説明

硬化性組成物及び光学材料

【課題】高屈折率で透明性に優れた樹脂成形体を与えることができる比較的安価なモノマー成分を用いた硬化性組成物であって、形成される樹脂成形体が、耐熱性、耐光性等についても良好な性能を有するものとなる、新規な硬化性組成物、及び該組成物を用いて得られる光学材料を提供する。
【解決手段】特定の構造を有する4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、及び該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%と、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を10〜95重量%含有する硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を共重合して得られる硬化物からなる光学材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡用プラスチックレンズ、フレネルレンズ、レンチキュアーレンズ、光ディスク基板、プラスチック光ファイバー、LCD用プリズムシート、導光板、拡散シート等の各種光学材料や塗料、接着剤、封止材等の原料として有用な硬化性組成物、及び該組成物を用いて得られる光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ジエチレングリコールジアリルカーボネート樹脂等は、ガラス等と対比して軽量で取扱い容易であることから、光学材料用樹脂として汎用されている。
【0003】
しかしながら、これらの光学材料用樹脂には、屈折率が低く、複屈折率や分散能が大きく、耐熱性や耐衝撃性に劣るという欠点がある。
【0004】
これらの光学用樹脂における欠点を解消する方法、特に屈折率を向上させる方法について、近年検討されており、芳香環にハロゲンを導入した樹脂が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この樹脂は、屈折率が1.60と高いものの、比重が1.37と大きいため、プラスチックレンズとして用いた場合には、かかるレンズに要求される軽量性を満足することができない。
【0005】
また、樹脂の高屈折率化を図るために、樹脂原料として用いるモノマー成分において、原子屈折率が高い硫黄原子の含有率を高めることが試みられている(特許文献2、3等参照)。ここで、硫黄原子の含有率を高めるためには、一般にメルカプト化合物が用いられており、メルカプト化合物としては、例えばメタンチオール、エタンチオール、エタンジチオールなどの低分子メルカプト化合物が広く知られている。しかしながら、これらの低分子メルカプト化合物は、メルカプト基に基づく特有の臭気があり、また、樹脂を硬化させるために用いられる他の樹脂原料との組成比の関係でその配合量が制限されるという欠点がある。
【0006】
このため、低分子量メルカプト化合物に代えて、硫黄や芳香族環の含有率が高い化合物として、下記化学式:
【0007】
【化1】

【0008】
で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルフィド化合物を用いて、屈折率を向上させる方法が報告されている(特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、上記化学式で表されるジアリールスルフィド化合物は高価なため経済性に劣り、入手も困難である。このため、高屈折率で透明性に優れた樹脂を与えることができる単量体として、より安価な材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平5−4404号公報
【特許文献2】特開平2−270859号公報
【特許文献3】特開平5−208950号公報
【特許文献4】特許第4321055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされてものであり、その主な目的は、高屈折率で透明性に優れた樹脂成形体を与えることができる硬化性組成物であって、高屈折率を付与するためのモノマー成分として、従来から光学材料用硬化性樹脂に使用されている化合物と比較して安価な化合物を用い、更に、形成される合成樹脂が、耐熱性、耐光性等についても良好な性能を有するものとなる、新規な硬化性組成物、及び該組成物を用いて得られる光学材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、光学材料用樹脂のモノマー体成分を製造するため原料としては知られているが、それ自体は光学材料用硬化性組成物のモノマー成分として用いられていない特定の一般式で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物をモノマー成分として用い、これを特定の共重合成分と組み合わせて配合した硬化性組成物によれば、上記した目的を達成することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記の硬化性組成物及び光学材料を提供するものである。
1. 一般式(1):
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、及び該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%と、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を10〜95重量%含有する硬化性組成物であって、
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物が、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
2. 一般式(1):
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、及び該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%と、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を10〜95重量%含有する硬化性組成物であって、
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物が、重合性不飽和結合を有する化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
3. 一般式(1):
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、及び該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%と、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を10〜95重量%含有する硬化性組成物であって、
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物が、エポキシ化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
4. 上記項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物を共重合して得られる硬化物からなる光学材料。
【0020】
本発明の硬化性組成物は、下記一般式(1):
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を必須モノマー成分として含み、これを、下記(i)〜(iii)のいずれかの該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物と共に含有するものである:
(i)ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物、(ii)重合性不飽和結合を有する化合物、
(iii)エポキシ化合物。
【0023】
以下、上記一般式(1)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物について説明し、更に、該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物をモノマー成分として含む3種類の硬化性組成物について具体的に説明する。
【0024】
(I)4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物
本発明の硬化性組成物において、必須のモノマー成分として用いる4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物は、下記一般式(1):
【0025】
【化6】

