説明

研磨パッド、並びに電解複合研磨装置及び電解複合研磨方法

【課題】研磨パッドの回転速度を通常使用される回転速度である25rpm〜150rpmの範囲で設定すれば、加工速度の変化が許容される変化割合よりも小さくなる研磨パッド、並びに電解複合研磨装置及び電解複合研磨方法を提供する。
【解決手段】基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に設置される貫通孔を有する研磨パッド101であって、貫通孔101aの孔径Dが0.1mm〜5mm、厚さhが0.5mm〜5mm、かつ孔径の2乗/厚さ(D/h)が0.002mm〜50mmの範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解複合研磨に供する研磨パッド、並びに電解複合研磨装置及び電解複合研磨方法に関し、特に半導体ウェーハ等の基板表面に形成された導電性材料(金属膜)を電気化学的作用と機械的作用を組合せて研磨する電解複合研磨に好適な研磨パッド、並びに電解複合研磨装置及び電解複合研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、配線材料となる金属膜をパターン加工するのでなく、絶縁膜内に設けたトレンチやビアホール等の配線用凹部内に配線金属を埋込むようにした、いわゆるダマシンプロセスが使用されつつある。
【0003】
このダマシンプロセスを図47を参照して説明すると、図47(a)に示すように、基板W上のいわゆるLow−k材等からなる絶縁膜(層間絶縁膜)62内に配線用凹部(以下「凹部」という)63を形成し、次いで凹部63を含む層間絶縁膜62の全表面に窒化チタン等からなるバリアメタル膜(以下「バリア膜」という)64を形成し、バリア膜64の表面に銅やタングステン等からなる金属導電膜(以下「導電膜」という)66を形成して凹部63内に金属導電材料を埋込む。その後、凹部63の外側に形成された余分な導電膜66及びバリア膜64を除去し、これにより、図47(e)に示すように、基板W上の凹凸を平坦化するとともに、凹部63内に前記導電膜66からなる配線を形成する。
【0004】
ここに、余分な金属膜(導電膜66及びバリア膜64)の除去は、一般に、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、電解研磨、電解複合研磨等の平坦化法で行われる。
【0005】
そのうち電解複合研磨は、図47(b)に示すように、基板Wの表面の導電膜66と対向電極(図示せず)との間に電解液50を供給し、導電膜66と対向電極との間に電圧を印加しつつ、基板Wの表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101を相対移動させて、導電膜66の表面を研磨するものである。なお、「電解複合研磨」を「電解研磨」の派生技術として「電解研磨」に含めて用語を用いる場合があるが、本明細書では「電解複合研磨」の用語に統一して用いることにする。
【0006】
この電解複合研磨にあっては、導電膜66と対向電極間に電圧を印加することにより、導電膜66が電気化学的に溶解し電解研磨が進む。一方、電解液50中に保護膜形成成分がある場合、導電膜66の表面に金属錯体からなる保護膜70が形成されるため、研磨が抑制される。なお、図47(a)に示すように、層間絶縁膜62の表面に形成された凹部63に倣って、導電膜66の表面には凹部67が形成されているとすると、図47(b)に示すように、導電膜66の上段部(凹部67の外側)Hに形成された保護膜は研磨パッド101との当接により除去され、当該部分の導電膜66が電解液50中に溶解する。これに対して、下段部(凹部67の内側)Lの導電膜66は保護膜70により遮蔽されて電解液50中に溶解しないか、溶解しても導電膜66の上段部Hに比べて溶解量が小さい。このような工程を繰り返すことにより、導電膜66の表面が平坦化される。
【0007】
ここで、研磨パッド101には、導電膜66と対向電極との間でイオン等の電荷担体を移動可能とするために貫通孔が設けられている。貫通孔の中には電解液50が存在しており、電荷担体はこの電解液50中を移動する。電解複合研磨における研磨パッドの貫通孔の孔径、及び研磨パッドの導電膜66と接触する領域に占める貫通孔の開口部面積の割合(開口率)に関して、特許文献1及び2に開示がなされている。すなわち、研磨パッドに相当する研磨パッド相当物(特許文献1及び2では研磨物または研磨用品)の貫通孔(特許文献1及び2では穿孔)の孔径は、約0.5mm〜約10mmを含む。また、開口率(特許文献1及び2では穿孔密度)は、約20%〜約80%であり、およそ50%が良いことが開示されている。また、上記研磨パッド相当物の厚さについては、特許文献1及び2に、約0.1mm〜約5mmでも良いと記載されている。なお特許文献1及び2における研磨パッド相当物(研磨物または研磨用品)は、導電性研磨部とサブパッド部とを有する複合部品であるとされ、上記厚さはこれらの合計の厚さとして示されたものである。
【0008】
また、基板Wと研磨パッド101との相対移動には、基板Wと研磨パッド101が異なる回転軸を中心にそれぞれ回転運動する方式が採用されることがある。この回転運動に関して、特許文献1及び2には、研磨パッドの回転速度(特許文献1及び2ではプラテン速度)については約5rpm以上(例えば約10rpm〜約50rpmの間)、また、約150rpm以上(例えば約150rpm〜約750rpmの間)と記載されている。
【特許文献1】特開2004−134732号公報
【特許文献2】特開2005−005661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、貫通孔を有する研磨パッドを回転軸を中心に回転運動させながら電解複合研磨を行う場合、研磨パッドの回転速度が大きくなると、単位時間当たりの導電膜厚さの減少量(加工速度)が小さくなることがある。研磨パッドの回転速度を変えた場合に加工速度の変化が小さければ問題ないが、加工速度の変化が大きければ運転条件の範囲(プロセス・ウィンドウ)を狭めることとなり好ましくない。しかし、上述の特許文献1及び2に記載の発明では、研磨パッドの回転速度と加工速度との関係に言及することなく、研磨パッドの孔径の範囲、厚さの範囲、並びに回転速度の範囲が決められている。また電解複合研磨加工においては、研磨パッドの回転速度の範囲が従来のCMP装置で用いられる回転速度と異なるため、既存のCMP装置を電解複合研磨装置に改造する場合に、研磨パッドの駆動系の変更が必要となる可能性がある。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、電解複合研磨加工時の研磨パッドの回転速度と、加工速度との関係を予め考慮して、電解複合研磨装置に用いられる好適な形状とされた研磨パッドを提供することを目的とする。また、電解複合研磨時において、研磨パッドを、従来のCMPで通常使用される回転速度である25rpm〜150rpmの範囲で回転するように設定しても、加工速度の変化が許容される変化割合よりも小さくなるように構成された研磨パッド、並びに電解複合研磨装置及び電解複合研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために鋭意研究した結果、発明者らは、以下に説明するように、研磨パッドの回転速度が大きくなると導電膜の加工速度が小さくなる現象が、貫通孔の中に充填される電解液の充填率に相関することをつきとめた。
【0012】
本発明は、研磨パッドがその両面(即ち基板に接する面とその反対側の面)を連通する貫通孔を有する場合であっても、電解複合研磨を実行する際に、研磨パッドが、例えば支持部材上に載置された態様において、上記貫通孔はその一方の開口部が前記支持部材等により閉塞されて、実質的には片方の開口部だけが開口した閉塞孔として機能する技術を開示する。
【0013】
本発明の研磨パッドは、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に設置される貫通孔を有する研磨パッドであって、前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、厚さが0.5mm〜5mm、かつ孔径の2乗/厚さが0.002mm〜50mmの範囲としたことを特徴とする。
【0014】
このように構成すれば、基板を電解複合研磨する際における研磨パッドの回転速度と研磨加工速度との関係が評価された上で、研磨パッドの形状が規定されるので、電解複合研磨加工を好適な条件で行うことができる。
【0015】
本発明の好ましい一態様は、研磨パッドが多層構造を有することを特徴とする。
このように構成すれば、例えば下層(即ち対向電極側の層)を比較的軟らかい材質、上層(即ち基板側の層)を硬い材質で形成することにより、基板全体の加工速度の均一化と局所的な段差解消が可能となるので、電解複合研磨をより好適に行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい一態様は、前記研磨パッドの前記対向電極側の面に更に貫通孔を有するベース層を有し、該ベース層の貫通孔の少なくとも一部が研磨パッドの前記金属膜と接触する面に連通していることを特徴とする。
このように、更にベース層を備えて研磨パッドを構成すれば、前記ベース層の貫通孔の孔径は0.1mm〜5mmの範囲に拘束されることはなく、また貫通孔の形状は円形に限られないから、前記ベース層として、例えばメッシュ構造を有するシートを使用しても良く、研磨パッド素材の選択の自由度を上げることができる。
【0017】
本発明の好ましい一態様は、前記研磨パッドの前記基板表面の金属膜と接触する層が導電性を有することを特徴とする。
このように構成すれば、例えば前記研磨パッドの下層(ベース層)が絶縁性を有する材質で形成されていれば、電源から基板表面の金属膜への電圧の印加を、該導電層を経由して行うことができる。即ち、研磨パッドの最表面層から上記金属膜のほぼ全面に給電できるので、接点効果が低減でき、加工速度の基板内均一性が良好となる。
【0018】
本発明の他の研磨パッドは、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に設置される貫通孔を有する研磨パッドであって、前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、厚さが0.1mm〜0.5mmの範囲であることを特徴とする。
このように構成すれば、基板を電解複合研磨する際における研磨パッドの回転速度と加工速度との関係が評価された上で、研磨パッドの形状が規定されるので、電解複合研磨加工を好適な条件で行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい一態様は、研磨パッドの貫通孔の開口率が20%〜70%の範囲であることを特徴とする。
このように構成すれば、好適な加工速度を維持しつつ、段差解消性の良い加工が可能となる研磨パッドを提供できる。
【0020】
本発明の研磨用品は、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に載置される研磨用品であって、上記した研磨パッドの内のいずれかの研磨パッドと、該研磨パッドの前記対向電極側の面に設けられた導電性を有する閉塞部材と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
このように構成すれば、上述の研磨パッドのいずれかと前記閉塞部材とを、例えば接着剤等により相互に固定できるから、上記研磨パッドの特徴を備えつつ、研磨パッドの貫通孔を確実に閉塞孔の態様とすることができる。ここで該閉塞部材は導電性を有するから電解複合研磨加工を好適に実行できる。
【0022】
本発明の電解複合研磨装置は、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置であって、対向電極と、前記対向電極上に設置され該対向電極と前記基板表面の金属膜との間を連通する貫通孔を有する研磨パッドとを備え、前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、前記貫通孔の深さが0.5mm〜5mm、かつ孔径の2乗/深さが0.002mm〜50mmの範囲であることを特徴とする。
【0023】
このように構成すれば、基板を研磨する際における研磨パッドの回転速度と研磨加工速度との関係が評価された研磨パッドを使用できるので、電解複合研磨加工を好適な条件で行うことができる電解複合研磨装置を提供できる。
【0024】
本発明の好ましい一態様は、研磨パッドが多層構造を有することを特徴とする。
このように構成すれば、例えば、該研磨パッドの下層(即ち対向電極側の層)を比較的軟らかい材質、上層(即ち基板側の層)を硬い材質で形成した研磨パッドを使用することができるから、基板全体の加工速度の均一化と局所的な段差解消が可能な電解複合研磨装置を提供できる。
【0025】
本発明の好ましい一態様は、研磨パッドが対向電極側の面に更に貫通孔を有するベース層を有し、ベース層の貫通孔の少なくとも一部が該研磨パッドの前記金属膜と接触する面に連通しているようにされていることを特徴とする。
このように構成すれば、例えば前記研磨パッドのベース層の孔径は0.1mm〜5mmの範囲に拘束されることは無いから、研磨パッド素材の選択の自由度が上がるので、研磨パッドの種類を増やすことができるから、当該電解研磨に一層適した電解複合研磨装置を提供できる。
【0026】
本発明の好ましい一態様は、研磨パッドの基板表面の金属膜と接触する層が導電性を有することを特徴とする。
このように構成すれば、例えば電源から基板表面の金属膜への電圧の印加を、該導電層を経由して行うことができるので、加工速度の基板内均一性を維持した良好な加工が可能な電解複合研磨装置を提供できる。
【0027】
本発明の他の電解複合研磨装置は、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置であって、対向電極と、前記対向電極上に設置され該対向電極と前記基板表面の金属膜との間を連通する貫通孔を有する研磨パッドとを備え、前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、かつ前記貫通孔の深さが0.1mm〜0.5mmの範囲であることを特徴とする。
【0028】
このように構成すれば、基板を研磨する際における研磨パッドの回転速度と研磨加工速度との関係が評価された研磨パッドを使用できるので、電解複合研磨加工を好適な条件で行うことができる電解複合研磨装置を提供できる。
【0029】
本発明の好ましい一態様は、研磨パッドの前記貫通孔の開口率が20%〜70%の範囲であることを特徴とする。
このように構成すれば、例えば、好適な加工速度を維持しつつ、段差解消性の良い加工が可能な電解複合研磨装置を提供できる。
【0030】
本発明の更に他の電解複合研磨装置は、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置であって、対向電極と、前記対向電極上に閉塞部材が該対向電極と接するように設置された研磨用品とを備え、該研磨用品は上記で開示した研磨パッドのいずれかと導電性を有する前記閉塞部材とを備えた研磨用品であることを特徴とする。
このように構成すれば、研磨パッドの貫通孔の対向電極側の開口部が前記閉塞部材で確実に閉塞されるので、好適な研磨が可能な電解複合研磨装置を提供できる。
【0031】
本発明の電解複合研磨方法は、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を前記対向電極上に設置した研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法において、前記研磨パッドとして、前記対向電極と前記基板表面の金属膜との間を連通する孔径が0.1mm〜5mmの範囲の貫通孔を有する研磨パッドを使用し、前記研磨パッドの回転速度が40rpm〜150rpmの範囲で、かつ、前記貫通孔の孔径の2乗×前記回転運動の角速度の2乗/前記貫通孔の深さが0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲となるように前記研磨パッドを回転させることを特徴とする。
【0032】
上記方法によれば、基板を研磨する際における研磨パッドの回転速度と研磨加工速度との関係が評価された研磨パッドを使用するので、電解複合研磨加工を好適な条件で行うことができる電解複合研磨方法を提供できる。
【0033】
本発明の好ましい一態様は、研磨パッドの回転速度v(rpm)と研磨パッドの貫通孔の開口率γ(%)との関係が、v≧17×exp(0.03×γ)であることを特徴とする。
これにより、電解複合研磨加工時の研磨パッドの回転速度変化の範囲に応じた適切な開口率を有する研磨パッドを使用することができるので、好適な電解複合研磨加工の実施が可能となる。また電解複合研磨加工の運転条件に応じて、異なる研磨パッドを使用するなどの運転も可能となる。
【0034】
本発明の他の電解複合研磨方法は、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を前記対向電極上に設置した研磨用品に押圧しながら前記基板と前記研磨用品とを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法において、前記研磨用品として、貫通孔を有する研磨パッドと該研磨パッドの前記対向電極側の面に設けられた導電性を有する閉塞部材とを備えた研磨用品を使用し、前記研磨用品の回転速度が40rpm〜150rpmの範囲で、かつ、前記研磨パッドの貫通孔の孔径の2乗×前記回転運動の角速度の2乗/前記貫通孔の深さが0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲となるように前記研磨用品を回転させることを特徴とする。
