説明

短絡部材、短絡部材付電線、ジョイントコネクタおよび短絡方法

【課題】構造を簡素化できるとともに各電線の接続信頼性を向上させることのできる短絡部材を提供する。
【解決手段】複数の電線1を短絡させるための短絡部材30であって、前記複数の電線1のうち特定の電線1aを圧着するための圧着部32と、前記複数の電線1のうち前記特定の電線1a以外の電線1bの端末にそれぞれ接続された複数の端子40と嵌合することにより当該端子40と電気的に接続可能な電気接続部34とを設け、前記圧着部32と前記電気接続部34とを、金属部材により一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子を短絡させることのできる短絡部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の電気系統において一つの信号を複数の信号路に分岐させるためのコネクタとして、前記のような複数の端子を短絡させることのできるジョイントコネクタが各種開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数の電線にそれぞれ接続される複数の端子と、絶縁ハウジングと、リテーナと、短絡部材とを備えたジョイントコネクタが開示されている。
【0004】
前記絶縁ハウジングは前記複数の端子を収容するためのものであり、当該各端子を挿入可能な複数の端子収容室を有している。前記短絡部材は前記端子収容室に挿入された端子同士を短絡させるためのものであり、各端子と嵌合可能な複数の嵌合部を有している。このジョイントコネクタは、短絡させたい全ての電線に端子をそれぞれ接続した後、各端子を前記端子収容室に挿入して前記嵌合部にそれぞれ嵌合させることで、各端子に接続される電線同士を短絡させる。そして、前記リテーナを前記絶縁ハウジングに係止することで、各端子を前記嵌合部との嵌合位置で係止する。
【特許文献1】特開2002−184505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のジョイントコネクタでは、電線数に相当する個数の端子とこれらと同数の極をもつ短絡部材とを設ける必要があり、その構造の簡素化が求められる。また、全ての電線と短絡部材との接続が前記各端子と各電気接続部との雌雄嵌合により行われていて、当該嵌合による接続箇所が多いので、その接続信頼性の向上も求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、構造を簡素化できるとともに各電線の接続信頼性を向上させることのできる短絡部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、複数の電線を短絡させるための短絡部材であって、前記複数の電線のうち特定の電線を圧着するための圧着部と、前記複数の電線のうち前記特定の電線以外の電線の端末にそれぞれ接続された複数の端子と嵌合することにより当該端子と電気的に接続可能な電気接続部とを備え、前記圧着部と前記電気接続部とが、金属部材により一体に形成されていることを特徴とする短絡部材を提供する(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、複数の電線のうち前記特定の電線は、前記短絡部材に設けられた圧着部に直接圧着されることによりこの短絡部材に直接的に接続されるので、その分、端子と電気接続部との嵌合による接続箇所が削減される。このことは、短絡回路における接続信頼性を向上させる。また、嵌合箇所の削減は、構造の簡素化にもつながる。
【0009】
また本発明において、前記電気接続部に嵌合された前記複数の端子をその嵌合位置でそれぞれ係止する複数の端子係止部を有し、当該端子係止部が、前記圧着部および前記電気接続部と一体に金属部材により形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
このようにすれば、前記端子係止部によって前記複数の端子を前記電気接続部と嵌合した状態で係止することができるので、これらの端子を係止するために別途リテーナ等を設ける必要がなくなり部品点数を削減することができる。特に、前記端子係止部は金属製であり、この端子係止部を合成樹脂等で形成する場合に比べて剛性を高めることができるので、各端子との係合力を確保することが可能となる。
【0011】
