、固体または液体薬物を含み(または薬物/フィルターカプセルと流体連通しており)、目に移植されたカテーテルおよびニードルまたはその他の末端構成要素を介して薬物を送達する。
【0008】
固体および液体薬物製剤の両方を使用してもよい。固体薬物を使用する態様において、ポート貯蔵部または薬物保持カプセルに含まれる固体薬物塊の一部を取り込むために、別個の薬物媒体を使用してもよい。媒体の例は、生理食塩水、リンガー溶液、乳酸リンガー液、人工硝子体液、ならびに/または前眼房および/もしくは後眼部またはそうでなければ眼組織への注射と適合性のある任意のその他の媒体を含むが、それらに限定されない。次いで、媒体は、移植されたカテーテルを介して目またはその他の眼組織に送達される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の前述の概要ならびに特定の態様の以下の詳細な説明は、限定ではなく一例として含まれる添付の図面と併せて読まれる場合、より良く理解される。
【0010】
【図1】浸透圧ポンプおよび固体薬物/フィルターハウジングを含む、少なくともいくつかの態様に従う、移植可能な薬物送達システムの図面である。
【図2】図1に示す固体薬物/フィルターハウジングの断面図である。
【図3】図3Aおよび3Bは、少なくともいくつかの付加的な態様に従う移植可能な薬物送達システムを示す。
【図4】別の態様に従う薬物送達デバイスを示す。
【図5】図4からのスリーブ付き薬物貯蔵部の断面図である。
【図6】図6A〜6Cは、スクリーンを含む薬物貯蔵部の断面図である。図6Dおよび6Eは、それぞれ、換気口を含む薬物貯蔵部の透視図および断面図である。図6Fは、平面を含む薬物貯蔵部の透視図である。
【図7】固体薬物および3-D抗菌フィルターハウジングの断面図である。
【図8】別の態様に従うツーピース固体薬物および3-D抗菌フィルターハウジングを示す。
【図9】別の態様に従うツーピース固体薬物および3-D抗菌フィルターハウジングを示す。
【図10】二重管腔チューブがポンプおよび/または固体薬物を含む貯蔵部から伸長する態様を示す。
【図11】図10に示す二重管腔チューブの遠位端の拡大図である。
【図12】半透膜により、間質液が固体薬物を含むチャンバーを通過する態様を示す透視図である。
【図13】図12の態様の完全な断面図である。
【図14】固体薬物ペレットを含む図12および13の態様を示す。
【図15】流体が半透性中空ファイバーを含むループを介して一方向に循環する態様を示す。
【図16】薬物の電気泳動誘導送達を実施する態様を示す。
【図17】薬物の電気泳動誘導送達を実施する態様を示す。
【図18】薬物の電気泳動誘導送達を実施する態様を示す。
【図19】薬物の電気泳動誘導送達を実施する態様を示す。
【図20】ポート、カテーテル、および末端構成要素の図面である。
【図21】カテーテルでスリーブ付き薬物貯蔵部に取り付けられる皮下移植可能ポートを示す。
【図22】少なくともいくつかの態様に従う薄膜コーティングを有する眼インプラントを示す。
【図23】少なくともいくつかの態様に従う網膜インプラントを示す。
【図24】少なくともいくつかの態様に従う網膜インプラントを示す。
【図25】特定の態様に従う末端構成要素を移植してもよい目内の位置の例を示す。
【図26】特定の態様に従う末端構成要素を移植してもよい目内の位置の例を示す。
【図27】結晶質ガシクリジン基剤のペレットを浸食するために使用されるリンガー溶液内の塩酸の濃度の関数として薬物溶解チャンバーからのガシクリジンの溶出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
概説
薬物の眼科送達のための、すなわち眼組織への薬物の送達のためのシステム、デバイス、および方法の少なくともいくつかの態様を、本明細書に記載する。本明細書において使用するように、「眼組織」は、強膜内(例えば、網膜)および強膜の外側(例えば、眼窩内の眼筋)の組織を含む目を指す。「眼組織」は、視神経、膝状体核、および視覚野などの目に神経学的に接続される(が、目とは違った)組織も含む。いくつかの態様は、カテーテルに取り付けられる皮下ポンプ(浸透圧ポンプなど)および貯蔵部を含む。末端構成要素は、カテーテルに取り付けられ(またはその一部であり)、そこから薬物が目へ放出される要素である。いくつかの場合、末端構成要素は、強膜における切開部を通って目の内部の特定の領域へ流体を注射する軟組織カテーテル(例えばポリイミド、フルオロポリマー、シリコン、ポリウレタン、またはPVCから作られる、例えば小径弾性ポリマーチューブ)である。いくつかの態様(例えば、急性の病気の短期処置)において、末端構成要素は、ニードルであり得る。末端構成要素の挿入の深さおよび位置は、目またはその他の眼組織においてどの領域が標的にされているかに依存する。カテーテルまたはニードルは、挿入の深さを制御する挿入止めを有し得る。ほとんどの場合、末端構成要素を、目の運動への干渉を最小にするように移植してもよい。末端構成要素を挿入するための切開のための一つの可能性のある位置は、扁平部内である。薬物送達のためのカテーテルの末端となる可能性のある位置は、硝子体または前房内であってよく、これは薬物を目の正確なエリアに制御用量で送達することを可能にする。カテーテルの末端は、目の外表面の近くの組織に、例えば縫合、外科的タック、組織接着剤、またはその組み合わせを介して固定してもよい。取り付けられる場合、カテーテルは、目の運動に影響を及ぼさない、または他の方法で目の運動を制限しない。ポンプは、医師によって開けられた腔に固定してもよい。そのような腔は、乳様突起上の頭皮下または目により近い別の位置に設置してもよい。薬物送達カテーテルは、目の隣の骨に開けられた穴を介して目またはその他の眼組織に通じていてもよい。
【0012】
末端構成要素を、眼球内または強膜の外側の位置(例えば、眼球の後ろであるが眼窩内)に移植することができる。いくつかの態様において、注射デバイス(浸透圧ポンプまたはその他のタイプの流体移動デバイスを含む)のほとんどまたはすべてが移植される。様々な態様が、網膜インプラントと併せて注射デバイスのすべての移植を含む可能性があると考えられる。ポンプおよび貯蔵部からの薬物送達カテーテルは、望ましい量の薬物を送達するための眼球の第二の穿刺の必要性を回避するために、網膜インプラントのための電子機器パッケージからのワイヤと一緒に束ねられ得ると考えられる。しかしながら、望ましい場合、末端構成要素は、一つの位置に取り付けられ、網膜インプラントは、同じ目内の異なる位置に取り付けられてもよいと考えられる。
【0013】
網膜から視覚野への視神経または神経学的経路の障害を処置する際、末端構成要素を、膝状体核などの網膜と視覚野との間の位置または視覚野そのものに配置してもよい。薬物放出末端構成要素の配置は、処置を最も必要としている組織に依存すると考えられ、患者間で異なる場合がある。目の外側での配置により、疾患もしくは損傷(外科的外傷を含む外傷など)、静脈閉塞もしくは虚血、糖尿病性神経障害、またはその他の原因による神経変性によって影響を受けている視神経または視覚に関与するニューロンに、薬物を送達できると考えられる。
【0014】
いくつかの態様において、薬物送達システムは、別のタイプの眼電極、別のタイプの人工網膜視覚などと組み合わせてもよい。網膜インプラントと同様に、薬物送達カテーテルは、電極またはその他のデバイスのための電子機器パッケージからのワイヤと束ねられ、それによって目への外傷を最小にし、共移植されたデバイスの近くでの薬物の送達を可能にするだろう。
【0015】
以下の説明は、概していくつかのパートへまとめられる。パートIは概して、様々な態様に従って処置可能な眼病および使用可能な薬物の例の少なくともいくつかを議論する。パートIIは概して、少なくともいくつかの態様に従う眼組織に薬物を送達するために使用可能なデバイスを議論する。いくつかの実施例が、パートIIに続く。
【0016】
パートI眼病および薬物
本明細書に記載するようなデバイスは、目に影響を及ぼす多くの障害を改善するために使用することができる。そのような障害は、眼感染症、炎症性疾患、新生物疾患、および変性障害を含むが、それらに限定されない。本明細書に記載するようなシステム、デバイス、および/または方法を使用して処置可能であると考えられる病気のいくつかを、表1に列記する。
【0017】
【表1】

【0018】
少なくともいくつかの態様に従う薬物送達デバイスは、表1に列記した病気の一つもしくは複数の処置および/またはその他の病気の処置のために、特定の標的部位に一つまたは複数の薬物を送達するために使用することができる。薬物は、固体、液体、またはゲル形状であり得る。本明細書において使用するように、「薬物」という用語は、動物またはヒトに投与する場合に、局部または全身の予防的および/または治療的効果を生成することが可能な、任意の天然または合成、有機または無機、生理学的または薬理学的に活性な物質を含む。薬物は、(i)任意の活性薬物、(ii)活性薬物を産生するために動物またはヒト内で代謝され得る任意の薬物前駆体またはプロドラッグ、(iii)薬物の組み合わせ、(iv)薬物前駆体の組み合わせ、(v)薬物前駆体と薬物の組み合わせ、および(vi)薬学的に許容される担体、賦形剤、徐放送達システム、または製剤薬剤との組み合わせにおける前述のいずれかを含む。本明細書において使用するように、「薬物」という用語は、表2に列記した物質の一つまたは複数のいずれかも含むが、それらに限定されない。
【0019】
【表2】


付加的な例を、本明細書において提供する。
【0020】
多くの眼科疾患および障害は、血管形成、炎症、および変性の一つまたは複数に関連する。これらおよびその他の障害を処置するために、少なくともいくつかの態様に従うデバイスは、抗血管形成因子;抗炎症因子;細胞変性を遅らせる、細胞温存を促す、または細胞成長を促す因子;および前述の組み合わせの送達を可能にする。本明細書に記載するデバイスおよび/または提供する情報を使用して、かつ特定の障害の兆候に基づいて、当業者は、望ましい投薬量で本明細書に記載する薬物などの任意の適した薬物(または薬物の組み合わせ)を投与することができる。
【0021】
本発明のデバイス、システム、および方法に従って、任意の適した生物学的活性分子(「BAM」)が送達されてもよい。そのような分子は、抗体、サイトカイン、酵素、ホルモン、リンフォカイン、神経保護剤、神経伝達物質、および神経栄養因子、ならびに前述の活性フラグメントおよび誘導体を含むが、それらに限定されない。少なくとも4つのタイプのBAMが、少なくともいくつかの態様に従うデバイスを使用する送達に対して企図される:(1)抗血管形成因子(2)抗炎症因子、(3)細胞変性を遅らせる(抗アポトーシス剤)、細胞温存を促す、または細胞成長を促す因子、および(4)神経保護剤。
【0022】
血管形成阻害剤は、哺乳類における新しい血管の形成を低減または阻害する化合物であり、血管新生に関連する特定の眼障害の処置において有用である可能性がある。有用な血管形成阻害剤の例は、表3に列記した物質を含むが、それらに限定されない。
【0023】
【表3】

【0024】
本明細書において使用するように、「生物活性フラグメント」は、無傷のタンパク質の生物学的活性の少なくとも30%、少なくとも70%、または少なくとも90%を有する無傷のタンパク質の部分を指す。「類似体」は、無傷のタンパク質の生物学的活性の少なくとも30%、少なくとも70%、または少なくとも90%を有する無傷のタンパク質の種および対立遺伝子変異体、またはそのアミノ酸置換、挿入、もしくは欠失を指す。
【0025】
糖尿病性網膜症は、血管形成によって特徴付けられる。少なくともいくつかの態様は、眼内に、好ましくは硝子体に、または眼周囲に、好ましくはテノン嚢下領域に、一つまたは複数の抗血管形成因子を送達するデバイスを移植することによって糖尿病性網膜症を処置することを企図する。眼内に、眼周囲に、および/または硝子体内に、一つまたは複数の神経栄養因子を共送達することが望ましい場合もある。
【0026】
その生物活性フラグメントおよびその類似体を含むいくつかのサイトカインも、抗血管形成活性を有することが報告されており、したがって、一つまたは複数の態様に従うデバイスを使用して送達してもよい。例は、IL-12(IFN-γ-依存性メカニズムを介して働くと報告されている)およびIFN-α(単独でまたはその他の阻害剤との組み合わせにおいて抗血管形成性であることが示されている)を含むが、それらに限定されない。インターフェロンIFN-α、IFN-β、およびIFN-γは、それらの抗ウィルス活性とは無関係である免疫学的効果ならびに抗血管形成特性を有すると報告されている。
【0027】
少なくともいくつかの態様における使用に対して企図される抗血管形成因子は、アンジオスタチン、抗インテグリン、bFGF-結合分子、エンドスタチン、ヘパリナーゼ、血小板因子4、血管内皮成長因子阻害剤(VEGF-阻害剤)、およびバスキュロスタチンを含むが、それらに限定されない。VEGF受容体FltおよびFlkの使用も企図される。可溶性形態で送達される場合、これらの分子は、内皮細胞成長を阻害するために、血管内皮細胞上のVEGF受容体と競合する。
【0028】
