説明

研磨液及び研磨方法

【課題】半導体集積回路の作製において、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む層を有する被研磨体に対する化学的機械的研磨に用いることができ、ポリシリコン又は変性ポリシリコン以外のケイ素系材料を含む層の研磨速度が迅速であり、且つ、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む層の研磨を選択的に抑制しうる研磨液、及びそれを用いた研磨方法を提供する。
【解決手段】ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層と、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素から選択された1種を含む第2層と、を有した被研磨体の化学的機械的研磨に用いられ、(1)表面の珪素原子の一部または全部をアルミニウム原子に置き換えたコロイダルシリカ粒子、および(2)有機酸の各成分を含有し、pHが1.5〜7.0であり、且つ、前記第1層に対して前記第2層を選択的に研磨しうる研磨液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路の製造工程において用いられる研磨液、及びそれを用いた研磨方法に関する。より詳細には、半導体基板におけるゲート形成に好適に使用できる研磨液、及びそれを用いた研磨方法に関し、特に、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む層を有する半導体基板を化学的機械的研磨により研磨する為の研磨液、及びそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(以下「LSI」と記す場合がある。)で代表される半導体デバイスの開発においては、小型化・高速化のため、近年、配線の微細化と積層化による高密度化・高集積化が求められている。このための技術として化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下「CMP」と記す場合がある。)等の種々の技術が用いられてきている。このCMPは層間絶縁膜等の被加工膜の表面平坦化、プラグ形成、埋め込み金属配線の形成等を行う場合に必須の技術であり、基板の平滑化等を行っている。
【0003】
CMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を研磨液で浸して、パッドに基板(ウエハ)の表面(被研磨面)を押しつけ、その裏面から所定の圧力(研磨圧力)を加えた状態で、研磨定盤及び基板の双方を回転させ、発生する機械的摩擦により基板の表面を平坦化するものである。
【0004】
CMPは、近年では、半導体製造における各工程に適用されてきており、その一態様として、例えばトランジスタ作製におけるゲート形成工程への適用が挙げられる。
ここで、従来のトランジスタでは、ポリシリコンにB等の不純物を注入した変性ポリシリコンを主としたゲートを作製していたが、45nm世代以降のトランジスタでは、スタンバイ時の消費電力低減と高電流駆動能力とを両立するため、高誘電率ゲート絶縁膜(High-k膜)と従来のポリシリコンに代わってメタルゲート電極との適用が検討されている。これらを適用した技術としていくつかの手法が提案されている。例えば、ダミーゲート絶縁膜及びダミーゲート電極を形成し、多結晶シリコン膜に自己整合的に不純物を注入してソース・ドレイン拡散層を形成し、ダミーゲート絶縁膜およびダミーゲート電極を除去した後、高誘電率ゲート絶縁膜及びメタルゲート電極を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
また、メタルゲート電極の形成法についてもいくつかの手法が提案されている。その中の一つの候補としてフルシリサイドゲート(Fully silicided gate、以下、「FUSIゲート」と称する。)がある。FUSIゲートは、従来のCMOSプロセスと同様にポリシリコンで形成したゲート電極をシリサイド化することで形成するが、従来はゲート電極の上部のみをシリサイド化していたのに対して、FUSIではゲート電極の全体をシリサイド化する。FUSIは、ダマシン・プロセスでメタルゲート電極を形成する手法と比べると、従来のCMOSプロセスのノウハウが有用となるためプロセス構築の上でのメリットが大きい。
【0006】
近年では、このようなポリシリコン又は変性ポリシリコン(以下、単に「ポリシリコン等」と総称する場合がある。)用いたゲート形成において、当該ポリシリコン等と、その周辺を覆う第二、第三の材料とに対して、選択的にCMPを行うことが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、従来公知の研磨液を用いてCMPによりポリシリコン等を含む被研磨体を研磨すると、ゲート材料として残したいポリシリコン等が過剰に研磨されてしまうという問題があり、これはひいては得られたLSIの性能劣化等の要因ともなっていた。
【特許文献1】特開2006−339597号公報
【特許文献2】特開2006−344836号公報
【特許文献3】特開2007−12922号公報
【特許文献4】特開2005−93816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半導体集積回路の作製において、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む層を有する被研磨体に対する化学的機械的研磨に用いることができ、ポリシリコン又は変性ポリシリコン以外のケイ素系材料を含む層の研磨速度が迅速であり、且つ、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む層の研磨を選択的に抑制しうる研磨液、及びそれを用いた研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 半導体集積回路を作製する際の平坦化工程において、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層と、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層と、を少なくとも有して構成される被研磨体の化学的機械的研磨に用いられ、下記(1)および(2)で示される各成分を含有し、pHが1.5〜7.0であり、且つ、前記第1層に対して前記第2層を選択的に研磨しうる研磨液。
(1)表面の一部がアルミニウムで修飾されているコロイダルシリカ
(2)有機酸
【0009】
<2> 前記第1層の研磨速度をRR(p−Si)とし、前記第2層の研磨速度をRR(other)とした場合に、RR(other)/RR(p−Si)で表される比が1.5〜200の範囲で前記被研磨体を研磨しうる<1>に記載の研磨液。
【0010】
<3> 前記コロイダルシリカ粒子の濃度が、研磨液の全質量に対して0.1質量%〜10質量%である<1>又は<2>に記載の研磨液。
【0011】
<4> 前記コロイダルシリカ粒子が、平均一次粒子径が5nm〜100nmの範囲であり、且つ平均二次粒子径が8nm〜150nmの範囲である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の研磨液。
