説明

硬化性樹脂組成物、及びその硬化物

【課題】
光学材料として光、熱に対する耐久性の高い材料を提供する。
【解決手段】
(1)エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン構造を有するアルコールを含有する必須成分とする硬化性樹脂組成物
(2)エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂が脂環式エポキシ樹脂であることを特徴とする(1)に記載の硬化性樹脂組成物
(3)エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂がエポキシシクロヘキサン構造及びシロキサン構造を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする(1)に記載の硬化性樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の構造を有する硬化性樹脂組成物に関し、電気電子材料用途、特に光半導体用途に好適な該硬化性樹脂組成物、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料、レジストなどの幅広い分野に利用されている。
その中で、オプトエレクトロニクス関連分野、特に近年の高度情報化に伴い、膨大な情報を円滑に伝送、処理するために、従来の電気配線による信号伝送に変わり、光信号を生かした技術が開発されていく中で、光導波路、青色LED、および光半導体等の光学部品の分野においては透明性に優れた樹脂の開発が望まれている。
【0003】
特に光学特性の必要な分野、例えばLED製品等の分野においてはエポキシ樹脂の酸無水物硬化物が多々用いられている。従来からこのようなLED製品などの光半導体素子の封止材料に使用されるエポキシ樹脂としては、耐熱性、透明性、機械特性のバランスに優れたビスフェノールA型エポキシ樹脂に代表されるグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂組成物が広く使用されてきた。
ところが、LED製品の発光波長の短波長化(主に480nm以下の青色発光)が進んだ結果、短波長の光の影響で前記封止材料がLEDチップ上で着色し最終的にはLED製品として、照度が低下してしまうという指摘がされている。
そこで、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートに代表される脂環式エポキシ樹脂は、芳香環を有するグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂組成物と比較し透明性の点で優れていることから、LED封止材として積極的に検討がなされてきた。(特許文献1、2)
【0004】
また、近年のLED製品は、照明やTVのバックライト等向けに一層高輝度化が進み、LED点灯時は多くの発熱を伴うようになってきたため、該脂環式エポキシ樹脂を使用した樹脂組成物でもLEDチップ上で着色を起こし、最終的にLED製品として照度が低下してしまい、耐久性の面でも課題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−213997号公報
【特許文献2】特許3618238号公報
【特許文献3】特開2008−285591号公報
【特許文献4】国際公開第2005/100445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般の脂環式エポキシ樹脂はその硬化物の硬さともろさが課題とされている。これは先のLEDの封止材においても同様であり、特にLED封止材はその光の取出しが重要となるため、一般の封止材に比べ、無機フィラー等を多量に混合することができず、機械強度の補強ができない。このため、クラック等が生じやすく、その封止材には高度な靭性が求められる。この改善のためにトリメチロールプロパン等のアルコールの添加等が検討されているが(特許文献3)、これらアルコールの添加は、例えば酸無水物等との硬化の際は、室温からアルコールと酸無水物の反応が進行するため、貯蔵安定性に大幅なデメリットを有したり、硬化物の安定性が非常に悪くなったりする。
また、LEDにおいては前記エポキシ樹脂の耐久性の問題から、シリコーン樹脂やシリコーン変性エポキシ樹脂などに代表されるようなシロキサン骨格(具体的にはSi−O結合を有した骨格)を導入した樹脂を封止材として使用する検討が行われている。(特許文献4)
一般にシロキサン骨格を導入した樹脂はエポキシ樹脂よりも熱と光に対して安定であることが知られている。そのため、LED製品の封止材に適用した場合、LEDチップ上の着色という観点では、エポキシ樹脂よりも耐久性に優れると言われていた。しかし、該シロキサン骨格を導入した樹脂類はエポキシ樹脂に比べ、耐ガス透過性に劣る。そのため、LED封止材としてシリコーン樹脂やシリコーン変性エポキシ樹脂を使用した場合には、LEDチップ上での着色は問題にならないものの、LEDパッケージ内の構成部材である金属リードフレーム上にメッキされた銀成分(反射率を高めるために銀メッキが施されている)を変色または黒化させてしまい、最終的にLED製品としての性能を低下させるという課題を抱えている。
市場では、前記耐ガス透過性で問題のない構造を有するエポキシ樹脂組成物であって、且つ、該従来脂環式エポキシ樹脂よりも、さらに光学材料として光、熱に対する耐久性の高い材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
(1)
エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン構造を有するアルコールを含有する硬化性樹脂組成物、
(2)
エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂が脂環式エポキシ樹脂であることを特徴とする前項(1)に記載の硬化性樹脂組成物、
(3)
エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂がエポキシシクロヘキサン構造及びシロキサン構造を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする前項(1)に記載の硬化性樹脂組成物、
(4)
前項(1)〜(3)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物と硬化剤および/または硬化促進剤を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物、
(5)
硬化剤が酸無水物であることを特徴とする前項(4)に記載の硬化性樹脂組成物、
(6)
前項(4)、(5)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、
(7)
前項(4)、(5)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を含有する光半導体装置、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物は光、熱に対する耐着色性にも優れることから、光学材料、特に光半導体用(LED製品など)の接着材、封止材としてきわめて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物について記載する。
本発明におけるエポキシ樹脂はエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂を用いる。
本発明においてエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂とは脂環式エポキシ樹脂と、エポキシシクロヘキサン構造及びシロキサン構造を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0010】
脂環式エポキシ樹脂としては、二個以上のエポキシシクロヘキサン構造を有する化合物であり、かつその構造に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。
