説明

研削装置

【課題】照明機器で照らしたワークをカメラで撮影して、その撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置において、照明機器の照射した光が外部に漏れるのを確実に防いで、ワークの位置が撮影データで明確に分かるようにすることで、研削加工の精度を高めることができ、また、照明機器が研削用冷却水の影響を確実に受けないようにすることで、照明機器の照明性能を維持できるようにした、研削装置を提供する。
【解決手段】照明枠52を、照明移動ユニットによって、ワークWの撮影時にはキャッチパン36の側壁36aの内方側に位置させて、ワークWの研削加工時にはキャッチパン36の側壁36aの外方側に位置させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品を砥石等で研削する研削装置、具体的には、物品(ワーク)をカメラで撮影して、カメラの撮影データを利用して物品を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品、例えば、携帯端末の液晶モニター等に用いられる薄板ガラスを、所定の形状に研削する場合に、カメラの撮影データを利用して研削加工を行うものが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、こうした薄板ガラスの端面を研削する研削装置(面取装置)が開示されている。この特許文献1に記載された研削装置では、薄板ガラスの上方から薄板ガラスの端面(外縁)をカメラで撮影して、薄板ガラスの研削位置や研削量を算出して、研削工具やテーブルの動きを制御することで、薄板ガラスの端面を研削している。
【0004】
このように、カメラによる撮影データを利用して、薄板ガラスの端面を研削することで、薄板ガラスの加工精度を高めることができ、薄板ガラスの寸法精度を高めることができる。また、カメラを利用して研削を行うことで、倣い加工のようにマスターとなる治具を用意しなくてもよいため、加工スペースを広く確保することができ、研削装置の小型化を図ることもできる。
【0005】
そして、下記特許文献2では、カメラの撮影領域を明るく照らして撮影データの明暗を明らかにするため、ワークを照らす照明装置(照明機器)を設けるものが開示されている。そして、この特許文献2の研削装置では、照明機器がワーク研削時に邪魔にならないように、照明機器を退避させる退避機構を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223005号公報
【特許文献2】特開2001−208516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般に、照明機器でワークを照らしてカメラで撮影する場合には、ワークの位置がはっきりと分かるように、ワークに光を集中的に照射して、ワークを光学的に浮かび上がらせることが考えられる。このため、照明機器には、光を効率的に照射するため、できるだけ光が外部に漏れないようにすることが求められる。
【0008】
こうした要求に対して、特許文献2に開示された照明機器では、単にワーク近傍に設置されているだけで、光が外部に漏れることを防止するような工夫はなされていない。このため、特許文献2の照明機器では、照射した光が外部に漏れて、ワークを十分に照らすことができないという問題がある。
【0009】
また、一般に、研削装置では、研削加工中の発熱等を防止するため、研削用冷却水を用いて、ワークを冷却することが行われる。このとき、大量の研削用冷却水を用いてワークを冷却することから、照明機器に研削用冷却水が飛び散る恐れがある。このように照明機器に研削用冷却水が飛び散ると、光が拡散して、ワークを適切に照射できないという問題も生じる。
【0010】
さらに、こうした照明機器は電気で作動するため、防水機能等があった場合でも電線等で漏電の問題が生じる可能性もある。
【0011】
このような問題に対して、特許文献2の照明機器では、何ら対策が取られていない。なお、特許文献2のように、ワークの研削加工時に、照明機器を退避させることで、研削用冷却水の飛び散りも少なくなると考えられるが、単に研削作業の邪魔にならない位置に退避するだけでは、確実に冷却水を避けられる位置に退避できるとは考えられず、研削用冷却水の飛散の問題は、十分に解決できない。
【0012】
そこで、本発明は、照明機器で照らしたワークをカメラで撮影して、その撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置において、照明機器の照射した光が外部に漏れるのを確実に防いで、ワークの位置が撮影データで明確に分かるようにすることで、研削加工の精度を高めることができ、また、照明機器が研削用冷却水の影響を確実に受けないようにすることで、照明機器の照明性能を維持できるようにした、研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の研削装置は、照明機器で照らしたワークをカメラで撮影して、当該撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置であって、切削用冷却水を使用してワークの研削加工を行う加工ステージと、該加工ステージの上方から未加工のワークを撮影するカメラと、該カメラでワークを撮影する際に該ワークを照射する照明機器と、前記加工ステージ上に設けられ、前記ワークを取り囲むようにして上方を開放した側壁部を有する冷却水受け皿と、前記照明機器を、ワーク撮影時には前記冷却水受け皿の側壁部の内方側に位置させて、ワーク研削加工時には前記冷却水受け皿の側壁部の外方側に位置させる照明位置移動手段と、を備えたものである。
上記構成によれば、照明機器は、照明位置移動手段によって、ワーク撮影時には、冷却水受け皿の側壁部より内方側に位置して、ワーク研削加工時には、冷却水受け皿の側壁部より外方側に位置することになる。
このため、ワーク撮影時には、照明機器が冷却水受け皿の内方側に位置してワークを照射するため、照射した光が冷却水受け皿の側壁部によって遮られることになり、外部に漏れるのを防ぐことができる。一方、ワーク研削加工時には、照明機器が冷却水受け皿の外方側に位置するため、研削用冷却水が冷却水受け皿の側壁部によって堰き止められ、照明機器側に飛散しないようにできる。すなわち、照明機器を、冷却水受け皿の内側と外側に移動させることで、冷却水受け皿の側壁部を、ワーク撮影時には「遮光板」として機能させて、ワーク研削加工時には「防水板」として機能させるのである。
