説明

着色用藍藻類粉末及びその製造方法

【課題】食品や飲料品にも添加することが可能であって、光に対して色調変化が小さい緑色系の着色用藍藻類粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】藍藻類の乾燥粉末を乾熱処理して、藍藻類粉末の総カロテノイド含有量を50〜200mg/100g、クロロフィル含有量を250〜1000mg/100g、及びフィコシアニン含有量を800〜3200mg/100gとすることにより、着色用藍藻類粉末を得る。乾熱処理の温度は、例えば105〜180℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料品、医薬品、化粧品等の着色に適する着色用藍藻類粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロロフィル(葉緑素)を含有する野菜や緑茶の緑色を経時的に安定して保持する目的で、化学的に合成された銅クロロフィル等の食品着色料が使用されてきたが、近年の天然食品を重視する傾向とあいまって、天然食品の粉末を着色の目的を兼ねて使用する動きがある。しかし、抹茶、ほうれん草、ピーマン、ブロッコリー等の緑色粉末は、加工の際に茶色く変色しやすいため、製品価値が低くなってしまう。そこで、クロロフィルを豊富に含むクロレラ等の緑藻類を緑色の安定・維持効果を高めるために用いることがある。
【0003】
また、機能性食品の一つとして藍藻類が近年注目されている。例えばスピルリナには、フィコシアニン(フィコシアノビリンを含む色素蛋白質)、クロロフィル類(例えばクロロフィルa)、カロテノイド類(例えばゼアキサンチン)等の抗酸化作用がある光合成色素の他、各種アミノ酸、ビタミン・ミネラル類、食物繊維、多糖体、リノール酸、γ−リノレイン酸、イノシトール、SOD(スーパーオキサイドジスムターゼ)、核酸等の栄養素が豊富に含まれている。このスピルリナの藻体を乾燥させた粉末(乾燥原末)は、顆粒状又は錠剤に成形され、サプリメント(栄養補助食品)あるいは食品素材などとして市場に流通している。
【0004】
特許文献1には、ビタミンCを多量に含む抹茶とビタミンC以外の栄養素を含む藍藻の乾燥粉末を組み合わせた健康飲料用配合物が記載されている。
特許文献2には、スピルリナを蒸留水又は精製水に懸濁させ浸透圧によりスピルリナの細胞膜が破壊されてフィコシアニンを細胞膜外に流出させた後、加熱してスピルリナを変性させ、濃縮、減圧濃縮又は凍結乾燥させて得られた、スピルリナの不快なにおいが除去され栄養素が破壊されない、不快な濃い青藍色が薄い青色乃至淡紅色に変化され水に容易に懸濁される特性を持つ変性スピルリナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−199344号公報
【特許文献2】特表2005−520544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロロフィルは熱や光により酸化あるいは脱金属して退色するため、色素としては光に対する堅牢度(耐光性)が十分ではなく、茶色を帯びて緑色を失いやすい。
特許文献1には、スピルリナはクロロフィルやフィコシアニンによってあざやかな緑色を呈しており、抹茶の色がより美しくなる旨の記載があるが、実際のスピルリナ乾燥粉末はフィコシアニンが多いため青緑色を呈しており抹茶に比べて青みが強い。このため、抹茶に配合した場合、色調の違いが目立ってしまう。むしろ色調の違いが目立たないことが望ましいことは言うまでもない。
特許文献2には、スピルリナの濃い青藍色により、スピルリナを飲む人の口の姿が嫌悪気味にみられることもあり、スピルリナを水か牛乳に入れて飲むことは好まれず、人体に有益なスピルリナの服用を大衆化するのに障害要因になっている旨の記載があるが、そのために青色色素であるフィコシアニンを溶出させ、及び変性により脱色させているので、着色に適する粉末を得ることはできない。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、食品や飲料品にも添加することが可能であって、光に対して色調変化が小さい緑色系の着色用藍藻類粉末及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、藍藻類の乾燥粉末を乾熱処理して、粉末の総カロテノイド含有量を50〜200mg/100g、クロロフィル含有量を250〜1000mg/100g、及びフィコシアニン含有量を800〜3200mg/100gとすることを特徴とする着色用藍藻類粉末の製造方法を提供する。
また、本発明は、総カロテノイド含有量が50〜200mg/100g、クロロフィル含有量が250〜1000mg/100g、及びフィコシアニン含有量が800〜3200mg/100gであることを特徴とする着色用藍藻類粉末を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食品や飲料品にも添加することが可能であって、光に対して色調変化が小さい緑色系の着色用藍藻類粉末を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の着色用藍藻類粉末からフィコシアニンを抽出した残渣の顕微鏡写真の一例である。
【図2】乾熱処理前の藍藻類粉末からフィコシアニンを抽出した残渣の顕微鏡写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