少なくともいくつかの態様における使用に対して企図されるVEGF阻害剤は、可溶性VEGF受容体などのVEGF-中和キメラタンパク質を含むが、それらに限定されない。特に、例の一つのセットは、VEGF-受容体-IgGキメラタンパク質を含む。少なくともいくつかの態様における使用に対して企図される別のVEGF阻害剤は、アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(PS-ODN)である。
【0029】
まだ公知ではないにせよ、有用な血管形成阻害剤を、当技術分野において周知でありかつ使用される様々なアッセイを使用して同定してもよいことが企図される。そのようなアッセイは、例えば、ウシ毛細血管内皮細胞増殖アッセイ、ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイ、またはマウス角膜アッセイを含む。
【0030】
ブドウ膜炎は、炎症に関与する。少なくともいくつかの態様は、一つまたは複数の抗炎症因子を放出するデバイスの眼内、硝子体、または前房移植によって、ブドウ膜炎を処置することを企図する。少なくともいくつかの態様における使用に対して企図される抗炎症因子は、アルファ-インターフェロン(IFN-α)、アンチフラミン、ベータ-インターフェロン(IFN-β)、副腎皮質細胞からのグルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド、インターロイキン-10(IL-10)、ならびにTGF-βを含むが、それらに限定されない。特定のBAMは、複数の活性を有し得る。例えば、IFN-αおよびIFN-βは、抗炎症分子および抗血管形成分子の両方としての活性を有し得ると考えられる。
【0031】
網膜色素変性症は、網膜変性によって特徴付けられる。少なくともいくつかの態様は、一つまたは複数の神経栄養因子を分泌するデバイスの眼内または硝子体配置によって、網膜色素変性症を処置することを企図する。
【0032】
加齢性黄斑変性症(湿潤および乾燥)は、血管形成および網膜変性の両方に関与する。少なくともいくつかの態様は、眼内に、好ましくは硝子体に、一つもしくは複数の神経栄養因子、および/または眼内にもしくは眼周囲に、好ましくは眼周囲に、最も好ましくはテノン嚢下領域に、一つもしくは複数の抗血管形成因子を送達するために、本明細書に記載するデバイスの一つまたは複数を使用することによって、この障害を処置することを企図する。
【0033】
細胞変性を遅らせる、細胞温存を促す、または新細胞成長を促すことにおける使用に対して企図される因子は、本明細書において総称して「神経栄養因子」と呼ばれる。少なくともいくつかの態様における使用に対して企図される神経栄養因子は、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、骨形態形成タンパク質(BMP-1、BMP-2、BMP-7など)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、サイトカイン(IL-6、IL-10、CDF/LIF、およびIFN-βなど)、EGF、形質転換成長因子のファミリー(例えば、TGFβ-1、TGF β-2、およびTGF β-3を含む)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ヘッジホッグファミリー(ソニックヘッジホッグ、インディアンヘッジホッグ、およびデザートヘッジホッグなど)、ヘレグリン、インシュリン様成長因子-1(IGF-1)、インターロイキン1-β(IL 1-β)、ニューレグリン、ニューロトロフィン3(NT-3)、ニューロトロフィン4/5(NT-4/5)、ニュールツリン、神経成長因子(NGF)、PDGF、TGF-アルファを含むが、それらに限定されない。好ましい神経栄養因子は、GDNF、BDNF、NT-4/5、ニュールツリン、CNTF、およびCT-1である。
【0034】
上述の分子の修飾、切断、および突然変異型の使用も、少なくともいくつかの態様において企図される。さらに、これらの成長因子の活性フラグメント(すなわち、治療的効果を達成するのに十分な生物学的活性を有する成長因子のフラグメント)の使用も企図される。一つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)またはその他の繰り返しポリマー部分の付着によって修飾される成長因子分子の使用も企図される。これらのタンパク質およびそのポリシストロン性バージョンの組み合わせの使用も企図される。
【0035】
緑内障は、眼圧の増加および網膜神経節細胞の損失によって特徴付けられる。少なくともいくつかの態様において企図される緑内障に対する処置は、興奮毒性ダメージから細胞を保護する一つまたは複数の神経保護剤の送達を含む。そのような薬剤は、サイトカイン、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、および神経栄養因子を含むが、それらに限定されない。これらの薬剤を、眼内に、好ましくは硝子体内に送達してもよい。ガシクリジン(GK11)は、NMDAアンタゴニストであり、緑内障、および神経保護が助けとなり得るまたは活動亢進ニューロンがあるその他の疾患を処置することにおいて有用であると考えられている。有用な活性を有する付加的な化合物は、D-JNK-キナーゼ阻害剤である。
【0036】
「薬物」という用語は、神経保護剤、すなわち、神経細胞の死を遅らせる、軽減する、または最小にすることが可能な薬剤を含む。神経保護剤は、神経細胞死に関連する様々な障害(例えば、糖尿病性網膜症、緑内障、黄斑変性症(湿潤および乾燥)、網膜色素変性症など)の処置において有用である可能性がある。少なくともいくつかの態様において使用してもよい神経保護剤の例は、アポトーシス阻害剤、cAMP上昇剤、カスパーゼ阻害剤、神経栄養因子、およびNMDAアンタゴニスト(ガシクリジンおよび関連類似体など)を含むが、それらに限定されない。例示的な神経栄養因子は、以下を含むがそれらに限定されない:脳由来成長因子ならびにその生物活性フラグメントおよび類似体;サイトカイン関連神経栄養因子;線維芽細胞成長因子ならびにその生物活性フラグメントおよび類似体;インシュリン様成長因子(IGF)ならびにその生物活性フラグメントおよび類似体(例えば、IGF-IおよびIGF-II);ならびに色素上皮由来成長因子ならびにその生物活性フラグメントおよび類似体。例示的なcAMP上昇剤は、以下を含むがそれらに限定されない:8-(4-クロロフェニルチオ)-アデノシン-3':5'-環状一リン酸(CPT-cAMP)、8-ブロモ-cAMP、ジブチリル-cAMPおよびジオクタノイル-cAMP、コレラ毒素、フォルスコリン、ならびにイソブチルメチルキサンチン。例示的なカスパーゼ阻害剤は、以下を含むが、それらに限定されない:カスパーゼ-1阻害剤(例えば、Ac-N-Me-Tyr-Val-Ala-Asp-アルデヒド;配列番号:1);カスパーゼ-2阻害剤(例えば、Ac-Val-Asp-Val-Ala-Asp-アルデヒド;配列番号:2);カスパーゼ-3阻害剤(例えば、Ac-Asp-Glu-Val-Asp-アルデヒド;配列番号:3);カスパーゼ-4阻害剤(例えば、Ac-Leu-Glu-Val-Asp-アルデヒド;配列番号:4);カスパーゼ-6阻害剤(例えば、Ac-Val-Glu-Ile-Asp-アルデヒド;配列番号:5);カスパーゼ-8阻害剤(例えば、Ac-Asp-Glu-Val-Asp-アルデヒド;配列番号:6);およびカスパーゼ-9阻害剤(例えば、Ac-Asp-Glu-Val-Asp-アルデヒド;配列番号:7)。先述のカスパーゼ阻害剤の各々は、Bachem Bioscience Inc., PAまたはPeptides International, Inc., Louisville, KYから入手できる。
【0037】
少なくともいくつかの態様に従うデバイスは、様々なその他の眼障害の処置において有用であり得る。例えば、薬物送達デバイスは、眼感染症の処置のために、抗生物質、抗ウィルス剤、または抗真菌剤などの抗感染症剤を送達してもよい。同様に、デバイスは、目の炎症性疾患の処置のために、例えば、ヒドロコルチゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、または酢酸メチルプレドニゾロンなどのステロイドを送達してもよい。デバイスは、眼新生物の処置のために、例えば、メトトレキサート、クロラムブシル、シクロスポリン、またはインターフェロンなどの化学療法薬または細胞毒性剤を送達するために使用されてもよい。さらに、デバイスは、特定の変性眼障害の処置のための一つまたは複数の薬物を送達することにおいて有用であり得る。そのような薬物の付加的な例は、表4に列記した物質を含むが、それらに限定されない。
【0038】
【表4】

【0039】
本明細書において使用するように、アンタゴニストは、非限定的に、抗体、抗体の抗原結合部分、特定の標的タンパク質(例えば、ICAM-1)に結合する生合成抗体結合部位、または標的タンパク質もしくはそれに関連する調節性要素をコードする核酸にインビボでハイブリダイズするアンチセンス分子を含み得る。アンタゴニストは、標的タンパク質(例えば、ICAM-1)に結合するおよび/もしくはそれを阻害する、または標的タンパク質(例えば、ICAM-1)をコードする核酸に結合するおよび/またはその発現を阻害する、低減する、もしくは他の方法で調節するリボザイム、アプタマー、または小分子も含み得る。
【0040】
少なくともいくつかの態様は、多くの眼疾患および障害に関連し、かつ重度の視覚損失の大部分の原因となる病気である眼血管新生の処置に対して有用であり得る。例えば、糖尿病および多くのその他の疾患における盲目の主要な原因である網膜虚血関連眼血管新生;患者に角膜移植不全を起こしやすくする角膜血管新生;ならびに糖尿病性網膜症、中心網膜静脈閉塞症、およびおそらく加齢性黄斑変性症に関連する血管新生の処置が企図される。
【0041】
少なくともいくつかの態様は、眼および非眼症状の両方を有する疾患または病気に起因する眼症状を処置するために使用されてもよい。例は、サイトメガロウィルス性網膜炎および硝子体の障害などのAIDS関連障害、網膜における高血圧性変化などの妊娠関連障害、ならびに様々な感染性疾患の眼への作用(例えば、嚢中症、真菌感染症、ライム病、眼ハエウジ病(ophthalmonyiasis)、寄生虫性疾患、梅毒、イヌ回虫症、結核症など)を含むが、それらに限定されない。
【0042】
薬物は、純粋な形態で、または例えば薬学的に許容される担体との組み合わせでもしくは放出システム内に封入される製剤として、目の腔へ(またはその他の眼組織に)導入してもよい。薬物は、放出システム内に均質にまたは不均質に分布してもよい。様々な放出システムが、本発明の実践において有用であり得るが、しかしながら、適当なシステムの選択は、特定の薬物計画によって必要とされる薬物放出の速度に依存すると考えられる。非分解性および分解性放出システムの両方を使用してもよい。適した放出システムは、ポリマーおよびポリマーマトリクス、非ポリマーマトリクス、または無機および有機賦形剤および希釈剤を含む。放出システムは、天然または合成であり得る。しかしながら、合成放出システムは、概して、それらがより信頼性があり、より再現性があり、より明確な放出プロファイルを産生するので、好ましい。異なる分子量を有する薬物が、放出システム材料を通る拡散または放出システム材料の分解によって特定の腔から放出されるように、放出システム材料を選択してもよい。本発明の態様は、生分解性ポリマー、生浸食性ヒドロゲル、およびタンパク質送達システムを使用する拡散または分解を介する薬物放出を含む。
【0043】
本発明の態様を、固体または液体製剤である薬物を送達するために使用してもよい。高い頻度で固体薬物は、比較的長い時間その安定性を維持する利点を有する。固体薬物は、高い薬物対容量比および小さい表面積も有する。固体薬物を使用する場合、固体薬物の一つまたは複数の塊から(溶解、溶出、浸食、もしくは何らかの他のメカニズム、またはメカニズムの組み合わせのいずれでも)薬物が取り出される速度を制御するために、媒体の特性を使用することができ、それによって眼組織に送達される薬物の濃度を調節することに対する柔軟性を提供する。本明細書(特許請求の範囲を含む)において使用するように、「媒体」は、固体薬物の一つもしくは複数の塊から固体薬物を取り出すために、および/または眼組織に取り出された薬物を送達するために使用される流体媒質である。媒体は、間質液などの体液、人工液、または体液および人工液の組み合わせであり得、取り出されるおよび/または送達される薬物に加えてその他の材料を含んでもよい。媒体は、溶液(例えば、生理食塩水におけるNaCl、水における酸または塩基の溶液など)および/または懸濁液(例えば、ナノ粒子)にそのようなその他の材料を含んでもよい。媒体のさらなる例は、以下に含まれる。
【0044】
媒体によって固体薬物塊から取り出され、その媒体に留保される薬物は、時に本明細書において媒体内に(または、媒体によって)取り込まれると見なされる。本明細書(特許請求の範囲を含む)において使用するように、「取り込まれる」薬物は、塊から浸食され媒体に溶解される薬物、塊から浸食され媒体に懸濁される薬物、および塊から浸食されナノ粒子または媒体のその他の成分に吸着/吸収される薬物を含む。固体薬物塊から取り出され、別の化学的形態(例えば、塩基性固体薬物塊を酸性媒体と接触させる場合に生じる塩)で媒体内に残る薬物も、「取り込まれる」薬物という語句の範囲内に含まれる。
