説明

研磨装置

【課題】逆オスカー型の研磨装置において、上定盤の外部のカラーフィルタ上に研磨液を滴下させて研磨を行っても、研磨量の制御が容易で、安定した研磨のできる研磨装置を提供する。
【解決手段】上定盤33に対向する下定盤1への荷重の分布を上定盤の外周部のみとするために、上定盤は上定盤上層33aと上定盤下層33bで構成し、上定盤の下面を中凹状50にする調整機構として押込みボルト31を上定盤上層33aの中心部qを除く内面部rから外周部tに向かって複数個設けたこと。上定盤43を厚さ方向を2分するスリット44を中心部を除く内面部から外周部に向かって設け、押込みボルト41を上定盤上半部43aの中心部を除く内面部から外周部に向かって複数個設けたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタの製造に用いる研磨装置に関するものであり、特に、上定盤の外部のカラーフィルタ上に上方の研磨液の滴下ノズルから研磨液を滴下させて研磨を行っても、研磨量の制御が容易で、狙いの研磨量が得やすく、バラツキの少ない安定した研磨をすることのできる研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置において、カラー表示、反射率の低減、コントラストの調整、分光特性制御などの目的にカラーフィルタを用いることは有用な手段となっている。この表示装置に用いられるカラーフィルタは、多くの場合、画素として形成され用いられる。表示装置に用いられるカラーフィルタの画素を形成する方法として、これまで実用されてきた方法には、印刷法、フォトリソグラフィ法などが挙げられる。
【0003】
図1は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの画素の一例を拡大して示す平面図である。また、図2は、図1に示すカラーフィルタの画素のX−X線における断面図である。図1、及び図2に示すように、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、ガラス基板(10)上にブラックマトリックス(21)、着色画素(22)、及び透明導電膜(23)が順次に形成されたものである。
【0004】
液晶表示装置に用いられる上記カラーフィルタの製造方法としては、先ず、ガラス基板(10)上にブラックマトリックス(21)を形成し、次に、ブラックマトリックス(21)が形成されたガラス基板上のブラックマトリックスの開口部に位置合わせして着色画素(22)を形成し、更に透明導電膜(23)を形成するといった方法が広く用いられている。
【0005】
ブラックマトリックス(21)は遮光性を有し、その開口部にてガラス基板上での着色画素の位置を定め、大きさを均一なものとしている。また、表示装置に用いられた際に、好ましくない光を遮蔽し、表示装置の画像をムラのない均一な、且つコントラストを向上させた画像にする機能を有している。このブラックマトリックス(21)の形成は、例えば、ガラス基板(10)上に、黒色フォトレジストの塗布膜を設け、この塗布膜へのフォトマスクを介した露光、現像によってブラックマトリックスを形成するといったフォトリソグラフィ法がとられている。
【0006】
また、着色画素(22)は、例えば、赤色、緑色、青色の3原色の着色画素を色再現フィルタとして機能させたものであり、ブラックマトリックスが形成されたガラス基板(10)上に、顔料などの色素を分散させた着色フォトレジストの塗布膜を設け、この塗布膜へのフォトマスクを介した露光、現像によって着色画素を形成するといったフォトリソグラフィ法がとられている。
【0007】
また、透明導電膜(23)の形成は、着色画素が形成されたガラス基板上に、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を用いスパッタ法によって透明導電膜を形成するといった方法がとられている。
【0008】
フォトリソグラフィ法によって形成された着色画素上に残留したレジストの残渣は、透明導電膜の成膜における透明導電膜(23)の密着性にとって、或いは、後工程であるカラーフィルタの周縁部(余白部)を対向基板とのシール部としてシールする際の密着性にとって好ましいものではなく、残留したレジストの残渣を取り除くために、カラーフィル
タ表面には研磨処理が施される。
【0009】
図3、及び図4は、カラーフィルタを研磨する際に、一般的に使用されている逆オスカー型と称される平盤研磨装置の一例の概略を示す説明図である。図3は平盤研磨装置の回転部分の断面図、図4は平面図である。
図3、及び図4に示すように、この研磨装置の回転部分は、円盤状の下定盤(1)、下定盤と一体的に固定され下定盤を回転させる回転軸(2)、円盤状の上定盤(3)、上定盤と一体的に固定され上定盤を回転させる回転軸(4)で構成されたものである。
