説明

硬化性積層体および硬化性積層体の製造方法

【課題】本発明は、未硬化の硬化型材料が含まれる硬化性層を有する硬化性積層体であって、互いに重ね合わされた際に上記硬化性層から硬化型材料が染み出すことがなく、工程汚染を生じることが少ない硬化性積層体を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基材と、上記基材上に形成され、硬化型材料を含有する硬化性層と、を有する硬化性積層体であって、上記硬化性層の端部のみが硬化されていることを特徴とする硬化性積層体を提供することにより、上記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラム層転写箔等を作製するために好適に用いられ、硬化型材料を含有する硬化性層を備える硬化性積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、波長の等しい二つの光(物体光と参照光)を干渉させることによって、物体光の波面が干渉縞として感光材料に記録されたものであり、干渉縞記録時の参照光と同一波長の光が当てられると干渉縞によって回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できるものである。このようなホログラムは、外観が美しく、複製が困難である等の利点を有することから、セキュリティ用途等に多く使用されている。なかでもクレジットカードや、キャッシュカード等に代表されるプラスチックカードにおいては、主として複製防止および意匠性付与の観点からホログラム付カードが広く用いられるに至っている。
【0003】
現在、産業上にホログラムは、干渉縞の記録形態によっていくつかの種類に分類することができるが、代表的には表面レリーフ型ホログラムと体積型ホログラムとに分けることができる。ここで、上記表面レリーフ型ホログラムは、ホログラム層の表面に微細な凹凸パターンが賦型されることによりホログラムが記録されたものである。一方、上記体積型ホログラムは光の干渉によって生じる干渉縞が、屈折率の異なる縞として厚み方向に三次元的に描画されることによってホログラムが記録されたものである。なかでも、上記体積型ホログラムは材料の屈折率差によってホログラム像が記録されたものであるため、上記レリーフ型ホログラムに比べて複製することが困難であるという利点を有する。このため、上記体積型ホログラムは、有価証券やカード類の偽造防止手段としての用途が期待されている。
【0004】
ここで、上記体積型ホログラムを、意匠性の付与や偽造防止手段等として用いる場合、任意の基材上に体積型ホログラムが形成された体積型ホログラム層転写箔から、体積型ホログラムを転写することによって体積型ホログラムを所定の位置に貼付する方法が広く用いられるに至っている(例えば、特許文献1、2)。このような方法は、体積型ホログラムを所定の位置に選択的に添付することができる点において有用である。しかしながら、上記体積型ホログラム層転写箔は、それを製造する過程において工程を汚染しやすいという問題点があった。
すなわち、上記体積型ホログラム層転写箔は通常、長尺状に形成されるものであるが、体積型ホログラム層転写箔を形成する際には、基材上に光硬化型材料を含有する未露光の体積型ホログラム層を作製した後、後工程において当該未露光の体積型ホログラム層にホログラムを記録する方法が用いられる。このとき、上記未露光の体積型ホログラム層を形成する工程と、上記ホログラムを記録する工程とは、通常、別の工程になっていることから、上記未露光の体積型ホログラム層が形成された積層体を、一旦ロール状に巻き取ってから、別の工程に移動させた後に、再度送り出してホログラムを記録する必要がある。しかしながら、ホログラムが記録される前の体積型ホログラム層は、未だ光硬化型材料が硬化されていないことから物理的強度が十分ではないため、一旦ロール状に巻き取った際に体積型ホログラム層が経時で変形し、巻き取ったロールの端部に光硬化型材料が染み出すことに起因して工程が汚染されてしまうことが問題となっている。
【0005】
このような問題を解決するため、ホログラムが記録される前の体積型ホログラム層の状態で巻き取る際の、巻き取りテンションを低下させる方法も考えられる。しかしながら、このような方法では巻き取ったロールを移動する際に巻きずれ等が生じてしまうという新たな問題点が生じる可能性が高く、容易に採用することはできないのが実情である。
【0006】
さらに、このような問題は、上記体積型ホログラム層転写箔に限られるものではなく、未硬化の硬化型材料を含有する硬化性層を備える積層体を取り扱う際の共通の問題になっている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−11319号公報
【特許文献2】特開2007−11318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、未硬化の硬化型材料が含まれる硬化性層を有する硬化性積層体であって、互いに重ね合わされた際に上記硬化性層から硬化型材料が染み出すことがなく、工程汚染を生じることが少ない硬化性積層体を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、基材と、上記基材上に形成され、硬化型材料を含有する硬化性層と、を有する硬化性積層体であって、上記硬化性層の端部のみが硬化されていることを特徴とする硬化性積層体を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記硬化性層は未硬化の硬化型材料を含有するものであるが、上記硬化性層の端部のみが硬化されていることにより、硬化性積層体が互いに重ね合わされた際に上記硬化性層の端部が変形することを防止できる。このため、本発明によれば互いに重ね合わされた際に上記硬化性層から硬化型材料が染み出すことを抑制することができるため、工程汚染の少ない硬化性積層体を提供することができる。
【0011】
本発明においては上記硬化型材料が、光硬化型材料であることが好ましい。上記硬化型材料が光硬化型材料であることにより、本発明の硬化性積層体を製造する際に、上記硬化性層の端部のみを選択的に硬化させることが容易になるからである。
【0012】
