説明

着用運動時の冷却感に優れる生地

【課題】スポーツウェア、登山衣、作業着等の各種衣料に用いられる着用運動時の冷却感に優れる生地を提供する。
【解決手段】メッシュホール部分と編織物からなるグランド部分から構成される生地であって、メッシュホール部分の平均面積が0.25mm以上30mm以下であり、生地全体に対するメッシュホール部分の面積比が、3%以上70%以下であり、生地の通気度が100cc/cm・s以上であり、生地を着用した運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTW)が、未着用時の運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTS)よりも大きいことを特徴とする着用運動時の冷却感に優れる生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツウェア、登山衣、作業着等の各種衣料に用いられる着用運動時の冷却感に優れる生地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からスポーツ等の運動時に着用する生地において、快適な着用感を得るために、多くの検討がされている。中でも、運動量の高いスポーツやアウトドア分野では、運動時あるいは運動後の体内からの発熱の増加を抑えることが強く要望されている。特に、夏場の運動時において、暑さの改善に対する要望は非常に強く、従来から多くの検討がなされている。一般的には、吸湿性、吸水性に優れた親水性の繊維を用いることにより、汗の処理を促し、冷却効果を得る方法や、熱伝導性の高い繊維で構成された生地を用いることにより、接触冷感(清涼感)を得る方法などが採用されてきた。
【0003】
これらの方法を改善し、さらにより効率的に効果を得るために、例えば、酸化チタンを含有した異形断面ポリエステルを用いて、生地の吸水性および速乾性を促し冷却効果を得る方法(例えば、特許文献1を参照)や、熱伝導性の高いフィラメント糸と親水性繊維を組み合わせ、着用時の接触冷感を促し、冷却感による快適性を得る方法(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2005−179810
【特許文献2】特開2003−293244
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにポリエステルなどの疎水性ポリマーによる異形断面糸を用いて吸水速感効果を得る場合、ある程度の発汗が起こってからしか効果が得られない。また、激しい発汗時には、汗の処理が追いつかず、十分な冷却効果が得られない。
一方、特許文献2のような、熱伝導性の高い材料を利用して接触冷感を促す場合、着用初期には若干効果は得られるが、継続した効果は得られない。さらに、連続運動を継続して行う場合には、これらの効果はほとんど見られなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の従来の問題点を解決し、スポーツウェア、登山衣、作業着等の各種衣料に用いられる着用運動時の冷却感に優れる生地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決することができる本発明の着用運動時の冷却感に優れる生地は、以下の構成よりなる。
(1)メッシュホール部分と編織物からなるグランド部分から構成される生地であって、メッシュホール部分の1個あたりの平均面積が0.25mm以上30mm以下であり、生地全体に対するメッシュホール部分の面積比が、3%以上70%以下であり、生地の通気度が100cc/cm・s以上であり、生地を着用した運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTW)が、未着用時の運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTS)よりも大きいことを特徴とする着用運動時の冷却感に優れる生地。
【0007】
(2)グランド部分の編織物の一部または全部に偏平断面からなる合成繊維が使用され、偏平断面の最大径a(長軸)と該長軸に直交する最大径の長さb(短軸)の比である偏平度a/bが2以上であることを特徴とする(1)記載の着用運動時の冷却感に優れる生地。
【0008】
(3)グランド部分が吸水剤で吸水加工処理され、JIS−L−1907に準拠する 吸水速度滴下法の値が3秒以下であり、拡散性残留水分率が50分経過後に10%未満であることを特徴とする(1)または(2)に記載の着用運動時の冷却感に優れる生地。
【発明の効果】
【0009】