具体的にはシクロヘキセンカルボン酸とアルコール類とのエステル化反応あるいはシクロヘキセンメタノールとカルボン酸類とのエステル化反応(Tetrahedron vol.36 p.2409 (1980)、Tetrahedron Letter p.4475 (1980)等に記載の手法)、さらにはシクロヘキセンカルボン酸エステルのエステル交換反応(特開2006−052187号公報等に記載の手法)によって製造できる化合物を酸化した物などが挙げられる。
アルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオールなどのトリオール類、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンなどのテトラオール類などが挙げられる。またカルボン酸類としてはシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれに限らない。
【0011】
さらには、シクロヘキセンアルデヒド誘導体と、アルコールとのアセタール反応によるアセタール化合物が挙げられる。反応手法としては一般のアセタール化反応を応用すればよく、例えば、トルエン、キシレンなどの溶媒を用いて共沸脱水しながら反応を行う方法(米国特許第2945008号明細書)、濃塩酸に多価アルコールを溶解した後アルデヒド類を徐々に添加しながら反応を行う方法(特開昭48−96590号公報)、反応媒体に水を用いる方法(米国特許第3092640号明細書)、反応媒体に有機溶媒を用いる方法(特開平7−215979号公報)、固体酸触媒を用いる方法(特開2007−230992号公報)等が開示されている。構造の安定性から環状アセタール構造が好ましい。
【0012】
また、ビニルシクロヘキセンやリモネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ビシクロヘキセン、オクタジエン等の脂環式多価オレフィンを酸化した物などが挙げられる。
【0013】
これらエポキシ樹脂の具体例としては、ERL−4221、ERL−4299(全て商品名、いずれもダウ・ケミカル製)、エポリードGT401、EHPE3150、EHPE3150CE(全て商品名、いずれもダイセル化学工業製)及びジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない(参考文献:総説エポキシ樹脂 基礎編I p76−85)。 これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0014】
エポキシシクロヘキサン構造及びシロキサン構造を有するエポキシ樹脂としては、エポキシシクロヘキサン構造を有するオルガノポリシロキサンであれば特に限定はないが、本発明においては特にエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシランを原料に用いるゾル−ゲル反応により得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
具体的には特開2004−256609号公報、特開2004−346144号公報、国際公開第2004/072150号、特開2006−8747号公報、国際公開第2006/003990号、特開2006−104248号公報、国際公開第2007/135909号、特開2004−10849号公報、特開2004−359933号公報、国際公開第2005/100445号、特開2008−174640号公報などに記載の三次元に広がる網の目状の構造を有したシルセスキオキサンタイプのオルガノポリシロキサンが挙げられる。
オルガノポリシロキサンの構造については特に限定されないが、単純な三次元網目構造のシロキサン化合物では硬すぎるため、硬さを緩和する構造が望まれる。
本発明においては特にシリコーンセグメントとゾル−ゲル反応により得られる前述のシルセスキオキサン構造とを1分子中に有するブロック構造体が好ましい。このような化合物の製造法としては国際公開第2010/026714号に記載されているような製造方法および構造が挙げられる。
【0015】
トリシクロデカン構造を有するアルコールとしてはトリシクロデカンジメタノール、メチルトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等が挙げられる。このような化合物としてはシクロペンタジエンやメチルシクロペンタジエンの重合体、例えばジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン等のオレフィン部分をヒドロホルミル化後、還元によりアルコールとする手法が挙げられる。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は前述のエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂とトリシクロデカン構造を有するアルコールを所定の割合で均一に混合することで得られる。
均一に混合する手法としては、例えばこれらを0〜100℃の範囲内で撹拌しながら均一に溶融混合する手法、また有機溶剤用いて溶解させ、均一とした後、溶剤を留去し、本発明の硬化性樹脂組成物を得るという手法を用いることもできる。
これら配合量としてはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂に対し、トリシクロデカン構造を有するアルコールが1.5〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは2.25〜25重量%である。過剰のアルコールは硬化不良の問題が出てくる可能性があり好ましくなく、少なすぎると効果が出にくい。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は靭性や、透明性、耐ガス透過性を向上させるだけでなく、特に酸無水物を硬化剤とする熱硬化性樹脂組成物とする場合、硬化時の揮発を抑える効果があり、環境への化合物の放出も抑えられ、作業者の安全性にも寄与する。特に樹脂を少量しか使用しない表面実装型のLEDや、薄膜のコート材やフィルム等の用途においては顕著であり、酸無水物が揮発してしまい、硬化剤とエポキシのバランスが崩れ、硬化不良を起こし、まともな硬化物が得られない、着色が激しくなる等の問題を解決するのに役立つ。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、本発明のエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂を単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、前記エポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は70重量%以上が好ましく、特に80重量%以上が好ましい。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物において使用できる他のエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤および/または硬化触媒を含有させることができる。
以下、硬化剤による熱硬化(硬化性樹脂組成物A)、酸性硬化触媒によるカチオン硬化(硬化性樹脂組成物B)について述べる。
【0021】
硬化剤による熱硬化(硬化性樹脂組成物A)
本発明の硬化性樹脂組成物Aが含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物等が挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0022】
本発明においては、特に前述の酸無水物やカルボン酸樹脂に代表される、酸無水物構造及び/又はカルボン酸構造を有する化合物が好ましい。
【0023】
