説明

研削部材のドレス方法および研削装置

【課題】研削装置の研削部材をドレスするドレス方法において、作業者による作業ミスの発生を抑え、かつ効率的にドレスすることができるドレス方法と、そのドレス方法を好適に実施する研削装置を提供する。
【解決手段】搬送ロボットにより供給カセットから位置決めテーブル上に載置されたドレス板100を供給手段73の吸着パッド74で吸着保持し、チャックテーブルの保持面に載置する。ターンテーブルを回転させてチャックテーブルに保持したドレス板100をドレスするスピンドルの下方に移動させ、砥石ホイールでドレス板100を研削する。このとき、厚さ測定ゲージでドレス板100の厚さを測定しながら研削する。研削が終了したら、ドレス板100を着脱位置に戻し、回収手段78によりチャックテーブル上からドレス板100を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハなどを研削する研削装置の研削部材をドレスする方法とそのドレス方法を好適に実施する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの軽薄短小化は、近年益々顕著となってきている。そこで、デバイスの薄化を実現するため、多数のデバイスが表面に形成された半導体ウェーハを、デバイスに個片化する前の段階で裏面研削して所望の厚さに薄化加工することが行われている。半導体ウェーハの裏面研削には、半導体ウェーハを真空チャック式のチャックテーブルに吸着、保持して回転(自転)させ、チャックテーブルに対向配置した砥石などの研削部材を回転させながら研削送りして、回転しているウェーハの被研削面に押し付ける形式の研削装置が一般に用いられている。
【0003】
シリコンなどの半導体ウェーハを砥石などの研削部材によって研削していると、砥石に含まれるダイヤモンド砥粒が摩滅するなどして研削状態が悪化する場合がある。このとき、半導体ウェーハに代えて、アルミナなどの砥粒を結合材によって成形したドレス部材をチャックテーブルにセットし、このドレス部材を研削部材で研削することで砥石のコンディションを回復させることが可能である。このドレス作業を行うタイミングを見出す方法として、例えば特許文献1に記載の方法がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−29630公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような研削装置では、ドレス部材をチャックテーブルにセットするセッティング作業などを作業者が手作業で行っている。これは、多くのドレス板が多孔質のドレッサ部を採用し、ウェーハを搬送する平坦な吸着部を有する搬送パッドでは吸着搬送できないからである。このため、作業ミスが発生するおそれがあることは否めない。作業者による作業ミスが発生すると、ドレスがきちんと行われず、砥石のコンディションが十分に回復しないおそれがある。また、ドレス作業を行うことでウェーハの研削作業が中断してしまうため、生産効率の低下を招くといった問題があった。
【0006】
よって、本発明は研削装置の研削部材をドレスするドレス方法において、作業者による作業ミスの発生を抑え、かつ効率的にドレスすることができるドレス方法と、そのドレス方法を好適に実施する研削装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドレス方法は、搬送手段によって被加工物を搬送する全自動搬送機能を有し、保持手段に保持した被加工物の一の面を研削部材によって研削する研削装置の、保持手段にドレス板を保持し、ドレス板を研削することで研削部材をドレスするドレス方法であって、研削部材によって研削されるドレッサ部と、搬送手段によって保持され得る被保持領域とを有するドレス板を、搬送手段が被保持領域を保持して保持手段に載置するドレス板載置工程と、研削部材によってドレス板のドレッサ部を研削してドレスするドレス工程と、ドレス板を、搬送手段が被保持領域を保持して保持手段から取り去るドレス板除去工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明のドレス方法では、ドレス板にドレッサ部と被保持領域とを設けているため、被加工物を研削するときと同じようにドレス板を搬送手段で搬送することができる。これにより、ドレス板は、搬送手段によって自動的に保持手段に載置され、研削部材で研削される。ドレス板の研削終了後には、搬送手段によって保持手段からドレス板が除去される。この結果、従来のように作業者が手作業で保持手段にドレス部材をセットする必要がなく、ドレス作業が被加工物の研削作業と同様に自動で行えるため、作業者による作業ミスの発生を抑えることができる。