【0035】
上記方法によれば前記研磨用品を用いることで、基板を研磨する際における研磨パッドの回転速度と研磨加工速度との関係が評価された研磨パッドを備えた研磨用品を使用するので、電解複合研磨加工を好適な条件で行うことが可能な電解複合研磨方法を提供できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、導電膜の加工速度は、研磨パッドの貫通孔の中の電解液の充填率に強く関係していることが解明され、研磨パッドの回転速度の変化に起因する加工速度の変化割合が実用に耐える程度に小さく抑えられた研磨パッドを、貫通孔の直径や深さを(深さについては支持部材の研磨パッドを載置する面が平坦の場合は研磨パッドの厚さに等しく)選択することで提供できる。また研磨パッドの回転速度を、例えばCMP装置で通常使用される範囲内で設定すれば、加工速度の変化が許容される変化割合よりも小さくなる研磨パッド、電解複合研磨装置および電解複合研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、発明者らが解明した、研磨パッドの回転速度が大きくなると導電膜の加工速度が小さくなる現象が、貫通孔の中に充填される電解液の充填率に相関する事実について、以下に説明する。
【0038】
図1乃至図5は、導電膜である銅の電解複合研磨において、それぞれ、研磨パッドの回転速度を30rpm〜105rpm、電解液供給量を100mL/min〜2,000mL/min、貫通孔の孔径(以下、孔の直径ともいう)を2mm〜20mm、基板を研磨パッドに押付ける圧力を0.2psi(約1.4kPa)〜1psi(約6.9kPa)、貫通孔の開口率を15%〜45%の範囲で変化させた場合の充填率(実験値)と加工速度の測定結果を示す。
【0039】
なお、充填率の実験値は、研磨パッドの回転が停止した直後に貫通孔内に残った電解液を回収し、回収した電解液の重量から算出した体積を貫通孔の体積で除して算出した。電解液は、基板中心付近が通過する場所の貫通孔から回収した。また、加工速度の実験値は、直流四探針法で測定したシート抵抗から換算した電解複合研磨前後の銅の膜厚を加工時間で除して算出した。
【0040】
図1は、研磨パッドの回転速度を30rpm〜105rpmとした場合における、充填率と加工速度の関係を示す。図1から、研磨パッドの回転速度が大きくなると充填率が小さくなり、同様に加工速度も小さくなることが分かる。図2は、電解液供給量を100mL/min〜2,000mL/minとした場合における、充填率と加工速度の関係を示す。図2から、電解液供給量が大きくなると充填率が大きくなり、同様に加工速度も大きくなることが分かる。
【0041】
図3は、貫通孔の孔径(直径)を2mm〜20mmとした場合における、充填率と加工速度の関係を示す。図3から、貫通孔の孔径(直径)が大きくなると充填率が小さくなり、同様に加工速度も小さくなることが分かる。図4は、基板を研磨パッドに押付ける圧力を0.2psi(約1.4kPa)〜1psi(約6.9kPa)とした場合における、充填率と加工速度の関係を示す。図4から、基板を研磨パッドに押付ける圧力をこの範囲で変えても充填率は殆ど変化せず、同様に加工速度も殆ど変化しないことが分かる。
【0042】
一方、図5は、貫通孔の開口率(研磨パッドの導電膜と接する面領域における、貫通孔の開口部面積が占める割合)を15%〜45%とした場合における、充填率と加工速度の関係を示す。図5から、貫通孔の開口率が大きくなると充填率が若干小さくなるが、加工速度は若干大きくなっていることが分かる。この傾向は、他のパラメータとは異なる傾向である。ここで、上述の図1〜図4に示される研磨パッド回転速度、電解液供給量、貫通孔径及び押付け圧力を変化させた結果からは、加工速度が充填率の影響を受けると考えられるが、図5によれば、開口率に関する結果からは、加工速度は充填率の影響よりも保護膜の影響を大きく受けると考えられる。したがって、貫通孔の開口率に関しては、充填率と加工速度の相関関係から除外して考える。
【0043】
図6は、貫通孔の開口率を約30%に固定し、研磨パッドの回転速度を30rpm〜105rpm、電解液供給量を100mL/min〜2,000mL/min、貫通孔の孔径を2mm〜20mm、基板を研磨パッドに押付ける圧力を0.2psi(約1.4kPa)〜1psi(約6.9kPa)の範囲で変化させた場合の実験結果を示すものであって、加工速度の充填率依存性を調べた結果である。なお、図6中、菱形マークは、研磨パッドの基板Wに当接する側の表面に対向電極まで貫通しない浅い格子状の溝がある場合、四角マークは、溝が無い場合の結果である。図6から、充填率と加工速度に強い相関関係があり、更には浅い溝の有無に殆ど影響されないことが分かる。
【0044】
したがって、研磨パッドの回転速度、電解液供給量、貫通孔の孔径といったプロセス条件から充填率を求めることができれば、加工速度の概略を予測し、更には、研磨パッドの回転速度を変えても加工速度の変化が小さいような条件を見つけることができると考えられる。そこで、充填率を簡単な計算により推定することを試みた。以下に、充填率の計算方法を説明する。
【0045】
図7は、電解複合研磨装置の要部の概略図である。図7に示すように、回転軸を有する研磨テーブル100の上に導電性の材料からなる支持部材254が固定されている。この支持部材254の上面に研磨パッド101が取付けられており、研磨パッド101の上面が研磨面となっている。研磨テーブル100は、モータなどの回転機構(図示せず)に連結されており、これにより研磨テーブル100は、支持部材254及び研磨パッド101と一体に回転可能となっている。
【0046】
基板W表面の導電膜は、電源252の陽極に接続されている。また、支持部材254は電源252の陰極に接続されており、基板Wの対向電極として機能する。そして、カソードとしての支持部材254と、アノードとしての基板W上の導電膜は、研磨パッド101の貫通孔101aに充填された電解液50を通して電気的に接続される。これにより、導電膜が電気化学的に溶解し電解研磨が進む。
【0047】
図8(a)〜(c)は、図7に示す研磨パッド101が、図7に示す矢印Bの方向に回転する場合の、電解液供給前領域B、電解液供給領域BII、及び研磨領域BIIIにおける貫通孔101a内の電解液50の充填具合を示すイメージ図である。図8(a)〜(c)においては、いずれの領域B〜BIIIにおいても、研磨パッド101の回転中心は図の右側にあり、研磨パッド101の回転による遠心力が図の左方向に働いている。
【0048】
領域Bでは、図8(a)に示すように、遠心力によって貫通孔101a内の電解液50aの液面が傾き、電解液50aが貫通孔101aの外に流出する。一方、回転中心側の貫通孔から排出されて流れてきた電解液の流入もある。領域BIIでは、図8(b)に示すように、領域Bで貫通孔101a内に充填された電解液50aに、電解液供給ノズル102から供給される電解液50bが加わる。領域BIIIでは、図8(c)に示すように、貫通孔101aの開口部が基板Wによって塞がれ、電解液50cが貫通孔101aに閉じ込められる。その際、貫通孔内に空間101bが生じる。
【0049】
ここで、領域BIIIにおける貫通孔101a内の電解液の充填率を、電解液50cの体積/貫通孔101aの体積、として定義すると、領域Bで貫通孔101a内にある電解液50aの体積と領域BIIで供給される電解液50bの体積とから、領域BIIIにおける貫通孔101内の電解液の充填率は、典型的には次の式1のように定義できる。
【0050】
充填率=電解液50cの体積/貫通孔101aの体積
≒(領域Bで貫通孔101a内にある電解液50aの体積+領域BIIで貫通孔101a内に供給される電解液50bの体積)÷貫通孔101aの体積 (式1)
【0051】
なお、上記充填率の定義からも明らかなように、本発明における研磨パッド101の貫通孔101aとは、研磨パッド101単体においては該研磨パッド101の両面(即ち、例えば支持部材254に接する面および基板Wに接する面)を連通するように貫通している場合であっても、例えば支持部材254上に載置されて、支持部材254と共に閉塞孔を形成するような貫通孔を意味する。さらに研磨パッドが導電性を有する閉塞部材を備えて閉塞孔(即ち、前述のように研磨パッド101の両面を連通することなく基板Wに接する面のみに開口し、支持部材254に接する面の側は前記閉塞部材により閉じている孔)を形成している場合であっても、電解研磨工程における上記閉塞孔の作用効果が貫通孔101aと同等であるから、そのような閉塞孔を備える研磨パッドについても本発明に含まれる。
【0052】
以下に、充填率を単純な計算により導く方法を示す。本明細書においては、ここで導いた充填率を“仮想充填率”と呼ぶこととする。
【0053】
領域Bで貫通孔101a内にある電解液50aの体積は、遠心力で液表面が水平面に対して傾いたときの電解液の体積と流入する電解液の体積との和から流出する電解液の体積を減じて求められ、これは次の式2で近似できる。
【0054】
領域Bで貫通孔101a内にある電解液50aの体積≒貫通孔101aの体積−係数C×遠心力で液表面が水平面に対して傾いたときの空間部101cの体積 (式2)
【0055】
ここで、遠心力で電解液の表面が水平面に対して傾いたときの空間部101cの体積とは、貫通孔101aに電解液50が充填され、電解液50の供給がない状態で研磨パッド101を回転させた場合に、図9に示すように、最終的に(定常状態で)貫通孔101a内に残る空間部101cの体積を指す。
【0056】
遠心力で傾いたときの空間部101cの体積は、遠心力と重力の釣合いによる液面の傾きから求めることができ、研磨パッド101の回転による角速度をω、研磨パッドの回転中心から貫通孔101a中心までの距離をR、貫通孔101aの孔径(直径)をD、貫通孔101aの深さをh、重力加速度をgとすると、例えばR×ω/g≦h/Dの範囲においては、次の式3で近似できる。
【0057】
【数1】

【0058】
ここで、Vは貫通孔101aの体積(πDh/4)である。
領域BIIで貫通孔101a内に供給される電解液50bの体積は、次の式4で近似できる。
【0059】
【数2】

【0060】
ここで、Qは電解液供給流量、LIIは領域BIIの研磨パッド周方向の長さ、Rは研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離、Dは基板Wの直径である。
以上の式1〜4から、R×ω/g≦h/Dの範囲における仮想充填率は、次の式5のようになる。
【0061】
【数3】

【0062】
ここで、式2の係数Cは、鋭意検討の結果、貫通孔の孔径Dに比例する無次元数とすることで、実験結果と良い相関が得られることに想到した。なお、仮想充填率の計算結果が1を超える場合、仮想充填率は1とする。また、R×ω/g>h/Dの範囲における遠心力で傾いたときの空間部101cの体積についても、次の式6に示すように簡単な数値積分により求めることができるので、仮想充填率を算出することができる。
【数4】

ここで、上記φは式7で表される。
【数5】

【0063】
図10は、銅の電解複合研磨において、貫通孔の開口率を約30%に固定し、研磨パッドの回転速度を30rpm〜105rpm、電解液供給量を100mL/min〜2,000mL/min、貫通孔の孔径を2mm〜20mm、基板を研磨パッドに押付ける圧力を0.2psi(約1.4kPa)〜1psi(約6.9kPa)の範囲で変化させた場合の充填率の測定結果(図10中、“充填率(実験値)”と表記)と仮想充填率(図10中、“仮想充填率(計算値)”と表記)の関係を示した図である。図10から、充填率の測定結果と仮想充填率とは良い相関があることが分かる。
【0064】
図11は、仮想充填率と加工速度の測定結果の関係を示した図である。図11から、仮想充填率と加工速度(実測値)とは良い相関があることが分かる。即ち、式5に基づいて算出した仮想充填率の値が大きい場合の加工条件で実際の加工を行ったときには、大きい加工速度を得ることができ、仮想充填率の値が小さい場合の加工条件で実際の加工を行ったときには、加工速度が小さくなるということが出来る。なお、図10及び図11中の菱形マークは、研磨パッドの基板Wに接する側の表面に対向電極まで貫通しない浅い格子状の溝がある場合で、四角マークは、溝が無い場合の結果である。
【0065】
以下、上述の仮想充填率を使って、従来のCMPで通常使用される研磨パッドの回転速度である25rpm〜150rpmの範囲を中心にして検討した結果を説明する。
【0066】
図12(a)及び図13(a)は、基板表面に形成された導電膜としての銅の電解複合研磨において、研磨パッドの回転速度と貫通孔の孔径を変えて銅の加工速度を測定した結果である。図12(a)は電解液供給量が100mL/minの場合、図13(a)は電解液供給量が2,000mL/minの場合である。図12(a)及び図13(a)から、研磨パッドの回転速度が大きくなると加工速度が小さくなり、その減少率は、貫通孔の孔径が大きいほど大きいことが分かる。図12(a)に示すように、電解液供給量が100mL/minの場合、研磨パッドの回転速度を25rpm〜105rpmに変えると、孔径5mmの場合は、加工速度の減少がおよそ20%程度にとどまるが、孔径20mmの場合は、加工速度が80%近く減少している。
【0067】
また、図12(b)及び図13(b)は、研磨パッドの回転速度と貫通孔の孔径を変えて電解液の仮想充填率を式5により計算した結果である。図12(b)は電解液供給量が100mL/minの場合、図13(b)は電解液供給量が2,000mL/minの場合である。仮想充填率の計算結果と加工速度の測定結果との比較、つまり図12(b)及び図13(b)と図12(a)及び図13(a)との比較から、図12(b)及び図13(b)に示す、仮想充填率の計算結果の傾向が加工速度の実測結果と良く一致していることが判る。
【0068】
換言すれば、低回転速度側の25rpmを基準とした場合、高回転速度側である105rpmに向かって実測値において加工速度が低下する割合と、計算値において仮想充填率が低下する割合とがほぼ同等と見ることができる。例えば、貫通孔の孔径5mmの場合にあっては、図12(a)によれば、研磨パッドの回転速度25rpmと105rpmとで加工速度はそれぞれおよそ920nm/minと750nm/minであり、この間で750/920≒0.82、即ち約18%低下している。図12(b)によれば、同じく仮想充填率は、約0.98から約0.66に低下しており、この間で0.66/0.98≒0.67、即ち約33%低下している。
【0069】
一方、電解液供給量が比較的多い場合を示す図13について、図12の場合と同じく、貫通孔の孔径5mmの場合を見ると、図13(a)によれば、研磨パッドの回転速度25rpmと105rpmとで、加工速度はそれぞれ約1070nm/minと840nm/minであり、この間で、840/1070≒0.79即ち、約21%低下している。図13(b)によれば、同じく仮想充填率は約1.00から約0.73に低下しており、この間で、0.73/1.00=0.73、即ち27%低下している。
【0070】
図12と図13では、条件として電解液供給量が相違するが、これら2つのケースの平均値に基づけば、回転速度25rpmの場合を基準として、回転速度105rpmの場合では加工速度の実測値は大略2割低下し、仮想充填率の計算値は大略3割低下する。このように、仮想充填率の低下は加工速度の低下の1.5倍程度である。したがって、低下の割合の値そのものは差があるが、両者の相関関係は強いといえる。
【0071】
研磨パッドの回転速度を変えた場合に加工速度の変化として許容できるのは、例えば低回転速度側を基準とすると、高回転速度側の減少率が25%程度、好ましくは15%程度である。この条件を満たす電解液の仮想充填率は、加工速度の測定結果との上記対応関係に基づき、25%と15%の1.5倍はそれぞれ37.5%と22.5%であり、およそ4割と2割であると考えて良いから、高回転速度側の仮想充填率が約0.6以上、好ましくは約0.8以上と推測できる。したがって、電解液の仮想充填率を種々の条件で計算し、高回転速度側の仮想充填率が約0.6以上、もしくは約0.8以上となる条件を探索すればよいことになる。
【0072】
更に、前述の図6に示す充填率の測定結果と加工速度の関係から、充填率が約0.4未満の場合に比べて、充填率が約0.4以上の場合の方が、充填率の変化に対する加工速度の変化が小さくなっている。したがって、充填率(実験値)が約0.4以上となるような条件で電解複合加工すれば、研磨パッド回転速度を変えても加工速度の変化を小さくすることができるといえる。ここで、充填率(実験値)約0.4以上となる仮想充填率は、前述の図10を参照すると、約0.8以上である。
【0073】
以下に、電解液の仮想充填率の計算結果から研磨パッドの回転速度を変えても加工速度の変化が小さい条件を探索した結果を示す。
【0074】
図14は、電解液流量Q=100mL/min、貫通孔深さh=2.6mm、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離R=150mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=150mm、基板直径D=100mmとした場合の研磨パッド回転速度と仮想充填率との関係を、貫通孔の孔径を変えて計算した結果である。研磨パッド回転速度150rpmにおいて、仮想充填率が約0.6以上となるのは貫通孔の孔径が約5mm以下である。また、研磨パッド回転速度150rpmにおいて、仮想充填率が約0.8以上となるのは貫通孔の孔径が約3mm以下である。