【0012】
<5> 前記有機酸が、その分子構造中に少なくとも1つのカルボキシル基を含む有機酸である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の研磨液。
【0013】
<6> 前記有機酸が、下記一般式(I)で表される化合物である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の研磨液。
【0014】
【化1】

【0015】
[一般式(I)中、Rは、炭素数1〜20のアルキレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの基を2以上組み合わせてなる基を表す。]
【0016】
<7> 前記有機酸の濃度が、研磨液の全質量に対して0.001質量%〜3質量%である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の研磨液。
<8> 更に界面活性剤を含む<1>〜<7>のいずれか1項に記載の研磨液。
【0017】
<9> <1>〜<8>のいずれか1項に記載の研磨液を、研磨定盤上の研磨パッドに供給し、該研磨定盤を回転させることで、該研磨パッドを被研磨体の被研磨面と接触させつつ相対運動させて研磨する研磨方法。
<10> 前記(1)表面の一部がアルミニウムで修飾されているコロイダルシリカが、コロイダルシリカの表面に占めるアルミニウム原子の割合が0.1atm%以上30atm%以下の範囲である<1>〜<9>のいずれか1項に記載の研磨液
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体集積回路の作製において、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む層を有する被研磨体に対する化学的機械的研磨に用いることができ、ポリシリコン又は変性ポリシリコン以外のケイ素系材料を含む層の研磨速度が迅速であり、且つ、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む層の研磨を選択的に抑制しうる研磨液、及びそれを用いた研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の研磨液及びそれを用いた研磨方法について詳細に説明する。
【0020】
[研磨液]
本発明の研磨液は、半導体集積回路を作製する際の平坦化工程において、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層と、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層と、を少なくとも有して構成される被研磨体の化学的機械的研磨に用いられ、下記(1)及び(2)で示される各成分を含有し、pHが1.5〜7.0であり、且つ、前記第1層に対して前記第2層を選択的に研磨しうる研磨液である。
(1)表面の一部がアルミニウムで修飾されているコロイダルシリカ
(2)有機酸
【0021】
本発明において「研磨液」とは、研磨に使用する際の研磨液(即ち、必要により希釈された研磨液)のみならず、研磨液の濃縮液をも包含する意味である。濃縮液又は濃縮された研磨液とは、研磨に使用する際の研磨液よりも、溶質の濃度が高く調整された研磨液を意味し、研磨に使用する際に、水又は水溶液などで希釈して、研磨に使用されるものである。希釈倍率は、一般的には1〜20体積倍である。本明細書において「濃縮」及び「濃縮液」とは、使用状態よりも「濃厚」及び「濃厚な液」を意味する慣用表現にしたがって用いており、蒸発などの物理的な濃縮操作を伴う一般的な用語の意味とは異なる用法で用いている。
【0022】
本発明の研磨液は、電極材料としてポリシリコン又は変性ポリシリコンを適用し、CMPにより、半導体集積回路におけるゲート電極の形成を実施する際に好適に用いられるものである。より具体的には、本発明の研磨液は、半導体集積回路を作製する際の平坦化工程において、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層と、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層と、を少なくとも有して構成される被研磨体の化学的機械的研磨に用いられる研磨液である。
【0023】
本発明の研磨液は、前記(1)及び(2)で示される各成分を含有し、pHが1.5〜7.0であることを特徴としており、これにより、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層に対して、前記酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層を選択的に研磨することができる。
【0024】
前記第1層に対する第2層の選択的な研磨については、本発明の研磨液は、前記第1層の研磨速度をRR(p−Si)とし、前記第2層の研磨速度をRR(other)とした場合に、RR(other)/RR(p−Si)で表される比が1.5〜300の範囲で前記被研磨体を研磨しうるものであることが好ましい。RR(other)/RR(p−Si)で表される比は、1.5〜300の範囲がより好ましく、2〜200が更に好ましい。RR(other)/RR(p−Si)で表される比がこのような範囲であることで、第1層に対する所望されない研磨が抑制でき、且つ、研磨時に第1層とその下地層との膜界面に掛かる過剰な応力に起因して生じる第1層の不均一な剥離についても効果的に抑制しうる。
【0025】
従って、本発明の研磨液を用いることにより、LSIの作製において、CMPによりポリシリコン又は変性ポリシリコンを含んで構成されるゲート電極の形成を実施した場合であっても、当該ゲート電極が過研磨されることがない。
【0026】
以下、本発明の研磨液を構成する各成分について詳細に説明する。
【0027】
〔(1)表面の一部がアルミニウムで修飾されているコロイダルシリカ〕
本発明において「表面の珪素原子の少なくとも一部がアルミニウム原子で置き換えたコロイダルシリカ」とは、配位数4の珪素原子を含むサイトを有するコロイダルシリカ表面に、アルミニウム原子が存在している状態を意味するものであり、該コロイダルシリカ表面に4個の酸素原子が配位したアルミニウム原子が結合し、アルミニウム原子が4配位の状態で固定された新たな表面が生成した状態であってもよく、また、表面に存在する珪素原子が一旦引き抜かれて、アルミニウム原子と置き換わった新たな表面が生成した状態であってもよい。
【0028】
特定コロイダルシリカ粒子の調製に用いられるコロイダルシリカ粒子としては、粒子内部にアルカリ金属などの不純物を含有しない、アルコキシシランの加水分解により得たコロイダルシリカ粒子であることがより好ましい。一方、ケイ酸アルカリ水溶液からアルカリを除去する方法で製造したコロイダルシリカも用いることができるものの、この場合、粒子の内部に残留するアルカリ金属が徐々に溶出し、研磨性能に影響を及ぼす懸念があるため、そのような観点からは、前記アルコキシシランの加水分解により得られたものが原料としてはより好ましい。原料となるコロイダルシリカの粒径は、砥粒の使用目的に応じて適宜選択されるが、一般的には10〜200nm程度である。
【0029】