本発明の着色用藍藻類粉末は、自然界に自生する藍藻類又は人工的に培養された藍藻類を回収した藻体から構成される藍藻類粉末における光合成色素(フィコシアニン(PC)、クロロフィル(Chl)、ゼアキサンチン等のカロテノイド類(TC))の含有量を調整する。
【0012】
藍藻類(Cyanobacteria)としては、アルスロスピラ(Arthrospira)属、スピルリナ(Spirulina)属、スイゼンジノリ(Aphanothece)属等が挙げられる。従来一括してスピルリナ属と呼称されていたアルスロスピラ属(Arthrospira)及びスピルリナ属(Spirulina)に属する微細な単細胞微生物は、「スピルリナ」と通称されており、その具体例としては、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アルスロスピラ・ゲイトレリ(Arthrospira geitleri)、アルスロスピラ・サイアミーゼ(Arthrospira siamese)、スピルリナ・メイヤー(Spirulina major)、スピルリナ・サブサルサ(Spirulina subsalsa)、等が挙げられる。中でも、人工的に培養でき、入手が容易なことから、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラ・マキシマ、アルスロスピラ・ゲイトレリ、アルスロスピラ・サイアミーゼが好ましい。
【0013】
スピルリナ等の藍藻類の乾燥粉末(乾燥原末)は、天然に生育する湿藻体や、屋外人工培養池で培養生産された湿藻体を収穫し、必要に応じて濃縮及び洗浄した上で、凍結乾燥処理やスプレー乾燥処理等の乾燥処理により得ることができる。凍結乾燥処理は、藻体を加熱しないことから、藻類の有する光合成色素の分解を抑制でき、好ましい。また、スプレー乾燥処理等の加熱を伴う乾燥処理の場合は、スプレードライヤーの排風温度を70〜100℃の範囲に設定する等して、光合成色素の分解を抑制することが好ましい。前記製法で製造されたスピルリナ乾燥原末の色素成分含量は、下記の通りである。
総カロテノイド 200mg以上/100g
クロロフィルa 1000mg以上/100g
フィコシアニン 5000mg以上/100g
【0014】
前記乾燥原末の乾熱処理は、乾燥原末を乾燥状態のまま加熱処理して行うことができる。スピルリナ等の藍藻類の乾燥原末は、光合成色素の含有量が多く、特に青色色素であるフィコシアニンを豊富に含むため濃い青緑色を呈するが、これを乾熱処理することにより、細胞壁や細胞膜を破壊することなく色素成分量を低減して色調を改善し、好ましい緑色に変えることができる。また、着色する食品や飲料の含水率が高い場合でも、色素成分の溶出が抑制され、色変わり(色落ち、色移り)がしにくいという利点もある。
乾熱処理後の藍藻類粉末における各色素成分の含有量は、総カロテノイド含有量を50〜200mg/100g、クロロフィル含有量を250〜1000mg/100g、及びフィコシアニン含有量を800〜3200mg/100gとすることが好ましい。ここで、各含有量は、いずれも該粉末100g当たりの値である。
【0015】
乾熱処理によれば、特にフィコシアニンの減少率が他の色素(カロテノイド及びクロロフィル)に比べて高いため、明度(L)が上昇する傾向が見られる。
また、本発明により得られる乾熱処理後の藍藻類粉末は、驚くべきことに、紫外線を含む光への暴露下で変色しにくく耐光性に優れるという性質を有する。色素として主にクロロフィルを含有する緑色系粉末に比べると、フィコシアニンが青みを補強し、黄みの増大を抑制することも考えられる。また、水分の多い物品に添加しても色素が溶出しにくく、美しい青緑色を保ち、色落ちしにくく、色移りやニジミも抑制されるという特徴がある。これは、乾熱処理の際、藍藻類の細胞に豊富に含まれるタンパク質が変性して、水溶性の青色色素タンパク質であるフィコシアニンは、タンパク部分が非タンパク部分であるフィコシアノビリン(青色の色素部分)と結合したまま変性することにより、フィコシアノビリンが水に対して溶出しにくくなったり、またあるいは細胞を構成する他のタンパク質が変性することで細胞の構造が強化されたりするためとも考えられる。
【0016】
本発明の着色用藍藻類粉末は、明るい青緑色を呈するので、アイスクリーム、ソフトクリーム、ケーキ、ババロア、羊羹、ゼリー、ガム等の菓子類やパン類;そば、うどん、素麺等の麺類;豆腐、蒲鉾、はんぺん等の各種食品類;抹茶飲料、緑茶飲料、牛乳飲料、豆乳飲料、野菜飲料、果実飲料、清涼飲料水等の飲料類;錠剤等の医薬品や化粧品への添加に好適である。また、単独でも緑色の着色に好適であるが、抹茶や緑茶のほか、大麦若葉、ケール、桑、笹、モロヘイヤ、クロレラ、青しそ、ブロッコリー、ほうれん草、ピーマン、明日葉等の緑色粉末と複合した組成物を着色用粉末として用いることもできる。
【0017】
藍藻類乾燥粉末の乾熱処理は、加熱による昇温を均一かつ迅速に行うためには、例えば該乾燥粉体をステンレス等の十分な熱伝導性を有する材質からなるバット等の容器内に広げて加熱する方法が好ましい。
【実施例】
【0018】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0019】
<乾燥原末と乾熱処理粉末の成分分析及び色調測定>
スピルリナの乾燥原末100gをステンレス製の丸型バット(φ140mm)に均一に広げて、該バットを熱風乾燥機(東京理化器械株式会社(EYELA)製、形式WFO−600ND)に設置し、表1に示した温度及び時間で乾熱処理した。なお、表1において“Control”は乾熱処理をしないスピルリナの乾燥原末を示す。
【0020】
【表1】

