説明

硬化剤および接着性硬化性組成物

【課題】 作業性がよく、かつ、長期間にわたって高い接着性を有し、強度、耐熱性、耐光性、光学的透明性を有する硬化物を与えうる硬化剤、さらに、この硬化剤を用いた硬化性組成物、およびそれを硬化させてなる硬化物を提供すること。
【解決手段】 (α1)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物と(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物との反応物であって、23℃における粘度が1000Pa・s以下である、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する硬化剤、その硬化剤を含有した硬化性組成物、およびその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業性に優れ、かつ、その硬化物が高い接着性を有する硬化剤、それを用いた硬化性組成物、およびその硬化性組成物を硬化させてなる硬化物に関するものであり、更に詳しくは、接着性、強度、耐候性、光学的透明性を有する硬化物を与えうる硬化剤および硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、製品寿命を延ばすことで環境に対する負荷を低減させるために、部材に対する長期信頼性が要求されるようになっている。特に、電気電子部品や車載部品等を封止するにあたって、光や熱といった外部環境に対する信頼性での要求が強まっている。
【0003】
環境劣化に対する耐性のある組成物として、炭素−炭素二重結合を含有する化合物と、SiH基を含有する化合物と、ヒドロシリル化触媒とからなる硬化性組成物が提案されている。例えば、特許文献1のように、エポキシ基を有するイソシアヌル酸エステルをシリコーン樹脂に添加することで接着力を改善する硬化性組成物が挙げられているが、樹脂のみでの接着強度や樹脂の強靭性が十分ではない。また、硬度や透明性に関する記述が無かった。また、特許文献2では光学的透明性、強靭性を有する硬化性組成物が挙げられているが、基材との長期間の接着性に関する記述は無かった。
【0004】
硬化物の接着性を改善する一手法として、硬化物に極性基を導入する方法が挙げられる。しかし、一般に極性基を有する化合物を導入すると、粘度が高くなる、あるいは固体になってしまうため、取扱い性、加工性の面で十分ではないなど問題がある。また、導入する極性基を有する化合物を選ばないと十分な接着力が得られなかったり、透明な硬化物を得られなかったりした。
【特許文献1】特開2006−137797号公報
【特許文献2】特開2004−292779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業性がよく、かつ、高い接着性を有する硬化物を与えうる硬化剤、さらに、この硬化剤を用いた硬化性組成物、およびそれを硬化させてなる硬化物に関するものであり、更に詳しくは、長期間にわたる良好な接着性を実現できる、優れた接着性を有するとともに、強度、耐熱性、耐光性、光学的透明性を有する硬化物を与えうる硬化剤とそれを用いた硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のSiH基含有ケイ素化合物と、特定のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物との反応物を硬化剤として用いることによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記成分の反応物であって、23℃における粘度が1000Pa・s以下である、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する硬化剤に関する:
(α1)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物(以下、「(α1)成分」と称することがある。)、および
(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(以下、「(α2)成分」と称することがある。)。
【0008】
上記(α2)成分の複素環骨格はイソシアヌレートであることが好ましく、また、上記(α2)成分の極性基の少なくとも1つがエポキシ基であることが好ましい。
【0009】
上記(α1)成分は環状ポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0010】
上記(α1)成分と前記(α2)成分の混合比は、(α1に含まれるSiH基モル数)/(α2に含まれるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合基モル数)が3以上であることが好ましい。
【0011】
上記(α2)成分がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートであることが好ましい。
【0012】
上記(α1)成分が1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンであることが好ましい。
【0013】
本発明の接着性硬化性組成物は、(A)上記硬化剤、(B)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、および(C)ヒドロシリル化触媒を必須成分とする。
【0014】
上記接着性硬化性組成物は、さらに、(D)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するケイ素化合物や(E)接着性付与剤を含んでも良い。
【0015】
上記接着性硬化性組成物の3mm厚みの硬化物は、波長400nmの透過率が60%以上であることが好ましい。
【0016】
上記接着性硬化性組成物の硬化物は、メタルハライドランプによる1平方メートルあたり50MJ照射後において、3mm厚みの硬化物の400nmにおける透過率が45%以上であり、かつ、硬化物の接着力が、前記照射前における硬化物の接着力に比べて70%以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の硬化物は、上記硬化性組成物を硬化してなる。
【0018】
本発明の上記接着性硬化性組成物はコーティング材や光学用材料に適用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硬化剤は、作業性が良く、かつ、その硬化物が高い接着性を有する。そのため、本発明の硬化剤を用いた硬化性組成物、およびそれを硬化させてなる硬化物は、環境試験後の接着性が良好であり、かつ、強度に優れており、耐候性、光学的透明性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するにあたって好ましい形態について説明する。
【0021】
(硬化剤)
本発明の硬化剤について説明する。
【0022】
本発明の硬化剤は、(α1)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物と、(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物との反応物であり、23℃における粘度が1000Pa・s以下で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有すれば、特に制限無く使用することができる。
【0023】
まず、(α1)成分について説明する。
【0024】
本発明に使用できる(α1)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物については、特に制限がなく、例えば国際公開第96/15194号パンフレットに記載される化合物で、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するものが使用できる。
【0025】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、接着力の面からは、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0026】
上記鎖状オルガノポリシロキサンの具体的な例としては、下記一般式(I)
【0027】
【化1】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素あるいは炭素数1〜50の一価の有機基を表すが、少なくとも3個は水素である。p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。なお、ここでいう有機基は、特に限定されないが、エーテル結合、エステル結合、アセタール結合、イミド結合、アミド結合、ハロゲン化合物を有していてもよい炭化水素系の官能基であることが好ましい。以下に挙げられる「有機基」についても同様である。
【0028】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0029】
上記環状ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(II)
【0030】
【化2】