なお、冷却水受け皿の側壁部の高さは、照明機器が隠れる程度の高さがあればよく、加工ステージ上において、照明機器の大きさ(厚さ)よりも側壁部の方が、高くなるように設定するのが望ましい。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記冷却水受け皿の側壁部を、平面視で略四角形状の枠状に形成して、前記照明機器を、該側壁部の内部に嵌り込む略四角形の枠部で構成したものである。
上記構成によれば、冷却水受け皿の側壁部が、略四角形状の枠状に形成されて、照明機器がその側壁部に嵌り込むような略四角形の枠部で構成されることから、照明機器が冷却水受け皿の内方側に位置する際に、冷却水受け皿が照明機器と共に、略ボックス状の略密閉空間を構成することになる。
よって、ワークを撮影する際に、冷却水受け皿からより照明機器の光が漏れにくくなり、ワークに対して、より効果的に光を照射することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記加工ステージを複数設け、該各加工ステージ間を、前記照明機器が前記照明位置移動手段で移動するように設定したものである。
上記構成によれば、複数の加工ステージを一つの照明機器が移動して、各加工ステージに載置された各ワークを、それぞれ照射することになる。
このため、一つの照明機器を効率的に用いることができ、設備の簡略化を図ることができる。また、水漏れ防止、光漏れ防止機能に対しても、現在、照明機器が位置する加工ステージでは光漏れ防止機能を得つつも、隣の研削加工を行う加工ステージに対しては同時に水漏れ防止機能を得ることができる。
よって、照明機器を効率的に使用することができ、研削装置の構造をシンプルなものにできる。また、照明機器に対する水漏れ防止機能や光漏れ防止性能も高めることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記加工ステージに隣接して交換用研削ツールを保持するツールマガジンを設け、該ルーツホルダーの近傍空間を前記照明機器の待機空間とし、該待機空間と加工ステージとの間を、前記照明位置移動手段で前記照明機器が移動するように設定したものである。
上記構成によれば、研削用ツールを保持するツールマガジンの近傍空間を、照明機器が待機する待機空間とすることで、ツールマガジン近傍のデッドスペースを有効に利用して、照明機器を待機させることができる。
よって、研削装置の研削用ツールをツールマガジンを利用して自動的に交換することができつつも、このツールマガジンを設けたことにより、発生するデッドスペースを有効に利用して、照明機器を待機させることができ、照明機器を移動するように構成した場合でも、研削装置の大型化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ワーク撮影時には、照明機器が冷却水受け皿の内方側に位置してワークを照射するため、照射した光が冷却水受け皿の側壁部によって遮られることになり、外部に漏れるのを防ぐことができる。一方、ワーク研削加工時には、照明機器が冷却水受け皿の外方側に位置するため、研削用冷却水が冷却水受け皿の側壁部によって堰き止められ、照明機器側に飛散しないようにできる。
よって、本発明は、照明機器で照らしたワークをカメラで撮影して、その撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置において、照明機器の照射した光が外部に漏れるのを確実に防いで、ワークの位置が撮影データで明確に分かるようにすることで、研削加工の精度を高めることができる。また、照明機器が研削用冷却水の影響を確実に受けないようにすることで、照明機器の照明性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】研削装置の上面図。
【図2】研削装置の正面図。
【図3】研削装置の側面図。
【図4】搬送ロボットの三面図で、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が上面図。
【図5】搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図で、(a)が基準状態からワーク保持開始状態を示した図、(b)がワーク保持開始状態から加工ステージへのワーク搬送状態を示した図。
【図6】搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図で、(c)が加工ステージへのワーク搬送状態からカメラ撮影状態を示した図、(d)カメラ撮影状態から次のワークの保持開始状態を示した図。
【図7】第二加工ユニットの上面図。
【図8】第二加工ユニットの一部断面を含む正面図。
【図9】第二加工ユニットの一部断面を含む側面図。
【図10】大径の研削ツールを使用した際の詳細側面図。
【図11】小径の研削ツールを使用した際の詳細側面図。
【図12】照明移動ユニット、加工ステージ、及びツールマガジンの位置関係を、詳細に示した図であり、(a)が平面図、(b)が一部断面の側面図。
【図13】照明枠の動きを説明する図で、(a)が一方の加工ステージでの照射状態、(b)が他方の加工ステージでの照射状態、(c)が待機位置での待機状態、を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0020】
まず、研削装置の全体構成について説明する。図1は本発明の研削装置の上面図、図2は研削装置の正面図、図3は研削装置の側面図(上部のみ中央位置からの側面図)である。なお、各図において、具体的に描いていないが、この研削装置でも、周知のように、作業者の安全性を確保するため、周囲にガード板を設けている。
【0021】
この研削装置Mは、図2、図3に示すように、下部に略矩形状で格子状に組まれたベースフレーム1を設け、上部に研削加工を行うための様々なユニットを設置している。
【0022】