【0021】
乾燥原末及び乾熱処理粉末の色素成分含有量は、財団法人日本健康・栄養食品協会「スピルリナ食品品質規格基準」(平成21年3月6日改定)に記載の「総カロテノイドの定量」、「クロロフィルa分析法」、及び「フィコシアニン分析法」に従って分析した。
また、乾燥原末及び乾熱処理粉末の表面色は、JIS Z 8729に準拠して、L表色系(CIE 1976)による明度L及び色座標a,bにより評価した。L,a及びbの値は、試料2gをφ30mmの測定用丸セルに入れ、ムラがないようにタッピングを数回行って、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製、形式SE−2000)を用いて測定した。
なお、L表色系において、概略として、Lは数値が大きいほど明度が高い(明るい)ことを示し、aは、正の側では数値が大きいほど赤の度合いが高く、負の側では数値が大きいほど緑の度合いが高いことを示し、また、bの値は、正の側では数値が大きいほど黄の度合いが高く、負の側では数値が大きいほど青の度合いが高いことを示す。
表1に示すように、乾熱処理の進行と光合成色素(フィコシアニン、クロロフィル、カロテノイド)が減少に伴い、乾燥原末に比べてLの値が増加し、aの値が減少し、bの値が減少する傾向を示すことがわかる。
【0022】
<乾燥原末と乾熱処理粉末の官能検査>
上記の乾燥原末(Control)と乾熱処理粉末(実施例2:115℃,16時間乾熱処理品)の風味を表2に示す方法に従って7段階で評価した。官能検査は、15人のパネルが各サンプルを基準となるスピルリナ粉末と比較し、基準を0点とした場合の評価項目を−3点〜+3点で評価し、各パネルの評点を平均した。その結果を表3に示す。乾熱処理により、乾燥原末に比べて臭いが大幅に弱まるとともに味質も改善されることが判明した。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
<乾熱処理による耐光性比較>
スピルリナの乾燥原末と乾熱処理粉末(115℃,16時間乾熱処理品)を蛍光灯の光に暴露したときの色調変化を下記のように比較した。
試験条件は各試料5gをφ9cmのガラスシャーレに入れ、白色蛍光灯下で25℃、3000lxで暴露し、光暴露試料から2gをφ30mmの測定用丸セルに入れ、ムラがないようにタッピングを数回行って、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製、形式SE−2000)を用いてL,a及びbの値を測定した。また、色差ΔEは、光暴露前後のL,a及びbの値の差(ΔL、Δa及びΔb)から下記の数式により算出した。結果を表4及び表5に示す。
【0026】
【数1】

