説明

石炭灰造粒物

【課題】石炭灰の有効利用を図り、安価に製造可能で有害物質の溶出が抑制された石炭灰造粒物を提供する。
【解決手段】石炭灰造粒物製造プラント10において、搬送された石炭灰、改質灰、造粒助材、還元剤および水などの石炭灰造粒物の原料を、石炭灰貯蔵サイロ11、改質灰貯蔵サイロ12、造粒助材貯蔵サイロ13、還元剤輸送ライン14、および水輸送ライン15から造粒機20に対してそれぞれ計量したうえで供給し、各原料を攪拌混合して平均粒径0.3mm〜2mm程度に造粒する。造粒物を造粒物輸送機21にて養生ヤード31へ搬送し、所定の養生期間を経た後、保管ヤード32へ移送して、ユーザに出荷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価に製造可能で石炭灰中に含まれる重金属の溶出が抑制された石炭灰造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所から大量に発生する石炭灰は、例えば埋立工事や地盤改良工事などに有効利用されている。ところが、石炭灰は一般的に有害な重金属を含有しており、その利用に当たっては廃棄物処理法の規制を受けるため、石炭灰中の重金属溶出を抑制する処理を施してから利用しなければならない。
【0003】
このように石炭灰から重金属溶出を抑制する処理方法としては、例えば下記特許文献1に記載されている重金属など有害物質を含む産業廃棄物の無害化処理方法が知られている。この無害化処理方法では、例えば焼却灰に硫化ナトリウムを添加して攪拌混合することで、重金属などの有害物質を無害化するとされている。
【0004】
上記特許文献1に記載されている方法によれば、有害物質である重金属をある程度無害化することができるが、石炭灰の炭種によっては、石炭灰中に含まれる六価クロム、セレン、ホウ素やフッ素などの有害物質の溶出を十分に抑制することはできない。このため、石炭灰から製造した石炭灰造粒物を、盛土材、埋め戻し材などの土木材料や、細骨材、コンクリート混和材など、土木用や建築用材料に使用した場合に、石炭灰造粒物から有害物質が溶出して環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
また、今後石炭の需要がますます高まることに伴い、石炭灰の発生量も必然的に増加するため、石炭灰の単なる埋立処分は、将来的には処分地の逼迫によって自ずと制限されることとなる。このため、増加する石炭灰をできるだけ安価かつ効率的に処理しつつ、かつ六価クロム、セレン、ホウ素やフッ素を含めた有害物質の溶出が抑制された石炭灰造粒物の開発が待望されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−67389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、石炭灰の有効利用を図ることができるとともに、安価に製造可能で六価クロム、セレン、ホウ素やフッ素などの有害物質の溶出が抑制された石炭灰造粒物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る石炭灰造粒物は、石炭灰に改質灰と水を添加したものを造粒した後養生してなることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る石炭灰造粒物は、上記のように改質灰と水を添加して構成されることにより、従来のものよりも安価に製造することができる。
【0010】
また、石炭灰造粒物には、例えば造粒助材、還元剤がさらに添加されていてもよい。
【0011】
そして、石炭灰造粒物は、例えば73〜90重量%の石炭灰に対して、5〜12重量%の改質灰を添加する構成とされているとよい。
【0012】
また、改質灰は、微粉炭に平均粒径が0.1μmより大きく10μm以下のカルシウムを含む改質剤を混合した後その混合物を燃焼して生成され、酸化カルシウムを40〜70重量%含むことが好ましい。また、改質灰は、フリーライム(f−CaO)の含有率が5重量%以下であることが好ましい。
【0013】