また、上記硬化性層が体積型ホログラムを記録することが可能なものであることが好ましい。これにより、本発明の硬化性積層体を用いて、工程汚染を発生させることなく、体積型ホログラム層転写箔を作製することが可能になるからである。
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、基材を用い、上記基材上に硬化型材料を含有する硬化性層形成用塗工液を塗布することにより、硬化性層を形成する硬化性層形成工程と、上記硬化性層の端部のみを硬化させる硬化工程とを有することを特徴とする硬化性積層体の製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記硬化工程が上記硬化性層の端部のみを選択的に硬化させるものであることにより、端部のみが硬化された硬化性層を備える硬化性積層体を作製することができる。
このため、本発明によれば互いに重ね合わされた際に上記硬化性層から硬化型材料が染み出すことがなく、工程汚染を生じることが少ない硬化性積層体を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬化性積層体は、互いに重ね合わされた際に上記硬化性層から硬化型材料が染み出すことを防止でき、工程汚染を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、硬化性積層体および硬化性積層体の製造方法に関するものである。以下、本発明の硬化性積層体および硬化性積層体の製造方法について順に説明する。
【0017】
A.硬化性積層体
まず、本発明の硬化性積層体について説明する。本発明の硬化性積層体は、基材と、上記基材上に形成され、硬化型材料を含有する硬化性層とを有するものであって、上記硬化性層の端部のみが硬化されていることを特徴とするものである。
【0018】
このような本発明の硬化性積層体について図を参照しながら説明する。図1は本発明の硬化性積層体の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明の硬化性積層体10は、基材1と、上記基材1上に形成され、硬化型材料を含有する硬化性層2とを有するものである。
このような例において、本発明の硬化性積層体10は、上記硬化性層2のうち、端部(図1中、Xで示す領域)のみが選択的に硬化されたものであり、その他の部位の硬化性層2は未硬化の状態にあることを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、上記硬化性層は未硬化の硬化型材料を含有するものであるが、上記硬化性層の端部のみが硬化されていることにより、硬化性積層体が互いに重ね合わされた際に上記硬化型材料が硬化性層の端部から染み出すことを防止できる。ここで、本発明において上記硬化性層の端部のみが硬化されていることにより、硬化性積層体が互いに重ね合わされた際に上記硬化型材料が端部から染み出すことを防止できる理由は次の通りである。
すなわち、従来、硬化性層の端部から硬化型材料が染み出す原因は、未硬化の硬化性材料を含有する硬化性層は、その物理的強度が十分でなかったため、互いに重ね合された際に大きな圧力が加わると、硬化性層が押し潰されることに起因するものであった。
この点、本発明によれば上記硬化性層の端部のみが選択的に硬化されていることにより、上記端部の物理的強度を十分なものにすることができる。このため、仮に硬化性積層体が互いに重ねあわされた際に大きな圧力が加わったとしても、上記硬化性層の端部が変形することを防止できるため、上記硬化型材料が端部から染み出すことを防止することができるのである。
このようなことから本発明によれば、互いに重ね合わされた際に上記硬化性層から硬化型材料が染み出すことがなく、工程汚染の少ない硬化性積層体を提供することができる。
【0020】
本発明の硬化性積層体は、少なくとも上記基材と、上記硬化性層とを有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について順に説明する。
【0021】
1.硬化性層
まず、本発明に用いられる硬化性層について説明する。上述したように本発明に用いられる硬化性層は、硬化型材料を含有するものであり、端部のみが選択的に硬化され、端部以外の部位は未硬化の状態のものである。
【0022】
このように、本発明に用いられる硬化性層は、端部のみが選択的に硬化されたものであるが、ここで硬化されている端部の範囲としては、硬化性層に含まれる硬化型材料の種類や、本発明の硬化性積層体の用途に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、硬化されている端部の範囲が硬化性層の全幅に対して、両端から0.01%〜10%の範囲内であることが好ましく、特に0.01%〜5%の範囲内であることが好ましく、さらに0.01%〜1%の範囲内であることが好ましい。硬化されている端部の範囲が上記範囲よりも少ないと、硬化性層に含まれる硬化型材料の種類によっては、端部の物理的強度が不十分になり、本発明の目的を達成できない場合があるからである。一方、上記範囲よりも広いと、例えば、本発明の硬化性積層体を用いて、体積型ホログラム層転写箔等を作製した際に、体積型ホログラムを記録できる領域が小さくなってしまうため、生産性が損なわれるおそれがあるからである。
【0023】
ここで、上記端部の範囲について図を参照しながら説明する。図2は上記端部の範囲について説明する概略図である。図2に示すように、本発明における硬化性層2の全幅をPとし、硬化された端部の幅をQとした場合に、上記端部の範囲とは、(Q/P)×100で表わされる値を意味するものとする。
【0024】
また、本発明においては、硬化性層の端部のみが選択的に硬化されていることを特徴とするものであるが、本発明において上記端部が硬化されている程度としては、硬化されている端部に存在する硬化型材料が完全に硬化されている場合に限定されるものではなく、上記端部の領域に存在する硬化型材料の一部が硬化されている場合も含むものである。
なかでも本発明において上記端部が硬化されている程度としては、硬化性材料の反応率が10%以上であることが好ましく、10%〜100%の範囲内であることがより好ましい。
