説明

眼鏡枠形状測定装置

【課題】測定機構への埃の進入を軽減する。
【解決手段】フレーム保持手段100が、左右のリムRIL、RIRを挟み込んで保持する第1スライダー102及び第2スライダー103を有し、クランプピン230a、230bを持つ左リムクランプ機構とクランプピン230a、230bを持つ右リムクランプ機構とがそれぞれ第1スライダー102及び第2スライダー103に配置され、第1スライダーが左右のリムの上側に当接する第1面1021を有し、第2スライダーが左右のリムの下側に当接する第2面1031を有する。フレーム保持手段は、第1面と第2面との間隔が変化する方向に第1スライダー及び第2スライダーを移動可能に保持する移動手段であって、第1面と第2面とが接触される第1状態と、左右のリムを保持するために第1面と第2面とが離された第2状態と、に切換え可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡フレームのリムの形状を測定するための眼鏡枠形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームを所期する状態に保持する眼鏡フレーム保持機構と、眼鏡フレームのリム(レンズ枠)の溝に挿入した測定子をリムの溝に沿って移動させ、測定子の移動を検知することによりリムの三次元形状を得る測定機構と、を備える眼鏡枠形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図10は、従来の眼鏡枠形状測定装置が備える眼鏡フレーム保持機構の説明図であり、眼鏡フレーム保持機構を上(鉛直方向の上)から見た図である。眼鏡フレーム保持機構は、眼鏡フレームの左右のリムを縦方向(本明細書では、左右のリムの縦方向とは、眼鏡フレームの装用時の上下方向を言う)から押圧し、左右のリムの縦方向位置を決めるための第1スライダー102及び第2スライダー103を備える。第1スライダー102は、リムの縦方向の上側に当接する第1面102Aを持つ。第2スライダー103は、リムの縦方向の下側に当接する第2面103Aを持つ。また、各スライダーには、左リム及び右リムをそれぞれクランプするためのクランプピン130を持つクランプ機構が設けられている。第1スライダー102側のクランプピン130は第1面102Aから第2スライダー103側に突き出て配置されている。第2スライダー103側のクランプピン130は第2面103Aから第1スライダー102側に突き出て配置されている。また、第1スライダー102及び第2スライダー103は、両者の間隔が広げられる方向と、両者の間隔が狭められる方向と、に移動可能にされている。眼鏡フレームを保持しないときには、バネ等を持つ移動機構によって第1スライダー102及び第2スライダー103の間隔が狭められる。測定子を有する測定機構は、第1スライダー及び第2スライダーの下(鉛直方向の下)に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−314617号公報
【特許文献2】特開2011−122899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10の眼鏡枠形状測定装置においては、眼鏡フレームを保持しないとき、第1スライダー102の第1面102A及び第2スライダー103の第2面103Aの間隔は狭められているが、その間隔は20mmほどにされていた。また、第1面102A及び第2面103Aのそれぞれからクランプピン130が突き出ており、クランプピン130の長さ以下に第1面102A及び第2面103Aの間隔を狭めることができなかった。このため、眼鏡フレームが保持されていないときにも、スライダーの下に配置された測定機構に埃が入り易かった。測定機構に埃が入ると、測定子の滑らかな動きの障害となり、眼鏡枠(リム)の測定精度が低下する問題、測定機構の故障となる問題が生じる。
【0006】
本件発明は、上記従来装置の問題点に鑑み、測定機構への埃の進入を軽減することができる眼鏡枠形状測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼鏡フレームのリムの溝に挿入された測定子の移動を検知してリムの形状を得る測定手段と、
左右のリムを眼鏡フレーム装用時のリムの上側及び下側から挟み込んで保持する第1スライダー及び第2スライダーを有する眼鏡フレーム保持手段であって、左リムをクランプするためのクランプピンを持つ左リムクランプ機構と右リムをクランプするためのクランプピンを持つ右リムクランプ機構とがそれぞれ前記第1スライダー及び第2スライダーに配置され、前記第1スライダーが左右のリムの上側に当接する第1面を有し、前記第2スライダーが左右のリムの下側に当接する第2面を有する眼鏡フレーム保持手段と、
