説明

破砕用具吊り索体の連結具及びそれを使用した構造体破砕方法

【課題】構造体の破砕対象部に対する破砕刃の刃渡り向きを容易に調整できるようにし、且つ効率よく構造体の破砕作業を行うことができるようにするための破砕用具吊り索体の連結具及びそれを使用した構造体破砕方法の提供。
【解決手段】破砕用具吊り索体の連結具12は、クレーン装置のジブより並列に垂下される一対の上側吊り索体13,13が取り付けられる上側取付部20と、破砕用具1を吊り持ち支持する一対の下側吊り索体11,11が取り付けられる下側取付部21とを備え、下側取付部21に、下側吊り索体11,11の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部24,25が、下側吊り索体11,11間方向が互いに異なるように形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底岩盤や水中に設置されたケーソン等の構造体を破砕するための破砕用具をクレーン装置に吊り持ち支持させる際に使用する破砕用具吊り索体の連結具及びそれを使用した構造体破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水底岩盤や水中に設置されたケーソン等の構造体を破砕するには、下端に破砕刃を備えた砕岩棒と呼ばれる破砕用具を使用し、この破砕用具をクレーン船に搭載されたクレーン装置により一定の高さ位置まで吊り上げ、その位置から構造体の破砕対象部に砕岩棒を自由落下させて破砕刃を衝突させ、その落下衝撃により破砕対象部を破砕するようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような砕岩棒等の破砕用具1は、図10に示すように、その上端部がクレーン装置2のジブ2aより互いに間隔を置いて並列に垂下されるワイヤーロープからなる複数の吊り索3a,3aの下端部に取り付けられ、この吊り索3a,3aに吊り持ち支持されるようになっている。
【0004】
この破砕用具1が取り付けられる吊り索3a,3aは、クレーン船4に設置されたウインチ5により繰り出し・巻き取り動作がなされるようになっており、砕岩棒等の破砕用具1は、ウインチ5により吊り索3a,3aを巻き取ることにより吊り上げられ、その吊り上げた状態からウインチ5のブレーキ(クラッチ)を解除することにより砕岩棒等の破砕用具1が自重により自由落下し、それに伴い吊り索3a,3aがウインチ5より繰り出されるようになっている。
【0005】
また、砕岩棒等の破砕用具1を全く制動せずに自由落下させると、慣性力により破砕用具1が破砕対象部に衝突した後もウインチ5のドラムが回転し続けてウインチ5から過剰に吊り索3a,3aが繰り出されるので、それを防止するために破砕用具1が破砕対象部に衝突した直後にクラッチを繋いでブレーキをかけるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭64−621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、破砕対象部が斜面の場合、破砕用具の刃渡り向きが斜面と水平面との交線方向に向けられていると、破砕刃全体が同時に破砕対象部に衝突して衝撃荷重が分散されてしまうため、破砕刃が破砕対象部に食い込まず、破砕用具が斜面に誘導されて滑動してしまうおそれがあった。
【0008】
また、上述したように破砕用具が破砕対象部に衝突した直後には、ウインチのブレーキを作動させるため、破砕用具が斜面を滑動するとその衝撃により吊り索やウインチ等に余計な負荷が作用し、不具合が生じるおそれがあった。
【0009】
一方、破砕対象部に対する破砕用具の刃渡り向きは、一対の吊り索により吊り上げられ、その状態で自由落下させることから吊り索間方向に依存し、クレーン装置のジブの向きに対して所定の向きに固定される。
【0010】
そのため、構造体の破砕対象部に対する砕岩棒等の破砕用具の刃渡り向きを調整するには、クレーン装置の旋回動作やクレーン船の移動等を伴わなければならず作業効率が著しく低下するおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、構造体の破砕対象部に対する破砕刃の刃渡り向きを容易に調整できるようにし、且つ効率よく構造体の破砕作業を行うことができるようにするための破砕用具吊り索体の連結具及びそれを使用した構造体破砕方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、クレーン装置のジブより互いに間隔を置いて並列に垂下される一対の上側吊り索体の下端部が互いに間隔をおいて取り付けられる上側取付部と、下端に破砕刃を備えた破砕用具を吊り持ち支持する一対の下側吊り索体の上端部が互いに間隔をおいて取り付けられる下側取付部とを有し、該下側取付部には、前記両下側吊り索体の