このようなコロイダルシリカ粒子表面の珪素原子の一部または全部をアルミニウム原子で修飾し、特定コロイダルシリカ粒子を得る方法としては、例えば、コロイダルシリカ粒子の分散液にアルミン酸ソーダ等のアルミン酸化合物を添加する方法を好適に用いることができ、より具体的には、アルミン酸アルカリ水溶液を添加して得られたシリカゾルを80〜250℃で0.5〜20時間加熱し、陽イオン交換樹脂又は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に接触させる方法、酸性珪酸液とアルミニウム化合物水溶液をSiO2含有アルカリ水溶液又はアルカリ金属水酸化物水溶液に添加する方法、またはアルミニウム化合物が混在する酸性珪酸液をSiO含有アルカリ水溶液又はアルカリ金属水酸化物水溶液に添加する方法、によって調製したアルミニウム化合物含有アルカリ性シリカゾルを陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする方法が挙げられる。この方法は、特許第3463328号公報、特開昭63−123807号公報に詳細に記載されており、これらの方法は、本発明に適用することができる。
【0030】
また、その他の方法として、コロイダルシリカ粒子の分散液にアルミニウムアルコキシドを添加する方法が挙げられる。
ここで用いるアルミニウムアルコキシドはいかなるものでもよいが、好ましくは、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシドであり、特に好ましくはアルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシドである。
【0031】
上記の方法により得られた特定コロイダルシリカ粒子は、4配位のアルミン酸イオンとコロイダルシリカ粒子表面のシラノール基との反応によって生成したアルミノシリケイトサイトを有し、これが負の電荷を固定し、粒子に負の大きなゼータポテンシャルを与える。これにより、特定コロイダルシリカ粒子は、酸性において安定であり、その分散性に優れるという特徴を有する。この特徴は、R.K.アイラー(R.K.Iler)の著書、“ザ ケミストリー オブ シリカ(The Chemistry of Silica)”において、述べられている。
このような構造即ち、コロイダルシリカ表面においてケイ素原子へのアルミニウム原子による修飾が生じていることは、例えば、砥粒のゼータ電位を測定することによって容易に確認することができる。
【0032】
したがって、前述の如き方法によって製造した特定コロイダルシリカ粒子には、アルミニウム原子が4個の酸素原子に配位された状態で存在することが重要であり、このような粒子は、コロイダルシリカ粒子をアルミナで被覆した研磨材粒子、即ち、アルミニウム原子が通常6個の酸素原子で配位された状態で表面を被覆しているものとは、構造が明確に異なる。アルミナで被覆したコロイダルシリカ粒子では、本発明の効果は発現しない。
【0033】
即ち、米国特許第3007878号明細書には、シリカゾルにアルミニウム塩水溶液を添加して、コロイド粒子の表面をアルミナで被覆し、粒子表面を正に帯電させることにより、コロイド粒子の分散安定化を図る技術が開示されており、また、特開2005−159269号公報には、アルミナで被覆された複合研磨材粒子の記載があるが、表面を被覆したアルミナ中のアルミニウム原子は、酸素原子が6配位で配位しており、本発明の特定コロイダルシリカ粒子とは明確に異なる。
【0034】
また、特開2003−197573号公報に記載の、ケイ酸アルカリ水溶液からアルカリを除去する方法で製造したコロイダルシリカの表面の一部又は全部をアルミニウムで被覆した研磨用コロイダルシリカにおいては、その製造方法に起因して、粒子の内部に残留するアルカリ金属が徐々に溶出することにより研磨性能に悪影響を及ぼす問題がある。
このように、単にコロイダルシリカ粒子をアルミナなどのアルミニウム系化合物で被覆したものは本発明における特定コロイダルシリカ粒子とは異なる特性を示す。
【0035】
本発明における特定コロイダルシリカ粒子において、表面の珪素原子をアルミニウム原子で修飾する量としては、コロイダルシリカ粒子の表面原子のアルミニウム導入量(導入アルミニウム原子数/表面珪素原子サイト数)が、好ましくは0.1atm%以上30atm以下の範囲であり、更に好ましくは0.01atm%以上25atm%以下の範囲であり、特に好ましくは0.1atm%以上10atm%以下の範囲である。
このアルミニウム原子の導入量は、コロイダルシリカの分散液に添加するアルミン酸化合物、アルミニウムアルコキシドなどの添加量(濃度)を制御することにより、適宜制御することができる。
【0036】
ここで、コロイダルシリカ粒子表面の珪素原子からアルミニウム導入量は以下のようにして算出することができる。
まず、添加したアルミン酸ナトリウム或いはアルミニウムテトラメトキシドなどのアルミニウム系化合物が100%と反応すると仮定する。そして、コロイダルシリカ粒子の表面原子のアルミニウム導入量(導入アルミニウム原子数/表面珪素原子サイト数)は、コロイダルシリカ粒子の直径から換算される表面積、コロイダルシリカ粒子の比重(2.2)、および表面積あたりの珪素原子数(個/nm)から見積もることができる。
実際の測定は、得られた特定コロイダルシリカ自体を元素分析し、アルミニウムが粒子内部に存在せず、表面に均一に薄くひろがると仮定し、上記コロイダルシリカの表面積/比重、及び、単位表面積あたりのシラノール基数を用いて求める。
【0037】
得られた特定コロイダルシリカ粒子の平均1次粒子径(体積基準)は、5nmから100nmの範囲が好ましく、10nmから80nmの範囲が更に好ましく、10nmから50nmの範囲が特に好ましい。
ここで、本発明における特定コロイダルシリカ粒子の平均1次粒子径とは、体積基準での粒度累積曲線を求め、この曲線の累積度数が50%のポイントでの粒子径を意味するものである。
なお、このコロイダルシリカ粒子の平均1次粒子径は、電子顕微鏡(透過型)等で測定できる。
【0038】
また、特定コロイダルシリカは、スクラッチの発生を防ぐ観点から、会合度が5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。
ここで、会合度とは、一次粒子が凝集してなる二次粒子径を一次粒子径で除した値(二次粒子径/一次粒子径)を意味する。会合度が1とは、単分散した一次粒子のみのものを意味する。
【0039】
上記のように、特定コロイダルシリカ粒子は、その一部が会合していてもよい。なお、特定コロイダルシリカ粒子のうち会合してなる二次粒子は、エロージョン及びスクラッチの発生を防ぐ点から、粒子径が150nm以下であることが好ましい。一方、十分な研磨速度を達成する点から、その下限値は、8nm以上であることが好ましい。
なお、二次粒子径は動的光散乱法から得られた粒度分布において求められる平均粒子径を表す。例えば、粒度分布を求める測定装置しては堀場製作所製LB−500等が用いられる。
【0040】
また、本発明の研磨液中の特定コロイダルシリカ粒子の含有量は、研磨に使用する際の研磨液(即ち、水又は水溶液で希釈する場合は希釈後の研磨液。以降の「研磨に使用する際の研磨液」も同意である。)の質量に対して、好ましくは1質量%以上15質量%以下の範囲であり、更に好ましくは3質量%以上12質量%以下の範囲であり、特に好ましくは5質量%以上12質量%以下の範囲である。即ち、特定コロイダルシリカ粒子の含有量は、十分な研磨速度でバリア膜を研磨する点で1質量%以上が好ましく、保存安定性の点で15質量以下が好ましい。