【0010】
上定盤(3)のサイズは、下定盤(1)より小さなものであり、下定盤(1)と上定盤(3)を別々に駆動して回転させている。上定盤(3)は、下定盤(1)の上面上を円弧状に揺動(C)するようになっている。また、研磨のために上定盤(3)の上部から設定した加圧(D)をかけるようになっている。上定盤(3)の揺動は直線状のものもある。上定盤(3)の下面には、研磨布(5)が貼り合わされており、下定盤(1)の上方には研磨液の滴下ノズル(9)が設けられている。
【0011】
研磨方法は、先ず、下定盤(1)の上面に、カラーフィルタの表面が上向きになるようにカラーフィルタ(6)を貼り付ける。研磨液(スラリー)(8)をカラーフィルタ(6)上方の研磨液滴下ノズル(9)より、図4中、×印で示すカラーフィルタ上に滴下する。研磨は研磨液をカラーフィルタ上に滴下しながら行う。
【0012】
次に、上定盤(3)をカラーフィルタ上に下ろし、設定した加圧をかける。回転軸(2)及び回転軸(4)を駆動させて、下定盤(1)及び上定盤(3)を一定方向(A、B)に回転させ、また、また、回転軸(2)に連結された駆動機構(図示せず)により上定盤(3)を一定方向(C)に揺動させる。このようにして、カラーフィルタ(6)の表面への研磨を行う。なお、尚符号(7)はバッキング及びテンプレートを表している。
【0013】
このような研磨装置により研磨される被研磨物の研磨量は、プレストンの公式(下記数式(1))で表される。
V=k・p・v・t ・・・・(1)
V:研磨量 k:研磨液など加工条件に従う定数
p:研磨圧力 v:相対速度 t:時間
数式(1)に示されるように、研磨量は、p、v、tのパラメータに依存する。
【0014】
図5は、上部からの加圧により、この種の上定盤(13)に作用する荷重の状態を説明する断面図である。図5は研磨時に上定盤(13)の下面内で均等に荷重が分布した状態を表したものである。図5に示すように、外部からの加圧(D)により、上定盤(13)に作用する荷重(W)は、上定盤(13)と対向する下定盤(1)(下定盤に貼り付けたカラーフィルタ(6))の各作用点(a1〜an)で均等な荷重となっている。
【0015】
図5中、上定盤(13)の左端(外周部)の作用点(a1)の荷重(W1−1)と、右端(外周部)の作用点(an)の荷重(W1−n)と、この間の各作用点(a2〜a(n−1))での各荷重((W1−2)〜(W1−(n−1)))の全ての荷重とが同一であり、均等な分布となっている。
荷重(W)は、上記数式(1)における研磨圧力に相当するものである。研磨時には、図5に示すように、上定盤(13)の下面内で均等な値であることが望ましい。
【0016】
しかしながら、上記平盤研磨装置では、研磨液(8)は、図4中、×印で示す上定盤(3)の外部のカラーフィルタ上に上方の研磨液の滴下ノズル(9)から滴下されるために、上定盤(3)の下面内、つまり、研磨布(5)下面内の全面に研磨液(8)を取り込み延展させることは困難であり、研磨液(8)は上定盤(3)の外周部の近傍に多く供給されることになる。
すなわち、研磨液(8)は、上定盤(3)の外周部(研磨布(5)の外周部)の近傍に多く、上定盤(3)の下面内(研磨布(5)の下面内)に少ないといった偏在した状態となる。
【0017】
従って、図6中に矢印で示すように、上定盤(3)の左端(外周部)の作用点(a1)の荷重(W2−1)、及び右端(外周部)の作用点(an)の荷重(W2−n)は、大きなものとなる。また、上定盤(3)の外周部以外の各作用点(a2〜a(n−1))での各荷重((W2−2)〜(W2−(n−1)))は、小さなものとなる。
【0018】
このように、上定盤(3)の外周部では荷重が大きく、上定盤(3)の下面内では荷重が小さいといった状態で研磨を行うと、研磨量の制御が容易でなく、狙いの研磨量が得にくく、また、研磨量のバラツキも大きなものとなる。すなわち、安定した研磨量を得ることが困難であるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−302469号公報
【特許文献2】特開2004−195602号公報
【特許文献3】特開2005−288649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、カラーフィルタを研磨する際に使用する逆オスカー型の研磨装置において、上定盤の外部のカラーフィルタ上に上方の研磨液の滴下ノズルから研磨液を滴下させて研磨を行っても、研磨量の制御が容易で、狙いの研磨量が得やすく、また、研磨量のバラツキも小さなものとすることができる、すなわち、安定した研磨をすることのできる研磨装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、その上面にカラーフィルタを貼り付けて水平に回転する下定盤と、
