説明

研磨用組成物

【課題】磁気ディスク用基板を研磨する用途での使用により適した研磨用組成物を提供する。
【解決手段】研磨用組成物は、コロイダルシリカのような砥粒と、クエン酸やオルトリン酸のような酸と、過酸化水素のような酸化剤と、ベンゾトリアゾールのようなアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物とを含有してなる。研磨用組成物は、磁気ディスク用基板を研磨する用途で好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク用基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク用基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物には、例えば、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチが少ないことや、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度が高いことが要求されている。例えば特許文献1には、こうした要求を満たすべく改良された研磨用組成物が開示されている。特許文献1の研磨用組成物には、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときのスクラッチの発生を抑制するために有機ホスホン酸が含有されている。しかしながら、特許文献1の研磨用組成物はスクラッチ及び研磨速度に関する要求性能を十分に満足するものではなく、依然として改良の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,818,031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、磁気ディスク用基板を研磨する用途での使用により適した研磨用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、砥粒と、酸と、酸化剤と、アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物とを含有してなり、磁気ディスク用基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、磁気ディスク用基板を研磨する用途での使用により適した研磨用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、砥粒、酸、酸化剤、アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物、並びに水を混合することにより製造される。従って、本実施形態の研磨用組成物は、砥粒、酸、酸化剤、アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物、並びに水から実質的になる。この研磨用組成物は、磁気ディスク用基板を研磨する用途で使用される。換言すれば、研磨製品としての磁気ディスク用基板を得るべく磁気ディスク用基板の半製品を研磨する用途で使用される。本実施形態に係る研磨用組成物は、磁気ディスク用基板の加工途中に一般的に実施される複数の研磨工程のうちの最終の研磨工程(仕上げ研磨工程)で用いられることが好ましい。
【0008】
研磨用組成物中の砥粒は、磁気ディスク用基板を機械的に研磨する役割を担い、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度の向上に寄与する。
研磨用組成物に含まれる砥粒は、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降性シリカのようなシリカであってもよいし、ジルコニア、アルミナ、セリア及びチタニアのようなシリカ以外であってもよい。ただし、研磨用組成物に含まれる砥粒は好ましくはシリカであり、特に好ましくはコロイダルシリカである。研磨用組成物に含まれる砥粒がシリカである場合、さらに言えばコロイダルシリカである場合には、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチが低減される。
【0009】
研磨用組成物に含まれる砥粒の平均粒子径が0.005μmよりも小さい場合、さらに言えば0.01μmよりも小さい場合には、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度はあまり向上しない。また、研磨抵抗が大きくなりすぎて研磨機の振動を招く虞もある。従って、研磨速度の向上及び研磨機の振動低減のためには、研磨用組成物に含まれる砥粒の平均粒子径は0.005μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上である。
【0010】
一方、研磨用組成物に含まれる砥粒の平均粒子径が1μmよりも大きい場合には、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチが増加したり、磁気ディスク用基板の表面粗度が増大したりする虞がする。従って、磁気ディスク用基板の表面品質の維持のためには、研磨用組成物に含まれる砥粒の平均粒子径は1μm以下であることが好ましい。砥粒の平均粒子径は、BET法により測定される砥粒の比表面積から算出される。
【0011】
特に、研磨用組成物に含まれる砥粒がコロイダルシリカである場合、砥粒として研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカの平均粒子径に関して以下のことが言える。すなわち、砥粒として研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカの平均粒子径が0.2μmよりも大きい場合、さらに言えば0.08μmよりも大きい場合には、研磨用組成物中にコロイダルシリカの沈殿が発生しやすくなる虞がある。また、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチが増加したり、磁気ディスク用基板の表面粗度が増大したりする虞もある。従って、コロイダルシリカの沈殿防止及び磁気ディスク用基板の更なる表面品質の向上のためには、砥粒として研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカの平均粒子径は0.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.08μm以下である。
【0012】