【0045】
本発明の態様は、薬物の酸性または塩基性型が水不溶性または難溶性である薬物の治療的有効濃度を送達するための方法を含む。酸-塩基官能基を有する薬物に対して、低水溶性型は、とりわけ薬物を固体として、例えば結晶質状態で保存する場合、溶液依存性分解プロセスをしにくいことから、より安定である可能性が高い。加えて、結晶質または非晶質固体として、薬物は、最小であろう空間を占めると考えられ、小さな送達デバイスの構築も容易にする。
【0046】
固体薬物の塩基性型が酸性固体型より低可溶性である少なくともいくつかの態様に従って、塩基性型の固体ペレットは、望ましい薬物濃度と実質的に同じである濃度で酸により溶出される。薬物の酸性型が塩基性型より低可溶性である少なくともいくつかの態様において、酸性型の固体ペレットは、望ましい薬物濃度と実質的に同じである濃度で塩基により溶出される。少なくともいくつかの付加的な態様に従って、水不溶性薬物を可溶化し得る両親媒性分子を有する一つまたは複数の成分を含む水性溶液を使用することで、固体薬物ペレットを浸食して治療的有効量の薬物を送達することができる。
【0047】
少なくともいくつかの態様では、移植されたデバイスにおいて固体薬物を使用する有利点は、薬物の予混合(またはその他の液体)型を使用する場合に必要とされるよりも少ない容量を使用して、デバイスに薬物を保存する能力である。いくつかの場合、このより少ない容量は、(適当な媒体供給源と組み合わせられる場合に)実質的に継続的な長期治療を提供するのに十分な薬物を含むデバイスの移植を可能にする。この長期治療は、日、週、または月の期間にわたる場合がある。いくつかの場合、長期治療は、数年以上に延長することもある。いくつかの態様に従う方法における使用に適した塩基性結晶質または固体非晶質薬物の一つの例は、ガシクリジンである。例えば、適当な媒体で浸食される18 mgの固体ガシクリジンは、1時間あたり20マイクロリットル以下の流速で4年以上100μM薬物を送達すると推定されている。ガシクリジンの塩酸塩、その酸性型は、高度に水溶性である。しかしながら、ガシクリジンの酸性型は、体温で不安定でもある。対照的に、ガシクリジンの塩基性型は、水難溶性であり、水の存在下でその酸性型よりはるかに安定である。水中でのガシクリジンの塩基性型の溶解は、塩基性型を水溶性酸性型に変換するために、酸(例えば、塩酸または乳酸)の存在を必要とする。それ故に、溶液中のガシクリジンの濃度は、塩基性型を酸型に変換するために利用できる酸の量に依存すると考えられる。溶解されかつ送達される薬物の量を変える適当な媒体のこの能力は、固体薬物を保持しているデバイスの取り換えを必要とすることなく、かつ液体貯蔵部へ異なる濃度の治療的溶液をロードすることなく、送達される薬物の濃度を変える際の実質的な柔軟性を提供する。
【0048】
ガシクリジン基剤の滅菌ペレットは、ガシクリジン塩酸塩の滅菌溶液を水酸化ナトリウムの滅菌溶液と混合することによって調製してもよい。0.22μmポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリビニリデンジフルオライド膜フィルターなどであるがそれらに制限されない滅菌フィルターを通過させることによって、塩酸ガシクリジンと水酸化ナトリウムの溶液を滅菌してもよい。ポリエーテルスルホン膜フィルターは、pH 5.5かつ25℃で、室温でガシクリジン溶液に対する低親和性を有する;そのように、これらの膜は、塩酸ガシクリジン溶液の滅菌濾過と適合性がある。混合した後、単一の塊へ薬物基剤の液体型を収集するために溶液を遠心し、長期にわたって固体薬物基剤の単一の塊に凝固または結晶化させる。均一なサイズおよび形状の滅菌ペレットを調製するために、遠心プロセスにおいて、望ましい形状の塊を形成する滅菌チューブを使用してもよい。
【0049】
付加的な態様には、酸または塩基形態の一つで水(またはその他の媒体)可溶性であり、かつ酸または塩基形態のもう一方で難溶性であるその他の薬物の送達に適用可能な方法が含まれる。低水溶性薬物型からなる固体は、必要に応じて酸または塩基を含む適合性媒体(例えば、リンガー溶液、乳酸リンガー液、生理食塩水、生理学的生理食塩水、人工硝子体液、ならびに/または前眼房および/もしくは後眼部またはその他の眼組織への注射と適合性がある任意のその他の媒体)で溶出または浸食される。低水溶性薬物型が塩基性型である場合、次いで、媒体は、塩酸、リン酸二水素ナトリウム(例えば、リン酸一ナトリウム)、乳酸、リン酸、クエン酸、クエン酸のナトリウム塩、または乳酸などの薬学的に許容される酸を含み得る。低水溶性薬物型が酸性型である場合、次いで、媒体は、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、または水酸化コリンなどの薬学的に許容される塩基を含み得る。
【0050】
いくつかの態様は、固体薬物ペレットを採用し得る。それらのペレットは、結晶質塊または固体非晶質塊であり得る。薬物ペレットを製造する例は、実施例1および3として本明細書に含まれる。固体薬物は、結晶質および非晶質塊の組み合わせを含んでもよいと考えられる。薬物は、任意の望ましい形状へ成形される融液であってよく、または圧を使用して(結合剤を用いてまたは用いずに)ペレットへ押圧されてもよい。結晶質物質は、典型的には比較的安定なので、いくつかの場合、結晶質薬物(利用できる場合)が非晶質固体薬物型よりも望ましい可能性がある。結晶格子エネルギーが、薬物を安定化させるのを助ける可能性もある。しかしながら、本発明は、結晶質薬物型またはその使用に限定されない。
【0051】
本発明は、同様に、酸-塩基官能性を有する薬物(または薬物を採用する方法もしくはデバイス)に限定されない。態様は、モノパルミトイルグリセロールまたはポリソルベート80(例えば、TWEEN 80(登録商標))などの両親媒性分子を有する一つまたは複数の成分を含む薬学的に許容される媒体で薬物を溶出することによる、水難溶性である任意の薬物の溶解(またはその他のメカニズムによる塊からの放出)も含む。その他の適した両親媒性分子成分は、アシルグリセロール、12-ヒドロキシステアリン酸のポリ-オキシエチレンエステル(例えば、ソルトール(登録商標)HS15)、ベータ-シクロデキストリン(例えば、カプチゾル(登録商標))、タウロコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、コール酸、もしくはウルソデオキシコール酸などの胆汁酸、硫酸ガラクトセレブロシドなどの天然陰イオン性界面活性剤、ラクトシルセラミドなどの天然中性界面活性剤、またはスフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、もしくはカルニチンパルミトイルなどの天然両イオン性界面活性剤を含む(がそれらに限定されない)。溶解(またはその他の放出)は、間質液または天然(もしくは疑似)涙液などの生理学的流体媒体の使用によって遂行されてもよい。生理学的流体媒体は、水不溶性薬物の溶解をもたらすことが可能であるタンパク質および脂質などの両親媒性分子を含む。溶解は、両親媒性分子を使用することなく実行されてもよく、薬物の許容される濃度が得られる。
【0052】
酸-塩基官能性を有しない薬物の一つの例は、トリアムシノロンアセトニドである。トリアムシノロンアセトニドは、非常に低い水溶解度を有する結晶質固体として市販されている。トリアムシノロンアセトニドの固体ペレットが、リンガー溶液などの媒体の連続ストリームに曝露される場合、溶液中の抽出されるトリアムシノロンアセトニドの予期される濃度は、40μM以下であるべきである。より高い濃度のトリアムシノロンアセトニドは、媒体に両親媒性分子を含むことによって可溶化することができる。そのような薬学的に許容される両親媒性分子は、ポリソルベート80(例えば、TWEEN 80(登録商標))であると考えられる。望ましい薬物濃度を支持すると考えられる媒体に必要とされる量の両親媒性分子を添加することによって、可溶化されるトリアムシノロンアセトニドの濃度を、その水溶解度(40μM)以上に増加してもよい。本発明は、トリアムシノロンアセトニド、リンガー溶液、またはポリソルベート80の使用を介して実施する方法に限定されない。任意の難溶性薬物、薬学的に許容される媒体、および薬学的に許容される両親媒性分子が使用されてもよい。
【0053】
さらにその他の態様は、ナノ粒子を採用する。ナノ粒子は、抗菌フィルターを通過することが可能な移動相に薬物を維持することができる。いくつかの態様は、両親媒性薬物担体の代わりにまたはそれと組み合わせて、薬物に対する親和性を有し(例えば、薬物を吸着/吸収し)かつ担体として作用すると考えられる粒子(例えば、ナノ粒子)の懸濁液を使用する。さらにその他の態様は、純粋な薬物ナノ粒子の使用を含む。態様は、純粋な薬物ナノ粒子および担体ナノ粒子に吸着/吸収された薬物の両方の組み合わせも含む。少なくともいくつかの態様に従う粒子は、0.22ミクロン以下の抗菌フィルターを通過するのに十分小さいと考えられる。懸濁された担体ナノ粒子を有する媒体を使用する薬物のその塊からの放出は、薬物安定性および送達の両方に有利であると考えられる。薬物ナノ粒子の塊からの固体薬物の放出は、同様の利点を有すると考えられる。
【0054】
少なくともいくつかの態様において、媒体は、送達されるべき薬物に対する親和性を有する小さな担体粒子(サイズが100 nm〜0.1 mm)または担体ナノ粒子(サイズが10 nm〜100 nm)の懸濁液を含む。担体粒子またはナノ粒子を形成できる材料の例は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ならびにポリスチレンを含む(がそれらに限定されない)。担体粒子またはナノ粒子を形成できる材料の付加的な例は、磁性金属および対象となる薬物(または複数の薬物)を引き付けるためのコーティングを有する磁性金属を含む。これらの小さな担体粒子またはナノ粒子は、担体粒子(またはナノ粒子)が懸濁されている媒体によって、固体薬物の塊(本明細書に記載するような貯蔵部に保存してもよい)から浸食される薬物を吸着/吸収するまたは他の方法で引き付けると考えられる。
【0055】
いくつかの態様において、媒体は、そのような純粋な薬物ナノ粒子からなる固体塊から、純粋な薬物ナノ粒子を浸食するために使用されると考えられる。そのようなナノ粒子の固体塊を、圧縮によっておよび/または結合剤の使用によって形成することができると考えられる。
【0056】
いくつかの場合、少量の酸または両親媒性賦形剤(例えば、ソルトール(登録商標)HS15、TWEEN 80(登録商標)、またはカプチゾル(登録商標))が、固体薬物の塊から(または固体薬物ナノ粒子の塊から)の薬物溶出および溶液または移動性ナノ粒子懸濁液への薬物の移送を促進するために採用されてもよい。
【0057】
いくつかの態様において、担体ナノ粒子を加工するために使用されるポリマー材料は、(薬物の最終的な送達を促すことを助けるために)生分解性であり、市販されており、かつヒト使用が認可されている。L-およびD,L-乳酸のポリマーならびに乳酸およびグリコール酸のコポリマー[ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)](Birmingham, ALにあるLakeshore Biomaterialsから入手できる)は、担体ナノ粒子に対するポリマーの望ましい特性に合う潜在性を有するポリマー材料の例である。0.22μm抗菌フィルターを通過するのに十分小さなナノ粒子は、溶媒置換法によってポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の50:50混合物から加工されている。
【0058】
適したサイズのナノ粒子を加工するために、いくつかの方法が採用されている。これらの方法は、蒸発法(例えば、自由噴流膨張、レーザー蒸発、スパーク浸食、電子爆発、および化学的蒸着)、機械的摩耗(例えば、パールフライス加工)を伴う物理的方法、溶媒置換に続く界面沈着、および超臨界CO2を含む。ナノ粒子を調製するための付加的な方法は、可溶化溶媒およびナノ粒子が可溶でない溶媒の溶媒置換、振動噴霧および霧化状態での乾燥、二つの液体流の超音波処理、マイクロポンプ(薬物のナノおよびマイクロサイズ液滴を送達するインクジェット様システムなど)の使用、ならびに連続流ミキサーを含む。
【0059】
溶媒置換法によってナノ粒子を調製する場合、通常は500 rpm以上の攪拌速度が採用される。混合の間、溶媒交換速度が遅ければ、より大きな粒子が産生される。圧勾配を変動させることは、完全に発達した乱流における効率的な混合をもたらすのに必須である。超音波処理は、十分な乱流混合を提供し得る一つの方法である。超音波処理を用いるおよび用いない連続流ミキサー(二つ以上の溶媒流)は、スケールが十分に小さい場合に、小さな粒子サイズを確保するのに必要な乱流を提供し得る。溶媒置換法は、研究室または工業的スケールで実施するのに比較的単純であるという有利点を有し、0.22μmフィルターを通過することができるナノ粒子を産生する。溶媒置換法によって生成されるナノ粒子のサイズは、有機溶媒中のポリマーの濃度、混合の速度、およびプロセスにおいて採用される界面活性剤の影響を受ける。単離されると、薬物粒子または薬物含有ポリマー粒子の乾燥または湿潤ペレットは、固体塊へ圧縮することができ、または薬学的に許容される結合剤と混合しかつ塊へ圧縮することができる。
