説明

石炭ガス化複合発電プラント

【課題】液化炭酸ガスを貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを有効に利用すると共にボイルオフガスの大気放出を抑制可能な石炭ガス化複合発電プラントを提供する。
【解決手段】石炭ガス化装置14で石炭を部分燃焼させ高圧高温の条件下で生成したガス化ガスを熱交換器20に導き冷却し、さらに脱塵装置22、ガス処理装置24によりガス精製し、二酸化炭素を分離回収した後、精製ガスを燃焼しガスタービン発電機40で発電すると共に、熱交換器20等で回収したスチームを用いてスチームタービン発電機46で発電する。分離回収した二酸化炭素を貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンク32から発生するボイルオフガスを石炭ガス化装置14のシールガスとして利用することでボイルオフガスを有効に利用すると共にボイルオフガスの大気放出を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭をガス化しこれを燃料とする石炭ガス化複合発電プラントに関し、特に二酸化炭素を分離回収する炭酸ガス回収設備を備える石炭ガス化複合発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化複合発電プラントは、石炭を燃料として効率の高い発電ができることから二酸化炭素(炭酸ガス)の発生が少なく、地球温暖化防止に有力な発電設備である。従来の石炭ガス化複合発電プラントは、石炭ガス化装置内で石炭を部分燃焼させ高圧高温の条件下で生成したガス化ガスを熱交換器に導き冷却し、さらに脱塵装置、ガス処理装置等によりガスを精製した後、ガスタービン発電設備で燃焼し発電すると共に、熱交換器及びガスタービンの下流側にある排熱回収ボイラからのスチームを用いたスチームタービン発電設備で発電する。さらに、精製したガス化ガスから二酸化炭素を分離回収し除去するシステムも提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2870929号公報
【特許文献2】特開平9−279163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二酸化炭素を回収する設備を備える石炭ガス化複合発電プラントにおいては、回収した二酸化炭素を液化し、液化炭酸ガス貯蔵タンクに貯蔵した後、液化炭酸ガスは輸送され処理される。液化炭酸ガス貯蔵タンク内に貯蔵された液化炭酸ガスは、外部からの入熱により一部が気化しボイルオフガスとなる。ボイルオフガスは液化炭酸ガス貯蔵タンク内の圧力を上昇させるため、液化炭酸ガス貯蔵タンク内の圧力が所定の圧力に達すると、タンク保護のため一部ボイルオフガスは大気に放出される。回収した二酸化炭素を再度大気中に放出することは、本来の目的に反するため、ボイルオフガスを極力、大気中に放出しない対策が求められている。
【0005】
液化炭酸ガス貯蔵タンク内に貯蔵する時間を短くし、短時間のうちに液化炭酸ガスを払い出せば自ずと外部からの入熱の影響が少なくなり、ボイルオフガスの発生量も抑制されるけれども、液化炭酸ガスの輸送、処理等の運用を考えれば貯蔵時間を短縮するにも限度がある。現在、炭酸ガス回収設備を備える石炭ガス化複合発電プラントにおいて、ボイルオフガスを有効に利用する技術、さらに発生するボイルオフガスの大気放出を抑制できる技術は開発されていない。
【0006】
本発明の目的は、炭酸ガス回収設備を備える石炭ガス化複合発電プラントにおいて、液化炭酸ガスを貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを有効に利用すると共にボイルオフガスの大気放出を抑制可能な石炭ガス化複合発電プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、石炭とガス化剤とから石炭ガス化ガスを生成する、圧力容器に収容されたガス化炉を備える石炭ガス化装置と、前記石炭ガス化ガスを精製したガスを燃焼し、燃焼したガスを動力として発電するガスタービン発電設備と、前記ガス化炉の熱を回収する熱交換器及びガスタービンの排気熱を回収する排熱回収ボイラからのスチームを動力として発電するスチームタービン発電設備と、前記石炭ガス化ガスの生成工程で発生する炭酸ガスを液化炭酸ガスとして回収、貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクを有する炭酸ガス回収設備と、前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを前記石炭ガス化装置のシールガスとして前記石炭ガス化装置に供給する石炭ガス化装置シールガス供給手段と、を備えることを特徴とする石炭ガス化複合発電プラントである。