【0075】
図15は、電解液流量Q=900mL/min、貫通孔深さh=2.6mm、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離R=240mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=240mm、基板直径D=300mmとした場合の研磨パッド回転速度と仮想充填率との関係を、貫通孔の孔径を変えて計算した結果である。また、図16は、電解液流量Q=2,000mL/min、貫通孔深さh=2.6mm、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離R=315mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=315mm、基板直径D=450mmとした場合の研磨パッド回転速度と仮想充填率との関係を、貫通孔の孔径を変えて計算した結果である。
【0076】
図15及び図16のいずれの場合においても、図14に示す場合と同様に、研磨パッド回転速度150rpmにおいて、仮想充填率が約0.6以上となるのは、貫通孔の孔径が約5mm以下である。また、研磨パッド回転速度150rpmにおいて、仮想充填率が約0.8以上となるのは、貫通孔の孔径が約3mm以下である。
【0077】
以上から、貫通孔の孔径を5mm以下にすることが好ましく、また孔径を3mm以下にすることが更に好ましい。ここで、孔径が小さすぎると、電解液が貫通孔内に入り難くなり充填率が小さくなるばかりでなく、多数の貫通孔の加工に多大な費用と時間が掛かるといった不都合がある。したがって、貫通孔の孔径は、0.1mm以上が好ましく、更に好ましくは0.3mm以上である。
【0078】
したがって、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される、貫通孔を有する研磨パッドにあっては、前記貫通孔の孔径(直径)が0.1mm〜5mmの範囲であることが好ましく、0.3mm〜3mmであることが更に好ましい。
【0079】
また、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される、対向電極と、該対向電極の表面に設置された研磨パッドとを有する電解複合研磨装置にあっては、該研磨パッド表面から前記対向電極に連通する貫通孔を該研磨パッドに有し、該貫通孔の孔径(直径)が0.1mm〜5mmである研磨パッドを使用することが好ましい。
【0080】
図17は、電解液流量Q=100mL/min、研磨パッド回転速度=75rpm、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離R=150mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=150mm、基板直径D=100mmとした場合の研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を、貫通孔の孔径を変えて計算した結果である。図17から、仮想充填率が約0.6以上となるのは貫通孔の孔径が約5mm以下である。また、仮想充填率が約0.8以上となるのは貫通孔の孔径が約3mm以下である。
【0081】
なお、ここでは、図18(a)に示すように、カソードとなる支持部材254の表面が平坦で、研磨パッド101の厚さと、孔径Dの貫通孔101aの深さhが等しい場合を想定している。すなわち、図18(a)〜(d)に示すように、貫通孔101aの深さhは、カソードの構造によって変わるので、必ずしも研磨パッドの厚さと一致しない。図18(a)においては、カソードとなる支持部材254の表面が平坦で、研磨パッド101の厚さと貫通孔101aの深さhが等しい。図18(b)においては、カソードとなる支持部材254の研磨パッド101と共に貫通孔101aを形成する部分が突出しており、研磨パッド101の厚さが貫通孔101aの深さhよりも大きい。
【0082】
図18(c)においては、研磨パッド101の貫通孔101aの中にカソード254aが支持部材254とは別の部材として設置されており、研磨パッド101の厚さが貫通孔101aの深さhよりも大きい。図18(d)においては、カソードとなる支持部材254の研磨パッド101と共に貫通孔101aを形成する部分が窪んでおり、研磨パッド101の厚さが貫通孔101aの深さhよりも小さいので、研磨パッド101の表面とカソードとなる部分との実質的距離は研磨パッド101の厚さよりも大きい。
【0083】
また、図19に示すように、カソードとなる支持部材254の表面が平坦で、研磨パッド101の厚さと貫通孔101a深さが等しい場合で、かつ、研磨パッド101が最表面層301とベース層302の2層構造を有する多層パッドである場合は、貫通孔101aの孔径が研磨パッド101の各層301,302ごとに同じか異なるかによって、貫通孔101aの深さhの取扱いが異なる。つまり、図19(a)に示すように、貫通孔101aが研磨パッド101の全体にわたって同じ孔径Dの場合、貫通孔101の深さhは研磨パッド101の全体の厚さとなる。図19(b),(c)に示すように、研磨パッド101が2層パッドで、貫通孔101aの最表面層301における孔径Dとベース層302における孔径Dが異なる場合(D≠D)、貫通孔101aの深さhは、ベース層302の厚さによらず、研磨パッド101の最表面層301の厚さと同じになる。
【0084】
図19(d),(e)に示すように、最表面層301a、中間層301b及びベース層302の3層以上の研磨パッド101で、貫通孔101aの最表面層301aにおける孔径Dが他の層301b,302における孔径Dと異なる場合(D≠D)、貫通孔101aの深さhは最表面層301aの貫通孔の孔径Dと同じ径の層までの厚さになる。このように貫通孔101aの深さhを定義することで、貫通孔の構造が異なっても仮想充填率を同じにすればカソードと導電膜との間の電気抵抗を概略同等にすることができる。
【0085】
その場合、仮想充填率の計算に用いる貫通孔101aの孔径Dは最表面層301または301aの孔径Dとなる。なお、研磨パッドを多層構造とすると、例えば下層を比較的軟らかい材質、上層を硬い材質で形成することにより、基板全体の加工速度の均一性と局所的な段差解消性を両立することができる。
【0086】
また上記において、最表面層301または301aとベース層302を備えた研磨パッド101について説明した通り、研磨パッド101が電解複合研磨装置の支持部材254、即ち対向電極上に載置される際にベース層302が対向電極254に接するように載置されるので、研磨パッドの基板表面の金属膜と接触する面と反対側の面のことを研磨パッドの対向電極側の面と言うこともできる。
【0087】
また、図20(a)〜(e)に示すように、図19(a)〜(e)にて示した研磨パッド101と、導電性を有する閉塞部材303とを備えて研磨用品を構成し、該研磨用品を前記閉塞部材303がカソードとなる支持部材254側に面するように載置しても同様の効果を得ることができる。即ち、この場合、閉塞部材303は研磨パッド101の貫通孔101aの支持部材254側の開口部を閉塞する。
【0088】
ところで、上記図18から図20に関する説明を含めて、「研磨パッド101の貫通孔101a」というように記載したが、該貫通孔101aとは研磨パッド101の基板表面の金属膜を研磨する側の面と支持部材254側の面とを貫通する孔という意味であって、電解複合研磨実行時においては研磨パッド101が支持部材254上に載置されるため、該貫通孔は支持部材254により閉塞された孔という態様を呈するから、閉塞孔として機能することは言うまでもない。また図20のように研磨用品を構成した場合は、貫通孔101aは閉塞部材303の存在により閉塞孔として機能する。
【0089】
また、多層構造を有する研磨パッドにおいて、基板表面の金属膜と接触する最表面層が導電性を有し、下層が絶縁性を有する研磨パッドであれば、電源252(図7参照)の陽極を基板Wの導電膜に代えて研磨パッドの最表面層に接続することにより研磨パッドの最表面層から金属膜のほぼ全面に給電できるので、接点効果が低減でき、給電電極を別に設けるよりも加工速度の基板面内均一性が良好となる。
【0090】
図21は、電解液流量Q=900mL/min、研磨パッド回転速度=75rpm、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離R=240mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=240mm、基板直径D=300mmとした場合の研磨パッドの厚さと仮想充填率との関係を、貫通孔の孔径を変えて計算した結果である。また、図22は、電解液流量Q=2,000mL/min、研磨パッド回転速度=75rpm、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離R=315mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=315mm、基板直径D=450mmとした場合の研磨パッドの厚さと仮想充填率との関係を、貫通孔の孔径を変えて計算した結果である。なお、これらの場合においても、研磨パッドの厚さと貫通孔の深さが等しい場合を想定している。
【0091】
図21及び図22のいずれの場合においても、図17の場合と同様に、仮想充填率が約0.6以上となるのは、貫通孔の孔径が約5mm以下である。また、仮想充填率が約0.8以上となるのは、貫通孔の孔径が約3mm以下である。
【0092】
また、図17、図21及び図22から、貫通孔の深さ(カソードとなる支持部材の表面が平坦な場合は研磨パッド厚さ)が0.5mm以下であれば、研磨パッドの厚みを薄くすることなどにより、貫通孔深さを小さくして充填率を大きくするのに有利であることが分かる。しかし、貫通孔深さが小さすぎると、研磨パッドの磨耗などによる貫通孔深さの維持が困難となり、研磨パッドの交換頻度が多くなってしまう。これは、コスト高に繋がるばかりか、装置を止める必要があるため、スループットの低下につながってしまう。したがって、貫通孔深さは0.1mm以上であることが好ましい。
【0093】
したがって、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される、貫通孔を有する研磨パッドにあっては、前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mmの範囲であり、貫通孔の深さが0.1mm〜0.5mmの範囲であることが好ましい。
【0094】
また、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される、対向電極(支持部材)と、該対向電極上に載置される研磨パッドとを有する電解複合研磨装置にあっては、該研磨パッドの基板を加工する側の表面から前記対向電極に連通する貫通孔を該研磨パッドに有し、該貫通孔の孔径が0.1mm〜5mmの範囲、かつ前記貫通孔の深さが0.1mm〜0.5mmの範囲である研磨パッドを使用することが好ましい。
【0095】
また、図17、図21及び図22から、研磨パッド厚さ、もしくは貫通孔深さが0.5mm以上であっても、研磨パッド厚さ、もしくは貫通孔深さが大きいほど、充填率を大きくするのに有利であることが分かる。これは、式5の右辺第2項において、D/h(=貫通孔径/貫通孔深さ)が小さくなると仮想充填率が大きくなることに対応する。
【0096】
図23は、電解液供給量Q=100mL/minとした場合に、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離Rを150mm〜315mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離Rを150mm〜315mm、基板直径Dを100mm〜450mm、研磨パッド回転速度を25rpm〜500rpm、貫通孔の孔径Dを1mm〜20mm、研磨パッド厚さを0.5mm〜5mmの範囲で変化させ、貫通孔の孔径/研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を計算した結果である。なお、ここではカソードとなる支持部材の表面が平坦で、研磨パッドの厚さと貫通孔深さが等しい場合を想定している。
【0097】
図23より、孔径/研磨パッド厚さが大きい場合、特に孔径が大きい場合に、仮想充填率が小さくなる傾向が見られる。また、孔径/研磨パッド厚さが小さく、かつ孔径が小さいと仮想充填率が大きくなる。更に、孔径が5mm以下で、かつ孔径/厚さが10以下であれば、仮想充填率が約0.6以上である。また、孔径が3mm以下で、かつ孔径/厚さが6以下であれば、仮想充填率が約0.8以上である。
【0098】
なお、前述したように、貫通孔の孔径の下限は、好ましくは0.1mm、更に好ましくは0.3mmである。ここで、研磨パッド厚さの上限を5mmとした場合、孔径/厚さの下限は、好ましくは0.02、更に好ましくは0.06となる。
【0099】
したがって、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される、貫通孔を有する研磨パッドであっては、前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mmの範囲であり、厚さが0.5mm〜5mmで、孔径/厚さが0.02〜10の範囲であることが好ましい。前記貫通孔の孔径が0.3mm〜3mmの範囲であり、厚さが0.5mm〜5mmで、孔径/厚さが0.06〜6の範囲であることが更に好ましい。
【0100】
また、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される、対向電極(支持部材)と、該対向電極上に載置される研磨パッドとを有する研磨装置にあっては、該研磨パッドの基板を加工する側の表面から前記対向電極に連通する貫通孔を該研磨パッドに有し、該貫通孔の孔径が0.1mm〜5mmであり、厚さが0.5mm〜5mmで、孔径/深さが0.02〜10の範囲である研磨パッドを使用することが好ましい。該貫通孔の孔径が0.3mm〜3mmであり、厚さが0.5mm〜5mmで、孔径/深さが0.06〜6の範囲である研磨パッドを使用することが更に好ましい。
【0101】
ここで、式5を見てみると、右辺第2項の係数Cは、前述のように貫通孔の孔径Dに比例する無次元数であることから、D/h(=貫通孔径の2乗/貫通孔深さ)が小さくなると仮想充填率が大きくなることがわかる。図24は、電解液供給量Q=100mL/minとした場合に、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離Rを150mm〜315mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離Rを150mm〜315mm、基板直径Dを100mm〜450mm、研磨パッド回転速度を25rpm〜500rpm、貫通孔の孔径Dを1mm〜20mm、研磨パッド厚さを0.5mm〜5mmの範囲で変化させ、貫通孔の孔径の2乗/研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を計算した結果である。なお、ここではカソードとなる支持部材の表面が平坦で、研磨パッド厚さと貫通孔深さが等しい場合を想定している。
【0102】
図24より、孔径の2乗/研磨パッド厚さが大きい場合、特に孔径が大きい場合に仮想充填率が小さくなる傾向が見られる。また、孔径の2乗/研磨パッド厚さが小さく、かつ孔径が小さいと仮想充填率が大きくなる。更に、孔径が5mm以下で、かつ孔径の2乗/研磨パッド厚さが50mm以下であれば、仮想充填率が約0.6以上である。また、孔径が3mm以下で、かつ孔径の2乗/厚さが20mm以下であれば、仮想充填率が約0.8以上である。
【0103】
なお、前述したように、貫通孔の孔径の下限は、好ましくは0.1mm、更に好ましくは0.3mmである。ここで、研磨パッド厚さの上限を5mmとした場合、孔径の2乗/厚さの下限は、孔径の2乗/研磨パッド厚さの式に、孔径=0.1mm及び研磨パッド厚さ=5mmを代入して、0.002を得るから、好ましくは0.002mmとなり、同じく前記の式に孔径の値のみ0.3mmに変えて代入して0.018を得るから、更に好ましくは0.018mmとなる。
【0104】
したがって、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に載置される貫通孔を有する研磨パッドであっては、貫通孔の孔径が0.1mm〜5mmの範囲、かつ厚さが0.5mm〜5mmの範囲、かつ孔径の2乗/厚さが0.002mm〜50mmの範囲であることが好ましい。前記貫通孔の孔径が0.3mm〜3mmの範囲、かつ厚さが0.5mm〜5mmの範囲、かつ孔径の2乗/厚さが0.018mm〜18mmの範囲であることが更に好ましい。
【0105】
また、基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される、対向電極(支持部材)と、該対向電極上に載置される研磨パッドとを有する研磨装置にあっては、前記研磨パッドの基板を加工する側の表面から前記対向電極に連通する貫通孔を該研磨パッドに有し、該貫通孔の孔径が0.1mm〜5mmの範囲、かつ厚さが0.5mm〜5mmの範囲、かつ孔径の2乗/深さが0.002mm〜50mmの範囲である研磨パッドを使用することが好ましい。前記貫通孔の孔径が0.3mm〜3mmの範囲、かつ厚さが0.5mm〜5mmの範囲、かつ孔径の2乗/深さが0.018mm〜18mmの範囲である研磨パッドを使用することが更に好ましい。