特定の大きさのメッシュホール部分を特定の面積比で存在する本発明の生地は、着用運動時にそのメッシュホール部分を通過する気流のホース効果(ホースを絞ると水は勢いよく出る)により、皮膚表面の温度変化が効率よく行われる。その結果、連続運動時に継続して冷却感が持続される。そのため、連続した運動を伴った行動時に着用されるスポーツウェア、登山衣、作業着等の各種衣料用の素材として非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を具体的に説明する。
本発明に用いる生地としては、織物でも丸編みや経編みの様なニットでもかまわない。織物の場合、薄く軽量でなおかつ強力や摩耗性にすぐれた生地を作ることができる。また、ニットの場合、伸長性やソフト風合いを兼ね備えた生地を作ることができる。
【0011】
本発明に用いる生地は、メッシュホール部分と編織物からなるグランド部分から構成される。編織物の素材としては、合成繊維でも天然繊維でもかまわない。メッシュホール部分を通過する気流のホース効果の点から、毛羽による気流抑制の無い、合成繊維をグランド部分主体の生地の方が好ましい。合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、などのポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ポリイミド繊維などが例示される。これらの合成繊維を単独もしくは組み合わせて、編織物を製造する。合成繊維は、機能付与の点からモノフィラメント、あるいはマルチフィラメントのいずれかを用いる。
【0012】
(作用)
本発明の生地が着用運動時に冷却感を促すメカニズムとしては、以下のことが考えられる。
皮膚表面には、温度(暑さ、寒さ)を感じるための器官として、温受容器と、冷受容器があることが一般に知られている。これら受容器の活動性(受容器の活動の強さが温感、冷感の強さとなる)は、(1)絶対温度により決定される静的活動性(static activity)、及び(2)温度変化に左右される動的活動性(dynamic activity)に大別できる。この動的活動性の大きさは、温度変化速度が早いほど、変化温度が大きいほど、大きくなる。すなわち、皮膚表面の温度変化を早く、大きくすることにより、強く冷感を感じることができる。これらの現象を利用したクーリング素材が、本発明の生地である。
【0013】
一方、人の皮膚と衣服の間に存在する空気層には、体温の影響により暖かくなり、皮膚の表面に滞留する静止空気層と衣服のはためき等により比較的動きやすい自由空気層がある。
【0014】
本発明品は、運動時の動きを利用し、皮膚表面への気流を強く発生させることにより、この静止空気層を効率的に動かし、その結果、皮膚表面の温度変化をもたらし、冷却感を促すものである。
【0015】
これらの現象を引き起こすために、これらの生地には皮膚表面への気流を強く発生させるために、生地にメッシュホール部分が設けられる。
メッシュホールとは、生地に部分的に作られたホールのことであり、気流の通り道となる。ホールの作り方としては、鹿子やメッシュ組織、パワーネット組織、チュール組織、からみ織りなどの織編組織を利用する方法や、パンチングやレーザー裁断などを利用し生地に穴を開ける方法や、オパール加工により穴を開ける方法などが考えられるが、いずれの方法を用いてもよい。
【0016】
このような効果で着用快適性を得るためには、生地を着用した運動評価での皮膚表面温度の変化(ΔTW)が、未着用時の運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTS)よりも大きくすることが重要である。なお、皮膚表面の温度変化は、温度センサーを利用した試験で確認することができる。
【0017】
皮膚表面への気流を強く発生させ、静止空気層を効率的に動かすためには、メッシュホール部分の面積と、生地全体に占める面積が重要となる。メッシュホール部分の面積が小さすぎると、流体である気体がメッシュホールを通過する量が減少し、強い気流が得られない。一方、メッシュホール部分の面積が大きすぎる場合でも、メッシュホールを通過する気体の速度が高くならず、強い気流が得られない。
【0018】
これらのことを考慮すると、メッシュホール部分の1個あたりの平均面積は、0.25mm以上30mm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.30mm以上15mm以下である。また、メッシュホール部分の1個あたりの平均面積の上限は、生地の透けを防止したい場合など、用途と使用目的に応じて、例えば、10mm、5mm、3mm、1.5mmとの中で適宜選択する。但し、メッシュホール部分の1個あたりの平均面積を小さくする場合には、生地全体に占めるメッシュホール部分の面積比を、3〜70%の範囲内の高めに設計することが重要である。
【0019】