酸無水物構造を有する化合物としては、特にメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等が好ましく、特にメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が特に好ましい。
【0024】
カルボン酸構造を有する化合物(以下、ポリカルボン酸と称す)としては、特に2〜4官能のポリカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは2〜4官能の多価アルコールと、酸無水物を付加反応させることで得られるポリカルボン酸が好ましい。
2〜4官能の多価アルコールとしては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオール等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等のテトラオール類等が挙げられる。
特に好ましい2〜4官能の多価アルコールとしてはシクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等の分岐鎖状や環状のアルコール類である。
【0025】
ポリカルボン酸を製造する際の酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等が好ましい。
【0026】
付加反応の条件としては特に指定はないが、具体的な反応条件の1つとしては酸無水物および多価アルコールを無触媒・無溶剤の条件下、40〜150℃で加熱しながら反応させ、反応終了後そのまま取り出す、という手法である。ただし、本反応条件に限定されない。
【0027】
酸無水物、ポリカルボン酸は、それぞれ単独でまたは2種以上を使用することもできる。その場合、酸無水物とポリカルボン酸の比率はその重量比で90/10〜20/80であり特に好ましくは80/20〜30/70である。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して官能基当量で0.5〜1.5当量が好ましい。さらに好ましくは、0.7〜1.1当量、特に好ましくは0.8〜1.0当量である。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない虞がある。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物Aにおいては、硬化剤とともに硬化促進剤(硬化触媒)を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−ウンデシルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−エチル,4−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール−(1')−)エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、オクチル酸スズ等の金属化合物等、及びこれら硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。これら硬化促進剤のどれを用いるかは、例えば透明性、硬化速度あるいは作業条件といった得られる透明樹脂組成物に要求される特性によって適宜選択される。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対し通常0.001〜15重量部の範囲で使用される。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1未満では難燃性が不十分であり、0.6を超えると硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0031】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤、カルボン酸亜鉛(2−エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ミスチリン酸亜鉛)やリン酸エステル亜鉛(オクチルリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛等)等の亜鉛化合物、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物Aを光学材料、特に光半導体封止剤に使用する場合には、前記使用する無機充填材の粒径として、ナノオーダーレベルの充填材を使用することで、透明性を阻害せずに機械強度等を補完することが可能である。ナノオーダーレベルとしての目安は、平均粒径が500nm以下、特に平均粒径が200nm以下の充填材を使用することが透明性の観点では好ましい。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物Aを光学材料、特に光半導体封止剤に使用する場合、必要に応じて、蛍光体を添加することができる。蛍光体は、例えば、青色LED素子から発せられた青色光の一部を吸収し、波長変換された黄色光を発することにより、白色光を形成する作用を有するものである。蛍光体を、硬化性樹脂組成物に予め分散させておいてから、光半導体を封止する。蛍光体としては特に制限がなく、従来公知の蛍光体を使用することができ、例えば、希土類元素のアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、オルトケイ酸塩等が例示される。より具体的には、YAG蛍光体、TAG蛍光体、オルトシリケート蛍光体、チオガレート蛍光体、硫化物蛍光体等の蛍光体が挙げられ、YAlO:Ce、Yl512:Ce、YAl:Ce、YS:Eu、Sr(POCl:Eu、(SrEu)O・Al2等が例示される。係る蛍光体の粒径としては、この分野で公知の粒径のものが使用されるが、平均粒径としては、1〜250μm、特に2〜50μmが好ましい。これらの蛍光体を使用する場合、その添加量は、その樹脂成分に対して100重量部に対して、1〜80重量部、好ましくは、5〜60重量部が好ましい。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物Aを光学材料、特に光半導体封止剤に使用する場合、各種蛍光体の硬化時沈降を防止する目的で、シリカ微粉末(アエロジルまたはアエロゾルとも呼ばれる)をはじめとするチクソトロピック性付与剤を添加することができる。このようなシリカ微粉末としては、例えば、Aerosil 50、Aerosil 90、Aerosil 130、Aerosil 200、Aerosil 300、Aerosil 380、Aerosil OX50、Aerosil TT600、Aerosil R972、Aerosil R974、Aerosil R202、Aerosil R812、Aerosil R812S、Aerosil R805、RY200、RX200(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物Aを光学材料、特に光半導体封止剤に使用する場合、着色防止目的のため、光安定剤としてのアミン化合物又は、酸化防止材としてのリン系化合物やフェノール系化合物を含有することができる。
前記アミン化合物としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)=1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)=1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル,1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、N,N’,N″,N″’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5・1・11・2〕ヘネイコサン−21−オン、β−アラニン,N,−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン−21−オン、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−〔5,1,11,2〕−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド,〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3−ベンゼンジカルボキシアミド,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等のヒンダートアミン系、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられるが、特に好ましくは、ヒンダートアミン系化合物である。