この場合、改質剤は、例えばセメント製造工程で発生するダストであることが好ましく、石炭灰はフライアッシュ、造粒助材はセメント製造工程で発生するキルンダスト、還元剤はチオ硫酸ナトリウムまたは/および多硫化カルシウムであり、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント(A、B、C種)等をさらに添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石炭灰の有効利用を図ることができるとともに、石炭灰造粒物に含まれる六価クロム、セレン、ホウ素やフッ素を含む重金属の溶出を環境基準値以下まで抑制することができる。また、改質灰を利用することにより、石炭灰造粒物を安価・簡便に製造することができる。これにより、安価に製造した石炭灰造粒物を、盛土材、埋め戻し材などの土木材料や、細骨材、コンクリート混和材など、土木用や建築用材料として大量に有効利用することが可能となる。その結果、地球環境への悪影響を低減しつつ廃棄物処理のコストを削減することができるとともに、埋立処分地の延命化を図るなど環境面で優れた効果を奏することができる。
【0015】
また、本発明によれば、石炭灰造粒物の対象としてセメントの一部または全部の代替に改質灰を使用することにより、
1.改質灰は、セメントクリンカ鉱物を含む。
2.改質灰製造時に生成する未反応カルシウム(フリーライム(f−CaO))は溶出抑制に寄与する。
3.改質灰は、ガラス質を含む。
などの理由でセメント等および溶出抑制剤の添加量を削減することが可能になる。また、従来の石炭灰造粒物に比べて溶出性能が改善された環境負荷の小さい造粒物を生成することが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して、本発明に係る石炭灰造粒物の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る石炭灰造粒物の製造処理工程の一例を示すフローチャートである。また、図2は、本発明の一実施形態に係る石炭灰造粒物を製造するための設備の一例を示す説明図である。
【0017】
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る石炭灰造粒物の製造処理においては、主に次の各工程を含む。
(a)石炭火力発電所などから搬送された産業廃棄物としての石炭灰を石炭灰造粒物製造プラント10の石炭灰貯蔵サイロ11に受け入れる(ステップS1)。
(b)石炭灰とともに改質灰、造粒助材、還元剤、水などの石炭灰造粒物の原料を、石炭灰貯蔵サイロ11、改質灰貯蔵サイロ12、造粒助材貯蔵サイロ13、還元剤輸送ライン14、および水輸送ライン15から造粒機20に対してそれぞれ計量したうえで供給する(ステップS2)。
(c)造粒機20において供給された各原料を攪拌混合し、平均粒径0.3mm〜2mm程度に造粒する(ステップS3)。
(d)造粒機20において造粒された造粒物を造粒物輸送機21にて養生ヤード31へ搬送し、所定の養生期間(例えば1〜2日間)を経た後、保管ヤード32へ移送して、さらに所定の期間(約一月以上、例えば28日以上)養生した後、ユーザに出荷する(ステップS4)。
石炭灰造粒物製造プラント10におけるこのような工程により、本実施形態に係る石炭灰造粒物が製造される。以下、各工程につき説明する。
【0018】
上記ステップS1の工程における石炭灰としては、例えば石炭火力発電所から大量に発生するフライアッシュが挙げられる。この石炭灰の平均粒径は、例えば10μmを超えて30μm以下のものが好適に用いられる。
【0019】
上記ステップS2の工程で造粒機20に対して供給される改質灰は、例えば微粉炭に平均粒径が0.1μmより大きく10μm以下のカルシウムを含む改質剤を混合した後その混合物を燃焼して生成されたものであり、酸化カルシウムを40〜70重量%含むように構成されている。
この改質灰は、例えばフリーライム(f−CaO)の含有率が5重量%以下であるとより好適である。また、微粉炭に混合される改質剤は、例えばセメント製造工程で発生するダストが用いられる。この改質灰についての具体的な内容については後述するが、本実施形態の石炭灰造粒物は、このように改質灰を添加したことによって、石炭灰造粒物に含まれる六価クロム、セレン、ホウ素やフッ素を含む重金属の溶出を、例えば環境基準値以下まで抑制することが可能となる。
【0020】