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の石炭ガス化複合発電プラントにおいて、さらに前記石炭ガス化装置の下流側に設置され前記ガス化炉から飛散する未燃チャーを回収する脱塵装置と、前記脱塵装置で回収された未燃チャーを前記ガス化炉に戻す返送手段とを備え、前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを、前記返送手段の搬送用ガスとして前記返送手段に供給する未燃チャー搬送用ガス供給手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の石炭ガス化複合発電プラントにおいて、さらに前記ガス化炉に供給する石炭を貯蔵する石炭ホッパーを備え、前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを、前記石炭ホッパーから前記ガス化炉に石炭を供給する搬送用ガスとして前記石炭ホッパーに供給する石炭搬送用ガス供給手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の石炭ガス化複合発電プラントにおいて、さらに、前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを昇圧する昇圧機と、前記昇圧機を制御しボイルオフガスを所定の圧力にする制御装置とを備え、前記石炭ガス化装置シールガス供給手段、未燃チャー搬送用ガス供給手段及び石炭搬送用ガス供給手段のいずれか1以上のガス供給手段は、前記昇圧機で昇圧されたボイルオフガスを供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の石炭ガス化複合発電プラントは、回収した二酸化炭素を液化し貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを石炭ガス化装置のシールガスとして供給する、石炭ガス化装置シールガス供給手段を備えるので、シールガスとして一般的に利用されている窒素ガスの代替ガスとしてボイルオフガスを石炭ガス化装置のシールガスとして有効に利用することができる。これにより窒素ガスの使用量を削減することができる。またシールガスとして供給されたボイルオフガスが、ガス化ガスに混入しても、再度、炭酸ガス回収設備で回収されるので、ボイルオフガスの大気放出を抑制することができ、地球温暖化防止に効果的である。
【0012】
また本発明の石炭ガス化複合発電プラントは、さらに回収した二酸化炭素を液化し貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを、未燃チャーをガス化炉に戻す搬送用ガスとして供給する、未燃チャー搬送用ガス供給手段を備えるので、窒素ガスの代替ガスとしてボイルオフガスを未燃チャー搬送用ガスとして有効に利用することができる。これにより窒素ガスの使用量を削減することができる。また未燃チャー搬送用ガスとして供給されたボイルオフガスはガス化ガスに混入するけれども、再度、炭酸ガス回収設備で回収されるので、ボイルオフガスの大気放出を抑制することができ、地球温暖化防止対策に対し効果的である。
【0013】
また本発明の石炭ガス化複合発電プラントは、さらに回収した二酸化炭素を液化し貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを石炭ホッパーからガス化炉に石炭を供給するための搬送用ガスとして供給する、石炭搬送用ガス供給手段を備えるので、窒素ガスの代替ガスとしてボイルオフガスを石炭搬送用ガスとして有効に利用することができる。これにより窒素ガスの使用量を削減することができる。また石炭搬送用ガスとして供給されたボイルオフガスはガス化ガスに混入するけれども、再度、炭酸ガス回収設備で回収されるので、ボイルオフガスの大気放出を抑制することができ、地球温暖化防止対策に対し効果的である。