また本発明において、前記各端子係止部は、前記電気接続部と対向する位置に設けられ、前記各端子を係止可能な係止位置と、この係止位置から前記電気接続部から離間する方向に退避して前記各端子の係止状態を解除する係止解除位置との間で弾性変形可能な形状を有しているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
このようにすれば、前記端子係止部を前記係止解除位置に移動させつつ各端子を端子係止部により係止される位置に配置すればよいので、各端子を前記端子係止部により係止される位置に容易に配置することができ、各端子を当該端子係止部によって容易に係止することが可能となる。特に、この端子係止部は金属性であり、この端子係止部を合成樹脂等で形成する場合に比べて、金属製の端子との摩擦抵抗を小さくすることができるので、各端子をより容易に前記端子係止部によって係止される位置に配置することができる。
【0013】
また本発明は、前記短絡部材と、特定の電線とを有し、当該特定の電線が前記電気接続部と導通可能に前記圧着部に圧着されていることを特徴とする短絡部材付電線を提供する(請求項4)。
【0014】
このような短絡部材付電線によれば、前記電気接続部に他の電線の端末に接続された端子を嵌合させるだけで、前記特定の電線と他の電線とを容易に短絡させることが可能となる。
【0015】
また本発明は、前記特定の電線以外の複数の電線の端末にそれぞれ接続された複数の端子と、前記電線付き短絡部材を収容する絶縁ハウジングとを備え、当該絶縁ハウジングは、前記短絡部材を収容可能な収容部と、前記短絡部材の圧着部に圧着されている前記特定の電線を前記絶縁ハウジングの外側に案内する電線案内部と、前記各端子を、前記短絡部材の電気接続部に案内する複数の端子挿通孔と、前記短絡部材を、前記収容部に収容された状態で係止可能な短絡部材係止部とを有することを特徴とするジョイントコネクタを提供する(請求項5)。
【0016】
このようなジョイントコネクタによれば、前記収容部により前記短絡部材の外部への露出を回避しつつ、各端子を前記端子挿通孔に挿通することでこれら端子と電気接続部との嵌合を容易に行うことが可能となる。また、前記短絡部材係止部により前記短絡部材を前記収容部に収容した状態で係止することができるので、前記短絡部材の電気接続部に各端子を安定した状態で嵌合させることができる。
【0017】
また本発明は、前記短絡部材の圧着部に前記特定の電線を圧着する圧着工程と、当該特定の電線が圧着された短絡部材を、この圧着された特定の電線を前記絶縁ハウジングの電線案内部に案内させつつ前記絶縁ハウジングの収容部の内側に挿入するとともに、当該収容部の内側に挿入された短絡部材を前記絶縁ハウジングの短絡部材係止部によって係止する短絡部材収容工程と、前記特定の電線以外の複数の電線の端末にそれぞれ接続された複数の端子を、前記絶縁ハウジングの端子挿通孔に挿通させて前記短絡部材の電気接続部にそれぞれ嵌合させ、当該嵌合により前記短絡部材を介して前記特定の電線および前記各端子が接続された複数の電線同士を短絡させる短絡工程とを備える短絡方法を提供する(請求項6)。
【0018】
この方法によれば、前記圧着工程にて前記圧着部に特定の電線を圧着した後、この特定の電線が接続された短絡部材を前記絶縁ハウジングの収容部に収容するので、前記特定の電線を容易に短絡部材に圧着することができる。そして、この絶縁ハウジングの端子挿通孔に各端子を挿通してこれらの端子を前記短絡部材の電気接続部に嵌合させることで、前記特定の電線と各端子に接続される電線同士を容易に短絡させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成で接続信頼性を向上させることのできる短絡部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る短絡部材を有するジョイントコネクタの第一の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るジョイントコネクタの概略斜視図である。図2は、図1において後述する絶縁ハウジングを透視した状態で示す前記ジョイントコネクタの概略斜視図であり、図3は前記短絡部材の概略斜視図であり、図4は図1の横断面図であり、図5は図1の縦断面図である。これらの図に示すように、本ジョイントコネクタ10は、合成樹脂等からなる絶縁ハウジング20と、バスバー(短絡部材)30と、当該バスバー30に圧着される第一の電線(特定の電線)1aと、複数の第二の電線1bの端末にそれぞれ接続される複数の金属製の端子40とを有している。本ジョイントコネクタ10は、前記バスバー30を介して前記第一の電線1aと、各端子40に接続される複数の第二の電線1b同士を電気的に短絡させるためのものである。