【0060】
パートII眼薬物送達デバイス
少なくともいくつかの態様に従う薬物送達システムは、様々な移植可能な構成要素の組み合わせを含む。これらの構成要素は、浸透圧ポンプ、皮下(または経皮)ポート、カテーテル、および末端構成要素を含む。いくつかの場合、浸透圧ポンプ(および/またはポート)およびその他のシステム構成要素は、患者の頭の側面(または頭の他の場所)での皮下移植を可能にするのに十分小さく、目に薬物を送達するために使用することができる。しかしながら、これらの構成要素は、患者の体の他の場所に移植されてもよい。
【0061】
少なくともいくつかの態様において、媒体による固体薬物塊からの薬物の放出(および媒体による取り込み)に対して採用されるデバイスは、薬物の低水溶性型を保持し、かつ溶解またはその他の除去薬剤(例えば、酸、塩基、両親媒性分子、ナノ粒子の懸濁液)を含む媒体が固体薬物を通って流れることを可能にすることができる任意のチャンバーを含むことができる。チャンバーのサイズ、媒体流の速度、および使用される酸、塩基、両親媒性分子、またはナノ粒子の濃度は、薬物送達デバイスの意図される用途ならびに薬物物質および/または薬物塊の溶解特徴(または浸食もしくはその他の物理的特徴)によって、ならびに任意の必要とされる媒体貯蔵部および/またはポンプシステムによって決定される。そのようなデバイスに対するパラメータの決定は、当業者が本明細書に含まれる情報を得れば、当業者の能力内である。
【0062】
薬物溶解(またはその他のメカニズムによる放出)をもたらすための液流は、望ましい用途に合致する液流パラメータを有する任意のポンプによって達成することができる。そのようなポンプは、移植可能なMEMSポンプ、移植可能な浸透圧ポンプ、移植可能なペリスタポンプ、移植可能なピストンポンプ、移植可能な圧電ポンプなどを含むが、それらに限定されない。適当なポンプの選択は、当業者が本明細書に含まれる情報を得れば、同様に当業者の能力内である。いくつかの態様において、ポンプは、ヒト(または動物)の体内に完全に移植されてもよい。その他の態様において、ポンプは、体の外部にあり、皮下ポートまたはその他の接続を介して、固体薬物を保持する貯蔵部に媒体を送達していてもよい。
【0063】
図1は、固体薬物塊から薬物を送達するために使用することができる、少なくともいくつかの態様に従う薬物送達システムの図面である。図1のシステムは、移植可能な浸透圧ポンプ105および薬物/フィルターハウジング106を含む。以下で説明するように、ハウジング106は、内部腔、インレット、およびアウトレットを含む。第一カテーテル107の管腔は、浸透圧ポンプ105のアウトレットおよび薬物/フィルターハウジング106のインレットに接続する。「カテーテル」は、流体が流れ得る一つまたは複数の内部管腔を有するチューブまたはその他の細長い本体である。第二カテーテル108の管腔は、薬物/フィルターハウジング106のアウトレットを末端構成要素109に接続する。理解される通り、流路は、ポンプ105、カテーテル107の管腔、ハウジング106の内部腔、カテーテル108の管腔、および末端構成要素109によって形成される。
【0064】
浸透圧ポンプ105は、当技術分野において公知のタイプである。そのようなポンプ(例えば、Durect Corp. of Cupertino CAによってデュロス(登録商標)およびCHRONOGESIC(登録商標)という商標名で売られているポンプ)は、その他の用途での使用に関して公知であり、例えば、米国特許第4,034,756号に記載される。概して、移植される浸透圧ポンプは、ポンプ内の膜の水性透過性に関連する所定の流速で薬物を駆動するための浸透圧差を組み入れる。このメカニズムは、典型的には、周囲の組織環境から液体を吸収し区画容量を拡大する高浸透性を有する浸透圧ポリマー、塩、またはその他の材料を使用する。この容量増加は、ピストンを動かす、または弾性貯蔵部を圧縮し、ポンプからの液体の排出を引き起こす。ピストン(または可動シール)は、排出されるべき液体を含む貯蔵部から浸透圧ポリマーを分離する。ポンプハウジングは、水または適当な液体を浸透圧ポリマーに到達させる半透体から構成されてもよい。ポンプの送達の速度は、ポンプの外膜の透過性によって決定される。
【0065】
従来の浸透圧ポンプは、液体貯蔵部に液体製剤薬物を保持する;そのようなポンプは、いくつかの態様において、目またはその他の眼組織にそのような液体薬物製剤を送達するために使用することができる。しかしながら、図1における浸透圧ポンプ105は、薬物媒体を含む。媒体は、薬物/フィルターハウジング106の内側の固体薬物塊からの薬物の取り込みのためにポンプ105から排出される。その他の態様において、ポンプ105は、薬物を含むが薬物/フィルターハウジング106から付加的な薬物を運ぶための媒体としても使用される液体を排出してもよい。
【0066】
浸透圧ミニポンプは、長い時間継続的に少量の液体を送達することができる。しかしながら、従来の浸透圧ポンプの内部流体貯蔵部を再充填するのが難しい場合がある。従って、図1の態様は、手短な外科的手順における浸透圧ポンプ105の従来の除去および置き換えを可能にする接続金具(図1には図示せず)を含む。浸透圧ポンプの流速を制御することも難しい場合がある。図1の態様に対するバリエーションは、低浸透性の環境流体から半透膜(ポンプ内)を単離するポンプに接続される制御可能な弁を含む。これは、流体送達ピストンを駆動するためのポンプ区画への流体の進入を防ぐ。制御弁は、電場がそれを横切って印加される場合に変形する圧電要素であり得る。そのような弁は、内部電子機器パッケージによって、またはRFトランスミッションを介して(例えば、患者が着る体の外側の外部信号システムから)信号を受信する内部制御モジュールによって、接続されかつ制御されてもよい。さらにその他の態様において、小さな磁気的に活性化されたスイッチが、弁のための電子機器へ内蔵される。弁は、制御電子機器が移植されている患者の体の一部上に十分な強度の磁石を配置することによって開かれるまたは閉じられる。同様の磁気的にアクティブにされるスイッチは、ペースメーカーなどの移植されるデバイスおよび移植される心臓除細動器において見出される。しかしながら、そのような制御弁が採用される場合でさえも、浸透圧ポンプは、即時オン/即時オフ様式で機能しない場合がある。例えば、制御弁が閉じられる時間とポンプ送達が徐々に減る時間との間に遅延がある場合がある;この遅延の間に、ポンプは、浸透圧平衡に到達する。さらにその他の態様において、制御弁またはダイバータ弁をポンプアウトレットカテーテル107に配置することによって、これに対処することができる。さらにその他の態様において、即座のポンプ停止を必要とする緊急事態において、浸透圧をなくすために圧放出弁が含まれてもよいと考えられる。
【0067】
図2は、図1からの薬物/フィルターハウジング106の断面図である。ハウジング106は、一つまたは複数の固体薬物および抗菌フィルターを保持するためのカプセルとしての役目を果たす。液体薬物製剤を送達するために移植された浸透圧ポンプを使用するいくつかの態様において、ハウジング106は、抗菌フィルターを含むだけである場合がある。ハウジング106は、チタンまたは生体適合性がありかつ調剤されるべき薬物と適合性があるその他の材料から形成される。ハウジング106の近位(または「上流」)端は、ハウジングに恒久的に取り付けられ得る、または除去可能であり得る多孔性ケージ111を保持する。同様にチタンまたはその他の生体適合性および薬物適合性材料から形成されるケージ111は、一つまたは複数の固体薬物の一つまたは複数の塊を保持する。薬物は、粉末の形態で、ペレットの形態で、または何らかのその他の固体形態で、モノリシックであり得る。ケージ111上の複数の穴は、ポンプ105からの流体が、溶解された(またはその他の取り込まれた)形態でその固体薬物の一部と混合しかつそれを運び出すことを可能にする。ハウジング106の遠位(または「下流」)端は、三次元抗菌フィルター112を含む。以下でより詳細に記載するように、「抗菌フィルター」は、薬物運搬液を通過させるのに十分小さいが、バクテリアまたはその他の望ましくない要素の通過を妨害する細孔サイズを有するフィルターである。ハウジング106は、ツーピースアセンブリ(ピース106aおよび106b)であり、それによって、ケージ111(例えば、薬物を変えるため、または薬物が枯渇した場合に)および/またはフィルター112(例えば、フィルターが詰まった場合に)を置き換えるために、ハウジング106を解体しかつ再度組み立てることを可能にする。ピース106aおよび106bは、ネジ式接続を介してまたはその他のタイプの機械的メカニズム(例えば、連動タブおよびスロット)によって互いに取り付け可能であり得る。カテーテル107は、ピース106aにおけるインレットに取り付けられ;カテーテル108は、ピース106bにおけるアウトレットに取り付けられる。カテーテル107および108は、エポキシまたはその他の接着剤で取り付けられ得る。その他の態様において、かかり付きコネクターが採用されてもよい。ハウジング106にカテーテル107および108を留保するために、クリップおよび/またはその他のロッキングメカニズムが使用されてもよいと考えられる。
【0068】
少なくともいくつかの態様において、浸透圧ポンプ105および薬物/フィルターハウジング106は、患者の頭蓋骨内の特別に調製されたポケットにおける移植に対してサイズ決定される。カテーテル107および108は、同様に患者の頭蓋骨上で調製された溝内に置かれてもよい。
【0069】
図3Aおよび3Bは、別の態様に従う薬物送達システムを示す。浸透圧ポンプ205は、ポンプ205のアウトレット231がある程度拡大されかつ内部ネジ山232を有すること以外、図1の浸透圧ポンプ105と同様である。薬物/フィルターハウジング206は、図1および2のハウジング106と同様である。しかしながら、ハウジング206は、ポンプ205のアウトレット231上の内部ネジ山232に対応する外部ネジ山233を有する。図3Bに示すように、これは、ポンプ205とハウジング206との間の直接的な取り付けを容易にし、それによって、図1に示すカテーテルの一つ(すなわち、カテーテル107)に対する必要性を回避する。ハウジング206へのインレット(図2におけるカテーテル107に接続されるハウジング106のインレットと同様)は、ポンプ205のアウトレットと流体連通するように配置される。ハウジング206のアウトレットからの流体は、カテーテル208を介して眼組織に流れる。ハウジング206の寸法は、送達される薬物および望ましい濃度の薬物を提供するのに必要とされる表面積に依存すると考えられる。
【0070】
図3A〜3Bの形態は、ハウジング206内の薬物および/またはフィルターの置き換えのためのポンプ205からのハウジング206の定期的な除去を可能にする。図3A〜3Bの態様に対するバリエーションにおいて、ポンプ205とハウジング206との間のその他のタイプの接続メカニズム(例えば、ロッキングタブおよび溝)が採用される。さらにその他のバリエーションにおいて、ハウジング206は、ポンプ205に恒久的に(例えば、接着剤で)取り付けられる。
【0071】
眼科薬物送達デバイスの別の態様を、図4に示す。図4の態様において、デバイス310は、カテーテル316および317を介してスリーブ付き薬物貯蔵部314に連結される浸透圧ポンプ312を含む。三次元(3-D)抗菌フィルター319は、カテーテル318を介して薬物貯蔵部314に連結される。別のカテーテル321およびコネクター322は、付加的なカテーテル(図示せず)を介して、3-Dフィルター319を、標的眼組織への薬物含有溶液の送達のために位置付けられる末端構成要素(同様に図示せず)に接続する。末端構成要素は、例えば、ニードルまたはカテーテルの開端であり得る。移植の前に、浸透圧ポンプは、固体薬物を取り込むと考えられる溶液で満たされる。
【0072】
固体薬物貯蔵部は、流体が固体薬物の一つまたは複数の塊(例えば、固体薬物ペレット)の周りを流れかつ浸食するための腔を提供するようにデザインされる。図5は、少なくともいくつかの態様に従う薬物貯蔵部のほんの一例である、図4のスリーブ付き薬物貯蔵部314の断面図である。薬物貯蔵部314は、一つまたは複数の固体薬物ペレット325がロードされるチャンバー320を形成する二つの中空金属チューブ328および329(薬物適合性材料から作られる)を含む。液体密封シールを形成するために、スリーブ327(シリコンまたはその他の適当な材料から作られる)が、チューブ328および329に巻かれる。チューブ328および329の先細端は、それぞれ、カテーテル318および317の端に適合する。図5の薬物貯蔵部314は、チャンバー320内に薬物ペレットを含むように、かつ固体ピースがチャンバー320から出ていくのを防ぐように形成される。薬物貯蔵部314は、分離されかつ再び取り付けられてもよく、それによって一つまたは複数の固体薬物ペレットのローディングを可能にする。
【0073】