を備える眼鏡枠形状測定装置において、
前記眼鏡フレーム保持手段は、前記第1面と前記第2面との間隔が変化する方向に前記第1スライダー及び第2スライダーを移動可能に保持する移動手段であって、前記第1面と前記第2面とが接触される第1状態と、左右のリムを保持するために前記第1面と前記第2面とが離された第2状態と、に切換え可能に構成されている移動手段を有することを特徴とする。
(2) (1)の眼鏡枠形状測定装置において、前記第1スライダーに配置されたクランプピンは前記第1面から前記第2スライダー側に突き出ており、前記第2スライダーに配置されたクランプピンは前記第2面から前記第1スライダー側に突き出ており、前記眼鏡フレーム保持手段は、前記第1面と前記第2面とを接触させるために、前記第1面から突き出たクランプピン及び前記第2面から突き出たクランプピンをそれぞれ退避させるための退避手段を有することを特徴とする。
(3) (2)の眼鏡枠形状測定装置において、前記退避手段は、前記第1面に形成された第1凹部であって、前記第2面から突き出たクランプピンが入り込む第1凹部と、前記第2面に形成された第2凹部であって、前記第1面から突き出たクランプピンが入り込む第2凹部と、を有することを特徴とする。
(4) (3)の眼鏡枠形状測定装置において、前記第1面は、前記第1凹部の上側及び下側の少なくとも一方にも形成され、且つ左右中央も連続して繋がる第1中央面を有し、前記第2面は、前記第2凹部の上側及び下側の少なくとも一方にも形成され、且つ左右中央も連続して繋がる第2中央面を有し、第1状態に切換えられたときに、前記第2中央面は前記第1中央面に接触する位置に形成されていることを特徴とする。
(5) (2)の眼鏡枠形状測定装置において、前記退避手段は、前記第1面から突き出たクランプピンを前記第1スライダーの内部に移動させる第1移動機構と、前記第2面から突き出たクランプピンを前記第2スライダーの内部に移動させる第2移動機構と、を有することを特徴とする。
(6) (2)の眼鏡枠形状測定装置において、前記第1面に配置されたクランプピンの左右方向の位置は、前記第2面に配置されたクランプピンと干渉しないように、第2面に配置されたクランプピンに対して左又は右方向にずらされて配置されていることを特徴とする。
(7) (1)の眼鏡枠形状測定装置において、前記第1スライダー又は第2スライダーの上部で、且つクランプピンが配置された位置より左右方向の外側に、前記第1スライダー及び第2スライダーを第2状態に切換えるために操作者の指を掛けるための窪み又は突起が形成されていることを特徴とする。
(8) 眼鏡フレームのリムの溝に挿入された測定子の移動を検知してリムの三次元形状を得る測定ユニットと、眼鏡フレームの左右のリムをそれぞれクランプするためのクランプピンを持つクランプ機構が配置され、リムの左右方向に対して眼鏡フレーム装用時の縦方向から左右のリムを押圧して眼鏡フレームを保持する第1スライダー及び第2スライダーであって、第1スライダーは左右リムの下側に当接する第1面を有し、第2スライダーは左右リムの上側に当接する第2面を有し、且つ第1スライダー側のクランプピンは第1面より第2スライダー側に突き出て配置され、第2スライダー側のクランプピンは第2面より第1スライダー側に突き出て配置されている第1スライダー及び第2スライダーと、前記第1面と第2面との間隔を開閉する方向に第1スライダー及び第2スライダーを移動可能に保持する開閉移動機構と、を有する眼鏡フレーム保持手段と、
を備える眼鏡枠形状測定装置において、
前記開閉移動機構は、前記第1面と第2面とが接触するまで前記第1スライダー及び第2スライダーを移動可能に保持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本件発明によれば、測定機構への埃の進入を軽減することができる。これにより、測定精度の低下及び装置の故障を軽減でき、装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、眼鏡枠形状測定装置の外観略図である。眼鏡枠形状測定装置1は、眼鏡フレームFを所期する状態に保持するフレーム保持ユニット100と、フレーム保持ユニット100に保持された眼鏡フレームのリムの溝に測定子を挿入し、測定子の移動を検出することによりリム(玉型)の三次元形状を測定する測定ユニット200と、を備える。測定装置1のカバーは開口窓2を有し、開口窓2の下にフレーム保持ユニット100が配置されている。また、型板TP(又は眼鏡フレームに取り付けられていたデモレンズの場合も含む)を測定する際に使用される型板ホルダ310を着脱自在に取り付けるための取り付け部300が、装置1の左右中央の後方に配置されている。