【0041】
本発明の研磨液に含有される砥粒のうち、特定コロイダルシリカ粒子の含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
本発明の研磨液に対し、特定コロイダルシリカ粒子以外で砥粒として用いられるものとしては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、セリア、アルミナ、チタニア等の粒子が好ましく、特に好ましくはコロイダルシリカ粒子である。これらの粒子の平均1次粒子径は、特定コロイダルシリカ粒子と同等か、それ以上であり、2倍以下であることが好ましい。
【0042】
〔(2)有機酸〕
本発明の研磨液は少なくとも1種の有機酸を含有する。ここでいう有機酸は、金属の酸化剤ではなく、酸化の促進、pH調整、緩衝剤としての作用を有する。有機酸としては、水溶性のものが望ましく、例えば、水溶性の有機酸又はアミノ酸が挙げられる。該有機酸又はアミノ酸の例としては、例えば、以下の群から選ばれたものがより適している。
【0043】
即ち、有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、アセドアミドイミノ二酢酸、ニトリロ三プロパン酸、ニトリロ三メチルホスホン酸、ジヒドロキシエチルグリシン、トリシン、及びそれらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等の塩、又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0044】
また、アミノ酸としては、例えば、グリシン、L−アラニン、β−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロシン、3,5−ジヨード−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、L−チロキシン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−アルギニン、L−カナバニン、L−シトルリン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、エルゴチオネイン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等が挙げられる。
【0045】
有機酸の中でも、十分な研磨速度比を達成する点からは、分子構造中にカルボキシル基を少なくとも1つ有する有機酸であることが好ましい。特にその中でも、下記一般式(I)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0046】
【化2】

【0047】
一般式(I)中、Rは、炭素数1〜20のアルキレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの基を2以上組み合わせてなる基を表す。
【0048】
Rで表される炭素数2〜20のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
【0049】
Rで表されるアルキニレン基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、具体的には、エチニレン基、プロピニレン基等が挙げられる。
【0050】
Rで表されるシクロアルキレン基としては、具体的には、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基等が挙げられ、中でもシクロヘキシレン基が好ましい。
【0051】
Rで表されるアリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基が好ましい。
【0052】
Rで表される各基は、更に置換基を有していてもよく、導入しうる置換基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、イミノ基、チオール基、スルホ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0053】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ジグリコール酸、2−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、3−フランカルボン酸、2−テトラヒドロフランカルボン酸、ジグリコール酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、フェノキシ酢酸又はそれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、良好な選択比を達成する点からエチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ジグリコール酸が好ましく、シュウ酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ジグリコール酸がより好ましい。
【0054】
研磨液に含有される有機酸は、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
研磨液における有機酸の含有量は、研磨に使用する際の研磨液の質量に対して、0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.001質量%〜1質量%がより好ましく、0.01質量%〜1質量%が更に好ましい。即ち、有機酸の含有量は、充分な研磨速度を達成する点で、0.0001質量%以上が好ましく、良好な平坦性を維持する点から、10質量%以下が好ましい。
【0056】
本発明の研磨液にはさらに、界面活性剤を加えることが好ましい。界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれでも用いることができる。
本発明の金属研磨用組成物において、界面活性剤の種類、量を調整することで、研磨速度を向上させることや、絶縁層の研磨速度を制御することができる。界面活性剤としてはノニオン界面活性剤、ア二オン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、特に好ましくは、ノニオン界面活性剤、およびア二オン界面活性剤である。