いくつかの態様において、薬物ペレットの移動をさらに防ぐために、円形スクリーンが、薬物チャンバーの内側に配置される。いくつかの場合、スクリーンの少なくとも一つは、薬物の補充を可能にするために除去可能であってもよい。図6Aおよび6Bは、別の態様に従い、かつそのようなスクリーンを含む、薬物貯蔵部340の断面図である。図6Aおよび6Bにおいて見られるように、薬物貯蔵部340は、流体密封接続を形成するために(ネジ山351および352で)嵌め合うハウジング344および346を含む。チュービング接続インレット350の側に定常メッシュスクリーン343とハウジング344のエッジに除去可能メッシュスクリーン341とを含むハウジング344内のチャンバー342の内側に、固体薬物を配置してもよい。図6Aに見られるように、スクリーン341は、ハウジング346内にある3-D抗菌フィルター345の直前にある。スクリーン341および343は、多孔性であり、チタン、ステンレススチール、もしくはその他の生体適合性、薬物適合性金属(例えば、金、白金)で作られた金網クロスおよび/またはポリマー(例えば、フルオロポリマー)であり得る。その他の態様において、スクリーンは、チタンまたはステンレススチールなどの多孔性金属で作られていてもよい。メッシュスクリーン341および343は、薬物ペレットが、ハウジング346、抗菌フィルター345、またはインレット接続350もしくはアウトレット接続348に接続してもよいチュービング(図示せず)へ移動することを防ぐ。図6Aにおいて、ハウジング半分344および346がネジ式結合した薬物貯蔵部340を示す。図6Bは、分離されたハウジング344および346を示すが、適所に除去可能スクリーン341、定常スクリーン343、および抗菌フィルター345を有する。図6Bに見られるように、除去可能スクリーン341は、ハウジング344の端の外円形表面を覆う。定常スクリーン343は、空間342の内円形表面を覆うだけである。スクリーンは、薬物チャンバーの形状に適合する任意の形状であり得る。しかしながら、特定の態様において、スクリーンは必要とされず、省略されてもよい。
【0074】
抗菌フィルターは、同様に必要とされない。例えば、図6Cは、抗菌フィルター345を伴わない薬物貯蔵部340の断面図である。少なくともいくつかの態様は、システムの充填の間に空気泡を抜き取ることを可能にする機構を含んでもよい。これは、流体送達システム(例えば、浸透圧ポンプまたは皮下ポートを介して接続される外部ポンプ)が、湿潤多孔性フィルター(図6Aおよび6Bの3-Dフィルター345など)の毛細血管様構造内で液体を保持する表面張力に打ち勝つのに十分な圧を生成しない場合に、蒸気閉塞を防ぐのを補助し得る。いくつかの態様において、セットスクリューまたはプラグが、フィルターの上流(すなわち、より高い圧)側の薬物チャンバーハウジングの側面へ組み入れられてもよい。セットスクリューまたはプラグは、プライミングの間に除去され得、すべての空気泡がシステムから抜き取られると、使用のために再び取り付けられ得る。さらにその他の態様において、換気弁は、ガスの換気を可能にする上流半透膜を含んでもよい。さらにその他の態様において、セットスクリューまたはプラグは、除去不可能である場合があるが、脱気を可能にするためにガス透過性であるが液体透過性ではない部分を含む場合がある。
【0075】
図6Dは、少なくとも一つの態様に従う薬物貯蔵部360を示し、これはガスの換気を可能にする半透膜を有する換気弁361を含む。チュービングコネクターかかり362が、貯蔵部360の上流側にあり、チュービングコネクター363が、下流側にある。図6Eは、薬物貯蔵部360の断面図である。薬物貯蔵部360は、ネジ山371、372で流体密封接続を形成するように接合するハウジング364および365を含む。腔366は、一つまたは複数の固体薬物ペレットまたはその他の塊を保持する。図示しないが、図6Aおよび6Bにおけるスクリーン343および341と同様のスクリーンが、空間366の上流側の面369上および空間366の下流側の面368上に(定常または除去可能形態で)置かれてもよい。図6Eの態様において、3-D抗菌フィルター367は、ハウジング365において形成される空間374に収まる。
【0076】
薬物貯蔵部340のハウジング344および346、薬物貯蔵部360のハウジング364および365、ならびにその他の態様における薬物貯蔵部のハウジングは、チタン、ステンレススチール、白金、金などの薬物適合性、腐食耐性材料、生体適合性コーティング金属、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー)、PFA(ペルフルオロアルコキシエチレン)、その他のフルオロポリマーなどの化学的不活性ポリマー、またはフルオロポリマーコーティング金属で作製することができる。体温で低流速の間に、薬物は、チャンバーの壁に吸着しやすい場合があり、そのため予期される濃度よりも低い濃度の薬物が患者に送達される。フルオロポリマーは、吸着に耐えるための最良の公知の材料である。その他のポリマーは、ECTFE(エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー)、MFA(テトラフルオロエチレンペルフルオロ(メチルビニルエーテル)コポリマー)、PCTFE(ポリクロロトリ-フルオロエチレン)、およびPVDF(ポリビニリデンジフルオライド)を含むが、それらに限定されない。
【0077】
上で示すように、様々な態様における薬物貯蔵部は、固体薬物の補充を可能にするために開かれかつ閉じられる場合がある。貯蔵部構成要素は、(図6A〜6Cおよび6Eに示すように)ネジ式である場合もあり、またはロッキングタブおよび溝からなる場合もある。さらにその他の態様において、外部クランプが使用されてもよい。さらにその他の態様において、貯蔵部ハウジングは、スナップフィットによって接合されてもよい。上でも示すように、貯蔵部314(図5)は、周囲のスリーブ327によって一緒に保持される二つの金属チューブ328および329を含む。周囲のスリーブ327は、シリコンゴムなどの弾性ポリマーで作製することができる。いくつかの態様において、漏れを防ぐために、薬物貯蔵部の嵌め合い部分の間(例えば、図5のチューブ328と329との間、図6A〜6Cのハウジング344と346との間、図6Eのハウジング364と365との間)に、生体適合性ガスケットが置かれてもよい。さらにその他の態様において、薬物貯蔵部ハウジングの外部部分は、より簡単な締め付けを促進するために平面またはその他の領域を含んでもよい。図6Fは、嵌め合いハウジング381および382を有する薬物貯蔵部380の態様を示す。平面383は、ハウジング381の一側面に形成される。第二平面(図示せず)は、ハウジング381の反対側面に形成することができる。同様に、ハウジング382は、一側面に形成される平面384を含み、反対側面に付加的な平面(同様に図示せず)を含んでもよい。
【0078】
薬物ケージ111(図2)と同様の薬物ケージは、図5〜6Fに示す薬物フィルターハウジングのいずれかとともに、ならびに以下で記載するその他のハウジングとともに使用されてもよい。
【0079】
少なくともいくつかの態様において、薬物貯蔵部の上流側のカテーテルチュービング(例えば、図4におけるデバイス310のポンプ側のカテーテル316に対するチュービング)は、シリコン、ポリウレタン、またはPTFE、FEP、およびPFAを含むフルオロポリマーなどの媒体適合性および生体適合性、弾性ポリマーであり、薬物貯蔵部の下流側のカテーテルチュービングは、PTFE、FEP、およびその他のフルオロポリマーなどの生体適合性、薬物適合性、弾性ポリマーである。
【0080】
いくつかの態様において、固体薬物貯蔵部および3-D抗菌フィルターは、カテーテル接続を介して流体連通している。これは、概して、上流または下流構成要素に接続するために使用することができる金属チュービングコネクター322および389も示している図4に見られる。その他の態様においてかつ上で記載したように、単一のハウジングは、固体薬物(単独でまたはケージ内で)ならびに三次元抗菌フィルターを含んでもよい。そのようなハウジングは、固体薬物の補充を可能にするために、開かれかつ閉じられてもよい。図7は、別の態様に従う薬物貯蔵部395の断面図である。薬物貯蔵部395は、ネジ山401、402を嵌め合うことによって接合されるハウジング396および397を含む。ハウジング396の内側の腔403が、固体薬物を保持する(図示せず)。図6Aおよび6Bのスクリーン341および343と同様のスクリーンが含まれてもよい。任意で、3-D抗菌フィルター398が、空間399に設置される。図6A〜6Fに示すかかり付き接続金具の代わりに、薬物貯蔵部395は、上流インレット穴405および下流アウトレット穴406を含む。
【0081】
少なくともいくつかの態様において、薬物およびフィルターのためのハウジングは、チタン、金、白金、またはステンレススチールから作製され、人体へ移植するのに十分なほど小さい。内径は、3-D抗菌フィルターがハウジングの内側に固着することができるようにサイズ決定される。(様々な態様における)可能性のあるフィルターサイズの例は、0.03〜0.25''の物理的外径を有する0.22ミクロン最大細孔サイズ3-Dフィルターを含むが、それらに限定されない。さらにその他の態様において、物理的外径は、0.1''と0.3''との間である。
【0082】
図8は、少なくとも一つの態様に従う薬物貯蔵部425の二つの分離されたハウジング426および427の透視図である。図9は、ハウジング426および427が(ネジ山430および431を介して)接合されている薬物貯蔵部425の断面図である。ハウジング426および427の外端全体は、そこに形成される(それぞれ)かかり428および429を有する。固体薬物および任意の3-D抗菌フィルター433を保持するための空間432も、図9に見られる。
【0083】
図10は、二重管腔チューブ445がポンプおよび/または固体薬物を含む貯蔵部から伸長する付加的な態様を示す。二重管腔チューブ445は、二つの別個のラインへ分離する。チューブ446は、一つの管腔に取り付けられ、患者から流入する生理学的流体を受ける。チューブ447は、別の管腔に取り付けられ、患者の眼組織に治療的流体を送達する。ライン446内に受けられる間質液は、貯蔵部内の固体薬物ペレットを通って流れ、それらのペレットから薬物をゆっくりと(例えば、溶解によって)取り出す。次いで、得られた薬物および生理学的流体の溶液は、チューブ447を介して標的眼組織に送達される。図11は、チューブ446および447の遠位端448および449の拡大図であり、液流を再循環させるための二つの管腔をさらに図示する。その他の態様において、二つの完璧に別個のチューブ(すなわち、二重管腔チューブから出現しない二つのチューブ)が使用されてもよい。そのような態様は、治療的流体が送達されるべき領域からより遠くにある領域から、生理学的流体が引き出される場合に有用である可能性がある。特定の態様において、チューブ446を介して目から受けた流体のいくらかまたはすべては、再循環されない。これは、例えば緑内障によって引き起こされる過剰な眼内圧を軽減するために行われ得ると考えられる。
【0084】
図12は、ポンプが流れを生成することを必要としないシステムの態様を示す透視図である。半透膜455は、固体薬物を含む貯蔵部456のチャンバーへ間質液媒体を通過させる。チャンバー内の薬物が溶解する(または別の方法で、固体薬物塊から取り出され、間質液媒体に取り込まれる)時、膜を隔てた濃度差により、流体は低い濃度からより高い濃度に流れる。浸透圧により、流体は、膜455を通過し、アウトレットを通って薬物チャンバーへ移動し、カテーテル458(図示の目的のためにクリアなカテーテルとして示す)における任意の3-D抗菌フィルター457を通過して、標的眼送達部位に移動する。半透膜455は、間質液を通すのに十分であるが、取り込まれた固体薬物を拡散させない細孔サイズカットオフを有する。抗菌フィルター457は、バクテリアを留保するが、溶解された(または他の方法で取り込まれた)薬物を通過させるのに十分な細孔を有する。電場が膜455に印加されてもよく、その結果電気浸透による拡散が引き起こされる。図13は、図12の態様の完全な断面図であり、固体薬物を保持するための腔460をより詳細に示す。図14は、腔460に固体薬物ペレット325を含む図12および13の態様を示す。逆流を防ぐために、適当なチェック弁(図示せず)が、腔460または流路内の他の場所内に含まれてもよい。
【0085】
図15は、流体が、半透性中空ファイバー473を含むループ472を介してポンプ/貯蔵部から(二重管腔チュービング475の一つの管腔を介して)一方向に循環し、チュービング475の第二管腔を介して戻る、システム470の態様を示す。中空ファイバーループ473は、標的眼送達エリアに位置付けることができる末端構成要素である。ポンプは、貯蔵部に設置された固体薬物を通って媒体を循環させ、結果として生じる薬物を保持した媒体は、中空ファイバー473の壁を通って標的眼組織へ拡散する。その他の態様において、図15のものと同様の送達システムは、実際には液体の容量を送達することなく、受動拡散によって外部環境へ薬物を放出する薬物透過中空ファイバーを含む。
【0086】
さらにその他の態様は、取り付けられた電池および電力電子機器(電力供給、再充電回路など)ならびに情報を受信しかつ送信するための通信電子機器を有するセンサー(例えば、緑内障のための圧センサーまたは薬物センサー)を含む。これらの態様において、電子機器は、デバイスの貯蔵部区域と束ねられてもよいと考えられ、センサーは、カテーテルの表面に付随するワイヤと組み合わせられるまたは多管腔チュービングの管腔の一つの中に含まれ、かつ標的眼組織内に出ていてもよいと考えられる。
