説明

研磨パッド

【課題】 下地層の周側面に防水層を設けることにより、研磨パッドの下地層内にスラリーが浸透することを防止して、研磨特性に悪影響を及ぼさず、また研磨レートの検出精度を上げるようにする。
【解決手段】 研磨パッド1は、下地層11と下地層11の表面に積層されたパッド本体10とを有する。下地層11の周側面にスラリーの浸透を防止し得る防水層12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、電子部品等の被研磨部材の研磨加工に使用される研磨パッドに関し、詳しくは半導体ウエハ等の被研磨部材の研磨加工において、研磨対象物の平坦性を高め、かつ長寿命化を図ることができる研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にウエハの研磨は、研磨パッドを下定盤側に保持し、研磨対象物であるウエハを上定盤側に保持して、研磨スラリーを供給しながら、ウエハと研磨パッドを加圧した状態で相対的に摺動させることによって行われる。
【0003】
ところで、従来の研磨パッドは、図5に示すように、パッド本体10と、該パッド本体10に感圧接着剤層15を介して積層された下地層11と、両面接着テープ14とを有している。このような研磨パッド20を製造する場合には、図6に示すように、下地層11とパッド本体10とを両面接着テープ15を介して張り合わせ、この積層体を研磨パッド形状に打ち抜くことで研磨パッド20を得ている。
【0004】
ところが、この研磨パッド20を用いて、ウエハの研磨を行うと、スラリーが、下地層11の周側面から内部に浸透し、その結果、スラリーの浸透により下地層の圧縮率等の物性が変化して研磨性能が低下するという欠点があり、またスラリーの浸透により接着剤層と下地層間の剥離等の不良が起こるという欠点がある。
【0005】
さらに、ウエハの研磨をしながらウエハ表面の研磨レートを測定するために、レーザー光又は可視光が通過するための透明な窓部材を設けた研磨パッドにおいては、スラリーが、その測定用窓へしみ込むために検出不良になるという欠点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の欠点を解消するためになされたものであって、その目的とするところは、下地層内にスラリーが浸透することを防止して、研磨特性に悪影響を及ぼさず、また研磨レートの検出精度を上げることができる研磨パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の研磨パッドは、下地層と該下地層の表面に積層されたパッド本体とを有する研磨パッドであって、該下地層の周側面にスラリーの浸透を防止し得る防水層が設けられており、そのことにより上記目的が達成される。
【0008】
一つの実施態様では、前記下地層の定盤側面に第1の両面接着テープが貼り付けられ、前記パッド本体の下地層側面に第2の両面接着テープが貼り付けられ、パッド本体の周縁部が下地層の周囲より外側へ延出され、該パッド本体の周辺部において第1の両面接着テープと第2の両面接着テープが接着して前記防水層が形成されている。
【0009】
一つの実施態様では、前記防水層が、前記下地層の少なくとも周側面に樹脂、エラストマーまたはゴムを塗布することにより形成されている。
【0010】
一つの実施態様では、前記防水層が、下地層の周辺部の密度を中央部に比べて高くすることにより形成されている。
【0011】
本発明の作用は次の通りである。
【0012】
研磨パッドに優れた研磨特性を付与するたるために、下地層は一般に弾性を有する多孔質のもので形成されており、従って、この下地層の周端面よりスラリーが内部へ浸透し易いのであるが、本発明では、下地層の周側面にスラリーの浸透を防止し得る防水層が設けられていることにより、スラリーが下地層内部へ浸透することを防止して、研磨特性(ユニフォーミティ)の変化を和らげることができ、それによって歩留まりの向上、生産性向上および品質安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、下地層内にスラリーが浸透することが防止できるので、研磨特性に悪影響を及ぼさず、また研磨レートの検出精度を上げることができる。従って、研磨特性(ユニフォーミティ)の変化を和らげることができ、それによって歩留まりの向上、生産性向上および品質安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)は本発明の研磨パッドの一実施形態の要部断面図である。図1(b)はその研磨パッドの平面図である。
【図2】図1で示す研磨パッドの使用説明図である。
【図3】図1で示す研磨パッドの製造方法を説明する概略図である。
【図4】実施例の説明図である。
【図5】従来の研磨パッドの断面図である。
【図6】従来の研磨パッドの製造法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
(実施形態)
図1に示すように、研磨パッド1は、弾性を有する多孔質な下地層11と該下地層11の表面に感圧接着剤層(両面接着テープ)15を介して積層されたパッド本体10とを有する。
【0016】
パッド本体10は、通常は微細な気泡を有する樹脂層にて形成されている。下地層11は、パッド本体10に比べて弾性を有する合成樹脂の発泡層や不織布等から形成されている。この下地層11の裏面に感圧接着剤層(両面接着テープ)14を介して離型シート(図示せず)が積層されており、離型シートを剥がして感圧接着剤層14を定盤に貼り付けることにより研磨パッド1は使用される。
【0017】
パッド本体10は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル等の一種または2種以上から、公知の注型法、押し出し成形法等によって製造することができる。通常は、熱可塑性樹脂を用い、注型法、押し出し成形法によって製造されるが、熱硬化性樹脂を用いて加熱硬化させることで製造して得てもよい。
【0018】