【0106】
また、式5を見てみると、右辺第2項は係数Cが前述のように貫通孔の孔径Dに比例する無次元数であることから、Dω/h(=貫通孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/貫通孔深さ)が小さくなると仮想充填率が大きくなることがわかる。図25は、電解液供給量Q=100mL/minとした場合に、研磨パッドの回転中心から貫通孔中心までの距離Rを150mm〜315mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離Rを150mm〜315mm、基板直径Dを100mm〜450mm、研磨パッド回転速度を25rpm〜150rpm、貫通孔の孔径Dを1mm〜20mm、研磨パッド厚さを0.5mm〜5mmの範囲で変化させ、貫通孔の孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を計算した結果である。なお、ここではカソード電極となる支持部材の表面が平坦で、研磨パッド厚さと貫通孔深さが等しい場合を想定している。
【0107】
図25より、孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/研磨パッド厚さが大きいと、仮想充填率が小さくなる傾向が見られる。特に孔径が大きいと仮想充填率の低下傾向は顕著である。また、孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/研磨パッド厚さが小さく、かつ孔径が小さいと仮想充填率が大きくなる。孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/厚さが約500mm/s以下であれば、孔径によらず仮想充填率が約0.6以上である。更に、孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/研磨パッド厚さが約250mm/s以下であれば、孔径によらず仮想充填率が約0.8以上である。また、孔径が5mm以下で、かつ孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/厚さが約10,000mm/s以下であれば、仮想充填率が約0.6以上である。また、孔径が3mm以下で、かつ孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/研磨パッド厚さが約3,000mm/s以下であれば、仮想充填率が約0.8以上である。
【0108】
なお、前述したように、貫通孔の孔径の下限は、好ましくは0.1mm、更に好ましくは0.3mmである。ここで、研磨パッド厚さの上限を5mmとした場合、孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/厚さの下限は、孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/研磨パッド厚さの式に、孔径=0.1mm、角速度=25rpm(25×2×π/60(rad/s))及び研磨パッド厚さ=5mmを代入して、約0.01を得るから、好ましくは0.01mm/sと言うことができ、同じく前記の式に孔径の値のみ0.3mmに変えて代入して約0.1を得るから、更に好ましくは0.1mm/sと言える。
【0109】
したがって、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板と対向電極との間に配置された貫通孔を有する研磨パッドに前記基板表面を押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法において、前記貫通孔直径が0.1mm〜5mmであり、厚さが0.5mm〜5mmである研磨パッドを使用し、該研磨パッドを回転軸を中心に25rpm〜150rpmで回転運動させ、かつ前記研磨パッドの貫通孔の孔径の2乗×前記研磨パッドの回転運動の角速度の2乗/前記研磨パッドの厚さが0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲で回転させることが好ましい。
【0110】
また、前記貫通孔直径が0.3mm〜3mm以下であり、厚さが0.5mm〜5mmである研磨パッドを使用し、該研磨パッドを回転軸を中心に25rpm〜150rpmで回転運動させ、かつ前記研磨パッドの貫通孔の孔径の2乗×前記研磨パッドの回転運動の角速度の2乗/前記研磨パッドの厚さが0.1mm/s〜3,000mm/sの範囲で回転させることが更に好ましい。
【0111】
また、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板と対向電極との間に配置された貫通孔を有する研磨パッドに前記基板表面を押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法において、前記貫通孔直径が0.1mm以上であり、厚さが0.5mm〜5mmである研磨パッドを使用し、該研磨パッドを回転軸を中心に25rpm〜150rpmで回転運動させ、かつ前記研磨パッドの貫通孔の孔径の2乗×前記研磨パッドの回転運動の角速度の2乗/前記研磨パッドの厚さが0.01mm/s〜500mm/sの範囲で回転させることが好ましい。
【0112】
また、前記貫通孔直径が0.3mm以上であり、厚さが0.5mm〜5mmである研磨パッドを使用し、該研磨パッドを回転軸を中心に25rpm〜150rpmで回転運動させ、かつ前記研磨パッドの貫通孔の孔径の2乗×前記研磨パッドの回転運動の角速度の2乗/前記研磨パッドの厚さが0.1mm/s〜250mm/sの範囲で回転させることが更に好ましい。
【0113】
また、基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を前記対向電極上に載置した研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法において、前記研磨パッドはその厚さが0.5mm〜5mmの範囲にあり、前記対向電極に連通する孔径が0.1mm〜5mmの範囲の貫通孔を有し、前記研磨パッドの回転速度が25rpm〜150rpmの範囲、かつ、前記貫通孔の孔径の2乗×前記回転運動の角速度の2乗/前記貫通孔の深さが0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲となるように前記研磨パッドを回転させることが好ましい。
【0114】
これまでは研磨パッドの回転速度と加工速度の関係について、加工速度が式5から算出される仮想充填率と強い相関関係があるという知見に基づいて仮想充填率が好適な範囲となるように、即ち前記好適な範囲内とすることで研磨パッドの回転速度の変化量による加工速度の変化量が許容できる範囲内に収まるように、貫通孔の孔径や深さに着目して好適な条件を探索したが、貫通孔の開口率も好適な条件が存在すると考えられる。そこで発明者らは、貫通孔の孔径や開口率などから加工速度をシミュレーションする手法を考案し、半導体ウェーハ(基板)表面の銅膜(導電膜)の加工について貫通孔の孔径や開口率と加工速度の関係を調べ、段差解消性に優れた研磨パッドの開口率や研磨パッドの回転速度の条件を導いた。
【0115】
ここでは、まずシミュレーションを実施するにあたって想定した電解複合研磨の加工メカニズムについて説明する。次に、想定した加工メカニズムに基づいて加工速度をシミュレーションする方法について説明する。
【0116】
電解複合研磨の加工メカニズムには、溶解型と削膜型の2つのメカニズムが考えられる。溶解型は、酸化剤を用いてpHと電位の状態を銅の活性態域にして銅を溶解(Cu→Cu2++2e)することを基本とする。削膜型は、銅の表面を難溶性錯体に変化させ、この難溶性錯体を機械的に除去することを基本とする。通常は、この2つが同時に起きているが、どちらかが優勢になっていると考えられる。なお、段差解消は(即ち、基板表面に形成された導電膜表面の凹部と凸部との間の段差の解消は)、先述のように、両者とも凹部を保護膜で保護しつつ、主として凹部の外側(即ち上段部、凸部)を電解複合研磨することで実現する。ここでは溶解型の加工メカニズムを想定して加工速度をシミュレーションすることとした。
【0117】
想定した加工メカニズムのイメージを図26に示す。まず、図26(a)に示すように、導電膜(銅膜)66の表面が電解液50に接触することにより、電解液50中のBTA(ベンゾトリアゾール)などが導電膜66の表面に作用して保護膜70を形成する。次に、図26(b)に示すように、この保護膜70が研磨パッド101の非開口部(貫通孔101aの無い部分)で機械的に除去される。そして、図26(c)に示すように、主に研磨パッド101の貫通孔101a内での電解により導電膜66が溶解する。保護膜70は、研磨パッド101の非開口部により完全に除去されるとは限らず残留する場合もあるが、導電膜66は保護膜70が残留していても溶解する。なお、研磨パッド101の非開口部でも若干の電解が起こっていると考えられる。
【0118】
加工速度をシミュレーションするにあたって、半導体ウェーハ等の基板表面上のある点における加工量を時々刻々算出し、加工終了時の加工量を加工時間で除して加工速度とする方法を採用した。前述の加工メカニズムに基づいて加工量を算出するために、まず、導電膜66の表面の保護膜70の厚さや被覆率などを表す量として“保護膜量”という言葉を定義する。保護膜量が小さいと導電膜66が溶解しやすく、保護膜量が大きいと導電膜66が溶解しにくいことは容易に想像できる。したがって、導電膜66の単位時間当たりの溶解量(溶解レート)は、この保護膜量に依存すると考えられる。
【0119】
ここで、ある時刻・ある場所の保護膜量と、その保護膜量における溶解レートを知ることができれば、その時刻・場所における微小時間当たりの加工量(≒溶解量)を計算することができる。よって、シミュレーションにおいては、保護膜量を計算しながら溶解量を計算する必要がある。
【0120】
保護膜70は、導電膜66の表面が電解液50に接することによって形成され、研磨パッド101と接触することによって除去される。したがって、保護膜量は、接液による保護膜70の形成量から、研磨パッド101との接触による保護膜70の除去量を差し引くことで計算できる。よって、保護膜70の形成量と除去量を何らかの方法で推定できれば、保護膜量を計算することができる。
【0121】
ここで、導電膜(銅)表面を研磨パッドで擦らずにそのまま電解液に接液させた場合、保護膜量は接液時間とともに大きくなり、次第にある量(飽和保護膜量)に漸近すると考えられる。このことから、単位時間当たりの保護膜の形成量(保護膜形成レート)は、保護膜量の関数になっていると考えられ、次の式8の関数を仮定した。
【0122】
【数6】

【0123】
ここで、αは保護膜形成レート(単位は[1/s])、αは最大形成レート(保護膜量0の時の形成レート)([1/s])、ζ*は飽和保護膜量([−])、ζは保護膜量([−])である。
よって、微小時間(Δt)当たりの保護膜形成量は、
保護膜形成量=αΔt (式9)
となる。
【0124】
図27に、保護膜形成レートの例として、最大形成レートを100[1/s]、飽和保護膜量を10とした場合の保護膜形成レートと保護膜量の関係を示し、図28に、研磨パッドで擦らない場合の保護膜形成レートと保護膜量の時間変化を示す。
【0125】
一方、導電膜66の表面の保護膜70は、相対運動しながら研磨パッド101と接触することによって除去される。これは、従来のCMPの除去メカニズムと同様であると考えられる。したがって、保護膜70の除去量がプレストンの式に従い、研磨圧力と相対速度、研磨時間に比例すると仮定すると、保護膜除去量は下記の式10で表される。
【0126】
保護膜除去量=kpvΔt=βvΔt (式10)
ここで、kは保護膜除去量に対するプレストン係数([1/(psi・m)])、pは研磨圧力([psi])、vは相対速度([m/s])、Δtは微小時間Δtのうちの研磨パッドとの接触時間([s])、βは圧力を組込んだ保護膜除去係数([1/m])である。
【0127】
以上のように仮定した保護膜形成量と保護膜除去量から、保護膜量は次の式11で与えられる。
保護膜量=ζ=保護膜形成量−保護膜除去量=αΔt−βvΔt (式11)
【0128】
なお、導電膜66の表面が研磨パッド101に接している時でも(即ち、研磨パッド101であって貫通孔101aが無い部分に接しているときでも)、研磨パッド101と導電膜66の間には電解液50が存在しうるので、保護膜70は、形成され続けていると考えられる。導電膜66の表面が研磨パッド101に接している場合、保護膜形成量<保護膜除去量、つまりαΔt<βvΔtの関係となり、結果として保護膜が除去されることになる。
【0129】
上述の方法により計算した保護膜量を元に、微小時間当たりの導電膜66の溶解量を計算する。その際に、保護膜量と導電膜66の溶解レートの関係が必要となる。導電膜66の溶解レートは、保護膜量が小さいときは大きく、保護膜量が大きいときは小さくなる。したがって、保護膜量と銅の溶解レートの関係を次の式12で仮定する。
【0130】
【数7】

【0131】
ここで、Rは銅の溶解レート([nm/s])、RE0は最大溶解レート(保護膜量0の時の溶解レート)([nm/s])、ζ**は限界保護膜量(溶解レートの傾きを決める量)([−])、REmは最小溶解レート([nm/s])である。また、MAX(a,b)はaとbの大きい方の値をとる関数である。
【0132】
図29に、一例として、最大溶解レートを100[nm/s]、限界保護膜量を10、最小溶解レートを30[nm/s]とした場合の保護膜量と導電膜(銅)の溶解レートの関係を示す。
【0133】
ここで、導電膜の溶解レートは、導電膜表面の電流密度に比例すると考えられる。保護膜量が均一であっても電流密度は場所により異なると考えられるため、溶解レートは、図30(a)に示すように、研磨パッド101の1つの貫通孔101a内であっても、厳密には均一では無いと考えられる。また、非開口部においても同様に、貫通孔101aから遠ざかるにしたがって、溶解レートが小さくなると考えられる。しかし、簡単化のために、図30(b)に示すように、保護膜量が均一であれば、貫通孔101a内の溶解レート分布は均一であると仮定した。
【0134】
また、非開口部の溶解レートについても、保護膜量が均一であれば、研磨パッド101の貫通孔101aからの距離によらず均一であると仮定した。勿論、同じ貫通孔101aであっても、保護膜量が均一でなければ、溶解レートは、式12に従って均一ではなくなる。また、基板面内においても、アノード給電電極からの距離に依存する電流密度分布になっていると考えられる。しかし、本シミュレーションでは、導電膜の膜厚が十分厚いと仮定してこれを無視した。
【0135】
ここで、保護膜量が同じであれば、開口部の溶解レートと非開口部の溶解レートの比が等しくなると仮定すると、導電膜の溶解量は次の式13で与えられる。
導電膜(銅)の溶解量=RΔt+δRΔt (式13)
ここで、Δtは微小時間Δtのうちの研磨パッド101の貫通孔101aの開口部との接触時間([s])、δは溶解レート比(非開口部の溶解レート/開口部の溶解レート)([−])である。
【0136】
以上の計算を用いると、最終的に微小時間当たりの導電膜(銅)の加工量は、
導電膜の加工量=導電膜の溶解量=RΔt+δRΔt (式14)
となる。これを加工している間積算し、加工時間で割ると、下記の式15で示す導電膜(銅)の加工速度が得られる。
【0137】
【数8】

【0138】
次に、シミュレーションプログラムの概要を述べる。加工速度のシミュレーションプログラムは、会話型数値解析ソフトウェアMATLABで作成した。図31に加工速度(加工レート)計算のメインプログラムのフローチャートを示す。メインプログラムでは、各種条件の設定や計算結果の保存、孔位置行列生成ルーチンや加工量計算ルーチンの呼び出しを行う。孔位置行列生成ルーチンは、研磨パッドに開口した貫通孔の中心座標を計算するルーチンである。
【0139】
図32に、加工量計算ルーチンのフローチャートを示す。加工量計算ルーチンでは、初めに各種変数や行列を初期化した後に、時間0から時間の積算を開始する。
まず、基板上の全ての加工速度計算位置について、研磨パッド上の貫通孔(開口部)と接触しているか(即ち、前記加工速度計算位置が前記開口部となる場所に存在しているかどうか)判定する(干渉判定)。ここで接触していると判断された加工速度計算位置は、微小時間Δtの間ずっと開口部と接触していると仮定する。一方、研磨パッドの開口部と接触しない加工速度計算位置は、微小時間Δtの間ずっと開口部と接触しないと仮定する。
【0140】
次に、全ての加工速度計算位置における相対速度vを計算する。相対速度vは、保護膜の除去量を計算する際に使用する。
次に、全ての加工速度計算位置において、開口部接触時間、非開口部接触時間、非開口部引掻き距離を計算する。ここで、先の開口部との干渉判定で接触するとなった場合は、開口部接触時間=Δt、非開口部接触時間=0、非開口部引掻き距離=0となる。また、先の開口部との干渉判定で接触しないとなった場合は、開口部接触時間=0、非開口部接触時間=Δt、非開口部引掻き距離=vΔtとなる。
【0141】
次に、1ステップ前の時刻での保護膜量を使って、保護膜形成レートαの計算(式8)と導電膜の溶解レートRの計算(式12)を実施する。その際、それぞれが負の値にならないようにする。