【0022】
前記端子40は、図2等に示すように、導電性の金属板が折り曲げられることにより形成されており、接触部41と、バレル部42とを有している。
【0023】
前記バレル部42は、第二の電線1bの端末に圧着される部分である。前記接触部41は、後述するバスバー30の電気接続部34とそれぞれ嵌合し、バスバー30と電気的に接続する部分である。この接触部41は、角筒状の本体41bと、この本体41b内に形成される接触ばね片41aとを有しており、本体41bの前側の開口部から前記電気接続部34が挿入されることでこの電気接続部34と電気的に接続する。また、この接触部41には、その外側面から突出して、後述するバスバー30の端子係止部36に設けられた端子係止孔36aと係合する端子被係止突起44が設けられている。
【0024】
前記バスバー30は、第一の電線1aと各第二の電線1b同士を短絡させるためのものであり、1枚の金属板から形成されている。このバスバー30は、図3に示すように、圧着部32と、電気接続部34と、端子係止部36と、湾曲部37と、絶縁ハウジング被係止部38と、連結板39とを有している。
【0025】
具体的には、端子挿入方向と垂直な方向に延びる前記連結板39の長手方向の一端に、前記圧着部32と絶縁ハウジング被係止部38とが形成されている。一方、前記連結板39の長手方向の他端には、前記電気接続部34、端子係止部36および湾曲部37が形成されている。具体的には、前記連結板39の他端のうち端子挿入方向の一方の縁部からは、端子挿入方向と平行に複数の電気接続部34が突出している。そして、他方の縁部からは、各電気接続部34と対向する位置に上方に向けて湾曲する前記湾曲部37がそれぞれ形成されている。そして、各湾曲部37からは端子挿入方向に突出し、前記電気接続部34と対向する位置にそれぞれ前記端子係止部36が設けられている。
【0026】
前記圧着部32は、前記第一の電線1aを圧着するためのものである。この圧着部32は、端子挿入方向に延びる底面部32cと、左右のワイヤバレル部32bと左右のインシュレーションバレル部32aとを有している。前記ワイヤバレル部32bは、第一の電線1aの被覆部に圧着されるものであり、それぞれ圧着部32の底面部32cの両端から上方に延び、かつ、前記第一の電線1aの被覆部を抱え込むようにして折り曲げられて当該被覆部に圧着される。前記インシュレーションバレル部32aは、第一の電線1aの導体部分に圧着されるものであり、それぞれ前記圧着部32の底面部32cの両端から上方に延び、かつ、前記第一の電線1aの導体部分を抱え込むようにして折り曲げられて当該導体部分に圧着される。第一の電線1aは、このようにしてバレル部32a,32bに圧着されることで、圧着部32に電気的に接続された状態で保持される。
【0027】
前記電気接続部34は、前記第二の電線1bに接続された各端子40と嵌合する雄型の端子であり、各端子40と同数設けられている。これら電気接続部34は、図5等に示すように、各端子40の接触部41の本体41b内に挿入され、これら本体41bに設けられた接触ばね片41aと接触することで、各端子40と電気的に接続する。各電気接続部34は、前記のように連結板39に設けられており、この連結板39を介して導通している。従って、複数の端子40が各電気接続部34に嵌合されこの電気接続部34にそれぞれ電気的に接続されると、これら端子40同士は短絡する。
【0028】
また、これら電気接続部34は前記連結板39を介して前記圧着部32と導通しているので、各電気接続部34に嵌合された各端子40はこの連結板39を介して圧着部32に接続された第一の電線1aと電気的に接続され、全ての電線1が短絡する。
【0029】
前記端子係止部36は、各電気接続部34にそれぞれ嵌合した前記各端子40をその嵌合位置で係止するためのものである。各端子係止部36は、その一端が湾曲部37とつながっており、他端が上下方向に弾性変位(たわみ)可能な形状を有している。これら端子係止部36には、上下に貫通する端子係止孔36aがそれぞれ形成されており、この端子係止孔36aと各端子40に設けられた前記端子被係止突起44とが係合することで、各端子係止部36が各端子40を前記嵌合位置で係止する。
