説明

研磨用組成物並びにそれを用いた研磨方法及び基板の製造方法

【課題】貴金属酸化物に対して高い除去速度を有する研磨用組成物及びその用途を提供する。
【解決手段】本発明の研磨用組成物は配位子化合物及び水を含有する。配位子化合物としては、貴金属酸化物から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力を有し、その能力が貴金属酸化物中の貴金属と同じ種類の貴金属単体から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力よりも高いものが使用される。配位子化合物の例としては例えば、チオシアン酸アンモニウム等のチオシアン酸塩、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩、亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸ナトリウム二水和物等のテトラチオン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム等のジエチルジチオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物やジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム等のジメチルジチオカルバミン酸塩、及びチオ尿素が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属酸化物の研磨に適した研磨用組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばDRAMキャパシタ構造の製造工程において酸化ルテニウム(RuO)のような貴金属酸化物からなる部分の一部を除去するのに研磨用組成物を用いた研磨を利用することが行われている。このような貴金属酸化物を研磨する用途で使用される研磨用組成物が例えば特表2007−520062号公報(特許文献1)に開示されている。しかしながら化学的に安定な貴金属酸化物の除去には一般に時間がかかるため、この種の研磨用組成物に対してはスループット向上のためのさらなる改良のニーズが強い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−520062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、貴金属酸化物に対して高い除去速度を有する研磨用組成物並びにそれを用いた研磨方法及び基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、配位子化合物及び水を含有する研磨用組成物を提供する。配位子化合物としては、貴金属酸化物から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力を有し、その能力が前記貴金属酸化物中の貴金属と同じ種類の貴金属単体から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力よりも高いものが使用される。
【0006】
前記配位子化合物は、例えば、以下の構造式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物(ただし、式中、Mは金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、nは0〜3のいずれかの整数を表し、R,R及びRは独立して水素原子、アルキル基、チオール基、ケトン基、アルコール基、カルボニル基又はアミン基を表し、RはR又はRとともに環状構造を形成していてもよく、Rは水素原子、アルキル基、ケトン基又はチオール基を表す。)である。
【0007】
【化1】

研磨用組成物は、さらに砥粒を含有してもよい。
【0008】
本発明の別の態様では、上記態様に係る研磨用組成物を用いて、貴金属酸化物部分を有する研磨対象物の表面を研磨する研磨方法、さらに言えば、上記態様に係る研磨用組成物を用いて、貴金属酸化物を含む基板を得るべく、貴金属酸化物部分を有する研磨対象物の表面を研磨して金属酸化物部分の一部を除去することを含む、貴金属酸化物を含む基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貴金属酸化物に対して高い除去速度を有する研磨用組成物並びにそれを用いた研磨方法及び基板の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、特定の配位子化合物を水に混合し、必要に応じてpH調整剤を添加してpHを所望の値に調整することにより調製される。従って、本実施形態の研磨用組成物は、配位子化合物及び水を含有し、必要に応じてさらにpH調整剤を含有する。この研磨用組成物は、貴金属酸化物を研磨する用途、さらに言えば貴金属酸化物部分を有する研磨対象物の表面を研磨して貴金属酸化物部分の一部を除去することを通じて貴金属酸化物を含む基板を製造する用途で使用される。なお、貴金属とは一般に、銀、金、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム及びオスミウムが該当する。従って、本実施形態の研磨用組成物はこれらの貴金属の酸化物を研磨する用途で使用されるものである。中でも、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム又はオスミウムの酸化物からなる膜を研磨する用途、特に酸化ルテニウム膜を研磨する用途で好適に用いられる。
【0011】
研磨用組成物中に含まれる配位子化合物は、以下の構造式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物(ただし、式中、Mは金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、nは0〜3のいずれかの整数を表し、R,R及びRは独立して水素原子、アルキル基、チオール基、ケトン基、アルコール基、カルボニル基又はアミン基を表し、RはR又はRとともに環状構造を形成していてもよく、Rは水素原子、アルキル基、ケトン基又はチオール基を表す。)である。構造式(1)〜(4)で表される化合物は貴金属酸化物から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力を有し、その能力が貴金属酸化物中の貴金属と同じ種類の貴金属単体から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力よりも高い。このことが、本実施形態の研磨用組成物を用いて貴金属酸化物を研磨した場合に高い除去速度を得ることができる理由と考えられる。
【0012】
【化2】