次に、保護膜量の計算を実施する。まず、式11を計算する。次にこの値を前の時刻の値に加えて、この時刻の保護膜量とする。その際、保護膜量が負の値にならないようにする。
【0142】
次に、電解による銅の溶解量の計算を実施する。まず、式13を計算する。次にこの値を前の時刻の値に加えて、この時刻までの積算の溶解量とする。
次に、次の時刻の計算に備えて、研磨パッドと基板をそれぞれ回転させる。より詳細には、孔の位置と加工速度計算位置をそれぞれの回転速度に応じた角度だけ回転させる。
【0143】
次に、時間を加算して時刻を更新する。また、履歴データを保存するために、履歴データを計算する。
以上を、設定した加工時間になるまで繰り返す。そして、最後に積算された銅の溶解量を導電膜の加工量とする。加工速度の算出は、加工速度計算メインプログラムで実施する。
【0144】
上述のシミュレーションを実施するためには、式8〜式15に使用されている7つのシミュレーションパラメータを何らかの方法で決定する必要がある。シミュレーションパラメータをまとめて表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
これらのパラメータのうち、溶解レート比と最小溶解レートについては実験により求め、溶解レート比を1/15、最小溶解レートを29nm/sとした。
また、溶解レート比と最小溶解レート以外のシミュレーションパラメータは、加工速度の孔径依存性と開口率依存性の実験結果から間接的に決定した。以下に、実験結果、その実験結果を用いてシミュレーションパラメータを最適化する方法、及び最適化結果について述べる。
【0147】
図33に、貫通孔深さ2.6mm、開口率31.4%、研磨パッド回転速度50rpm、電解液流量2000mL/min、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=150mmにおける加工速度の孔径依存性の実験結果を示す。この場合、加工速度は孔径にほぼ比例して減少する。実験結果を直線近似した結果、図33中の太線のようになった。近似式は次の式16の通りである。
加工速度(nm/min)=−2.1×10×孔径(mm)+1.4×10 (式16)
【0148】
図34に、貫通孔の孔径5mm、深さ2.6mm、研磨パッド回転速度50rpm、電解液流量2000mL/min、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=150mmにおける加工速度の開口率依存性の実験結果を示す。この場合、加工速度は開口率の増加にしたがって大きくなるが、開口率45%でほぼ頭打ちになる。実験結果を多項式近似した結果、図34中の太線のようになった。近似式は次の式17の通りである。
加工速度(nm/min)=−5.0×10−1×{開口率(%)}
+3.9×10×開口率(%)+5.4×10 (式17)
【0149】
次に、上述の実験結果を用いてシミュレーションパラメータを決定する方法について述べる。シミュレーションパラメータは、図35に定義する目的関数、すなわち計算値と実験式との距離の2乗和が最小となるようなパラメータを探索して決定した。このように、目的関数の最小あるいは最大を見つける過程を最適化と呼ぶ。
目的関数=l12+l22+l32+l42+l52+l62+l72 (式18)
【0150】
シミュレーションパラメータの最適化には、MATLABのOptimization Toolboxを使用した。Optimization Toolboxには数多くの最適化に関するアルゴリズムが用意されているが、制約付き最小化を実行するfmincon関数を使用した。fmincon関数は、制約条件の下で目的関数を最小化するパラメータを自動で探索する関数であり、逐次二次計画法(Sequential Quadratic Programming:SQP法)を使用する。
【0151】
本シミュレーションの場合、決定しなければならないパラメータの数は、全パラメータ7つから実験で決定した溶解レート比と最小溶解レートを除いた5つである。しかし、各パラメータが独立でないためにその内の1つを固定し、最適化するパラメータの数は4つである。ここでは飽和保護膜量ζ*を固定した。
【0152】
目的関数の計算には、上述の実験式(式16、式17)を用いた。計算値は、加工速度の孔径依存性及び開口率依存性を測定した実験と同じ条件(孔径及び開口率を除く)で計算した。また、孔径依存については孔径3mm、5mm、10mm、20mm、開口率依存については、開口率20%、31.4%、40%の場合の加工速度を計算した。
【0153】
シミュレーションパラメータの最適化結果を図36及び表2に示す。図36(a)が孔径依存性、図36(b)が開口率依存性である。グラフにおいて、三角マークが実験値、四角マークが計算値の基板面内平均、菱形マークが基板中心部での計算値である。このように、孔径依存性、開口率依存性ともに、実験結果と計算結果が良く一致した。
【0154】
【表2】

【0155】
図37に、加工速度の開口率依存性をシミュレーションした結果を示す。図37は、研磨パッド回転速度105rpm、電解液流量100mL/min、貫通孔深さ2.6mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=150mmにおいて、孔径が1mm〜20mmまでの結果である。このように、加工速度が最大となる開口率があることが分かった。これは次のように説明できる。開口率が小さい範囲(図37では60%程度より小さい範囲)では、開口率が大きくなるにしたがって、開口部(貫通孔部)の総面積が大きくなり、電解による銅の溶解量が大きくなって、加工速度が大きくなる。しかし、開口率が大きい範囲(図37では60%程度より大きい範囲)では、開口率が大きくなるにしたがって、研磨パッドによる保護膜の除去量が小さくなり、保護膜量が大きくなるために、開口部の総面積が大きくなるにも関わらず加工速度が小さくなる。更に開口率が大きくなると(図37では開口率80%程度以上)、研磨パッドによる保護膜の除去能力が更に小さくなって、平均的な保護膜量が、導電膜の溶解レートが保護膜量に殆ど依存しない領域(例えば図29においては保護膜量が7より大きい領域)に近づくか又は入る。したがって、この領域では、開口率が大きくなると開口部の総面積が大きくなり、加工速度が大きくなる。また、図37からは、加工速度の最大となる開口率が、孔径に余り依存しないことが分かる。
【0156】
図38は、電解液流量100mL/min、孔径5mm、貫通孔深さ2.6mm、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=150mmにおいて、研磨パッド回転速度(図中はTT(ターンテーブル)回転速度として表記)が30rpm〜150rpmまでのシミュレーション結果である。図38から、研磨パッド回転速度が大きくなるほど加工速度のピークが顕著に現れ、かつピークの位置が高開口率側になることが分かる。
【0157】
ここで、加工速度の開口率依存性と段差解消性の関係について、図38の研磨パッド回転速度75rpmの場合を例に考察する。図39に研磨パッド回転速度75rpmの場合の加工速度と平均保護膜量の開口率依存性のシミュレーション結果を示す。図39から、開口率が大きくなると平均保護膜量が大きくなることがわかる。これは次のように説明できる。平均保護膜量は、式8に示す保護膜形成レートαと、式10のβvに相当する保護膜除去レートとがそれぞれ作用する微小時間を含めてバランスする保護膜量である。開口率が大きくなると、開口部面積の増加によって研磨パッドの非開口部面積が小さくなり、研磨パッドによる保護膜除去レートが小さくなる。保護膜形成レートは、図27に示したように、保護膜量の増加にしたがって小さくなるが保護膜除去レートの減少の効果の方が大きく、保護膜形成レートと保護膜除去レートがバランスする点が、保護膜量の大きいほうへシフトする。したがって、平均保護膜量が大きくなる。
【0158】
図39において、開口率が約50%より小さい領域では、開口率が大きくなるにしたがって、加工速度も大きくなる。この領域を領域Aと呼ぶことにする。領域Aは、導電膜表面に形成される保護膜が研磨パッドによって十分に除去される領域であると考えられる。したがって、導電膜表面に凹凸がある場合、凸部の保護膜を研磨パッドによって選択的に除去して、凸部の導電膜を優先的に溶解することができる。よって、加工の進行と共に凹凸の段差が次第に小さくなり、段差を解消できる。
【0159】
次に、開口率が約50%を超えると、加工速度は開口率の増加にしたがって小さくなる。この領域(開口率約50%〜80%)を領域Bと呼ぶことにする。領域Bは、保護膜の形成能力が保護膜の除去能力と同程度である領域と考えられる。図39から、領域Aに比べて領域Bの保護膜量の増加率が明らかに大きくなっていることが分かる。この領域Bでは、導電膜表面に凹凸がある場合、凸部の保護膜を研磨パッドによって選択的に除去する能力が領域Aに比べて劣る。したがって、領域Aに比べて段差を解消する能力が小さいと考えられる。
【0160】
例えば、開口率が約65%と約30%とにおいて、加工速度自体はほぼ同じ値を示しているが、開口率が約30%の場合では、凸部を優先的に加工しているのに対し、約65%の場合では凹部についても加工される結果、領域Bは、領域Aよりも段差は解消しにくいと考えられる。
【0161】
次に、開口率が約80%を超えると、加工速度が開口率の増加にしたがって大きくなる。この領域を領域Cと呼ぶことにする。領域Cは、保護膜の形成能力が保護膜の除去能力よりも大きな領域であると考えられる。この領域Cでは、平均保護膜量が、導電膜の溶解レートが保護膜量に殆ど依存しない領域に近づくか又は入るため、導電膜表面の凹部と凸部の溶解レートの差が小さくなり、段差を解消する能力が極めて小さいと考えられる。
【0162】
以上より、段差解消性を得るには、領域Aまたは領域Bで加工を実施する必要がある。また、領域Aで加工を実施することが望ましい。ここで、図38に戻ってみると、各領域A〜Cの範囲が、研磨パッド回転速度によって変化することが分かる。研磨パッド回転速度が大きいほど、領域Aの範囲が大きくなり、領域Bとの境界が顕著になる。なお、研磨パッド回転速度30rpmでは、全ての開口率の範囲で段差解消能力の極めて小さい領域Cとなっている。したがって、研磨パッド回転速度は40rpm以上であることが望ましい。
【0163】
なお、式10に示すように、保護膜の除去には、実質的には導電膜と研磨パッドとの相対速度が影響する。しかし、研磨パッドの回転速度に比べて基板の回転速度が極端に大きい場合を除いて、相対速度は、研磨パッドの回転速度に略比例するので、本明細書においては通常の研磨装置で設定するパラメータである研磨パッド回転速度としている。図38及び図39は、研磨パッドと基板の回転中心間距離が150mmの場合のシミュレーション結果であり、基板中心での相対速度に換算すると研磨パッド回転速度40rpmは約630mm/sとなる。したがって、研磨パッド回転速度が40rpm以上であり、更に、通常の条件では150rpm以下となることを考えると、運転範囲は40rpm〜150rpmとなることが望ましい。また、その際、併せて基板中心における研磨パッドと基板との相対速度が630mm/s以上となるようにすることが望ましい。
【0164】
図40に、領域Aと領域Bの境界となる貫通孔の開口率γ(%)と研磨パッド回転速度v[rpm]との関係を示す。図中曲線は、次の式19に示す近似式である。
=17×exp(0.03×γ) (式19)
【0165】
この曲線の上にあれば、即ちある開口率を選んだときに研磨パッドの回転速度がこの曲線で示される値以上であれば、領域Aということになる。研磨パッド回転速度40rpm〜150rpmの範囲においては、開口率が70%以下であれば研磨パッド回転速度を適切に選択することにより段差解消性の良い領域Aで加工することができる。しかし、余りに開口率が小さすぎると、図37及び図38に示したように、加工速度が小さくなる。したがって、開口率は20%以上であることが好ましい。
【0166】
なお前記研磨パッドの回転速度に関しては上述のように40rpm〜150rpmの範囲が好ましいから、例えば51rpm〜149rpmの範囲で回転させても良いし、55rpm〜145rpmの範囲で回転させても段差解消性の良い加工ができることは言うまでもない。また、式19の研磨パッド回転速度を基板中心における研磨パッドと基板との相対速度v[mm/s]で書き改めると、研磨パッドの回転中心と基板の回転中心との距離が150mmなので下記の式20となる。
v=267×exp(0.03×γ) (式20)
【0167】
このようにして、研磨時の運転条件を考慮して研磨パッドの形状を規定することができる(例えば、図46参照)。
また、上記研磨パッドに用いられる材質に関しては、独立発泡ポリウレタンパッドや連続発泡のスウェードパッド、不織布パッド、及びそれらの中から選択したパッドを積層したパッドのいずれかを好適に使用することができる。
【0168】
次に、上述の方法により、形状が規定された研磨パッドを用いて研磨加工を行うための研磨加工装置ないし方法の具体例を示す。
【0169】
(第1実施形態)
(基板処理装置)
図41は、本発明に係る電解複合研磨装置を備えた基板処理装置の配置構成例を示す平面図である。
【0170】
図41に示すように、基板処理装置300は、例えば、被研磨基板である多数の基板W(図2等参照)をストックする基板カセット204を収容するロード・アンロードステージを備えている。ロード・アンロードステージ内の各基板カセット204に到達可能となるように、走行機構200の上に2つのハンドを有した搬送ロボット202が配置されている。走行機構200にはリニアモータからなる走行機構が採用されている。リニアモータからなる走行機構を採用することにより、大口径化し重量が増した基板の高速且つ安定した搬送ができる。走行機構200の延長線上には、研磨前または研磨後に基板上の膜厚測定を行うITM(In-line Thickness Monitor)224が配置されている。
【0171】
搬送ロボット202の走行機構200を挟んで、基板カセット204とは反対側に2台の乾燥ユニット212が配置されている。各乾燥ユニット212は、搬送ロボット202のハンドが到達可能な位置に配置されている。また2台の乾燥ユニット212の間で、搬送ロボット202が到達可能な位置に、4つの基板載置台を備えた基板ステーション206が配置されている。
【0172】
各乾燥ユニット212と基板ステーション206に到達可能な位置に搬送ロボット208が配置されている。乾燥ユニット212と隣接するように、搬送ロボット208のハンドが到達可能な位置に洗浄ユニット214が配置されている。搬送ロボット208のハンドの到達可能な位置にロータリトランスポータ210が配置され、このロータリトランスポータ210と基板受渡し可能な位置に、本発明の実施形態における電解複合研磨装置250が2台配置されている。
【0173】
各電解複合研磨装置250は、ヘッド1、研磨テーブル100、研磨パッド101(図42等参照)、研磨パッド101に電解液を供給する電解液供給ノズル(電解液供給部)102、研磨パッド洗浄等のための純水を供給する純水供給ノズル103、研磨パッド101のドレッシングを行うためのドレッサー218、及びドレッサー218を洗浄するための水槽222を有する、いわゆるロータリー方式の電解複合研磨装置250である。
【0174】
(電解複合研磨装置、ヘッド駆動部)
図42は、電解複合研磨装置250の概略構成例図である。
図42に示すように、ヘッド1は、自在継手部10を介してヘッド駆動軸11に接続されており、ヘッド駆動軸11は、揺動アーム110に固定されたヘッド用エアシリンダ111に連結されている。ヘッド用エアシリンダ111によってヘッド駆動軸11は上下動し、ヘッド1の全体を昇降させるとともに、ヘッド本体2の下端に保持された半導体ウェーハ等の基板Wを研磨テーブル100に押圧する。ヘッド用エアシリンダ111は、レギュレータRE1を介して圧縮空気源120に接続されており、レギュレータRE1によって、ヘッド用エアシリンダ111に供給される加圧空気の空気圧等の流体圧力を調整することができる。これにより、基板Wが研磨パッド101を押圧する押圧力を調整することができる。
【0175】
ヘッド駆動軸11は、キー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。回転筒112は、その外周部にタイミングプーリ113を備えている。揺動アーム110には、回転駆動部としてのヘッド用モータ114が固定されており、タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してヘッド用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、ヘッド用モータ114を回転駆動することによって、タイミングプーリ116、タイミングベルト115及びタイミングプーリ113を介して回転筒112及びヘッド駆動軸11が一体に回転し、研磨ヘッド1が回転する。揺動アーム110は、フレーム(図示せず)に固定支持されたシャフト117によって支持されている。
【0176】
(ヘッド)
図43はヘッド1の構成例を示す断面図であり、図44は図43に示すヘッド1の底面図である。図43に示すように、ヘッド1は、内部に収容空間を有する円筒容器状のヘッド本体2と、ヘッド本体2の下端に固定されたリテーナリング3を備えている。ヘッド本体2は、例えば金属やセラミックス等の強度及び剛性が高い材料から形成されている。リテーナリング3は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの剛性の高い樹脂又はセラミックス等の材料から形成されている。