【0010】
装置1の筐体の前側には測定開始用のスイッチ等を持つスイッチ部4が配置されている。装置1の筐体の後側には、タッチパネル式のディスプレイを持つパネル部3が配置されている。眼鏡レンズの周縁加工に際し、パネル部3により玉型データに対するレンズのレイアウトデータ、レンズの加工条件等が入力される。装置1で得られたリムの三次元形状データ及びパネル部3で入力されたデータは、眼鏡レンズ周縁加工装置に送信される。なお、装置1は、特開2000−314617号公報等と同じく、眼鏡レンズ周縁加工装置に組み込まれる構成としてもよい。
【0011】
図2は、眼鏡フレームFが保持された状態のフレーム保持ユニット100の上面図である。図2上の左右方向をX方向とし、縦方向(眼鏡フレームの装用時の上下方向)をY方向とする。眼鏡フレームFのリムの動径方向はXY方向とされる。XY方向に直交する垂直方向をZ方向とする。以下では、装置1の上下方向とは、垂直方向(Z方向)とされる。
【0012】
フレーム保持ユニット100の下側には、測定ユニット200が備えられている。保持部ベース101上には眼鏡フレームFの左右のリムを眼鏡フレーム装用時のリムの上側及び下側から挟み込んで保持するための第1スライダー102及び第2スライダー103が載置されている。第1スライダー102は、フレームFの左リムRIL及び右リムRIRの縦方向の上側に当接する第1面1021を持つ。第2スライダー103は、左リムRIL及び右リムRIRの縦方向の下側に当接する第2面1031を持つ。第1面1021と第2面1031は、互いに対向している。
【0013】
図3は、第1スライダー102の第1面1021を示すための斜視図である。図4は、第2スライダー103の第2面1031を示す斜視図である。
【0014】
第1スライダー102の第1面1021及び第2スライダー103の第2面1031は、両者の間隔が変化する方向(両者の間隔が広げられる方向と両者の間隔が狭められる方向)に、開閉移動機構110によって移動可能に保持されている。そして、開閉移動機構110は、第1スライダー102の第1面1021と、第2スライダー103の第2面1031とが接触される第1状態と、左右のリムを保持するために、第1面1021と第2面1031とが離される第2状態と、に切換え可能に構成されている。
【0015】
開閉移動機構110は、保持部ベース101の左右に配置されてY方向に延びる2つのガイドレール1101と、図2上の左側でY方向に配置された2つのプーリー1105及びプーリー1107と、2つのプーリー1105、1107とに掛け渡されたワイヤー1109と、第1スライダー102及び第2スライダー103の間隔を閉じる方向に常時付勢するバネ1110(図3参照)と、を備える。図2上で、ワイヤーの左側に第1スライダー102の右端部102Eが取り付けられ、ワイヤーの右側に第2スライダー103の右端部103Eが取り付けられている。これらの構成を持つ開閉移動機構110により、第1スライダー102及び第2スライダー103は、両者の間の中心線FXを中心に、両者の間隔が広がる方向と、両者の間隔が狭められる方向と、に移動可能に保持されている。第1スライダー102及び第2スライダー103の一方が移動されると、他方も連動して移動される。図5は、第1スライダー102及び第2スライダー103によって、フレームFが保持されていない状態のフレーム保持ユニットの上面図である。
【0016】
第1スライダー102には、眼鏡フレームFの左リムRIL及び右リムRIRの上側(リムの上下とは、眼鏡装用時の縦方向の上下を言う)を、その厚み方向からクランプするためのクランプピン230a,230bがそれぞれ2箇所に配置されている。同様に、第2スライダー103にも、左リムRIL及び右リムRIRの下側を、その厚み方向からクランプするためのクランプピン230a,230bがそれぞれ2箇所に配置されている。第1スライダー102側の2箇所に配置されたクランプピン230a,230bは、それぞれ第1面1021から第2スライダー103側に突き出て配置されている。第2スライダー103側の2箇所に配置されたクランプピン230a,230bも、第2面1031から第1スライダー102側に突き出て配置されている。
【0017】