ベースフレーム1は、周知の鋼製の角材11,12,13を、左右方向、前後方向、及び上下方向に組むことで、上部の各ユニットを強固に支持するように構成している。
【0023】
下部のベースフレーム1の上面には、鉄属製の平板材14を全体に張架することで、ベースフレーム1内の目隠しを行う共に、ベースフレーム1上に各ユニットを設置できるようにしている。
【0024】
なお、ベースフレーム1内には、電子制御ユニット15が設置され、研削加工を行う各種ユニットの制御を行うようにしている。また、詳細には記載しないが、この電子制御ユニット15内には加工情報等を記憶する記憶手段を備えている。さらに、図示しないものの、この電子制御ユニット15に対して作業者Hが情報を入力するための制御盤も設けている。
【0025】
図1に示すように、研削装置Mの上部に設置されるユニットは、中央に設置される搬送ロボット2と、その周囲に設置される四つの加工ユニット3A、3B、3C、3Dと、搬送ロボット2の前方に設置される投入取出ステージ4と、搬送ロボット2の左右両側位置で前後方向に延びるように設置される照明移動ユニット5とで、構成している。
【0026】
前述の搬送ロボット2は、いわゆる水平方向に動く三関節のスカラロボットで構成している。図1〜図3では、動いていない基準状態で示しているが、後述する図4〜図6によって、動作状態について説明する。
【0027】
搬送ロボット2の前端に設けた上下スライド軸20の下端には、ワークである薄板ガラスWを吸着保持するハンド機構としての吸着ハンド21を設けている。また、上下スライド軸20の上端には、取付ブラケットを介して、画像取り込み用のカメラ23を設けている。
【0028】
この搬送ロボット2は、ワークである薄板ガラスW(Wo,Wi)を、投入取出ステージ4から各加工ユニット3A、3B、3C、3Dへ、また、各加工ユニット3A、3B、3C、3Dから投入取出ステージ4へ、それぞれ搬送するようにしている。このワークWの搬送作業は、前述した吸着ハンド21を利用して行う。また、この搬送ロボット2では、前述したカメラ23により、搬送後に載置したワークWを、各加工ユニット3A、3B、3C、3Dの上方から撮影するようにしている。
【0029】
前述の四つの加工ユニットは、搬送ロボット2の前後左右にそれぞれ設けられ、第一加工ユニット3Aと、第二加工ユニット3Bと、第三加工ユニット3Cと、さらに、第四加工ユニット3Dとして設置されている。
【0030】
各加工ユニット3A、3B、3C、3Dの構成要素は、全て同じもので設定しており、全て同じ研削作業を行えるようにしている。例えば、第一加工ユニット3Aで示すように、構成要素には、ワークWを研削状態で吸着保持する加工ステージ30と、加工ステージ30の上方からワークWを研削する研削スピンドル31と、加工ステージ30に隣接して複数の研削ツール(砥石)を保持するルーツマガジン32と、を備えている。
【0031】
そして、このうち、加工ステージ30には、中央の加工テーブル33を左右方向にスライド移動させる左右スライド機構34を設けており、加工テーブル33の左右両側(右側は研削スピンドル等で隠れており図示せず)には樹脂製のジャバラカバー35を設けて、左右スライド機構34に研削用冷却水が侵入するのを防止している。また、加工テーブル33の上面には、矩形ボックス状で上方が開放したキャッチパン36を設けて研削用冷却水が外部に飛散するのを防止している。また、図1では詳細に図示しないが、研削用冷却水をワークWに噴射する冷却水プレート37を、キャッチパン36に隣接して設けている。
【0032】
また、研削スピンドル31は、前後方向にスライド移動する前後スライド機構38を備えており、この前後スライド機構38との間に、上下方向に移動する上下ガイド機構39を設けている。こうして、研削スピンドル31が前後方向のみならず上下方向にも自由に移動するように構成している。
【0033】
なお、前後スライド機構38は、図2に示すように、前後方向に延びる大型角材のサイドフレーム16に対して強硬に固定している。これにより、研削スピンドル31の支持剛性が高められ、研削精度を高めることができる。
【0034】
ツールマガジン32は、最大五本の研削ツール(砥石)6…(図2、図3参照)が保持できるように構成している。こうして、径の異なる砥石や研磨材の異なる砥石など、複数の研削ツール6を、研削スピンドル31で自動的に交換できるようにしている。
【0035】
前述の投入取出ステージ4は、作業者Hが開閉操作する開閉扉40と、開閉扉40と連動して動く長方形形状のカートリッジ設置台41と、カートリッジ設置台41に着脱自在に設置されるワークカートリッジ42と、を備えている。
【0036】
開閉扉40は、下端に水平方向に延びるヒンジ軸43(図3参照)を設けた横長長方形の鋼板によって構成され、上部外面には平面視略コ字形状のハンドル部44を設けている。この開閉扉40を作業者Hがハンドル部44を持ってヒンジ軸43を中心に手前側に回動させることで、投入取出ステージ4を開放することができ、研削装置M内へワークWの出し入れを行うことができる。
【0037】
カートリッジ設置台41は、その両側端に開閉扉40に連結されたリンク機構45を設けており、また、下部を前後方向に延びるスライドレール46(図3参照)にスライド係合している。このため、作業者Hが開閉扉40を開閉操作すると、カートリッジ設置台41もこの開閉操作に連動して研削装置Mの内外を行き帰するようになる。
【0038】
ワークカートリッジ42は、左右方向に四列でワークWの積層体が並ぶように、樹脂壁47で仕切った積層部48を、四つ設けている。このうち、右側二つの積層部48では、未加工のワークWiを積層して、左側二つの積層部48では、加工済のワークWoを積層するように設定している。このワークカートリッジ42は、作業者Hがカートリッジ設置台41から容易に取り外しできるように、持ち運びする際の把持部49を両端に設けている。
【0039】
このワークカートリッジ42に、加工前のワークWをセット(設置)して、作業者HがワークWをセットしたワークカートリッジ42をカートリッジ設置台41に置き、開閉扉40を閉鎖することで、加工前準備を整えることができる。
【0040】
前述の照明移動ユニット5は、搬送ロボット2の両側位置で前後方向に延びる移動スライドレール50と、この移動スライドレール50に上下移動機構51を介して支持された略正方形の照明枠52と、を備えている。