その下面に研磨布を貼り合わせ、該研磨布を上記カラーフィルタに対向させ下定盤上で水平に回転及び揺動する、下定盤より小さなサイズの円盤状の上定盤と、
上定盤の外部のカラーフィルタ上に上方より研磨液を滴下する研磨液の滴下ノズルと、
上定盤を下方へ加圧する加圧機構とを、少なくとも備えた研磨装置において、
前記上定盤に対向する下定盤への荷重の分布を上定盤の外周部のみとするために、上定盤の下面を中凹状にする調整機構を設けたことを特徴とする研磨装置である。
【0022】
また、本発明は、上記発明による研磨装置において、前記上定盤は、上定盤上層と上定盤下層で構成され、前記調整機構として、押込みボルトを上定盤上層の中心部を除く内面部から外周部に向かって複数個設けたことを特徴とする研磨装置である。
【0023】
また、本発明は、上記発明による研磨装置において、前記上定盤は、その厚さ方向を2分するスリットが中心部を除く内面部から外周部に向かって設けられ、前記調整機構として、押込みボルトを該2分された上定盤上半部の中心部を除く内面部から外周部に向かっ
て複数個設けたことを特徴とする研磨装置である。
【0024】
また、本発明は、上記発明による研磨装置において、前記上定盤の下面の中凹状の深さが、上定盤の直径が40〜100cmの際に、中心部にて20〜40μmであることを特徴とする研磨装置である。
【0025】
また、本発明は、上記発明による研磨装置において、前記下定盤に、その上面を平坦にする調整機構を設けたことを特徴とする研磨装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上定盤に対向する下定盤への荷重の分布を上定盤の外周部のみとするために、上定盤を上定盤上層と上定盤下層で構成し、調整機構として押込みボルトを上定盤上層の中心部を除く内面部から外周部に向かって複数個設けたので、上定盤の外部のカラーフィルタ上に上方の研磨液の滴下ノズルから研磨液を滴下させて研磨を行っても、研磨量の制御が容易で、狙いの研磨量が得やすく、また、研磨量のバラツキも小さなものとすることができる、すなわち、安定した研磨をすることのできる研磨装置となる。
【0027】
また、本発明は、上定盤に対向する下定盤への荷重の分布を上定盤の外周部のみとするために、上定盤に厚さ方向を2分するスリットを中心部を除く内面部から外周部に向かって設け、調整機構として押込みボルトを該2分された上定盤上半部の中心部を除く内面部から外周部に向かって複数個設けたので、上定盤の外部のカラーフィルタ上に上方の研磨液の滴下ノズルから研磨液を滴下させて研磨を行っても、研磨量の制御が容易で、狙いの研磨量が得やすく、また、研磨量のバラツキも小さなものとすることができる、すなわち、安定した研磨をすることのできる研磨装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】液晶表示装置用カラーフィルタの画素の一例を拡大して示す平面図である。
【図2】図1に示すカラーフィルタの画素のX−X線における断面図である。
【図3】平盤研磨装置の一例の回転部分の断面図である。
【図4】平盤研磨装置の一例の回転部分の平面図である。
【図5】上部からの加圧により上定盤に作用する荷重の状態を説明する断面図である。
【図6】従来の上定盤に作用する荷重の状態を説明する断面図である。
【図7】経験則を説明する断面図である。
【図8】発明の研磨装置における上定盤の一例を示す断面図である。
【図9】発明の研磨装置における上定盤の一例、及び他の例を示す平面図である。
【図10】発明の研磨装置における上定盤の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明者は、カラーフィルタを貼り付けて水平に回転する下定盤と、研磨布をカラーフィ
ルタに対向させ下定盤上で水平に回転及び揺動する、下定盤より小さなサイズの円盤状の上定盤と、上定盤の外部のカラーフィルタ上に研磨液を滴下する滴下ノズルと、上定盤を下方へ加圧する加圧機構とを備えた研磨装置を用い、上定盤の外部に位置する、下定盤の上面に貼り付けたカラーフィルタ上に、上方の研磨液の滴下ノズルから研磨液を滴下させて研磨を行った際に、安定した研磨をするには、下面を中凹状にした上定盤を使用すると、つまり、上定盤の下定盤への荷重の分布を上定盤の外周部のみとすることによって達成されることを経験則から見出すことができた。
【0030】
図7は、この経験則を説明する断面図である。図7に示すように、円盤状の上定盤(63)の下面は、中凹状(50)となっている。この中凹状(50)は、外周部から中心部(q)に向かって深さが次第に深くなっている。