【0037】
前記光安定材であるアミン化合物として、次に示す市販品を使用することができる。
市販されているアミン系化合物としては特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ製として、TINUVIN765、TINUVIN770DF、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN622LD、TINUVIN152、CHIMASSORB944、アデカ製として、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63P、LA−77Y、LA−81、LA−82、LA−87等が挙げられる。
【0038】
前記リン系化合物としては特に限定されず、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0039】
上記リン系化合物は、市販品を用いることもできる。市販されているリン系化合物としては特に限定されず、例えば、アデカ製として、アデアスタブPEP−4C、アデアスタブPEP−8、アデアスタブPEP−24G、アデアスタブPEP−36、アデアスタブHP−10、アデアスタブ2112、アデアスタブ260、アデアスタブ522A、アデアスタブ1178、アデアスタブ1500、アデアスタブC、アデアスタブ135A、アデアスタブ3010、アデアスタブTPPが挙げられる。
【0040】
フェノール化合物としては特に限定はされず、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェノール、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス−〔2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−ブチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノールアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル等が挙げられる。
【0041】
上記フェノール系化合物は、市販品を用いることもできる。市販されているフェノール系化合物としては特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ製としてIRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX295、IRGANOX3114IRGANOX1098、IRGANOX1520L、アデカ製としては、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−90、アデカスタブAO−330、住友化学工業製として、SumilizerGA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、Sumilizer GP等が挙げられる。
【0042】
このほか、樹脂の着色防止剤として市販されている添加材を使用することができる。例えば、チバスペシャリティケミカルズ製として、TINUVIN328、TINUVIN234、TINUVIN326、TINUVIN120、TINUVIN477、TINUVIN479、CHIMASSORB2020FDL、CHIMASSORB119FL等が挙げられる。
【0043】
上記リン系化合物、アミン化合物、フェノール系化合物の中から少なくとも1種以上を含有することが好ましく、その配合量としては特に限定されないが、該硬化性樹脂組成物に対して、0.005〜5.0重量%の範囲である。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物Aは、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物Aは従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明の硬化性樹脂組成物と硬化剤並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して硬化性樹脂組成物を得、その硬化性樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成型機等を用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
【0045】
また本発明の硬化性樹脂組成物Aをトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物Aの硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物のままRTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
【0046】
また本発明の硬化性樹脂組成物Aをフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはBステージにおけるフレキシビリティ特性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物Aを前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板等における層間絶縁層として使用することができる。
【0047】
次に本発明の硬化性樹脂組成物Aを光半導体の封止材又はダイボンド材として用いる場合について詳細に説明する。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物Aを、高輝度白色LED等の光半導体の封止材又はダイボンド材として用いる場合には、本発明のエポキシ樹脂、多価カルボン酸等を含む硬化剤、カップリング材、酸化防止剤および光安定剤等の添加物を充分に混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製し、封止材、またはダイボンド材と封止材の両方に使用する。混合方法としては、ニーダー、三本ロール、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー、ビーズミル等を用いて常温または加温して混合する。
【0049】
高輝度白色LED等の光半導体素子は、一般的にサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の基板上に積層させたGaAs、GaP、GaAlAs,GaAsP、AlGa、InP、GaN、InN、AlN、InGaN等の半導体チップを、接着剤(ダイボンド材)を用いてリードフレーム、放熱板あるいはパッケージに接着させてなる。電流を流すために金ワイヤー等のワイヤーが接続されているタイプもある。その半導体チップを、熱や湿気から守り、且つレンズ機能の役割を果たすためにエポキシ樹脂等の封止材で封止されている。本発明の硬化性樹脂組成物Aはこの封止材やダイボンド材として用いることができる。工程の都合上、本発明の硬化性樹脂組成物Aをダイボンド材と封止材の両方に使用するのが好ましい。
【0050】