【0041】
移動スライドレール50は、前端と後端を、支持ブラケット50a,50aを介して金属製の平板材14に設置している。この移動スライドレール50の後端は、後側の加工ユニット(第二加工ユニット3B、第四加工ユニット3D)のツールマガジン32の位置まで延設している。このため、照明枠52が研削装置Mの後側に大きく移動させることが可能となり、照明枠52を使用しない待機タイミング(各加工ユニット3A、3B、3C、3Dで研削加工等を行っているタイミング)では、照明枠52を後側の位置まで後退させることができる。
【0042】
照明枠52は、各枠部52a…の内周面に図1では図示しないLEDを複数埋め込むことで、枠内を照射するように構成している。この照明枠52は、カメラ23でワークWを撮影する際には、加工ステージ30のキャッチパン36内に投入されて、LEDでワークWを側方から照射することで、ワークWの外形形状(輪郭)を浮かび上がらせて、ワークWの撮影を容易にしている。
【0043】
次に、搬送ロボット2について、図4〜図6で説明する。図4は、搬送ロボットの三面図で(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が上面図である。図5、図6は、搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図であり、図5(a)が基準状態からワーク保持開始状態を示した図、図5(b)がワーク保持開始状態から加工ステージへのワーク搬送状態を示した図、図6(c)が加工ステージへのワーク搬送状態からカメラ撮影状態を示した図、図6(d)カメラ撮影状態から次のワークの保持開始状態を示した図、である。
【0044】
搬送ロボット2は、前述のように水平方向に移動する三関節のスカラロボットで構成しており、水平方向で縦横無尽に動くように構成している。具体的には、図4(b)に示すように、第一関節2Ja、第二関節2Jb、及び第三関節2Jcによって、左右方向に自由に動き、前側アーム24の前端の上下スライド軸20は、水平方向に自由に移動するようになっている。
【0045】
この上下スライド軸20は、前側アーム24前端を上下方向に貫通設置しており、上下方向にも自由にスライド移動するようになっている。
【0046】
上下スライド軸20の下端には、前述した吸着ハンド21を設けている。この吸着ハンド21は、長方形の平板状のベースプレート25に、下側を向いた四つの吸盤26…を設けている。この吸盤26に負圧を作用させることで、吸着力を生じさせ、ワークである薄板ガラスWを吸着保持するように構成している。
【0047】
この四つの吸盤26…は、図4(c)にも示すように、二つずつ、左右に設けることで、それぞれ、二つの吸盤26で一枚のワークWを吸着保持するようにしている。このため、一つの吸着ハンド21で、二枚のワークW、Wを一度に搬送することができる。
【0048】
また、この吸着ハンド21には、下向きに突出したピン27をベースプレート25の両端に設けている。このピン27、27は、ワークカートリッジ42内のワークWがワークカートリッジ42内で整列するように、ワークWを搬送する前に、搬送ロボット2で一旦、ワークWをワークカートリッジ42内に押し込む際に用いる当接部材である。
【0049】
上下スライド軸20の上端には、前述したようにカメラ23を設けている。このカメラ23は、吸着ハンド21のワークWの保持位置(ベースプレート25の突出部分)から、約90°ズラした位置に設置している。これは、カメラ23で下方を撮影する際に、ベースプレート25が邪魔にならないようにするためである。このカメラ23は、一般的なCCDカメラで構成しており、二次元の画像データを取り込むようにしている。
【0050】
また、このカメラ23は、図2、図3にも示すように、研削装置Mの内で最も高い位置、具体的には、最も高い搬送ロボット2の前側アーム24よりも高い位置に設置している。このようにカメラ23を設置することで、他の加工ユニット3A,3B,3C,3Dから飛んでくる飛散物が、カメラ23に飛び散るのを防ぐことができ、カメラ23のレンズ(図示せず)に飛散物が付着するのを防止している。
【0051】
また、このカメラ23は、取付ブラケット22を介して上下スライド軸20に取り付けている。この取付ブラケット22は、やや下向きに屈曲して水平方向に延びる腕部22aと、上下方向位置を調整可能なカメラ取付部22bと、上下スライド軸20に筒状に固定されるシャフト固定部22cとで構成している。このように、カメラ23を、水平方向に延びる腕部22aを備える取付ブラケットを介して上下スライド軸20に設けていることで、カメラが上下スライド軸20から水平方向に離間して位置し、撮影時には、前側アーム24の一部が映り込むのを防ぐことができる。
【0052】
次に、搬送ロボット2の搬送時の動作を、図5、図6を利用して説明する。
【0053】
図5(a)に示すように、搬送ロボット2は、まず、基準状態から各関節を反時計廻りにわずかに回動させ、ワークカートリッジ42に積層された未加工のワークWiを吸着ハンド21で吸着する。このとき、上下スライド軸20を大きく反時計廻りに回動させることで、吸着ハンド21のベースプレート25を回動させ、左側の吸盤26で未加工のワークWiを吸着する。
【0054】
その後、図5(b)に示すように、搬送ロボット2は、各関節を大きく反時計廻りに回動させて、第一加工ユニットの加工ステージ30に、ワークWiを搬送する。このとき、ワークWiは大体の位置に搬送されて、加工ステージ30に載置されることになる。すなわち、厳密な位置確認を行うことなく、ワークWiは加工ステージ30に搬送されて、大凡の位置に載置されるのである。
【0055】
そして、図6(c)に示すように、搬送ロボット2は、前側アーム24をさらに反時計廻りに回動させると共に、上下スライド軸20を時計廻りに回動させることで、カメラ23を確実にワークWiの上方(真上)に位置させる。こうして、搬送ロボット2は、自ら搬送して載置したワークWiを、カメラ23で撮影するようにしている。
【0056】
そして最後に、図6(d)に示すように、搬送ロボット2は、ワークWiの撮影終了後に、次の未加工のワークWiを搬送するために、各関節を時計廻りに戻して、ベースプレート25の左側の吸盤26で、次のワークWを吸着するようにしている。