外部からの加圧(D)により、上定盤(63)に作用する荷重は、図7中、上定盤(63)の左端(外周部)の作用点(a1)の荷重(W3−1)と、右端(外周部)の作用点(an)の荷重(W3−n)となる。この間に作用点はなく、前記図6に示す、外周部以外の各作用点(a2〜a(n−1))での各荷重はないものとなる。
【0031】
これにより、従来、研磨量の制御が容易でなく、狙いの研磨量が得にくく、また、研磨量のバラツキも大きなものとなる。すなわち、安定した研磨量を得ることが困難であるといった問題は解決されることが見出された。
【0032】
また、具体的には、上定盤(63)の直径(φ1)が40〜100cm程度の際に、上定盤(63)の中心部(q)での中凹状(50)の深さ(d)は、20〜40μmであることによって、良好な結果が得られることを見出すことができた。
【0033】
しかし、上定盤(63)の下面を、深さ20〜40μmの中凹状(50)に安定して研削加工することは極めて困難であることが判明したため、上定盤(63)の下面を中凹状(50)に簡便に安定して整形する方策を精査し、本発明に到達した。
【0034】
図8及び図9は、上記発明の研磨装置における上定盤の一例を示す断面図及び平面図である。図9におけるX−X線での断面が図8に相当する。
図8及び図9に示すように、この一例に示す上定盤(33)は、上定盤上層(33a)と上定盤下層(33b)の2層で構成されている。上定盤(33)は、上定盤下層(33b)に上定盤上層(33a)を重ね合わせたものであるが、上定盤下層(33b)と上定盤上層(33a)は、その中心部(q)においてのみ図示せぬ拘止具によって一体的に固定されている。
【0035】
上定盤下層(33b)及び上定盤上層(33a)の表面仕上げは、20μm以下であることが好ましい。また、上定盤上層(33a)の材料として、例えば、剛性の高い材料を用い、上定盤下層(33b)の材料として、上定盤上層(33a)の材料より剛性の低い材料を用いると、押込みボルトによる押圧によって上定盤下層(33b)の下面を中凹状にし易くすることができる。また、上定盤下層(33b)と上定盤上層(33a)の厚さの比は適宜に設定される。
【0036】
上定盤(33)の下面を中凹状にする調整機構として、押込みボルト(31)が上定盤上層(33a)の中心部(q)を除く内面部(r)から中間部(s)を経て外周部(t)に向かって複数個設けられている。
図9に示すように、この一例では上定盤上層(33a)に押込みボルト(31)が同心円状に設けられている。
【0037】
図8中に示す矢印(K−r、K−s、K−t)は、押込みボルト(31)が上定盤下層
(33b)を押圧する押圧の方向と強さを表したものである。内面部(r)から外周部(t)に向かって押圧を次第に強くしている。
これにより、上定盤下層(33b)の下面は中凹状に整形される。この際の押圧の調整には、感圧紙、或いは圧力分布測定装置を用い、分布の状態を確認しながら行う。
【0038】
上記のように、本発明における上定盤(33)は、上定盤上層(33a)と上定盤下層(33b)で構成され、調整機構として、押込みボルト(31)を上定盤上層(33a)の中心部(q)を除く内面部(r)から外周部(t)に向かって複数個設けた構造であるので、簡便に安定して上定盤下層(33b)の下面を中凹状(50)に整形することができる。
【0039】
従って、本発明による研磨装置は、研磨量の制御が容易で、狙いの研磨量が得やすく、また、研磨量のバラツキも小さなものとすることができる。これは、1基の研磨装置で研磨されるカラーフィルタについてのみでなく、例えば、研磨装置を複数基用いた際にも、研磨量を揃えて安定した研磨を大量に行うことを可能とする。
【0040】
図10は、上記発明の研磨装置における上定盤の他の例を示す断面図である。この他の例の平面図は図9であるが、図9は上定盤の前記一例の平面図と兼ねている。図9におけるX−X線での断面が図10に相当する。
図10及び図9に示すように、この他の例に示す上定盤(43)には、その厚さ方向を2分するスリット(44)が中心部(q)を除く内面部(r)から外周部(t)に向かって設けられ、中心部以外を上定盤上半部(43a)と上定盤下半部(43b)に2分している。
【0041】
上定盤下半部(43b)の下面の表面仕上げは、20μm以下であることが好ましい。また、上定盤上半部(43a)の材料と、上定盤下半部(43b)の材料は同一材料であるので、押込みボルトによる押圧によって上定盤下半部(43b)の下面を中凹状にし易くするためには、上定盤下半部(43b)の厚さ(T2)を上定盤上半部(43a)の厚さ(T1)より薄くすることが好ましい。この上定盤上半部(43a)と上定盤下半部(43b)の厚さの比は適宜に設定する。
【0042】