【0057】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられる。具体的には、エーテル型として、ポリオキシアルキレンアルキルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンミリステルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル)、ポリオキシエチレン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンジスルホン化フェニルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、等が挙げられる。エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノヤシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノヤシ脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット)、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテルが挙げられる。エステル型として、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート)、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート)、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド(例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド)、ポリオキシエチレンアルキルアミン(例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミン)、ポリオキシエチレンアルキルアミド(例えば、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド)等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤、アセチレン含有非イオン性界面活性剤(例えば、ジイソブチルジメチルブチンジオールポリオキシエチレングリコールエーテル)等が挙げられる。
【0058】
またカチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ラウリルトリエチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、パルチミルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ドデシルピリジニウム、デシルピリジニウム、オクチルピリジニウム等のOH、ハロゲンイオン、NO,1/2SO2−,CHCO,CHSO,p−CHPhSOなども好適である。
【0059】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、テトラデシルナフタレンスルホン酸、および、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、
【0060】
さらにアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられる。
より具体的には、カルボン酸塩としては、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;
硫酸エステル塩としては、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;
リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を好ましく用いることができる。
【0061】
これら界面活性剤の添加量は、総量として、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく、0.01〜1gとすることが特に好ましい。即ち、界面活性剤の添加量は、充分な効果を得る上で、0.01g以上が好ましく、CMP速度の低下防止の点から5g以下が好ましい。
【0062】
〔その他の成分〕
(pH調整剤)
本発明の研磨液は、pH1.5〜7.0であることを要し、pH1.5〜5.0の範囲であることが好ましい。本発明の研磨液は、pHがこの範囲において優れた効果を発揮する。
研磨液のpHを上記範囲に調整するためには、アルカリ/酸又は緩衝剤が用いられる。
アルカリ/酸又は緩衝剤としては、アンモニア、水酸化アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドなどの有機水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのようなアルカノールアミン類などの非金属アルカリ剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、硝酸、硫酸、りん酸などの無機酸、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸三ナトリウムなどのリン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩等を好ましく挙げることができる。特に好ましいアルカリ剤として水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドである。
【0063】
アルカリ/酸又は緩衝剤の添加量としては、pHが好ましい範囲に維持される量であればよく、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0001mol〜1.0molとすることが好ましく0.003mol〜0.5molとすることがより好ましい。
【0064】
(腐食抑制剤)
本発明の研磨液は、被研磨表面に吸着して皮膜を形成し、金属表面の腐食を制御する腐食抑制剤を含有する。本発明における腐食抑制剤としては、分子内に3以上の窒素原子を有し、且つ、縮環構造を有する複素芳香環化合物を含有することが好ましい。ここで、「3以上の窒素原子」は、縮環を構成する原子であることが好ましく、このような複素芳香環化合物としては、ベンゾトリアゾール、及び該ベンゾトリアゾールに種々の置換基が導入されてなる誘導体であることが好ましい。
【0065】
腐食抑制剤としては、ベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、中でも、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、及び1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾールから選ばれることがより好ましい。
【0066】
このような腐食抑制剤の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の質量に対して、0.01質量%〜0.2質量%が好ましく、0.05質量%〜0.2質量%が更に好ましい。即ち、このような腐食抑制剤の添加量は、ディッシングを拡大させない点で、0.01質量%以上が好ましく、保存安定性の点から、0.2質量%以下が好ましい。
【0067】
(キレート剤)
本発明の研磨液は、混入する多価金属イオンなどの悪影響を低減させるために、必要に応じてキレート剤(すなわち硬水軟化剤)を含有することが好ましい。
キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物であり、例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラメチレンスルホン酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0068】
キレート剤は必要に応じて2種以上併用してもよい。
キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良く、例えば、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0003mol〜0.07molになるように添加する。
【0069】
〔研磨対象〕
本発明の研磨液が適用される研磨対象は、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層と、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層と、を少なくとも有して構成される被研磨体である。より詳細には、電極材料としてポリシリコン又は変性ポリシリコンを適用し、CMPにより、半導体集積回路におけるゲート電極の形成を実施する際に好適に用いられるものである。
「変性ポリシリコン」は、ポリシリコンにBやP等の不純物元素をドーブしたシリコンを包含するものである。
【0070】
通常、ゲート電極形成に際しては、基板表面に酸化ケイ素などからなる層を形成し、そこにエッチング等により凹部を形成し、形成された凹部にポリシリコン又は変性ポリシリコンを充填して第1の層を形成する。次に、その表面に研磨停止層、エッチング停止層を形成するため酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層を積層する。
ゲート電極形成用のCMPでは、この第2層表面から研磨を開始し、第2層の研磨が進行し、第1層表面が露出したとき、研磨速度が急速に低下して第2層の研磨が終了したことが検知され、ゲート電極に用いられるポリシリコン又は変性ポリシリコン表の過研磨が抑制される。
その後、電極として機能するポリシリコン又は変性ポリシリコンとその周辺部の必要な酸化ケイ素層以外の箇所をエッチングにより除去することでゲート電極が形成される。
【0071】
[研磨方法]
本発明の研磨方法は、既述した本発明の研磨液を用いるものであり、研磨定盤上の研磨パッドに供給し、該研磨定盤を回転させることで、該研磨パッドを被研磨体の被研磨面と接触させつつ相対運動させて研磨することを特徴とする。
【0072】
本発明の研磨液は、1.濃縮液であって、使用する際に水又は水溶液を加えて希釈して使用液とする場合、2.各成分が次項に述べる水溶液の形態で準備され、これらを混合し、必要により水を加え希釈して使用液とする場合、3.使用液として調製されている場合がある。本発明の研磨方法には、はいずれの場合の研磨液も適用可能である。
【0073】
研磨に用いられる装置としては、被研磨面を有する被研磨体(例えば、導電性材料膜が形成されたウエハ等)を保持するホルダーと、研磨パッドを貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)研磨定盤と、を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。また、研磨条件には制限はないが、研磨定盤の回転速度は被研磨体が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面(被研磨膜)を有する被研磨体の研磨パッドへの押しつけ圧力は、0.68〜34.5kPaであることが好ましく、研磨速度の被研磨体の面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、3.40〜20.7kPaであることがより好ましい。
【0074】
研磨している間、研磨パッドには、研磨液をポンプ等で連続的に供給する。
研磨終了後の被研磨体は、流水中でよく洗浄された後、スピンドライヤ等を用いて被研磨体上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させる。
【0075】
本発明において、前記1.の方法のように、濃縮液を希釈する際には、下記に示す水溶液を用いることができる。水溶液は、予め、有機酸、添加剤、界面活性剤のうち少なくとも1つ以上を含有した水であり、この水溶液中に含有している成分と、希釈される濃縮液中に含有している成分と、を合計した成分が、研磨する際に使用する研磨液(使用液)の成分となるようにする。
このように、濃縮液を水溶液で希釈して使用する場合には、溶解しにくい成分を水溶液の形で後から配合することができることから、より濃縮した濃縮液を調製することができる。
【0076】
また、濃縮液に水又は水溶液を加え希釈する方法としては、濃縮された研磨液を供給する配管と水又は水溶液を供給する配管とを途中で合流させて混合し、混合し希釈された研磨液の使用液を研磨パッドに供給する方法がある。濃縮液と水又は水溶液との混合は、圧力を付した状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合する方法、配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法、配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など通常に行われている方法を採用することができる。
【0077】
研磨液の供給速度は10〜1000ml/minが好ましく、研磨速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、170〜800ml/minであることがより好ましい。
【0078】
更に、濃縮液を水又は水溶液などにより希釈しつつ、研磨する方法としては、研磨液を供給する配管と水又は水溶液を供給する配管とを独立に設け、それぞれから所定量の液を研磨パッドに供給し、研磨パッドと被研磨面の相対運動で混合しつつ研磨する方法がある。また、1つの容器に、所定量の濃縮液と水又は水溶液とを入れ混合してから、研磨パッドにその混合した研磨液を供給し、研磨をする方法を用いることもできる。
【0079】
また、別の研磨方法としては、研磨液が含有すべき成分を少なくとも2つの構成成分に分けて、それらを使用する際に、水又は水溶液を加え希釈して研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する方法がある。
また、溶解度の低い添加剤を2つの構成成分(A)と(B)に分け、例えば、添加剤、及び界面活性剤を構成成分(A)とし、有機酸、添加剤、界面活性剤、及び水を構成成分(B)とし、それらを使用する際に水又は水溶液を加え、構成成分(A)及び構成成分(B)を希釈して使用する。
【0080】
上記のような例の場合、構成成分(A)と構成成分(B)と水又は水溶液とをそれぞれ供給する3つの配管が必要であり、希釈混合は、3つの配管を、研磨パッドに供給する1つの配管に結合し、その配管内で混合する方法があり、この場合、2つの配管を結合してから他の1つの配管を結合することも可能である。具体的には、溶解しにくい添加剤を含む構成成分と他の構成成分を混合し、混合経路を長くして溶解時間を確保してから、更に、水又は水溶液の配管を結合する方法である。
その他の混合方法は、上記したように直接に3つの配管をそれぞれ研磨パッドに導き、研磨パッドと被研磨面の相対運動により混合する方法や、1つの容器に3つの構成成分を混合して、そこから研磨パッドに希釈された研磨液を供給する方法がある。
【0081】
上記した研磨方法において、酸化剤を含む1つの構成成分を40℃以下にし、他の構成成分を室温から100℃の範囲に加温し、1つの構成成分と他の構成成分とを混合する際、又は、水若しくは水溶液を加え希釈する際に、液温を40℃以下とするようにすることができる。この方法は、温度が高いと溶解度が高くなる現象を利用し、研磨液の溶解度の低い原料の溶解度を上げるために好ましい方法である。