(式中、R13、R14は水素あるいは炭素数1〜6の有機基を表し、nは2〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。なお、上記一般式(II)におけるR13、R14は、C、H、Oから構成される炭素数1〜6の有機基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。また、nは3〜10の数であることが好ましい。
【0031】
一般式(II)で表される環状ポリオルガノシロキサンの好ましい具体例としては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0032】
硬化剤を得るために用いる1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物について、数平均分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい数平均分子量の下限は50であり、好ましい数平均分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。本明細書において、数平均分子量とは、GPCによるスチレン換算の数平均分子量を示す。
【0033】
また、上記記載の硬化剤を得るために用いる1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物について、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0034】
次に、(α2)成分について説明する。
【0035】
(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物とは、複素環を含む有機骨格部分と、その有機系骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基と少なくとも1個の極性基とからなる。このように表した場合、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基や極性基は、有機系骨格のどの部位に共有結合していてもよい。このとき、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、SiH基と反応性を有するものであれば特に制限されない。また、極性基は、炭化水素基にヘテロ原子やハロゲン原子といった電気陰性度の異なる原子からなる原子群が結合することにより電荷の偏りが生じている官能基であれば特に制限されないが、イオン性を有するものは除く。
【0036】
SiH基と反応性を有する炭素―炭素二重結合を有する基とは、例えば、下記一般式(III)
【0037】
【化3】

(式中R15は水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が反応性の点から好適である。
【0038】
原料の入手の容易さからは、
【0039】
【化4】

が特に好ましい。
【0040】
(A)成分の有機化合物が含有するアルケニル基としては、下記一般式(IV)
【0041】
【化5】

(式中R16、R17は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。
【0042】
また、原料の入手の容易さからは、
【0043】
【化6】

が特に好ましい。
【0044】
アルケニル基は2価以上の置換基を介して、有機系骨格部分に共有結合していても良い。
【0045】
2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に制限はない。このような置換基の例としては、
【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

等が挙げられる。
【0048】
また、これらの置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0049】
以上のような有機系骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素―炭素二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、3−(アリルオキシ)プロピル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0050】
【化9】

等が挙げられる。
極性基とは、例えば、カルボニル基やニトロ基、スルホン基、環状エーテル基、ハロゲン基といった活性水素を持たない官能基は反応性の点から好適である。
【0051】
得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、エポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
【0052】
【化10】

で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。これらの好ましい極性基の例としては、グリシジル基、
【0053】
【化11】