【0087】
少なくともいくつかの態様は、帯電薬物イオンまたは薬物のその他の粒子の電気泳動誘導送達を含む。帯電薬物に対して、薬物を含む(または吸着/吸収された薬物を有するナノ粒子を含む)流体に電場を印加することにより、普通の拡散よりも速い薬物の移動を誘起できる。ガシクリジンの場合は、ポンプを必要とせずに目への薬物送達を加速するために、デバイス出口の(例えば、カテーテルの端における)またはデバイス出口のすぐ外側の負電荷を使用することができる。反対極性の同じまたは類似の電荷(例えば、ガシクリジンの場合は正電荷)が、薬物含有区画(例えば、固体薬物が保持されるチャンバー)に同様に印加されてもよいと考えられ、それによって、ポンプを必要とせずにデバイスからの薬物送達を可能にする。電気泳動環境は、標的眼組織内の天然低抵抗アウトレットに電気浸透流を誘起すると考えられる。適当な電子機器パッケージ、電池、再充電アセンブリ、オン/オフスイッチ、通信回路、およびその他の電子機器によって調節される電気量の電界強度およびその他のパラメータによって、カテーテルチップへの薬物の移動の速度(または薬物の濃度)を調節することができると考えられる。反対電荷を有する薬物が使用される場合、次いで、電子回路は、電極上の電荷を逆転させると考えられる。電気泳動誘導薬物送達の態様は、患者の安全性を促すために、および少量の薬物が送達されることから、非常に低い電力デバイスであると考えられる。眼組織内の帯電デバイスは、例えば、盲目患者において、および目における光フラッシュまたは光に対する活動亢進感受性を有する患者を処置するための特別な状況において、ならびに電気刺激からの利点が報告されるその他の患者に対して、視神経の神経変性を抑圧するための付加的な利点を提供する可能性がある。いくつかの態様において(ならびに図23および24に関連して以下で記載するように)、カテーテルは、目への電気刺激(パルスまたはその他)の送達のために使用されるだけである電極を含む。さらにその他の態様において、カテーテルは、目における眼内圧、電位、または何らかのその他の物理的特徴を検知するために、代替的に(または付加的に)使用される電極を含む。そのような刺激および/または検知のための方法および電子機器は、当技術分野において公知である(本明細書に記載する薬物送達デバイスとの組み合わせではないが)。本明細書に記載する薬物送達システムへの適当な刺激および/または検知電子機器の含有は、当業者が本明細書に含まれる情報を得れば、当業者の日常的な技能内であると考えられる。
【0088】
図16は、少なくともいくつかの態様に従う電気泳動誘導薬物送達システム495を示す。チューブ497は、流体送達管腔および電極ワイヤを含み、薬物貯蔵部496から伸長する。図17は、薬物貯蔵部496およびチューブ497の一部の断面図である。貯蔵部496は、半透膜500および固体薬物ペレットを保持するための内部腔501を含む。電子機器パッケージ503および電池505は、貯蔵部496の下側に取り付けられる。電子機器パッケージ503は、電極チップ507に一つの極性の電荷を、電極ワイヤ509のチップ508(図16および19を参照されたい)に反対極性の電荷を誘起する。腔501内のワイヤ509の部分は、チップ507との早期電荷交換を防ぐために、誘電体でコーティングしてもよく、または他の方法で絶縁してもよい。図18は、図17と同様であるが、腔501内の固体薬物ペレット325を示す。図19は、チュービング497の末端(または遠位端)を(図18に対して反転した配向で)示し、電極チップ508および流体アウトレット510を図示する。反対電荷が電極507およびワイヤチップ508に適用される場合、目の中の自然な低い抵抗のアウトレットに電気浸透流が誘起される。間質液は、半透膜500を介して腔501に入る。その他の態様において、薬物貯蔵部から離れている別の体領域から流体を引き出すために、別個のチューブが(膜500の代わりに)使用される。腔501に入る流体は、腔501内の薬物を溶解し、標的眼組織に薬物を送達する。
【0089】
少なくともいくつかの態様において、ポートは、患者の体の皮下に(または経皮的に)移植され、移植されたカテーテルおよび末端構成要素と流体連通するように配置される。ポートは、液体および/または固体薬物を保持するために使用することができる内部腔を含む。セルフシーリングエラストマー(例えば、シリコン)中隔が、腔を覆う。中隔は、薬物吸着を最小にするための薬物適合性フルオロポリマー積層ライニングを有してもよい。外部供給源から腔へ流体を導入するために、ノンコアリングニードルを中隔を通って挿入してもよい。その流体は、液体製剤薬物であってもよく、または腔内に既に設置されている固体型薬物を溶解し(または他の方法で取り込み)、その取り込まれた薬物を目に送達するための液体媒体であってもよい。いくつかの態様において、液体製剤薬物は、腔に含まれる付加的な固体型薬物を取り込むための媒体として使用される。
【0090】
ポートの薬物保持腔は、薬物適合性材料(例えば、ステンレススチール、チタン、白金、金、または薬物適合性ポリマー)から構成されてもよい(またはそれでコーティングしてもよい)。この材料は、(組織拒絶を防ぐために)生体適合性であり、薬物の繰り返しの再充填および調剤ならびに薬物含有媒体の潜在的な腐食作用に持ちこたえることができ、かつ薬物を保持し劣化することなくより長期間、移植した状態を保つことが可能である。ポートが固体状態で薬物を保持するために使用される場合、腔形成材料は、薬物が腔壁にくっつかないように、かつ薬物と接触する腔表面が薬物のいずれをも吸着しないように、適合性であってよい。腔壁は、少なくとも特定の態様において、水または生理学的流体に対して透過性であるべきではない。
【0091】
図20は、ポートを含む一つの配置を示す。移植されるポート601(ブロック図形式で示す)は、カテーテル602に接続され、そのカテーテルも、患者の体の内側に移植される。末端構成要素604は、カテーテル602の遠位端に設置される。フランジまたはその他のタイプの止め具(図20には図示せず)は、目への末端構成要素604の過挿入を防ぐ。任意の縫合アンカー603は、適所にカテーテル602を固定する手段を提供する。ポート601は、固体薬物を含み得ると考えられ、次いで、外部ポンプからポートへ導入される滅菌媒体(例えば、生理食塩水、リンガー溶液、乳酸リンガー液、人工硝子体液、および/または目もしくはその他の眼組織への注射と適合性がある任意のその他の媒体)によって溶解されるまたは他の方法で取り込まれる。ポート601は、外部ポンプ(例えば、実施例2に記載するMiniMed 508ポンプ)またはその他の外部供給源からの薬物および/または媒体を受けることができる。
【0092】
いくつかの態様において、かつ出願第60/807,900号においてより詳細に記載されるように、皮下移植可能ポートは、二つの腔を含む。それらの腔の一つは、二重管腔カテーテルの第一管腔と流体連通しており、もう一方の腔は、もう一方の管腔と流体連通している。そのような態様は、別の供給源(例えば、外部ポンプ)から流体を受けるためにポートの一つの側を使用して、かつ標的眼組織から流体を引き出すためにポートのもう一方の側を使用して、標的眼組織の洗浄を可能にする。
【0093】
図21は、デバイス310の浸透圧ポンプ312(図4)が、皮下ポート710で置き換えられている態様を示す。いくつかの態様において、ポート710は、ポートの中隔711を貫通するニードル(ニードルは外部ポンプまたは媒体の何らかのその他の供給源と流体連通している)を介してポートへ導入される媒体によって浸食される固体薬物ペレットを含む。
【0094】
眼組織への薬物の送達は、米国特許出願第11/337,815号(米国特許出願公開第2006/0264897号として刊行された、2006年1月24日に出願されかつ「Apparatus and Method for Delivering Therapeutic and/or Other Agents to the Inner Ear and to Other Tissues」と題される)に記載されるデバイスおよび手順を使用して行われてもよい。
【0095】
いくつかの態様において、薬物貯蔵部に連結される電子機器パッケージ(例えば、図17における電子機器パッケージ503)は、薬物/媒体溶液(または懸濁液)の特性を検知するための構成要素を含む。検知される特性は、圧、光の吸収、電気伝導度、光散乱、薬物、または電解質濃度などの一つまたは複数を含み得ると考えられる。次いで、これらの検知される特性を適当な電子機器を介して使用して、ポンプ(内部または外部)またはその他の要素(例えば、磁気コイルまたは電気泳動電極)の操作を調整することができる。電子機器パッケージは、同様に(または代替的に)光もしくはその他の物理的パラメータ(例えば、組織電気活動)を検出する、および/または離れたセンサーと連通するように設定できるだろう。
【0096】
少なくともいくつかの付加的な態様において、貯蔵部内の一つまたは複数の固体薬物塊から薬物を取り出すために使用する媒体は、それ自身、薬物(または複数の薬物)を含むナノ粒子の予混合懸濁液であってもよい。さらにその他の態様において、貯蔵部チャンバー内の固体薬物塊を採用することなく薬物(または複数の薬物)を含むナノ粒子の予混合懸濁液を送達するために、様々な態様に従う薬物デバイスが使用されてもよい。どちらの場合でも、ナノ粒子は、薬物ナノ粒子または薬物が吸収/吸着されているもしくは他の方法で取り付けられている担体材料のナノ粒子であり得る。
【0097】
以前に示されたように、本明細書に記載するようなデバイスおよび方法は、薬物の持続性長期送達を提供するために使用することができる。そのようなデバイスおよび方法は、長期的に断続的な薬物送達を提供するために使用されてもよい。例えば、固体薬物塊を保持する貯蔵部は、患者の体に移植することができると考えられる。次いで、その貯蔵部は、媒体の供給源に(例えば、貯蔵部と流体連通している皮下ポートを使用して)定期的に接続することができる。
【0098】
図4に示すシステム310と同様に、図6A〜9に示す貯蔵部は、ヒトまたは動物に移植して、一つの端(例えば、貯蔵部340のインレット350、貯蔵部360のインレットかかり362)でカテーテルを用いて媒体供給源(例えば、移植された浸透圧ポンプ、媒体が外部供給源から導入されるポート)に連結することができる。もう一方の端(例えば、貯蔵部340のアウトレット348、貯蔵部360のかかり363)は、別のカテーテルを介して患者の目に移植された末端構成要素に接続することができる。
【0099】
上記の態様の一つまたは複数において、眼インプラントは、送達されるべき薬物を含む薄膜コーティングを含むように処置され得、その薄膜コーティングは、標的眼組織への眼インプラントの配置後に薬物をゆっくりと放出する。そのような眼インプラント801の一つの例を、図22に示し、薄膜コーティング802を、破線で示す。インプラント801に取り付けられるロッド803またはその他の部材は、インプラント801を眼組織へ配置する(かつ眼組織からインプラント801を除去する)ために使用することができる。図22の眼インプラント801は、固体ディスクであるが、薄膜コーティングは、その他のタイプの眼組織インプラント(例えば、電気刺激のための電極を有するインプラントおよび/またはセンサーを有するインプラント)とともに使用されてもよい。薄膜を介する送達に適した薬物は、神経保護剤および抗生物質薬剤を含むが、それらに限定されない。薬物含有コーティングを調製するために使用することができる方法および材料は、当業者に周知である。適した方法および材料の例は、米国特許第6,627,246号に記載されるものである。
【0100】
使用するコーティングは、生体適合性および薬物適合性の両方であるべきである。生体吸収性ポリマーからなる薄膜が、いくつかの態様において使用される;被膜の浸食は、コーティングからの薬物物質の放出を確保することを補助する。適した生体吸収性エラストマーの例は、米国特許第5,468,253号および第6,627,246号に記載される。有用なポリマーは、L-ラクチド、D-ラクチド、エプシロン-カプロラクトン、およびグリコリドの混合物を含む。これらの混合物の相対組成物は、コーティング加水分解および吸着の速度、薬物放出の速度、ならびに被膜の強度を制御するために使用することができる。薬物放出薄膜を調製するために使用することができるその他のポリマー材料は、ポリアミド、シュウ酸ポリアルキレン、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリ(無水物)、およびそのブレンドを含む(が、それらに限定されない)。眼内で分解可能な天然ポリマーは、ヒアルロン酸、キトサンまたはデンプンなどの吸収性生体適合性ポリサッカライド、フィブリン、エラスチン、フィブリノーゲン、コラーゲン、および脂肪酸(およびそのエステル)を含む。薬物含有ポリマーは、コーティングするべき表面に溶解ポリマーおよび薬物を含む溶液を噴霧することによって、またはそれらの溶液にインプラントの一部を浸漬することによって塗布することができる。アセトンなどのコーティングプロセスにおいて残留物または毒性に対する低い潜在性を有する高揮発性溶媒を、そのような噴霧または浸漬において使用することができる。薄膜は、典型的には、被膜内の治療薬が消耗するまで数週間薬物送達を提供する。厚さは、薬物送達を所望する期間と薬物ローディングとに依存すると考えられる。多くは厚さが、5〜30ミクロン以下であるが、その他の厚さも許容される。