ここで、上記硬化性材料の反応率は、硬化前と硬化後とでの硬化性材料が有する硬化性官能基の存在量の変化を求めることによって算出することができる。より具体的には赤外分光測定により硬化前の硬化性官能基由来のピーク高さをIbef、硬化後のピーク高さをIaftとしたとき、(Ibef−Iaft)/Ibef×100(%)により反応率を求めることができる。
【0025】
なお、本発明においては、通常、硬化性層の両端部が同程度に硬化されることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明に用いられる硬化性層は端部のみが硬化されたものであり、これによって硬化型材料が染み出すことを防止できるものであるが、本発明において上記硬化された端部と、端部以外の硬化されていない部位との硬さの差としては、上記硬化型材料が染み出すことを防止できる範囲内であれば特に限定されるものではない。
【0027】
本発明に用いられる硬化性層の厚みは、本発明の硬化性積層体を用いて作製する目的物の種類に応じて、任意に決定することができるものであるが、なかでも本発明においては、硬化性層の厚みが、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、さらに5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0028】
次に、本発明における硬化性層に含まれる硬化型材料について説明する。本発明に用いられる硬化型材料としては、硬化処理を施すことにより硬化させることができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の硬化性積層体を用いて作製する目的物の種類に応じて、適宜、選択して用いることができる。このような、硬化型材料としては、例えば、加熱処理により硬化する熱硬化型材料、特定の活性放射線が照射されることによって硬化する活性放射線硬化型材料等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの硬化型材料であっても好適に用いることができる。
【0029】
上記熱硬化型材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等を挙げられ、UV硬化型接着剤としてはアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、カチオン重合系モノマー、アクリレートオリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー等を挙げることができる。
【0030】
なかでも活性放射線硬化型材料を用いることが好ましい。本発明の硬化性積層体は、通常、未硬化の硬化性層を形成した後、当該硬化性層の端部のみを選択的に硬化させることによって製造されるものであるが、このとき、上記硬化型材料として上記熱硬化型材料が用いられていると、端部に加熱処理を施した際に、伝熱によって硬化される領域が拡大し、所定の範囲のみを硬化させることが困難になる問題点がある。しかしながら、活性放射線硬化型材料では活性放射線が照射される領域を制御することが可能であるため、このような問題がなく、端部のみを硬化させることが容易になるからである。
【0031】
上記活性放射線硬化型材料としては、光を照射することによって硬化する光硬化型材料および電子線を照射することによって硬化する電子線硬化型材料等を挙げることができるが、なかでも本発明においては硬化処理設備の簡略化の観点から、光硬化型材料を用いることが好ましい。
【0032】
本発明に用いられる光硬化型材料としては特に限定されるものではなく、本発明の硬化性積層体を用いて作製する目的物の種類に応じて適宜選択して用いることができる。また、本発明に用いられる光硬化型樹脂は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0033】
ここで、本発明の硬化性積層体は、上記硬化性積層体に体積型ホログラムを記録することにより、体積ホログラム層転写箔や体積ホログラムラベルなどの体積型ホログラム積層体を作製するために用いることが好ましいものである。したがって、以下、本発明の硬化性積層体が体積型ホログラム積層体を作製するために用いられる場合に、好適に用いられる光硬化型材料について説明する。
【0034】
本発明の硬化性積層体が、体積型ホログラム積層体を作製するために用いられるものである場合、上記硬化性層に用いられる光硬化型材料としては、体積型ホログラムを記録することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に体積型ホログラムに用いられる光硬化型材料を任意に用いることができる。このような光硬化型材料としては、例えば、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等の公知の体積型ホログラム記録材料が挙げることできるが、なかでも本発明においては、(1)バインダー樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有する第1の光硬化型材料、または、(2)カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系および光カチオン重合開始剤系を含有する第2の光硬化型材料を好適に用いることができる。
以下、このような第1および第2の光硬化型材料について詳細に説明する。
【0035】
(1)第1の光硬化型材料
まず、上記第1の光硬化型材料について説明する。上述したように第1の光硬化型材料はバインダー樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有するものである。
【0036】
(バインダー樹脂)
上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、アクリル酸、アクリル酸エステル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体、またはそれらの混合物や、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリビニルアルコールの部分アセタール化物であるポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等、またはそれらの混合物等を挙げることができる。ここで、硬化性層を形成する際には、記録された体積型ホログラムを安定化するために、加熱してモノマーを移動させる工程が実施される場合がある。このため、本発明に用いられるバインダー樹脂はガラス転移温度が比較的低く、モノマー移動が容易に移動できるものであることが好ましい。
