説明

瞬低補償装置

【課題】蓄電部の充電初期に過電流が流れることを抑制することができる瞬低補償装置を提供する。
【解決手段】電源2からの交流電力を負荷3側に出力するスイッチング部4と、交流電力を直流電力に変換する変換部5と、直流電力により充電される蓄電部6と、スイッチング部4及び変換部5を制御する制御部7とを具備し、交流電力の電圧が低下した場合、制御部7により、スイッチング部4を遮断するとともに、蓄電部6の蓄電電力を交流電力に変換して負荷3側に出力するよう構成し、また、蓄電部6の充電を、所定時間T内で電力を供給する時間T1と電力を供給しない時間T2とを切り換えるとともに、所定時間T毎に切り換えを繰り返すことで行うよう構成した瞬低補償装置において、制御部7は、蓄電部6を充電するためにスイッチング部4及び変換部5を始動させてから所定時間T、蓄電部6に充電電流を流さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、瞬間的に電源電圧が低下又は停電した場合に電圧を補償し負荷への電力供給に影響が出ないようにする瞬低(瞬時電圧低下)補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
落雷等によって瞬間的に電源電圧が低下又は停電した際に、設備の稼働に障害が出るのを防止する目的で、近年、生産設備等の重要な負荷設備において、瞬低補償装置が導入されている。
【0003】
瞬低補償装置としては、入力(系統電源)と出力(負荷)との間に接続され、交互に導通(オン)することで系統電源からの交流電力を負荷に供給する交流スイッチ(逆並列接続したサイリスタ)と、瞬低時に直流電力を供給する蓄電部(例えば電気二重層コンデンサ)と、蓄電部からの直流電力を昇圧するチョッパ(DC−DCコンバータ)と、直流電力を交流電力に変換する変換器(インバータ)とから構成されたものが挙げられる(例えば特許文献1参照)。また、このような瞬低補償装置においては、インバータ及びチョッパをコンバータとして動作させることで、系統電源からの交流電力を直流電力に変換し、この直流電力を蓄電部に供給できるように構成されている。
【0004】
上記瞬低補償装置では、定常時においては、交流スイッチを介して系統電源からの交流電力を負荷に供給する。また、落雷等により系統電源に瞬間的に電圧低下又は停電が発生した場合には、交流スイッチを遮断(オフ)し、蓄電部の蓄電電圧(直流電圧)をチョッパ(DC−DCコンバータ)で昇圧し、さらにインバータで交流電圧に変換して交流電力を負荷に供給することにより瞬低時や停電時の電力供給を補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−10528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、直列接続されたスイッチング素子(IPM等の半導体素子)によって双方向のチョッパを構成した場合、蓄電部に充電電流を供給するにあたっては、予め設定した所定の周波数(スイッチング周波数)の1周期の間で、上記2つのスイッチング素子のオンオフを交互に切り換える、所謂スイッチング制御を行うが、従来、蓄電部を充電するために交流スイッチ、インバータ及びチョッパを始動させた直後の1周期目から蓄電部に充電電流を供給していた。
【0007】
そのため、瞬低補償装置を新たに設置した場合や瞬低補償装置のメンテナンス後等で、蓄電部の蓄電電圧がほとんど無い状態においては、チョッパの両端電圧と蓄電部の蓄電電圧との電位差によって、図5に示すように、充電初期に大電流が流れることとなっていた。また、チョッパの構成部品である直流リアクトルのインダクタンスによっても大電流が流れるため、瞬低補償装置を構成する各部品(例えばスイッチング素子)に過電流による異常が発生する虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題を解消して、蓄電部の充電初期に過電流が流れることを抑制することができる瞬低補償装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の瞬低補償装置は、電源2から交流電力が供給され負荷3側に交流電力を出力するスイッチング部4と、このスイッチング部4から出力される交流電力を直流電力に変換する変換部5と、この変換部5から出力される直流電力により充電される蓄電部6と、上記スイッチング部4及び上記変換部5を制御する制御部7とを具備し、上記電源2から上記スイッチング部4に供給される交流電力の電圧が低下した場合、上記制御部7により、上記スイッチング部4を遮断するとともに、上記蓄電部6の蓄電電力を上記変換部5で交流電力に変換して負荷3側に出力するように構成し、また、上記蓄電部6の充電を、所定時間T内で電力を供給する時間T1と電力を供給しない時間T2とを切り換えるとともに、所定時間T毎に上記切り換えを繰り返すことで行うよう構成した瞬低補償装置において、上記制御部7は、上記蓄電部6を充電するために上記スイッチング部4及び変換部5を始動させてから所定時間T、上記蓄電部6に充電電流を流さないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の瞬低補償装置によれば、蓄電部を充電するためにスイッチング部及び変換部を始動させてから所定時間、蓄電部に充電電流を流さないようにしているため、蓄電部の充電初期に、チョッパの両端電圧と蓄電部の蓄電電圧との電位差やチョッパの構成部品である直流リアクトルのインダクタンスによって、瞬低補償装置を構成する各部品(例えばスイッチング素子)に過電流が流れるのを抑制でき、異常が生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る瞬低補償装置の実施形態を示す回路図である。