等が挙げられる。
次に、複素環を含む有機骨格部分について述べる。
有機骨格とは、主に炭素、水素、酸素、ニクトゲン原子、カルコゲン原子、ハロゲン原子から構成される骨格であり、上記元素からなるものであれば特に限定されない。例えば、飽和炭化水素系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリカーボネート系、ポリアリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)等の有機重合体骨格や、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、脂肪族アルコール系、環状炭化水素系等及びこれらの2種以上からなる有機単量体骨格が挙げられる。
数平均分子量についても特に限定はないが、取扱い性の観点から、数平均分子量が1万以下のものが好ましい。
【0054】
複素環とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する環状の化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に制限はなく、3以上であればよい。入手性からは、10以下であることが好ましい。
複素環の具体的な例としては、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピロール系、オキサゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、ピラゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系がある。中でも、複素環としてはイソシアヌネートが好ましい。
また、上記の複素環は他の炭素環や複数の複素環と縮合していてもよい。
【0055】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの反応性基を有している場合には得られる硬化物の強度が高くなりやすい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
(α2)成分の具体的として、アリルグリシジルエーテル、ビニルジオキソラン、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−エポキシド、4−ビニル−1,3−ジオキソラン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルフタルアミド、1−ビニルピロリドン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0056】
上記のようなSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)成分としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(予備反応)
硬化剤を得るための反応について説明する。
【0058】
1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物(α1)とSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)とをヒドロシリル化反応させる場合の、SiH基を有するケイ素化合物(α1)とSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合と少なくとも1個の極性基を有する複素環式有機化合物(α2)成分の混合比率は、1分子中に2個以上SiH基が残り、かつ、23℃におけるE型粘度計で測定した粘度が1000Pa・s以下であるような範囲であれば、特に限定されない。
【0059】
本発明の硬化剤を用いて得られる硬化物の強度を考えた場合、硬化剤成分のSiH基が多い方が好ましいため、混合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(Y)と、混合するSiH基を有するケイ素化合物(α1)中のSiH基のモル数(X)との比は、X/Y≧2であることが好ましく、X/Y≧3であることがより好ましい。
【0060】
本発明の硬化剤の取扱い性を考えた場合、硬化剤の23℃における粘度が1000Pa・s以下であることが必要となる。このとき、混合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(Y)と、混合するSiH基を有するケイ素化合物(α1)中のSiH基のモル数(X)との比が、X/Y≧3であることが好ましく、X/Y≧4であることがより好ましい。経済性の観点からは、X/Y≦100であることが好ましく、X/Y≦30であることがさらに好ましい。
【0061】
ヒドロシリル化させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述する(C)成分を用いることができる。
【0062】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、SiH基を有するケイ素化合物(α1)のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限はSiH基を有するケイ素化合物(α1)のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0063】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
【0064】
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)に触媒を混合したものを、SiH基を有するケイ素化合物(α1)に混合する方法が好ましい。SiH基を有するケイ素化合物(α1)とSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)との混合物に触媒を混合する方法では反応の制御が困難である傾向がある。また、SiH基を有するケイ素化合物(α1)と触媒とを混合したものにSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)を混合する方法では、触媒の存在SiH基を有するケイ素化合物(α1)が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0065】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0066】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0067】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートの場合は、溶解性の問題から、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1, 4−ジオキサン等の環状エーテル系溶媒が好ましい。
【0068】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0069】
ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/または未反応のSiH基を有するケイ素化合物(α1)および/若しくはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物(α2)を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる硬化剤が揮発分を有さないため、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0070】
本発明の硬化剤の粘度は、23℃におけるE型粘度計で測定した粘度が1000Pa・s以下であるような範囲であれば、特に限定されない。粘度が1000Pa・sを超えると、配合時に計量し難くなったり、混合時に他の材料と粘度が異なり混ざり難くなったりする。
【0071】
以上のような、硬化剤の例としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。このとき、1000Pa・s以下の粘度にするには、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(X)と1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(Y)のモル比は、Y/X≧0.75の反応物とすることが好ましい。
【0072】
本発明の硬化剤は、単独で用いても2種以上を混合使用してもよい。
【0073】
本発明の硬化剤は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するため、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する化合物とのヒドロシリル化反応による硬化を目的とした硬化剤として好適である。本発明の硬化剤の好ましい使用形態、すなわち、本願発明の接着性硬化性組成物は、上述した本発明の硬化剤(A)、(B)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を必須成分として含有する。
【0074】
以下に本発明の接着性硬化性組成物に含有される各成分につき、説明する。
【0075】
((B)成分)
次に、本発明において硬化性組成物を作製する際の(B)成分について説明する。
【0076】
(B)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。
【0077】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物(B)は、有機系骨格部分と、その有機系骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とからなる。このように表した場合、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、有機系骨格のどの部位に共有結合していてもよい。
【0078】
(B)成分の有機化合物が含有する、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、SiH基と反応性を有するものであれば特に制限されない。なかでも、上記硬化剤(A)成分で説明した(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基が同様に好ましい。
【0079】
次に、(B)成分の有機系骨格部分について述べる。(B)成分の有機系骨格とは、主に炭素、水素、酸素、ニクトゲン原子、カルコゲン原子、ハロゲン原子からなる骨格であれば特に限定されない。なかでも、上記硬化剤(A)成分で説明した(α2)成分で説明した有機系骨格部分が好ましい。
【0080】
(B)成分の有機化合物の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、及びそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0081】
【化12】

【0082】
【化13】

が挙げられる。
(B)成分の有機化合物としては、耐熱性の観点からは、イソシアヌレート骨格を有する有機化合物(イソシアヌレート化合物)が好ましい。イソシアヌレートとは、下記一般式(V)
【0083】
【化14】

(式中R18、R19、R20は、同一又は異なって、炭素数1〜50の一価の有機基を表すが、少なくとも二つはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である。)で表される。
【0084】
得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、上記一般式(V)のR18、R19、R20として、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR18、R19、R20の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、エポキシ基を一個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基(グリシジル基以外)、
【0085】
【化15】

等が挙げられる。
【0086】
反応性が良好になるという観点からは、上記一般式(V)のR18、R19、R20として、これらのうち少なくとも1つが
【0087】
【化16】

で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記一般式(VI)
【0088】
【化17】

(式中R21は水素原子又はメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、R18、R19、R20のうち少なくとも2つが下記一般式(VII)
【0089】
【化18】

(式中R22は直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、R23は水素原子又はメチル基を表す。)で表される1価の有機基(複数のR22及びR23はそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)であることがさらに好ましい。
【0090】
得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、上記一般式(V)のR18、R19、R20として、これらのうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましい。
【0091】
以上のような一般式(V)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート及びその誘導体が特に好ましい。中でも、硬化物の接着性向上のためには、(B)成分としてはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートが好ましい。
【0092】
硬化物の接着性向上と耐光性を両立させるためにはトリアリルイソシアヌレートとジアリルモノグリシジルイソシアヌレートの混合物であることが好ましい。該混合物はイソシアヌル環骨格を有するため耐熱性の点からも有効である。混合比は任意に設定出来るが、上記目的達成のためにはトリアリルイソシアヌレート/アリルモノグリシジルイソシアヌレート(モル比)=99/1〜1/99が好ましく、95/5〜5/95がさらに好ましく、90/10〜10/90が特に好ましい。
【0093】
また、(B)成分の有機化合物としては、有機重合体骨格に、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基が共有結合したものも好ましい。
【0094】
有機重合体骨格としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のポリエーテル系重合体が挙げられる。さらに具体的な例を示すと、
【0095】
【化19】