半導体チップを、本発明の硬化性樹脂組成物Aを用いて、基板に接着する方法としては、本発明の硬化性樹脂組成物Aをディスペンサー、ポッティング、スクリーン印刷により塗布した後、半導体チップをのせて加熱硬化を行い、半導体チップを接着させることができる。加熱は、熱風循環式、赤外線、高周波等の方法が使用できる。加熱条件は例えば80〜230℃で1分〜24時間程度が好ましい。加熱硬化の際に発生する内部応力を低減する目的で、例えば80〜120℃、30分〜5時間予備硬化させた後に、120〜180℃、30分〜10時間の条件で後硬化させることができる。
【0051】
封止材の成形方式としては上記のように半導体チップが固定された基板を挿入した型枠内に封止材を注入した後に加熱硬化を行い成形する注入方式、金型上に封止材をあらかじめ注入し、そこに基板上に固定された半導体チップを浸漬させて加熱硬化をした後に金型から離形する圧縮成形方式等が用いられている。注入方法としては、ディスペンサー、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。加熱は、熱風循環式、赤外線、高周波等の方法が使用できる。
加熱条件は例えば80〜230℃で1分〜24時間程度が好ましい。加熱硬化の際に発生する内部応力を低減する目的で、例えば80〜120℃、30分〜5時間予備硬化させた後に、120〜180℃、30分〜10時間の条件で後硬化させることができる。
【0052】
硬化性樹脂組成物B(酸性硬化触媒によるカチオン硬化)
酸性硬化触媒を用いて硬化させる本発明の硬化性樹脂組成物Bは、酸性硬化触媒として光重合開始剤あるいは熱重合開始剤を含有する。さらに、希釈剤、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合開始補助剤、光増感剤等の各種公知の化合物、材料等を含有していてもよい。また、所望に応じて無機充填材、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤等、各種公知の添加剤を含有してもよい。
【0053】
酸性硬化触媒としてはカチオン重合開始剤が好ましく、光カチオン重合開始剤が特に好ましい。カチオン重合開始剤としてはヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩を有するものが挙げられ、これらは単独または2種以上で使用することができる。
活性エネルギー線カチオン重合開始剤の例は、金属フルオロホウ素錯塩および三フッ化ホウ素錯化合物(米国特許第3379653号明細書)、ビス(ペルフルアルキルスルホニル)メタン金属塩(米国特許第3586616号明細書)、アリールジアゾニウム化合物(米国特許第3708296号明細書)、VIa族元素の芳香族オニウム塩(米国特許第4058400号明細書)、Va族元素の芳香族オニウム塩(米国特許第4069055号明細書)、IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート(米国特許第4068091号明細書)、チオピリリウム塩(米国特許第4139655号明細書)、MF6−陰イオンの形のVIb族元素(米国特許第4161478号明細書;Mはリン、アンチモンおよび砒素から選択される。)、アリールスルホニウム錯塩(米国特許第4231951号明細書)、芳香族ヨードニウム錯塩および芳香族スルホニウム錯塩(米国特許第4256828号明細書)、およびビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(Journal of Polymer Science, Polymer Chemistry、第2巻、1789項(1984年))である。その他、鉄化合物の混合配位子金属塩およびシラノール−アルミニウム錯体も使用することが可能である。
また、具体例としては、「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」(いずれも旭電化工業社製)、「UVE−1014」(ゼネラルエレクトロニクス社製)、「CD−1012」(サートマー社製)、「RP−2074」(ローディア社製)等が挙げられる。
該カチオン重合開始剤の使用量は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、好ましくは、0.01〜50重量部であり、より好ましくは、0.1〜10重量部である。
【0054】
更に、これらの光カチオン重合開始剤と公知の重合開始補助剤および光増感剤の1種または2種以上を同時に使用することが可能である。重合開始補助剤の例としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノールプロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アセトフェノンジメチルケタール、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤等の重合開始補助剤の使用量は、光ラジカル重合可能な成分100重量部に対して、0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0055】
光増感剤の具体例としては、アントラセン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アクリジン オレンジ、アクリジン イエロー、ホスフィンR、ベンゾフラビン、セトフラビンT、ペリレン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。光増感剤の使用量は、全エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0056】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物Bには、必要に応じて無機充填剤やシランカップリング材、離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。具体的な例としては前述の通りである。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物Bは、各成分を均一に混合することにより得られる。またポリエチレングリコールモノエチルエーテルやシクロヘキサノン、γブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させ、均一とした後、乾燥により溶剤を除去して使用することも可能である。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物Bと該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。本発明の硬化性樹脂組成物Bは紫外線照射することにより硬化できるが、その紫外線照射量については、硬化性樹脂組成物の配合に依存して異なるため、それぞれの硬化条件によって決定される。硬化性樹脂組成物が硬化する照射量であれば良く、硬化物の接着強度が良好である硬化条件を満たしていれば良い。この硬化の際、光が細部まで透過することが必要であることから、本発明のエポキシ樹脂および硬化性樹脂組成物Bにおいては透明性の高いものが望まれる。またこれらエポキシ樹脂系の光硬化では光照射のみでは完全に硬化することが難しく、耐熱性が求められる用途においては光照射後に加熱を行なうことにより、完全に反応硬化を終了させる必要がある。
【0058】
光照射後に加熱を行なう場合は、通常の硬化性樹脂組成物Bの硬化温度域で行なうことができる。例えば常温〜150℃で30分〜7日間の範囲が好適である。硬化性樹脂組成物Bの配合により変化するが、特に高い温度域であればあるほど光照射後の硬化促進に効果があり、短時間の熱処理で効果がある。また、低温であればあるほど長時間の熱処理を要する。このような熱アフターキュアすることで、エージング処理になるという効果も出る。
【0059】