【0037】
(光重合可能な化合物)
上記光重合可能な化合物としては、後述するような1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびそれらの混合物を用いることができる。具体例としては、不飽和カルボン酸およびその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物等を挙げることができる。
【0038】
ここで、上記不飽和カルボン酸のモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等を挙げることができる。また上記脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート等を挙げることができる。
【0039】
上記メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等を挙げることができる。また、上記イタコン酸エステルとしてはエチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート等を挙げることができる。また、上記クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等を挙げることができる。さらに上記イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等を挙げることができる。さらにまた、上記マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレエート、トリエチレングリコールジマレエート、ペンタエリスリトールジマレエート、ソルビトールテトラマレエート等を挙げることができる。
【0040】
上記ハロゲン化不飽和カルボン酸としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
また、上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等を挙げることができる。
【0041】
(光重合開始剤)
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えば、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、N−フェニルグリシン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、また、イミダゾール二量体類等を挙げることができる。なかでも本発明に用いられる光重合開始剤は、記録された体積型ホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるものが好ましい。例えば有機過酸化物系にあっては紫外線照射することにより容易に分解されるので好ましい。
【0042】
(増感色素)
本発明に用いられる増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等を挙げることができる。
【0043】
(2)第2の光硬化型材料
次に、本発明に用いられる第2の光硬化型材料について説明する。上述したように第2の光硬化型材料は、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、および、カチオン重合開始剤系を含有するものである。
【0044】
ここで、このような第2光硬化型材料が用いられる場合、硬化性層に体積型ホログラムが記録する方法としては、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで、光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光とは別の波長の光を照射する方法が用いられることになる。
【0045】
(カチオン重合性化合物)
上記カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが好適に用いられる。このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0046】
(ラジカル重合性化合物)
上記ラジカル重合性化合物としては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、本発明に用いられるラジカル重合性化合物の平均屈折率は、上記カチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、なかでも0.02以上大きいことが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の差によって、体積型ホログラムが形成されることによるものである。したがって、平均屈折率の差が上記値以下である場合には、屈折率変調が不十分となるからである。本発明に用いられるラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等を挙げることができる。
【0047】
(光ラジカル重合開始剤系)
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤系としては、体積型ホログラムを記録する際に、第1露光によって活性ラジカルを生成し、該活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。このような光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明ホログラムとする場合には、シアニン系色素の使用が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、本発明における後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することでホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積型ホログラムを得ることができるからである。