また、造粒助材は、石炭灰の粒子間の間隙を充填することにより充填密度を向上させるとともに、造粒機20による造粒時間を短縮させるためのものをいう。この造粒助材としては、例えばセメント製造工程で発生するキルンダスト、マグネシア製造工程から副産物として排出されるハイドロ残渣(海水に水酸化カルシウムを加えてドロマイトを得る際に副生される炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムを主成分とする無機物)、天然の粘土など平均粒径が10μm以下である無機質微粒子が挙げられる。本実施形態に係る石炭灰造粒物の造粒助材としては、特にキルンダストが好適に用いられる。
【0021】
ここで、キルンダストとは、具体的にはセメント原料調合工程からの排出ガスを電気集塵機などで処理した際に回収されるダストであり、セメント原料(石灰石、粘土、珪石、鉄原料、石膏など)とほぼ同等の化学組成で構成されている。なお、石灰石は酸化カルシウム(CaO)を供給し、粘土は二酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)および酸化第二鉄(Fe)をそれぞれ供給するものである。また、珪石は不足した二酸化珪素を補充し、鉄原料は不足した酸化第二鉄を補充するものである。
【0022】
石炭灰造粒物に造粒助材として用いられるキルンダストの平均粒径は、好ましくは10μm未満であり、より好ましくは5μm以下である。キルンダストの平均粒径が10μm以上になると、石炭灰および後述するセメントの粒子と同等かそれ以上の大きさとなってしまい、これらの粒子間の間隙を充填することが困難となってしまうため好ましくない。
【0023】
また、本実施形態に係る石炭灰造粒物には、石炭灰、改質灰および造粒助材の他に、還元剤を添加することができる。この還元剤としては、多硫化カルシウムおよび/またはチオ硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、粉末硫黄、殺菌剤・殺虫剤として市販されている石灰硫黄合剤などの硫黄含有化合物や、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩や、硫酸第一鉄などが挙げられる。特に好適には、多硫化カルシウムおよびチオ硫酸ナトリウムのうちの少なくともいずれか一つが還元剤として用いられる。
【0024】
なお、多硫化カルシウムとは、例えばCaSを主成分とするものであり、一般的に石灰硫黄合剤と呼ばれているものである。また、添加する還元剤は、1種類のみあるいは2種類以上を混合して使用することができるとともに、還元剤が水溶液の場合は、そのまま使用することができる。一方、還元剤が固体の場合は、水に溶解あるいは懸濁して用いることができる。この還元剤により、六価クロムや六価セレンなど、特に溶出しやすい重金属を還元せしめて不溶化を図ることができるため、この還元剤は重金属の溶出抑制剤として機能する。
【0025】
また、図示は省略するが、本実施形態に係る石炭灰造粒物には、石炭灰、改質灰、造粒助材および還元剤の他に、さらにセメントを添加することもできる。このセメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント(A種、B種、C種)などが挙げられるが、潜在水硬性を有する高炉スラグを使用することもできる。この中で、特に重金属の溶出を抑制することができる効果を有する高炉スラグを含み、かつ容易に入手可能な高炉セメントB種が好適に用いられる。
【0026】
上記ステップS3の工程における石炭灰および改質灰の混合割合は、73〜90重量%の石炭灰に対して、5〜12重量%の改質灰である。また、これら石炭灰および改質灰に対する造粒助材の混合割合は、5〜15重量%である。また、還元剤の混合割合は、石炭灰、改質灰および造粒助材等の粉体原料の合計重量100重量%に対して0.003〜1.0重量%であり、水の混合割合は、20〜40重量%である。
【0027】
セメントは、改質灰とともに用いられる場合は、重量%については半分程度の割合で使用することができる。これにより、石炭灰中に含まれる六価クロム、セレン、ホウ素やフッ素などの有害物質を含む重金属の溶出を効果的に土壌環境基準以下まで抑制することができるとともに、石炭灰造粒物の強度を向上させつつ安価に製造することが可能となる。
【0028】