(式中、R24、R25は炭素数1〜200の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)等が挙げられる。
【0096】
なお、R24、R25は好ましくは炭素数1〜200の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜200のアルキレン基である。
【0097】
有機重合体骨格として用いられるその他の重合体としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体;ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体;ポリクロロプレン;ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体;ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリル等との共重合体;ポリイソプレンを水素添加して得られるポリオレフィン系(飽和炭化水素系)重合体、ポリブタジエンを水素添加して得られるポリオレフィン系重合体、イソプレンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系重合体、ブタジエンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル系共重合体;前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610、11−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、ラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ビスフェノールAと塩化カルボニルより重縮合して製造されたポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アンモニアレゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等のフェノール系樹脂等が挙げられる。
【0098】
また、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基(アルケニル基)については、前記説明のものが挙げられる。
【0099】
アルケニル基を前記重合体骨格に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法に大別することができる。
【0100】
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、末端、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有する有機重合体に、その官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物を反応させることにより、アルケニル基を末端、主鎖あるいは側鎖に導入することができる。
【0101】
上記官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド等の炭素数3〜20の不飽和脂肪酸、酸ハライド、酸無水物等;アリルクロロホルメート(CH=CHCHOCOCl)、アリルブロモホルメート(CH=CHCHOCOBr)等の炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール置換炭酸ハライド;アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ブテニル(クロロメチル)エーテル、1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン、アリルイソシアネート等が挙げられる。
【0102】
また、エステル交換法を用いてアルケニル基を導入する方法がある。この方法はポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基を、エステル交換触媒を用いて、アルケニル基含有アルコール又はアルケニル基含有フェノール誘導体とエステル交換する方法である。
【0103】
アルコール残基との交換に用いるアルケニル基含有アルコール又はアルケニル基含有フェノール誘導体は、少なくとも1個のアルケニル基を有し、かつ、少なくとも1個の水酸基を有するアルコール又はフェノール誘導体であれば良いが、水酸基を1個有する方が好ましい。触媒は、使用してもしなくても良いが、用いる場合にはチタン系及び錫系のものが良い。
【0104】
上記のアルケニル基と水酸基をもつアルコール又はフェノール誘導体の例としては、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、9−デセン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、ネオペンチルグリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールエタントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,2,6−ヘキサントリオールトリアリルエーテル、ソルビタントリアリルエーテル、
【0105】
【化20】

等が挙げられる。この中でも、入手の容易さから、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、及び、
【0106】
【化21】

が好ましい。
【0107】
さらに、上記アルコール又はフェノール誘導体の酢酸エステル等のエステル化物と、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分を、エステル交換触媒を用いてエステル交換しながら、生成するポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基との酢酸エステル等の低分子量エステル化物を、減圧脱揮等で系外に留去する方法でアルケニル基を導入する方法もある。
【0108】
また、リビング重合によりメチル(メタ)アクリレート等の重合を行った後、リビング末端をアルケニル基を有する化合物によって停止させる方法により、末端にアルケニル基を導入することもできる。
【0109】
重合中にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、ラジカル重合法で本発明に用いる(B)成分の有機重合体骨格を製造する場合に、アリルメタクリレート、アリルアクリレート等の分子中にラジカル反応性の低いアルケニル基を有するビニルモノマーや、アリルメルカプタン等のラジカル反応性の低いアルケニル基を有するラジカル連鎖移動剤を用いることにより、有機重合体骨格の側鎖や末端にアルケニル基を導入することができる。
【0110】
上記の有機重合体骨格の側鎖又は末端にアルケニル基を導入した(B)成分の有機化合物の具体的な例としては、
【0111】
【化22】

(式中、R26は水素原子又はメチル基、R27、R28は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)
【0112】
【化23】

(式中、R29は水素原子又はメチル基、R30、R31は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、nは1〜300の数を表す。)
【0113】
【化24】

(式中、R32は水素原子又はメチル基、R33、R34は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)
【0114】
【化25】

(式中、R35は水素原子又はメチル基、R36、R37は、同一又は異なって、炭素数1〜6の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)
【0115】
【化26】