【0009】
本発明における被加工物は、半導体ウェーハなどの円盤状の基板が挙げられる。このとき、上記ドレス方法を好適に実施するドレス板として、保持手段に保持され得る円盤状の基台と、基台の表面の中心付近に配設される円形状の第1ドレッサ部と、基台の表面の第1ドレッサ部の周囲に配設され、被加工物の直径と同等の直径を有する環状の第2ドレッサ部とを備え、第1ドレッサ部と第2ドレッサ部との間に基台の表面部分が、搬送手段の吸着面に吸着して保持され得る被保持領域として構成された形態のものが挙げられる。また、このドレス板に対応する搬送手段として、環状の第2ドレッサ部の内径と略同等の直径を有するドーナツ状の吸着面、および吸着面に囲まれた中心に第1ドレッサ部と略同形で第1ドレッサ部を収容する円形状の凹部を有する形態のものが挙げられる。
【0010】
ドレス板と搬送手段を上記のような形態にすることで、搬送手段によってドレス板を搬送することが可能になるとともに、プローブを用いた厚さ測定ゲージで第2ドレッサ部の厚さを測定しながらドレス工程を行うことができる。通常、ドレス作業によって研削部材の刃先が除去されて刃先高さが変わるため、ドレス作業後には、保持手段からの研削部材の高さ位置を確認するセットアップ作業を行っている。このため、従来ではドレス作業後、速やかに被加工物の研削作業を再開させることができなかった。しかしながら本発明では、第2ドレッサ部の厚さを測定しながらドレス工程を行うことで、ドレス作業後の研削部材の高さ位置を適確に把握することができる。このため、ドレス作業後のセットアップを行う必要がなく、速やかに被加工物の研削作業を再開させることができる。また、加工前のドレス板の厚さを測定できるため、研削部材の刃先をドレス板の表面ぎりぎりまで早送りして作業時間を最適化したり、ドレス板を指定量確実に除去するまでドレス加工を行うことができる。その結果、作業効率の向上が図られる。
【0011】
次に、本発明の被加工物の研削装置は、上記本発明のドレス方法を好適に実施することができる装置であり、搬送手段によって被加工物を搬送する全自動搬送機能を有し、保持手段に保持した被加工物の一の面を研削部材によって研削する研削装置である。そして、研削部材によって研削されるドレッサ部と、搬送手段によって保持され得る被保持領域とを有し、搬送手段が被保持領域を保持した状態で、前記保持手段に載置されたり、保持手段から取り去られたりするドレス板を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明における被加工物は、半導体ウェーハなどの円盤状の基板が挙げられる。このとき、上記研削装置が備えるドレス板として、保持手段に保持され得る円盤状の基台と、基台の表面の中心付近に配設される円形状の第1ドレッサ部と、基台の表面の第1ドレッサ部の周囲に配設され、被加工物の直径と同等の直径を有する環状の第2ドレッサ部とを備え、第1ドレッサ部と第2ドレッサ部との間に基台の表面部分が、搬送手段の吸着面に吸着して保持され得る被保持領域として構成された形態のものが挙げられる。また、このドレス板に対応する搬送手段として、環状の第2ドレッサ部の内径と略同等の直径を有するドーナツ状の吸着面、および吸着面に囲まれた中心に第1ドレッサ部と略同形で第1ドレッサ部を収容する円形状の凹部を有する形態のものが挙げられる。
【0013】