図6は、左リムRILの上側をクランプするために、第1スライダー102の左側に配置されたクランプ機構2300の概略構成図である。第1スライダー102の内部に、ベース板2301が配置されている。クランプピン230aは、第1アーム2303の先端に取り付けられている。第1アーム2303の中心部は、ベース板2301に対して回転軸2304により回転可能に保持されている。クランプピン230bは、第2アーム2305の先端に取り付けられている。第2アーム2305の中心部は、ベース板2301に対して回転軸2306により回転可能に保持されている。第1アーム2303及び第2アーム2305の間には、圧縮バネ2307が取り付けられている。圧縮バネ2307によって、2つのクランプピン230a及び230bの間隔が常に開く方向に付勢されている。また、第1アーム2303の中心部には、回転軸2304を中心にしたギヤ2309が形成されている。同様に、第2アーム2305の中心部には、回転軸2306を中心にしたギヤ2311が形成され、ギヤ2309はギヤ2311に噛み合わされている。
【0018】
第1アーム2303の後端には、バネ2313の一端が取り付けられている。バネ2313の他端にワイヤー2315が固定されている。ワイヤー2315は、ベース板2301に回転可能に取り付けられたプーリー2317を介して、駆動ユニット2320に接続されている。駆動ユニット2320は、ワイヤー2315を巻き取るためのシャフト2321と、シャフト2321を回転するためのモータ2322と、を有する。モータ2322の駆動により、ワイヤー2315が引っ張られると、第1アーム2303は回転軸2304を中心にして反時計回りに回転される。このとき、ギヤ2309とギヤ2311が噛み合わされていることにより、第2アームは回転軸2306を中心にして時計回りに回転される。これにより、2つのクランプピン230a及び230bが連動して閉じられ、リムRILが2つのクランプピン230a及び230bによってクランプされる。
【0019】
右リムRIRの上側をクランプするために、第1スライダー102の右側に配置されたクランプ機構は、上記のクランプ機構2300の左右を反転した構成である。また、左リムRIL及び右リムRIRの下側をクランプするために、第1スライダー102の左側及び右側の2箇所に配置されたクランプ機構は、第1スライダー102に配置されたクランプ機構2300に対して、縦方向が反転されたものと同じである。そのため、他のクランプ機構の説明は省略する。なお、モータ2322及びシャフト2321は、4箇所のクランプ機構2300にそれぞれ配置されている構成であっても良いが、4箇所のクランプ機構2300において共通で使用される構成であっても良い。何れの場合も、4箇所のクランプピン230a及び230bが同時に開閉されるように構成されている。
【0020】
図2において、第1スライダー102の左右2箇所に配置されたクランプピン230a及び230bは、左右の中心線LYを中心に対称である。第2スライダー103の左右2箇所に配置されたクランプピン230a及び230bも、左右の中心線LYを中心に対称である。ただし、スライダー102,103が閉じられたときに、それぞれ対向するクランプピン230a及び230bは、互いに干渉(接触)しないように、左右方向の位置がずらされている。例えば、第1スライダー102側に配置された2箇所のクランプピン230a及び230bの間隔W1は、第2スライダー103側に配置された2箇所のクランプピン230a及び230bの間隔W2よりも広くされている。
【0021】
ここで、第1スライダー102及び第2スライダー103によってフレームFが保持されず、図5のように、両者が閉じられるときに(第1状態に切換えられるとき)、第1スライダー102側の第1面1021と第2スライダー103側の第2面1031とを接触させるために(第1面1021と第2面1031との間に隙間を生じさせないために)、フレーム保持ユニット100には、第1面1021から突き出たクランプピン及び第2面1031から突き出たクランプピンをそれぞれ退避させるための退避機構が設けられている。
【0022】
退避機構の例を説明する。図3に図示されるように、第1スライダー102側の第1面1021には、第2スライダー103側の第2面1031から突き出たクランプピン230a及び230bが入り込む凹部1023が、第2スライダー103側のクランプピン230a及び230bの左右方向の位置に対応して、2箇所に設けられている。同様に、図4に図示されるように、第2スライダー103側の第2面1031には、第1スライダー102側の第1面1021から突き出たクランプピン230a及び230bが入り込む凹部1033が、第1スライダー102側のクランプピン230a及び230bの左右方向の位置に対応して、2箇所に設けられている。凹部1023及び凹部1033が退避機構の一例である。
【0023】