【0026】
で表されるものである。
【0027】
一般式(1)において、R〜R及びR1’〜R4’で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。特に、経済的な観点からR〜R及びR1’〜R4’としては、水素原子が好ましい。
【0028】
上記一般式(1)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物は、公知の化合物であり、その製造方法については特に限定はないが、例えば、下記のジメチルチオジアリールスルホン化合物とハロゲン化剤との反応工程と加水分解工程の2工程を含む製造方法によれば、簡便且つ安価に製造することができる。以下、該化合物の製造方法について具体的に説明する。
【0029】
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法
(1)ジメチルチオジアリールスルホン化合物とハロゲン化剤との反応工程
まず、第一工程として、下記一般式(2):
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物をハロゲン化剤と反応させて、下記一般式(3):
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示し、m及びnは、それぞれ1から3の整数を示す。)で表されるジアリールスルホン化合物とする。
【0034】
一般式(2)及び(3)において、アルキル基及びハロゲン原子の具体例は、上記した一般式(1)の4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と同様である。
【0035】
ハロゲン化剤としては、塩素、塩化スルフリル、五塩化リン、三塩化リン、次亜塩素酸、臭素等を例示できる。
【0036】
ハロゲン化剤の使用量は、一般式(2)で表される4,4’−ジメチルチオジアリールスルホン化合物1モルに対して、2〜12モル程度とすることが好ましく、2〜4モル程度とすることがより好ましい。
【0037】
4,4’−ジメチルチオジアリールスルホン化合物とハロゲン化剤との反応では、反応溶媒として、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類等を用いることが好ましい。経済的な観点から、特にトルエンが好ましい。
【0038】
反応溶媒の使用量は、4,4’− ジメチルチオジアリールスルホン化合物100重量部に対して10〜5000重量部程度とすることが好ましく、100〜1000重量部程度とすることがより好ましい。
【0039】
反応温度は、30〜120℃程度とすることが好ましく、40〜70℃程度とすることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜30時間程度である。
【0040】
上記した方法によって、一般式(3):
【0041】
【化9】

【0042】
(式中、R〜R、R1’〜R4’、X、m、及びnは上記に同じ。)で表されるジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0043】
上記一般式(3)で表されるジアリールスルホン化合物において、Xで表されるハロゲン原子は、使用したハロゲン化剤に対応するものであり、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示できる。
【0044】
mの値とnの値は、それぞれ1〜3の範囲で変わり得るが、通常、ハロゲン化剤の使用量に応じた値となる。例えば、ハロゲン化剤の量が一般式(2)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物の2倍モルの場合には、一般式(3)において、m及びnの値がいずれも1であるジアリールスルホン化合物が主要な生成物となり、ハロゲン化剤の量が一般式(1)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物の4倍モルの場合には、一般式(2)において、m及びnの値がいずれも2であるジアリールスルホン化合物が主要な生成物となる。
【0045】
かくして得られる、ジアリールスルホン化合物は、必要に応じて水洗、分液して取得できる。また、溶媒留去後、再結晶することにより純度を高めて単離することができる。
【0046】
(2)加水分解工程
次いで、上記工程で得られた一般式(3):
【0047】
【化10】

【0048】
(式中、R〜R、R1’〜R4’、X、m、及びnは上記に同じ。)で表されるジアリールスルホン化合物を加水分解することによって、一般式(1):
【0049】
【化11】