研磨用組成物中の砥粒の含有量が0.01質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.1質量%よりも少ない場合、もっと言えば1質量%よりも少ない場合には、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度はあまり向上しない。また、研磨抵抗が大きくなりすぎて研磨機の振動を招く虞もある。従って、研磨速度の向上及び研磨機の振動低減のためには、研磨用組成物中の砥粒の含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、最も好ましくは1質量%以上である。一方、研磨用組成物中の砥粒の含有量が40質量%よりも多い場合、さらに言えば20質量%よりも多い場合、もっと言えば10質量%よりも多い場合には、砥粒の凝集が起こりやすくなって研磨用組成物中に沈殿が発生しやすくなる虞がある。従って、砥粒の沈殿防止のためには、研磨用組成物中の砥粒の含有量は40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。
【0013】
研磨用組成物中の酸は、磁気ディスク用基板を化学的に研磨する役割を担い、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度の向上に寄与する。
研磨用組成物に含まれる酸は有機酸であってもよく、具体的には炭素数が1〜10の有機カルボン酸、有機ホスホン酸又は有機スルホン酸であってもよい。より具体的には、研磨用組成物に含まれる酸は、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(略称HEDP)又はメタンスルホン酸であってもよい。その中でも、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、メチルアシッドホスフェート又はHEDPが好ましく、マレイン酸又はマロン酸が特に好ましい。研磨用組成物に含まれる酸がクエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、メチルアシッドホスフェート又はHEDPである場合には、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度が大きく向上し、その中でもマレイン酸又はマロン酸である場合には、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度が特に大きく向上する。
【0014】
また研磨用組成物に含まれる酸は無機酸であってもよく、具体的には、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸のようなリン酸であってもよいし、ホスホン酸、スルホン酸又は硫酸であってもよい。その中でも、オルトリン酸又はポリリン酸が好ましい。研磨用組成物に含まれる酸がオルトリン酸又はポリリン酸である場合には、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度が大きく向上する。
【0015】
研磨用組成物中の酸の含有量が0.01質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.1質量%よりも少ない場合には、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度があまり向上しない。従って、研磨速度の向上のためには、研磨用組成物中の酸の含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。一方、研磨用組成物中の酸の含有量が40質量%よりも多い場合、さらに言えば20質量%よりも多い場合には、研磨用組成物の腐食作用が強くなりすぎる虞がある。その結果、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に面荒れが生じたり、研磨機が腐食しやすくなったりする虞がある。従って、腐食作用の適正化のためには、研磨用組成物中の酸の含有量は40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0016】
研磨用組成物中の酸化剤は、磁気ディスク用基板の表面を酸化する作用を有する。酸化剤によって磁気ディスク用基板の表面が酸化されると、砥粒による磁気ディスク用基板の機械的な研磨が促進され、その結果、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度が向上する。
【0017】
研磨用組成物に含まれる酸化剤は、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度の向上及び研磨用組成物の安定性の向上のためには、過酸化水素であることが好ましい。
研磨用組成物中の酸化剤の含有量が0.1質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.3質量%よりも少ない場合には、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度があまり向上しない。従って、研磨速度の向上のためには、研磨用組成物中の酸化剤の含有量は0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。一方、研磨用組成物中の酸化剤の含有量が5質量%よりも多い場合、さらに言えば1質量%よりも多い場合には、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に面荒れが生じる虞がある。従って、面荒れ防止のためには、研磨用組成物中の酸化剤の含有量は5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0018】
研磨用組成物中のアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物は、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチを低減する作用を有する。この作用は、磁気ディスク用基板の表面にアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物による保護膜が形成されることによるものと推測される。なお、アゾール誘導体は、例えば、アゾール類の分子内の炭素原子又は窒素原子に結合している水素原子が他の原子団で置き換えられたものである。
【0019】
研磨用組成物に含まれるアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物は、ジアゾール類、トリアゾール類、テトラゾール類及びそれらの誘導体から選ばれる化合物であってもよい。より具体的には、研磨用組成物に含まれるアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物は、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、ジメチルピラゾール及びそれらの誘導体から選ばれる化合物であってもよい。その中でも、研磨用組成物に含まれるアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物は、ベンゾトリアゾールであることが好ましい。