【0014】
また本発明の石炭ガス化複合発電プラントは、回収した二酸化炭素を液化し貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを昇圧する昇圧機を備えるので、液化炭酸ガス貯蔵タンク内の圧力が石炭ガス化装置等の圧力に比較し低い場合であっても、ボイルオフガスを石炭ガス化装置のシールガスなどとして有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態としての石炭ガス化複合発電プラント1の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【図2】本発明の第2実施形態としての石炭ガス化複合発電プラント3の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【図3】本発明の第3実施形態としての石炭ガス化複合発電プラント5の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態としての石炭ガス化複合発電プラント1の概略的構成を示すプロセスフロー図である。石炭ガス化複合発電プラント1は、ガス化設備とガス精製設備と発電設備と炭酸ガス回収設備及びボイルオフガス供給設備を含む。
【0017】
ガス化設備は、石炭をガス化させガス化ガスを生成させるための設備であって、石炭をガス化するためのガス化炉10及び圧力容器12から構成される石炭ガス化装置14、石炭ガス化装置14に石炭を供給するための石炭ホッパー16、石炭ガス化装置14に酸素を供給するための空気分離装置18、ガス化したガスを冷却しスチームとして熱を回収する熱交換器20を含み構成される。
【0018】
ガス精製設備は、ガス化設備で生成されたガス化ガス中の不純物を除去するための設備であって、熱交換器20で冷却されたガス化ガスを精製するための脱塵装置22及びガス処理装置24を含み構成される。
【0019】
炭酸ガス回収設備は、ガス精製設備で精製されたガス化ガスから二酸化炭素を回収するための設備であって、精製したガス化ガスから炭酸ガスを回収する炭酸ガス分離回収装置28、炭酸ガス液化装置30及び液化炭酸ガス貯蔵タンク32を含み構成される。
【0020】
発電設備は、精製されたガス化ガスを燃料とし発電を行うガスタービン発電設備及び回収した熱を利用して発生させたスチームを動力源とするスチームタービン発電設備を含み構成される。ガスタービン発電設備は、燃焼器34、ガスタービン36、空気圧縮機38、及びガスタービン発電機40、燃焼した高温ガスを冷却しスチームを回収する排熱回収ボイラ42を含み構成される。スチームタービン発電設備は、熱交換器20及び排熱回収ボイラ42で発生したスチームを動力源とする発電設備であって、スチームタービン44及びスチームタービン発電機46を含み構成される。
【0021】
石炭ガス化装置14は、石炭をガス化するための装置でガス化炉10が圧力容器12内に設置されている。ガス化炉10は、石炭を酸素又は空気と酸素を混合したガス化剤を用いて高温でガス化するための炉である。ガス化炉10には、石炭供給管48より石炭が供給され、ガス化剤供給管52よりガス化剤が供給される。ガス化炉10に供給された石炭は、高圧の雰囲気で酸素と接触し部分燃焼反応を起こし、水素(H)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)等を含むガス化ガスが生成される。また、ガス化炉10の温度は部分燃焼反応により石炭に含まれる灰の融点以上の高温に保たれており灰は溶融する。溶融した灰は、石炭ガス化装置14の下部より取り出される。またガス化ガスは、熱交換器20に導かれる。
【0022】
圧力容器12は、内部にガス化炉10を備えた容器である。石炭ホッパー16は、粉砕された石炭を高圧の条件で貯蔵する容器である。石炭ホッパー16に貯蔵された石炭は、石炭供給管48を通りガス化炉10に供給される。空気分離装置18は、空気供給管50から送られる空気を主に酸素と窒素に分離する深冷分離装置等で構成される。分離された酸素は、ガス化剤供給管52からガス化炉10に供給される。
【0023】