【0050】
(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は上記に同じ。)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0051】
反応溶媒としては、上記ハロゲン化反応に使用した有機溶媒に水を加えた溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒と水との混合溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類等と水との混合溶媒などを用いることができる。この場合、極性溶媒と水との混合溶媒は均一溶媒となり、ハロゲン化炭化水素類や炭化水素類と水との混合溶媒は二相系溶媒となる。特に、経済的な観点からトルエンと水との二相系溶媒が好ましい。
【0052】
加水分解に使用する水の量は、ジアリールスルホン化合物1モルに対して、2〜2モル程度とすることが好ましく、10〜50モル程度とすることがより好ましい。
【0053】
反応温度は、30〜150℃程度とすることが好ましく、70〜120℃程度とすることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜30時間程度とすればよい。
【0054】
上記した方法によれば、簡便且つ安価に一般式(3)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0055】
かくして得られるジメルカプトジアリールスルホン化合物は、二相系溶媒を用いた場合には、有機相と水相を分液し、有機相を水洗した後、溶媒を留去することにより取得できる。また、均一溶媒を用いた場合には、濾過などの方法で容易に取得できる。
【0056】
(II)硬化性組成物:
含硫ウレタン系樹脂組成物
上記一般式(1)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を含む硬化性組成物の第一の例として、該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含む組成物を挙げることができる(以下、「含硫ウレタン系樹脂組成物」ということがある)。
【0057】
該含硫ウレタン系樹脂組成物において、ポリイソシアナート化合物としては特に限定されず、例えば、脂肪族ポリイソシアナート類、脂環式ポリイソシアナート類、芳香族ポリイソシアナート類、含硫黄ポリイソシアナート類などを用いることができる。
【0058】
脂肪族ポリイソシアナート類としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートプロピル)ベンゼン、ビス(イソシアナートブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートメチル)ナフタリン等を例示できる。これらの内で、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートエチル)ベンゼン等が好ましく、キシリレンジイソシアナートがより好ましい。
【0059】
脂環式ポリイソシアナート類としては、イソホロンジイイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート等を例示でき、イソホロンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等が好ましい。
【0060】
芳香族ポリイソシアナート類としては、トリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、エチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ナフタリンジイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート等を例示でき、トリレンジイソシアナートが好ましい。
【0061】
含硫黄ポリイソシアナート類としては、チオジエチルジイソシアナート、ジチオジエチルジイソシアナート、チオジプロピルジイソシアナート、ジチオジプロピルジイソシアナート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルスルフィド−2,4’−ジイソシアナート、ビス(4−イソシアナートメチルベンゼン)スルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナート、ジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート等を例示でき、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアナートが好ましい。
【0062】
該含硫ウレタン系樹脂組成物において、ポリイソチオシアナート化合物としては特に限定はないが、例えば、脂肪族または脂環式ポリイソチオシアナート類、芳香族ポリイソチオシアナート類、含硫黄ポリイソチオシアナート類などを用いることができる。
【0063】
これらの内で、脂肪族または脂環式ポリイソチオシアナート類としては、1,2−ジイソチオシアナートエタン、1,3−ジイソチオシアナートプロパン、1,4−ジイソチオシアナートブタン、p−フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアナート、シクロヘキサンジイソチオシアナート等を例示できる。
【0064】
芳香族ポリイソチオシアナート類としては、1,2−ジイソチオシアナートベンゼン、1,3−ジイソチオシアナートベンゼン、1,4−ジイソチオシアナートベンゼン、2,4−ジイソチオシアナートトルエン、2,5−ジイソチオシアナート−m−キシレン、4,4’−ジイソチオシアナート1,1’−ビフェニル、1,1’−メチレンビス(4−イソチオシアナートベンゼン)等を例示でき、1,2−ジイソチオシアナートベンゼン、1,3−ジイソチオシアナートベンゼン、1,4−ジイソチオシアナートベンゼン等が好ましい。
【0065】
含硫黄ポリイソシアナート類としては、チオビス(2−イソチオシアナートエタン)、ジチオビス(2−イソチオシアナートエタン)、チオビス(3−イソチオシアナートプロパン)、チオビス(4−イソチオシアナートベンゼン)、スルホニルビス(4−イソチオシアナートベンゼン)等を例示できる。
【0066】
該含硫ウレタン系樹脂組成物において、イソチオシアナート基を有するイソチオシアナート化合物としては特に限定されないが、例えば、脂肪族または脂環式化合物、芳香族化合物、含硫黄化合物などを例示できる。
【0067】
これらの内で、脂肪族または脂環式化合物としては、1−イソシアナート−3−イソチオシアナートプロパン、1−イソシアナート−6−イソチオシアナートヘキサン、1−イソシアナート−4−イソチオシアナートシクロヘキサン等を例示できる。
【0068】
芳香族化合物としては、1−イソシアナート−4−イソチオシアナートベンゼン、4−メチル−3−イソシアナート−1−イソチオシアナートベンゼン等を例示できる。
【0069】