【0030】
また、この端子係止部36は、前記のように上下方向に弾性変形することで、前記端子40の係止が可能な係止位置と、この係止位置から退避して前記端子40の係止状態を解除する係止解除位置との間で変位する。従って、前記各端子40を前記電気接続部34と嵌合する際には、各端子40の前端部でこの端子係止部36を前記係止解除位置に変位させつつ比較的容易に嵌合させることができる。
【0031】
前記絶縁ハウジング被係止部38は、バスバー30を絶縁ハウジング20に係止するためのものである。この絶縁ハウジング被係止部38は、前記圧着部32の底面部32cの端部から上方に突出するとともに、端子挿入方向前方に延びて、その前端部で後方に折れ曲がる形状を有している。この絶縁ハウジング被係止部38は、この折れ曲がり部分と後述する絶縁ハウジング20のバスバー係止部28とが係合することで、バスバー30を絶縁ハウジング20に係止する。また、この絶縁ハウジング被係止部38は、その前端部が端子挿入方向と垂直な方向に弾性変形可能な形状を有しており、この前端部が弾性変形した状態で、後述する絶縁ハウジング20の電線案内部24に挿入される。
【0032】
前記絶縁ハウジング20は、略直方体の形状を有しており、収容部22と、電線案内部24と、複数の端子挿通孔26と、バスバー係止部28とを有している。
【0033】
前記収容部22は、バスバー30を収容する部分である。この収容部22は、絶縁ハウジング20の前側に設けられており、その周囲が外壁で囲まれるとともに、端子挿入方向に開口するような形状を有している。
【0034】
前記電線案内部24は、バスバー30の圧着部32に圧着された前記第一の電線1aを絶縁ハウジング20の外側に案内するためのものである。この電線案内部24は、前記収容部22から後方に向けて貫通する貫通孔であり、第一の電線1a及び圧着部32を挿入可能な形状を有している。
【0035】
前記端子挿通孔26は、各端子40を前記収容部22に収容されたバスバー30の各電気接続部34との嵌合位置に案内するためのものである。この端子挿通孔26は、前記収容部22のうち各電気接続部34が収容される部分から後方に向けて貫通しており、各端子40を挿入可能な形状を有している。
【0036】
また、前記電線案内部24および各端子挿通孔26は互いに連通しており、前記バスバー30を収容部22に向けて挿入可能となっている。
【0037】
前記バスバー係止部28は、前記収容部22に収容されたバスバー30をこの収容部22に収容した状態で係止するためのものである。このバスバー係止部28は、前記電線案内部24の側壁から端子挿入方向と垂直な方向に凹む形状を有しており、この側壁部との間に形成された段部と前記バスバー30の絶縁ハウジング被係止部38とが係合することで、このバスバー30を係止する。ここで、絶縁ハウジング被係止部38は、前記電線案内部24に弾性変形した状態で挿入され、前記バスバー係止部28にてその弾性変形状態が解除されることで、端子挿入方向と垂直な方向に広がり、このバスバー係止部28の前記段部と係合する。
【0038】
次に、このジョイントコネクタ10を用いて、第一の電線1aと各端子40に接続された第二の電線1b同士とを短絡させる短絡方法について説明する。
【0039】
まず、バスバー30の圧着部32に第一の電線1aを圧着し、バスバー付電線(短絡部材付電線)を形成する。具体的には、第一の電線1aの端末において、その被覆部を切除し導体部分を露出させ、この露出した導体部分を前記ワイヤバレル部32bに圧着し、被覆部を前記インシュレーションバレル部32aに圧着する(圧着工程)。
【0040】
次に、このバスバー付電線を前記絶縁ハウジング20の収容部22に収容する。具体的には、前記電線案内部24に、前記絶縁ハウジング被係止部38を弾性変形させた状態で、この絶縁ハウジング被係止部38と圧着部32と第一の電線1aとを挿入し、前記端子挿通孔26に各電気接続部34と湾曲部37と端子係止部36とを挿入する。そして、バスバー30を、前記第一の電線1aが前記電線案内部24において外側に案内された状態で、収容部22に収容し、前記絶縁ハウジング被係止部38と前記バスバー係止部28とを係合して、バスバー30を収容部22内に係止する(短絡部材収容工程)。
【0041】