構造式(1)で表される化合物の具体例としては、チオ硫酸アンモニウム((NH)などのチオ硫酸塩が挙げられる。
【0013】
構造式(2)で表される化合物の具体例としては、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)などの亜ジチオン酸塩、及び
テトラチオン酸ナトリウム二水和物(Na・2HO)などのテトラチオン酸塩が挙げられる。
【0014】
構造式(3)で表される化合物の具体例としては、チオ尿素((NHCS)、1−(2−メトキシル)−2−チオ尿素、1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素、エチレンチオ尿素、N−エチルチオ尿素、グアニルチオ尿素、N−トリメチルチオ尿素、チオカルバモイルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、及び2,5−ジチオビ尿素などのチオ尿素化合物、
ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(C22)などのジエチルジチオカルバミン酸塩、
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物(CNNaS・2HO)及びジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム(C14)などのジメチルジチオカルバミン酸塩、
ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩(C12)などのピロリジンジチオカルバミン酸塩のほか、
N−(エトキシカルボニル)チオプロピオンアミド、3−メルカプト−6−メチル−1,2,4−トリアジン−5−オール、ロダニン、2−チオウラシル、N−(ジチオカルボキシ)サルコシン塩、4−メチルチオセミカルバジド、ペンタメチレンジチオカルバマート、グリオキサールビス(チオセミカルバゾン)、へキサメチレンジチオカルバマート、4,4−ジメチル−3−チオセミカルバジド、5−メチル−2−チオウラシル、2−(シアノ)チオアセトアミド、2,4−ジメチルチオセミカルバジド、チオセミカルバジド、チオカルボヒドラジド、2−チオキソ−4−イミダゾリジノン、4−(3−メトキシプロピル)−3−チオセミカルバジド、N−(ジチオカルボキシ)サルコシン塩、ピロリジン−2−チオン、エチレンビス(ジチオカルバミン酸塩)、及びN−ヒドロキシメチル−N−メチルジチオカルバミド酸塩が挙げられる。
【0015】
構造式(4)で表される化合物の具体例としては、チオシアン酸アンモニウム(NHSCN)などのチオシアン酸塩のほか、チオシアン酸メチル、エチレンビスチオシアナート、メチレンジチオシアナート及びチオシアン酸クロロメチルが挙げられる。
【0016】
研磨用組成物中の配位子化合物の含有量は1mmol/L以上であることが好ましい。構造式(1)で表される化合物の場合、より好ましくは10mmol/L以上、さらに好ましくは30mmol/L以上である。構造式(2)で表される化合物の場合、より好ましくは3mmol/L以上、さらに好ましくは5mmol/L以上である。構造式(3)で表される化合物の場合、より好ましくは10mmol/L以上、さらに好ましくは30mmol/L以上である。構造式(4)で表される化合物の場合、より好ましくは50mmol/L以上、さらに好ましくは150mmol/L以上である。配位子化合物の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物による貴金属酸化物の除去速度が向上する有利がある。
【0017】
また、研磨用組成物中の配位子化合物の含有量は300mmol/L以下であることが好ましい。構造式(1)で表される化合物の場合、より好ましくは100mmol/L以下、さらに好ましくは70mmol/L以下である。構造式(2)で表される化合物の場合、より好ましくは100mmol/L以下、さらに好ましくは50mmol/L以下である。構造式(3)で表される化合物の場合、より好ましくは100mmol/L以下、さらに好ましくは70mmol/L以下である。構造式(4)で表される化合物の場合、より好ましくは250mmol/L以下、さらに好ましくは250mmol/L以下である。
【0018】
研磨用組成物のpHの値は、例えば使用される配位子化合物の種類に応じて適宜に設定される。使用される配位子化合物が構造式(1)、構造式(2)又は構造式(4)のいずれかで表される化合物である場合には、研磨用組成物のpHの値は1以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上である。使用される配位子化合物が構造式(3)で表される化合物であるチオ尿素化合物である場合には、研磨用組成物のpHの値は7以上であることが好ましく、より好ましくは8以上であり、構造式(3)で表されるそれ以外の化合物である場合には、研磨用組成物のpHの値は5以上であることが好ましく、より好ましくは6以上である。また、使用される配位子化合物が構造式(1)、構造式(2)又は構造式(4)のいずれかで表される化合物である場合には、研磨用組成物のpHの値は7以下であることが好ましく、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。使用される配位子化合物が構造式(3)で表される化合物であるチオ尿素化合物である場合には、研磨用組成物のpHの値は12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下であり、構造式(3)で表されるそれ以外の化合物である場合には、研磨用組成物のpHの値は9以下であることが好ましく、より好ましくは8以下である。研磨用組成物のpHの値をこのように設定した場合には、研磨用組成物による貴金属酸化物の除去速度を特に向上させることができる。
【0019】
研磨用組成物のpHを所望の値に調整するために必要に応じて使用されるpH調整剤は酸及びアルカリのいずれであってもよく、また無機及び有機の化合物のいずれであってもよい。無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸及びリン酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸及び乳酸などのカルボン酸、並びにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びイセチオン酸等の有機硫酸が挙げられる。アルカリの具体例としては、アンモニア、エチレンジアミン及びピペラジンなどのアミン、並びにテトラメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0020】