このステップS3の工程で使用される造粒機20は、例えば混合操作も兼ねることができる機能を有する機器を用いることが望ましい。このような機器としては、転動造粒機、アイリッヒミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、円錐型スクリュー混合機、モルタルミキサーなどを挙げることができる。この中で、造粒機20としては、特に円錐型スクリュー混合機を用いることが好ましい。
【0029】
円錐型スクリュー混合機は、円錐の頂点端側を下方にして配置した円錐型本体と、この円錐型本体の内壁に沿って上方から下方に延びるように配置されたスクリュー攪拌軸とにより構成される。なお、スクリュー攪拌軸には軸を中心として形成された螺旋状のスクリュー羽根が設けられている。このスクリュー攪拌軸は、円錐型本体の内壁に沿って回転する公転と、軸を中心として回転する自転とが可能な構造を備えている。
【0030】
したがって、スクリュー攪拌軸は、自転することにより円錐型本体内の石炭灰、改質灰、造粒助材および還元剤などの造粒物を下方から上方へ掻き揚げる作用をなし、公転することにより造粒物全体の混合・造粒を促進する作用をなす。円錐型スクリュー混合機のスクリュー攪拌軸は、例えば好ましくは1〜5rpmの公転速度の回転で、かつ40〜200rpmの自転速度の回転で操作されるとよい。
【0031】
そして、このようにスクリュー攪拌軸を回転させながら円錐型本体に所定量の水を供給し、混合・造粒を行う。このときの石炭灰造粒物の粒度は、使用目的に応じて適宜変えることが可能であるが、例えば平均粒径0.3〜2mm程度に調整されるとよい。なお、ここで用いられる平均粒径とは、重量基準径を指す。
【0032】
上記ステップS4の工程において、造粒機20にて混合・造粒された造粒物は、養生ヤード31において大気温度にて初期養生がなされる。この初期養生期間は、1〜2日間程度であり、これによって造粒物の固化反応が進行し石炭灰造粒物の形状が維持される。養生期間が経過すると、石炭灰造粒物は保管ヤード32に移されて保管され、順次ユーザに向けて出荷される。次に、本実施形態に係る石炭灰造粒物に用いられる改質灰について説明する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る石炭灰造粒物に用いられる改質灰を製造するための設備の一例を示すブロック図である。この設備は、例えば火力発電プラント100と、セメント製造プラント200とを隣接させて設置した構成からなる。
【0034】
火力発電プラント100は、燃料である石炭を粉砕して微粉炭とする粉砕機101と、微粉炭を燃焼させるための微粉炭ボイラ102と、窒素酸化物(NOx)を分解するNOx分解装置(DeNOx:NOxガスを分解・除去するための装置)103と、電気集塵機などからなる集塵機104と、硫黄酸化物(SOx)を除去するSOx除去装置(DeSOx:SOxガスを除去するための装置)105と、これらの各部を通過したガスを排出する煙突106とを備えて構成されている。
【0035】
一方、セメント製造プラント200は、セメント原料である石灰石およびその他の副原料(例えば、粘土、珪石、鉄原料など)を粉砕する粉砕機201と、この粉砕した石灰石と副原料を予熱し焼成するための予熱・焼成器202と、焼成したクリンカ(予熱・焼成器202の炉内を飛び散るフライアッシュが溶けて炉壁に固着する現象による生成物)を空気で冷却するための冷却器203と、冷却されたクリンカに石膏を混合するための混合器204と、分級器205A,205B,205Cとを備えて構成されている。
【0036】
この設備では、火力発電プラント100側の粉砕機101にて粉砕された微粉炭に、セメント製造プラント200から発生するカルシウムを成分として含有するダストからなる改質剤を混合させた後、この混合物を微粉炭ボイラ102で燃焼させる。火力発電プラント100において用いられる石炭の種類は特に限定されることはなく、微粉炭の粒子径は一般的に75μm以下で平均粒径は30〜45μm程度である。
【0037】
また、微粉炭とカルシウムを含む改質灰の総重量に対するカルシウムを含む改質灰の混合率は、30〜70重量%程度であり、好ましくは45〜65重量%、特に好ましくは45〜50重量%である。このときの燃焼温度は、1300〜1500℃程度であり、好適には1400〜1500℃とされる。このダストである改質剤は、例えばセメント製造プラント200側の粉砕機201や、冷却器203および混合器204などから排出され、分級器205A〜205Cを介して微粉炭ボイラ102に供給される。