次に、複数の第二の電線1bの端末に予め接続しておいた複数の端子40を前記各端子挿通孔26に挿入し、バスバー30の各電気接続部34にそれぞれ嵌合させる。具体的には、各端子40を、その前端部で前記端子係止部36を上方すなわち係止解除位置に変位させつつ挿入する。このとき、各端子40の接触部41には前記バスバー30の電気接続部34が挿入され、各接触部41と電気接続部34とが嵌合することで、各端子40とバスバー30とが電気的に接続される。このように、バスバー30に各端子40をそれぞれ接続することで、各端子40同士を前記連結板39を介して短絡させる。そして、この端子係止部36に設けられた端子係止孔36aと各端子40に設けられた端子被係止突起44とを係合させ、各端子40を前記嵌合状態にてバスバー30に係止する。このとき、これら端子40と前記圧着部32に圧着された第一の電線1aとが連結板39を介して相互に電気的に接続されるので、これら端子40に接続された第二の電線1bと第一の電線1aとが短絡する(短絡工程)。
【0042】
このようにして、本ジョイントコネクタ10を用いれば、複数の電線1aと1bとを容易に短絡させることができる。
【0043】
次に、本発明に係る短絡部材を有するジョイントコネクタの第二の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0044】
図6は、本実施形態に係るジョイントコネクタの概略斜視図である。図7は、図6において絶縁ハウジングを透視した状態で示す前記ジョイントコネクタの概略斜視図であり、図8は前記短絡部材の概略斜視図であり、図9は図6の縦断面図である。これらの図に示すように、本ジョイントコネクタ110は、絶縁ハウジング120と、バスバー(短絡部材)130と、当該バスバー130に圧着される第一の電線(特定の電線)1aと、複数の第二の電線1bの端末がそれぞれ接続される複数の金属製の端子140とを有している。
【0045】
前記バスバー130は、角筒状を有する角筒部139と、圧着部132と、複数の端子係止部136とを有している。この角筒部139は、底面部139cと、この底面部139cの両縁から上方に延びる側壁部139dと、この側壁部139dが折り曲げられることで形成された上壁139eとからなる。前記圧着部132は、この角筒部139の一端に形成されており、前記複数の端子係止部136は、前記角筒部139の上壁139eから延びる板状部材が角筒部139の内側にそれぞれ折り曲げられることにより形成されている。また、この角筒部139の底面部139cは、電気接続部134として機能する。
【0046】
この底面部139cすなわち電気接続部134と前記端子係止部136とは、各端子140と嵌合する嵌合部分を形成している。具体的には、各端子140は、この電気接続部134と端子係止部136との間に挿入され、電気接続部134と端子係止部136とによって挟み込まれる。これが、各端子140と電気接続部134および端子係止部136との嵌合を意味する。すなわち、図7等に示すように、本実施形態では、各端子140は前記電気接続部134と端子係止部136との間に嵌入される雄型嵌合部として機能し、前記電気接続部134と端子係止部136とは、その間に各端子140の嵌入を許容する雌型嵌合部として機能する。
【0047】
ここで、前記端子140は、図7および図9に示すように、第一の実施形態の端子40と同様に、接触部141と、第二の電線1bの端末に圧着されるインシュレーションバレル部142aおよびワイヤバレル部142bからなるバレル部142と、前記接触部141から突出する端子被係止突起144とを有している。しかしながら、本実施形態における各端子140は、前記のように雄型として機能するものであるため、接触ばね片41aは有しない。その代わり、前記接触部141が、前記バスバー130の角筒部139内の前記電気接続部134と端子係止部136との間に嵌入され、その底面と電気接続部134とが接触することで、電気接続部134と電気的に接続される。
【0048】
前記端子係止部136は、前記電気接続部134とともに嵌合部分を構成するのに加え、その嵌合位置で各端子140を係止する機能を有する。この端子係止部136には、上下に貫通する端子係止孔136aが形成されており、この端子係止孔136aと各端子140の端子被係止突起144とが係合することで、各端子140は前記嵌合位置で係止される。また、この端子係止部136は、上下方向に弾性変形し、前記第一の実施形態と同様に、端子係止位置と係止解除位置との間で変位する。従って、各端子140と前記嵌合部分とを嵌合する際には、各端子140の前端部でこの端子係止部136を係止解除位置に変位させつつ容易に嵌合することができる。