【0048】
上記シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3´−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3´,9´−ジエチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、3,3´,9−トリエチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3´−カルボキシメチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´,9−トリエチル−2,2´−(4,5,4´,5´−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1´,3,3,3´,3´−ヘキサメチル−2,2´−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´−ジエチル−2,2´−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3´−カルボキシメチル−5´−クロロ−2,2´−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5´−ジフェニル−9−エチル−3,3´−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
上記活性ラジカル発生化合物としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム塩類の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4´−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4´−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4´−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3´−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩などが例示される。又2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4´−メトキシ−1´−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0050】
(光カチオン重合開始剤系)
本発明に用いられる光カチオン重合開始剤系としは、体積型ホログラムが記録される際の第1露光に対しては低感光性で、第1露光と異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが用いられることが特に好ましい。このような光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、鉄アレン錯体類等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0051】
(その他)
第2の光硬化型材料には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色料等を併用してもよい。バインダー樹脂は、ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物と相溶性のよいものであればよく、例えば塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖又は主鎖にカチオン重合性基等の反応性を有していてもよい。
【0052】
2.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、上述した硬化性層を支持するものである。
【0053】
本発明に用いられる基材としては、上記硬化性層を支持できるものであれば特に限定されるものではない。このような基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0054】
また、本発明に用いられる基材の厚みは、本発明によって製造される体積型ホログラム積層体の用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0055】
3.硬化性積層体
本発明の硬化性積層体は、少なくとも上記硬化性層と、基材とを有するものであるが、必要に応じて他の構成が用いられてもよい。本発明に用いられる他の構成としては特に限定されるものではなく、本発明の硬化性積層体の用途に応じて、所望の機能を有する構成を用いることができる。なかでも、本発明の硬化性積層体が体積型ホログラム層転写箔を作製するために用いられるものである場合、上記他の構成として、上記基材と、上記硬化性層との間に剥離性保護層が形成されていることが好ましい。
【0056】
本発明の硬化性積層体に剥離性保護層が形成されている場合について図を参照しながら説明する。図3は本発明の硬化性積層体に剥離性保護層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、本発明の硬化性積層体10は、基材1と、硬化性層2との間に剥離性保護層3が形成されていてもよい。
【0057】
ここで、本発明の硬化性積層体が体積型ホログラム層転写箔を作製するために用いられる場合に、上記剥離性保護層が用いられることが好ましい理由は次の通りである。
まず第1に、上記剥離性保護層が用いられることにより、基材と硬化性層との接着力を任意の範囲に調整することができるため、本発明の硬化性積層体を用いて作製された体積型ホログラム層転写箔から、体積型ホログラム記録された硬化性層(体積型ホログラム層)を転写させる際に、硬化性層の基材からの剥離性を向上させることができる。