【0101】
コーティングは、強膜内に配置されるインプラントと強膜の外側に配置されるインプラントの両方で使用してもよい。
【0102】
様々な態様に関連して上で記載したような3-Dフィルター要素を、様々な方式で形成してもよい。一つの例として、3-Dフィルター要素は、抗菌フィルターとしての使用のために適当に小さな細孔/チャネルサイズ(0.22ミクロンなど)を有する材料(例えば、生体適合性ポリマー材料または多孔性金属材料)のシートから切断またはパンチされ得、そのシートは、流路に沿って数ミリメートル伸長可能な長さのフィルター要素を生じる厚さを有する。最大細孔サイズは、<10ミクロン、例えば、<2.0ミクロンまたは0.22ミクロンであり得る。金属3-Dフィルター要素は、焼結によって形成されてもよい。例えば、チタン金属などの微細金属粉末(望ましい結果として生じる細孔サイズに対して選択された粒子直径を有する)が、最終フィルター要素に対する望ましい形状を有するモールドへしっかりと詰めることができる。粉末粒子が融解し近隣の粒子への付着を形成し始めるポイントまで、金属を加熱する。この結果、フィルターのように働き、蛇行性流路を有し、かつ既定のマクロ外部形状を有する複雑な多孔性の固着網目構造となる。フィルター要素は、316型ステンレススチール、多孔性金、多孔性白金、または任意のその他の生体適合性金属から交互に形成することができる。本明細書(特許請求の範囲を含む)全体にわたって使用するように、「金属」は、合金を含む。特定の態様において、合金は、金および銀などの二つの材料から作製することができ、次いで、一つの金属を除去して(例えば、銀脱合金)、微孔性フィルター材料を生成する。
【0103】
さらに別の例として、抗菌フィルターに適した適当な直径のマイクロファイバーを、適当な金属へ組み入れ、次いで、燃焼させる(炭素に基づく)、またはシリカに基づくセラミック(例えば、一過性フィルターファイバー)などのようにフッ化水素酸でエッチングすることができる。そのようなフィルター充填剤構成要素の例は、当技術分野において公知である。付加的な態様は、薄いフィルターに付加的な強度を提供するためにより大きな多孔性材料上に層化または積層された正しい細孔/チャネルサイズの薄いフィルターを含む。ポリマー材料から調製される3-Dフィルターにおいて、フィルター材料を改変するために、およびフィルター材料への細孔のエッチングを可能にし、非常に均一な細孔直径を有するフィルターを生成するために、レーザーまたはガンマ線が使用されてもよい。抗菌フィルターを詰まらせる可能性のある粒子を除去するためのプレフィルターとして作用するために、より大きな細孔サイズを有するフィルターが、抗菌フィルターと一緒に使用されてもよい。
【0104】
非限定的に、かつさらなる例として、3-Dフィルター要素は(金属であろうとポリマーであろうと)、約0.010インチ〜0.400インチの範囲(例えば、約0.062インチ)の直径を有し得る。3-Dフィルター要素の長さは、およそ0.010インチ〜0.200インチ(例えば、約0.039インチ)であり得る。細孔サイズは、例えば0.22ミクロンであり得る。その他の寸法のフィルター要素は、それらが抗菌フィルターとして機能する限り、(望ましい応用およびデバイスに依存して)許容される;効果的な細孔サイズは、概して、全体の寸法よりも重大であるが、より小さな細孔サイズは、背圧を増加させる。
【0105】
特定の状況において、詰まったフィルターの除去および取り換えが、患者に対して外科的に便利である場合、微孔性3-Dフィルターが、抗菌薄膜フィルターと一緒に使用されてもよい。例えば、これは、薬物ポートがアセンブリの一部として密閉抗菌フィルターとともに使用される場合、有用である可能性があると考えられる。薄膜膜フィルターを、液体がフィルターの周りに行くことを防ぐために、支持基礎構造とともに組み立てることができる。これは、膜エッジの周りに液体密封シールを作るための膜フィルターに対する裏打ちおよびオーリングで実施することができる。
【0106】
3-Dフィルター要素は(どのように形成されても)、様々な方式のいずれかで流体システムへ組み入れることができる。上で記載した組み入れ(例えば、薬物/フィルターハウジングの使用)に加えて、チューブへのフィルター要素の簡単な挿入を可能にするために(溶媒で)膨化されたカテーテルまたはその他のチューブ(例えば、部分的にシリコンゴムなどの弾性生体適合性ポリマーから形成されるカテーテル)の一部へ、3-Dフィルター要素を挿入することができる。溶媒が蒸発する時に、チュービングは、密封シールを作るために、その設計時の直径に戻り、フィルター要素の周りで閉じる。3-Dフィルター要素の外側は、フィルター要素の側面の周りの漏れを防ぐために、チュービングと溶接、糊付け、またはシールされてもよい。
【0107】
3-D抗菌フィルターが採用される上記の態様のすべて(およびその他の態様)において、それらの態様の改良型は、膜フィルターまたはその他のタイプの抗菌フィルターメカニズムを採用してもよい。
【0108】
移植可能な浸透圧ポンプを使用する様々な態様を上で記載したが、その他のタイプの移植可能なポンプが使用されてもよい。そのようなその他のタイプのポンプは、適当なマイクロフルイディクスを含むMEMS(微小電気機械システム)ポンプ(例えば、チェック弁を有する圧電ポンプ、ミニペリスタおよびその他の種類のミニチュアポンプ)を含む。
【0109】
カテーテルおよび/または末端構成要素を固定するための多くの態様において、縫合アンカーを使用することができる。縫合アンカーは、液体シリコンエラストマーまたは別の適した生体適合性ポリマーを使用して、カテーテルに直接的に取り付けることができる。縫合アンカーは、リング状であり得るが、その他の形状(例えば、縫合糸のための穴を有する四角、半リング、薄プレート、または「イヤー」)も採用できる。あるいは、縫合アンカーは、シリコンエラストマー、エポキシ、またはその他の種類の接着剤で作られたチュービングの表面上の隆起であってもよい。
【0110】
多くのタイプのカテーテルを、様々な態様で使用することができる。少なくともいくつかの態様では、移植されるカテーテルは、フルオロポリマー(例えば、PTFE、FEP、ETFE、およびPFA)、シリコンゴム、PVC、PEEK、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリウレタンなどの薬物適合性および生体適合性材料から形成される。カテーテルのために選択される正確な化合物は、送達されるべき薬物に対する材料-薬物適合性、ならびに特定の応用に必要とされる弾性、管腔サイズ、およびその他の仕様に依存すると考えられる。単管腔および多管腔カテーテルを使用することができる。
【0111】
上で示すように、移植可能な構成要素を、様々な生体適合性材料から形成してもよい(または含んでもよい)。構成要素の薬物接触表面は、少なくともいくつかの態様において、4〜9の間のpHを有する薬物と適合性がある材料から形成される。
【0112】
末端構成要素は、電気眼インプラントを含み、本発明の態様は、網膜またはその他の眼内電気インプラントと併せた、またはその一部としての、移植可能な薬物送達デバイスの使用を含む。図23および24は、そのような態様の一つの例を示す。図23は、網膜インプラント901の上面図である。インプラント901の上面は、内部詳細を明らかにするために部分的に除去されている。図24は、図23に示す位置から取られた断面図である。具体的に、網膜インプラント901は、複数の電極906および流体出口開口908を含む内チャンバー904を含む。各々の電極906には、コンダクター(例えば、ワイヤ)909が取り付けられる。混乱を回避するために、いくつかの電極コンダクターの一部のみを示す。各々の電極906は、一部がインプラント901の下面911上に曝されるように、インプラント901の底面を介して伸長する。この様式で、各々の電極906は、下面911が接触するように配置された網膜の一部に電気刺激を印加できる。開口908により、チャンバー904内の流体を、インプラント901を出て網膜に送達することが可能になる。あるいは(または同様に)、開口は、目の内側の硝子体に薬物を送達するために、電極906と反対の側に含まれてもよいと考えられる。
【0113】
網膜インプラント901は、二重管腔カテーテル902の端に取り付けられる。第一管腔905は、電極906から制御電子機器パッケージ(図示せず)にコンダクター909を送るための導管として使用される。第二管腔903を使用して、網膜への最終的な送達のために、チャンバー904に薬物含有流体(液体薬物製剤、媒体および取り込まれた薬物など)を輸送する。管腔903を、上で記載した移植可能な薬物送達デバイスのいずれかに(直接的にまたは介在接続カテーテルを介して)連結してもよい。インプラント901のための材料は、デュロメーターで測定されるようなショアAスケールで50以下の硬度を有するシリコンまたはポリマーなど、米国特許第7,181,287号に記載されるものを含む。その他の材料が使用されてもよいと考えられる。電極906は、米国特許第7,181,287号に記載されるものなどの材料(例えば、白金またはその合金、イリジウム、酸化イリジウム、窒化チタン)ならびにその他の材料から同様に形成されてもよい。コンダクター909は、白金、その合金、またはその他の材料から形成され得、絶縁のために、および保護のために、および調剤される薬物との相互作用に対して、シリコンまたはフルオロポリマー鞘またはコーティングを含み得ると考えられる。
【0114】
その他のタイプおよび形態の薬物送達インプラントが使用されてもよく、様々な眼組織(例えば、目、視神経、視覚野)において使用されてもよい。薬物送達インプラントは、電気刺激を提供する必要はない。
【0115】
図25および26は、強膜951、網膜950、および視神経952を有する眼内の、いくつかの態様に従うデバイスの配置を示す部分的概略図(断面で示す)である。簡単にするために、その他の眼構造(例えば、レンズ、角膜)および組織は省略する。図25は、カテーテル931に接続された、扁平部におけるまたはその近くの末端構成要素930(この場合カテーテル端)の配置を示す。カテーテル931は、以前に記載されたような移植された薬物送達デバイスに順に接続される。図26は、網膜インプラント901の配置を示す。(関連電子機器と一緒の)網膜インプラントの配置のための形態の付加的な例は、米国特許第6,718,209号に示される。
【0116】
上で特定する目の病気のいずれも、上で記載したデバイスおよび/またはシステム態様の一つまたは複数を使用することによって処置することができる。上で記載した薬物のいずれも、上で記載したデバイスおよび/またはシステム態様の一つまたは複数を使用して送達することができる。上で議論した態様のいずれにおいても、システムは、上で記載したフィルターまたはその他の構成要素を含まない場合もあると考えられる。
【0117】
上記の明細書において引用したすべての特許および特許出願は、参照により明確に組み入れられる。しかしながら、この組み入れられる特許または出願の一つで、用語が上記の明細書において使用する様式とは異なる様式で用語を使用する事象では、上記の明細書における使用法のみが、特許請求の範囲を解釈する場合に(特許請求の範囲以外の任意の言語が考慮される必要がある程度に)考慮されるべきである。
【0118】
実施例
以下の特定の実施例は、例証の目的のためだけに提供され、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0119】
実施例1:ガシクリジン基剤のペレットの加工
水(500 mL)を沸騰させた。次いで、固体ガシクリジン基剤を融解するために、この熱水バスを使用した。35 mgのガシクリジン基剤を小さなガラスバイアルに置いた後、ガシクリジン基剤が融解するまで、バイアルを熱水バス(90〜100℃)でインキュベートした。次いで、融解ガシクリジン基剤の小さなアリコート(2μL)を、ポリプロピレンチューブ(サイズが1.5 mL)に移し、ガシクリジン基剤が凝固するまで室温で放置した。
【0120】
融解ガシクリジンの凝固は、典型的には30分以内に完了するが、時折何時間もかかる場合がある。時間の約半分で、単一の焦点からゆっくりと成長する単一の固体塊を獲得する。放置の際に複数のより小さな結晶質/非晶質塊を引き起こすアリコートに対して、そのアリコートを含むチューブを、それが再度融解されるまで、熱水バス(90〜100℃)でインキュベートすることができる。冷却する際に、単一の固体塊の第二収穫を獲得する。このプロセスは、ガシクリジン基剤のすべてのアリコートが単一の固体塊に変換されるまで、必要に応じて、繰り返してもよい。
【0121】
この方式で獲得される単一の固体塊(薬物ペレット)は、1.5±0.3 mgの平均重量を有し、約1.9 mmの直径を有する半球である。これらの薬物ペレットは、それらが成長する表面から引き離して溶解チャンバーに移すのに十分な機械的安定性を有する。
【0122】
実施例2:連続流反応器におけるガシクリジン基剤の溶解