上記のようなドレス部材と搬送手段を備える研削装置では、第2ドレッサ部の厚さを測定する厚さ測定手段を備えることが好ましい。これにより、第2ドレッサ部の厚さを測定しながらドレス工程を行うことができ、ドレス作業後の研削部材の高さ位置を適確に把握することができる。また、加工前のドレス板の厚さを測定できるため、研削部材の刃先をドレス板の表面ぎりぎりまで早送りして作業時間を最適化したり、ドレス板を指定量確実に除去するまでドレス加工を行うことができる。この結果、ドレス作業後のセットアップを行う必要がなく、作業効率の向上が図られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドレス板にドレッサ部と被保持領域とを設け、さらに、そのドレス板に対応した搬送手段を研削装置に配設することで、ドレス作業が被加工物の研削作業と同様に自動で行える。また、加工前のドレス板の厚さを測定することができるため、研削部材の刃先をドレス板の表面ぎりぎりまで早送りして作業時間を最適化したり、ドレス板を指定量確実に除去するまでドレス加工を行うことができる。これらの結果、作業者による作業ミスの発生を抑え、ドレス作業の作業効率の向上が図られるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]半導体ウェーハ
図1の符合1は、図2に示す一実施形態の研削装置によって裏面が研削されて薄化される円盤状の半導体ウェーハ(以下ウェーハと略称)を示している。このウェーハ1はシリコンウェーハ等であって、加工前の厚さは例えば700μm程度である。ウェーハ1の表面には格子状の分割予定ライン2によって複数の矩形状の半導体チップ3が区画されている。これら半導体チップ3の表面には、ICやLSI等の図示せぬ電子回路が形成されている。また、ウェーハ1の周面の所定箇所には、半導体の結晶方位を示すV字状の切欠き(ノッチ)4が形成されている。ウェーハ1は、最終的には分割予定ライン2に沿って切断、分割され、複数の半導体チップ3に個片化される。
【0016】
ウェーハ1を裏面研削する際には、電子回路を保護するなどの目的で、図1(b)に示すように電子回路が形成された側の表面に保護テープ5が貼着される。保護テープ5は、例えば厚さ70〜200μm程度のポリオレフィン等の柔らかい樹脂製基材シートの片面に5〜20μm程度の粘着剤を塗布した構成のものが用いられ、粘着剤をウェーハ1の裏面に合わせて貼り付けられる。ウェーハ1は、図2に示す研削装置で裏面研削されることにより、例えば50μm〜100μmまで薄化される。
【0017】
[2]研削装置
次に、研削装置10の構成ならびに動作を説明する。
図2に示す研削装置10は直方体状の基台11を有しており、ウェーハ1は、この基台11上の所定箇所に着脱自在にセットされる供給カセット70内に、表面側を上にした状態で、複数が積層して収納される。その供給カセット70から1枚のウェーハ1が搬送ロボット71によって引き出され、そのウェーハ1は、裏面側を上に向けた状態で位置決めテーブル72上に載置され、ここで一定の位置に決められる。
【0018】
基台11上には、R方向に回転駆動されるターンテーブル13が設けられており、さらにこのターンテーブル13の外周部分には、複数(この場合、3つ)の円盤状のチャックテーブル20が、周方向に等間隔をおいて配設されている。これらチャックテーブル20は回転自在に支持されており、図示せぬ回転駆動機構によって一方向あるいは両方向に回転させられる。
【0019】
位置決めテーブル72上で位置決めがなされたウェーハ1は、供給手段73によって位置決めテーブル72から取り上げられ、真空運転されている1つのチャックテーブル20上に、研削される面側を上に向けて同心状に載置される。なお、供給手段73は、本発明に係るものであり、後に詳述する。チャックテーブル20は、図3に示すように、枠体22の中央上部に、多孔質部材による円形の吸着部21が形成されたもので、ウェーハ1は、この吸着部21の上面である吸着面21aに、研削される面が露出する状態に吸着、保持される。
【0020】
チャックテーブル20に保持されたウェーハ1は、ターンテーブル13がR方向へ所定角度回転することにより、粗研削用研削ユニット30Aの下方の一次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニット30Aにより裏面が粗研削される。次いでウェーハ1は、再度ターンテーブル13がR方向へ所定角度回転することにより、仕上げ研削用研削ユニット30Bの下方の二次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニット30Bにより裏面が仕上げ研削される。