生地全体に占めるメッシュホール部分の面積比も、メッシュホール部分の平均面積の時と同様の理由で重要であり、3%以上70%以下とする。より好ましくは4%以上50%以下が好ましい。前記でも述べたように、メッシュホール部分の1個あたりの平均面積を小さくする場合には、生地全体に占めるメッシュホール部分の面積比を高くするよう設計することが好ましい。
【0020】
これらの生地は気流を得るために通気性が高くないといけない。本発明では、生地の通気度が100cc/cm・s以上となるように、メッシュホールの大きさと比率を制御する。生地の通気度は、150cc/cm・s以上であることが好ましく、さらに好ましくは200cc/cm・s以上であり、特に好ましくは300cc/cm・s以上である。
【0021】
これらの生地のメッシュホール部分以外の部分(グランド部分)は、メッシュホール部分を通る気体の速度を上げるために、通気度が低い方が好ましい。これらの構造を得るために、断面形状が偏平の合成繊維を使用することが有効である。偏平断面の合成繊維を使用することにより、繊維一本一本が重なり合い、通気度を低減する効果が向上する。すなわち、エアブロック効果が得られる。合成繊維の偏平度としては2以上が好ましい。
【0022】
偏平度b/aとは、偏平断面の最大径a(長軸)と該長軸に直交する最大径の長さb(短軸)の比である。すなわち、単糸の断面形状を楕円に近似した際、その長径aは単糸の幅を、短径bは単糸の厚みで定義することもできる。また、その糸の断面は厳密に楕円である必要はなく、全体の偏平性に影響を与えない範囲で一部に突起や窪みを有していても差し支えない。このような場合にも、その全体の外形を損ねないような楕円に近似し、偏平度を算出すればよい。本発明で算出される偏平度は、小数第1位を四捨五入し、整数で示した数値である。
【0023】
同様に、メッシュホール部分以外の部分(グランド部分)の通気度を下げる他の方法として、合成繊維にカレンダー加工処理を行う方法が挙げられる。合成繊維にカレンダー加工処理を行うことにより、丸断面の合成繊維を偏平にすることができる。また、断面形状が偏平の合成繊維にカレンダー加工処理を併用して、偏平度をさらに大きくすることができる。
【0024】
本発明の生地のグランド部分(編織物)は、吸水加工処理を行う。グランド部分(編織物)に吸水加工処理を行うことにより、多量に発汗した際にメッシュホール部分での汗による目詰まりを抑制し、気体の流れを維持する効果(エアスルー効果)が得られる。
【0025】
また、偏平断面などの異形断面の合成繊維を使用することによっても、前記のエアスルー効果が得られる。この効果は、合成繊維の異形断面形状による優れた吸汗速乾性により発現される。吸水性の尺度としては、JIS−L−1907に準拠する吸水速度滴下法を用いる。本発明の生地は、前記の吸水速度滴下法により求められた値が3秒以下であり、かつ拡散性残留水分率が50分経過後に10%未満であることが好ましい。より好ましくは、JIS−L−1907に準拠する吸水速度滴下法の値が2秒以下であり、かつ拡散性残留水分率が50分経過後に8%未満である。
【0026】
また、本発明の生地のグランド部分の肌面側に凹凸を形成させることが好ましい。この肌面側に形成させた凹凸により、肌離れ性を高めることで、乱流の発生を促し、冷却感を持続させることができる(乱流効果)。すなわち、生地の肌面側に凹凸を形成させると、その肌離れ性により、生地が肌にくっつくことによる衣服内空間の破壊が防ぐことができる。また、肌面側にある凹凸が、衣服内に発生した気流を強く乱すため、静止空気層を動かし易くなる。これら生地の肌面側の凹凸は、織編組織により作ってもかまわないし、樹脂からなるドットプリントなどにより、形成させてもよい。
【0027】
本発明により得られた生地は、抗菌防臭加工や消臭加工、UVカット加工、帯電防止加工、保湿加工、涼感加工、芳香加工、防虫加工、難燃加工など、種々の機能加工と組み合わせても良い。
また、同一生地内に本発明の生地構造とメッシュホールの存在しない生地部を組み合わせ、衣服を作成した時に、背中や側面部など、部分的に本発明の生地構造が存在するように作り、実際の使用において、より効率的に気流による冷感効果を得ることに利用してもかまわない。
【実施例】
【0028】
次に、実施例及び比較例を代表例とし、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明の評価については、以下の方法で測定したものである。
【0029】
(1)メッシュホール部分の1個あたりの平均面積とメッシュホール部分の面積比
(a)メッシュホール部分の形状が単純で、均一な大きさで規則的に配列している場合
(i)1個あたりのメッシュホール部分の面積
生地を無張力下で広げ、マイクロスコープにより写真撮影し、寸法および形状を測定し、計算により算出した。
【0030】
(ii)メッシュホール部分の面積比
生地を無張力下で広げ、マイクロスコープにより、写真撮影し、メッシュホール部分の面積、視野内の数、視野の面積を算出し、以下の式により算出した。