【0057】
そして、その後、搬送ロボット2は、図5(b)の動作を繰り返し、ワークカートリッジ42から次の加工ステージに未加工のワークWiを搬送する。こうして、空いている加工ユニットの加工ステージに、次々と未加工のワークWiを搬送して載置する。そして、その搬送後に、カメラ23で加工ステージに載置したワークWiを撮影するようにしている。
【0058】
なお、具体的には図示しないが、搬送ロボット2は、加工が終了した加工済のワークWoを、右側の吸盤26で吸着することで、加工ステージ30からワークカートリッジ42に搬送する。搬送ロボット2は、図5(b)の動作の前に、加工ステージ30から加工済のワークWoを取り上げることで、未加工のワークWiの搬送を行いつつ、加工済のワークWoの搬送も同時に行うのである。
【0059】
次に、加工ユニットについて説明する。図7は加工ユニットの上面図、図8は加工ユニットの一部断面を含む正面図、図9は加工ユニットの一部断面を含む側面図である。
【0060】
加工ユニット3B(便宜上、第二加工ユニットで説明する)は、図7に示すように、前述したワークWを保持する加工ステージ30と、ワークWを研削する研削スピンドル31と、研削ツール6を保持するツールマガジン32と、を備えている。
【0061】
そして、このうち、加工ステージ30には、前述のように、矩形の加工テーブル33と、加工テーブル33を左右に動かす左右スライド機構34と、左右スライド機構34を覆うジャバラカバー35と、加工テーブル33の上面に設置されたキャッチパン36と、研削用冷却水を噴射する冷却水プレート37と、を備えている。
【0062】
さらに、この加工ステージ30は、図8に示すように、さらに様々な構成要素を備えている。
【0063】
まず、加工テーブル33の上面には、キャッチパン36の内側中央にワークWを吸着保持するための吸着台70を設けている。この吸着台70は、上面(受け面)70aが長方形(図7参照)となった略T字状のブロック形状の台座で構成している。吸着台70の上面70aには、負圧を付与するために、複数の吸気口70b(図10、図11参照)を設けている。また、薄板ガラスであるワークWの表面に傷が生じないようにするため、吸着台70の上面70aには、平滑加工を施している。
【0064】
吸着台70の周囲には、研削加工の際の機械原点を算出するための基準ピンを二つ71,71、カメラ23側(上方側)を向くように立設している。この基準ピン71,71は、ワークWを設置(保持)した状態で、カメラ23から撮影できるように、ワークWが重ならない位置に配置している。また、二つの基準ピン71,71は、ワークWに対して対角に位置するように配置している。なお、ワークWが完全に透明である場合には、基準ピンの位置はワークと重なるように設定してもよい。
【0065】
そして、基準ピン71の先端部71aは、図8に示すように、その高さhpが吸着台70の上面70aの高さhsと同じ高さになるように設定している。このように設定することで、カメラ23で撮影する際に、ワークWと基準ピン71との間でピントのズレが生じないため、画像データの取り込みを確実に行える。
【0066】
また、キャッチパン36の内部には、上げ底で傾斜した略四角形の背景板72を設けている。この背景板72は、全面を艶消し黒で塗付しており、カメラ23に映り込んだ際の反射を防いで、ワークWと基準ピン71の映り込みを際立たせるようにしている。また、背景板72を傾斜するように設置することで、研削用冷却水が即座に流れ落ちるようにしている。また、この背景板72には、基準ピン71と吸着台70を挿通させるための挿通穴(具体的には図示せず)を形成している。
【0067】
キャッチパン36の隣接位置には、キャッチパン36に流れ落ちる研削用冷却水を排水する排水管73と排水樋74を設けている。この排水管73と排水樋74を設けることで、研削用冷却水がキャッチパン36内に滞留することを防止している。
【0068】
左右スライド機構34は、周知のLMガイドによって、加工テーブル33が左右方向に自由にスライド移動するようになっている。そして、この左右スライド機構34はステッピングモータ34Mによって、スライド量が制御されるように構成している。すなわち、左右スライド機構34によって、加工テーブル33の左右方向の位置が制御されるようになっているのである。これにより、後述する研削加工の際には、左右スライド機構34が研削経路の左右位置を規定することになる。
【0069】
ジャバラカバー35は、いわゆるアコーディオンのように左右方向に伸縮するように構成している。このため、加工テーブル33が左右スライド機構34で左右に移動したとしても、加工テーブル33とジャバラカバー35との間で隙間が生じず、左右スライド機構34に研削用冷却水が流れ込むのを防ぐことができる。
【0070】
キャッチパン36は、前述のように上方が解放した矩形ボックス状に構成しており、外部に研削用冷却水が漏れないように設定している。具体的には、図8に示すように、キャッチパン36の側壁36aを、基準ピン71(hp)や吸着台70(hs)よりも高い位置hcまで延ばして、研削用冷却水の漏れを防いでいる。
【0071】
冷却水プレート37は、左右方向に出没自在になるように構成しており、研削加工時には、キャッチパン36の上方を覆う位置まで突出するように構成している。そして、この冷却水プレート37の中央には、前後方向に延びる長穴状の研削挿通穴37aを設けている。この研削挿通穴37aは、研削加工時に研削ツール6を挿通するために設けている。また、具体的に図示しないものの、冷却水プレート37の裏面(下面)には、複数の噴射口を設けて、冷却水プレート37内部を流れる研削用冷却水を下方(ワークW側)に噴射するように構成している。
【0072】
研削スピンドル31は、研削を行う際の回転駆動力を発生する電動モータ31aと、電動モータ31aのスピンドル軸に研削ツール6(砥石)を固定するチャック31bと、を備えている。
【0073】
研削スピンドル31は、前述したように、前後スライド機構38を備えている。この前後スライド機構38は、前後方向に延びるスライドレール38aと、スライドレール38a上を移動するスライダー38bとを備えている。この前後スライド機構38も、ステッピングモータ38Mによってスライダー38bのスライド量が制御されるように構成しており、この前後スライド機構38によって研削スピンドル31の前後位置が制御されるようになっている。よって、研削加工の際には、この前後スライド機構38が研削経路の前後方向位置を規定することになる。
