説明

睡眠時無呼吸検査用センサおよび睡眠時無呼吸検査装置

【課題】睡眠時無呼吸症候群の診断のために複数台が同時に使用されるセンサにおいて、装着性の良好な物理的配線を伴わずに独立に動作することが可能なセンサを用いても、各センサのセンシングデータ間の同期を確保して、正確な診断が行えるようにする。
【解決手段】鼻呼吸量を計測する温度センサS1、口呼吸量を計測する温度センサS2、いびき音を計測する小型音響センサS3は、電池およびデータの記憶部を内蔵している記録装置S10に接続される。一方、血中酸素濃度を計測する光センサS4、胸部運動を計測する加速度センサS5および腹部運動を計測する加速度センサS6は、それぞれが電池およびデータの記憶部を内蔵している。前記記録装置S10およびセンサS4〜S6に対して、患者に貸与する前に、親機S0によって時計合せを行い、収集されたデータは、親機S0を介して集計装置Pに吸い上げられ、同時刻でのデータの比較が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep apnea syndrome)の診断のために使用されるセンサおよびそれを備えて成る睡眠時無呼吸検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記睡眠時無呼吸症候群は、睡眠障害のひとつと考えられており、その検査には、睡眠ポリグラフィーとスクリーニング検査装置との2種類がある。前記スクリーニング検査装置では、睡眠ポリグラフィーで用いられる多数の生体計測センサのうちのいくつか、たとえばいびき音センサ、口鼻気流センサ、動脈血酸素飽和度センサ、胸部運動センサおよび腹部運動センサなどが用いられ、これらのセンサから得られた各センシングデータの変化率やデータ間の相関性などの特徴を分析して、診断が行われる。
【0003】
このように複数のセンサで計測することによって、単独のセンサのセンシング結果よりも診断精度が向上することが期待できる。前記スクリーニング検査では、これらのセンサが医療機関から患者へ貸与され、患者は、自宅で装着して、一晩の睡眠中のデータを採取し、後日に医療機関に持参して、専門家に分析・診断を仰ぐことが一般的である。
【0004】
一方、各センサのセンシングデータは、それらのセンサが繋がっているデータ記録装置に送信される。特許文献1には、前記データ記録装置を患者の腰部に装着し、そのデータ記録装置側に信号処理の回路などを内蔵することで、センサ部分をコンパクトにし、前記自宅でのデータの採取を可能にする装置が提案されている。
【特許文献1】特開平5−200031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、多数のセンサは、配線によってデータ記録装置に接続されている。したがって、センサ数が増加する程、配線は、複雑に絡みあうことになり、装着性が悪いだけでなく、結線忘れや誤結線などにより正確な計測ができない可能性がある。また、睡眠中の姿勢が変化すると、それら複雑な配線のために、センサが身体から外れたり、データ記録装置から配線が抜け落ちたりする可能性もあり、データ記録が不安定になる恐れがある。睡眠中は、線が抜ける、などの不具合に気付かないので、配線の引き回しには配慮が必要である。配線が外れないように姿勢を拘束すると、日常の睡眠を妨げる恐れがある。このような問題は、医療機関での睡眠検査では、検査担当者が待機しているために心配する必要がなかったが、在宅検査においては、患者自身が計測装置に熟練していないために、自らのミスに気付かず、得られた計測データの信頼性が低い場合にはさらにもう一晩計測をし直す、という手間がかかることになる。
【0006】
そこで、センサの小型化によってセンサに送信機を搭載し、データ記録装置へのデータの送信を無線化することで配線を除去することも考えられる。しかしながら、患者宅の寝室に障害物があったり、また患者の姿勢変化が大きかったりすると、データ記録装置は、安定した受信を行えず、これによってもまたデータ記録が不安定になる恐れがある。たとえば、呼吸が検出されない場合、本当に呼吸していないのか、単に受信できなかったのかの区別がつかず、診断に影響が生じる。通信品質を向上するために送信電力を大きくすると、電池が大きくなってセンサが重くなり、身体に貼付けたセンサが外れ易くなる。
【0007】
