説明

研磨パッド

【課題】研磨時における穴のスラリー保持性を向上させ、スラリーの消費量を低減してウェハの製造コストを低減する。
【解決手段】研磨パッド100におけるウェハの被研磨面を研磨するための研磨面102に、所定方向へ長尺な穴104を形成することにより、ウェハ研磨時に穴104に流入したスラリーに遠心力、パッドの回転による力等が作用した場合に、スラリーの保持性が向上するので、ウェハの単位枚数あたりのスラリー消費量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的機械的研磨に用いられる研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
化学的機械的研磨(CMP)は主に半導体装置の製造工程で多用されている。CMPは、具体的には、定盤に貼り付けた研磨パッドを回転させつつ、スラリーをパッド表面に滴下しながら、被研磨体であるウェハを研磨パッドに押し当てて研磨を行うものである。研磨パッドには、滴下されたスラリーを遠心力によって無駄に排出させることなく効果的に研磨に寄与させる能力が要求される。この能力は、一般に、スラリーの保持性と称されている。
【0003】
図8に従来例の研磨パッドの平面図を示す。図8に示すように、研磨パッド200は、ウェハ全体に亘って研磨均一性を得るために、一般的にポリウレタンからなる研磨層210と、この研磨層210より軟質のポリウレタン若しくは不織布等からなる下層(図示せず)を貼り合わせた構造となっている(例えば、特許文献1参照)。研磨パッド200の研磨面202には、略真円形の穴204が形成される。この穴204を形成するとスラリーの保持性が良好となってスラリー消費量が低減する。穴に加えて研磨パッドに溝を形成すると、研磨時にウェハに対して研磨パッドを高圧で加圧したときでも十分にスラリーを研磨面202に行き渡らせることができるし、ウェハと研磨パッド200の間に生じる負圧を低減して、研磨終了後にウェハが研磨パッド200に張り付くことを防止してキャリアへの回収をスムーズに行うことができるという利点がある。
【特許文献1】特開平9−117855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された研磨パッドでは、研磨時にウェハに対して相対的に高速で回転するのでスラリーが大きな遠心力を受ける。また、ウェハと研磨パッドが相対的に回転するのでスラリーは大きな回転方向にも力を受ける。このように、スラリーには径方向及び周方向に力が作用するので、略真円形の穴ではスラリー保持性は十分とはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ウェハの被研磨面を研磨するための研磨面を有し、前記研磨面に所定方向へ長尺な穴が形成されていることを特徴とする研磨パッドが提供される。
【0006】
この研磨パッドでは、穴が長尺であることから、研磨時に穴の長手方向についてスラリーの保持性が向上する。すなわち、研磨時に穴に流入したスラリーに、遠心力、パッドの回転による力等により穴の長手方向へ力が作用した際に、スラリーを研磨面に効果的に保持させることができる。これにより、ウェハの単位枚数あたりのスラリー消費量を低減することができる。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、スラリーの消費量を低減することができるので、ウェハの製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面を参照しつつ、本発明による研磨パッドの好適な実施形態について詳細に説明する。尚、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1から図3は本発明の一実施形態を示すものであり、図1は研磨パッドの平面図、図2は研磨パッドの一部断面図、図3は研磨パッドの作用説明図である。
【0010】
図1に示すように、研磨パッド100は、ウェハ(図示せず)の被研磨面を研磨するための研磨面102を有し、研磨面102に所定方向へ長尺な穴104が形成されている。研磨パッド100は略円盤状であり、研磨面102は略円形に形成されている。
【0011】
図2に示すように、研磨パッド100は、例えばポリウレタンからなる研磨層110と、研磨層110より軟質で例えば不織布、ポリウレタンからなる下層120を貼り合わせた構造となっている。図2に示すように、穴104は研磨層110を貫通しており、平面視にて穴104を通じて下層120が露出している。
【0012】
図1に示すように、穴104は、平面視にて楕円状を呈し、研磨面102に複数形成される。また、各穴104の長手方向は、研磨面102の径方向に対してなす角を有している(交差している)。本実施形態においては、図1に示すように、各穴104の長手方向は、研磨面102の径方向に対し、径方向外側へ向かって、研磨面102におけるウェハに対する相対的な回転方向に傾斜している。全ての穴104が同形状に形成され、各穴104の配置は、回転中心について対称的となっている。
【0013】