【0021】
基台11の奥側の端部には、X方向に並ぶ2つのコラム12A,12Bが立設されており、これらコラム12A,12Bの前面に、各研削ユニット30A,30Bが、それぞれZ方向(鉛直方向)に昇降自在に設置されている。各コラム12A,12Bの前面には、Z方向に延びるガイド40が固定されており、このガイド40にスライダ41が摺動自在に装着されている。各研削ユニット30A,30Bは、スライダ41の前面に固定されており、サーボモータ42によって駆動されるボールねじ式の送り機構43により、スライダ41を介してZ方向に昇降する。
【0022】
各研削ユニット30A,30Bは同一構成であり、装着される砥石が粗研削用と仕上げ研削用と異なることで、区別される。図3に示すように研削ユニット30A,30Bは、軸方向がZ方向に延びる円筒状のスピンドルハウジング31を有しており、このスピンドルハウジング31内には、スピンドルモータ33によって回転駆動されるスピンドルシャフト32が支持されている。そしてこのスピンドルシャフト32の下端には、フランジ34を介して砥石ホイール35が取り付けられている。
【0023】
砥石ホイール35は、環状のフレーム36の下面に複数の砥石37が配列されて固着されたものである。砥石37の加工面である下面は、スピンドルシャフト32の軸方向に直交するように設定される。砥石37は、例えば、ガラス質のボンド材中にダイヤモンド砥粒を混合して成形し、焼結したものが用いられる。
【0024】
粗研削用の研削ユニット30Aに取り付けられる砥石37は、例えば♯320〜♯400程度の比較的粗い砥粒を含むものが用いられる。また、仕上げ研削用の研削ユニット30Bに取り付けられる砥石37は、例えば♯2000〜♯8000程度の比較的細かい砥粒を含むものが用いられる。各研削ユニット30A,30Bには、研削面の冷却や潤滑あるいは研削屑の排出のための研削水を供給する研削水供給機構(図示省略)が設けられている。
【0025】
砥石ホイール35はスピンドルシャフト32とともに一体回転し、回転する砥石37の研削外径は、ウェーハ1の直径よりも大きく設定される。また、ターンテーブル13が所定角度回転して定められるウェーハ1の加工位置は、砥石37の下面である刃先がウェーハ1の回転中心を通過し、チャックテーブル20が回転することによって自転するウェーハ1の裏面全面が研削され得る位置に設定される。
【0026】
ウェーハ1は、粗研削および仕上げ研削の各加工位置において、各研削ユニット30A,30Bにより裏面研削される。裏面研削は、チャックテーブル20が回転してウェーハ1を自転させ、送り機構43によって研削ユニット30A(30B)を下方に送りながら、回転する砥石ホイール35の砥石37を、ウェーハ1の露出している裏面に押し付けることによりなされる。ここでウェーハ1は目的厚さまで薄化されるが、厚さの測定は、各加工位置の近傍に設けられた厚さ測定ゲージ50によって行われる。
【0027】
厚さ測定ゲージ50は、プローブ51aがチャックテーブル20の枠体22の表面22aに接触する基準側ハイトゲージ51と、プローブ52aが被研削物の表面(この場合、ウェーハ1の裏面)に接触する可動側ハイトゲージ52との組み合わせからなるもので、双方のハイトゲージ51,52の高さ測定値を比較することにより、裏面研削中のウェーハ1の厚さが逐一測定される。ウェーハ1の裏面研削は、厚さ測定ゲージ50によってウェーハ1の厚さを測定しながら行われ、その測定値に基づいて、送り機構43による砥石ホイール35の送り量が制御される。なお、粗研削では、仕上げ研削後の目的厚さの例えば20〜40μm手前まで研削され、残りが仕上げ研削で研削される。
【0028】
粗研削から仕上げ研削を経てウェーハ1が目的厚さまで薄化されたら、次のようにしてウェーハ1の回収に移る。まず、仕上げ研削ユニット30Bが上昇してウェーハ1から退避し、一方、ターンテーブル13がR方向へ所定角度回転することにより、ウェーハ1が供給手段73からチャックテーブル20上に載置された着脱位置に戻される。この着脱位置でチャックテーブル20の真空運転は停止され、次いでウェーハ1は、回収手段78によってスピンナ式洗浄装置79に搬送されて洗浄、乾燥処理され、この後、搬送ロボット71によって回収カセット80内に移送、収容される。また、ウェーハ1が取り去られたチャックテーブル20は、ノズル77から吐出される洗浄水によって研削屑等が除去される。回収手段78は、本発明に係るものであり、後に詳述する。