一方、各センサでデータを記録し、後に取出すようにすると、配線がなくなって各センサは、物理的に独立することになり、煩雑性は、改善される。しかしながら、各センサ間の時間的関係がばらばらになり、各センサのデータ間の相関性を見ることができず、正確な診断を行えなくなってしまうという問題もある。具体的には、睡眠時無呼吸症候群の診断では、10秒以上の無呼吸の発生頻度をカウントするので、複数の計測データより総合的に診断を行う無呼吸検査においては、各センサ間での10秒程度の誤差は、致命的な影響を与える。特に、胸部運動センサと腹部運動センサとが一緒に上下していれば正常に呼吸が行われているものと判断でき、相互に逆相で上下していれば、無呼吸で空気が入って来ていないのに横隔膜は、動いているものと判断でき、したがって、たとえば12(回/分)の呼吸数で、1周期が5秒とすると、データ間で2.5秒のずれがあると、診断が逆転してしまうことになる。
【0008】
本発明の目的は、装着性の良好な物理的配線を伴わずに独立に動作することが可能なセンサを用い、各センサのセンシングデータ間の同期を確保して、正確な診断を行うことができる睡眠時無呼吸検査用センサおよび睡眠時無呼吸検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の睡眠時無呼吸検査用センサは、睡眠時無呼吸症候群の診断のために複数台が同時に使用される睡眠時無呼吸検査用センサにおいて、センシング部と、時計部と、記憶部と、前記時計部の刻時動作に応答し、予め定める周期で前記センシング部にセンシングを行わせて、最初のセンシングデータを前記時計部の時刻データに対応付けて前記記憶部に格納し、その後の前記センシング部のセンシングデータを前記記憶部に格納してゆくとともに、外部入出力端から入出力される同期信号に応答して、前記時計部の時刻合せを行う制御部とを含むことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、睡眠時無呼吸症候群の診断のために複数台が同時に使用されるセンサにおいて、各センサは、センシング部に、そのセンシングデータを格納する記憶部を備え、物理的配線を伴わずに独立に動作することが可能なセンサから構成される。
【0011】
診断にあたって必要になる各センサのセンシングデータ間の同期は、制御部が、時計部の刻時動作に応答し、予め定める周期でセンシング部にセンシングを行わせて、最初のセンシングデータを時計部の時刻データに対応付けて記憶部に格納し、その後のセンシング部のセンシングデータを記憶部に格納してゆくようにし、そして、その時計部の時刻を、制御部が、外部入出力端から入出力される同期信号に応答して合せることで確保する。この時刻合せは、外部に設けた親機からの同期信号を外部入力端から制御部に入力することで行われてもよく、或いは、他のセンサを接続し、一方のセンサの外部出力端から他方のセンサの外部入力端へ同期信号を出力することで、センサ間で行われてもよい。
【0012】
したがって、装着性の良好な物理的配線を伴わずに独立に動作することが可能なセンサを用い、各センサのセンシングデータ間の同期を確保して、正確な診断を行うことができる。
【0013】
また、本発明の睡眠時無呼吸検査用センサは、口鼻フローセンサ、いびき音センサ、血中酸素濃度センサ、胸部運動センサおよび腹部運動センサの少なくとも2つ以上の組合わせから成ることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、口鼻フローセンサおよびいびき音センサは、顔面近くに装着されるので、長い配線が無いことで良好な装着感を得ることができ、胸部運動センサおよび腹部運動センサは、姿勢の変化に対しても、前記配線が無いことで身体から剥がれ難く、前記配線を無くすことの効果が大きい。
【0015】
さらにまた、本発明の睡眠時無呼吸検査装置は、前記の睡眠時無呼吸検査用センサに、一式の該睡眠時無呼吸検査用センサを収納することができる収納部を有し、収納状態で前記各センサのセンシングデータを収集するとともに、前記同期信号を出力する親機を備えて成ることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、パーソナルコンピュータなどのセンシングデータを解析する手段を親機に接続するだけで各センサのセンシングデータを収集することができるとともに、各センサを親機に収納状態で、一括して時刻合せを行うことができ、利便性(操作性)を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の睡眠時無呼吸検査用センサでは、以上のように、睡眠時無呼吸症候群の診断のために複数台が同時に使用されるセンサにおいて、各センサは、センシング部に、そのセンシングデータを格納する記憶部を備え、物理的配線を伴わずに独立に動作することが可能なセンサから構成される。