【0049】
前記圧着部132は、第一の電線1aに圧着されるものであり、底面部132cと、バレル部132a、132bとを有している。この底面部132cは、前記角筒部139の底面部139cからその軸方向と平行な方向に延び、前記バレル部132a、132bは、前記角筒部139の側壁部139dに連なっている。従って、この圧着部132と第一の電線1aとの圧着により、第一の電線1aは前記電気接続部134と電気的に接続される。
【0050】
前記絶縁ハウジング120は、第一の実施形態と同様に、略直方体の形状を有しており、収容部122と、電線案内部124と、端子挿通孔126と、バスバー係止部(短絡部材係止部)128とを有している。
【0051】
本実施形態における収容部122は、絶縁ハウジング120の略中央付近に設けられている。また、前記電線案内部124と端子挿通孔126は、収容部122の端子挿入方向のそれぞれ反対側から外側に向けて延びており、電線案内部124に案内される第一の電線1aと端子挿通孔126に挿通される端子140に接続される第二の電線1bとが、異なる方向に延びるようになっている。また、本実施形態のバスバー係止部128は、前記収容部122の上面に設けられており、前記バスバー130の角筒部139の端部と係合することで、バスバー130を収容部122の内側に収容した状態で係止するよう構成されている。具体的には、収容部122の底面に上方に突出する段部129が形成されており、この段部129とバスバー130とを当接させた状態で前記バスバー係止部128とバスバー130の角筒部139の端部とを係合することで、バスバー130を収容部122の内側に係止する。このバスバー係止部128は、上下方向に弾性変形(たわみ)可能な形状を有しており、上方に変位した状態でバスバー130を収容部122内に挿入できるようになっている。
【0052】
次に、このジョイントコネクタ110を用いて第一の電線1aと各端子140に接続された第二の電線1b同士とを短絡させる短絡方法について説明する。
【0053】
まず、第一の実施形態と同様に、バスバー130の圧着部132に第一の電線1aを圧着する(圧着工程)。次に、このバスバー付電線を、第一の電線1aを前記電線案内部124に案内させつつ、絶縁ハウジング120の収容部122の内側に挿入する。具体的には、バスバー130の角筒部139を、その端部で前記バスバー係止部128を上方に変位させつつ挿入していく。そして、このバスバー係止部128と角筒部139の端部とを係合させてバスバー130を収容部122内に収容された状態で係止する(短絡部材収容工程)。
【0054】
次に、各端子140を端子挿通孔126に挿入し、前記電気接続部134と端子係止部136との間にそれぞれ嵌入して、この電気接続部134と端子係止部136とにより形成された嵌合部分に嵌合させる。具体的には、各端子140を、その前端部で前記端子係止部136を上方に変位させつつこの端子係止部136と電気接続部134との間に挿入する。そして、この端子係止部136の端子係止孔136aと各端子140の端子被係止突起144とを係合して、各端子140を電気接続部134と端子係止部136との間で挟み込み、各端子140と電気接続部134とが電気的に接続された状態で係止する。こうして、各端子140を、この電気接続部134を介して互いに短絡させる。このとき、前記第一の電線1aは電気接続部134と導通可能に接続されているので、各端子140とこの第一の電線1aとは電気的に接続され、これら端子140に接続された複数の第二の電線1bと第一の電線1a同士も短絡する(短絡工程)。
【0055】
以上のように、前記ジョイントコネクタに用いた本発明に係るバスバー30(130)によれば、短絡させたい複数の電線1のうち第一の電線1aが、バスバー30(130)の圧着部32(132)に直接圧着されることによりこのバスバー30(130)に直接的に接続されるので、その分、端子40(140)と電気接続部34(134)との嵌合による接続箇所を削減することができる。その結果、バスバー30(130)に対する電線1の接続信頼性を向上させることができるとともに、バスバー30(130)の構造を簡素化することが可能となる。
【0056】