(式中、R38は水素原子又はメチル基、R39、R40、R41は、同一又は異なって、炭素数1〜6の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、r、sはそれぞれ1〜300の数を表す。)
等が挙げられる。
【0116】
なお、R27、R28、R30、R31、R33、R34は、好ましくは炭素数1〜200の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜200のアルキレン基である。R36、R37、R39、R40、R41は、好ましくは炭素数1〜6の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。X、Yは、好ましくは直接結合又は炭素数1〜48の二価の炭化水素基、より好ましくは直接結合又は炭素数1〜48のアルキレン基である。
【0117】
(B)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0118】
(B)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(B)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0119】
(B)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。
【0120】
(B)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの反応性基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの反応性基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
(B)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0121】
((C)成分)
次に、(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
【0122】
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO));白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh4、Pt(PBu);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0123】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0124】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0125】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒としては、例えば、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0126】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10−2モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10−1モル、上限10モルの範囲である。
【0127】
(硬化性組成物)
硬化性組成物中の(A)成分と(B)成分の比率としては、[硬化性組成物中の(B)成分のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合(アルケニル基)のモル数/硬化性組成物中の(A)成分のSiH基のモル数]の値が、下限0.05、上限10の範囲となる比率であることが好ましく、下限0.1、上限5の範囲となる比率であることがより好ましい。上記値が0.05より小さい場合はアルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が不十分になる傾向にあり、10より大きい場合は硬化物から未反応の(B)成分がブリードしてくる傾向にある。
【0128】
硬化性組成物中の(C)成分のヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、(A)成分のSiH基1モルに対して、下限10−8モル、上限10−1モルの範囲が好ましく、より好ましくは、下限10−6モル、上限10−2モルの範囲である。
【0129】
なお、当該触媒は、(A)成分合成時に使用して残存している量で十分な硬化性を示す場合は必ずしも添加する必要はないが、硬化性を調整するために上記の範囲で新たに添加することもできる。
【0130】
((D)成分)
(D)成分である1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物について説明する。なお、本発明の硬化性組成物は、本発明の硬化剤(A)、すなわち、上記(α1)成分および(α2)成分のヒドロシリル化反応物であって、1000Pa・s以下である、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物の他に、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物((D)成分)を含有することができる。(D)成分としては、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0131】
本発明の硬化性組成物に使用できる、(D)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するケイ素化合物については、特に制限がないが、例えば国際公開第96/15194号パンフレットに記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するものが使用できる。
【0132】
なかでも、上記(A)成分で説明したようなSiH基を有するケイ素化合物(α1)で説明した化合物が(D)成分においても同様に好適である。
【0133】
また、(A)成分や(B)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(D)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、予め1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するケイ素化合物(d1)とSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物(d2)とを反応して得た化合物であることが好ましい。(d1)としては、上記1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するケイ素化合物が使用でき、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンがより好ましく、環状ポリオルガノシロキサンがさらに好ましい。(d2)としては、上述した(B)成分と同様の有機化合物を使用することができる。上記(d1)と(d2)とをヒドロシリル化反応すると、本発明の(D)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(D)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の硬化性組成物を作製することもできる。また、ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/または未反応の(d1)および/若しくは(d2)を除去してもよい。これらの揮発分を除去することにより、得られる(D)成分が揮発分を有さないため、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、上述の(A)成分の合成時と同様、例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合の温度などについても、上述の(A)成分の減圧脱揮の好ましい温度を、同様に好ましく適用できる。
【0134】
反応方法は、特に制限はないが、(A)成分の合成方法と同じであることが好ましい。
【0135】
SiH基を有するケイ素化合物(d1)とSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物(d2)との混合比率は、1分子中にSiH基が2個以上ある限り特に制限はないが、本発明により得られる硬化物の強度を考えた場合、(D)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に、混合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物(d2)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(X)と、混合するSiH基を有するケイ素化合物(d1)中のSiH基のモル数(Y)との比が、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。また(D)成分の(A)及び(B)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧Y/Xであることが好ましく、5≧Y/Xであることがより好ましい。
以上のような、(D)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物等を挙げることができる。
【0136】
本発明の硬化性組成物に添加できる(D)成分の上限値は、(A)成分と(D)成分の合計量の95重量%が好ましく、90重量%がより好ましい。95重量%を超える添加量の(D)成分を添加した場合、硬化物の接着力が低下する傾向がある。
【0137】
本発明では、上記(D)成分を単独で用いても2種以上を混合使用してもよい。
【0138】
((E)成分)
(E)成分について説明する。接着性付与剤とは、硬化性組成物の接着性を改善するものであれば特に限定されない。例えば、一般に用いられている接着剤の他、種々のカップリング剤、エポキシ化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等がある。
【0139】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0140】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0141】
シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分(+(D)成分)]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0142】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0143】
エポキシ化合物の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分(+(D)成分)]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は1重量部、より好ましくは3重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0144】
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0145】
また、本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、さらにシラノール縮合触媒を用いることができ、接着性の向上および/または安定化が可能である。
【0146】
このようなシラノール縮合触媒としては特に限定されないが、ほう素系化合物、アルミニウム系化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物が好ましい。
【0147】
本発明の硬化性組成物に用いられうるほう素系化合物としては、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイド等のほう酸エステル類が例示できる。
【0148】
これらほう酸エステル類は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いても良い。混合は事前に行っても良く、また硬化物作成時に混合しても良い。
【0149】
これらほう酸エステル類のうち、容易に入手でき工業的実用性が高いという点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリノルマルブチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
【0150】
硬化時の揮発性を抑制できるという点からは、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが好ましく、なかでもほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリフェニル、ほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。
【0151】
揮発性の抑制、および作業性がよいという点からは、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピルが好ましく、なかでもほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。
【0152】
高温下での着色性が低いという点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
【0153】
本発明の硬化性組成物に用いられうるアルミニウム系化合物としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソフロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM(川研ファインケミカル製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウムキレート類等が例示でき、取扱い性の点からアルミニウムキレート類がより好ましい。
【0154】
本発明の硬化性組成物に用いられうるチタン系化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類、チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート類、オキシ酢酸やエチレングリコール等の残基を有する一般的なチタネートカップリング剤が例示できる。
【0155】
本発明の硬化性組成物に用いられうるジルコニウム系化合物としては、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等のテトラアルコキシジルコニウム類、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニウムキレート類、ジルコニウムアシレート類等が例示できる。
【0156】
シラノール縮合触媒を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対して好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0157】
また、これらのシラノール縮合触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0158】
また、本発明においては接着性改良効果をさらに高めるために、さらにシラノール源化合物を用いることができ、接着性の向上および/または安定化が可能である。このようなシラノール源化合物としては、例えばトリフェニルシラノール、ジフェニルジヒドロキシシラン等のシラノール化合物、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類等を挙げることができる。
【0159】
シラノール源化合物を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0160】
また、これらのシラノール源化合物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0161】
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、カルボン酸類および/または酸無水物類を用いることができ、接着性の向上および/または安定化が可能である。このようなカルボン酸類、酸無水物類としては特に限定されないが、
【0162】
【化27】