図7は、図5のA−A断面図であり、左リムRILの下側をクランプするために、第2スライダー103側に配置されたクランプピン230a及び230bと、このクランプピン230a及び230bに対応して、第1スライダー102側の第1面1021に形成された凹部1023と、を含む断面である。凹部1023のZ方向の高さH1は、クランプピン230a及び230bが開いた状態の垂直方向の高さより大きく形成されている。また、第1面1021に対する凹部1023の奥行き方向(Y方向)の深さD1は、第2面1031から突き出たクランプピン230a及び230bの距離よりも大きく形成されている。他の3箇所の凹部1023、1033の形成状態も、図7のものと基本的に同じである。
【0024】
また、第1スライダー102に配置された凹部1023の垂直方向(Z方向)における上側及び下側の少なくとも一方に、第1面1021が形成されている。第2スライダー103に配置された凹部1033の垂直方向における上側及び下側の少なくとも一方に、第1面1021に接触する第2面1031が形成されている。他のクランプピン230a及び230bと凹部1023、1033についても同じである。
【0025】
なお、図2〜図5に図示されるように、第1スライダー102の左右中央の上部には、型板ホルダ310を収納(保管)するための保管スペース(窪み)1024が形成されている。操作者側に位置する第2スライダー103の左右中央の上部は、その垂直方向の高さが第1スライダー102に向かって徐々に低くなる窪み1034が形成されている。窪み1034は、左右のリムRIL,RIRがクランプピン230a及び230bによってクランプされたときに、そのクランプ状態が操作者によって確認され易くするために、クランプピン230a及び230bより低くなるようにされている。
【0026】
図3に示される第1スライダー102において、第1面1021の左右中央(左右2箇所に配置されたクランプピン230a,230bの間)の下方位置においても、同一面で連続して繋がる中央面1021aを有する。また、図4に示される第2スライダー103において、第2面1031の左右中央(左右2箇所に配置されたクランプピン230a,230bの間)に下方位置(窪み1034の高さが低くなった側)においても、同一面で連続して繋がる中央面1031aを有する。この中央面1031aは、中央面1021aと対向し、第1スライダー102及び第2スライダー103が閉じられたときには(第1状態に切換えられたとき)、中央面1031aと接触される。このような、第1面1021と第2面1031の構成により、第1スライダー102及び第2スライダー103が閉じられたときには、図5に示されるように、両者の間に隙間が生じないように、第1面1021と第2面1031とが接触される。第1面1021と第2面1031の左右方向の接触範囲は、少なくとも測定ユニット200が持つ測定子281の左右方向の移動範囲より大きくされている。これにより、スライダー102、103の下に配された測定ユニット200への埃の進入が軽減される。
【0027】
なお、第1スライダー102の第1面1021側の上部で、クランプピン230a、230bに対して左右方向の外側の2箇所に、対向する第2スライダー103の第2面1031の上面より垂直方向の高さが低くされた窪み1025が形成されている。この窪み1025は操作者の指が入る大きさである。このため、第1スライダー102の第1面1021及び第2スライダー103の第2面1031が閉じられ、第1面1021及び第2面1031が接触した状態となった場合にも、操作者は、窪み1025に指を入れ、窪み1025より上に突き出ることで、第1面1021に対して第2スライダー103の第2面1031が段差となり、操作者は、第2面1031に指を掛けることできる。操作者は、これによってスライダー103側を手前側に容易に移動することで、第1スライダー102及び第2スライダー103の間隔を開くことができる(第1状態から第2状態に切換えることができる)。窪み1025は、スライダー103側に形成されていても良い。この場合は、操作者は、窪み1025より上に突き出る第1面1021を操作することで、第1スライダー102及び第2スライダー103の間を開くことができる。すなわち、窪み1025に対して第1面1021の上部が上に突き出た突起となる。第1スライダー102又は第2スライダー103の上部で、且つクランプピンが配置された位置より左右方向の外側に、第1スライダー102及び第2スライダー103を開くときに操作者が指を掛けるための窪み又は突起が形成されている。
【0028】