熱交換器20は、ガス化炉10より取り出された高温のガス化ガスと水を伝熱管等を用いて熱交換させる。熱交換器20で高温のガス化ガスは冷却され、一方、水はスチーム等として回収される。熱交換器20を出たガス化ガスは、脱塵装置22、続いてガス処理装置24に導かれ精製される。
【0024】
脱塵装置22は、ガス化炉10で十分にガス化されずにガス化ガスに同伴して飛散する未燃チャーを回収するサイクロン、フィルター等である。回収された未燃チャーは未燃チャー抜出し管54からガス化炉10に戻される。ガス処理装置24は、ガス化ガスに含まれる硫化水素等を除去する装置である。
【0025】
脱塵装置22及びガス処理装置24で精製されたガス化ガスからは二酸化炭素が回収される。
【0026】
炭酸ガス分離回収装置28は、ガス化ガスから二酸化炭素を分離し回収する。炭酸ガス液化装置30は、回収した二酸化炭素を圧縮し冷却して液化するための装置であり、液化された炭酸ガスは、液化炭酸ガス貯蔵タンク32に貯蔵される。液化炭酸ガス貯蔵タンク32に貯蔵されている液化炭酸ガスは、外気の熱で気化しボイルオフガスとなりタンク内の圧力を上昇させるので、液化炭酸ガス貯蔵タンク32の上部にはタンクを保護するための圧力調節弁33が設けられている。
【0027】
二酸化炭素が分離され回収されたガス化ガスは、燃焼器34、ガスタービン36、空気圧縮機38及びガスタービン発電機40を備えたガスタービン発電設備に送られる。燃焼器34は、高圧条件下でガス化ガスを燃焼する機器である。高温高圧の燃焼ガスは、ガスタービン36に送られ、ガスタービン36は、燃焼器34で燃焼した高圧高温ガスを膨張させ、その動力でタービン翼を回転させ、ガスタービン36と同軸に取り付けられた空気圧縮機38及びガスタービン発電機40を回転駆動させ発電を行う。
【0028】
ガスタービン36を出た燃焼ガスは、排熱回収ボイラ42に送られた後に煙突56から大気へ排出される。
【0029】
排熱回収ボイラ42は、燃焼ガスを冷却すると同時にスチームを発生させるボイラであり、排熱回収ボイラ42で発生したスチームと、熱交換器20から発生したスチームと合流しスチームタービン44に送られる。スチームタービン44は、熱交換器20及び排熱回収ボイラ42からのスチームを動力源としてタービン翼を回転させ、同軸に取り付けられたスチームタービン発電機46に駆動し発電を行う。
【0030】
以上の構成からなる石炭ガス化複合発電プラント1のうち、ガス化設備、ガス精製設備、発電設備及び炭酸ガス回収設備は、従来からある石炭ガス化複合発電プラントと基本的構成を同一とする。本発明に係る石炭ガス化複合発電プラント1は、以下に説明するボイルオフガス供給設備を備える点に大きな特徴があり、ガス化設備、ガス精製設備、発電設備及び炭酸ガス回収設備等を構成する機器、装置は、上記の機器、装置に限定されるものではない。
【0031】
ボイルオフガス供給設備は、石炭ガス化装置シールガス供給手段と昇圧機58と制御装置60とを含み構成される。
【0032】
昇圧機58は、液化炭酸ガス貯蔵タンク32で発生するボイルオフガスを所定の圧力まで昇圧する装置であり、ボイルオフガス抜出し管62を介して液化炭酸ガス貯蔵タンク32と接続する。
【0033】
石炭ガス化装置シールガス供給手段は、石炭ガス化装置14へ昇圧機58で昇圧されたボイルオフガスをシールガスとして供給するための装置であって、石炭ガス化装置シールガス供給管64と差圧検出器66を含み構成される。石炭ガス化装置シールガス供給管64は、一端が昇圧機58に、他端が石炭ガス化装置14の空間領域68に連結しており、昇圧機58で昇圧されたボイルオフガスを石炭ガス化装置14のシールガスとして石炭ガス化装置14の空間領域68に供給する。なお、空間領域68は、石炭ガス化装置14のガス化炉10と圧力容器12との間で隔壁70の上部である。差圧検出器66は、空間領域68とガス化炉10内との圧力差を検出する。
【0034】
制御装置60は、差圧検出器66からの信号を取込み、空間領域68とガス化炉10内との差圧が一定の範囲内、例えば空間領域68の圧力がガス化炉10の圧力に比べ常に数百から数万Pa程度高くなるように昇圧機58の吐出流量を制御する。空間領域68の圧力をガス化炉10の圧力より高く維持することにより、ガス化炉10で発生する高温のガス化ガスが空間領域68に流れ込み、圧力容器12の温度上昇、ガス化ガスに含まれる腐食性ガスによる圧力容器12の腐食等を防止し、圧力容器12の破損などの危険を防止することができる。