2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0163】
これらのカルボン酸類および/または酸無水物類のうち、ヒドロシリル化反応性を有し硬化物からの染み出しの可能性が少なく得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。好ましいカルボン酸類および/または酸無水物類としては、例えば、
【0164】
【化28】

テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびそれらの単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
【0165】
カルボン酸類および/または酸無水物類を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0166】
また、これらのカルボン酸類および/または酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0167】
(その他の添加物)
本発明の硬化性組成物は、溶剤を添加して粘度を調整し、作業性を向上させることも可能である。使用できる溶剤としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸n−ブチル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤等を好適に用いることができる。また、当該溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0168】
使用する溶剤量は、[(A)成分+(B)成分+(D)成分]100重量部に対して、下限0.1重量部、上限100重量部の範囲で用いるのが好ましく、下限0.5重量部、上限50重量部の範囲で用いるのがより好ましく、下限1重量部、上限30重量部の範囲で用いるのがさらに好ましい。使用量が0.1重量部より少ないと、低粘度化の効果が得られにくくなる傾向があり、使用量が100重量部より多いと、材料に溶剤が残留して耐熱性の低下等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり易い傾向がある。
【0169】
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、又は、製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用してよい。
【0170】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機硫黄化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等が例示される。
【0171】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0172】
硬化遅延剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10−1モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
【0173】
次に、本発明の硬化性組成物の特性を改質する目的で添加することが可能な種々の樹脂について説明する。当該樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0174】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0175】
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
本発明で得られる硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0176】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0177】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0178】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0179】
本発明の硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0180】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0181】
本発明の硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0182】
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0183】
本発明の硬化性組成物には、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0184】
本発明の硬化性組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。
【0185】
また、本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
【0186】
反応温度としては種々設定できるが、下限25℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限50℃、上限280℃がより好ましく、下限100℃、上限260℃がさらに好ましい。反応温度が25℃より低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0187】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0188】
反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0189】
本発明の硬化性組成物は、成形体として使用することができる。成型方法としては、既存の液状樹脂に用いられる方法であれば特に限定されない。例えば、押出成型、圧縮成型、ブロー成型、真空成型、射出成型、液状射出成型、注型成型などがある。
【0190】
本発明の硬化性組成物を硬化してなる硬化物を光学用途に適用する場合には、透明性を有することが好ましい。より具体的には、透明性について、可視光域で十分に光を通すという意味では、3mm厚硬化物の400nmにおける透過率が45%以上であること好ましい。当該透過率が45%を超えないと十分な視野が確保できない。さらに、色目が変わるという意味では、50%以上あることが好ましく、60%以上あることがさらに好ましい。また、光や熱に対する環境試験後の変色、着色の度合いが低い場合、試験前後での透過率の変化が小さく、長期間の使用に耐えうることを示す。具体的には、後述の耐光性試験後、3mm厚みの硬化物の400nmにおける透過率が45%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0191】
硬化物の接着力は、長期間使用していくことにより、光や熱がかかり、樹脂自体が劣化して低下していく傾向にある。本発明の硬化物は、メタルハライドランプによる1平方メートルあたり50MJ照射後(耐光性試験)における硬化物(厚みが10〜40μm)の接着力が、上記照射前における硬化物の接着力(初期状態の接着力)に比べて70%以上であることが好ましく、80%以上あることがより好ましい。このような接着力を示すことは、紫外線を長時間当てても接着力が低下しないことを明示し、長期間にわたって良好な接着性を維持することを実現できるような、優れた接着性を有することが示される。本発明における接着力の評価は、耐久性の指標として、初期状態と一定の条件下で保存したものの接着力の差を提示する方法(米国 MIL STD−883)を参考にしておこなっている。ここでの接着力としては、後述している実施例のダイシェア接着強度を用いる。
【0192】
本発明で言うコーティング材とは、各種基材の上に付着させ、各種機能発現を目的に用いる材料一般を示す。例えば、各種塗料や、保護膜、平坦化膜、封止剤、モールド剤等が挙げられる。
【0193】
また、本発明で言う光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザー等の光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0194】
例えば、カラーフィルター保護膜、TFT平坦化膜、基板材料のような液晶表示装置に用いられる材料や、封止剤、ダイボンド剤等の発光ダイオード(LED)に用いられる材料が挙げられる。さらに、液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、偏光子保護フィルム、カラーフィルター等やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0195】
また、LED表示装置に使用されるLED素子のモールド剤、LEDの封止剤、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0196】