第2に、上記剥離性保護層が用いられることにより、本発明の硬化性積層体を用いて作製された体積型ホログラム層転写箔から、体積型ホログラム記録された硬化性層(体積型ホログラム層)が被転写物へ転写された際に、硬化性層の表面が剥離性保護層によって覆われることになるため、転写された硬化性層を保護することができる。
【0058】
本発明に用いられる剥離性保護層に用いられる材料としては、例えばポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系およびメタアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の1種または2種以上混合したもの等を挙げることができる。
【0059】
また、本発明に用いられる剥離性保護層は上記基材と硬化性層との接着力を任意の程度に調整する機能を有するものであるが、特に本発明に用いられる剥離性保護層は、基材と硬化性層との間の剥離力を1〜5g/2.54mm巾(90°剥離)となるように調整できるものであることが好ましい。
【0060】
また、本発明の硬化性積層体に上記剥離性保護層が用いられる場合は、上記基材と上記剥離性保護層との接着性を向上させるために、上記剥離性保護層と上記基材との間にプライマー層が形成されてもよい。このようなプライマー層としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルあるいはアクリル酸等との共重合体、エポキシ樹脂等が用いられたものを挙げることができる。
【0061】
4.硬化性積層体の用途
本発明の硬化性積層体は、上記硬化性層に含有される硬化型材料を硬化させることによって、さまざまな機能を有する積層体を作製するために用いることができる。具体的な用途としては、上述した体積型ホログラム層転写箔、ホログラムラベル、電子部品用熱硬化フィルム、および特開2005−309334号公報に記載の感光材料等を挙げることができる。なかでも本発明の硬化性積層体は、上述した体積型ホログラム層転写箔を作製するために好適に用いられるものである。
【0062】
本発明の硬化性積層体が、体積型ホログラム層転写箔を作製するために用いられる場合、本発明の硬化性積層体を用いて体積型ホログラム層転写箔を作製する方法としては特に限定されるものではないが、通常、本発明の硬化性積層体を用い、上記硬化性積層体の硬化性層に体積型ホログラムを記録する体積型ホログラム記録工程と、上記体積型ホログラムが記録された硬化性層上にヒートシール層を形成するヒートシール層形成工程と、を有する方法が用いられる。
【0063】
上記体積型ホログラム記録工程において、上記硬化性層に体積型ホログラムを記録する方法としては、上記硬化性層に用いられる硬化型材料の種類に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されるものではない。すなわち、体積型ホログラムは、光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として光重合性材料を固定化することによってホログラム像を記録するものであるため、本工程において体積型ホログラムを記録する方法としても、上記硬化型材料の種類に応じて、硬化性層に所定の干渉縞を記録できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、本発明の硬化性積層体の基材側から参照光を入射し、硬化性層側から物体光を入射し、上記硬化性層内においてこれらの光を干渉させる方法や、硬化性層上にホログラム原版を配置し、基材側から光を入射することによって、当該入射光と上記ホログラム原版によって反射された反射光とを上記硬化性層内において干渉させる方法等を挙げることができる。
【0064】
上記ヒートシール層形成工程において、硬化性層上に形成されるヒートシール層としては、上記体積型ホログラムが記録された硬化性層を被転写物に熱転写することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、熱可塑性樹脂を含有するものとされる。
【0065】
上記熱可塑性樹脂としては、本発明の硬化性積層体を用いて作製された体積型ホログラム層転写箔から、体積型ホログラムが記録された硬化性層が転写される被転写体の種類に応じて、当該硬化性層と被転写体とを接着できるものであれば特に限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの熱可塑性樹脂であっても好適に用いることができる。
【0066】
なお、本発明に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0067】
上記ヒートシール層には、上記熱可塑性樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。本発明に用いられる添加剤としては、例えば、分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0068】
また、上記ヒートシール層の厚みは特に限定されるものではないが、通常、1μm〜11μmの範囲内であることが好ましく、なかでも1μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも薄いと被転写体との接着性が不十分になってしまう可能性があるからである。また上記範囲よりも厚いと、本発明の硬化性積層体を用いて作製された体積型ホログラム層転写箔から体積型ホログラム層を転写する際に、ヒートシール層を加熱する温度が高くなりすぎてしまい、基材等に損傷が生じてしまう可能性があるからである。
【0069】
なお、上記ヒートシール層は、上述した熱可塑性樹脂を含有するフィルムを上記硬化性層上にラミネートする方法や、上述した熱可塑性樹脂を含有する塗工液を上記硬化性層上に塗布する方法等によって形成することができる。
【0070】
5.硬化性積層体の製造方法
本発明の硬化性積層体は、例えば、後述する「B.硬化性積層体の製造方法」の項において説明する製造方法によって製造することができる。
【0071】
B.硬化性積層体の製造方法
次に、本発明の硬化性積層体の製造方法について説明する。上述したように、本発明の硬化性積層体の製造方法は、基材を用い、上記基材上に硬化型材料を含有する硬化性層形成用塗工液を塗布することにより、硬化性層を形成する硬化性層形成工程と、上記硬化性層の端部のみを硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とするものである。