【0035】
また、石炭ガス化装置14へ昇圧機58で昇圧したボイルオフガスをシールガスとして供給するとき、昇圧機58の駆動を直接制御することで流量を制御する方法の他、石炭ガス化装置シールガス供給管64の管路の途中に流量検出器及び流量制御弁を設け、これらを制御装置60で制御し、昇圧機58で昇圧したボイルオフガスの流量を制御するようにしてもよい。なお、本実施形態では、液化炭酸ガス貯蔵タンク32の圧力が低く、発生するボイルオフガスの圧力が石炭ガス化装置14の空間領域68の圧力よりも低いケースを想定し、ボイルオフガスを昇圧機58で昇圧した後に石炭ガス化装置14のシールガスとして供給する例を示したけども、液化炭酸ガス貯蔵タンク32内の圧力が石炭ガス化装置14の空間領域68の圧力よりも高い場合には、昇圧機58が必要ないことは言うまでもない。
【0036】
従来の石炭ガス化複合発電プラントでは、石炭ガス化装置14のシールガスとしては一般的に窒素ガスが用いられていたけれども、液化炭酸ガス貯蔵タンク32から排出されるボイルオフガスを石炭ガス化装置14のシールガスに利用することにより、窒素ガスの代替ガスとしてボイルオフガスを有効に利用することができる。これにより窒素ガスの使用量を削減することができる。またシールガスとして供給されたボイルオフガスがガス化ガスに混入しても、再度、炭酸ガス回収設備で回収されるので、ボイルオフガスの大気放出を抑制することができ、地球温暖化防止に効果的である。
【0037】
図2は、本発明の第2の実施形態としての石炭ガス化複合発電プラント3の概略的構成を示すプロセスフロー図である。図1に示す石炭ガス化複合発電プラント1と同一の構成部材には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
脱塵装置22により回収された未燃チャーは、未然チャーの返送手段である未燃チャー抜出し管54からガス化炉10に戻されガス化される。未燃チャーのガス化炉10への返送には搬送用ガスが使用される。第2実施形態に示す石炭ガス化複合発電プラント3では、第1実施形態に示す石炭ガス化複合発電プラント1の構成に加え、さらに昇圧されたボイルオフガスを未燃チャーの搬送用ガスとして未燃チャー抜出し管54に供給する未燃チャー搬送用ガス供給手段を備える点に特徴がある。
【0039】
未燃チャー搬送用ガス供給手段は、未燃チャー抜出し管54に搬送用ガスを供給する未燃チャー搬送用ガス供給管82と未燃チャー搬送用ガス流量調節弁84と未燃チャー搬送用ガス流量検出器86とを含み構成される。未燃チャー搬送用ガス供給管82は、一端を石炭ガス化装置シールガス供給管64の途中に接続し、他端は未燃チャー抜出し管54の搬送ガス供給口(図示所略)に接続する。未燃チャー搬送用ガス供給管82の管路の途中には、未燃チャー搬送用ガス流量調節弁84が介装され、未燃チャー搬送用ガス流量調節弁84と未燃チャー抜出し管54の搬送ガス供給口とを結ぶ管路の途中には未燃チャー搬送用ガス流量検出器86が装着されている。
【0040】
制御装置60は、未燃チャー搬送用ガス流量検出器86からの信号を取込み、未燃チャー搬送用ガス流量調節弁84を調節し、未燃チャー抜出し管54に搬送用ガスとして昇圧機58で所定の圧力まで昇圧されたボイルオフガスを供給する。未燃チャー抜出し管54へ供給されるボイルオフガスは、未燃チャーをガス化炉10に返送する。
【0041】
未燃チャー抜出し管54へボイルオフガスを搬送用ガスとして供給するとき、石炭ガス化装置14に供給するシールガス用とは別に、単独にボイルオフガスを昇圧、供給可能な昇圧機を設けてもよい。なお、本実施形態では、液化炭酸ガス貯蔵タンク32の圧力が低く、発生するボイルオフガスの圧力が、未燃チャー搬送用ガスとして必要な圧力よりも低いケースを想定し、ボイルオフガスを昇圧機58で昇圧した後に未燃チャー搬送用ガスとして供給する例を示したけども、液化炭酸ガス貯蔵タンク32内の圧力が未燃チャー搬送用ガスとして必要な圧力よりも高い場合には、昇圧機58が必要ないことは第1実施形態の場合と同じである。
【0042】