そして、診断にあたって必要になる各センサのセンシングデータ間の同期は、制御部が、時計部の刻時動作に応答し、予め定める周期でセンシング部にセンシングを行わせて、最初のセンシングデータを時計部の時刻データに対応付けて記憶部に格納し、その後のセンシング部のセンシングデータを記憶部に格納してゆくようにし、そして、その時計部の時刻を、制御部が、外部入出力端から入出力される同期信号に応答して合せることで確保する。
【0018】
それゆえ、装着性の良好な物理的配線を伴わずに独立に動作することが可能なセンサを用い、各センサのセンシングデータ間の同期を確保して、正確な診断を行うことができる。
【0019】
さらにまた、本発明の睡眠時無呼吸検査装置は、以上のように、前記の睡眠時無呼吸検査用センサに、一式の該睡眠時無呼吸検査用センサを収納することができる収納部を有し、収納状態で前記各センサのセンシングデータを収集するとともに、前記同期信号を出力する親機を備えて成る。
【0020】
それゆえ、パーソナルコンピュータなどのセンシングデータを解析する手段を親機に接続するだけで各センサのセンシングデータを収集することができるとともに、各センサを親機に収納状態で、一括して時刻合せを行うことができ、利便性(操作性)を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態に係る睡眠時無呼吸検査装置1の概略的構成を示すブロック図である。睡眠時無呼吸検査装置1は、同時に使用される複数のセンサS1〜S6に、記録装置S10および親機S0を備えて構成される。親機S0には、医療機関において、パーソナルコンピュータなどの集計装置Pが接続され、後述するようにしてこの集計装置Pに集計されたデータから、医師がSASの症状を診断する。
【0022】
図1の例では、センサは、鼻呼吸量を計測する温度センサS1、口呼吸量を計測する温度センサS2、いびき音を計測する小型音響センサS3、血中酸素濃度を計測する光センサS4、胸部運動を計測する加速度センサS5および腹部運動を計測する加速度センサS6の6つのセンサを示しているけれども、それらの少なくとも2つ以上が組合わせて用いられる。センサS1〜S3は、センシング部分だけで構成されており、電池およびデータの記憶部を内蔵している記録装置S10に接続されて、特許請求の範囲におけるセンサが構成されており、これらのセンサS1〜S3および記録装置S10へは、外部からの物理的配線が無く、単独で使用可能である。これに対して、センサS4〜S6は、それぞれが電池およびデータの記憶部を内蔵しており、それらへは物理的配線が無く、単独で使用可能である。
【0023】
図2は、鼻呼吸量を計測する温度センサS1、口呼吸量を計測する温度センサS2およびいびき音を計測する小型音響センサS3の装着状況を模式的に示す図である。鼻呼吸量を計測する温度センサS1および口呼吸量を計測する温度センサS2は、患者10の鼻の下の部分12に貼付けられ、呼気の通過による温度変化から呼吸量を計測する。それらの温度センサS1,S2は、共通の配線L1を介して前記記録装置S10に接続される。前記いびき音を計測する小型音響センサS3は、小型のマイクロフォンから成り、患者10の喉の部分13に貼付けられ、配線L3を介して前記記録装置S10に接続される。
【0024】
そして、前記記録装置S10は、図2(a)で示すように患者10の耳部11に装着されたり、図2(b)で示すように衣服21のポケット22に収納されたり、図示しないが衣服の肩部分に貼付けられたりする。
【0025】