【0177】
ヘッド本体2は、円筒容器状のハウジング部2aと、ハウジング部2aの円筒部の内側に嵌合される環状の加圧シート支持部2bと、ハウジング部2aの上面の外周縁部に嵌合された環状のシール部2cとを備えている。ヘッド本体2のハウジング部2aの下面に固定されているリテーナリング3の下部は内方に突出している。なお、リテーナリング3をヘッド本体2と一体的に形成してもよい。
【0178】
ヘッド本体2のハウジング部2aの中央部上方には、上述したヘッド駆動軸11が配設されており、ヘッド本体2とヘッド駆動軸11とは自在継手部10により連結されている。この自在継手部10は、ヘッド本体2及びヘッド駆動軸11を互いに傾動可能とする球面軸受け機構と、ヘッド駆動軸11の回転をヘッド本体2に伝達する回転伝達機構とを備えており、ヘッド本体2のヘッド駆動軸11に対する傾動を許容しつつ、ヘッド駆動軸11の押圧力及び回転力をヘッド本体2に伝達する。
【0179】
球面軸受け機構は、ヘッド駆動軸11の下面の中央に形成された球面状凹部11aと、ハウジング部2aの上面の中央に形成された球面状凹部2dと、両凹部11a,2d間に介装された、セラミックスのような高硬度材料からなるベアリングボール12とから構成されている。回転伝達機構は、ヘッド駆動軸11に固定された駆動ピン(図示せず)とハウジング部2aに固定された被駆動ピン(図示せず)とから構成される。ヘッド本体2が傾いても被駆動ピンと駆動ピンは相対的に上下方向に移動可能であるため、これらは互いの接触点をずらして係合して、回転伝達機構がヘッド駆動軸11の回転トルクをヘッド本体2に確実に伝達する。
【0180】
ヘッド本体2及びヘッド本体2に一体に固定されたリテーナリング3の内部に画成された空間内には、研磨ヘッド1によって保持される半導体ウェーハ等の基板Wに当接する弾性パッド4と、環状のホルダーリング5と、弾性パッド4を支持する概略円盤状のチャッキングプレート6とが収容されている。弾性パッド4は、その外周部がホルダーリング5と該ホルダーリング5の下端に固定されたチャッキングプレート6との間に挟み込まれており、チャッキングプレート6の下面を覆っている。これにより、弾性パッド4とチャッキングプレート6との間には空間が形成されている。
【0181】
ホルダーリング5とヘッド本体2との間には弾性膜からなる加圧シート7が張設されている。加圧シート7は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴムなどの強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。加圧シート7は、一端をヘッド本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込み、他端をホルダーリング5の上端部5aとストッパ部5bとの間に挟み込んで固定されている。ヘッド本体2、チャッキングプレート6、ホルダーリング5、及び加圧シート7によって、ヘッド本体2の内部に圧力室21が形成されている。図44に示すように、圧力室21には、チューブやコネクタ等からなる流体路31が延設されており、圧力室21は、流体路31内に設置されたレギュレータRE2を介して圧縮空気源120に接続されている。
【0182】
なお、加圧シート7がゴムなどの弾性体からなり、加圧シート7をリテーナリング3とヘッド本体2との間に挟み込んで固定した場合には、弾性体としての加圧シート7の弾性変形によってリテーナリング3の下面において好ましい平面が得られなくなってしまう。したがって、これを防止するため、この例では、別部材として加圧シート支持部2bを設けて、加圧シート7をヘッド本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込んで固定している。
【0183】
弾性パッド4とチャッキングプレート6との間に形成される空間の内部には、弾性パッド4に当接する当接部材としてのセンターバッグ(中心部当接部材)8及びリングチューブ(外側当接部材)9が設けられている。この例においては、図43及び図44に示すように、センターバッグ8は、チャッキングプレート6の下面の中心部に配置され、リングチューブ9は、このセンターバッグ8の周囲を取り囲むようにセンターバッグ8の外側に配置されている。なお、弾性パッド4、センターバッグ8及びリングチューブ9は、加圧シート7と同様に、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0184】
図43に示すように、チャッキングプレート6と弾性パッド4との間に形成される空間は、上記センターバッグ(エアバッグ)8及びリングチューブ(エアバッグ)9によって複数の空間に区画されており、センターバッグ8とリングチューブ9の間には圧力室(流体室)22が、リングチューブ9の外側には圧力室(流体室)23がそれぞれ形成されている。
【0185】
センターバッグ8は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜81と、弾性膜81を着脱可能に保持するセンターバッグホルダー(保持部)82とから構成されている。センターバッグホルダー82にはねじ穴82aが形成されており、このねじ穴82aにねじ55を螺合させることにより、センターバッグ8がチャッキングプレート6の下面の中心部に着脱可能に取付けられている。センターバッグ8の内部には、弾性膜81とセンターバッグホルダー82とによって中心部圧力室(流体室)24が形成されている。
【0186】
同様に、リングチューブ9は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜91と、弾性膜91を着脱可能に保持するリングチューブホルダー(保持部)92とから構成されている。リングチューブホルダー92にはねじ穴92aが形成されており、このねじ穴92aにねじ56を螺合させることにより、リングチューブ9がチャッキングプレート6の下面に着脱可能に取付けられている。リングチューブ9の内部には、弾性膜91とリングチューブホルダー92とによって中間部圧力室(流体室)25が形成されている。
【0187】
圧力室22,23、中心部圧力室24及び中間部圧力室25には、チューブやコネクタ等からなる流体路33,34,35,36がそれぞれ連通されており、各圧力室22〜25は、それぞれの流体路33〜36内に設置されたレギュレータRE3,RE4,RE5,RE6を介して、供給源としての圧縮空気源120に接続されている。なお、上記流体路31,33〜36は、ヘッド駆動軸11の上端部に設けられたロータリジョイント(図示せず)を介して、各レギュレータRE2〜RE6に接続されている。
【0188】
上述したチャッキングプレート6の上方の圧力室21及び上記圧力室22〜25には、各圧力室に連通される流体路31,33〜36を介して加圧空気等の加圧流体又は大気圧や真空が供給されるようになっている。図42に示すように、圧力室21〜25の流体路31,33〜36上に配置されたレギュレータRE2〜RE6によって、それぞれの圧力室に供給される加圧流体の圧力を調整することができる。これにより各圧力室21〜25の内部の圧力を各々独立に制御するか、または大気圧や真空にすることができる。
【0189】
このように、レギュレータRE2〜RE6によって各圧力室21〜25の内部の圧力を独立に可変とすることにより、弾性パッド4を介して基板Wを研磨パッド101に押圧する押圧力を基板Wの部分(区画領域)毎に調整することができる。
【0190】
また図43に示すように、チャッキングプレート6から圧力室22,23に複数の凸部42が立設されている。凸部42の先端は、開口部41を通って弾性パッド4の表面に露出している。凸部42の先端面から流体路43が延設され、図42に示す真空源121に接続されている。これにより、図43に示す凸部42の先端面で、基板Wを真空吸着しうるようになっている。
【0191】
(研磨テーブル、研磨パッド)
図45は電解複合研磨装置の研磨テーブル100を概略的に示す縦断面図である。研磨テーブル100の上面には円板状の支持部材254が固定されている。支持部材254は、導電性材料(金属、合金、導電性プラスチックなど)で構成されている。この支持部材254の上面に研磨パッド101が取付けられており、研磨パッド101の上面が研磨面となっている。研磨テーブル100は回転機構(図示せず)に連結されており、これにより研磨テーブル100は、支持部材254及び研磨パッド101と一体に回転可能となっている。この研磨パッド101には上下に貫通して支持部材254に達する多数の貫通孔101aが設けられている。
【0192】
支持部材254は、電源252の陰極に接続されており、第1電極(カソード)、つまり基板Wの対向電極として機能する。電源252から延びる配線と支持部材(カソード)254との電気接点には、コロ、ブラシなどが用いられる。例えば、図45に示すように、支持部材254の側面に電気接点262を接触させることができる。電気接点262は、比抵抗が小さく軟質な金属、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウムなどで形成することが好ましい。
【0193】
研磨パッド101の側方に位置して、電源252の陽極に接続された第2電極(給電電極)264が配置されている。ヘッド1は、基板Wの一部を研磨パッド101の側方にはみ出させた状態で基板Wを研磨面に接触させるようになっており、基板Wの下面が第2電極264に接触するようになっている。これにより、第2電極264から基板Wの導電膜に電圧が印加される。そして、カソードとしての支持部材254と、アノードとしての基板W上の導電膜は、研磨パッド101の貫通孔101aに充填された電解液を通して電気的に接続される。なお、リテーナリング3の一部を導電性の物質として基板Wと電気接点をとれるようにすれば、第2電極264からリテーナリングを介して基板Wの導電膜に電圧を印加することも可能である。導電性物質は電解液に対する耐薬品性、電解研磨の際の電解反応による変質、パッドと接触する場合には耐磨耗性等を考慮して選択しなければならない。
【0194】
研磨パッド101の貫通孔101aの孔径Dは2mmで、厚みhは2.6mmであり、これによって、孔径の2乗/厚さが1.54mmに設定されている。更に、図46に示すように、ピッチPが3.4mmの三角格子の頂点に貫通孔101aが設けられ、これによって、貫通孔101aの開口率は31.4%に設定されている。
【0195】
なお、例えば図18(b)〜(d)に示されるように支持部材254の研磨パッド101を載置する面において、研磨パッド101の貫通孔101aの位置に凹凸が形成されていたり、貫通孔101a内に支持部材254に接するようにカソード254aを配設する場合にあっては、研磨パッド101の厚さと貫通孔101aの深さhとは値が異なる。これらの場合には貫通孔101aの深さhの値を0.5mm〜5mmの範囲に設定すれば良い。即ち、貫通孔101aの孔径Dを0.1mm〜5mm、例えば2mm、研磨パッド101の貫通孔101aの深さhを0.5mm〜5mm、例えば2.6mm、孔径の2乗/厚さを0.002mm〜50mm、例えば1.54mmに設定し、更に、貫通孔101aの開口率を20%〜70%、例えば31.4%に設定されたものを使用しても良い。
【0196】
なお上記で「貫通孔101aの深さh」と述べたが、該貫通孔は一方の開口部が例えば支持部材254またはカソード254aによって閉塞されるので実質的な意味は「閉塞孔の深さh」と言うことになる。また図18(a)に示されるように支持部材254の研磨パッド101を載置する面が平坦面であるときには、「貫通孔101aの深さh」、即ち実質的な意味において「閉塞孔の深さh」は研磨パッド101の厚さと同じ値になることは言うまでもない。従って図18(a)に示される態様においては、貫通孔101aの孔径D、貫通孔101aの深さh、孔径の2乗/厚さおよび開口率の値は、上記図18(b)〜(d)での値と同様にすることができる。
【0197】
また、図19(a)〜(e)、及び図20(a)〜(e)に示される研磨パッド101(または研磨パッド101と閉塞部材303)を使用して、貫通孔101aの最表面層301または301aにおける孔径Dを0.1mm〜5mm、例えば2mm、研磨パッド101の貫通孔101aの深さhを0.5mm〜5mm、例えば2.6mm、孔径の2乗/厚さを0.002mm〜50mm、例えば1.54mmに設定し、更に、貫通孔101aの開口率を20%〜70%、例えば31.4%に設定したものを使用しても良い。
【0198】
なおここで貫通孔101aの深さhの値の取扱いは、貫通孔101aの孔径が研磨パッド101の各層301(または301a、301b),302ごとに同じか異なるかによって、異なってくるが、そのことに関しては図19および図20の説明において述べた通りである。また図19(a)〜(e)の態様においては研磨パッド101の貫通孔101aは支持部材254によって一方の開口部が閉塞されるが、図20(a)〜(e)の態様においては貫通孔101aは閉塞部材303によって一方の開口部が閉塞され、それぞれ実質的には閉塞孔を形成する。
【0199】
(電解複合研磨方法)
次に、本実施形態に係る電解複合研磨方法の研磨工程について説明する。
図47は、電解複合研磨の工程図である。最初に、本実施形態の研磨対象である基板Wの膜構成について説明する。
【0200】
図47(a)に示すように、シリコン等からなる基板Wの表面に、SiO、SiOF、SiOCやLow−k材(低誘電率絶縁膜)等の絶縁材料からなる層間絶縁膜62が形成されている。層間絶縁膜62の表面には、配線形成用の凹部63が形成されている。この凹部63を含む層間絶縁膜62の表面には、チタン、タンタル、タングステン、ルテニウム及びそれらの合金等の中から選択された材料からなるバリア膜64が、厚さ10nm程度に形成されている。バリア膜64は、次述する導電膜66の金属材料が基板Wに拡散するのを防止するため、また導電膜66と層間絶縁膜62との密着性を向上させるために設けられている。
【0201】
バリア膜64の表面には、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、タングステン、ルテニウムまたはそれらの合金等の中から選択された導電性金属材料からなる導電膜66が、厚さ500〜1000nm程度に形成されている。この導電膜66を電解めっき法で形成する場合には、電解めっきの電極となるシード膜(図示せず)をバリア膜64の表面に形成しておく。なお層間絶縁膜62の凹部63に倣って、導電膜66の表面には、高さ300nm程度及び幅100μm程度の凹部67が形成されている。なおここに示した、配線形成用凹部の寸法は一例として示したものである。
【0202】
層間絶縁膜62の凹部63に充填された導電膜66が金属配線として利用されるため、凹部63の外側に形成された導電膜66及びバリア膜64は不要である。なお層間絶縁膜62を介して複数の配線を積層するため、導電膜66及びバリア膜64が除去された状態で、凹部63の導電膜66の表面と層間絶縁膜62の表面とが同一平面上に配置されて基板Wの表面が平坦化されている必要がある。
【0203】
そこで、余分な金属膜(導電膜66及びバリア膜64)を電解複合研磨により除去し、平坦化する。電解複合研磨では、基板Wの表面の金属膜と対向電極との間に研磨パッド101と電解液50を存在させて電圧を印加し、基板Wの表面を研磨パッド101に押圧しながら基板Wと研磨パッド101とを相対(回転)移動させて、金属膜の表面を研磨するようにしている。
なお、本実施形態では、導電膜66として銅を用いる場合について説明するが、研磨の対象となる導電性物質としては、上述した物質、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0204】
本実施形態の電解複合研磨方法では、導電膜66の研磨を研磨の進行による膜の厚さに合わせてバルク研磨及びクリア研磨の2段階の研磨で行っている。次いでバリア研磨の工程となる。
【0205】
具体的には、まず図47(b),(c)に示すように、バルク研磨として、電解液50を研磨パッド101上に供給しながら導電膜66を所定厚さまで研磨する。なお図47と図7とを比べた場合、対向電極、研磨パッド101及び基板Wの天地方向の配置関係が互いに逆になっている。即ち、図7に示す電解複合研磨装置の態様においては、対向電極が支持部材254として下方に配置され、その上に研磨パッド101が載置されており、基板Wは研磨パッドの上方から研磨パッドに押圧される。また図47では対向電極は図示を省略されているが、同図において研磨パッド101の上側即ち研磨パッド101を挟んで導電膜66(基板W)の反対側にある。
【0206】
電解複合研磨は、導電膜66へ印加される電圧により生じる電解反応を利用して研磨するものであるが、導電膜66の電解反応と同時に、電解液50に含まれる保護膜形成成分と導電膜66とが反応して、導電膜66の表面に金属錯体からなる保護膜70が形成される。導電膜66の上段部H(凹部67の外側)に形成された保護膜70は、研磨パッド101との当接により除去される。これにより、上段部Hの導電膜66が電解液50に溶解して除去される。これに対して、下段部L(凹部67の内側)の導電膜66は、保護膜70に遮蔽されて電解液50に溶解しない。以上により、導電膜66の段差が解消されて平坦化されるようになっている。
【0207】