【0020】
研磨用組成物中のアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物の含有量が0.005質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.01質量%よりも少ない場合には、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチがあまり低減されない。従って、スクラッチの低減のためには、研磨用組成物中のアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物の含有量は0.005質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上である。一方、研磨用組成物中のアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物の含有量が1質量%よりも多い場合、さらに言えば0.5質量%よりも多い場合には、磁気ディスク用基板の表面に形成されるアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物による保護膜によって磁気ディスク用基板の研磨が抑制される虞がある。そしてその結果、研磨用組成物による磁気ディスク用基板の研磨速度が低下する虞がある。従って、研磨速度の低下防止のためには、研磨用組成物中のアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物の含有量は1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0021】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
本実施形態の研磨用組成物には、磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチを低減する作用を有するアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物が含まれているため、この研磨用組成物によれば、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチを低減することができる。また、本実施形態の研磨用組成物には、磁気ディスク用基板を機械的に研磨する役割を担う砥粒と、磁気ディスク用基板を化学的に研磨する役割を担う酸が含まれているため、この研磨用組成物によれば、磁気ディスク用基板を高い研磨速度で研磨することができる。よって、本実施形態によれば、磁気ディスク用基板を研磨する用途での使用に適した研磨用組成物を提供することができる。
【0022】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・前記実施形態の研磨用組成物には、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物を添加してもよい。その中でも、好ましくはカリウム塩である。研磨用組成物に添加されるナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物は、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、HEDP、メタンスルホン酸などの有機酸の塩であってもよいし、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、ホスホン酸、スルホン酸、硫酸などの無機酸の塩であってもよい。その中でも、研磨用組成物に添加されるナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物は、リン酸塩、ホスホン酸塩又はクエン酸塩であることが好ましく、特に好ましくはリン酸水素二カリウムのようなリン酸塩である。
【0023】
・ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物を研磨用組成物に添加すると、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチが低減される。これは、塩の添加により、研磨用組成物のpHが上昇すること及び緩衝作用が向上することによるものと推測される。また、リン酸塩の場合には、磁気ディスク用基板の表面にリン酸塩による保護膜が形成されることもその理由と推測される。
【0024】
・研磨用組成物中のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物の含有量が0.01質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.1質量%よりも少ない場合には、研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨したときに磁気ディスク用基板の表面に発生するスクラッチがあまり低減されない。従って、スクラッチの低減のためには、研磨用組成物中のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物の含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。一方、研磨用組成物中のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物の含有量が30質量%よりも多い場合、さらに言えば10質量%よりも多い場合には、研磨用組成物の安定性が低下する虞がある。従って、研磨用組成物の安定性の低下を防止するためには、研磨用組成物中のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる化合物の含有量は30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0025】
・前記実施形態の研磨用組成物には二種類以上の砥粒が含有されていてもよい。
・前記実施形態の研磨用組成物には二種類以上の酸が含有されていてもよい。
・前記実施形態の研磨用組成物には二種類以上のアゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物が含有されていてもよい。
【0026】
・前記実施形態の研磨用組成物には必要に応じて防黴剤、防食剤、消泡剤、キレート剤等を添加してもよい。
・前記実施形態の研磨用組成物は研磨用組成物の原液を水で希釈することによって調製されてもよい。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
コロイダルシリカ、酸、酸化剤、アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物、カリウム塩、並びに水を適宜に混合することにより実施例1〜25及び比較例1〜18の研磨用組成物を調製した。実施例1〜25及び比較例1〜18の研磨用組成物中のコロイダルシリカ、酸、酸化剤、アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物、並びにカリウム塩の詳細は表1〜3に示すとおりである。