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、下側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付けることにより、上側吊り索体間方向に対する前記破砕刃の刃渡り向きを適宜選択できるようにした破砕用具吊り索体の連結具にある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記上側取付部には、前記両上側吊り索体の下端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、上側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両上側吊り索体の下端部を取り付けるようにしてなることにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記各切替用取付部は、前記前記上側吊り索体の下端部又は下側吊り索体の上端部が取り付けられる一対の取付体が互いに間隔をおいて配置されてなる取付用板材をもって構成され、該各取付用板材が互いに交差する方向に向けて配置されてなることにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記上側吊り索体及び/又は下側吊り索体には、連結具側に向けた二股状に一対の吊り索を有し、前記各切替用取付部には、前記各吊り索の連結具側端部が取り付けられる互いに隣り合う一対の取付体からなる一対の取付体ユニットが該取付体間方向と直交する方向に間隔を置いた平行配置に形成されてなることにある。
【0016】
請求項5に記載の発明の特徴は、クレーン装置のジブより互いに間隔を置いて並列に垂下される一対の上側吊り索体の下端部が互いに間隔をおいて取り付けられる上側取付部と、下端に破砕刃を備えた破砕用具を吊り持ち支持する一対の下側吊り索体の上端部が互いに間隔をおいて取り付けられる下側取付部とを有し、該下側取付部には、前記両下側吊り索体の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、下側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成されてなる破砕用具吊り索体の連結具を使用し、前記破砕刃の刃渡り向きが破砕対象部に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けられるように前記各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付け、その状態で前記クレーン装置にて前記破砕用具を所定の高さ位置まで吊り上げ、然る後、該破砕用具を落下させて前記破砕対象部を破砕する破砕用具吊り索体の連結具を使用した構造体破砕方法にある。
【0017】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項5の構成に加え、前記上側取付部には、前記両上側吊り索体の下端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、上側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両上側吊り索体の下端部を取り付けるとともに、前記下側取付部には、前記破砕刃の刃渡り向きが破砕対象部に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けられるように前記各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付けることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る破砕用具吊り索体の連結具は、上述したように、クレーン装置のジブより互いに間隔を置いて並列に垂下される一対の上側吊り索体の下端部が互いに間隔をおいて取り付けられる上側取付部と、下端に破砕刃を備えた破砕用具を吊り持ち支持する一対の下側吊り索体の上端部が互いに間隔をおいて取り付けられる下側取付部とを有し、該下側取付部には、前記両下側吊り索体の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、下側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付けることにより、上側吊り索体間方向に対する前記破砕刃の刃渡り向きを適宜選択できるようにしたことにより、クレーン装置の旋回動作やクレーン船の移動等を伴わずに破砕刃の刃渡り向きを容易に切り替えることができる。
【0019】