電解液50は、金属膜と反応する保護膜形成成分として、ベンゾトリアゾール(BTA)のような腐食抑制剤を含んでいる。しかしながら、BTAのみでは保護膜70が強すぎる部分とほとんど保護膜70ができない部分ができてしまい、保護膜70の均一性や安定性を確保し難い。これを防止するため、電解液50中に保護膜形成の補助剤として、ポリアクリル酸アンモニウム等の水溶性高分子を含んでいる。具体的な電解液として、例えば1mol/L(モル・パー・リットル)マロン酸+1.4mol/Lメタンスルホン酸+0.3wt%ベンゾトリアゾール+0.6wt%ポリアクリル酸アンモニウム(平均分子量:10000)+0.7wt%メタノール+0.05wt%(界面活性剤:MX2045L 花王製)に0.05wt%のシリカ砥粒を加え、pH調整剤でpH4.5に調整したもの等が好適に用いられる。
【0208】
ところで、電解複合研磨を行う際に、段差解消性や面荒れなどをコントロールするために、研磨パッド101の回転速度を制御する場合がある。しかし、上述したように、研磨パッド101の貫通孔101aの孔径や深さを適切な範囲にしておかなければ、研磨パッド101の回転速度が大きくなると加工速度が小さくなるという問題がある。したがって、本実施形態では、上記に開示した研磨パッド101で研磨を行う。
【0209】
図48には、図19(a)に示す、孔径D=2mm、開口率31.4%(三角格子のピッチ3.4mm)の貫通孔101aを形成した、全体の厚さhが2.6mmの二層パッドで電解複合研磨を実施した結果、及び孔径D=5mm、開口率31.4%(三角格子のピッチ8.5mm)の貫通孔101aを形成した、全体の厚さhが2.6mmの二層パッドで電解複合研磨を実施した結果を示す。孔径D=20mm、開口率31.4%(三角格子のピッチ34mm)、全体の厚さhが2.6mmの二層パッドで電解複合研磨を実施した結果も参考として示す。
【0210】
図48(a)は、電解液流量100mL/min、研磨パッドの回転中心から基板の回転中心までの距離R=150mmの場合の、加工速度の研磨パッド回転速度依存性である。図48(a)から、孔径2mm及び孔径5mmの場合の方が孔径20mmの場合に比べて、回転速度依存性が小さく、更に孔径2mmの場合の方が孔径5mmの場合に比べて、回転速度依存性が小さいことが判る。
【0211】
図48(b)は、電解液流量2,000mL/minの場合の、加工速度の研磨パッド回転速度依存性である。この例においても、孔径2mm及び孔径5mmの場合の方が孔径20mmの場合に比べて、回転速度依存性が小さく、更に孔径2mmの場合の方が孔径5mmの場合に比べて、回転速度依存性が小さいことが判る。
【0212】
また、先に図25において、仮想充填率と貫通孔の孔径の2乗×回転運動の角速度の2乗/貫通孔の深さとの関係について述べ、このとき研磨パッドの回転速度を25rpm〜150rpmの間で変化させて計算した結果、前記貫通孔の孔径の2乗×回転運動の角速度の2乗/貫通孔の深さの値が0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲内で研磨パッドの回転速度を変化させるならば、研磨パッド回転速度変化に対する基板表面金属膜の加工速度の変化を許容値以内に抑えることができるので好ましい旨を示した。このとき研磨パッド101の貫通孔直径は0.1mm〜5mmの範囲の値が好ましいとした。上記図48(a)及び図48(b)に示す結果は、このことを実験により実証したものである。
【0213】
また図40の説明において、研磨パッドの回転速度を40rpm〜150rpmの間に選べば、段差解消性の良い加工が可能であることを示した。従って、これらのことから、電解研磨に際して、前記貫通孔の直径が0.1mm〜5mmの範囲にある研磨パッドを使用し、回転速度が40rpm〜150rpmの範囲で、かつ、前記貫通孔の孔径の2乗×前記回転運動の角速度の2乗/前記貫通孔の深さが0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲となるように研磨パッド101を回転させるのが好ましいと言えるが、本実施形態では、上記条件で電解研磨加工をすれば研磨パッド回転速度を大きくした場合の加工速度の減少を抑制することができることを実証している。
【0214】
(研磨パッド)
また、研磨パッドとして以下のものを採用することも可能である。
研磨パッドの種類に関しては、独立発泡ポリウレタンパッドや連続発泡のスウェードパッド、不織布パッド、及びそれらの中から選択したパッドを積層したパッドが挙げられる。また、砥粒を含まない電解液を使用する場合、砥粒を結合剤によリバインドした固定砥粒パッドを使用しても良い。その砥粒として、酸化セリウム(CeO)、アルミナ(A1)、炭化珪素(SiC)、酸化珪素(SiO)、ジルコニア(Zr0)、酸化鉄(FeO、Fe2、Fe)、酸化マンガン(Mn0、Mn)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、ダイヤモンド(C)、又はこれらの複合材料を採用することが可能である。また結合剤として、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂等を採用することが可能である。また、被研磨対象の導電膜表面へ印加される電圧を確保することを目的として、研磨表面の少なくとも一部に導電面を有する導電性パッドを使用しても良い。
【0215】
ここで、研磨パッドの表面に、貫通孔とは別に対向電極まで到達しない(研磨パッドを貫通しない)溝を形成しても良い。溝形状については、1つ以上の(1)同心円溝、(2)偏心溝、(3)多角形溝(格子溝を含む)、(4)らせん溝、(5)放射溝、(6)平行溝、(7)弧状溝やこれらの組合せを形成しても良い。これらの溝形状は電解液の保持・排出に影響する。例えば、同心円溝や偏心溝については、流路が閉じているため電解液が研磨パッド上に保持される効果を有する。これに対して、多角形溝や放射溝は研磨対象である基板の被加工面と研磨パッドとの間隙への電解液の流入及び研磨パッド外への電解液の排出を促進する効果を有する。
【0216】
なお、基板の被加工面と研磨パッドとの間隙への電解液の流入、流出及び保持の効率を高めるために、研磨パッド面内において溝幅や溝ピッチ、溝深さを適宜調整して、研磨パッド内の溝密度分布を調整してもよい。例えば溝幅・溝深さは0.4mm以上、溝ピッチは溝幅の2倍以上が良く、電解液の流れを考慮すれば、溝幅・溝深さは0.6mm以上が更に好ましい。また、溝間の電解液の流れを活発にすることを目的として、溝間に補助溝(例えば、同心円溝間に形成された複数の細溝や、太い格子溝間に形成された細溝等)を設けても良い。また溝の断面形状については、四角溝や丸溝の他にV溝を採用してもよい。また溝からの電解液の排出を促進させる際は、研磨パッドが装着された研磨テーブルの回転方向を考慮して、回転方向下流に傾斜した順溝を形成してもよい。逆に溝からの電解液の排出を抑制する際は、回転方向上流側に傾斜した逆溝を形成しても良い。
【0217】
また、研磨パッドの基板との接触面形状は、電解反応により生成した保護皮膜のメカニカル除去に影響する。接触面でのメカニカル作用を増加させるためには、接触面形状が鋭利なものが良く、円錐形、多角錐形、四角錐形が挙げられる。ここで、被研磨物によっては接触面形状が鋭利過ぎるとスクラッチ等の原因となるため、これを回避する策として、円錐台や角錐台のような上面を平坦化した形状が挙げられる。また、接触面でのメカニカル作用をさらに低減させる形状としては、円柱、楕円柱、半球が挙げられる。これらの形状の配置としては、格子や千鳥、三角配置のような規則性の有るものや規則性を消すためにランダムに配置してもよい。また、これらの形状は研磨パッドの研磨面内において複数種類存在してもよく、またその密度分布を調整しても良い。
【0218】
(電解液)
また、電解液中に含有させる物質として以下のものを採用することも可能である。即ち電解液は、(1)有機酸またはその塩の1種類以上、(2)スルホン酸基を有する強酸の1種類以上、(3)腐食抑制剤(窒素含有複素環化合物)、(4)水溶性高分子化合物、(5)pH調整剤、(6)砥粒、及び(7)界面活性剤を含んでいるものが好ましい。
【0219】
電解液に含まれる各成分について以下に説明する。
電解液に含まれる有機酸は、研磨の対象となる銅等の金属と可溶性錯体を形成する必要がある。つまり、配位結合して水溶液中に溶解するもので、少なくとも有機酸単独で水に溶解する必要がある。有機酸は、その分子内にカルボキシル基(−COOH)を1個以上有するもの、またカルボキシル基と共にヒドロキシ基(−OH)を1個以上有するものであることが好ましい。また、これら有機酸は、電解液のpHを安定化させるpH緩衝作用も有している。
【0220】
電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基を1個有するカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、ソルビン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、レブリン酸、安息香酸、m−トルイル酸、またはアセチルサリチル酸などが挙げられる。また、電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、α-ケトグルタル酸、アコニット酸、フタル酸、またはピロメリト酸などが挙げられる。
【0221】
また、電解液に好ましく使用することのできる有機酸である、カルボキシル基と共にヒドロキシ基を1個以上有するカルボン酸としては、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、オキサル酢酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、ゲンチシン酸、プロトカテク酸、没食子酸、グルクロン酸、シアル酸、またはアスコルビン酸などが挙げられる。
【0222】
これらカルボン酸の塩としては、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩またはヒドロキシルアミン塩などが挙げられる。これらの1種を電解液に加えても2種以上の混合物を加えてもよい。
【0223】
以上に挙げた有機酸の群のうち、特に好ましく使用することのできるものは、マロン酸、コハク酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、または酒石酸である。
【0224】
有機酸の濃度は、加工時の温度での飽和濃度以下である必要がある。何故ならば飽和濃度を超えると有機酸が電解液中に析出してしまい安定な加工が行えないからである。例えば、マレイン酸の飽和濃度は、78重量%(25℃)である。一方、逆に有機酸の濃度が0.1%より低いと、溶解する金属と配位結合する有機酸の加工部表面への供給量が不足し、加工が速やかに進まず、加工面の表面粗さが大きくなる等の問題が生じる。また濃度が低いと十分なpH緩衝作用を持たなくなる。以上の理由から、有機酸の濃度は、0.1〜80重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることが更に好ましい。
【0225】
電解液に含まれるスルホン酸基を有する強酸は、エッチング作用を促進するとともに、電解液の導電率を上げて加工のための電流を流しやすくするためのものである。ここで、強酸とは、酸の強弱を示す第1解離定数の逆数の対数であるpKaが3以下のものをいう。
【0226】
一般に、強酸を用いると、銅の溶解が始まる電位が低い。すなわち、低い印加電圧で銅の加工が可能となる。しかし、硫酸、硝酸または過塩素酸を用いると、銅のエッチング等により加工面の表面粗さが大きく、またリン酸は、表面光沢が得られる濃度域では粘度が高いために銅の加工に必要な電圧が比較的高いなどの問題がある。これに対して、例えばメタンスルホン酸を用いた場合は、銅加工に必要な電圧が低く、かつ加工表面も比較的平滑で、良好な加工特性が得られることが確かめられている。
【0227】
好ましく使用することができるスルホン酸基を有する強酸としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、タウリン、システイン酸、アルキル基の総炭素数が1〜6であるアルキルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはフルオロスルホン酸などが挙げられ、これら1種類以上を使用することができる。スルホン酸基を有する強酸の濃度は、0.1〜20重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましい。スルホン酸基を有する強酸の濃度が低すぎると電解液の導電率が低くなり、電流が流れにくくなる。このため、スルホン酸基を有する強酸の濃度は、5重量%以上であることが好ましい。また、スルホン酸基を有する強酸の濃度が20重量%を越えると、電解液中の有機酸やその他の成分の飽和溶解度が減じて沈殿を生じるおそれがある。
【0228】
電解液に含まれる腐食抑制剤は、窒素含有複素環化合物であることが好ましく、加工の対象となる銅等の金属と化合物を形成し、金属表面に保護膜を形成することで、金属の腐食を抑制する化合物として知られているものでよい。このような腐食抑制剤は、過剰な加工を抑制しディッシング等を防止するため平坦化を促進する効果がある。
【0229】
好ましく使用することのできる腐食抑制剤として、従来から一般に知られている銅の腐食抑制剤であるベンゾトリアゾール及びその誘導体が挙げられる。上記のような平坦化を促進する効果を有するものとして、他に、インドール、2−エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メチルベンゾチアゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−2−チアゾリン、2−メルカプトベンズオキサゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、ピリジン、フェナジン、アクリジン、1−ヒドロキシピリジン−2−チオン、2−アミノピリジン、2−アミノピリミジン、トリチオシアヌル酸、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、6−アミノプリン、6−チオグアニン及びこれらの組合せからなる群より選ばれる1種類以上を挙げることができる。
【0230】
腐食抑制剤は、その濃度が低いと、保護膜形成が不十分となるため、銅等の金属に過剰なエッチングが生じて平坦な加工面が得られない。一方、飽和溶解度以下であっても、腐食抑制剤の濃度が高すぎると、銅等の金属表面に保護性が過剰に形成されて加工速度が低下し、しかも均一に加工ができないため、加工表面の表面粗さやピットの原因にもなる。以上のことから、腐食抑制剤の濃度は、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.02〜2重量%であることが更に好ましい。
【0231】
電解液に含まれる水溶性高分子化合物は、腐食抑制剤と共に保護膜を形成し、過剰なエッチングを抑制して、銅等の金属表面を平坦化するのに効果がある。また、水溶性高分子化合物を含む電解液にあっては、銅等の金属表面(加工面)表層近傍での電解液粘度が高くなるため、金属表面に存在する微細な凹凸の凹部に粘性皮膜が形成され、微細な凹凸も研摩磨されて光沢面が得られる。
【0232】
好ましく使用することのできる水溶性高分子化合物のうち、上記のような効果を有するものとして、ポリアクリル酸またはその塩、ポリメタクリル酸またはその塩、ポリエチレングリコール、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメトキシエチレン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンなどから選ばれる1種類以上を挙げることができる。
【0233】
これらの水溶性高分子化合物として、質量平均分子量が1000〜500000のものを用いることができる。質量平均分子量が500000を越える場合には、電解液中に溶解せず腐食抑制剤や砥粒と凝集を起こす原因となってしまい、質量平均分子量が1000未満では銅等の金属表面に十分な保護膜が形成できず平坦化性能が悪化する。水溶性高分子化合物の質量平均分子量は、1000〜100000であることが好ましく、2000〜25000であることが更に好ましい。
【0234】
水溶性高分子化合物の濃度は、電解加工(電解研磨)の加工速度を低下させず、かつ過剰な加工作用を抑制するため、0.005〜5重量%であることが好ましく、0.01〜2重量%であることが更に好ましい。
【0235】
安定した電解液のpHを調整するため、電解液にpH調整剤を添加しても良い。好ましいpH調整剤としては、主にアルカリが用いられ、アンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアミン、ポリアミン、アルカリ金属化合物(例えば水酸化カリウム)、及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる1種類以上が選択できる。アルカリの濃度は、一般には0.1〜20重量%で、被加工物の用途、材料、含有する有機酸または有機酸塩及び強酸の濃度と調整するpHにより適宜決めればよい。
【0236】
好ましい電解液のpHは2〜10である。電解液のpHが低い場合は、電解研磨装置の材料選定に耐腐食性を考慮しなければならず、また加工速度は高くなる一方、加工面の粗さが増え、銅等の金属の過剰エッチングが進み平坦な加工面が得にくくなる。電解液のpHが高い場合は、腐食抑制剤及び/または水溶性高分子化合物と銅との間における保護膜形成が不十分となり、平坦化作用が不十分となることがある。従って、半導体基板の銅配線プロセスのように、加工速度が高く、表面粗さに優れた光沢面で平坦化が求められる場合、電解液のpHは3〜6であることが特に好ましい。