【0038】
粉砕機201から排出されるダストとは、例えばキルンダストをいい、より具体的にはロータリーキルン、プレヒーター、または粉砕機の排風ラインに設けられた電気集塵機やバグフィルターなどのダスト分離器において回収されるダストをいう。このダストのCaOとしてのカルシウム濃度は、60〜70重量%である。
【0039】
また、冷却器203から排出されるダストとは、例えばクリンカクーラーダストをいい、より具体的にはクリンカクーラーの排風ラインに設けられた電気集塵機やバグフィルターなどのダスト分離器において回収されるダストをいう。このダストのCaOとしてのカルシウム濃度は、粉砕機201から排出されるダストと同様に60〜70重量%である。
【0040】
さらに、混合器204から排出されるダストとは、例えば仕上げ工程ダストをいい、より具体的には仕上げ工程の粉砕機などの排風ラインに設けられた電気集塵機やバグフィルターなどのダスト分離器において回収されるダストをいう。この仕上げ工程ダストのCaOとしてのカルシウム濃度は、上述したダストと同様に60〜70重量%である。
【0041】
なお、改質剤は、カルシウムを含むものであればよく、一例としては酸化カルシウム(CaO)や炭酸カルシウム(CaCO)などが挙げられる。石灰石を焼成して得られる生石灰およびその製造工程において発生する生石灰を含むダストも改質剤として良好に使用することができる。
【0042】
このように、微粉炭と改質剤の混合物を微粉炭ボイラ102で燃焼させた結果として生じる改質灰は、例えば集塵機104でフライアッシュとして捕捉される。この集塵機104としては、具体的には電気集塵機が挙げられる。捕捉されるフライアッシュは、微粉炭および改質剤の平均粒径を0.1μmより大きく10μm以下、好ましくは1〜5μmとし、微粉炭ボイラ102の燃焼温度を1400〜1500℃に設定することにより、そのCaO濃度を40〜70重量%、より好ましくは45〜55重量%の範囲とすることができる。
【0043】
上述した範囲においては、フライアッシュの組成が、セメントクリンカ鉱物であるエーライト(3CaO・SiO/CS)およびビーライト(2CaO・SiO/CS)を生成可能な組成となる。すなわち、フライアッシュを、セメントクリンカ鉱物を含む改質灰とすることが可能となる。このようなセメントクリンカ相当の改質灰を、火力発電プラント100の微粉炭ボイラ102において2〜5秒の短い反応時間で生成することができる。したがって、セメントの生産性が向上するとともに、セメント製造プロセスへの負担を極力低減させることができる。なお、微粉炭ボイラ102内の酸素濃度は、一般的に3〜5容量%程度に保持される。
【0044】
また、本例の設備では、セメント製造プラント200において生成されるポルトランドセメントに対して上記改質灰を、例えば10重量%程度混合器204において混合したセメント組成物を生成することが可能である。これにより、セメント製造プラント200での石灰石焼成の負担を低減させ、省エネルギーおよびCOなどの地球温暖化につながる温室効果ガスの削減に貢献することが可能となる。
【0045】
ここで、このようにCaまたはCa化合物を含む改質剤の添加量を増加させることは、改質灰中のフリーライム(f−CaO)の含有量を増加させてしまうという懸念を生じさせることとなる。フリーライムとは、二酸化珪素や酸化アルミニウムと反応せずに残った遊離酸化カルシウム(遊離石灰)のことであり、改質灰中やセメント中のフリーライムの含有量が多いと、コンクリート硬化後にフリーライムが水分と反応して膨張し、ひび割れなどを発生させる原因となることもある。
【0046】
このような懸念を払拭するため、本例の設備においては、石炭灰の改質率を維持しながら改質灰中のフリーライムの含有率を低減させるべく、平均粒径が0.1μmより大きく10μm以下、好ましくは1〜5μm程度の改質剤を使用して、これを微粉炭と混合させた後に微粉炭ボイラ102で1400〜1500℃程度の燃焼温度によって燃焼させるようにした。このような条件での燃焼によると、改質灰中のフリーライムの含有率が5重量%以下となる改質灰を良好に得ることが可能となった。