また、本発明において、前記上側取付部には、前記両上側吊り索体の下端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、上側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両上側吊り索体の下端部を取り付けるようにしてなることにより、上側吊り索体と下側吊り索体の取付け方向の組み合わせによってクレーン装置の旋回動作やクレーン船の移動等を伴わずに破砕刃の刃渡り向きを容易に切り替えることができる。
【0020】
さらに本発明において、前記各切替用取付部は、前記前記上側吊り索体の下端部又は下側吊り索体の上端部が取り付けられる一対の取付体が互いに間隔をおいて配置されてなる取付用板材をもって構成され、該各取付用板材が互いに交差する方向に向けて配置されてなることにより、簡易な構造で破砕用具を好適に吊り持ち支持させることができる。
【0021】
更にまた、本発明において、前記上側吊り索体及び/又は下側吊り索体には、連結具側に向けた二股状に一対の吊り索を有し、前記各切替用取付部には、前記各吊り索の連結具側端部が取り付けられる互いに隣り合う一対の取付体からなる一対の取付体ユニットが該取付体間方向と直交する方向に間隔を置いた平行配置に形成されてなることにより、連結具を介して上側吊り索体と下側吊り索体とを安定した状態で連結することができる。
【0022】
本発明に係る破砕用具吊り索体の連結具を使用した構造体破砕方法は、上述したように、クレーン装置のジブより互いに間隔を置いて並列に垂下される一対の上側吊り索体の下端部が互いに間隔をおいて取り付けられる上側取付部と、下端に破砕刃を備えた破砕用具を吊り持ち支持する一対の下側吊り索体の上端部が互いに間隔をおいて取り付けられる下側取付部とを有し、該下側取付部には、前記両下側吊り索体の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、下側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成されてなる破砕用具吊り索体の連結具を使用し、前記破砕刃の刃渡り向きが破砕対象部に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けられるように前記各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付け、その状態で前記クレーン装置にて前記破砕用具を所定の高さ位置まで吊り上げ、然る後、該破砕用具を落下させて前記破砕対象部を破砕することにより、破砕刃のエッジ部分がまず破砕対象部に衝突するので当該エッジ部分に衝突荷重が集中して作用し、確実に破砕刃が破砕対象部に食い込み、破砕対象部を好適に破砕することができ、また、破砕用具が斜面を滑動することがなくワイヤーロープ等の吊り持ち材やウインチに余計な負担が掛からず安全に作業することができる。
【0023】
前記上側取付部には、前記両上側吊り索体の下端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、上側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両上側吊り索体の下端部を取り付けるとともに、前記下側取付部には、前記破砕刃の刃渡り向きが破砕対象部に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けられるように前記各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付けることにより、上側吊り索体と下側吊り索体の取付け方向の組み合わせによってクレーン装置の旋回動作やクレーン船の移動等を伴わずに破砕刃の刃渡り向きを容易に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る破砕用具吊り索体の連結具を使用した破砕装置の一例を示す側面図である。
【図2】同上の正面図である。
【図3】(a)は図1中の破砕用具の一例を示す正面図、(b)は同側面図である。
【図4】(a)は図1中の破砕用具吊り索体の連結具の一例を示す側面図、(b)は同正面図、(c)は同底面図である。
【図5】(a)は本発明に係る連結具の他の実施例を示す正面図、(b)は同平面図、(c)は同底面図である。
【図6】同上の破砕用具吊り索体の連結具の使用状態の一例の概略を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る構造体破砕方法における破砕工程の状態を示す図であって、ジブの長さ方向水平面成分と構造体斜面の傾き方向水平面成分とが一致している場合を示す側面図である。
【図8】同上のジブの長さ方向水平面成分と構造体斜面と水平面との交線方向とが一致している場合を示す側面図である。
【図9】本発明方法における破砕対象部に破砕用具が衝突する際の状態を示す正面図である。