【0029】
[3]ドレス板および供給手段、回収手段
次に、本発明のドレス方法に用いるドレス板と、供給手段および回収手段について図4〜6を参照して説明する。
図4および図5に示すように、ドレス板100は、塩化ビニールなどによって形成される基台101と、この基台101の表面の中心部にアルミナなどの砥粒をビトリファイドなどによって焼結成形してなる円形の第1ドレッサ部102と、基台101の外周よりやや内側の部分に第1ドレッサ部102と同様に形成された円環状の第2ドレッサ部103とを備える。第1ドレッサ部102と第2ドレッサ部103は基台100に対して同心状に配置されており、第1ドレッサ部102と第2ドレッサ部103との間の基台表面は、後に説明する供給手段73および回収手段78の吸着面74aによって吸着保持される被保持領域104である。
【0030】
第1ドレッサ部102と第2ドレッサ部103とで構成されるドレッサ部の砥粒サイズは、粗研削用の砥石をドレスするものと、仕上げ研削用の砥石をドレスするものとで異なる。すなわち、ドレス板100は粗研削用と仕上げ研削用の2種類が用意される。粗研削用の砥石をドレスするドレス板100では、粗研削用の砥石の砥粒のサイズより粗い砥粒が用いられる。また、仕上げ研削用の砥石をドレスするドレス板100では、仕上げ研削用の砥石の砥粒サイズより例えば2倍から3倍の大きさの砥粒が用いられる。基台100は、チャックテーブル20の吸着面21aを覆うことができる大きさに設定される。これにより、ドレス作業によって生じるドレッサ部や砥石37の研削屑がチャックテーブル20の吸着面21aに付着することを防止できるため、ドレス作業後のウェーハ1の研削時に、ウェーハ1と吸着面21aとの間に研削屑が挟み込まれるのを防止できる。
【0031】
ウェーハ1およびドレス板100を搬送する供給手段73および回収手段78は同様の構成であって、図6に示すように、吸着パッド74および水平旋回式のアーム75との組み合わせにより構成されている。吸着パッド74は、外径が第2ドレッサ部103の内径よりもやや小さく、かつ、内径が第1ドレッサ部102の外径よりもやや大きい寸法のドーナツ状の吸着面74aと、吸着面74aに囲まれた中心に第1ドレッサ部102と略同形で第1ドレッサ部102を収容する円形状の凹部74bを有している。吸着パッド74は真空チャック式であり、吸着面74aは多孔質体74cで形成されている。吸着パッド74およびアーム75の内部には、吸着面74aから空気を吸引する空気吸引路76が形成されている。吸着パッド74をドレス板100の被保持領域104に押し当てて真空運転することにより、ドレス板100を吸着保持することが可能となっている。ドレス板100を吸着保持した後、アーム75を旋回させることによりドレス板100は搬送先へ搬送される。
【0032】
[4]ドレス方法
以上が本実施形態の研削装置10の構成であり、次にドレス方法を説明する。
最初に、ドレス板100を収容したドレス板用カセットを、供給カセット70に換えて研削装置10にセットする。また、回収カセット80もドレス板100を収容できるドレス板用カセットに交換する。次に、ドレス加工時の送り速度や回転速度などを設定したドレス加工用の研削条件を選択する。このドレス加工用の研削条件は、予め研削装置10に記憶させておく。ドレス加工用の研削条件が選択されると、ドレス板100が搬送ロボット71によって供給側のカセットから取り出され、位置決めテーブル72にドレッサ部が露出する状態にドレス板100が載置される。次いで、供給手段73の吸着パッド74を位置決めテーブル72に載置されたドレス板100の被保持領域104に押し当てる。このとき、第1ドレッサ部102は凹部74bに収容される。吸着パッド74をドレス板100に押し当てた後、ドレス板100の吸着を開始し、吸着面74aでドレス板100の被保持領域104を吸着し、次いでアーム75を旋回させてチャックテーブル20の直上まで移動させる。次いで、吸着パッド74による吸着を終了させる。これにより、チャックテーブル20上に、ドレッサ部が露出する状態でドレス板100が載置される(ドレス板載置工程)。