また、これら硬化性樹脂組成物Bを硬化させて得られる硬化物の形状も用途に応じて種々とりうるので特に限定されないが、例えばフィルム状、シート状、バルク状等の形状とすることもできる。成形する方法は適応する部位、部材によって異なるが、例えば、キャスト法、注型法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、転写法、ディスペンサー方式等の成形方法を適用することができるが、これらに限定されるものではない。成形型は研磨ガラス、硬質ステンレス研磨板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリメチルメタクリレート板等を適用することができる。また、成形型との離型性を向上させるためポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等を適用することができる。
【0060】
例えばカチオン硬化性のレジストに使用する際においては、まず、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルやシクロヘキサノンあるいはγブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させた本発明の光カチオン型の硬化性樹脂組成物Bを、銅張積層板やセラミック基板またはガラス基板等の基板上に、スクリーン印刷、スピンコート法等の手法によって、5〜160μmの膜厚で塗布し、塗膜を形成する。そして、該塗膜を60〜110℃で予備乾燥させた後、所望のパターンの描かれたネガフィルムを通して紫外線(例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、レーザー光等)を照射し、次いで70〜120℃で露光後ベーク処理を行う。その後ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等の溶剤で未露光部分を溶解除去(現像)した後、さらに必要があれば紫外線の照射及び/または加熱(例えば100〜200℃で0.5〜3時間)によって十分な硬化を行い、硬化物を得る。このようにしてプリント配線板を得ることも可能である。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物A及び硬化性樹脂組成物Bを硬化してなる硬化物は光学部品材料をはじめ各種用途に使用できる。光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザー等の光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。より具体的には、ランプタイプあるいはSMDタイプ等のLED用封止材の他、以下のようなものが挙げられる。液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等の液晶用フィルム等の液晶表示装置周辺材料である。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLEDのモールド材、LEDの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤である。光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等である。
【0062】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部である。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーである。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等である。光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルム等である。光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤等である。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤等である。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止材、CCDの封止材、接着剤等である。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等である。光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等、工業用途のセンサー類、表示・標識類等、また通信インフラ用及び家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーである。半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料である。自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーハーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品である。また、鉄道車輌用の複層ガラスである。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーハーネス、耐蝕コートである。建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料である。農業用では、ハウス被覆用フィルムである。次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等である。
【0063】
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI等用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TAB等用のといったポッティング封止、フリップチップ等の用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSP等のICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィル)等を挙げることができる。
【0064】
光学用材料の他の用途としては、硬化性樹脂組成物A及び硬化性樹脂組成物Bが使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、基板用のシアネート樹脂組成物や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、エポキシ当量はJIS K−7236、粘度は25℃においてE型粘度計を使用して測定を行った。またガスクロマトグラフィー(以下、GC)における分析条件は分離カラムにHP5−MS(0.25mm I.D.x 15m, 膜厚0.25μm)を用いて、カラムオーブン温度を初期温度100℃に設定し、毎分 15℃の速度で昇温させ300℃で25分間保持した。またヘリウムをキャリヤーガスとした。さらにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)の測定においては以下の通りである。カラムは、Shodex SYSTEM−21カラム(KF−803L、KF−802.5(×2本)、KF−802)、連結溶離液はテトラヒドロフラン、流速は1ml/min.カラム温度は40℃、また検出はRIで行い、検量線はShodex製標準ポリスチレンを使用した。
【0066】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水10部、12−タングストリン酸2.0部、タングステン酸ナトリウム3.0部、燐酸水素2ナトリウム3.2部、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート2.9部(ライオンアクゾ製 50重量%キシレン溶液、TOMAA−50)、トルエン130部、3−シクロヘキセンメチル=3−シクロヘキセンカルボキシラートを220部加え、この溶液を48℃に昇温し、激しく攪拌しながら、35重量%過酸化水素水220部を30分で加え、そのまま48℃で14時間攪拌した。