【図10】従来の破砕用具を使用した破砕装置の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る破砕用具吊り索体の連結具の実施の態様を図1〜図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、上述の従来例と同様の構成には同一符号を付して説明し、図中符号1は砕岩棒等の破砕用具、符号2はクレーン船4に搭載されたクレーン装置、符号5はクレーン船4に搭載されたウインチである。
【0026】
破砕用具1は、図3に示すように、低マンガン鋼鋳鋼品等の衝撃に強い鋳鋼品をもって鋳造され、棒幅方向に比して厚み方向が薄い偏平棒状の鏨型に形成されている。
【0027】
この破砕用具1は、下端に破砕刃10を備え、破砕刃10は、頂部を下に向けた断面三角形状が棒幅方向に連続した形状に形成され、刃渡り向きが棒幅方向に向けられている。
【0028】
また、この破砕用具1は、ワイヤーロープからなる一対の下側吊り索体11,11により吊り持ち支持され、この両下側吊り索体11,11の上端を本発明に係る破砕用具吊り索体の連結具(以下、連結具という)12を介してクレーン装置2のジブ2a先端部より垂下された一対の上側吊り索体13,13の下端に連結し、この両上側吊り索体13,13をウインチ5により巻き取り動作することによりクレーン装置2により吊り上げられ、ウインチ5のブレーキ(クラッチ)を解除することにより自重により自由落下し、それに伴い両上側吊り索体13,13がウインチ5より繰り出されるようになっている。
【0029】
下側吊り索体11,11は、一本のワイヤーロープを破砕用具1の上端部に形成された吊り用巻き掛け部14に巻き掛けることにより、破砕刃10の刃渡り方向に間隔を置いて並列に配置され、両下側吊り索体11,11の上端部を連結具12に取り付けることにより、両下側吊り索体11,11を介して破砕用具1が吊り持ち支持されるようになっている。
【0030】
よって、破砕刃10の刃渡り向きは、下側吊り索体11,11間方向に依存し、連結具12に取り付けられた際の下側吊り索体11,11間方向に向けられるようになっている。
【0031】
一方、上側吊り索体13,13は、クレーン船4に搭載された各ウインチ5,5より繰り出されたワイヤーロープからなり、各上側吊り索体13,13がジブ2a先端に備えられたシーブ(滑車)15を介してジブ2aの先端部より垂下され、両上側吊り索体13,13の下端部がそれぞれ連結具12に取り付けられている。
【0032】
シーブ15,15は、図2に示すように、ジブ2a幅方向に間隔を置いて配置され、両上側吊り索体13,13は、互いにジブ2a幅方向に間隔を置いた並列配置に垂下されるようになっている。
【0033】
連結具12は、図4に示すように、両上側吊り索体13,13の下端部が互いに水平方向に間隔をおいて取り付けられる上側取付部20と、両下側吊り索体11,11の上端部が互いに水平方向に間隔をおいて取り付けられる下側取付部21とを備え、上側取付部20と下側取付部21とが円盤状の基板部22を介して一体に設けられている。
【0034】
上側取付部20は、基板部22の上面中央より鉛直方向に立ち上げた半円板状に形成され、上側吊り索体13,13間方向を半円板の水平直径方向に向けて上側吊り持ち索13,13が取り付けられるようになっている。
【0035】
この上側取付部20には、水平方向に間隔をおいて板厚方向に貫通した一対の取付孔23,23を設けることにより、図示しないシャックル等の取付部材を介して各上側吊り索体13,13の下端部が取り付けられる取付体が互いに基板部直径方向に間隔を置いて形成されている。
【0036】
下側取付部21には、両下側吊り索体11,11の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部24,25が、下側吊り索体11,11間方向が互いに異なる方向に向くように形成されている。
【0037】
各切替用取付部24,25は、それぞれ基板部22の下面より鉛直方向に立ち上げた半円板状の取付用板材をもって構成され、一方の切替用取付部24を上側取付部20と同じ方向に向け、他方の切替用取付部25を一方の切替用取付部24と直交する方向に向け、両切替用取付部24,25が下面視十字状をなすように配置されている。
【0038】
各切替用取付部24,25を構成する取付用板材には、水平方向に間隔を置いて板厚方向に貫通した一対の取付孔26,26を設けることにより図示しないシャックル等の取付部材を介して各下側吊り索体11,11の上端部が取り付けられる一対の取付体24a,24b、25a,25bが基板部直径方向に間隔をおいて形成され、切替用取付部24,25の内一を適宜選択して両下側吊り索体11,11を取り付けることにより、上側吊り索体13,13間方向に対する下側吊り索体11,11間方向を基板部22の中心軸周りに90度切り替えることができるようになっている。
【0039】
従って、破砕用具1の破砕刃10の刃渡り向きが下側吊り索体11,11間方向に依存するので、両下側吊り索体11,11を何れの切替用取付部24,25に取り付けるかにより上側吊り索体13,13間方向に対する破砕刃10の刃渡り向きを適宜選択することができるようになっている。