【0074】
また、研削スピンドル31と前後スライド機構38との間には、前述のように、上下ガイド機構39を設けている。この上下ガイド機構39も、上下方向に延びるレール39aと、レール上を移動する移動部材39bとを備えている。さらに、この上下ガイド機構39もステッピングモータ39Mによって移動部材の上下移動量が制御されるように構成しており、この上下ガイド機構39によって、研削スピンドル31の上下位置を制御するようになっている。これにより、研削ツール6をワークWに位置合わせする際には、この上下ガイド機構39を使って、位置調整するようにしている。
【0075】
ツールマガジン32は、前述のように、最大五本の研削ツール6…を保持できるように構成している。具体的には、図9に示すように、研削ツール6…を保持する五つのツール保持部32a…を前後方向に一列に並べて、このツール保持部32aと研削スピンドル31との間で、自動的に研削ツール6のやり取りを行うように構成している。
【0076】
このため、この研削装置Mでは、研削箇所に応じて、複数の研削ツール6…を自動的に交換することができ、研削自由度を高めることができる。
【0077】
研削スピンドル31の研削ツール6について、図10、図11によって説明する。図10は大径の研削ツールを使用した際の詳細側面図、図11は小径の研削ツールを使用した際の詳細側面図である。
【0078】
前述したように、この研削スピンドル31は、チャック31bによって研削ツール6を着脱することができ、図10に示すような大径の研削ツール6Aと、図11に示すような小径の研削ツール6Bとを切り替えて装着することができる。
【0079】
図10に示す、大径の研削ツール6Aは、ダイヤモンド粒子60を表面に付着させた大径円柱状の加工部61と、チャック31bに固定される上下方向に延びるシャフト部62とを備え、加工部61の上側には外方に広がる鍔部63を設けている。また、加工部61の下部には三条で筋状に窪んだ凹部64を形成している。
【0080】
この大径の研削ツール6を、研削スピンドル31で回転させて、ワークWの外縁(外形)Waに凹部64を当接させることで、ワークWの外形研削や面取りを行うことができる。なお、70は吸着台である。
【0081】
こうして、大径の研削ツール6AによってワークWを研削することで、研削加工時に研削ツール6Aが安定して切削が行われるため、加工精度を高めることができる。また、研削ツール6Aが大径であるため、ツールの工具寿命も長くすることができ、ワークWを大量に連続して研削できる。
【0082】
図11に示す小径の研削ツール6Bは、表面にダイヤモンド粒子160を付着させた小径円柱状の加工部161と、チャック31bに固定されるシャフト部162とを備え、加工部161の上側には鍔部163を設けている。また、加工部161の下部には、三条で筋状に窪んだ凹部164を形成している。
【0083】
この小径の研削ツール6Bでは、径が小さいため、研削ツール6をワークWの穴部Wb内に差し込んで、穴部Wbの内縁Wcに凹部164を当接させることで、ワークWの穴部Wbの内形研削や面取りを行うことができる。
【0084】
こうして、小径の研削ツール6BでワークWの穴部Wbの内形を研削することによって、穴部Wbの径が小さく加工しにくい場合であっても、研削加工を確実に行うことができる。
【0085】
次に、前述した照明移動ユニットによる照明枠の動きについて、図12、図13を利用して説明する。図12は照明移動ユニット、加工ステージ、及びツールマガジンの位置関係を、詳細に示した図であり、(a)が平面図、(b)が一部断面の側面図である。図13は照明枠の動きを説明する図で、(a)が一方の加工ステージでの照射状態、(b)が他方の加工ステージでの照射状態、(c)が待機位置での待機状態、を示した図である。
【0086】
図12に示すように、第一加工ユニット3Aの加工ステージ30、第二加工ユニット3Bの加工ステージ30、及びツールマガジン32は、前後方向に並んで隣接して設置している。これは、研削スピンドル31(図1参照)が前後方向スライド機構38(図1参照)によって前後方向にしか移動しないため(一点鎖線が研削ツール6の移動ライン)、この研削スピンドル31の移動方向に対応して、各加工ステージ30…等を設置しているからである。
【0087】
そして、この設置位置に伴なって、照明移動ユニット5の移動スライドレール50も、前後方向に延びて、この三者の位置に、照明枠52が移動できるように設定している。
【0088】
具体的には、図12(a)に示すように、照明枠52は、前後方向にスライド移動可能に構成しており、後端のツールマガジン32の側方位置(図面では下側)で待機するようにしている(点線で示した位置)。このように、ツールマガジン32の側方位置のデッドスペースを利用して、照明枠52を待機させることで、この部分を照明枠52の待機空間WSとしている。
【0089】
また、図12(b)に示すように、照明枠52は、第二加工ユニット3Bの上方から加工ステージ30のキャッチパン36内に落ち込むように、第二加工ユニット3Bの加工ステージ30の上方に位置して、カメラ23撮影時には、上下移動機構51によって下方に移動して、キャッチパン36内に嵌り込むようにしている。さらに、照明枠52は、第一加工ユニット3Aの加工ステージ30に対しても、キャッチパン36内に嵌り込むように、矢印で示すように、第一加工ユニット3A側(前側)に移動できるようにしている。
【0090】
キャッチパン36は、図12(a)でも示すように、平面視で、略四角形の枠状(環状)に位置する側壁36aを有している。この側壁36aは、アルミ製の板材を屈曲成形することで構成しており、大きな弁当箱のような外観をなす。このような側壁36aを加工ステージ30上に設けることで、キャッチパン36の内部(内側)の研削用冷却水が外部に漏れるのを防いでいる。なお、この側壁36aの高さhcは、図12(b)にも示すように、照明枠52の厚さ(上下幅)Jよりも長く設定しており、照明枠52がキャッチパン36内に位置する際には、完全に側壁36aで覆われるようにしている。