【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

【0029】
色差ΔEは、表6に示す判定基準によって評価した。スピルリナ乾燥原末は、光暴露4週目から変色が認められたのに対し、スピルリナ乾熱処理品は光暴露8週でも目視では容易に識別できない程度のわずかな色差を示しただけであった。
【0030】
【表6】

【0031】
<乾熱処理による耐熱性比較>
スピルリナの乾燥原末と乾熱処理粉末(115℃,16時間乾熱処理品)を加熱処理したときの色調変化を下記のように比較した。
試験条件は各試料2gをφ5cmのアルミカップに入れ、熱風乾燥機で105℃、8hr加熱し、加熱処理前後のL,a及びbの値を上記<乾熱処理による耐光性比較>と同様に測定し、色差ΔEを算出した。結果を表7及び表8に示す。
【0032】
【表7】

【0033】
【表8】

【0034】
色差ΔEは、上記の表6に示す判定基準によって評価した。乾燥原末の色差も小さかったが、乾熱処理粉末はわずかな変色も観察されなかった。
【0035】
<スピルリナ乾熱処理粉末を配合した抹茶組成物>
上記スピルリナ乾熱処理品(115℃、16hr)を抹茶に配合したとき、食品加工用抹茶N−2(株式会社葵製茶製)及びクロレラ入り抹茶N(同社)と外観が類似した緑色になる配合割合を求めた。
上記スピルリナ乾熱処理品を5%間隔で0〜50%の割合で抹茶と配合し、15人のパネルの内、8人以上が同等とした配合割合を表9に示す。本結果から、該抹茶組成物中のスピルリナ乾熱処理品の割合は、10〜30%が適当と考えられる。
【0036】
【表9】

【0037】
<抹茶組成物の耐光性比較>
上記の食品加工用抹茶N−2、クロレラ入り抹茶N、及びスピルリナ乾熱処理品(115℃、16hr)20部を抹茶80部と配合した抹茶組成物を蛍光灯の光に暴露したときの色調変化を下記のように比較した。
試験条件は各試料10gをφ9cmのガラスシャーレに入れ、白色蛍光灯下で25℃、3000lxで暴露し、光暴露試料から2gをφ30mmの測定用丸セルに入れ、ムラがないようにタッピングを数回行って、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製、形式SE−2000)を用いてL,a及びbの値を測定するとともに、色差ΔEを上記数式により算出した。結果を表10、表11及び表12に示す。
【0038】
【表10】