【0028】
表1〜3の“研磨速度”欄には、実施例1〜25及び比較例1〜18の各研磨用組成物を用いて、磁気ディスク用基板を下記研磨条件で研磨したときに、下記計算式により求められる研磨速度について評価した結果を示す。“研磨速度”欄中、1(優)は研磨速度が0.1μm/分以上であったことを示し、2(良)は0.07μm/分以上0.1μm/分未満、3(やや不良)は0.04μm/分以上0.07μm/分未満、4(不良)は0.04μm/分未満であったことを示す。
【0029】
研磨条件
研磨対象物: ニッケルリン無電解メッキ層を備え、表面粗さRaの値が6Åである直径約95mm(3.5インチ)の磁気ディスク用基板10枚
研磨機: スピードファム(株)の両面研磨機“SFDL−9B”
研磨パッド: FILWEL(株)の“FJM−01”
研磨荷重: 7.8kPa(80g/cm
下定盤回転数: 30rpm
研磨用組成物の供給速度: 40mL/分
研磨時間: 8分間
計算式
研磨速度[μm/分]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板面積[cm]×ニッケルリンメッキの密度[g/cm]×研磨時間[分])×10
表1〜3の“スクラッチ”欄には、実施例1〜25及び比較例1〜18の各研磨用組成物を用いて上記研磨条件で研磨した磁気ディスク用基板において計測されるスクラッチの個数について評価した結果を示す。“スクラッチ”欄中、1(優)は、VISION PSYTEC社の“MicroMax VMX2100”を用いて計測されるスクラッチの個数が20未満であったことを示し、2(良)は20以上40未満、3(やや不良)は40以上60未満、4(不良)は60以上であったことを示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

表1〜3に示すように、実施例1〜25の研磨用組成物では研磨速度及びスクラッチに関して実用上満足できる結果が得られた。それに対し、比較例1〜18では研磨速度及びスクラッチのいずれかに関して実用上満足できる結果が得られなかった。
【0033】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 研磨用組成物中の前記アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物の含有量が0.005〜1質量%である前記研磨用組成物。
【0034】
・ 前記砥粒がシリカを含む前記研磨用組成物。
・ 前記砥粒がコロイダルシリカを含む前記研磨用組成物。
・ 前記砥粒の平均粒子径が0.005〜1μmである前記研磨用組成物。
【0035】
・ 研磨用組成物中の前記砥粒の含有量が0.01〜40質量%である前記研磨用組成物。
・ 前記酸が、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも一種を含む前記研磨用組成物。
【0036】
・ 前記酸が、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、メチルアシッドホスフェート及び1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸から選ばれる少なくとも一種の有機酸を含む前記研磨用組成物。
【0037】
・ 前記酸がマレイン酸及びマロン酸の少なくともいずれか一方の有機酸を含む前記研磨用組成物。
・ 前記酸が、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、ホスホン酸、スルホン酸及び硫酸から選ばれる少なくとも一種の無機酸を含む前記研磨用組成物。
【0038】
・ 前記酸がオルトリン酸及びポリリン酸の少なくともいずれか一方の無機酸を含む前記研磨用組成物。
・ 研磨用組成物中の前記酸の含有量が0.01〜40質量%である前記研磨用組成物。
【0039】
・ 前記酸化剤が過酸化水素である前記研磨用組成物。
・ 研磨用組成物中の前記酸化剤の含有量が0.1〜5質量%である前記研磨用組成物。
【0040】
・ 無機酸及び有機酸のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる前記少なくとも一種の化合物が、リン酸塩、ホスホン酸塩及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種の化合物である前記研磨用組成物。
【0041】
・ 磁気ディスク用基板の研磨方法であって、
前記研磨用組成物を用意する工程と、
前記研磨用組成物を用いて磁気ディスク用基板を研磨する工程と
を備える方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、酸と、酸化剤と、アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物とを含有してなり、磁気ディスク用基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物。
【請求項2】
前記アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物が、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、ジメチルピラゾール及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記アゾール類及びその誘導体から選ばれる化合物がベンゾトリアゾールを含む請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記酸が、炭素数1〜10の有機カルボン酸、有機ホスホン酸及び有機スルホン酸から選ばれる少なくとも一種の有機酸を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
無機酸及び有機酸のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる少なくとも一種の化合物をさらに含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。

【公開番号】特開2012−131026(P2012−131026A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20207(P2012−20207)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2006−257391(P2006−257391)の分割
【原出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】