反応終了後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液45部を加え30分攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、ここに活性炭(味の素ファインテクノ製 CP2)20部、モンモリロナイト(クニミネ工業製 クニピアF)20部を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過した。得られたろ液を水100部で3回水洗を行い、得られた有機層より、トルエンを留去することで、常温で無色の液状のエポキシ樹脂(EP−1)222部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は130g/eq.、粘度は205mPa・s(25℃)であった。
【0067】
合成例2
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン106部、重量平均分子量1700(GPC測定値)のシラノール末端メチルフェニルシリコーンオイル234部(シラノール当量850、GPCを用いて測定した重量平均分子量の1/2として算出した。)、0.5%水酸化カリウム(KOH)メタノール溶液18部を反応容器に仕込み、バス温度を75℃に設定し、昇温した。昇温後、還流下にて8時間反応させた。
ついで、メタノールを305部追加後、蒸留水のメタノール溶液(濃度50重量%)86.4部を60分かけて滴下し、還流下75℃にて8時間反応させた。反応終了後、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液で中和後、80℃でメタノールの約90%を蒸留回収した。メチルイソブチルケトン380部を添加し、200部の水で水洗を3回繰り返した。次いで有機相をロータリーエバポレータを用い、減圧下、100℃で溶媒を除去することによりシロキサン構造を有するエポキシ樹脂(EP−2)300部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は729g/eq、粘度は1090mPa・s(25℃)、重量平均分子量は2200、外観は無色透明であった。
【0068】
合成例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置、ディーンスターク管を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(岩谷瓦斯製 DMCD−p)140部、シクロヘキセン−4−メタノール314部、テトラブトキシチタン0.07部を加え、120℃1時間、150℃1時間、170℃1時間、190℃12時間、反応により生成するメタノールを抜きながら反応を行った。ガスクロマトグラフィー(GC)で反応した後、50℃まで冷却した。
冷却終了後、347部のトルエンを加え均一にした後、反応溶液を10重量%水酸化ナトリウム水溶液80部で3回洗浄し、さらに水100部/回で廃水が中性になるまで水洗を繰り返し、ロータリーエバポレータで加熱減圧下、トルエンと未反応の3−シクロヘキセン−1−メタノールを留去することによりビス(3−シクロヘキセニルメチル)=1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を主成分とする常温で液状の化合物(D−1)が240部得られた。
【0069】
合成例4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水15部、12−タングストリン酸0.95部、燐酸水素2ナトリウム0.78部、トリオクチルアンモニウムアセテート50%キシレン溶液2.7部、トルエン180部、合成例3で得られた化合物(D−1)を118部加え、この溶液を60℃に昇温し、激しく攪拌しながら、35重量%過酸化水素水70部を1時間で加え、そのまま60℃で13時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにて反応の進行を確認したところ、原料ピークは消失していた。
ついで1重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液25部を加え30分攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、ここに活性炭(味の素ファインテクノ製 CP1)20部、ベントナイト(ホージュン製 ベンゲルSH)20部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過した。得られたろ液を水100部で3回水洗を行い、得られた有機層より、トルエンを留去することで、常温で液状のエポキシ樹脂(EP−3)119部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は217g/eq.、粘度は7520mPa・s(25℃)であった。
【0070】
実施例1、2、比較例1、2
実施例として、合成例1で得られたエポキシ樹脂(EP−1)、トリシクロデカンジメタノール(AL−1)、比較例として、トリメチロールプロパン(AL−2)を以下表1に記載の配合量で均一に混合し、実施例用の硬化性樹脂組成物(F−1)(F−2)と比較例用の硬化性樹脂組成物(F−3)(F−4)を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例3、4、5、比較例3、4、5
得られた硬化性樹脂組成物(F−1)(F−2)(F−3)(F−4)およびエポキシ樹脂(EP−1)に対し、酸性硬化促進剤(カチオン重合開始剤)(三新化学工業製 サンエイド SI−60 以下、C−1と称す。)を以下表2に記載する配合量で配合し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0073】
さらに、得られた化合物について保存安定性、硬化性について評価した。結果については、同様に表2に示した。
(評価方法)
・保存安定性:
硬化性樹脂組成物を24時間室温で保管した際の保管安定性。24時間でゲル化していれば×、液状を保っていれば○とした。
・硬化性:
80℃1時間で硬化した際の硬化性。硬化したものを○、硬化しないもの(流動性があるもの或いは半固形状態のもの)を×とした。
【0074】
【表2】

【0075】
以上の結果から、トリメチロールプロパン等のアルコールであれば、硬化性が良い範囲の量を入れると保存安定性が悪く、保存安定性を求めると硬化性が悪くなる(比較例3、4)。また、アルコールを入れなければ硬化性、保存安定性は確保できる(比較例5)。
【0076】
実施例6、7、比較例6、7
得られた硬化性樹脂組成物(F−1)およびエポキシ樹脂(EP−1)に対し、酸性硬化促進剤(C−1)を以下表3に記載する配合量で配合し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0077】
さらに、得られた化合物について透湿度について評価した。結果については、同様に表3に示した。
(評価方法)
透湿度
湿度条件 60℃ 90% 24時間
硬化条件 80℃1時間
【0078】
【表3】

【0079】
以上の結果から本発明の硬化性樹脂組成物は耐透湿性に有効であることがわかる。
【0080】
実施例8、比較例8
得られた硬化性樹脂組成物(F−1)およびエポキシ樹脂(EP−1)に対し、酸性硬化促進剤(C−1)を以下表4に記載する配合量で配合し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0081】
さらに、得られた化合物について接着せん断強度について評価した。結果については、同様に表4に示した。
(評価方法)
・接着せん断強度
硬化条件:80℃1時間
吸湿試験条件 60℃ 90% 63時間
【0082】
【表4】

【0083】
以上の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は接着性に優れるだけでなく、高い耐湿性を有することがわかる。
【0084】
実施例9、10、比較例9、10
実施例1と同様にして、実施例用の硬化性樹脂組成物(F−1)、(F−5)、比較例用の硬化性樹脂組成物(F−3)、(F−6)を作成した。組成については表5に示す。