メッシュホール部分の面積比(%)
=(1個あたりのメッシュホール部分の面積×視野内のメッシュホールの数)
×100/視野の面積
【0031】
(b)メッシュホール部が複雑な形状である、大きさが不均一である、あるいは不規則に配列している場合
生地を無張力下で広げ、メッシュホールがマイクロスコープにより生地の表面を写真撮影する。この際、写真撮影する画像には、完全なメッシュホール部分が少なくとも8個以上含まれるようにする。また、測定視野内にメッシュホール部分の数が少ない場合には、写真撮影の枚数を増やす。
【0032】
この写真を直接、A4のOHPフィルムを重ね、裏側から写真をテープでOHPフィルムに固定する。OHPフィルムを拡大コピーする際には、長さの基準となる目盛りをOHPフィルムに記載する。次いで、OHPフィルムが上側にくるよう裏返し、OHPフィルムにメッシュホール部分の輪郭と、欠けているメッシュホール部分が含まれないように、生地の画像の輪郭をマジックで書き入れる。次いで、メッシュホール部分の輪郭の内部(測定視野)を、マジックを用いて斑にならないよう黒く塗りつぶす。
【0033】
次いで、画像解析装置を用いて、黒色部(メッシュホール部分)の1個あたりの平均面積及び総面積を算出する。
メッシュホール部分の面積比は、下記の式により算出する。
メッシュホール部分の面積比(%)
=(測定視野内のメッシュホールの総面積×100/測定視野の面積)
【0034】
(2)生地を着用した運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTW)
温度・気流速度センサー(DegreeC社製)を、検出方向が手の甲に水平となるように、手の甲に固定した。25℃、50%RHの恒温恒湿室でセンサーを固定した手を、評価生地で作製した袋(13cm×25cm)に入れ、3分間静止し環境が安定した後に、1分間に手首を軸に手を90°の角度で120往復させる運動を3分間行い、その時の生地と皮膚との間の温度と気流速度を測定した。
生地着用時の皮膚表面温度変化ΔTWは、静止3分後の生地−皮膚間の温度を0としたときの、運動時の生地−皮膚間の温度減少量の絶対値から算出した。なお、生地を着用した運動評価における、皮膚の表面の温度変化を示すグラフを図1に記す。
【0035】
(3)未着用時の運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTS)
温度・気流速度センサー(DegreeC社製)を、検出方向が手の甲に水平となるように、手の甲に固定した。25℃、50%RHの恒温恒湿室でセンサーを固定した手を3分間静止した後、1分間に90°の角度で120往復させる運動を3分間行い、その時の皮膚表面の温度と気流速度を測定した。
未着用時の皮膚の表面の温度変化ΔTSは、静止3分後の皮膚表面の温度を0としたときの、3分間運動後の皮膚表面の温度減少量の絶対値から算出し、ΔTS=1.2℃を得た。未着用時の運動評価での皮膚表面の温度変化を示すグラフを図2に記す。
【0036】
(4)通気度
JIS−L−1018に準拠し、フラジール形試験機により測定した。
【0037】
(5)吸水性
JIS−L−1907に準拠し、吸水速度滴下法により測定した。
【0038】
(6)拡散性残留水分率
生地を10cm×10cmのサイズに切り、標準状態(20℃×65%RH)で調整した生地サンプルの質量を測定した(W0)。次いで、無張力下で広げ、生地サンプル中央に0.6mLの水を滴下した後の生地サンプルの質量を測定した(W1)。その後、生地サンプルを吊り下げた状態で、50分経過した後の生地サンプルの質量を測定した(W2)。これらの測定値から、生地の拡散性残留水分率を下記の式より算出した。
残留水分率(%)=(W2−W0)×100/(W1−W0)
【0039】
(7)運動時の冷感
25℃、50%RHの恒温恒湿室で、手を生地サンプルで作製した袋(13cm×25cm)入れ、往復運動をさせた際の冷感の官能評価を行った。
官能評価には、下記の基準で、「涼しい」〜「暖かい」の5段階のSD法によるアンケートを行い、被験者5名の値を平均して算出した。なお、生地を着用していない場合の冷感を基準の0(どちらでもない)とした。
−2:涼しく感じる
−1:やや涼しく感じる
0:どちらでもない
1:やや暖かく感じる
2:暖かく感じる
【0040】
実施例1
ラッセル編機(130インチ、28ゲージ)を用い、下記の糸使い、条件でパワーネットを編成、加工し、コース密度189コース/インチ、ウエール密度35ウエール/インチ、目付75g/mの6コースパワーネット生地を得た。
なお、下記の糸使いにおいて、Nyは丸断面のナイロン6からなるマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製)、エスパはスパンデックス糸(東洋紡績株式会社製、登録商標)を意味する。