また、電気接続部34(134)に嵌合された複数の端子40(140)をその嵌合位置で係止する端子係止部36(136)を電気接続部34(134)と一体に形成すれば、各端子40(140)を係止するために別途リテーナ等を別途設ける必要がなくなり部品点数を削減することができる。特に、端子係止部36(136)が金属製であるので、端子係止部36(136)の剛性を合成樹脂等で形成する場合に比べて高めることができ、各端子40(140)との係合力を確保することが可能となる。
【0057】
また、前記端子係止部36(136)を、前記各端子40(140)を係止可能な係止位置と、この係止位置から前記電気接続部34(134)から離間する方向に退避して前記各端子の係止状態を解除する係止解除位置との間で弾性変形可能な形状とすれば、各端子40(140)を容易に係止位置に配置することができ、各端子40(140)を容易に係止することが可能となる。特に、端子係止部36(136)が金属製であるので、金属製の端子40(140)との摩擦抵抗を小さくすることができ、各端子40(140)をより容易に係止位置に配置することができる。
【0058】
また、バスバー130を有するジョイントコネクタ10(110)において、バスバー30(130)を収容する絶縁ハウジング20(120)を設け、この絶縁ハウジング20(120)に、収容部22(122)と、電線案内部24(124)と、端子挿通孔26(126)と、バスバー係止部28(128)とを設ければ、前記収容部22(122)内にバスバー30(130)を収容することでバスバー30(130)の外部への露出を回避しつつ、各端子40(140)を端子挿通孔26(126)に挿通させることでこれら端子40(140)と電気接続部34(134)との嵌合を容易に行うことができ、電線1同士を容易に短絡させることが可能となる。また、前記バスバー係止部28(128)によりバスバー30(130)を係止すれば、このバスバー30(130)を安定した状態で絶縁ハウジング20(120)内に収容させることが可能となる。
【0059】
また、電線1同士を短絡させる方法として、前記のような圧着工程、短絡部材収容工程、短絡工程とを備える短絡方法を用いれば、圧着工程にて前記圧着部32(132)に第一の電線1aを圧着した後、前記短絡部材収容工程にて前記第一の電線1aが圧着されたバスバー30(130)を絶縁ハウジング20(120)の収容部22(122)に収容するので、第一の電線1aを容易に、かつ、確実にバスバー30(130)に接続することができる。そして、前記短絡工程にて、絶縁ハウジング20(120)の端子挿通孔26(126)に各端子40(140)を挿入してこれら端子40(140)を電気接続部34(134)に嵌合させることで、これら端子40(140)同士を短絡させるとともに、これら端子40(140)に接続される第二の電線1bと第一の電線1aとをバスバー30(130)を介して短絡させることができる。
【0060】
ここで、前記圧着部32(132)、電気接続部34(134)および端子40(140)の個数は前記に限らず、例えば圧着部32(132)を2つ以上設け、2本以上の第一の電線1aを圧着部32(132)に圧着するようにしてもよい。
【0061】
また、前記圧着部32(132)の構造は前記に限らず、第一の電線1aを圧着できるものであればよい。また前記電気接続部34(134)の構造も前記に限らず、各端子40(140)と電気的に接続可能であればよい。
【0062】
また、前記端子係止部36(136)は省略可能である。また、端子係止部36(136)を設ける場合であっても、その構造は前記に限らず、各端子40(140)を前記電気接続部34(134)との嵌合位置で係止できるものであればよい。
【0063】
また、前記絶縁ハウジング20(120)のバスバー係止部28(128)の構造は前記に限らず、バスバー30(130)を収容部22(122)に収容した状態で係止できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るジョイントコネクタの概略斜視図である。
【図2】図1に示すジョイントコネクタの絶縁ハウジングを透視した状態での斜視図である。
【図3】図1に示すジョイントコネクタに設けられるバスバーの概略斜視図である。
【図4】図1の横断面図である。
【図5】図1の縦断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係るジョイントコネクタの概略斜視図である。
【図7】図6に示すジョイントコネクタの絶縁ハウジングを透視した状態での斜視図である。