また、カラーPDP(プラズマディスプレイ)の反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料等やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。また、プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、偏光子保護フィルムやそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。また、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料やそれらに用いられる各種コーティング剤接着剤等も挙げられる。また、フィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0197】
その他、光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、受光センサー部、保護フィルムやそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0198】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーやそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。また、プロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルムやそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。光センシング機器のレンズ用材料、各種フィルムやそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0199】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルールやそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0200】
その他光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等、工業用途のセンサー類、表示・標識類等、また通信インフラ用及び家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーやそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0201】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料も挙げられる。
【0202】
自動車・輸送機分野では、自動車用ヘッドランプ・テールランプ・室内ランプ等のランプ材料、ランプリフレクタ、ランプレンズ、外装板・インテリアパネル等の各種内外装品、ガラス代替品やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。また、鉄道車輌用の外装部品、ガラス代替品やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。また、航空機の外装部品、ガラス代替品やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【0203】
建築分野では、ガラス中間膜、ガラス代替品等も挙げられる。
【0204】
農業用では、ハウス被覆用フィルムも挙げられる。
【0205】
次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤やそれらに用いられる各種コーティング剤、接着剤等も挙げられる。
【実施例】
【0206】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0207】
反応後のSiH基価を下記の方法で定めた。
(NMR)
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた。(B)成分合成でのアリル基の反応率は、反応液を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものをNMR用チューブに加えて測定し、未反応アリル基由来のメチレン基のピークと、反応アリル基由来のメチレン基のピークから求めた。反応生成物であるSiH基含有化合物の官能基価は、ジブロモエタン換算でのSiH基価(mmol/g)と残存アリル基価(mmol/g)を求めた。
(粘度)
東京計器(株)製、E型粘度計を用いた。測定温度23℃、EHD型48φコーンで測定した。
(実施例1)
300ml四口ナスフラスコにトルエン62g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン42gを加えて、内温が100℃になるように加熱した。そこに、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート49gとトルエン50gで希釈した白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.03gを添加し、6時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエン、キシレンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートと反応したもの(部分反応物A1と称す、SiH価:4.5mmol/g、アリル価:0.1mmol/g、粘度385Pa・s)であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の硬化剤(A)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0208】
【化29】

(実施例2)
300ml四口ナスフラスコに1,4−ジオキサン42g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン61.9gを加えて、内温が100℃になるように加熱した。そこに、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート48.8g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.06g、1,4−ジオキサン50gの混合物を滴下し、18時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびキシレン、1,4−ジオキサンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートと反応したもの(部分反応物A2と称す、SiH価:4.7mmol/g、アリル価:0.2mmol/g、粘度385Pa・s)であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の硬化剤(A)成分である上記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0209】
次に、(D)成分である1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物の合成例について記載する。
(合成例1)
2Lオートクレーブにトルエン696g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン556gを加えて、内温が104℃になるように加熱した。そこに、トリアリルイソシアヌレート80g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、トルエン60gの混合物を滴下し、7時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(部分反応物D1と称す、SiH価:9.4mmol/g)であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(D)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0210】
【化30】

(合成例2)
2Lオートクレーブにトルエン525g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン570gを加えて、内温が105℃になるように加熱した。そこに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート120g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、トルエン120gの混合物を滴下した。滴下中、内温が109℃まで上昇した。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと反応したもの(部分反応物D2と称す、SiH価:7.7mmol/g)であることがわかった。
本発明の(D)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0211】
【化31】