得られた硬化性樹脂組成物について硬化剤としてメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(新日本理化製 リカシッドMH 以下、H−1と称す。)、硬化促進剤として4級ホスホニュウム塩(日本化学工業製 ヒシコーリンPX4MP 以下、C−2と称す。)を使用し、以下、表5に記載する配合量で配合し、それぞれ硬化性樹脂組成物を得た。
【0085】
さらに、得られた化合物について保存安定性について評価した。結果については、同様に表5に示した。
(評価方法)
・保存安定性:
室温で4時間放置した際の粘度上昇を初期の粘度と4時間後の粘度で比較した
粘度上昇が激しいほど、保存安定性は悪いと判断できる。
【0086】
【表5】

【0087】
以上の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物を使用した硬化性樹脂組成物は保管安定性に優れることがわかる。
【0088】
実施例11、12、比較例11
実施例用の硬化性樹脂組成物(F−1)(F−5)、比較例用としてエポキシ樹脂(EP−1)に対し、酸無水物(H1)を硬化剤といて用い、硬化促進剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(東京化成工業(株)製 25%メタノール溶液、以下C−3と称す。)を使用し、下記表6に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、硬化性樹脂組成物を得た。
【0089】
得られた硬化性樹脂組成物を用い、以下に示す要領で、揮発試験をおこない、結果を表6に合わせて示す。なお、硬化条件は120℃×2時間の予備硬化の後150℃×5時間である。
【0090】
(揮発試験)
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を真空脱泡20分間実施後、30mm×20mm×高さ1mmになるように耐熱テープでダムを作成したガラス基板上に静かに注型した。注型された樹脂の重量を正確に測定後、その注型物を前述の条件で硬化させた。
このようにして得られた硬化物の重量を測定し、硬化時の重量減少を確認した。(実施例、比較例の硬化は同じオーブンで同様に硬化させた)
【0091】
【表6】

【0092】
実施例11、12と比較例11を比較すると、本発明の硬化性樹脂組成物は、揮発量が少ない。本発明の硬化性樹脂組成物は硬化時の揮発を抑える効果があることがわかる。
【0093】
実施例13、14、比較例12
エポキシ樹脂として合成例1で得られたオルガノポリシロキサン化合物(EP−2)を用い、表7に記載の配合で硬化性樹脂組成物(F−7)(F−8)を作成した。硬化剤として、酸無水物(H−1)を用い、硬化促進剤として硬化促進剤(C−2)を使用し、下記表7に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、本発明または比較用の硬化性樹脂組成物を得た。
【0094】
(腐食ガス透過性試験)
得られた硬化性樹脂組成物を用い、シリンジに充填し精密吐出装置を用いて、中心発光波465nmのチップを搭載した外径5mm角表面実装型LEDパッケージ(内径4.4mm、外壁高さ1.25mm)に注型した。その注型物を加熱炉に投入して、120℃、1時間さらに150℃、3時間の硬化処理をしてLEDパッケージを作成した。下記条件でLEDパッケージを腐食性ガス中に放置し、封止内部の銀メッキされたリードフレーム部の色の変化を観察した。結果については、表7に示した。
【0095】
測定条件
腐食ガス:硫化アンモニウム20%水溶液(硫黄成分が銀と反応した場合に黒く変色する)
接触方法:広口ガラス瓶の中に、硫化アンモニウム水溶液の容器と前記LEDパッケージを混在させ、広口ガラス瓶の蓋をして密閉状況下、揮発した硫化アンモニウムガスとLEDパッケージを接触させた。
腐食の判定:LEDパッケージ内部のリードフレームが黒く変色(黒化という)した時間を観察し、その変色時間が長い物ほど、耐腐食ガス性にすぐれていると判断した。
観察は10分後、30分後、1時間後で取り出して確認をし、評価は変色無しの物を○、変色が始まったものを△、茶色〜褐色の物を×、完全に黒化した物を××と記した。
【0096】
【表7】

【0097】
上記結果より、本発明の硬化性樹脂組成物は、比較例の硬化性樹脂組成物にくらべ、リードフレームの銀メッキが変色しないことが明らかになり、耐腐食ガス性に優れていることが明らかである。
【0098】
実施例15、16
合成例1、4で得られたエポキシ樹脂(EP−1)(EP−3)を用い、表8に記載の配合で硬化性樹脂組成物(F−9)(F−10)を作成した。硬化剤として、酸無水物(H−1)、1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸 3,4−無水物(三菱瓦斯化学製 H-TMAn、以下 H−2と称す。)を、硬化促進剤として硬化促進剤(C−2)を使用し、下記表8に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、本発明の硬化性樹脂組成物を得た。
(透過率試験)
得られた硬化性樹脂組成物を真空脱泡20分間実施後、30mm×20mm×高さ1mmになるように耐熱テープでダムを作成したガラス基板上に静かに注型した。その注型物を、120℃×3時間の予備硬化の後150℃×1時間で硬化させ、厚さ1mmの透過率用試験片を得た。400nmにおけるそれぞれの硬化物の透過率を測定した。
(LED点灯試験)
得られた硬化性樹脂組成物をシリンジに充填し精密吐出装置を用いて、中心発光波465nmのチップを搭載した外径5mm角表面実装型LEDパッケージ(内径4.4mm、外壁高さ1.25mm)に注型した。その注型物を加熱炉に投入して、120℃、1時間さらに150℃、3時間の硬化処理をしてLEDパッケージを作成した。LEDを実装後、下記条件でLEDを点灯させて照度を測定し、結果については、表8に示した。
点灯詳細条件
発光波長:465nm
駆動方式:定電流方式、60mA(発光素子規定電流は30mA)
駆動環境:85℃、85%
駆動時間:200時間
評価 :200時間点灯後の照度保持率
【0099】
【表8】

【0100】
以上の結果から本発明の硬化性樹脂組成物は光学特性に優れ、また耐腐食ガス性等の特性にも優れる光学材料に有用な化合物であることがわかった。また、貯蔵安定性、硬化時の揮発分の少なさから硬化性樹脂組成物とした際の特性においても優れた特性を有することが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン構造を有するアルコールを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂が脂環式エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂がエポキシシクロヘキサン構造及びシロキサン構造を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物と硬化剤および/または硬化促進剤を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
硬化剤が酸無水物であることを特徴とする請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4、5のいずれか一項に記載のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項7】
請求項4、5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を含有する光半導体装置。

【公開番号】特開2011−246531(P2011−246531A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118877(P2010−118877)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】