従来の石炭ガス化複合発電プラントでは、未燃チャー搬送用ガスとしては一般的に窒素ガスが用いられていたけれども、液化炭酸ガス貯蔵タンク32から排出されるボイルオフガスを未燃チャー搬送用ガスに利用することにより、窒素ガスの代替ガスとしてボイルオフガスを有効に利用することができる。これにより窒素ガスの使用量を削減することができる。未燃チャー搬送用ガスであるボイルオフガスは、未然チャーと共にガス化炉10に供給されガス化ガスに混入するけれども、再度、炭酸ガス回収設備で回収されるので、ボイルオフガスは大気に放散されることはなく、地球温暖化防止に効果的である。また、未燃チャー搬送用ガスとして窒素ガスを用いた場合は、窒素ガスがガス化炉10に入りガス化ガスに混入するため、ガス化ガスを燃焼器34で燃焼した場合、一部の窒素ガスが窒素酸化物に変換し大気を汚染するが、未燃チャー搬送用ガスとして二酸化炭素を用いるためこれらの問題も無い。
【0043】
図3は、本発明の第3実施形態としての石炭ガス化複合発電プラント5の概略的構成を示すプロセスフロー図である。図1又は図2に示す石炭ガス化複合発電プラント1、石炭ガス化複合発電プラント3と同一の構成部材には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0044】
石炭ホッパー16に充填された石炭は、石炭ホッパー16とガス化炉10とを連絡する石炭供給管48を介してガス化炉10に供給される。石炭のガス化炉10への搬送には搬送用ガスが使用される。第3実施形態に示す石炭ガス化複合発電プラント5では、第2実施形態に示す石炭ガス化複合発電プラント3の構成に加え、さらに昇圧されたボイルオフガスを石炭の搬送用ガスとして石炭供給管48に供給する石炭搬送用ガス供給手段を備える点に特徴がある。
【0045】
石炭搬送用ガス供給手段は、石炭供給管48に搬送用ガスを供給する石炭搬送用ガス供給管88と石炭搬送用ガス流量調節弁90と石炭搬送用ガス流量検出器92とを含み構成される。石炭搬送用ガス供給管88は、石炭供給管48の搬送ガス供給口(図示所略)に接続されている。石炭搬送用ガス供給管88の管路の途中には、石炭搬送用ガス流量調節弁90が介装され、石炭搬送用ガス流量調節弁90と石炭供給管48の搬送ガス供給口とを結ぶ管路の途中には石炭搬送用ガス流量検出器92が装着されている。
【0046】
制御装置60は、石炭搬送用ガス流量検出器92からの信号を取込み、石炭搬送用ガス流量調節弁90を調節し、石炭供給管48に搬送用ガスとして昇圧機58で所定の圧力まで昇圧されたボイルオフガスを供給する。石炭供給管48へ供給される搬送用ガスは、石炭をガス化炉10に送出する。
【0047】
石炭供給管48へボイルオフガスを搬送用ガスとして供給するとき、石炭ガス化装置14へ供給するシールガス用、未燃チャー搬送用ガスとは別に、単独にボイルオフガスを昇圧、供給可能な昇圧機を設けてもよい。なお、本実施形態では、液化炭酸ガス貯蔵タンク32の圧力が低く、発生するボイルオフガスの圧力が、石炭搬送用ガスとしては圧力が低いケースを想定し、ボイルオフガスを昇圧機58で昇圧した後に石炭搬送用ガスとして供給する例を示したけども、液化炭酸ガス貯蔵タンク32内の圧力が石炭搬送用ガスとして必要な圧力よりも高い場合には、昇圧機58が必要ないことは第1又は第2実施形態の場合と同じである。
【0048】
従来の石炭ガス化複合発電プラントでは、石炭搬送用ガスとしては一般的に窒素ガスが用いてられていたけれども、液化炭酸ガス貯蔵タンク32から排出されるボイルオフガスを石炭搬送用ガスに利用することにより、窒素ガスの代替ガスとしてボイルオフガスを有効に利用することができる。これにより窒素ガスの使用量を削減することができる。石炭搬送用ガスであるボイルオフガスは、石炭と共にガス化炉10に供給されガス化ガスに混入するけれども、再度、炭酸ガス回収設備で回収されるので、ボイルオフガスは大気に放散されることはなく、地球温暖化防止に効果的である。また、石炭搬送用ガスとして窒素ガスを用いた場合は、窒素ガスがガス化炉10に入りガス化ガスに混入するため、ガス化ガスを燃焼器34で燃焼した場合、一部の窒素ガスが窒素酸化物に変換し大気を汚染するが、石炭搬送用ガスとして二酸化炭素を用いるためこれらの問題も無い。
【0049】
上記第2及び第3実施形態に示す石炭ガス化複合発電プラントでは、ボイルオフガスを同時に複数の用途に利用する例、例えば、第2実施形態に示す石炭ガス化複合発電プラント3では、石炭ガス化装置14のシールガスとして利用すると共に未燃チャーの搬送用ガスとして利用する例を示したけれども、これらは単独で利用可能なことは言うまでもない。また本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントにおいては、ボイルオフガスを同時に複数の用途に利用する場合であっても、使用する圧力がほぼ同じであるので、装置構成が非常に簡単である。