(比較例1)
300ml四口ナスフラスコに1,4−ジオキサン42g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン23.3gを加えて、内温が85℃になるように加熱した。そこに、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート48.8g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、1,4−ジオキサン49gの混合物を滴下し、10時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエン、1,4−ジオキサンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートと反応したもの(部分反応物A3と称す、SiH価:3.5mmol/g、アリル価:0.2mmol/g、粘度>1000Pa・s)であることがわかった。生成物は混合物である。
(実施例3〜7および比較例〜3)
(A)成分として実施例1,2の合成物を用い、(B)成分として、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを用い、(C)成分として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)を用い、(D)成分として合成例1,2の合成物を用い、(E)成分としてγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、A−187)とほう酸メチルを用いて、表1、表2に示した配合で硬化性組成物を作製した。配合方法は、(B)成分と(C)成分とホウ酸メチルと必要に応じて老化防止剤(IRGANOX1010:ペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を混合し、攪拌、脱泡したものに、(A)成分および/又は(D)成分と1−エチニルシクロヘキサノールとγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加えて、さらに攪拌、脱泡したものを硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに流し込み、60℃6時間、70℃1時間、80℃1時間、100℃1時間、120℃1時間、150℃1時間、180℃30分間加熱し硬化物を得た。
得られた各硬化性組成物および各硬化物について、粘度・硬化物の外観・接着性・強度・耐光性・耐熱性を以下に述べる試験方法(粘度に関しては前述の測定方法)により測定した。
(硬化物の外観)
得られた3mm厚の硬化物の外観を目視により評価した。無色透明に見える硬化物は、400nmの透過率が80%以上であることが多い。
(ダイシェア接着性試験)
得られた硬化性組成物を50μmのブレードで塗布し、その塗膜に、2×2×0.2mmのガラス板のダイを2×2mmの面を下方にしてスタンプし、硬化性組成物をダイにつけた。このダイを、硬化性組成物が付着した面を下方にしてガラス繊維強化エポキシ(FR4)基材に乗せ、150℃1時間、180℃30分間加熱により硬化して試験片を作製した。このとき、得られる硬化物(ダイと基材との間の硬化物層)は厚み約30μm(厚みが10〜40μmの範囲内)になる。得られた試験片について、デイジ社製、シリーズ4000ボンドテスター試験機、DS100KGロードセルを用いて接着強度(単位;kgF)を測定した。各硬化性組成物につきサンプル(試験片)5個を測定し、最高値と最低値を除く3点の平均を接着強度とした。
得られた硬化物より、3mm×5mm×50mmの試験片を切り出し、当該試験片を用いて23℃の環境下、JISK6911に準じた方法で、曲げ強度を測定した。測定には、島津製作所製オートグラフAG−10TBを使用した。
(光線透過率)
得られた硬化物について、470nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)を用いて測定し、得られた値を耐光性・耐熱性試験前の光線透過率とした。
(耐光性試験)
得られた硬化物に対してスガ試験機M6T型メタリングウェザーメーター(照射量:50MJ/m)を用いて耐光性試験を行った。耐光性試験後の硬化物について、470nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)を用いて測定した。また、上記記載のダイシェア試験片に対して同様の耐光性試験を行い、上記ダイシェア接着性試験と同様にして測定した値をダイシェア耐光性試験値とした。
(耐熱性試験)
得られた硬化物に対して200℃の熱風オーブンで24時間耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の硬化物について、470nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
【0212】
【表1】

【0213】
【表2】

本発明による硬化剤を用いた硬化物は、光学的透明性、接着性試験より接着性能、曲げ試験より強度を有することが示された。したがって、本発明の硬化剤を使用した硬化性組成物を用いた製品は、その寿命を延長させられることが容易に理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分の反応物であって、23℃における粘度が1000Pa・s以下である、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する硬化剤。
(α1)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するケイ素化合物
(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有し、かつ、少なくとも1個の極性基を含有する複素環骨格をもつ有機化合物
【請求項2】
前記(α2)成分の複素環骨格がイソシアヌレートである、請求項1に記載の硬化剤。
【請求項3】
前記(α2)成分の極性基の少なくとも1つがエポキシ基である、請求項1または2に記載の硬化剤。
【請求項4】
前記(α1)成分が環状ポリオルガノシロキサンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項5】
前記(α1)成分と前記(α2)成分の混合比が、(α1に含まれるSiH基モル数)/(α2に含まれるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合基モル数)が3以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項6】
前記(α2)成分がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項7】
前記(α1)成分が1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項8】
(A)請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化剤、
(B)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、および
(C)ヒドロシリル化触媒を必須成分とする、接着性硬化性組成物。
【請求項9】
さらに、(D)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するケイ素化合物を含む、請求項8に記載の接着性硬化性組成物。
【請求項10】
さらに、(E)接着性付与剤を含む、請求項8または9に記載の接着性硬化性組成物。
【請求項11】
3mm厚みの硬化物の波長400nmにおける透過率が60%以上である、請求項8〜10のいずれかに記載の接着性硬化性組成物。
【請求項12】
メタルハライドランプによる1平方メートルあたり50MJ照射後において、3mm厚みの硬化物の400nmにおける透過率が45%以上であり、かつ、硬化物の接着力が、前記照射前における硬化物の接着力に比べて70%以上である、請求項8〜11のいずれかに記載の接着性硬化性組成物。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の接着性硬化性組成物を硬化させてなる、硬化物。
【請求項14】
請求項8〜12に記載の接着性硬化性組成物を用いたコーティング材。
【請求項15】
請求項8〜12に記載の接着性硬化性組成物を用いた光学用材料。

【公開番号】特開2008−260894(P2008−260894A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106211(P2007−106211)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】