本実施形態によれば以下の作用及び効果が得られる。
本実施形態の研磨用組成物は特定の配位子化合物を含有している。この配位子化合物は、貴金属酸化物から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力を有し、その能力が貴金属酸化物中の貴金属と同じ種類の貴金属単体から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力よりも高い。このことが、本実施形態の研磨用組成物を用いて貴金属酸化物を研磨した場合に高い除去速度を得ることができる理由と考えられる。そのため、本実施形態の研磨用組成物は、貴金属酸化物を研磨する用途、さらに言えば貴金属酸化物部分を有する研磨対象物の表面を研磨して金属酸化物部分の一部を除去することを通じて貴金属酸化物を含む基板を製造する用途で好適に使用することができる。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態の研磨用組成物は、砥粒をさらに含有している点で第1実施形態の研磨用組成物とは異なる。
【0022】
第2実施形態の研磨用組成物中に含まれる砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する働きを有し、研磨用組成物によるシリコン酸化物の除去速度を向上させる目的で使用される。なお、第1実施形態の研磨用組成物の用途として貴金属酸化物を含む基板を製造する用途を挙げたが、この貴金属酸化物を含む基板を製造する過程においては貴金属酸化物部分だけでなくシリコン酸化物部分の一部も除去することが必要な場合がある。第2実施形態の研磨用組成物は、貴金属酸化物を含む基板を製造する過程で貴金属酸化物部分だけでなくシリコン酸化物部分の一部も除去する必要があるときにも好適に使用することができるようにしたものである。
【0023】
使用される砥粒は、無機粒子、有機粒子、及び有機無機複合粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、セリア、チタニアなどの金属酸化物からなる粒子、並びに窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子及び窒化ホウ素粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。その中でもシリカが好ましく、特に好ましいのはコロイダルシリカである。
【0024】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は0.005質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、最も好ましくは3質量%以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるシリコン酸化物の除去速度が向上する有利がある。
【0025】
また、研磨用組成物中の砥粒の含有量は10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物による貴金属酸化物の除去速度は向上する。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物による貴金属酸化物の除去速度が向上する有利がある。
【0026】
砥粒の平均一次粒子径は5nm以上であることが好ましく、より好ましくは7nm以上、さらに好ましくは10nm以上である。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、研磨用組成物によるシリコン酸化物の除去速度が向上する有利がある。なお、砥粒の平均一次粒子径の値は、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて計算することができる。
【0027】
砥粒の平均一次粒子径は100nm以下であることが好ましく、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いて貴金属酸化物部分とシリコン酸化物部分を同時に研磨したときに貴金属酸化物部分の上面とシリコン酸化物部分の上面との間に段差が生じにくくなる有利がある。
【0028】
第2実施形態によれば以下の作用及び効果が得られる。
第2実施形態の研磨用組成物は特定の配位子化合物に加えて砥粒を含有している。そのため、第2実施形態の研磨用組成物は、貴金属酸化物だけでなくシリコン酸化物に対しても高い除去速度を有する。よって、第2実施形態の研磨用組成物は、貴金属酸化物を含む基板を製造する過程で貴金属酸化物部分だけでなくシリコン酸化物の一部も除去することが必要な場合にも好適に使用することができる。
【0029】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・ 第1及び第2実施形態の研磨用組成物は、配位子化合物を二種類以上含有してもよい。
【0030】
・ 第1及び第2実施形態の研磨用組成物は、防腐剤のような公知の添加剤を必要に応じてさらに含有してもよい。
・ 第1及び第2実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。
【0031】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
(実施例1)
コロイダルシリカゾルを水で希釈し、そこにチオ硫酸アンモニウムを加えた後、アンモニアを添加してpHの値を6に調整することにより実施例1の研磨用組成物を調製した。この研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量は5質量%、チオ硫酸アンモニウムの含有量は50mmol/Lであった。この研磨用組成物を用いて、表面に酸化ルテニウム(RuO、x=1〜3)膜を有するウェーハ及び表面にルテニウム膜を有するウェーハを表1に示す研磨条件で研磨した。研磨前後のウェーハの厚みを直流4探針法によるシート抵抗の測定から求めてその差を研磨時間で除することにより酸化ルテニウム除去速度及びルテニウム除去速度を求めたところ、酸化ルテニウム除去速度が167Å/分であったのに対し、ルテニウム除去速度は18Å/分であった。この結果は、チオ硫酸アンモニウムをはじめとする特定の配位子化合物が備える貴金属酸化物から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力が貴金属酸化物中の貴金属と同じ種類の貴金属単体から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力よりも高いことを示唆している。
【0032】
【表1】