【0082】
上記の他の構成成分を室温から100℃の範囲で加温することで溶解させた原料は、温度が下がると溶液中に析出するため、低温状態の他の構成成分を用いる場合は、予め加温して析出した原料を溶解させる必要がある。これには、加温し、原料が溶解した他の構成成分を送液する手段と、析出物を含む液を攪拌しておき、送液し、配管を加温して溶解させる手段と、を採用することができる。加温した他の構成成分が、酸化剤を含む1つの構成成分の温度を40℃以上に高めると酸化剤が分解する恐れがあるので、この加温した他の構成成分と酸化剤を含む1つの構成成分とを混合した場合、40℃以下となるようにすることが好ましい。
【0083】
このように、本発明においては、研磨液の成分を二分割以上に分割して、被研磨面に供給してもよい。この場合、酸化物を含む成分と有機酸を含有する成分とに分割して供給することが好ましい。また、研磨液を濃縮液とし、希釈水を別にして被研磨面に供給してもよい。
本発明において、本発明においては、研磨液の成分を二分割以上に分割して、被研磨面に供給する方法を適用する場合、その供給量は、各配管からの供給量の合計を表すものである。
【0084】
〔パッド〕
本発明の研磨方法に適用しうる研磨用の研磨パッドは、無発泡構造パッドでも発泡構造パッドでもよい。前者はプラスチック板のように硬質の合成樹脂バルク材をパッドに用いるものである。また、後者は更に独立発泡体(乾式発泡系)、連続発泡体(湿式発泡系)、2層複合体(積層系)の3つがあり、特には2層複合体(積層系)が好ましい。発泡は、均一でも不均一でもよい。
更に、一般的に研磨に用いる砥粒(例えば、セリア、シリカ、アルミナ、樹脂など)を含有したものでもよい。また、それぞれに硬さは軟質のものと硬質のものがあり、どちらでもよく、積層系ではそれぞれの層に異なる硬さのものを用いることが好ましい。材質としては、不織布、人工皮革、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート等が好ましい。また、被研磨面と接触する面には、格子溝/穴/同心溝/らせん状溝などの加工を施してもよい。
【0085】
〔ウエハ〕
本発明における研磨液でCMPを行なう対象の被研磨体としてのウエハは、径が200mm以上であることが好ましく、特には300mm以上が好ましい。300mm以上である時に顕著に本発明の効果を発揮する。
【0086】
〔研磨装置〕
本発明の研磨液を用いて研磨を実施できる装置は、特に限定されないが、MA−300D(ムサシノ電子(株))、Mirra Mesa CMP、Reflexion CMP(アプライドマテリアルズ)、FREX200、FREX300 (荏原製作所)、NPS3301、NPS2301(ニコン)、A−FP−310A、A−FP−210A(東京精密)、2300 TERES(ラムリサーチ)、Momentum(Speedfam IPEC)などを挙げることができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
(本実施例で使用されるコロイダルシリカ)
特定コロイダルシリカ粒子(A−1)、及び(A−2)は、下記のようにして作製した、これは表面の珪素原子の少なくとも一部をアルミニウム原子に置き換えたコロイダルシリカ粒子である。
特定コロイダルシリカ粒子(A−1、3)、及び(A−2、4)は、いずれも、導入アルミニウム原子数/表面珪素原子サイト数=15atm%であった。また、特定コロイダルシリカ粒子の平均1次粒子径(体積基準)は、前述の方法で測定したところ、A−1は35nm、A−2は20nm、A−3は80nm、A−4は120nm、であった。
また、その他のコロイダルシリカ粒子として、特定コロイダルシリカ粒子ではない、つまり、表面の珪素原子がアルミニウム原子により修飾されていないコロイダルシリカ粒子(PL3(扶桑化学社製)、平均1次粒子径が35nm)を用いた。なお、表1中では、このコロイダルシリカを非特定コロイダルシリカと表記する。
【0089】
(特定コロイダルシリカ粒子の作製)
平均1次粒子径が35nm(A−0)のコロイダルシリカの20質量%水分散物1000gに、アンモニア水を加えてpHを9.0に調整し、その後室温にて攪拌しながら、Al濃度3.6質量%、NaO/Alモル比1.50のアルミン酸ナトリウム水溶液15.9gを、数分以内にゆっくり添加し0.5時間攪拌した。
【0090】
特定コロイダルシリカ粒子(A−1)を作製する場合には、上記の方法で得られたゾルは、SUS製オートクレーブ装置に入れ、130℃4時間加熱後、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライト IR−120B)を充填したカラムと、水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライト IRA−410)を充填したカラムと、に空間速度1h−1で室温にて通液し、初留はカットした。
【0091】
特定コロイダルシリカ粒子(A−2)を作製する場合、上記の方法で得られたゾルは、加熱を行わずに、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライト IR−120B)を充填したカラムと、水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライト IRA−410)を充填したカラムと、に空間速度1h−1で室温にて通液し、初留はカットした。
尚、(A−3)(A−4)の作成には、平均1次粒子径が100nmの粒子を用いて、(A−1)(A−2)とそれぞれ同様の方法で作成した。
【0092】
コロイダルシリカ粒子表面のアルミニウム原子の導入量は、下記のようにして算出した。
まず、添加したアルミン酸ナトリウムが100%反応すると仮定する。そして、コロイダルシリカの表面原子のアルミニウム導入量(導入アルミニウム原子数/表面珪素原子サイト数)は、コロイダルシリカ直径から換算される表面積、コロイダルシリカの比重(2.2)、表面積あたりの珪素原子数8個/nmから見積もった。
【0093】
<研磨液の調製>
下記に示す組成及びpHを有する研磨液(実施例1〜5、および比較例1〜3)を調製した。
−組成1−
・コロイダルシリカ粒子(A−1): 200g/L
・有機酸:ジグリコール酸 0.5g/L
純水を加えて全量 1,000mL
pH(アンモニア水と硝酸で調整) (表1記載のように調整)
【0094】
上記の研磨液を用いて研磨評価を行った。
<評価方法>
−研磨装置−
研磨装置としてムサシノ電子社製装置「MA-300D」を使用し、下記の条件で、スラリーを供給しながら、下記に示す各ウエハ膜を研磨した。
テ−ブル回転数: 112rpm
ヘッド回転数: 113rpm
研磨圧力: 18.4kPa
研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製 IC1400 XY−K−Pad
研磨液供給速度: 50ml/min
【0095】
(研磨速度評価:研磨対象物)
研磨対象物として、Si基板上に、ポリシリコン膜を成膜した8インチウエハを6cm×6cmにカットしたカットウエハを使用した。このウエハを用い研磨に用い、研磨前後の膜厚を測定することで研磨速度を評価した。