【図2】チョッパ及び蓄電部を示す回路図である。
【図3】蓄電部の充電初期におけるスイッチング素子のオンオフ状態を示す図である。
【図4】蓄電部の充電時における電流の変化を示す図である。
【図5】従来の蓄電部の充電時における電流の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の瞬低補償装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の瞬低補償装置1は、図1に示すように、系統電源2(以下、交流電源と称す)から交流電力が供給され負荷3側に交流電力を出力するスイッチング部4(逆並列接続したサイリスタ:以下、交流スイッチと称す)と、この交流スイッチ4から出力される交流電力を直流電力に変換する変換部5と、この変換部5から出力される直流電力により充電される蓄電部6(電気二重層コンデンサ)と、交流スイッチ4及び変換部5を制御する制御部7とを備えている。なお、変換部5は、蓄電部6からの直流電力を昇圧するチョッパ5A(DC−DCコンバータ)と、直流電力を交流電力に変換する変換器5B(インバータ)とを備えている。また、チョッパ5Aは、図2に示すように、直流リアクトルL、平滑コンデンサC、互いに直列接続された第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2(IPM等の半導体素子)とを備えている。
【0013】
そして、上記交流スイッチ4、変換器5B、チョッパ5A、蓄電部6及び制御部7をそれぞれ接続することで瞬低補償装置1を構成している。具体的には、図1に示すように、交流スイッチ4は、交流電源2と負荷3との間に接続され、変換器5Bは、交流スイッチ4と負荷3との間から分岐した電力線に接続され、チョッパ5Aは変換器5Bに、蓄電部6はチョッパ5Aにそれぞれ接続されている。また、制御部7は、交流スイッチ4と、変換器5Bと、チョッパ5Aとにそれぞれ接続されており、交流スイッチ4や変換器5Bのオンオフ切換の他に、チョッパ5Aの構成部品である第1、第2スイッチング素子S1、S2のオンオフを行えるようになっている。また、制御部7は、電圧を検出する検出器を備えており、交流電源2と交流スイッチ4との間から分岐した電力線や、変換器5Bとチョッパ5Aとの間から分岐した電力線と接続されることで、交流電源2の電源電圧や、変換器5Bとチョッパ5Aの接続点の電圧を検出できるようになっている。
【0014】
上記瞬低補償装置1は、定常時においては、交流スイッチ4を交互に導通(オン)して交流電源2からの交流電力を負荷3に供給する。また、落雷等により交流電源2からの交流電力が電圧低下すると、制御部7の制御により、交流スイッチ4を遮断するとともに蓄電部6の蓄電電圧(直流電圧)をチョッパ5Aで昇圧し、さらに変換器5Bで交流電圧に変換して交流電力を負荷3に供給することにより瞬低時の電力供給を補償する。
【0015】
さらに、上記瞬低補償装置1では、定常時に、変換部5をコンバータ運転することによって、交流スイッチ4から出力される交流電力を直流電力に変換し、この直流電力を蓄電部6に供給する。なお、蓄電部6へ直流電力を供給するにあたっては、所定時間T内で電力を供給する時間T1と電力を供給しない時間T2とを切り換えるとともに、所定時間T毎に上記切り換えを繰り返すことで行う。
【0016】
具体的には、制御部7の制御によって、予め設定された所定の周波数(スイッチング周波数)の1周期T内で、第1、第2スイッチング素子S1、S2のオンオフを交互に切り換える、すなわち、スイッチング周波数の1周期T内で、電力を供給する時間T1と電力を供給しない時間T2とを切り換えるとともに、周期毎にその切り換えを繰り返すことで、蓄電部6に直流電力(充電電流)を供給する(所謂スイッチング制御)。なお、図2において、上側に位置された第1スイッチング素子S1をオンとし、下側に位置された第2スイッチング素子S2をオフとした場合に蓄電部6に充電電流が供給され、第1スイッチング素子S1をオフとし、第2スイッチング素子S2をオンとした場合には蓄電部6への充電電流の供給は行われない。
【0017】
また、蓄電部の蓄電電圧が予め設定している設定値より小さい場合、例えば、瞬低補償装置1を新たに設置した場合や、瞬低補償装置1のメンテナンス後等、蓄電部6の蓄電電圧がほとんど無い場合においては、蓄電部6を充電するために交流スイッチ4、変換器5B及びチョッパ5Aを始動(充電開始)させてから、スイッチング周波数の1周期Tの間は、蓄電部6への充電電流の供給は行わず、それ以降に、スイッチング周波数の1周期T内で、電力を供給する時間T1と電力を供給しない時間T2とを切り換えるとともに、周期毎にその切り換えを繰り返すことで、充電電流の供給を行い、蓄電部6の充電を行う。