(実施例2〜22)
特定の配位子化合物を水に混合し、硝酸又はアンモニアを添加してpHの値を3又は7又は10に調整することにより実施例2〜22の研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物中の配位子化合物の種類及び含有量並びに各研磨用組成物のpHは表2に示すとおりである。実施例2〜22の各研磨用組成物を用いて、表面に酸化ルテニウム膜(RuO、x=1〜3)膜を有するウェーハを表1に示す研磨条件で研磨した。研磨前後の各ウェーハの厚みを直流4探針法によるシート抵抗の測定から求めてその差を研磨時間で除することにより酸化ルテニウム除去速度を求めた。その結果を表2の“除去速度”欄に示す。
【0033】
【表2】

(実施例23〜34及び比較例1〜14)
コロイダルシリカゾルを水で希釈し、そこに特定の配位子化合物を加えた後、硝酸又はアンモニアを添加してpHの値を3又は7又は10に調整することにより実施例23〜34の研磨用組成物を調製した。コロイダルシリカゾルを水で希釈し、そこに特定の配位子化合物に代わる化合物を加えた後、硝酸又はアンモニアを添加してpHの値を3又は7に調整することにより比較例1〜14の研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物中の配位子化合物又はそれに代わる化合物の種類及び含有量並びに各研磨用組成物のpHは表3に示すとおりである。なお、表3中には示していないが、実施例23〜34及び比較例1〜14の研磨用組成物はいずれも5質量%のコロイダルシリカを含有している。実施例23〜34及び比較例1〜14の各研磨用組成物を用いて、酸化ルテニウム(RuO、x=1〜3)、酸化オスミウム(IV)(OsO)、酸化ロジウム(III)(Rh)、酸化イリジウム(IV)(Ir)及び酸化パラジウム(II)(PdO)のいずれかの貴金属酸化物からなる膜を表面に有するウェーハを表1に示す研磨条件で研磨した。研磨前後の各ウェーハの厚みを直流4探針法によるシート抵抗の測定から求めてその差を研磨時間で除することにより貴金属酸化物除去速度を求めた。その結果を表3の“除去速度”欄に示す。
【0034】
【表3】

表2及び表3に示すように、実施例1〜34の研磨用組成物を用いて貴金属酸化物を研磨した場合にはいずれも30Å/分以上という高い除去速度が得られた。それに対し、特定の配位子化合物を含有しない比較例1〜14の研磨用組成物を用いて酸化ルテニウムを研磨した場合にはいずれも30Å/分を下回る除去速度しか得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属酸化物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、
配位子化合物及び水を含有し、
前記配位子化合物は、前記貴金属酸化物から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力を有し、その能力が前記貴金属酸化物中の貴金属と同じ種類の貴金属単体から貴金属を捕獲して金属錯体を形成する能力よりも高い
ことを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記配位子化合物は、以下の構造式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物(ただし、式中、Mは金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、nは0〜3のいずれかの整数を表し、R,R及びRは独立して水素原子、アルキル基、チオール基、ケトン基、アルコール基、カルボニル基又はアミン基を表し、RはR又はRとともに環状構造を形成していてもよく、Rは水素原子、アルキル基、ケトン基又はチオール基を表す。)である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【化1】

【請求項3】
さらに砥粒を含有する、請求項1又は2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、貴金属酸化物部分を有する研磨対象物の表面を研磨することを含む研磨方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、貴金属酸化物を含む基板を得るべく、貴金属酸化物部分を有する研磨対象物の表面を研磨して金属酸化物部分の一部を除去することを含む、貴金属酸化物を含む基板の製造方法。

【公開番号】特開2012−234948(P2012−234948A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102068(P2011−102068)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】