【0091】
照明枠52は、図12(b)に示すように、側壁36aの平面視形状と相似した平面視略四角形の環状体で構成している。そして、その上側に位置する板状部材52Aをベースフレームとして構成している。この板状部材52Aを構成する四つの枠部52a…の下側には、複数のLED52B(図面では一つ)を、それぞれの光源52Baが内側を向くように設けている。このようにLED52Bの光源52Baを設けることで、光を照射した際にワークWの外周を全体にまんべんなく照らすことができる。
【0092】
加工ステージ30は、図12(a)で矢印に示すように、第一加工ユニット3Aも、第二加工ユニット3Bも、共に左右方向(図面では上下方向)に移動するようになっており、研削加工前(カメラ撮影時等)又は加工終了後には、照明移動ユニット5側(図面下側)に移動して、研削加工時には、研削スピンドル31側(図面上側)に移動するようになっている。
【0093】
研削スピンドル31でワークWを研削する際には、前述のように研削ツール6をワークWに当接させて行うが、この際、冷却水プレート37がキャッチパン36を完全に覆うように設定されるため、キャッチパン36内部が、ほぼ密閉状態となり、キャッチパン36内の研削用冷却水が外部に漏れるのを防いでいる。
【0094】
照明枠52の動きを、図13で説明する。まず、図13(a)に示すように、第二加工ユニット3Bの加工ステージ30に載置したワークWを撮影する場合には、照明枠52は、第二加工ユニット3Bの加工ステージ30のキャッチパン36内に位置する。そして、その位置は、ワークW端面にLEDの光源52Baが対向する位置に設定している。なお、照明枠52には、LED52Bの光がワークW端面を確実に照射するように、光源の指向性を高めるスリット壁52Cを設けている。
【0095】
このように照明枠52を使ってLED52Bの光を照射することで、照明枠52の板状部材52Aが、キャッチパン36の内でいわゆる「落し蓋」のように機能して、キャッチパン36内部をほぼ密閉状態にできる。このため、キャッチパン36からの光漏れを少なくでき、光の照射効率を高めることができる。
【0096】
また、これと同時に第一加工ユニット3Aの加工ステージ30では、研削用冷却水KWを用いて研削加工を行っているが、この時、外部に漏れる可能性のある研削用冷却水KWについても、照明枠52は、側壁36aを隔てた位置(キャッチパン36内)に位置しているため、影響をうけることはない。
【0097】
図13(b)に示すように、第一加工ユニット3Aの加工ステージ30に設置したワークWを撮影する場合には、照明枠52は、第一加工ユニット3Aの加工ステージ30のキャッチパン36内に位置する。この位置も、ワークW端面にLEDの光源52Baが対向する位置に設定している。この場合も、照明枠52がキャッチパン36に嵌め込まれるように位置することで、板状部材52Aがいわゆる「落し蓋」のようになり、キャッチパン36をほぼ密閉して、光の漏れを少なくでき、光の照射効率を高めることできる。
【0098】
また、隣接する第一加工ユニット3Aの加工ステージ30でも研削加工が行わるが、この場合も、照明枠52は、側壁36aを隔てた位置(キャッチパン36内)に位置しているため、研削用冷却水KWの影響は受けない。
【0099】
図13(c)に示すように、第一加工ユニット3Aの加工ステージ30や第二加工ユニット3Bの加工ステージ30でワークW、Wの研削加工が行われる場合には、照明枠52は、ツールマガジン32の側方位置の待機空間WSに位置して待機することになる。
【0100】
このように、ツールマガジン32の側方位置に照明枠52が位置した場合でも、各加工ステージ30のキャッチパン36の側壁36aが存在することで、キャッチパン36からの研削用冷却水KWの飛散は生じず、照明枠52への水漏れが生じるといった問題は生じない。
【0101】
こうして、照明枠52は、第一加工ユニット3Aの加工ステージ30、第二加工ユニット3Bの加工ステージ30、及びツールマガジン32側方の待機位置といった三ヶ所に、それぞれ位置することになるが、いずれの場所においても、光漏れの防止と水漏れの防止といった機能を発揮できる。
【0102】
以上のように、この実施形態の研削装置Mは、照明枠52で照らしたワークWをカメラ23で撮影して、その撮影データを利用してワークWの研削加工を行う研削装置Mであって、切削用冷却水KWを使用してワークWの研削加工を行う加工ステージ30と、この加工ステージ30の上方から未加工のワークWを撮影するカメラ23と、このカメラ23でワークWを撮影する際にワークWを照射する照明枠52と、加工ステージ30上に設けられ、ワークを取り囲むようにして上方を開放した側壁36aを有するキャッチパン36と、を備えて、照明枠52を、照明移動ユニット5によって、ワークWの撮影時にはキャッチパン36の側壁36aの内方側に位置させて、ワークWの研削加工時にはキャッチパン36の側壁36aの外方側に位置させるようにしている。
【0103】
これにより、照明枠52は、照明移動ユニット5によって、ワークWの撮影時には、キャッチパン36の側壁36aより内方側に位置して、ワークWの研削加工時には、キャッチパン36の側壁36aより外方側に位置することになる。
【0104】
このため、ワークWの撮影時には、照明枠52がキャッチパン36の内方側に位置してワークWを照射するため、照射した光がキャッチパン36の側壁36aによって遮られることになり、外部に漏れるのを防ぐことができる。一方、ワークWの研削加工時には、照明枠52がキャッチパン36の外方側に位置するため、研削用冷却水KWがキャッチパン36の側壁36aによって堰き止められ、照明枠52側に飛散しないようにできる。すなわち、照明枠52を、キャッチパン36の内側と外側に移動させることで、キャッチパン36の側壁36aを、ワークWの撮影時には「遮光板」として機能させて、ワークWの研削加工時には「防水板」として機能させるのである。
【0105】
よって、照明枠52で照らしたワークWをカメラ23で撮影して、その撮影データを利用してワークWの研削加工を行う研削装置Mにおいて、照明枠52の照射した光が外部に漏れるのを確実に防いで、ワークWの位置が撮影データで明確に分かるようにすることで、研削加工の精度を高めることができる。また、照明枠52が研削用冷却水KWの影響を確実に受けないようにすることで、照明枠52の照明性能を維持できる。