【0040】
尚、上述の実施例では、下側取付部21に互いに直交する配置の二つの切替用取付部24,25を形成した例について説明したが、基板部22中心軸周りの所定の角度毎に基板部22直径方向に向けた3以上の複数の切替用取付部を備えたものであってもよい。
【0041】
また、この連結具12は、上下を逆にして使用することもでき、両下側吊り索体11,11の上端部を上側取付部20に互いに間隔を置いて取付け、両上側吊り索体13,13の下端部を切替用取付部24,25の一を適宜選択して下側取付部21に取り付けるようにしてもよい。
【0042】
更に、上述の実施例では各切替用取付部24,25を一枚の半円板状に形成した例について説明したが矩形板状等のその他の板状であってもよく、基板部22中心を介して互いに対向配置に基板部22外縁部に固定された一対のC形アイプレート状又はアイボルト状の取付体をもって構成されたものであってもよい。
【0043】
更には、上述の実施例では、下側取付部21のみに切替用取付部24,25が形成された例について説明したが、図5に示す連結具40のように、下側取付部41に上述の実施例と同様に切替用取付部24,25が形成されるとともに、上側取付部43にも複数の切替用取付部46,47が上側吊り索体13,13間方向が互いに異なる方向に向くように形成されたものであってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0044】
各切替用取付部46,47は、基板部22の上面より鉛直方向に立ち上げた基板部直径方向に長い細長板状に形成された同形状の一対の取付用板材をもって構成され、両切替用取付部46,47が互いに直交する方向に向けられ、上面視十字状に配置されている。
【0045】
各切替用取付部46,47を構成する取付用板材には、水平方向に間隔を置いて板厚方向に貫通した一対の取付孔48,48を設けることにより図示しないシャックル等の取付部材を介して各上側吊り索体13,13の上端部が取り付けられる一対の取付体46a,46b、47a,47bがそれぞれ基板部直径方向に間隔をおいて形成され、切替用取付部46,47の内一を適宜選択して両上側吊り索体13,13を取り付けることにより、上側吊り索体13,13間方向を基板部22の中心軸周りに90度切り替えることができるようになっている。
【0046】
従って、この連結具40を使用すれば、上側吊り索体13,13と下側吊り索体11,11の取付け方向の組み合わせによってクレーン装置2の旋回動作やクレーン船の移動等を伴わずに破砕刃10の刃渡り向きを容易に切り替えることができる。
【0047】
また、この連結具40を使用すれば、図6に示すように、連結具側に向けて二股状を成す一対の吊り索を有する上側吊り索体13,13や下側吊り索体11,11を使用して破砕用具1を破砕刃10の刃渡り方向を上側吊り索体13,13間方向に対して適宜選択可能な状態で吊り持ち支持することができる。
【0048】
両下側吊り索体11,11は、ワイヤーロープ等をもって構成され、この2本のワイヤーロープを破砕用具1の上端部に形成された吊り用巻き掛け部14に巻き掛けることにより、破砕刃10の刃渡り方向に間隔を置いて一対の吊り索11a,11aが配置されるようになっている。
【0049】
そして、両吊り索11a,11aの上端部を互いに間隔を置いて連結具40の下側取付部41に取り付けることにより、両下側吊り索体11,11を介して破砕用具1が吊り持ち支持されるようになっている。
【0050】
一方、各上側吊り索体13は、ウインチ5より繰り出された吊り索体本体13aの下端にコッター等の連結部材42を介して一対の吊り索13b,13bの上端が連結され、両吊り索13b,13bの下端がそれぞれ連結具40の上側取付部43にワイヤーソケット等の取付部材44を介して取り付けられるようになっている。
【0051】
尚、連結具40の下側取付部41には、図5(c)に示すように、互いに隣り合う一対の取付体24a,25bの組み合わせからなる取付体ユニットと、互いに隣り合う一対の取付体25a,24bの組み合わせからなる取付体ユニットとが取付体24a,25b間方向と直交する方向に間隔を置いた平行配置に形成されるとともに、互いに隣り合う一対の取付体24a,25aの組み合わせからなる取付体ユニットと、互いに隣り合う一対の取付体24b,25bの組み合わせからなる取付体ユニットとが取付体24a,25a間方向と直交する方向に間隔を置いた平行配置に形成され、これにより、下側取付部41には、両下側吊り索体11,11の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な2種類の切替用取付部が、下側吊り索体11,11間方向が互いに異なる方向、即ち直交する方向に向けられて形成されている。
【0052】