【0072】
このような、本発明の硬化性積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図4は、本発明の硬化性積層体の製造方法の一例を示す概略図である。図1に例示するように本発明の硬化性積層体の製造方法は、基材1を用い(図4(a))、上記基材1上に、硬化型材料を含有する硬化性層形成用塗工液を塗布することにより、未硬化の硬化型材料を含有する硬化性層2’を形成する硬化性層形成工程と(図4(b))、上記硬化性層2’の両端部を選択的に硬化させる硬化工程(図4(c))と、を有し、基材1上に、両端部のみが硬化された硬化性層2を有する硬化性積層体を製造するものである(図4(d))。
【0073】
本発明によれば、上記硬化工程が上記硬化性層の端部のみを選択的に硬化させるものであることにより、端部のみが硬化された硬化性層を備える硬化性積層体を作製することができる。
このため、本発明によれば互いに重ね合わされた際に圧力が加わったとしても、上記硬化性層から硬化型材料が染み出すことがなく、工程汚染の少ない硬化性積層体を製造することができる。
【0074】
本発明の硬化性積層体の製造方法は、少なくとも、上記硬化性層形成工程と、上記硬化工程とを有するものであり、必要に応じて他の工程を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【0075】
1.硬化工程
まず、本発明に用いられる硬化工程について説明する。本工程は、後述する硬化性層形成工程において形成された硬化性層の端部のみを硬化させる工程である。
【0076】
ここで、本工程は、上記硬化性層の端部のみに硬化性材料を硬化させる硬化処理を施すことにより、端部のみを選択的に硬化させるものであるが、本工程における「端部」および、本工程において端部が硬化させる程度については、上記「A.硬化性積層体」の項において説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0077】
本工程において、硬化性層の端部を硬化するために用いられる硬化処理としては、上記硬化性層に含まれる硬化型材料の種類に応じて適宜決定されるものである。例えば、上記硬化型材料として熱硬化型材料が用いられている場合は、上記硬化処理としては上記硬化性層の端部を加熱する方法が用いられることになるし、一方、上記硬化型材料として光硬化型材料が用いられている場合は、上記硬化処理としては上記硬化性層の端部に所定の波長の光を照射する方法が用いられることになる。
【0078】
本工程において、上記硬化性層の端部のみを選択的に硬化させる方法としては、所望の端部の範囲を、所定の程度に硬化させることができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、通常、上記硬化性層の表面側から硬化性層に硬化処理を施す方法と、上記硬化性層の厚み方向から硬化性層に硬化処理を施す方法とを挙げることができる。
【0079】
これらの方法について図を参照しながら説明する。図5は、本工程において硬化性層の端部のみを硬化させる方法の一例を示す概略図である。図5に例示するように、本工程において硬化性層の端部のみを硬化させる方法としては、硬化性層2’の表面側から硬化性層2’に硬化処理を施す方法であってもよく(図5(a))、あるいは、上記硬化性層2’の厚み方向から硬化性層2’に硬化処理を施す方法(図5(b))であってもよい。
【0080】
本工程において、硬化性層の表面側から硬化処理を施す方法が用いられる場合、その態様としては所定の端部の範囲を、所定の程度に硬化することができる態様であれば特に限定されるものではない。このような態様としては、上記硬化性層の端部を直接的に硬化させる態様と、上記硬化性層の端部ではない領域に硬化処理を施し、その後、硬化性層の一部を裁断することによって上記硬化された領域を硬化性層の端部にする態様とを挙げることができる。
【0081】
これらの態様について図を参照しながら説明する。図6は、本工程において、硬化性層の表面側から硬化処理を施す態様の一例を示す概略図である。図6に例示するように、本工程に硬化性層2’の表面側から硬化処理を施す方法が用いられる場合、その態様としては、硬化性層2’の端部を直接的に硬化させる態様であってもよく(図6(a))、あるいは、上記硬化性層2’の端部ではない領域に硬化処理を施し(図6(b)−1)、その後、硬化性層2’の一部を裁断することによって上記硬化された領域を硬化性層2の端部にする(図6(b)−2)態様とを挙げることができる。
【0082】
ここで、上記図6においては、上記硬化性層の表面側から硬化処理を施す方法について説明したが、本工程において上記硬化性層に硬化処理を施す方法としては、このような方法に限定されるものではない。したがって、基材として照射光を透過するものを用いた場合は、基材側から硬化処理を施してもよい。
【0083】
一方、本工程において上記硬化性層の厚み方向から硬化性層に硬化処理を施す方法が用いられる場合、その態様としては所望の端部の範囲で硬化させることができる態様であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、後述する硬化性層形成工程において形成される基材と、硬化性層との積層体が互いに重ね合わされた状態で、上記硬化性層の端部に硬化処理を施す態様が好適に用いられる。
【0084】
このような態様について図を参照しながら説明する。図7は、本工程において上記硬化性層の厚み方向から硬化性層に硬化処理を施す態様の一例を示す概略図である。図7(a)に例示するように、硬化性層形成工程において形成される基材と、硬化性層との積層体10’が長尺状である場合は、当該積層体10'がロール状に巻き取られた状態で、ロールの端面に硬化処理を施すことにより、上記硬化性層の厚み方向から硬化性層を硬化させる態様が用いられることが好ましい。また、図6(b)に例示するように、上記積層体10’がシート状である場合は、複数枚の積層体10’が互いに重ね合わされた状態で、上記硬化性層の厚み方向から硬化性層を硬化させる態様が用いられることが好ましい。
【0085】
2.硬化性層形成工程