【0033】
ドレス板100がチャックテーブル20に載置されたら、チャックテーブル20による真空運転を開始し、ドレス板100を吸着面21aに吸着保持させる。次いで、ウェーハ1を研削するときと同様にターンテーブル13をR方向に回転させ、ドレスするスピンドルの下方にドレス板100を配置させる。次いで、ドレス板100と砥石ホイール35とを相対的に回転させ、図7に示すようにスピンドルをドレス板100に送り込み、ドレス板100を研削する(ドレス工程)。このとき、厚さ測定ゲージ50の基準側ハイトゲージ51のプローブ51aを枠体22の表面22aに、また、可動側ハイトゲージ52のプローブ52aを第2ドレッサ部103の表面にそれぞれ接触させ、ドレス板100の厚さを測定しながら研削する。
【0034】
研削が終了したら、スピンドルを上方に退避させ、再びターンテーブル13を回転させて、ドレス板100を着脱位置に戻す。着脱位置に戻ったドレス板100は、ドレス板100をチャックテーブル20に載置したときと同様に、直上に移動した回収手段78の吸着パッド74によって吸着、保持される。次いで、ドレス板100を吸着した回収手段78のアーム75を旋回させ、スピンナ式洗浄装置79までドレス板100を搬送させる(ドレス板除去工程)。そして、回収手段78によるドレス板100の吸着を終了させ、ドレス板100をスピンナ式洗浄装置79で洗浄、乾燥し、搬送ロボット71により回収側のカセットに移送、収容される。
【0035】
本実施形態のドレス板100は、砥石37によって研削される第1ドレッサ部102および第2ドレッサ部103と、供給手段73および回収手段78によって吸着保持される被保持領域104とを有している。また、供給手段73および回収手段78は、ドレス板100に対応する吸着パッド74を有している。これにより、ウェーハ1を研削するときと同じようにして、ドレス板100を供給側のカセットからチャックテーブル20まで自動で搬送させることができる。また、研削を終えたドレス板100をチャックテーブル20から回収側のカセットまで自動で搬送させることもできる。そのため、従来のように作業者がチャックテーブル20にドレス部材をセットしたり、チャックテーブル20からドレス部材を除去したりする必要がなく、ドレス作業がウェーハの研削作業と同様に研削条件を設定するだけで行える。このように本発明では、ドレス作業を自動化することができるため、作業者による作業ミスの発生を抑えることができる。
【0036】
また、従来では、ドレス作業後にチャックテーブル20からの砥石37の刃先位置を確認するセットアップ作業を行っており、このためドレス作業後、速やかにウェーハ1の研削作業を再開させることができなかった。しかしながら、本実施形態では、ドレス工程時にドレス板100の厚さを測定しながらドレス板100の研削するため、ドレス作業後の砥石の刃先位置を適確に把握することができる。これにより、ドレス作業後のセットアップを行う必要がなく、速やかにウェーハ1の研削作業を再開させることができる。その結果、ドレス作業の作業効率の向上を図ることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、ウェーハ1を研削するスピンドルを2つ用いてウェーハ1を比較的薄く仕上げる研削装置10に適用したが、スピンドルを1つ用いてウェーハ1を比較的厚く仕上げる研削装置でも本発明は実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態で研削されるウェーハの(a)斜視図、(b)側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る研削装置の斜視図である。
【図3】図2の研削装置が備える研削ユニットによりウェーハを研削している状態を示す(a)斜視図、(b)側面図である。
【図4】本発明の一実施形態で研削されるドレス板の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態で研削されるドレス板の(a)平面図、(b)断面図である。