【0041】
(1)糸使い、条件
F(フロント)オサ
・糸 :Ny(33dtex、6フィラメント;セミダル)
・糸配置 :1イン 1アウト
・ランナー:79cm/480コース
・編組織 :10/12/21/23/21/12
M(ミドル)オサ
・糸 :Ny(33dtex、6フィラメント:セミダル)
・糸配置 :1アウト 1イン
・ランナー:79cm/480コース
・編組織 :23/21/12/10/12/21
M2(ミドル第2)オサ
・糸 :エスパ(155dtex)
・糸配置 :1イン 1アウト
・ランナー:10.6cm/480コース
・編組織 :11/00
B(バック)オサ
・糸 :エスパ(155dtex)
・糸配置 :1アウト 1イン
・ランナー:10.6cm/480コース
・編組織 :00/11
【0042】
(2)加工条件
得られた生機を連続精練機で精練し、190℃×45秒にてプレセットを実施した後、 液流染色機で100℃×30分で染色を行った。次いで、染色後の生地に、ポリエステル系樹脂からなり、かつアニオン性の吸水加工剤(高松油脂社製、SR1800)を用いて吸水加工処理を行い、170℃×45秒で仕上げセットを行った。
実施例1で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真を図3に示す。
【0043】
実施例2
トリコット機(カールマイヤー製、KS−3;28ゲージ)を用い、フロントに単糸の断面形状が偏平のポリエステルマルチフィラメント(50dtex/36フィラメント)のフラットヤーンを配し、バックにフロントと同様に単糸の断面形状が偏平のポリエステルマルチフィラメント(50dtex/36フィラメント)のフラットヤーンを配して、下記の編条件にて生機を作製した。
なお、偏平断面を有するポリエステル単糸の偏平度は、いずれも5であった。また、上記のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートを意味する。
【0044】
(1)編み条件
・糸配列
バック :2イン 2アウト
フロント:2イン 2アウト
・編組織
バック :4−5/3−2/1−0/2−3//
フロント:1−0/2−3/4−5/3−2//
・ランナー
バック :146cm/480ラック
フロント:146cm/480ラック
【0045】
(2)加工条件
得られた生機を液流染色機にてリラックス/精練し、引き続き、ポリエステル系樹脂からなり、かつアニオン性の吸水剤(高松油脂社製、SR1000)を、染色時に同浴で処理する方法(染色同時処理法)にて130℃×30分で染色を行い、次いで、脱水、乾燥を行った。次いで、染色、吸水処理後の生地に、帯電防止剤、風合い調整剤による後加工処理を行い、170℃×45秒で仕上げセットを行った。
実施例2で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真を図4に示す。
【0046】
実施例3
トリコット機(カールマイヤー製、KS−3;28ゲージ)を用い、フロントに単糸の断面形状が丸いポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸(84dtex/36フィラメント)を配し、バックにフロントと同様に単糸の断面形状が丸いポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸(84dtex/36フィラメント)を配し、ミドルに単糸の断面形状が丸いポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸(84dtex/72フィラメント)を配して、下記の編条件にて生機を作製した。
なお、上記のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートを意味する。
【0047】
(1)編み条件
・糸配列
バック :5イン 1アウト
ミドル :1アウト 1イン
フロント:2イン 1アウト 3イン
・編組織
バック :4−5/4−3/4−5/3−2/3−4/2−1/2−3/1−0
/1−2/1−0/2−3/2−1/3−4/3−2//
ミドル :0−0/2−2/0−0/3−3/1−1/4−4/2−2/5−5
/3−3/5−5/2−2/4−4/1−1/3−3//
フロント:1−0/1−2/1−0/2−3/2−1/3−4/3−2/4−5 /4−3/4−5/3−2/3−4/2−1/2−3//
・ランナー
バック :148cm/480ラック
ミドル : 66cm/480ラック
フロント:148cm/480ラック
【0048】
(2)加工条件
得られた生機を実施例2と同様の条件で仕上げた。
実施例3で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真を図5に示す。