以上のように構成された研磨パッド100では、各穴104が長尺であることから、研磨時に各穴104の長手方向についてスラリーの保持性が向上する。すなわち、図3に示すように、各穴104の内部に流入したスラリーに、遠心力、パッドの回転による力等により各穴104の長手方向へ力が作用した際に、スラリーを研磨面102に効果的に保持させることができる。これにより、ウェハの単位枚数あたりのスラリー消費量を低減することができる。
【0014】
本実施形態においては、図3に示すように、各穴104の長手方向が研磨面102の径方向に対してなす角を有しているので、径方向に作用する遠心力のみならず周方向に作用するパッドの回転による力が作用した際にもスラリーを的確に保持することができる。
【0015】
特に、各穴104の長手方向は、研磨面102の径方向に対し、径方向外側へ向かって、研磨面102におけるウェハに対する相対的な回転方向に傾斜しており、各穴104の長手方向と、研磨パッド100とウェハを相対的に回転して定常状態となった際に各穴104内のスラリーに作用する遠心力及びスラリーに作用するパッドの回転による力との合成力の方向と、がほぼ一致するよう構成されている。これにより、定常状態におけるスラリーの保持性が飛躍的に向上している。ここで、本実施形態においては、定常状態において、遠心力がパッドの回転による力より大きく、各穴104は径方向から45°未満の角度だけ周方向へ傾斜させた状態となっている。
【0016】
このように、前記実施形態においては、各穴104が径方向から45°未満の角度だけ周方向へ傾斜させたものを示したが、例えば、図4に示すように、遠心力とパッドの回転による力とがほぼ一致する場合は、各穴104を径方向から45°の角度だけ周方向へ傾斜させてもよい。さらに、例えば、図5に示すように、遠心力よりもパッドの回転による力が大きい場合は、各穴104を径方向から45°を超えて周方向へ傾斜させてもよい。さらにまた、遠心力だけを考慮すればよい場合などは各穴104を径方向へ延びるよう形成してもよく、要は各穴104が所定方向へ長尺に形成されていればよい。
【0017】
また、前記実施形態においては、各穴104が楕円状であるものを示したが、例えば、図6に示すように、穴104は、平面視にて、長手方向に真円を複数重ね合わせた形状であってもよい。これにより、研磨層110に対して真円状のパンチングの組合せで各穴104を構成することができ、例えば従来の加工装置を用いて研磨パッド100を製造することができるなど、研磨パッド100の生産性が向上する。
【0018】
また、例えば、図7に示すように、穴104を、平面視にて、いわゆるティアドロップ状に形成してもよい。この穴104の形状を詳述すると、径方向内側について径方向内側から径方向外側に向かって拡開する形状を呈している。そして、径方向外側についてほぼ円弧状を呈している。これにより、研磨時に各穴104にスラリーが流入しやすく、且つ、スラリーが流出し難いものとなっている。
【0019】
このように、各穴104の形状については適宜に変更が可能である。そして、穴104に加えて、研磨面102に格子状の溝を形成してもよい。さらに、研磨層110及び下層120の材質も任意であるし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示す研磨パッドの平面図である。
【図2】研磨パッドの一部断面図である。
【図3】研磨パッドの作用説明図である。
【図4】変形例を示す研磨パッドの作用説明図である。
【図5】変形例を示す研磨パッドの作用説明図である。
【図6】変形例を示す研磨パッドの一部平面図である。
【図7】変形例を示す研磨パッドの一部平面図である。
【図8】従来例を示す研磨パッドの平面図である。
【符号の説明】
【0021】
100 研磨パッド
102 研磨面
104 穴
110 研磨層
120 下層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの被研磨面を研磨するための研磨面を有し、
前記研磨面に所定方向へ長尺な穴が形成されていることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記研磨面は略円形に形成され、
前記穴の長手方向が、前記研磨面の径方向に対して交差していることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記穴の長手方向は、前記研磨面の径方向に対し、径方向外側へ向かって、前記研磨面における前記ウェハに対する相対的な回転方向に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記穴は楕円状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記穴は、平面視にて、長手方向に真円を複数重ね合わせた形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−214379(P2007−214379A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32940(P2006−32940)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】