下地層11は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル等の一種または2種以上から、公知の注型法、押し出し成形法等によって製造することができる。通常は、熱可塑性樹脂を用い、注型法、押し出し成形法によって製造される。また、不織布等のように通気性を有する材料で形成することもできる。
【0019】
この下地層11の周側面に、スラリーの浸透を防止し得る防水層12が設けられている。
【0020】
防水層12は以下のようにして形成されている。
【0021】
(1)下地層11の定盤側面に第1の両面接着テープ14が貼り付けられ、該パッド本体10の下地層11側面に第2の両面接着テープ15が貼り付けられている。パッド本体10の周縁部は下地層11の周囲より外側へ延出されて延出部16が形成され、パッド本体10の周辺部において第1の両面接着テープ14と第2の両面接着テープ15が接着されている。本実施形態では、第1両面接着テープ14が下地層11の下面より延出されていて、第1両面接着テープ14の端部がパッド本体10の延出部の下面に貼着してある第2の両面接着テープ15に貼り付けられている。第1両面接着テープ14は、下地層11の周側面に沿っており、下地層11の周側面との間に若干の隙間が形成されていてもいなくてもよい。また、第2両面接着テープ15を第1両面接着テープ14側に貼付けるようにしてもよい。
【0022】
このようにして作製された研磨パッド1は、図2に示すように、下定盤2上に貼り付けられ、研磨パッド1とウエハとの間に供給されるスラリーが、下地層11内にその周側面から浸透しようとするが、防水層12によって遮断され、下地層11内へスラリーが浸透することはない。
【0023】
研磨パッド1の製造法の一例を示すと以下の通りである。
【0024】
図3に示すように、パッド本体10の下面に第2両面接着テープ15を貼着し、このパッド本体10の下面に第2両面接着テープ15を介して下地層11を貼付ける。ここで、パッド本体10のサイズに比べて下地層11のサイズをやや小さく形成しておく。次に、図に示すように、下地層11の下面(定盤2側面)に第1の両面接着テープ14を貼着し、第1両面接着テープ14の周辺部を下地層11の周縁部に沿わせて第2両面接着テープ15に貼付ける。
【0025】
また、防水層12は以下のようにして形成することもできる。
【0026】
(2)下地層11の少なくとも周側面に樹脂、エラストマーまたはゴムを塗布することにより防水層12を形成してもよい。この場合、例えば、シリコーン系シーリング剤、シリコーン系コーティング剤を下地層11の周面に塗布、乾燥して防水層12を形成するのが好ましい。また、シリコン系、フッ素系撥水剤を下地層11の周側面に塗布することで防水層12を形成してもよい。
【0027】
(3)パッド本体10、第2両面接着テープ15、下地層11、第1両面接着テープ14および離型紙の積層体を、打ち抜き刃で打ち抜く際に、刃を加熱しておき、下地層11の周辺部を加熱することで下地層11の周辺部の密度を中央部に比べて高くする(つまり、下地層11の周辺部の多孔性を低下させる)。このように下地層11を構成することにより、下地層11の周辺部のみの防水性を高めながら、適度な弾性を保持することができる。
【0028】
なお、研磨パッド1は、その一部に透明な窓部材が形成されたものでもよい。この場合、下地層11には、窓部材に相当する位置において開口部が形成される。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
図4に示すように、下地層11の上面にパッド本体10を第2の両面接着テープ15を介して積層し、下地層11の下面に第1の両面接着テープ14を貼着し、この第1の両面接着テープ14の延長端部を第2両面接着テープ15に接着して研磨パッド1を構成した。
【0030】
この研磨パッド1を以下の条件にてスラリーの中に浸漬させ、スラリーの浸透性を目視にて観察した。
【0031】
研磨パッドのサイズ:102mm径(パッド本体)×93mm径(下地層)
浸漬液: 着色したスラリー
浸漬時間: 60℃浸漬時間: 18時間
浸漬後、研磨パッドをスラリーから取り出し、下地層をパッド本体から剥離してスラリーの浸透状況を調べたところ、スラリーは下地層内に全く浸透していなかった。
【0032】
(実施例2)
実施例1で作製した研磨パッド1を、研磨機の下定盤2に取り付け、キャリアに何もつけないで、研磨機を稼動させ、スラリーの浸透性を目視にて観察した。
【0033】
試験条件は以下の通りである。
研磨機: Strasbaugh製
Down force:4.3(psi)
プラテン速度:30(rpm)
キャリア速度:27(rpm)
キャリア径:230(mm)
使用液体:スラリー
スラリー流量:300(ml/min)循環方式
稼動時間:480(min)
試験の結果、下地層の端部からのスラリーの浸透は見られなかった。さらに、下地層とパッド本体との間に剥離は全く見られなかった。
【0034】
実施例2と同様の条件で従来の研磨パッドについて試験を行ったところ、下地層の端部からのスラリーの浸透(20mmほど)が見られた。
【符号の説明】
【0035】
1 研磨パッド
2 研磨機
10 パッド本体
11 下地層
12 防水層
14 第1の両面接着テープ
15 第2の両面接着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層と該下地層の表面に積層されたパッド本体とを有する研磨パッドであって、該下地層の周側面にスラリーの浸透を防止し得る防水層が設けられている研磨パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52506(P2013−52506A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−275017(P2012−275017)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2011−835(P2011−835)の分割
【原出願日】平成12年7月18日(2000.7.18)
【出願人】(000116127)ニッタ・ハース株式会社 (150)
【Fターム(参考)】