【0049】
実施例4
トリコット機(カールマイヤー製、KS−3;28ゲージ)を用い、フロントに単糸の断面形状が偏平のポリエステルマルチフィラメント(50dtex/36フィラメント)のフラットヤーンを配し、ミドルに単糸の断面形状が丸いポリエステルマルチフィラメント加工糸(84dtex/72フィラメント)を配し、バックにフロントと同様に単糸の断面形状が偏平のポリエステルマルチフィラメント(50dtex/36フィラメント)のフラットヤーンを配し、下記の編条件にて生機を作製した。
なお、偏平断面を有するポリエステル単糸の偏平度は、いずれも5であった。また、上記のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートを意味する。
【0050】
(1)編み条件
・糸配列
バック :5イン 1アウト
ミドル :1アウト 1イン
フロント:2イン 1アウト 3イン
・編組織
バック :4−5/4−3/4−5/3−2/3−4/2−1/2−3/1−0
/1−2/1−0/2−3/2−1/3−4/3−2//
ミドル :0−0/2−2/0−0/3−3/1−1/4−4/2−2/5−5
/3−3/5−5/2−2/4−4/1−1/3−3//
フロント:1−0/1−2/1−0/2−3/2−1/3−4/3−2/4−5
/4−3/4−5/3−2/3−4/2−1/2−3//
・ランナー
バック :128cm/480ラック
ミドル : 52cm/480ラック
フロント:128cm/480ラック
【0051】
(2)加工条件
得られた生機を実施例2と同様の条件で仕上げた。
実施例4で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真を図6に示す。
【0052】
実施例5
実施例4と同条件で得られた生機を、液流染色機にてリラックス/精練し、引き続きポリエステル系樹脂からなり、かつアニオン性の吸水剤(高松油脂社製、SR1000)を、染色時に同浴で処理する方法(染色同時処理法)にて130℃×30分で染色を行い、次いで、脱水、乾燥を行った。次いで、染色、吸水処理後の生地に、帯電防止剤、風合い調整剤による後加工処理を行い、170℃×45秒で仕上げセットを行った。さらに、熱ロールカレンダー機(温度180℃ 圧力30kPa 速度30m/分)を通して生地を仕上げた。
【0053】
実施例6
実施例4と同条件で得られた生機を、液流染色機にてリラックス/精練し、引き続き、引き続きポリエステル系樹脂からなり、かつアニオン性の吸水剤(高松油脂社製、SR1000)を、染色時に同浴で処理する方法(染色同時処理法)にて130℃×30分で染色を行い、次いで、脱水、乾燥を行った。次いで、染色、吸水処理後の帯電防止剤、風合い調整剤による後加工処理を行い、170℃×45秒で仕上げセットを行った。さらに、グラビアロールを用いて、ポリウレタン樹脂を生地の裏面にドット状(直径1.0mm ドット数16個/(2.54cm×2.54cm))にプリントして、生地の裏面(肌側)に凹凸を形成させ、生地を仕上げた。
【0054】
比較例1
トリコット編機(130インチ、28ゲージ)を用い、下記の糸使い、条件でメッシュ生地を編成、加工し、コース密度102コース/インチ、ウエール密度61ウエール/インチ、目付180g/mの8コースメッシュ生地を得た。
なお、下記の糸使いにおいて、Esは、偏平度が5の偏平断面を有し、ポリエチレンテレフタレートからなる単糸から構成されたマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製)、エスパはスパンデックス糸(東洋紡績株式会社製、登録商標)を意味する。
【0055】
(1)糸使い、条件
F(フロント)オサ
・糸 :Es(50dtex、36フィラメント;セミダル)
・糸配置 :2イン 2アウト
・ランナー:142cm/480コース
・編組織 :45/32/45/32/10/23/10/23
M(ミドル)オサ
・糸 :Es(50dtex、36フィラメント:セミダル)
・糸配置 :2イン 2アウト
・ランナー:142cm/480コース
・編組織 :10/23/10/23/45/32/45/32
B(バック)オサ
・糸 :エスパ(44dtex)
・糸配置 :フルセット
・ランナー:84cm/480コース
・編組織 :12/10
【0056】
(2)加工条件
得られた生機を連続精練機で精練し、190℃で45秒間のプレセットを行った後、 液流染色機で130℃×30分で染色を行った。次いで、吸水加工剤(高松油脂社製、SR1800)を用いて、染色後の生地に吸水加工処理を行い、170℃×45秒で仕上げセットを行った。
比較例1で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真を図7に示す。
【0057】
比較例2