【0039】
【表11】

【0040】
【表12】

【0041】
光暴露3日の時点で、食品加工用抹茶やクロレラ入り抹茶は色差が感じられたが、スピルリナ乾熱処理品(20%)入り抹茶組成物では、ほとんど変色が認められなかった。
【0042】
<3%添加生クリームでの耐光性比較>
上記の食品加工用抹茶N−2、クロレラ入り抹茶N、及びスピルリナ乾熱処理品(115℃、16hr)20部を抹茶80部と配合した抹茶組成物をそれぞれ生クリームに添加し、蛍光灯の光に暴露したときの色調変化を下記のように比較した。
試験サンプルは、氷水で冷やしたボールに市販の生クリーム100mL、砂糖25g及び上記の各種粉末3gを加え、泡立て器で泡立てて調製した各ホイップクリームを、透明なプラスチック容器(PP)に絞り出し成形することにより作製した。
試験条件は、各クリーム成形体の入った容器を白色蛍光灯下で10℃、3000lxで、光に0〜20時間暴露した。遮光保存品との色調を比較した。
比較方法は、パネル15名により表13に示す5段階評点方法にて実施した。
【0043】
【表13】

【0044】
【表14】

【0045】
表14に示すように、スピルリナ乾熱処理品(20%)入り抹茶組成物は、食品加工用抹茶N−2及びクロレラ入り抹茶Nに比べて退色しにくいことを確認した。
【0046】
<耐水性の比較>
スピルリナ乾燥原末と乾熱処理粉末(115℃,16時間乾熱処理品)のフィコシアニンをリン酸緩衝液で抽出したときの粉末の状態変化を下記のように比較した。
スピルリナ乾燥原末及び乾熱処理品をそれぞれ30℃の10mMリン酸緩衝液中で16時間かけて抽出処理をした。
本発明の実施例である乾熱処理粉末は、図1の顕微鏡写真において矢印Aで示すように、水抽出処理後も色素が濃く、各粒子(細胞)の形状を維持している。なお、図1はカラー写真をグレースケールに変換したものであるため、色調は不明となっているが、カラー写真によれば、青緑色が保たれていることも確認することができている。
これに対して、乾熱処理をしない乾燥原末は、図2の顕微鏡写真において矢印Bで示すように、水抽出処理後はフィコシアニンがほとんど失われる結果、色落ちが顕著である。
これは、乾熱処理品では、スピルリナの細胞壁にあるタンパク質(フィコシアニンタンパク質も含む)が乾熱処理によって変性しているが、青色の基であるフィコシアノビリンが乾熱処理粉末中に残存していることを示している。
従って、乾熱処理で得られる粉末は、フィコシアニン含量が少なくなる他の方法、例えば特許文献2に記載された変性スピルリナ等とは異なり、天然由来の着色用粉末として耐水性にも優れるという特徴がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藍藻類の乾燥粉末を乾熱処理して、粉末の総カロテノイド含有量を50〜200mg/100g、クロロフィル含有量を250〜1000mg/100g、及びフィコシアニン含有量を800〜3200mg/100gとすることを特徴とする着色用藍藻類粉末の製造方法。
【請求項2】
前記乾熱処理の温度が105〜180℃である請求項1に記載の着色用藍藻類粉末の製造方法。
【請求項3】
前記藍藻類が、アルスロスピラ属又はスピルリナ属に属する種から選択される請求項1又は請求項2に記載の着色用藍藻類粉末の製造方法。
【請求項4】
総カロテノイド含有量が50〜200mg/100g、クロロフィル含有量が250〜1000mg/100g、及びフィコシアニン含有量が800〜3200mg/100gであることを特徴とする着色用藍藻類粉末。
【請求項5】
前記藍藻類が、アルスロスピラ属又はスピルリナ属に属する種から選択される請求項4に記載の着色用藍藻類粉末。
【請求項6】
抹茶又は緑茶の着色用である請求項4又は請求項5に記載の着色用藍藻類粉末。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−125159(P2012−125159A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277234(P2010−277234)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(500367702)DICライフテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】