これらのセンサS1〜S3は、患者10の顔面近くに装着されるので、長い配線が無いことで良好な装着感を得ることができる。ここで、配線L1,L3が存在するが、特に温度センサS1,S2は、患者10の呼気に晒されるので、センシング部分を一体化して貼付けるようにし、呼吸の邪魔になったり、大型化して湿気で剥がれたりすることがないようになっており、短距離の配線L1が存在しても、温度センサS1,S2側に記憶部を設けるより有利である。これに合わせて、前記温度センサS1,S2とは、比較的近距離に配置される小型音響センサS3も、音響を採取するためにサンプリング周波数およびビット数が大きく、電池および記憶部を前記マイクロフォンに一体化すると大型化するので、短距離の配線L3を介して前記記録装置S10に接続され、該記録装置S10が共用化されている。こうして、センサS1〜S3は、有線で記録装置S10に接続されるが、睡眠中の体動の影響を受けにくいように、それらの間は、距離が近くなるような単位でまとめられている。
【0026】
一方、図3は、血中酸素濃度を計測する光センサS4の装着状況を模式的に示す図である。この光センサS4は、図3(a)で示すように患者10の人差し指14の先端部に装着され、その先端部中に赤色および赤外光を透過させ、流れる血液のヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸光度の差から、血中酸素濃度を計測する。このように動きの激しい手に装着される光センサS4の配線を無くすことは効果的である。
【0027】
なお、上述のように光センサS4は、患者10の指先に装着するものであり、就寝中は外れ易く、したがって図3(b)で示すように、この光センサS4もセンシング部分のみとし、別途患者10の手首23などに装着される記録装置S40を設けて、それらの間を配線L4で接続するようにしてもよい。
【0028】
また、図4は、胸部運動を計測する加速度センサS5および腹部運動を計測する加速度センサS6の装着状況を模式的に示す図である。胸部運動を計測する加速度センサS5は、患者10のみぞおち15付近に貼付けられ、腹部運動を計測する加速度センサS6は、臍16付近に貼付けられる。これらの加速度センサS5,S6の配線を無くすことで、姿勢の変化に対しても身体から剥がれ難くなり、効果的である。
【0029】
前記記録装置S10および各センサS1〜S6は、図5で示すように、親機S0の収納部S0aに収納され、収納状態で操作パネルS0bからの操作によって、該操作パネルS0b側に前記各センサS1〜S6のセンシングデータが収集され、該操作パネルS0bからの操作によって、或いは集計装置Pからの操作によって、収集されたセンシングデータが操作パネルS0bから集計装置Pに一括転送される。
【0030】
上述のように構成される睡眠時無呼吸検査装置1において、前記各センサS1〜S6および記録装置S10は、使用前には親機S0に収納され、操作パネルS0bに接続される。親機S0は、集計装置Pに接続されており、ユーザからの操作は、該集計装置P上のソフトを通じて行われる。
【0031】
ユーザ操作に応答して、集計装置Pから時刻セットコマンドが親機S0に送信されると、マイクロコンピュータなどから成る親機S0は、その時刻セットコマンドを通信ポートで受信し、パラレルポートに接続されている子機となる記録装置S10および各センサS4〜S6に、同時刻をセットする。ここでのパラレルポートは、いわゆるプリンタポートである必要はなく、複数の同時制御可能もしくは時間管理可能な汎用データポートでもよい。
【0032】
セットされる時刻は、絶対的に正確な時刻である必要はなく、絶対的に正確な時刻からずれがあっても、記録装置S10および各センサS4〜S6に同じ時刻がセットされればよい。また、時刻データでなくとも、単なるトリガを与えるだけでもよく、そのトリガに合わせて、各子機が時刻原点を定めればよい。
【0033】
そのような時刻セットの具体的方法としては、集計装置Pからの時刻セットのコマンドに応答して、親機S0に接続されているすべての記録装置S10およびセンサS4〜S6に一斉に同時刻0をセットするようにしてもよい(前記トリガによる)。或いは前記記録装置S10や各センサS4〜S6が接続されるたびに、親機S0が管理している現在時刻をセットするようにしてもよく、この場合、すべての記録装置S10およびセンサS4〜S6が同時に接続されている必要はない。たとえば、ある時点では、記録装置S10のみが接続されていて親機S0は、時刻Aを記録装置S10にセットする。その後の別の時点では、光センサS4が接続されていて、親機S0は、時刻Bを該光センサS4にセットするというものである。親機S0が時刻を管理しているので、時刻Aと時刻Bという異なる時刻を記録装置S10およびセンサS4にそれぞれセットしたとしても、センサS1〜S3と光センサS4との時刻の差は、親機S0から管理可能である。センサの数が増えても同様にセットすることができる。