よって、この直交する2種類の切替用取付部の内、何れか一方を適宜選択して両下側吊り索体11,11を構成する吊り索11a,11aを取り付けることにより下側吊り索体11,11間方向を基板部22の中心軸周りに90度切り替えることができるようになっている。
【0053】
次に、上述の如き破砕用具吊り索体の連結具を使用した構造体破砕方法について図7〜図9に示す実施例に基づいて説明する。尚、上述の従来例及び実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。ここで、斜面の傾き方向水平面成分とは、斜面の傾き方向を水平面上に投影してできた線の方向であって、斜面と水平面との交線と水平面上で直交する方向をいう。
【0054】
構造体30は、例えば水中に設置されたケーソンであって、倒壊して破砕対象部31である上部工が傾いて斜面を形成している。
【0055】
この構造体30の破砕対象部31である傾斜したケーソンの上部工を破砕するには、まず、クレーン船4を所望の位置まで移動させるとともに、ジブ2a先端部が破砕対象部31上の所定高さ位置に来るようにクレーン装置2を動作させる。
【0056】
このとき、砕岩棒等の破砕用具1は、破砕用具1を吊り持ち支持させた両下側吊り索体11,11とクレーン装置2のジブ2aより繰り出された両上側吊り索体13,13とを連結具12により連結させた状態でクレーン船4上に載置されている。
【0057】
次に、その位置においてクレーン船4と斜面との位置関係を目視又は測量により確認、即ち、上側吊り索体13,13間方向と斜面の方向との関係を確認する。
【0058】
クレーン船4と斜面との位置関係が確認されたら、吊り上げた際に破砕刃10の刃渡り向きが破砕対象部31に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けられるように各切替用取付部24,25の何れか一を選択して両下側吊り索体11,11の上端部を取り付ける。
【0059】
例えば、図7に示すように、ジブ2aの長さ方向水平面成分と構造体斜面の傾き方向水平面成分との向きが一致している場合には、上側取付部20に取り付けられた上側吊り索体13,13間方向がジブ2a幅方向に向けられているので、ジブ2a幅方向と直交する方向に向けられた切替用取付部24を選択し、この切替用取付部24に各下側吊り索体11,11の上端部をシャックル等の取付け具を介して取り付ける。
【0060】
一方、図8に示すように、ジブ2aの長さ方向水平面成分と斜面と水平面との交線方向との向きが一致している場合には、上側取付部20に取り付けられた上側吊り索体13,13間方向がジブ2a幅方向に向けられているので、ジブ2a幅方向と同じ方向に向けられた切替用取付部25を選択し、この切替用取付部25に各下側吊り索体11,11の上端部をシャックル等の取付け具を介して取り付ける。
【0061】
そして、その状態で、ウインチ5,5を動作させて上側吊り索体13,13を巻き取り、砕岩棒等の破砕用具1を所定の高さ位置まで吊り上げると、破砕刃10の刃渡り向きが下側吊り索体11,11間方向に依存するので、破砕刃10の刃渡り向きを破砕対象部31に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けた状態で破砕用具1が吊り上げられる。
【0062】
次に、破砕用具1を所定の高さ位置まで吊り上げた後、ウインチ5のブレーキ(クラッチ)を解除し、破砕用具1をその自重により自由落下させる。
【0063】
このとき、破砕用具1は、破砕刃10の刃渡り向きを破砕対象部31に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けているので、図9に示すように、まず、破砕刃10のエッジ部分10aが破砕対象部31に衝突する。そのため、破砕用具1の落下衝撃荷重がエッジ部分10aに集中して作用し、確実に破砕対象部31に食い込み、この食い込みを切っ掛けに破砕刃10全体が破砕対象部31に食い込むことで破砕対象部31が確実に破砕されるようになっている。
【0064】
また、破砕刃10が確実に破砕対象部31に食い込むので、破砕用具1が斜面31に誘導されて滑動することがなく、ウインチ5から過剰に吊り持ち材3が繰り出されるのを防止するために破砕用具1が破砕対象部31に衝突した直後にクラッチを繋いでブレーキをかけても、上下両吊り索体11,13やウインチ5等に余計な負荷が作用せず、安全に作業を行うことができる。
【0065】
そして、破砕用具1を再度所定の高さ位置まで吊り上げ、その状態から自由落下させることを繰り返し、破砕対象部31を破砕する。
【0066】
尚、上述の実施例では、構造体30の一例として水中で倒壊したケーソンについて説明したが、構造体30は水底岩盤や捨石マウンド等であってもよく、また、陸上の構造体30であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 破砕用具
2 クレーン装置