図5に図示するものと同様の薬物チャンバーに、18 mgの組み合わされた塊を有するガシクリジン基剤の11ペレットをロードした。この薬物ロードチャンバーを、MiniMed 508シリンジポンプ(Medtronics MiniMed of Northridge, Californiaから入手できる)を使用して室温(23±2℃)で20μL/時間の流速で溶出した。シリンジに、0.05〜3 mM塩酸を含む3 mLのリンガー溶液をロードした。溶出容量を、3-D抗菌フィルターの後のポンプ薬物カプセルアセンブリに取り付けられたPTFEチュービングに収集した。この溶液のpHは、塩化第一水銀電極が装備されているpHメーターの使用によって決定された。薬物濃度は、HPLCによって決定された。
【0123】
溶出された薬物溶液の最高pH(5.9)は、0.05 mM塩酸で獲得され、溶出された薬物溶液の最低pH(5.6)は、3 mM塩酸で獲得された。これらのpH値は、塩酸の薬物塩への定量的変換を示し、塩酸塩の溶液に対して予期されるpHと一致している。図27に示すように、連続流反応器からの出力において獲得されたガシクリジンの濃度は、チャンバーを溶出するために使用された塩酸の濃度と線形相関した。これらのデータは、溶出のために使用された塩酸濃度あたりのガシクリジン濃度において0.976±0.049の相関および塩酸のゼロ濃度で0.0014±0.0061 mMガシクリジンの切片を有した。
【0124】
実施例3:塩酸ガシクリジンの溶液からのガシクリジン基剤ペレットの調製
1.0 M塩酸ガシクリジンの水性ストック溶液(299.9 mg/mL)および1.0 M NaOHを調製した。これらの溶液の等容量を、1.7 mLポリプロピレンバイアルにおいて混合し、次いで5分間Hermle Z229ミニ遠心分離機において30,000倍重力遠心力に供した。ガシクリジン基剤を、油として遠心の間に分離し、遠心チューブの底面で収集した。溶液の混合後7分〜2時間の間、液体ガシクリジン基剤を、単一の塊へ凝固させた。薬物ペレット上の水性上清を、滅菌ニードルおよびシリンジの使用による吸引によって除去した。混合された容量および回収された薬物ペレットの重量を、表5に示す。
【0125】
【表5】

【0126】
結論
本発明の多くの特徴、有利点、および態様が、添付の図面を参照して前述の説明において詳細に記載されている。しかしながら、上記の説明および図面は、実例的なだけである。本発明は、例証する態様に限定されず、本発明のすべての態様は、必ずしも、本明細書で特定する有利点もしくは目的のすべてを達成する必要はない、またはすべての特徴を保有する必要はない。様々な変化および改変が、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、当業者によってもたらされ得る。例材料および寸法が提供されているが、本発明は、特許請求の範囲の言語によって具体的に必要とされない限り、そのような材料または寸法に限定されない。上記の態様の要素および使用は、本発明の範囲内の任意のおよびすべての並べ替えをともなって、具体的に上で記載した以外の様式で再編成されかつ組み合わせられ得る。本明細書(特許請求の範囲を含む)において使用するように、「流体連通している」は、流体が、一つの構成要素から別の構成要素に流れ得ることを意味する;そのような流れは、一つまたは複数の中間の(かつ具体的に述べられない)その他の構成要素を経由し得;かつ(例えば、弁で)選択的に中断される場合もあり、またはそうでない場合もある。同様に本明細書(特許請求の範囲を含む)において使用するように、「連結される」は、一つまたは複数の中間構成要素によって(動かせるようにまたは固定して)取り付けられる二つの構成要素を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物へ薬物供給源を移植する段階;
ヒトまたは動物の眼組織へ薬物供給源と流体連通している末端構成要素を移植する段階;および
末端構成要素を通って薬物供給源から眼組織に一つまたは複数の薬物を送達する段階
を含む、眼組織に一つまたは複数の薬物を送達する方法。
【請求項2】
薬物供給源を移植する段階が、一つまたは複数の薬物の固形状の塊を含む貯蔵部を移植することを含み、
方法が、該塊から一つまたは複数の薬物を取り込むために、媒体供給源由来の媒体が、移植された薬物供給源内の固体薬物塊を通過する段階をさらに含み、
送達段階が、末端構成要素から媒体および取り込まれた一つまたは複数の薬物を送達することを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
媒体供給源が、移植可能なポンプである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
媒体供給源が、カテーテルを介して貯蔵部と流体連通している、請求項3記載の方法。
【請求項5】
移植可能なポンプが、ヒトまたは動物に移植され、かつ送達段階が、媒体および取り込まれた一つまたは複数の薬物がヒトまたは動物に移植された抗菌フィルターを通過することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
移植可能なポンプが、MEMSポンプである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
移植可能なポンプが、圧電ポンプである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
移植可能なポンプが、ピストンポンプである、請求項4記載の方法。
【請求項9】
送達段階が、一つまたは複数の薬物を含む流体がヒトまたは動物に移植された抗菌フィルターを通過することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
薬物供給源を移植する段階が、浸透圧ポンプを移植することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
眼組織に送達される一つまたは複数の薬物が、
ガシクリジン、その類似体の一つ、またはその誘導体の一つ、
NMDA受容体アンタゴニスト、
抗炎症薬、
ステロイド、
抗線維化剤、
インテグリンアンタゴニスト、
RDG(Arg-Gly-Asp)トリペプチド細胞接着モチーフを有する分子、
フィブロネクチン、
抗生物質、
抗分泌分子、
コリン作動剤、
神経保護剤、
抗ウィルス因子
抗血管形成因子、
抗新生物因子、および
神経栄養因子
の少なくとも一つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
送達段階が、
新生物疾患の処置、
緑内障の処置、
眼組織の炎症性疾患の処置、
眼組織の外傷または手術後の眼組織の処置、
感染症または外傷による手術または損傷後の線維症を防ぐための眼組織の処置、
剥離した網膜または細胞接着が必要とされる別の疾患を防ぐための眼組織の処置、
さらなる網膜剥離を阻害するための眼組織の処置、
眼組織の内部感染症を処置すること、
緑内障またはその他の疾患から眼圧を軽減すること、および
神経変性症の処置
の少なくとも一つのための、眼組織への一つまたは複数の薬物の送達を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
送達段階が、黄斑変性症の処置のための眼組織への一つまたは複数の薬物の送達を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
移植される薬物供給源が、多管腔カテーテルの少なくとも一つの管腔を介して末端構成要素と流体連通しており、一つまたは複数の薬物が、該少なくとも一つの管腔を通って眼組織に送達される、
多管腔カテーテルの別の管腔を通して眼内圧を緩和する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
移植される薬物供給源が、多管腔カテーテルの少なくとも一つの管腔を介して末端構成要素と流体連通しており、一つまたは複数の薬物が、該少なくとも一つの管腔を介して眼組織に送達される、
多管腔カテーテルの別の管腔を通してヒトまたは動物から流体を受ける段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
末端構成要素が、眼内電気刺激器を含む、
眼内電気刺激器を介して眼組織に刺激を提供する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
眼内電気刺激器が、複数の電極と、一つまたは複数の薬物がそこを通って送達される複数の開口とを有する網膜インプラントを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
送達段階が、眼球、視神経、または視覚野内の構造の少なくとも一つへの外科的移植またはその他の物理的外傷に起因する神経学的ダメージの予防のための眼組織への一つまたは複数の薬物の送達を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
送達段階が、末梢または中枢視覚神経系の少なくとも一つの活動亢進の処置のための眼組織への一つまたは複数の薬物の送達を含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
一つまたは複数の薬物が、
送達される一つまたは複数の薬物に対する親和性を有する、サイズが100 nm〜0.1 mmの小さな粒子、および
送達される一つまたは複数の薬物に対する親和性を有する、サイズが10nm〜100 nmのナノ粒子
の少なくとも一つの懸濁液を含む流体中で末端構成要素から送達される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
流体が、移植された固体薬物供給源内の固体薬物塊から薬物を取り込む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
一つまたは複数の薬物が、ガシクリジンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
一つまたは複数の薬物が、NMDA受容体アンタゴニストを含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
末端構成要素を移植する段階が、強膜の外側の眼組織内に末端構成要素を移植することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
薬学的に許容される塩基で溶液内のガシクリジン基剤の共役酸型を中和する段階、および
中和段階から得られる懸濁液を遠心力に供する段階
を含む、ガシクリジン基剤の固体ペレットを製造する方法。
【請求項26】
懸濁液を遠心力に供する段階の前に、懸濁液を滅菌濾過に供する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
薬学的の許容される塩基が、水酸化ナトリウムである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
眼組織外傷、黄斑変性症、静脈閉塞症、虚血、糖尿病性網膜症、神経変性症、および強光エネルギーへの曝露に起因する網膜ダメージの少なくとも一つを処置するために、眼組織にガシクリジンを適用する段階を含む、方法。
【請求項29】
ヒトまたは動物に皮下ポートを移植する段階;
ヒトまたは動物の眼組織へ皮下ポートと流体連通している末端構成要素を移植する段階;
ヒトまたは動物に対して外部に設置されたポンプまたはその他の流体供給源と流体連通するように、移植された皮下ポートを配置する段階;および
移植された末端構成要素を通ってポンプまたはその他の流体供給源から眼組織に一つまたは複数の薬物を送達する段階
を含む、眼組織に一つまたは複数の薬物を送達する方法。
【請求項30】
神経保護剤を含む薄膜コーティングを有するインプラントを眼組織に移植する段階を含む、眼組織に一つまたは複数の薬物を送達する方法。
【請求項31】
神経保護剤が、NMDA受容体アンタゴニストである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
NMDA受容体アンタゴニストが、ガシクリジンである、請求項31記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図6E】
image rotate

【図6F】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公表番号】特表2009−544355(P2009−544355A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520848(P2009−520848)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/016414
【国際公開番号】WO2008/011125
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508322211)ニューロシステック コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】