【0018】
具体的には、図3に示すように、蓄電部6を充電するために交流スイッチ4、変換器5B及びチョッパ5Aを始動させてから、スイッチング周波数の1周期Tの間は、第1スイッチング素子S1をオフ、第2スイッチング素子S2をオンとして蓄電部6への充電電流の供給は行わず、2周期以降、各周期内で第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2のオンオフを繰り返すことで、蓄電部6への充電電流の供給を行う。なお、2周期以降は、図3に示すように、1周期のうちの前半に第1スイッチング素子S1のオン時間T1を設け、後半に第2スイッチング素子S2のオン時間T2を設ける制御を行う。
【0019】
そして、上記制御によれば、図4に示すように、充電初期に、チョッパ5Aの両端電圧(平滑コンデンサCの電圧)と蓄電部6の蓄電電圧との電位差及び直流リアクトルLのインダクタンスによって過電流が流れることを抑制することができ、瞬低補償装置1の構成部品、例えば第1、第2スイッチング素子S1、S2の過電流による異常を防ぐことができる。
【0020】
なお、瞬低補償装置1の点検後や瞬低補償後等、蓄電部6の蓄電電圧がある程度保持されている場合もある。この場合、平滑コンデンサCの設定電圧と蓄電部6の蓄電電圧の差が大きいとき、すなわち、蓄電部6の蓄電電圧が小である場合には、第1スイッチング素子S1のオン時間T1を小(例えば、1周期Tの0から1/2までの時間)からはじめ、平滑コンデンサCの設定電圧と蓄電部6の蓄電電圧の差が小さいとき、すなわち、蓄電部6の蓄電電圧が大である場合には、第1スイッチング素子S1のオン時間T1を大(例えば、1周期Tの1/2以上の時間)からはじめても良い。この場合においては、過電流の発生を抑制しながらも、充電完了までにかかる時間をより短縮することができる。なお、この場合においても、蓄電部6を充電するために交流スイッチ4、変換器5B及びチョッパ5Aを始動させてから、スイッチング周波数の1周期Tは、蓄電部6に充電電流を供給せず、それ以降、1周期のうちの前半に第1スイッチング素子S1のオン時間T1を設け、後半に第2スイッチング素子S2のオン時間T2を設けるといった制御を行う。蓄電部6の蓄電電圧を把握する方法としては、例えば、制御部7と蓄電部6とを接続し、制御部7で把握するように構成しても良いし、別途、電圧検出手段(図示しない)を設けても良い。
【0021】
以上に、この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施例においては、蓄電部6として、電気二重層コンデンサが用いられていたが、電解コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ等種々のものを用いることができる。また、図3において、蓄電部6の蓄電電圧の増加に伴い、充電電流の供給時間T1も増加させていたが、平滑コンデンサCの設定電圧と蓄電部6の蓄電電圧の差が小さく、第1スイッチング素子S1のオン時間T1を充電初期から大としている場合等、これ以上、充電電流の供給時間を増やす必要の無い場合には、蓄電部6の蓄電電圧の増加に合わせて、第1スイッチング素子S1のオン時間T1を増加する必要は無く、一定値を保つようにしても良い。
【符号の説明】
【0022】
1・・瞬低補償装置、2・・系統電源(交流電源)、3・・負荷、4・・スイッチング部(交流スイッチ)、5・・変換部、6・・蓄電部、7・・制御部、T・・所定時間(スイッチング周波数の1周期)、T1・・電力を供給する時間、T2・・電力を供給しない時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(2)から交流電力が供給され負荷(3)側に交流電力を出力するスイッチング部(4)と、このスイッチング部(4)から出力される交流電力を直流電力に変換する変換部(5)と、この変換部(5)から出力される直流電力により充電される蓄電部(6)と、上記スイッチング部(4)及び上記変換部(5)を制御する制御部(7)とを具備し、上記電源(2)から上記スイッチング部(4)に供給される交流電力の電圧が低下した場合、上記制御部(7)により、上記スイッチング部(4)を遮断するとともに、上記蓄電部(6)の蓄電電力を上記変換部(5)で交流電力に変換して負荷(3)側に出力するように構成し、また、上記蓄電部(6)の充電を、所定時間(T)内で電力を供給する時間(T1)と電力を供給しない時間(T2)とを切り換えるとともに、所定時間(T)毎に上記切り換えを繰り返すことで行うよう構成した瞬低補償装置において、上記制御部(7)は、上記蓄電部(6)を充電するために上記スイッチング部(4)及び変換部(5)を始動させてから所定時間(T)、上記蓄電部(6)に充電電流を流さないことを特徴とする瞬低補償装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−106393(P2013−106393A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247296(P2011−247296)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】