【0237】
溶解型のメカニズムを利用した電解複合研磨にあっても、電解液には砥粒が含まれることが好ましい。削膜型の電解複合研磨においては、砥粒には銅等の金属を機械的に研磨除去する作用があるが、溶解形の電解複合研磨においては、腐食抑制剤及び水溶性高分子化合物により形成された金属保護膜を機械的に研磨除去する作用がある。この砥粒の作用により、余分な保護膜が除去されて、電解加工電解研磨における加工速度が十分速くなる。
【0238】
電解液として好ましく用いることのできる砥粒としては、アルミナ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、及び酸化マンガンから選ばれる1種類以上を挙げることができる。これらの中でも、アルミナ、コロイダルシリカ、またはヒュームドシリカが好ましく用いられる。
【0239】
電解複合研磨として有効に機能させる場合における電解液中の砥粒の濃度は、10重量%以下であることが好ましく、砥粒の効果を出すためには、砥粒の濃度は、0.01重量%以上であることが必要である。一方、電解液中に分散させて使用する砥粒が無くとも研磨パッドのような固定砥粒を使用し、研磨パッドを銅等の金属表面に接触させることで保護膜除去の効果は有効であるので、そのような場合には電解液中に砥粒はなくてもよく、もちろん固定砥粒砥との併用も可能である。砥粒を使用する場合、砥粒の濃度が10重量%を越えると砥粒粒子の凝集が増加し、電解液の粘性が極端に高くなる場合もあり、加工面への砥粒堆積による電解加工電解研磨の阻害やスクラッチ発生の原因となる。このため、最適な砥粒の濃度は、0.05〜2重量%である。
【0240】
電解液は界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、砥粒の分散性を向上させるものであればよく、カチオン性、アニオン性、両性、及び非イオン性のいずれも使用することができる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アミドスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、またはそのホルマリン縮合物が用いられる。また、カチオン性界面活性剤としては、例えば脂肪族アミン塩や脂肪族アンモニウム塩等が用いられる。これらは、砥粒の濃度や電解液のpHにより、適宜選択し用いられる。界面活性剤は、好ましくはアニオン性界面活性剤で、特に好ましくは、アルキルスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物である。
【0241】
電解液の導電率は、5〜200mS/cmであることが望ましい。電解液の導電率が低いと、加工速度を上げるために印加電圧または電流を高くしなければばらないが、その場合には、酸素発生による研磨に対する電流効率の低下、加工表面のピット発生、保護膜の破壊による平坦化作用への悪影響等がある。したがって、より低い電圧で電解加工(電解研磨)を行うことが望まれ、そのためには、電解液の導電率が5〜200mS/cmであることが好ましい。
【0242】
電解液の組成の例としては、(1)2〜80重量%の有機酸、(2)2〜20重量%のスルホン酸基を有する強酸、(3)0.01〜1重量%の腐食抑制剤、(4)0.01〜1重量%の水溶性高分子化合物、(5)0.01〜2重量%の砥粒、及び(6)約0.01〜1重量%の界面活性剤を備えている水溶液が挙げられる。電解液の溶媒は、脱イオン水、好ましくは超純水である。
【0243】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】研磨パッドの回転速度を変えた場合における、充填率(実験値)と加工速度の関係を示すグラフである。
【図2】電解液供給量を変えた場合における、充填率(実験値)と加工速度の関係を示すグラフである。
【図3】貫通孔の孔径を変えた場合における、充填率(実験値)と加工速度の関係を示すグラフである。
【図4】基板を研磨パッドに押付ける圧力を変えた場合における、充填率(実験値)と加工速度の関係を示すグラフである。
【図5】貫通孔の開口率を変えた場合における、充填率(実験値)と加工速度の関係を示すグラフである。
【図6】貫通孔の開口率を固定し、研磨パッドの回転速度、電解液供給量、貫通孔の孔径及び基板を研磨パッドに押付ける圧力を変えた場合における加工速度の充填率依存性を調べた結果を示すグラフである。
【図7】電解複合研磨装置の要部の概略図である。
【図8】図7に示す領域B、領域BII、及び領域BIIIにおける貫通孔内の電解液の充填具合を示すイメージ図である。
【図9】貫通孔に電解液が充填され電解液の供給がない状態で研磨パッドを回転させた場合における電解液の充填具合を示すイメージ図である。
【図10】銅の電解複合研磨において、貫通孔の開口率を固定し、研磨パッドの回転速度、電解液供給量、貫通孔の孔径、及び基板を研磨パッドに押付ける圧力を変えた場合における充填率の測定結果(実験値)と仮想充填率(計算値)の関係を示すグラフである。
【図11】仮想充填率と加工速度の測定結果の関係を示すグラフである。
【図12】(a)は電解液供給量が100mL/minの場合における研磨パッドの回転速度と加工速度との関係を孔径ごとに示すグラフで、(b)は電解液供給量が100mL/minの場合における研磨パッドの回転速度と仮想充填率との関係を孔径ごとに示すグラフでる。
【図13】(a)は電解液供給量が2,000mL/minの場合における研磨パッドの回転速度と加工速度との関係を孔径ごとに示すグラフで、(b)は電解液供給量が2,000mL/minの場合における研磨パッドの回転速度と仮想充填率との関係を孔径ごとに示すグラフである。
【図14】電解液流量を100mL/minとした場合における研磨パッド回転速度と仮想充填率との関係を貫通孔の孔径を変えて計算した結果を示すグラフである。
【図15】電解液流量を900mL/minとした場合における研磨パッド回転速度と仮想充填率との関係を貫通孔の孔径を変えて計算した結果を示すグラフである。
【図16】電解液流量を2,000mL/minとした場合における研磨パッド回転速度と仮想充填率との関係を貫通孔の孔径を変えて計算した結果を示すグラフである。
【図17】電解液流量を100mL/minとした場合における研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を貫通孔の孔径を変えて計算した結果を示すグラフである。
【図18】単層パッドにおける研磨パッドの厚さと、貫通孔のそれぞれ異なる深さhの関係を示す図である。
【図19】多層パッドにおけるそれぞれ異なる貫通孔の孔径と貫通孔の深さhの関係を示す図である。
【図20】図19に示す多層パッドに閉塞部材を取付けて研磨用品を構成した場合におけるそれぞれ異なる貫通孔の孔径と貫通孔の深さhの関係を示す図である。
【図21】電解液流量を900mL/minとした場合における研磨パッドの厚さと仮想充填率との関係を貫通孔の孔径を変えて計算した結果を示すグラフである。
【図22】電解液流量を2,000mL/minとして場合における研磨パッドの厚さと仮想充填率との関係を貫通孔の孔径を変えて計算した結果を示すグラフである。
【図23】研磨パッド厚さを変化させた場合における貫通孔の孔径/研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を計算した結果を示すグラフである。
【図24】研磨パッド厚さを変化させた場合における貫通孔の孔径の2乗/研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を計算した結果を示すグラフである。
【図25】研磨パッド厚さを変化させた場合における貫通孔の孔径の2乗×研磨パッドの角速度の2乗/研磨パッド厚さと仮想充填率との関係を計算した結果を示すグラフである。
【図26】想定した電解加工メカニズムのイメージを示す図である。
【図27】保護膜形成レートと保護膜量の関係を示すグラフである。
【図28】研磨パッドで擦らない場合における保護膜形成レートと保護膜量の時間変化を示すグラフである。
【図29】最大溶解レートを100[nm/s]、限界保護膜量を10、最小溶解レートを0とした場合の保護膜量と導電膜(銅)の溶解レートの関係を示すグラフである。
【図30】導電膜の溶解レートのシミュレーションの説明に付する図である。
【図31】加工速度(加工レート)計算のメインプログラムを示すフローチャートある。
【図32】加工量計算ルーチンを示すフローチャートである
【図33】加工速度の孔径依存性の実験結果を示すグラフである。
【図34】加工速度の開口率依存性の実験結果を示すグラフである。
【図35】加工速度の孔径依存性、加工速度の開口率依存性及び目的関数の関係を示す図である。
【図36】シミュレーションパラメータの最適化結果を示すグラフである。
【図37】貫通孔の孔径を変えて加工速度の開口率依存性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図38】研磨パッド回転速度(図中はTT(ターンテーブル)回転速度として表記)を変えて加工速度の開口率依存性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図39】研磨パッド回転速度を一定にした場合における加工速度と平均保護膜量の開口率依存性を示すグラフである。
【図40】図39に示す領域Aと領域Bの境界となる貫通孔の開口率(%)と研磨パッド回転速度[rpm]との関係を示すグラフである。
【図41】本発明に係る電解複合研磨装置を備えた基板処理装置の配置構成例を示す平面図である。
【図42】電解複合研磨装置の概略構成例図である。
【図43】ヘッドの構成例を示す断面図である。
【図44】ヘッドの底面図である。
【図45】電解複合研磨装置の研磨テーブルを概略的に示す縦断面図である。
【図46】研磨パッドの形状の1例を示す平面図である。
【図47】電解複合研磨の工程図である。
【図48】(a)は電解液流量が100mL/minの場合における、本発明と参考例の加工速度の研磨パッド回転速度依存性を調べた結果を示すグラフであり、(b)は電解液流量が2,000mL/minの場合における、本発明と参考例の加工速度の研磨パッド回転速度依存性を調べた結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0245】
1 ヘッド
50 電解液
62 絶縁膜(層間絶縁膜)
64 バリア膜(バリアメタル膜)
66 導電膜(金属導電膜)
70 保護膜
100 研磨テーブル
101 研磨パッド
101a 貫通孔
102 電解液供給ノズル
250 電解複合研磨装置
252 電源
254 支持部材(対向電極)
301,301a 最表面層
302 ベース層
303 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に設置される貫通孔を有する研磨パッドであって、
前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、厚さが0.5mm〜5mm、かつ孔径の2乗/厚さが0.002mm〜50mmの範囲であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記研磨パッドが多層構造を有することを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記研磨パッドの前記対向電極側の面に更に貫通孔を有するベース層を有し、該ベース層の貫通孔の少なくとも一部が研磨パッドの前記金属膜と接触する面に連通していることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記研磨パッドの前記基板表面の金属膜と接触する層が導電性を有することを特徴とする請求項2または3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に設置される貫通孔を有する研磨パッドであって、
前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、厚さが0.1mm〜0.5mmの範囲であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項6】
前記研磨パッドの前記貫通孔の開口率が20%〜70%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項7】
基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置の対向電極上に載置される研磨用品であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨パッドと、
該研磨パッドの前記対向電極側の面に設けられた導電性を有する閉塞部材と、
を備えたことを特徴とする研磨用品。
【請求項8】
基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置であって、
対向電極と、
前記対向電極上に設置され該対向電極と前記基板表面の金属膜との間を連通する貫通孔を有する研磨パッドとを備え、
前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、前記貫通孔の深さが0.5mm〜5mm、かつ孔径の2乗/深さが0.002mm〜50mmの範囲であることを特徴とする電解複合研磨装置。
【請求項9】
前記研磨パッドは多層構造を有することを特徴とする請求項8に記載の電解複合研磨装置。
【請求項10】
前記研磨パッドは前記対向電極側の面に更に貫通孔を有するベース層を有し、該ベース層の貫通孔の少なくとも一部が該研磨パッドの前記金属膜と接触する面に連通していることを特徴とする請求項8または9に記載の電解複合研磨装置。
【請求項11】
前記研磨パッドの前記基板表面の金属膜と接触する層が導電性を有することを特徴とする請求項9または10に記載の電解複合研磨装置。
【請求項12】
基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置であって、
対向電極と、
前記対向電極上に設置され該対向電極と前記基板表面の金属膜との間を連通する貫通孔を有する研磨パッドとを備え、
前記貫通孔の孔径が0.1mm〜5mm、かつ前記貫通孔の深さが0.1mm〜0.5mmの範囲であることを特徴とする電解複合研磨装置。
【請求項13】
前記研磨パッドの前記貫通孔の開口率が20%〜70%の範囲であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の電解複合研磨装置。
【請求項14】
基板表面の金属膜の電解複合研磨に使用される電解複合研磨装置であって、
対向電極と、
前記対向電極上に閉塞部材が該対向電極と接するように設置された請求項6に記載の研磨用品と、
を備えたことを特徴とする電解複合研磨装置。
【請求項15】
基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を前記対向電極上に設置した研磨パッドに押圧しながら前記基板と前記研磨パッドとを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法において、
前記研磨パッドとして、前記対向電極と前記基板表面の金属膜との間を連通する孔径が0.1mm〜5mmの範囲の貫通孔を有する研磨パッドを使用し、
前記研磨パッドの回転速度が40rpm〜150rpmの範囲で、かつ、
前記貫通孔の孔径の2乗×前記回転運動の角速度の2乗/前記貫通孔の深さが0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲となるように前記研磨パッドを回転させることを特徴とする電解複合研磨方法。
【請求項16】
前記研磨パッドの回転速度v(rpm)と前記研磨パッドの貫通孔の開口率γ(%)との関係が、
≧17×exp(0.03×γ)
であることを特徴とする請求項15に記載の電解複合研磨方法。
【請求項17】
前記研磨パッドは、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨パッドであることを特徴とする請求項15または16に記載の電解複合研磨方法。
【請求項18】
基板表面の金属膜と対向電極との間に電解液を存在させ、前記金属膜と対向電極間に電圧を印加しつつ、前記基板表面を前記対向電極上に設置した研磨用品に押圧しながら前記基板と前記研磨用品とを相対移動させて、前記金属膜の表面を研磨する電解複合研磨方法において、
前記研磨用品として、貫通孔を有する研磨パッドと該研磨パッドの前記対向電極側の面に設けられた導電性を有する閉塞部材とを備えた請求項6に記載の研磨用品を使用し、
前記研磨用品の回転速度が40rpm〜150rpmの範囲で、かつ、
前記研磨パッドの貫通孔の孔径の2乗×前記回転運動の角速度の2乗/前記貫通孔の深さが0.01mm/s〜10,000mm/sの範囲となるように前記研磨用品を回転させることを特徴とする電解複合研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【公開番号】特開2009−295914(P2009−295914A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150539(P2008−150539)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】