【0034】
こうして、一旦時計合わせが行われた記録装置S10およびセンサS4〜S6は、それぞれが持つ時間管理のクロックによって時刻管理を行う。したがって、それぞれの記録装置S10およびセンサS4〜S6を、物理的配線や無線通信などの通信手段を用いずに使用しても、記録装置S10およびセンサS4〜S6間の同期は、それぞれのクロックのばらつきの範囲内で確保される。
【0035】
したがって、電池容量を大きくしてクロックを速くする程、前記クロックばらつきが小さくなり、時刻のずれも少なくなって前記時刻セットの頻度を少なくすることができるけれども、前記電池容量の関係で、必要最小限のクロック周波数とし、使用毎に時刻セットを行うことが望ましい。
【0036】
使用時には、記録装置S10およびセンサS4〜S6では、センシングデータの記憶部への格納にあたって、最初のセンシングデータが時計部からの時刻データと合わせて格納され、その後のセンシングデータは、記憶部に格納してゆく。
【0037】
ここで、各センサS1〜S6のデータサンプリング周波数は、相互に等しくなくてもよい。サンプリング周期は、不変であるので、最初のデータの時刻が分っていれば、その後のデータの時刻もサンプリング周波数に応じて決定される。たとえば、いびき音を計測する小型音響センサS3のサンプリング周波数は、1kHz、加速度センサS5,S6のサンプリング周波数は50Hzとすると、いびき音センサのデータ20個に対して加速度センサのデータ1個が対応している。
【0038】
使用後は、各センサS1〜S6および記録装置S10は、親機S0に収納され、集計装置Pから、子機である記録装置S10およびセンサS4〜S6を順に指定してデータ転送のコマンドを送信することで、親機S0は記録装置S10およびセンサS4〜S6にそのデータ転送のコマンドを転送し、これに応答して記録装置S10およびセンサS4〜S6は、保持しているセンシングデータを時刻データとともに親機S0に送信し、集計装置Pに転送される。
【0039】
このように構成することで、装着性の良好な物理的配線を伴わずに独立に動作することが可能なセンサS1〜S6を用い、各センサS1〜S6のセンシングデータ間の同期を確保して、正確な診断を行うことができる。また、パソコンから成る集計装置Pをマスターにすることによって、子機(記録装置S10およびセンサS4〜S6)および親機S0がもつメモリなどの記憶装置としてのリソースは、必要最低限でよく、機器製作に要する部品代を低減させることが可能である。
【0040】
上述の説明では、時刻管理を親機S0で行った場合を述べたが、集計装置Pのソフトウェアで管理しても全く同様である。また、いずれかのセンサを時間管理のマスタとし、その他のセンサをスレーブとして、マスタが管理する時刻をスレーブのセンサに送信することにより同期をとってもよい。
【0041】
図6および図7は、以上のような構成によって実現した睡眠時無呼吸検査装置1を用いた本件発明者の実験結果を示すグラフである。図6と図7とは、同一の被験者に対してそれぞれ別の日に計測したデータ例である。図示したデータの計測時間帯は、夜の午前2時59分〜午前3時の1分間である。各グラフ間にまたがる垂直線は、計測データの同期性を調べる分析のために挿入した補助線である。
【0042】
図6に示される腹部運動では、縦軸の上方は、腹部が膨らむ方向、すなわち吸気の程度を示しており、縦軸の下方は、腹部が萎む方向、すなわち吐気の程度を示している。垂直方向の補助線は、腹部運動を基準にした吸気のピーク値に挿入している。なお、腹部および胸部運動の計測に用いている加速度センサS5,S6は、x,y,zの3軸の加速度成分が計測可能で、身体への装着方向は、頭部から足方向をx、右から左方向をy、背から腹方向をzとしている。
【0043】
補助線からの時間推移を見ると、腹部運動が吸気のピーク値を示した直後にいびき音が発生していることが理解される。口呼吸および鼻呼吸のグラフは、縦軸の上方は吐気(による温度上昇)の程度を、下方は、吸気(による温度低下)の程度を示している。補助線で示されているように、腹部運動の吸気のタイミングにほぼ同期して、鼻呼吸の吸気が行われていることが理解される。また鼻呼吸と比較して、口呼吸の程度は小さいものの、いびきとほぼ同期していることも認識できる。これらのデータから、吸気後にいびきが発生してはいるものの、換気としての呼吸は正常に行われていることが見てとれる。