【図6】本発明の一実施形態でウェーハおよびドレス板を搬送する搬送手段の断面図である。
【図7】図2の研削装置が備える研削ユニットによりドレス板を研削している状態を示す(a)斜視図、(b)側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…ウェーハ(被加工物)
10…研削装置
20…チャックテーブル(保持手段)
37…砥石(研削部材)
73…供給手段(搬送手段)
78…回収手段(搬送手段)
100…ドレス板
102…第1ドレッサ部(ドレッサ部)
103…第2ドレッサ部(ドレッサ部)
104…被保持領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段によって被加工物を搬送する全自動搬送機能を有し、保持手段に保持した被加工物の一の面を研削部材によって研削する研削装置の、前記保持手段にドレス板を保持し、該ドレス板を研削することで前記研削部材をドレスするドレス方法であって、
前記研削部材によって研削されるドレッサ部と、前記搬送手段によって保持され得る被保持領域とを有するドレス板を、搬送手段が被保持領域を保持して前記保持手段に載置するドレス板載置工程と、
前記研削部材によって前記ドレス板の前記ドレッサ部を研削してドレスするドレス工程と、
前記ドレス板を、前記搬送手段が前記被保持領域を保持して前記保持手段から取り去るドレス板除去工程とを備えることを特徴とするドレス方法。
【請求項2】
前記被加工物は円盤状の基板であり、
前記ドレス板は、
前記保持手段に保持され得る円盤状の基台と、
該基台の表面の中心付近に配設される円形状の第1ドレッサ部と、
前記基台の表面の前記第1ドレッサ部の周囲に配設され、前記被加工物の直径と同等の直径を有する環状の第2ドレッサ部とを備え、
前記搬送手段は、前記環状の第2ドレッサ部の内径と略同等の直径を有するドーナツ状の吸着面、および該吸着面に囲まれた中心に第1ドレッサ部と略同形で第1ドレッサ部を収容する凹部を有し、
前記第1ドレッサ部と前記第2ドレッサ部との間に前記基台の表面部分が、前記搬送手段の前記吸着面に吸着して保持され得る前記被保持領域として構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドレス方法。
【請求項3】
前記ドレス工程においては、前記第2ドレッサ部の厚さを測定しながら行うことを特徴とする請求項2に記載のドレス方法。
【請求項4】
搬送手段によって被加工物を搬送する全自動搬送機能を有し、保持手段に保持した被加工物の一の面を研削部材によって研削する研削装置において、
前記研削部材によって研削されるドレッサ部と、前記搬送手段によって保持され得る被保持領域とを有し、前記搬送手段が被保持領域を保持した状態で、前記保持手段に載置されたり、保持手段から取り去られたりするドレス板を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項5】
前記被加工物は円盤状の基板であり、
前記ドレス板は、
前記保持手段に保持され得る円盤状の基台と、
該基台の表面の中心付近に配設される円形状の第1ドレッサ部と、
前記基台の表面の前記第1ドレッサ部の周囲に配設され、前記被加工物の直径と同等の直径を有する環状の第2ドレッサ部とを備え、
前記搬送手段は、前記環状の第2ドレッサ部の内径と略同等の直径を有するドーナツ状の吸着面、および該吸着面に囲まれた中心に第1ドレッサ部と略同形で第1ドレッサ部を収容する凹部を有し、
前記第1ドレッサ部と前記第2ドレッサ部との間の前記基台の表面部分が、前記搬送手段の前記吸着面に吸着して保持され得る前記被保持領域として構成されていることを特徴とする請求項4に記載の研削装置。
【請求項6】
前記第2ドレッサ部の厚さを測定する厚さ測定手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−23057(P2009−23057A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189831(P2007−189831)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】