【0106】
また、この実施形態では、キャッチパン36の側壁36aを、平面視で略四角形状の枠状に形成して、照明枠52を、キャッチパン36の側壁36aの内部に嵌り込むような略四角形に構成している。
【0107】
これにより、照明枠52がキャッチパン36の内方側に位置する際に、キャッチパン36が照明枠52と共に、ボックス状の略密閉空間を構成することになる。
【0108】
よって、ワークWを撮影する際に、キャッチパン36から、より照明枠52の光が漏れにくくなり、ワークWに対して、より効果的に照射を行うことができる。
【0109】
また、この実施形態では、加工ステージ30を複数設け、各加工ステージ30…間を、照明枠52が照明移動ユニット5で移動するように設定している。
【0110】
これにより、複数の加工ステージ30…を一つの照明枠52が移動して、各加工ステージ30…に載置された各ワークW…を、それぞれ照射することになる。
【0111】
このため、一つの照明枠52を効率的に用いることができ、設備の簡略化を図ることができる。また、水漏れ防止、光漏れ防止機能に対しても、現在、照明枠52が位置する加工ステージ30では光漏れ防止機能を得つつも、隣の研削加工を行う加工ステージ30に対しては同時に水漏れ防止機能を得ることができる。
【0112】
よって、一つの照明枠52を効率的に使用することができ、研削装置の構造をシンプルなものにできる。また、照明枠52に対する水漏れ防止機能や光漏れ防止性能も高めることができる。
【0113】
また、この実施形態では、加工ステージ30に隣接してツールマガジン32を設け、このルーツホルダーの側方を、照明枠52の待機空間WSとし、この待機空間WSと加工ステージ30との間を、照明枠52が移動するように設定している。
【0114】
これにより、ツールマガジン32側方のデッドスペースを有効に利用して、照明枠52を待機させることができる。
【0115】
よって、研削装置Mの研削用ツール6…を、ツールマガジン32を利用して自動的に交換することができつつも、このツールマガジン32を設けたことにより、発生するデッドスペースを有効に利用して、照明枠52を待機させることができ、照明枠52を移動するように構成した場合でも、研削装置Mの大型化を防ぐことができる。
【0116】
以上、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、あらゆる研削装置に適用する実施形態を含むものである。
【0117】
この実施形態の研削装置Mでは、ワークWを携帯電話用の薄板ガラスとしているが、例えば、携帯音響機器用の薄板ガラスであってもよいし、また、携帯ゲーム機用の薄板ガラスであってもよい。さらに、アクリル製の板や、金属製の物品や板、木製品やプラスチック製品等であってもよい。
【0118】
また、研削装置の全体構成についても、この実施形態に限定されるものではなく、例えば、加工ユニットが、二つや三つ、さらに五つや六つなど、多くの加工ユニットを設けるようなものに、適用してもよい。
【0119】
さらに、この実施形態では、研削スピンドル31と加工テーブル33をそれぞれ作動させることで、ワークWの研削加工を行うようにしたが、例えば、研削スピンドル31だけを動かして、ワークWを研削してもよい。
【0120】
研削ツール6についても、この実施形態に挙げたようなものに限定されるのではなく、例えば、球型の研削ツールや、円盤型の研削ツール、また円錐型の研削ツールであってもよい。また、砥石材料についてもダイヤモンドに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0121】
M…研削装置
W…ワーク(薄板ガラス)
Wi…未加工のワーク
Wo…加工済のワーク
2…搬送ロボット
3A…第一加工ユニット
3B…第二加工ユニット
3C…第三加工ユニット
3D…第四加工ユニット
4…投入取出ステージ
5…照明移動ユニット
23…カメラ
30…加工ステージ
31…研削スピンドル
36…キャッチパン
36a…側壁
52…照明枠



【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明機器で照らしたワークをカメラで撮影して、当該撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置であって、
切削用冷却水を使用してワークの研削加工を行う加工ステージと、
該加工ステージの上方から未加工のワークを撮影するカメラと、
該カメラでワークを撮影する際に該ワークを照射する照明機器と、
前記加工ステージ上に設けられ、前記ワークを取り囲むようにして上方を開放した側壁部を有する冷却水受け皿と、
前記照明機器を、ワーク撮影時には前記冷却水受け皿の側壁部の内方側に位置させて、ワーク研削加工時には前記冷却水受け皿の側壁部の外方側に位置させる照明位置移動手段と、を備えた
研削装置。
【請求項2】
前記冷却水受け皿の側壁部を、平面視で略四角形状の枠状に形成して、
前記照明機器を、該側壁部の内部に嵌り込む略四角形の枠部で構成した
請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
前記加工ステージを複数設け、
該各加工ステージ間を、前記照明機器が前記照明位置移動手段で移動するように設定した
請求項1又は2記載の研削装置。
【請求項4】
前記加工ステージに隣接して交換用の研削ツールを保持するツールマガジンを設け、
該ルーツマガジンの近傍空間を前記照明機器の待機空間とし、
該待機空間と加工ステージとの間を、前記照明位置移動手段で前記照明機器が移動するように設定した
請求項1〜3いずれか記載の研削装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−83853(P2011−83853A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237946(P2009−237946)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(302031502)株式会社 ハリーズ (16)
【Fターム(参考)】