【図8】図6に示すジョイントコネクタに設けられるバスバーの概略斜視図である。
【図9】図6の縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 電線
1a 第一の電線(特定の電線)
1b 第二の電線
10 ジョイントコネクタ(第一の実施形態)
20 絶縁ハウジング
22 収容部
24 電線案内部
26 端子挿通孔
28 バスバー係止部(短絡部材係止部)
30 バスバー(短絡部材)
32 圧着部
34 電気接続部
36 端子係止部
38 絶縁ハウジング被係止部
40 端子
110 ジョイントコネクタ(第二の実施形態)
120 絶縁ハウジング
122 収容部
124 電線案内部
126 端子挿通孔
128 バスバー係止部(短絡部材係止部)
130 バスバー(短絡部材)
132 圧着部
134 電気接続部
136 端子係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を短絡させるための短絡部材であって、
前記複数の電線のうち特定の電線を圧着するための圧着部と、
前記複数の電線のうち前記特定の電線以外の電線の端末にそれぞれ接続された複数の端子と嵌合することにより当該端子と電気的に接続可能な電気接続部とを備え、
前記圧着部と前記電気接続部とが、金属部材により一体に形成されていることを特徴とする短絡部材。
【請求項2】
請求項1に記載の短絡部材であって、
前記電気接続部に嵌合された前記複数の端子をその嵌合位置でそれぞれ係止する複数の端子係止部を有し、
当該端子係止部が、前記圧着部および前記電気接続部と一体に金属部材により形成されていることを特徴とする短絡部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の短絡部材であって、
前記各端子係止部は、前記電気接続部と対向する位置に設けられ、前記各端子を係止可能な係止位置と、この係止位置から前記電気接続部から離間する方向に退避して前記各端子の係止状態を解除する係止解除位置との間で弾性変形可能な形状を有していることを特徴とする短絡部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の短絡部材と、
特定の電線とを有し、
当該特定の電線が前記電気接続部と導通可能に前記圧着部に圧着されていることを特徴とする短絡部材付電線。
【請求項5】
請求項4に記載の短絡部材付電線を有するジョイントコネクタであって、
前記特定の電線以外の複数の電線の端末にそれぞれ接続される複数の端子と、
前記電線付き短絡部材を収容する絶縁ハウジングとを備え、
当該絶縁ハウジングは、
前記短絡部材を収容可能な収容部と、
前記短絡部材の圧着部に圧着されている前記特定の電線を前記絶縁ハウジングの外側に案内する電線案内部と、
前記各端子を、前記短絡部材の電気接続部に案内する複数の端子挿通孔と、
前記短絡部材を、前記収容部に収容された状態で係止可能な短絡部材係止部とを有することを特徴とするジョイントコネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のジョイントコネクタを用いて、前記短絡部材により前記複数の電線同士を短絡させる短絡方法であって、
前記短絡部材の圧着部に前記特定の電線を圧着する圧着工程と、
当該特定の電線が圧着された短絡部材を、この圧着された特定の電線を前記絶縁ハウジングの電線案内部に案内させつつ前記絶縁ハウジングの収容部の内側に挿入するとともに、当該収容部の内側に挿入された短絡部材を前記絶縁ハウジングの短絡部材係止部によって係止する短絡部材収容工程と、
前記特定の電線以外の複数の電線の端末にそれぞれ接続された複数の端子を、前記絶縁ハウジングの端子挿通孔に挿通させて前記短絡部材の電気接続部にそれぞれ嵌合させ、当該嵌合により前記短絡部材を介して前記特定の電線および前記各端子が接続された複数の電線同士を短絡させる短絡工程とを備えることを特徴とする短絡方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−204720(P2008−204720A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38230(P2007−38230)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】