説明

砥石製造方法、および砥石製造装置

【課題】所望の形状の砥石を形成する。
【解決手段】電極11と砥石13との間に所定の電圧を印加すると、転写形状部12の表面に瞬間的な放電によって密度の高いプラズマが発生する。そこで、転写形状部12に砥石13を接近させると、転写形状部12と砥石13との距離が近い部分ほど、プラズマによる砥石13の崩壊が生じやすいので、砥石13は転写形状部12の表面に沿う形状に成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工する砥石を新たに製造したり修正して再生させたりする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば研削砥石で研削加工を行う場合に、放電電極と砥石との間に、加圧ミストを供給しながら直流電圧をパルス的に印加して放電させ、プラズマ放電ツルーイングによって砥石を整形する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
より詳しくは、上記装置は、被加工物を加工するための導電性砥石と、該導電性砥石の加工面に近接可能な外周縁を有する円板状の放電電極と、該放電電極をその軸心を中心に回転駆動する電極回転装置と、電極の外周縁と砥石との相対位置を制御する位置制御装置と、砥石と電極間に所定の電圧をパルス的に印加する電圧印加装置と、砥石と電極間に加圧ミストを供給するミスト供給装置と、を備えて構成されている。そして、この装置では、回転する円板状の放電電極の外周縁と位置制御装置で位置制御された導電性砥石の加工面との間に電圧印加装置によりスパーク(プラズマ放電)を安定して発生させることにより、導電性砥石のメタルボンド部分を非接触で高能率かつ高精度に溶融除去し、砥石表面を所望の形状に修正することが図られている。また、放電電極は、電極回転装置により軸心を中心に回転し、プラズマ放電により消耗しても真円度を維持でき、長時間連続して使用できるようにすることが図られている。
【特許文献1】特開2000−246634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の装置では、砥石の外周面を平坦な円筒面状に成形することなどは比較的容易にできても、所望の形状に成形することは容易ではない。すなわち、砥石を所望の形状にするためには、放電電極の形状を所定の形状に成形する必要があるが、それでも砥石の微小な形状、例えば曲率半径が非常に小さな曲面を正確に成形することなどは容易にはできない。しかも、放電電極は放電により損耗するため、放電電極の正確な形状を維持することも困難である。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、所望の形状の砥石を容易に成形できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、
所定の電極と成形の砥石との間に所定の電圧を印加するとともに、
上記電極と上記砥石との間に配置され、成形する砥石の形状に対応する転写形状を有する絶縁体の転写形状部に上記砥石を接近させて、上記転写形状に対応する形状の砥石を製造することを特徴とする。
【0007】
上記転写形状部と上記砥石との間には、例えば空気よりも比重が大きいアルゴンガス等を流すようにしてもよい。
【0008】
これにより、転写形状部と砥石との間に密度の高いプラズマが発生する。そこで、砥石は転写形状部の表面に沿う形状に成形される。また、転写形状部と砥石との間にアルゴンガス等を流すと、より均一にプラズマが発生し、成形の効率をより高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の形状の砥石を容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
砥石製造装置は、図1に示すように、平板状の電極11と、電極11の上に密着して設けられた転写形状部12と、電源装置14とを備えている。
【0012】
転写形状部12は、例えばポリアセタール樹脂(ポリアセタールコポリマー)から成り、成形しようとする砥石13の形状に対応する転写形状に形成されている。ここで、転写形状部12は、ポリアセタール樹脂等を用いることによって、砥石13自体など比べて比較的容易に所望の形状に加工することができる。
【0013】
電源装置14は、電極11と砥石13との間に、所定のパルス電圧、または交流電圧などを印加するようになっている。
【0014】
帯電効果を得るためには、停止させることが望ましい。
【0015】
砥石13としては、例えば鉄系材料中にダイヤモンド砥粒が埋め込まれた導電性のメタルボンド砥石が用いられる。
【0016】
上記のような砥石製造装置において、電極11と砥石13との間に所定の電圧を印加すると、転写形状部12の表面に瞬間的な放電によって密度の高いプラズマが発生する。そこで、転写形状部12に砥石13を接近させると、転写形状部12と砥石13との距離が近い部分ほど、プラズマによる砥石13の崩壊が生じやすいので、砥石13は転写形状部12の表面に沿う形状に成形される。すなわち、転写形状部12の表面における微細な形状を転写させて、所望の形状の砥石を容易に形成することができる。特に、微小な曲率半径を有する凸部や凹部、角部や隅部を有する形状を形成することなども容易にできる。
【0017】
なお、上記のような砥石13の成形を空気中で行う場合、例えば図2に示すように、転写形状部12の周辺部にガス供給部21とガス回収部22とを設け、アルゴンガス等を転写形状部12の表面に這わせるようにしてもよい。すなわち、同図のように砥石13を転写形状部12の上方から接近させる場合には、空気よりも比重の大きいアルゴンガスは、転写形状部12と砥石13との間を転写形状部12の表面に沿って移動する。そこで、均一なプラズマが生成されやすくなるので、成形の効率をより高めることができる。
【0018】
また、砥石13を転写形状部12に静的に接近させるのに限らず、回転させながら接近させて、転写形状部12の表面形状に応じた断面形状を有する回転体形状の砥石13を形成するなどしてもよい。
【0019】
また、上記のような砥石製造装置および砥石製造方法は、砥石を新規に製造する場合に限らず、ワークの加工によって摩耗した砥石を成形、修正して再生する場合などに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明にかかる砥石製造方法、および砥石製造装置は、ワークを加工する砥石の新たな製造や修正等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る砥石製造装置の要部の構成を示す模式図である。
【図2】変形例の砥石製造装置の要部の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0022】
11 電極
12 転写形状部
13 砥石
14 電源装置
21 ガス供給部
22 ガス回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電極と成形対象の砥石との間に所定の電圧を印加するとともに、
上記電極と上記砥石との間に配置され、成形する砥石の形状に対応する転写形状を有する絶縁体の転写形状部に上記砥石を接近させて、上記転写形状に対応する形状の砥石を製造することを特徴とする砥石製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の砥石製造方法であって、
さらに、上記転写形状部と上記砥石との間に、所定のガスを流すことを特徴とする砥石製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の砥石製造方法であって、
上記砥石は上記転写形状部の上方から上記転写形状部に接近させられるとともに、
上記所定のガスは、空気よりも比重が大きいことを特徴とする砥石製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の砥石製造方法であって、
上記所定のガスは、アルゴンガスであることを特徴とする砥石製造方法。
【請求項5】
電極と、
上記電極と成形対象の砥石との間に配置され、成形する砥石の形状に対応する転写形状を有する絶縁体の転写形状部と、
上記電極と上記砥石との間に所定の電圧を印加する電源装置とを備え、
上記電極と上記砥石との間に上記電源装置による電圧が印加された状態で、上記転写形状部に上記砥石が接近させられるように構成されたことを特徴とする砥石製造装置。
【請求項6】
請求項5記載の砥石製造装置であって、
上記転写形状部と上記砥石との間に、所定のガスを流すように構成されたことを特徴とする砥石製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−274144(P2009−274144A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124888(P2008−124888)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】