【0044】
また、図7では、鼻呼吸の吸気のピークに少し遅れて、口呼吸の吸気ピークが現れていることが理解される。このことから、口呼吸もある程度行われており、口腔内や喉頭部が乾燥する傾向にあると推測される。また図7の胸部運動のデータは、横向きに姿勢が変わったときのデータであり、図6で示している腹部運動とはかなり異なった波形を示している。図7の胸部運動で示されるx,y,zの各成分は、変化の方向は各々異なっているものの、呼吸に応じた周期的な変化をしていることが認識される。
【0045】
以上に述べたように、実際の無呼吸診断においても各センサS1〜S6から得られるデータを総合的に分析して、10秒以上の無呼吸の発生頻度を計算するので、各データの時間的相関関係は、非常に重要であるとともに、患者へのセンサS1〜S6や記録装置10の装着負担を軽減して睡眠を妨げないようにし、正確なデータが得られるような機器構成にすることが重要であり、本発明は、効果的であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の一形態に係る睡眠時無呼吸検査装置の概略的構成を示すブロック図である。
【図2】鼻呼吸量を計測する温度センサ、口呼吸量を計測する温度センサおよびいびき音を計測する小型音響センサの装着状況を模式的に示す図である。
【図3】血中酸素濃度を計測する光センサの装着状況を模式的に示す図である。
【図4】胸部運動を計測する加速度センサおよび腹部運動を計測する加速度センサの装着状況を模式的に示す図である。
【図5】記録装置および各センサを収納して成る親機を示す斜視図である。
【図6】本件発明者の実験結果を示すグラフである。
【図7】本件発明者の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 睡眠時無呼吸検査装置
10 患者
11 耳部
12 鼻の下の部分
13 喉の部分
14 人差し指
15 みぞおち
16 臍
21 衣服
22 ポケット
23 手首
L1 共通の配線
L3,L4 配線
P 集計装置
S0 親機
S0a 収納部
S0b 操作パネル
S1 鼻呼吸量を計測する温度センサ
S2 口呼吸量を計測する温度センサ
S3 いびき音を計測する小型音響センサ
S4 血中酸素濃度を計測する光センサ
S5 胸部運動を計測する加速度センサ
S6 腹部運動を計測する加速度センサ
S10,S40 記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠時無呼吸症候群の診断のために複数台が同時に使用される睡眠時無呼吸検査用センサにおいて、
センシング部と、
時計部と、
記憶部と、
前記時計部の刻時動作に応答し、予め定める周期で前記センシング部にセンシングを行わせて、最初のセンシングデータを前記時計部の時刻データに対応付けて前記記憶部に格納し、その後の前記センシング部のセンシングデータを前記記憶部に格納してゆくとともに、外部入出力端から入出力される同期信号に応答して、前記時計部の時刻合せを行う制御部とを含むことを特徴とする睡眠時無呼吸検査用センサ。
【請求項2】
口鼻フローセンサ、いびき音センサ、血中酸素濃度センサ、胸部運動センサおよび腹部運動センサの少なくとも2つ以上の組合わせから成ることを特徴とする請求項1に記載の睡眠時無呼吸検査用センサ。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の睡眠時無呼吸検査用センサに、一式の該睡眠時無呼吸検査用センサを収納することができる収納部を有し、収納状態で前記各センサのセンシングデータを収集するとともに、前記同期信号を出力する親機を備えて成ることを特徴とする睡眠時無呼吸検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−320731(P2006−320731A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182682(P2006−182682)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【分割の表示】特願2005−147038(P2005−147038)の分割
【原出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】