【符号の説明】
【0050】
1 石炭ガス化複合発電プラント
3 石炭ガス化複合発電プラント
5 石炭ガス化複合発電プラント
10 ガス化炉
12 圧力容器
14 石炭ガス化装置
16 石炭ホッパー
20 熱交換器
32 液化炭酸ガス貯蔵タンク
36 ガスタービン
40 ガスタービン発電機
42 排熱回収ボイラ
44 スチームタービン
46 スチームタービン発電機
48 石炭供給管
54 未燃チャー抜出し管
56 煙突
58 昇圧機
60 制御装置
64 石炭ガス化装置シールガス供給管
66 差圧検出器
68 空間領域
70 隔壁
78 石炭ガス化装置シールガス流量調節弁
80 石炭ガス化装置シールガス流量検出器
82 未燃チャー搬送用ガス供給管
84 未燃チャー搬送用ガス流量調節弁
86 未燃チャー搬送用ガス流量検出器
88 石炭搬送用ガス供給管
90 石炭搬送用ガス流量調節弁
92 石炭搬送用ガス流量検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭とガス化剤とから石炭ガス化ガスを生成する、圧力容器に収容されたガス化炉を備える石炭ガス化装置と、
前記石炭ガス化ガスを精製したガスを燃焼し、燃焼したガスを動力として発電するガスタービン発電設備と、
前記ガス化炉の熱を回収する熱交換器及びガスタービンの排気熱を回収する排熱回収ボイラからのスチームを動力として発電するスチームタービン発電設備と、
前記石炭ガス化ガスの生成工程で発生する炭酸ガスを液化炭酸ガスとして回収、貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵タンクを有する炭酸ガス回収設備と、
前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを前記石炭ガス化装置のシールガスとして前記石炭ガス化装置に供給する石炭ガス化装置シールガス供給手段と、
を備えることを特徴とする石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項2】
さらに前記石炭ガス化装置の下流側に設置され前記ガス化炉から飛散する未燃チャーを回収する脱塵装置と、前記脱塵装置で回収された未燃チャーを前記ガス化炉に戻す返送手段とを備え、
前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを、前記返送手段の搬送用ガスとして前記返送手段に供給する未燃チャー搬送用ガス供給手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項3】
さらに前記ガス化炉に供給する石炭を貯蔵する石炭ホッパーを備え、
前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを、前記石炭ホッパーから前記ガス化炉に石炭を供給する搬送用ガスとして前記石炭ホッパーに供給する石炭搬送用ガス供給手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項4】
さらに、前記液化炭酸ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを昇圧する昇圧機と、
前記昇圧機を制御しボイルオフガスを所定の圧力にする制御装置とを備え、
前記石炭ガス化装置シールガス供給手段、未燃チャー搬送用ガス供給手段及び石炭搬送用ガス供給手段のいずれか1以上のガス供給手段は、前記昇圧機で昇圧されたボイルオフガスを供給することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の石炭ガス化複合発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−196606(P2010−196606A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43240(P2009−43240)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】