次に、測定ユニット200の構成を簡単に説明する。図8及び図9は測定ユニット200の概略構成図である。測定ユニット200は、水平方向(XY方向)に伸展した方形状の枠を持つベース部211と、リムRIL,RIRの溝に挿入される測定子281が上端に取り付けられた測定軸282を保持する測定子保持ユニット250と、測定子保持ユニット250をXYZ方向に移動させる移動ユニット210と、を備える。ベース部211は、フレーム保持ユニット100の下に配置されている。移動ユニット210は、測定子保持ユニット250をY方向に移動するY移動ユニット230と、Y移動ユニット230をX方向に移動するX移動ユニット240と、測定子保持ユニット250をZ方向に移動するZ移動ユニット220と、を有する。Y移動ユニット230は、Y方向に延びるガイドレールを備え、モータ235の駆動によりガイドレールに沿って測定子保持ユニット250をY方向に移動させる。X移動ユニット240は、X方向に延びるガイドレール241を備え、モータ245の駆動によってY移動ユニット230をX方向に移動させる。Z移動ユニット220は、Y移動ユニット230に取り付けられ、モータ225の駆動により、Z方向に延びるガイドレール221に沿って測定子保持ユニット250をZ方向に移動させる。
【0029】
測定子保持ユニット250は、Z方向に延びる中心軸LOの軸回りに測定子軸282を回転する回転ユニット260を有する。回転ユニット260は、測定子軸282が取り付けられた回転ベース251と、回転ベース251を中心軸LOの軸回りに回転するモータ265を有する。また、測定子軸282は、測定子281の先端方向である横方向に移動可能(傾斜可能)に、回転ベース251に保持されている。なお、測定子保持ユニット250は、測定子281の先端をリムRIL(RIR)の溝に押し当てる測定圧を付与するための測定圧付与機構(図示を略す)を備える。測定子281の先端方向の移動位置は、検知器であるエンコーダ286により検知される。また、測定子軸282はZ方向に移動可能に、回転ベース251に保持されている。測定子281のZ方向の移動位置は、検知器であるエンコーダ288により検知される。制御部50は、エンコーダ286、288と、各モータ235、245、255、265と、に接続されている。
【0030】
また、制御部50は、クランプ機構2300のモータ2322に接続されている。制御部50は、図示を略すクランプピン開閉スイッチの信号により、4箇所に配置されたクランプピン230a及び230bの開閉を同時に行う。
【0031】
リムRIL(RIR)の測定時、測定子281の先端がリムRILの溝に挿入される。制御部50は、モータ235、245の駆動情報及び回転ベース251の回転情報と、エンコーダ286の検知情報とに基づき、リムRILの動径情報を得る。制御部50は、測定途中では、測定済みの動径情報に基づいてリムRILの未測定部分の動径変化を予測し、予測した動径変化に沿って測定子281が移動するように、モータ235、245、265の駆動を制御する。また、制御部50は、モータ225及びエンコーダ288の検知情報とに基づき、リムRILのZ方向の位置情報を得る。制御部50は、測定途中では、測定済みのZ位置情報に基づいてリムRILの未測定部分のZ位置変化を予測し、予測したZ位置変化に沿って測定子281がZ方向に移動するように、モータ225の駆動を制御する。これらにより、リムRILの3次元形状が測定される。もう片方のリムRIRの測定時には、制御部50はY方向のモータ245の駆動を制御し、測定子281をリムRIRの所定の測定位置に移動した後、上記と同様にリムRILの測定を行う。
【0032】
以上の測定ユニット200の構成及び測定方法は、特開2001−122899号公報と基本的に同じものを採用できる。また、測定ユニット200の構成としては、特開2000−314617号公報に記載された機構等、周知の機構が採用できる。
【0033】
リムRIL,RIRの測定終了後、フレームFがフレーム保持ユニット100の第1スライダー102及び第2スライダー103の間から取り外されると、バネ1110によって第1スライダー102及び第2スライダー103が閉じられる。このとき、前述のような第1面1021及び第2面1031の構成により、両者の間に隙間が生じないように接触される。なお、第1面1021と第2面1031との接触は、必ずしも密着しなくても良く、測定ユニット200への埃の進入が従来より軽減されるように、僅かな間隔(例えば、1mm以下)が空いていても良い。このような僅かな間隔がある場合も、本件発明で言う、第1面1021と第2面1031との接触に含まれるものである。
【0034】