研磨速度(nm/分)=(研磨前の各膜厚さ−研磨後の各膜厚さ)/研磨時間
得られた結果を表1に示す。RR(p−Si)はポリシリコン膜が研磨される速度である。なお、1nm=1×10−9mである。
【0096】
【表1】

【0097】
表1より、本発明の研磨液である実施例1〜5の研磨液は、ポリシリコン層に対する研磨速度が顕著に抑制されているのがわかる。pHが本発明の研磨液の範囲外である比較例1〜3の研磨液は、各実施例と対比するとポリシリコン層に対する研磨速度が著しく上昇することが確認された。このことから、本発明の研磨液はポリシリコン層に対する特異的な研磨抑制の観点から、そのpHが1.5〜7の範囲が必須であることが確認された。
但し、pHが1.5未満になると腐食の点で好ましくない。
【0098】
〔実施例6〜10、比較例4〜9〕
<研磨液の調製>
実施例1の研磨液を、表2に示す組成及びpHを有する研磨液に変更して、実施例6〜10、および比較例4〜9の研磨液を調製し、実施例2〜5を含めて研磨評価を行った。
【0099】
<評価方法>
−研磨装置−
研磨装置としてムサシノ電子社製装置「MA-300D」を使用し、下記の条件で、スラリーを供給しながら、下記に示す各ウエハ膜を研磨した。
テ−ブル回転数: 112rpm
ヘッド回転数: 113rpm
研磨圧力: 18.4kPa
研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製 IC1400 XY−K−Pad
研磨液供給速度: 50ml/min
【0100】
(研磨速度評価:研磨対象物)
研磨対象物として、Si基板上に、ポリシリコン膜、酸化シリコン、窒化シリコン膜それぞれを成膜した8インチウエハを6cm×6cmにカットしたカットウエハを使用した。このウエハを研磨に用い、研磨前後の膜厚を測定することで研磨速度を評価した。
研磨速度(nm/分)=(研磨前の各膜厚さ−研磨後の各膜厚さ)/研磨時間
得られた結果を表2に示す。なお、RR(p−Si)、RR(SiO)、およびRR(Si)は、それぞれポリシリコン膜、酸化シリコン膜、および窒化シリコン膜が研磨される速度である。またRR(p−Si)/RR(SiO)、およびRR(p−Si)/RR(Si)は、それぞれポリシリコン膜と酸化シリコン膜との相対研磨速度比、ポリシリコン膜と窒化シリコン膜との相対研磨速度比であり、この数字が大きいほど被研磨体の選択研磨性が高いことを示す。
【0101】
【表2】

【0102】
表2から以下のことがわかる。本発明の特定コロイダルシリカ粒子と有機酸を用い、本発明のpHの範囲にある実施例2〜10は、p−Si膜とSiO膜との相対研磨速度、およびp−Si膜とSi膜との相対研磨速度がいずれも大きく、研磨での選択性が高いことを示していることがわかる。一方特定コロイダルシリカ粒子を含まない、あるいは有機酸を含まない研磨液を用いた比較例は上記の相対研磨速度比が小さく、選択的な研磨ができないことを示している。
【0103】
さらに、実施例1の研磨液を用いて、炭化ケイ素(SiC)膜、炭窒化ケイ素(SiCN)膜、酸化炭化ケイ素(SiOC)膜、および酸窒化ケイ素(SiON)膜の研磨速度を測定し、ポリシリコン(p−Si)膜の研磨速度に対するそれぞれの研磨速度の研磨速度比を求めた。結果を表3に示した。
【0104】
【表3】

【0105】
表3から、本発明の実施例1の研磨液は、炭化ケイ素(SiC)膜、炭窒化ケイ素(SiCN)膜、酸化炭化ケイ素(SiOC)膜、および酸窒化ケイ素(SiON)膜のいずれの膜に対しても、研磨速度が大きいことがわかり、ポリシリコン(p−Si)膜との研磨速度比が大きく、被研磨材の研磨選択性が高いことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、実施例1の研磨液組成を用いてpHを変更した研磨液(実施例1〜5、及び比較例1〜3)によるp−Si膜に対する研磨速度のpH依存性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路を作製する際の平坦化工程において、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層と、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層と、を少なくとも有して構成される被研磨体の化学的機械的研磨に用いられ、下記(1)および(2)で示される各成分を含有し、pHが1.5〜7.0であり、且つ、前記第1層に対して前記第2層を選択的に研磨しうる研磨液。
(1)表面の一部がアルミニウムで修飾されているコロイダルシリカ
(2)有機酸
【請求項2】
前記第1層の研磨速度をRR(p−Si)とし、前記第2層の研磨速度をRR(other)とした場合に、RR(other)/RR(p−Si)で表される比が1.5〜200の範囲で前記被研磨体を研磨しうる請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
前記コロイダルシリカ粒子の濃度が、研磨液の全質量に対して0.1質量%〜10質量%である請求項1又は請求項2に記載の研磨液。
【請求項4】
前記コロイダルシリカ粒子が、平均一次粒子径が5nm〜100nmの範囲であり、且つ平均二次粒子径が8nm〜150nmの範囲である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項5】
前記有機酸が、その分子構造中に少なくとも1つのカルボキシル基を含む有機酸である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記有機酸が、下記一般式(I)で表される化合物である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の研磨液。
【化1】


[一般式(I)中、Rは、炭素数1〜20のアルキレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの基を2以上組み合わせてなる基を表す。]
【請求項7】
前記有機酸の濃度が、研磨液の全質量に対して0.001質量%〜3質量%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項8】
更に界面活性剤を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の研磨液を、研磨定盤上の研磨パッドに供給し、該研磨定盤を回転させることで、該研磨パッドを被研磨体の被研磨面と接触させつつ相対運動させて研磨する研磨方法。
【請求項10】
前記(1)表面の一部がアルミニウムで修飾されているコロイダルシリカが、コロイダルシリカの表面に占めるアルミニウム原子の割合が0.01atm%以上25atm%以下の範囲である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の研磨液。

【図1】
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【公開番号】特開2009−289885(P2009−289885A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139395(P2008−139395)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】