2a ジブ
4 クレーン船
5 ウインチ
10 破砕刃
10a エッジ部分
11a 下側吊り索体
12 連結具
13a 上側吊り索体
14 吊り用巻き掛け部
15 シーブ
20 上側取付部
21 下側取付部
22 基板部
23 取付孔
24,25 切替用取付部
26 取付孔
30 構造体(ケーソン)
31 破砕対象部(上部工)
40 連結具
41 下側取付部
42 連結部材
43 上側取付部
44 取付部材
46,47 切替用取付部
48 取付孔
49 取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン装置のジブより互いに間隔を置いて並列に垂下される一対の上側吊り索体の下端部が互いに間隔をおいて取り付けられる上側取付部と、下端に破砕刃を備えた破砕用具を吊り持ち支持する一対の下側吊り索体の上端部が互いに間隔をおいて取り付けられる下側取付部とを有し、
該下側取付部には、前記両下側吊り索体の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、下側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、
該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付けることにより、上側吊り索体間方向に対する前記破砕刃の刃渡り向きを適宜選択できるようにしたことを特徴としてなる破砕用具吊り索体の連結具。
【請求項2】
前記上側取付部には、前記両上側吊り索体の下端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、上側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両上側吊り索体の下端部を取り付けるようにしてなる請求項1に記載の破砕用具吊り索体の連結具。
【請求項3】
前記各切替用取付部は、前記前記上側吊り索体の下端部又は下側吊り索体の上端部が取り付けられる一対の取付体が互いに間隔をおいて配置されてなる取付用板材をもって構成され、該各取付用板材が互いに交差する方向に向けて配置されてなる請求項1又は2に記載の破砕用具吊り索体の連結具。
【請求項4】
前記上側吊り索体及び/又は下側吊り索体には、連結具側に向けた二股状に一対の吊り索を有し、
前記各切替用取付部には、前記各吊り索の連結具側端部が取り付けられる互いに隣り合う一対の取付体からなる一対の取付体ユニットが該取付体間方向と直交する方向に間隔を置いた平行配置に形成されてなる請求項1又は2に記載の破砕用具吊り索体の連結具。

【請求項5】
クレーン装置のジブより互いに間隔を置いて並列に垂下される一対の上側吊り索体の下端部が互いに間隔をおいて取り付けられる上側取付部と、下端に破砕刃を備えた破砕用具を吊り持ち支持する一対の下側吊り索体の上端部が互いに間隔をおいて取り付けられる下側取付部とを有し、該下側取付部には、前記両下側吊り索体の上端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、下側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成されてなる破砕用具吊り索体の連結具を使用し、
前記破砕刃の刃渡り向きが破砕対象部に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けられるように前記各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付け、その状態で前記クレーン装置にて前記破砕用具を所定の高さ位置まで吊り上げ、然る後、該破砕用具を落下させて前記破砕対象部を破砕することを特徴としてなる破砕用具吊り索体の連結具を使用した構造体破砕方法。
【請求項6】
前記上側取付部には、前記両上側吊り索体の下端部が互いに間隔を置いて取り付け可能な複数の切替用取付部が、上側吊り索体間方向が互いに異なる方向に向くように形成され、該各切替用取付部の何れか一を選択して前記両上側吊り索体の下端部を取り付けるとともに、前記下側取付部には、前記破砕刃の刃渡り向きが破砕対象部に形成された斜面の傾き方向水平面成分に向けられるように前記各切替用取付部の何れか一を選択して前記両下側吊り索体の上端部を取り付ける請求項1に記載の破砕用具吊り索体の連結具を使用した構造体破砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−107501(P2012−107501A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−13986(P2012−13986)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(596023393)大新土木株式会社 (1)
【Fターム(参考)】