本件発明は、上記の例に限られず、種々の変容が可能である。図11は、フレーム保持ユニット100に設けられた退避機構の変容例の説明図である。この変容例の退避機構は、第1スライダー102の第1面1021から突き出たクランプピン(230a、230b)を第1スライダー102の内部に移動させる移動機構と、第2スライダー103の第2面1031から突き出たクランプピンを第2スライダー103の内部に移動させる移動機構と、を有する。図11には、図5のA−A断面図における第2スライダー103のみが示されている。
【0035】
第2スライダー103に設けられた移動機構2500は、次のように構成されている。第2面1031から突き出たクランプピン230a、230bが突き出る方向とは逆方向である矢印YA方向に移動可能に、第2スライダー103の内部に保持されている。例えば、クランプピンはクランプ機構2300と一体的に矢印YA方向に移動可能にされている。クランプ機構2300は付勢部材であるバネ2502によってクランプピンが第2面1031から突きる方向に常時付勢されている。バネ2502の付勢力は、第1スライダー102及び第2スライダー103の間隔を狭めるために配置されたバネ1110の付勢力よりも弱く設定されている。なお、第2スライダー103の他の1箇所に設けられた移動機構、第1スライダー102の2箇所に設けられた移動機構も図11の移動機構2500と同様な構成であるため、それらの図示は略す。クランプピン230a、230bは、クランプ機構2300に対して第2スライダー103の内部に移動される構成であっても良い。
【0036】
以上のように移動機構2500が構成されているため、開閉移動機構110のバネ1110によって第1スライダー102及び第2スライダー103の間隔が狭められ、クランプピン230a、230bの先端が第1スライダー102の第1面1021で押されると、クランプピン230a、230bは、図11にように、第2面1031から突きない状態で第2スライダー103の内部に移動される。第1スライダー102の2箇所に設けられた移動機構においても、同様に、クランプピン230a、230bは、第1面1021から突きない状態で第1スライダー102の内部に移動される。これによって、第1面1021と第2面1031とが接触される第1状態まで第1スライダー102及び第2スライダー103が移動される。
【0037】
なお、移動機構2500ではバネ2502が用いられているが、これに限られない。第1面1021と第2面1031との間隔が狭められたときに、これに連動して各クランプピンがそれぞれ第1スライダー102及び第2スライダー103の内部に移動される連動機構(機械的又はモータ等の電気的な駆動機構)を持つ移動機構2500が設けられていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】眼鏡枠形状測定装置の外観略図である。
【図2】フレーム保持ユニットの上面図である。
【図3】第1スライダーの第1面を示すための斜視図である。
【図4】第2スライダーの第2面を示す斜視図である。
【図5】第1スライダー及び第2スライダーによってフレームFが保持されていない状態のフレーム保持ユニットの上面図である。
【図6】クランプ機構の概略構成図である。
【図7】図5のA−A断面図である。
【図8】測定ユニットの概略構成図である。
【図9】測定ユニットの概略構成図である。
【図10】従来の眼鏡枠形状測定装置が備える眼鏡フレーム保持機構の説明図である。
【図11】フレーム保持ユニットに設けられた退避機構の変容例の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
50 制御部
100 フレーム保持ユニット
102 第1スライダー
103 第2スライダー
110 開閉移動機構
200 測定ユニット
210 移動ユニット
230a,230b クランプピン
281 測定子
286,288 エンコーダ
1021 第1面
1031 第2面
1025 窪み
2300 クランプ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレームのリムの溝に挿入された測定子の移動を検知してリムの形状を得る測定手段と、
左右のリムを眼鏡フレーム装用時のリムの上側及び下側から挟み込んで保持する第1スライダー及び第2スライダーを有する眼鏡フレーム保持手段であって、左リムをクランプするためのクランプピンを持つ左リムクランプ機構と右リムをクランプするためのクランプピンを持つ右リムクランプ機構とがそれぞれ前記第1スライダー及び第2スライダーに配置され、前記第1スライダーが左右のリムの上側に当接する第1面を有し、前記第2スライダーが左右のリムの下側に当接する第2面を有する眼鏡フレーム保持手段と、
を備える眼鏡枠形状測定装置において、