以上のとおり、本発明に係る改質灰によれば、石炭灰の有効利用を図ることができる。そして、最終処分場の延命化を図ることができる。また、セメント製造装置のような大掛かりな装置を使用することなく、セメントクリンカ相当の組成物を安価・簡便に製造することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更や追加などが可能である。例えば、石炭灰造粒物を製造するための石炭灰造粒物製造プラント10の構成や、改質灰を得るための火力発電プラント100およびセメント製造プラント200の構成などは、図2および図3に示されたものに限らず、様々なものを適用することができる。
【0048】
また、各設備の各構成部(例えば、造粒機20など)も、上述した種類のものに限定されるものではなく、様々な装置や機器を適用することが可能である。さらに、改質灰を製造するための設備として、火力発電プラント100とセメント製造プラント200とを必ずしも連携させる必要はなく、火力発電プラント100に外部において得られた改質剤を供給して改質灰を得るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る石炭灰造粒物の製造処理工程の一例を示すフローチャートである。
【図2】同石炭灰造粒物を製造するための設備の一例を示す説明図である。
【図3】同石炭灰造粒物に用いられる改質灰を製造するための設備の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
10…石炭灰造粒物製造プラント、11…石炭灰貯蔵サイロ、12…改質灰貯蔵サイロ、13…造粒助材貯蔵サイロ、14…還元剤輸送ライン、15…水輸送ライン、20…造粒機、21…造粒物輸送機、31…養生ヤード、32…保管ヤード、100…火力発電プラント、101,201…粉砕機、102…微粉炭ボイラ、103…NOx分解装置、104…集塵機、105…SOx除去装置、106…煙突、200…セメント製造プラント、202…予熱・焼成器、203…冷却器、204…混合器、205A,205B,205C…分級器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰に改質灰と水を添加したものを造粒した後養生してなることを特徴とする石炭灰造粒物。
【請求項2】
造粒助材をさらに添加してなることを特徴とする請求項1記載の石炭灰造粒物。
【請求項3】
還元剤をさらに添加してなることを特徴とする請求項2記載の石炭灰造粒物。
【請求項4】
73〜90重量%の前記石炭灰に対して、5〜12重量%の前記改質灰を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の石炭灰造粒物。
【請求項5】
前記改質灰は、微粉炭に平均粒径が0.1μmより大きく10μm以下のカルシウムを含む改質剤を混合した後その混合物を燃焼して生成され、酸化カルシウムを40〜70重量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の石炭灰造粒物。
【請求項6】
前記改質灰は、フリーライム(f−CaO)の含有率が5重量%以下であることを特徴とする請求項5記載の石炭灰造粒物。
【請求項7】
前記改質剤は、セメント製造工程で発生するダストであることを特徴とする請求項5または6記載の石炭灰造粒物。
【請求項8】
前記石炭灰はフライアッシュ、前記造粒助材はセメント製造工程で発生するキルンダスト、前記還元剤はチオ硫酸ナトリウムまたは/および多硫化カルシウムであり、高炉セメントをさらに添加してなることを特徴とする請求項3記載の石炭灰造粒物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−143740(P2008−143740A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332386(P2006−332386)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月12日〜平成18年10月13日社団法人日本エネルギー学会石炭科学部会主催の「第43回石炭科学会議」において文書をもって発表
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】