上定盤(43)の下面を中凹状にする調整機構として、押込みボルト(41)が上定盤上半部(43a)の中心部(q)を除く内面部(r)から中間部(s)を経て外周部(t)に向かって複数個設けられている。
図9に示すように、この他の例では上定盤上半部(43a)に押込みボルト(41)が同心円状に設けられている。
【0043】
図10中に示す矢印(K2−r、K2−s、K2−t)は、押込みボルト(41)が上定盤下半部(43b)を押圧する押圧の方向と強さを表したものである。内面部(r)から外周部(t)に向かって押圧を次第に強くしている。
これにより、上定盤下半部(43b)の下面は中凹状に整形される。この際の押圧の調整には、感圧紙、或いは圧力分布測定装置を用い、分布の状態を確認しながら行う。
【0044】
上記のように、本発明における上定盤(43)は、中心部以外が上定盤上半部(43a)と上定盤下半部(43b)に2分され、調整機構として、押込みボルト(41)を上定盤上半部(43a)の中心部(q)を除く内面部(r)から外周部(t)に向かって複数個設けた構造であるので、簡便に安定して上定盤下半部(43b)の下面を中凹状(50)に整形することができる。
従って、本発明による研磨装置は、研磨量の制御が容易で、狙いの研磨量が得やすく、また、研磨量のバラツキも小さなものとすることができる。
【0045】
上記にては、上定盤の調整に調整機構を設けたが、下定盤の上面を平坦に調整するために、調整機構を下定盤に設けてもよい。調整機構を設けることにより、下定盤にては、その上面を中凹状、或いは中凸状にするのではなく、上面を平坦に保持するための調整に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・下定盤
2・・・下定盤を回転させる回転軸
3、13、63・・・上定盤
4・・・上定盤を回転させる回転軸
5・・・研磨布
6・・・カラーフィルタ
7・・・バッキング及びテンプレート
8・・・研磨液
9・・・研磨液の滴下ノズル
10・・・ガラス基板
21・・・ブラックマトリックス
22・・・着色画素
23・・・透明導電膜
31、41・・・押込みボルト
33、43・・・本発明における上定盤
33a、33b・・・上定盤上層、上定盤下層
43a、43b・・・上定盤上半部、上定盤下半部
50・・・中凹状
A・・・下定盤の回転
B・・・上定盤の回転
C・・・上定盤の円弧状の揺動
D・・・上部からの加圧
(W1−1)〜各荷重(W1−n)
a1〜an・・・各作用点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上面にカラーフィルタを貼り付けて水平に回転する下定盤と、
その下面に研磨布を貼り合わせ、該研磨布を上記カラーフィルタに対向させ下定盤上で水平に回転及び揺動する、下定盤より小さなサイズの円盤状の上定盤と、
上定盤の外部のカラーフィルタ上に上方より研磨液を滴下する研磨液の滴下ノズルと、
上定盤を下方へ加圧する加圧機構とを、少なくとも備えた研磨装置において、
前記上定盤に対向する下定盤への荷重の分布を上定盤の外周部のみとするために、上定盤の下面を中凹状にする調整機構を設けたことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記上定盤は、上定盤上層と上定盤下層で構成され、前記調整機構として、押込みボルトを上定盤上層の中心部を除く内面部から外周部に向かって複数個設けたことを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記上定盤は、その厚さ方向を2分するスリットが中心部を除く内面部から外周部に向かって設けられ、前記調整機構として、押込みボルトを該2分された上定盤上半部の中心部を除く内面部から外周部に向かって複数個設けたことを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項4】
前記上定盤の下面の中凹状の深さが、上定盤の直径が40〜100cmの際に、中心部にて20〜40μmであることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の研磨装置。
【請求項5】
前記下定盤に、その上面を平坦にする調整機構を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、又は4記載の研磨装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−240467(P2011−240467A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117059(P2010−117059)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】