前記眼鏡フレーム保持手段は、前記第1面と前記第2面との間隔が変化する方向に前記第1スライダー及び第2スライダーを移動可能に保持する移動手段であって、前記第1面と前記第2面とが接触される第1状態と、左右のリムを保持するために前記第1面と前記第2面とが離された第2状態と、に切換え可能に構成されている移動手段を有することを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡枠形状測定装置において、
前記第1スライダーに配置されたクランプピンは前記第1面から前記第2スライダー側に突き出ており、前記第2スライダーに配置されたクランプピンは前記第2面から前記第1スライダー側に突き出ており、
前記眼鏡フレーム保持手段は、前記第1面と前記第2面とを接触させるために、前記第1面から突き出たクランプピン及び前記第2面から突き出たクランプピンをそれぞれ退避させるための退避手段を有することを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項3】
請求項2の眼鏡枠形状測定装置において、
前記退避手段は、前記第1面に形成された第1凹部であって、前記第2面から突き出たクランプピンが入り込む第1凹部と、前記第2面に形成された第2凹部であって、前記第1面から突き出たクランプピンが入り込む第2凹部と、を有することを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項4】
請求項3の眼鏡枠形状測定装置において、
前記第1面は、前記第1凹部の上側及び下側の少なくとも一方にも形成され、且つ左右中央も連続して繋がる第1中央面を有し、
前記第2面は、前記第2凹部の上側及び下側の少なくとも一方にも形成され、且つ左右中央も連続して繋がる第2中央面を有し、
第1状態に切換えられたときに、前記第2中央面は前記第1中央面に接触する位置に形成されていることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項5】
請求項2の眼鏡枠形状測定装置において、
前記退避手段は、前記第1面から突き出たクランプピンを前記第1スライダーの内部に移動させる第1移動機構と、前記第2面から突き出たクランプピンを前記第2スライダーの内部に移動させる第2移動機構と、を有することを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項6】
請求項2の眼鏡枠形状測定装置において、
前記第1面に配置されたクランプピンの左右方向の位置は、前記第2面に配置されたクランプピンと干渉しないように、第2面に配置されたクランプピンに対して左又は右方向にずらされて配置されていることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項7】
請求項1の眼鏡枠形状測定装置において、
前記第1スライダー又は第2スライダーの上部で、且つクランプピンが配置された位置より左右方向の外側に、前記第1スライダー及び第2スライダーを第2状態に切換えるために操作者の指を掛けるための窪み又は突起が形成されていることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項8】
眼鏡フレームのリムの溝に挿入された測定子の移動を検知してリムの三次元形状を得る測定ユニットと、
眼鏡フレームの左右のリムをそれぞれクランプするためのクランプピンを持つクランプ機構が配置され、リムの左右方向に対して眼鏡フレーム装用時の縦方向から左右のリムを押圧して眼鏡フレームを保持する第1スライダー及び第2スライダーであって、第1スライダーは左右リムの下側に当接する第1面を有し、第2スライダーは左右リムの上側に当接する第2面を有し、且つ第1スライダー側のクランプピンは第1面より第2スライダー側に突き出て配置され、第2スライダー側のクランプピンは第2面より第1スライダー側に突き出て配置されている第1スライダー及び第2スライダーと、前記第1面と第2面との間隔を開閉する方向に第1スライダー及び第2スライダーを移動可能に保持する開閉移動機構と、を有する眼鏡フレーム保持手段と、
を備える眼鏡枠形状測定装置において、
前記開閉移動機構は、前記第1面と第2面とが接触するまで前記第1スライダー及び第2スライダーを移動可能に保持していることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−79951(P2013−79951A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207060(P2012−207060)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】