シングル丸編機(福原製、SDY機28G)を用い、単糸の断面形状が丸いポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸A(174dtex/144フィラメント)と、単糸の断面形状が丸いポリエステルマルチフィラメント仮撚り加工糸B(33dtex/12フィラメント)とを用い、下記の編条件にて生機を作製した。
また、上記のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートを意味する。
【0058】
(1)編み条件
(a)加工糸A
130mm/50ウエール
(b)加工糸B
64mm/50ウエール
(c)編組織(K:ニット、T:タック)
KKKKTKKKKKKKKTKKKK 1リピート
KKKKKKKKKKKKKKKKKK 1リピート
KKKKKKKKTKKKKKKKKT 1リピート
KKKKKKKKKKKKKKKKKK 1リピート
【0059】
(2)加工条件
得られた生機を実施例2と同様の条件で仕上げた。
比較例2で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真を図8に示す。
【0060】
各実施例、比較例で得られた生地の評価結果を表1にまとめた。また、表1において、ΔTSはいずれも、1.2℃である。
【0061】
【表1】

【0062】
表1より、本発明を満足する実施例で得られた生地は、運動時の冷感において、従来技術の比較例に対して優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のメッシュホール部分とグランド部分からなる生地は、着用運動時にそのメッシュホールを通る気流のホース効果により冷却感が促され、着用運動時の冷却感に優れるため、スポーツウェア、登山衣、作業着等の各種衣料用の生地として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】生地を着用した運動評価時の、皮膚の表面の温度変化を示す図である。
【図2】生地を未着用時の運動評価時の、皮膚表面の温度変化を示す図である。
【図3】実施例1で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真を示す図である。
【図4】実施例2で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真である。
【図5】実施例3で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真である。
【図6】実施例4で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真である。
【図7】比較例1で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真である。
【図8】比較例2で得られた生地の表面のマイクロスコープ写真である。
【符号の説明】
【0065】
0:生地
1:メッシュホール部分
2:グランド部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュホール部分と編織物からなるグランド部分から構成される生地であって、メッシュホール部分の1個あたりの平均面積が0.25mm以上30mm以下であり、生地全体に対するメッシュホール部分の面積比が、3%以上70%以下であり、生地の通気度が100cc/cm・s以上であり、生地を着用した運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTW)が、未着用時の運動評価での皮膚表面温度変化(ΔTS)よりも大きいことを特徴とする着用運動時の冷却感に優れる生地。
【請求項2】
グランド部分の編織物の一部または全部に偏平断面からなる合成繊維が使用され、偏平断面の最大径a(長軸)と該長軸に直交する最大径の長さb(短軸)の比である偏平度a/bが2以上であることを特徴とする請求項1記載の着用運動時の冷却感に優れる生地。
【請求項3】
グランド部分が吸水剤で吸水加工処理され、JIS−L−1907に準拠する 吸水速度滴下法の値が3秒以下であり、拡散性残留水分率が50分経過後に10%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の着用運動時の冷却感に優れる生地。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−138310(P2009−138310A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318335(P2007−318335)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】