次に、本発明に用いられる硬化性層形成工程について説明する。本工程は、基材を用い、上記基材上に硬化型材料を含有する硬化性層形成用塗工液を塗布することにより、硬化性層を形成する工程である。
以下、このような本工程について詳細に説明する。
【0086】
なお、本工程に用いられる基材、および、硬化型材料については、上記「A.硬化性積層体」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0087】
本工程に用いられる硬化性層形成用塗工液の組成は、上記硬化型材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。また、必要に応じて上記硬化型材料以外に、上記硬化型材料を溶解させる溶媒や、各種添加剤が用いられてもよい。
【0088】
また、本工程において上記基材上に硬化性層形成用塗工液を塗布する方法としても、所望の厚みで均一に塗布できる方法であれば特に限定されるものではない。このような塗布方法については、一般的に塗工液の塗布方法として公知の方法を用いることができるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
1.実施例
基材として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラー50T60;東レ社製)を用い、上記基材上に以下の組成を有する硬化性層形成用塗工液を、グラビアコーターを使用して、乾燥膜厚10μmとなるように塗工、乾燥した。その後セパレータとして厚み50μmの離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SP−PET;東セロ(株)製)を用い、上記硬化性層と離型処理面とを向かいあわせてラミネートして、基材/硬化性層/セパレータからなる硬化性積層体1を得た。
【0092】
(硬化性層形成用塗工液)
・ポリ酢酸ビニル 35重量部
(デンカサクノールSN−08H:重合度800;電気化学工業(株)製)
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 25重量部
(デナコールEX−212;ナガセケムテックス(株)製)
・ジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート 35重量部
(BPEFA;大阪ガスケミカル(株)製)
・ジアリールヨードニウム塩 4重量部
(PI2074;ローディア製)
・2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン
1重量部
・メチルイソブチルケトン 100重量部
・1−ブタノール 100重量部
【0093】
上記で得た硬化性積層体1を巻き取る前に、硬化性積層体1の両端部各々10mmの箇所に、スポットUV照射装置(ウシオ電機製、SP9−250UV、スポット径10mmφ)にてUV光を1000mJ照射し、端部のみを硬化させた硬化性積層体ロール1を得た。
【0094】
上記で得た硬化性積層体ロール1を、20℃、30%の環境下で保管したところ、6ヶ月経過でも端部からの硬化性層の染み出しは見られず、面状の劣化も見られなかった。
【0095】
2.実施例2
実施例1で端部にUV光を照射しなかった他は同様な方法で作製した硬化性積層体ロール2の、側面部分を除く外周部全面に厚み75μmの黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラーX30;東レ(株)製)を巻きつけて外周部のみを遮光した。その後、両側の側面部分全面にUV光を照射し、端部のみを硬化させた硬化性積層体ロール3を得た。
上記で得た硬化性積層体ロール3を、20℃、30%の環境下で保管したところ、6ヶ月経過でも端部からの硬化性層の染み出しは見られず、面状の劣化も見られなかった。
【0096】
3.比較例
硬化性積層体ロール2を20℃、30%の環境下で保管したところ、1ヶ月経過で端部から硬化性層の染み出しが発生すると共に、染み出した部分付近に硬化性層の部分的な厚みムラが発生し面状の劣化が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の硬化性積層体の一例を示す概略図である。
【図2】本発明における「端部の範囲」について説明する概略図である。
【図3】本発明の硬化性積層体の他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の硬化性積層体の一例を示す概略図である。
【図5】本発明における硬化工程の一例を示す概略図である。
【図6】本発明における硬化工程の他の例を示す概略図である。
【図7】本発明における硬化工程の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0098】
1 … 基材
2 … 硬化性層
3 … 剥離性保護層
10 … 硬化性積層体
10’ … 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成され、硬化型材料を含有する硬化性層と、を有する硬化性積層体であって、
前記硬化性層の端部のみが硬化されていることを特徴とする、硬化性積層体。
【請求項2】
前記硬化型材料が、光硬化型材料であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性積層体。
【請求項3】
前記硬化性層が体積型ホログラムを記録することが可能なものであることを特徴とする、請求項2に記載の硬化性積層体。
【請求項4】
基材を用い、前記基材上に硬化型材料を含有する硬化性層形成用塗工液を塗布することにより、硬化性層を形成する硬化性層形成工程と、
前記硬化性層の端部のみを硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とする、硬化性積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−78427(P2009−78427A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248839(P2007−248839)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】