含硫黄化合物としては、4−イソシアナート−4’−イソチオシアナートジフェニルスルフィド等を例示できる。
【0070】
該含硫ウレタン系樹脂組成物では、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物については、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0071】
該含硫ウレタン系樹脂組成物において、一般式(1)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の混合割合については、通常、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%程度と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を10〜95重量%程度とすればよく、前者20〜80重量%と後者20〜80重量%とすることが好ましい。
【0072】
該含硫ウレタン系樹脂組成物には、更に、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、重合禁止剤、離型剤、消泡剤、ブルーイング剤、蛍光染料などの添加剤を適宜加えてもよい。
【0073】
また、所望の反応速度に調整するために、ポリウレタンの製造において用いられる公知の反応触媒を適宜添加することもできる。
【0074】
上記した含硫ウレタン樹脂組成物を用いて目的とする樹脂成形体を形成する方法については特に限定的ではないが、例えば、注型重合法を適用する場合には、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含む組成物を合し、この混合液を必要に応じ適当な方法で脱泡を行なった後、モールド中に注入し、徐々に昇温しながら重合させればよい。重合温度及び重合時間は、モノマーの組成、添加剤の種類、量によっても異なるが、一般的には0〜200℃程度、好ましくは20〜150℃程度であり、特に、60〜150℃程度が好ましい。重合時間についても特に限定的ではないが、例えば、0.2〜100時間程度、好ましくは1〜72時間程度とすればよい。
【0075】
ラジカル重合性樹脂組成物
上記一般式(1)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を含む硬化性組成物の第二の例として、該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、重合性不飽和結合を有する化合物を含む組成物を挙げることができる(以下、「ラジカル重合性樹脂組成物」ということがある)。
【0076】
重合性不飽和結合を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、芳香族ビニル化合物、脂環式ビニル化合物、(メタ)アクリル酸、単官能(メタ)アクリル酸誘導体、多官能(メタ)アクリル酸誘導体などを用いることができる。ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の双方を意味する(以下同様)。
【0077】
これらの内で、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルチオスチレン、ジビニルベンゼン等を例示でき、スチレン、ジビニルベンゼン等が好ましい。
【0078】
脂環式ビニル化合物としては、シクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,5−シクロオクタジエン、5−ビニルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン等を例示できる。
【0079】
単官能(メタ)アクリル酸誘導体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、クロロメチル(メタ)アクリレート、ブロモエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等を例示でき、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0080】
多官能(メタ)アクリル酸誘導体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビス(2−メタクリロイルチオエチル)スルフィド等のポリチオールポリ(メタ)アクリレート等を例示でき、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビス(2−メタクリロイルチオエチル)スルフィド等が好ましい。
【0081】
重合性不飽和結合を有するモノマーは、単独で用いても良いし、2種以上の任意のモノマーを組み合わせて用いることもできる。
【0082】
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、重合性不飽和結合を有する化合物の混合割合については、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%程度と、重合性不飽和結合を有する化合物を10〜95重量%程度とすればよく、好ましくは、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を20〜80重量%程度と、重合性不飽和結合を有する化合物を20〜80重量%程度とすればよい。
【0083】
該ラジカル重合性樹脂組成物には、更に、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、重合禁止剤、離型剤、消泡剤、ブルーイング剤、蛍光染料などの添加剤を適宜加えてもよい。
【0084】
該ラジカル重合性樹脂組成物を用いて目的とする樹脂成形体を形成する方法については特に限定的ではないが、例えば、熱重合開始剤を添加して熱重合反応を行う方法、光重合開始剤を添加して光重合反応を行う方法などを例示できる。
【0085】
熱重合反応を行う場合には、熱重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノン等の熱重合に通常用いられる開始剤を用いることができる。
【0086】
熱重合開始剤の配合量は、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と重合性不飽和結合を有する化合物の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.1〜1重量部程度とすればよい。
【0087】
熱重合開始剤を用いる場合の重合方法の一例としては、例えば、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、重合性不飽和結合を有する化合物及び熱重合開始剤を含む組成物を十分に撹拌した後、所定の形状のモールドに充填し、加熱して重合反応を進行させればよい。重合温度及び重合時間については、樹脂組成物の組成、使用する重合開始剤の種類およびその使用量等により異なるため一概には規定できないが、例えば重合温度については0〜200℃程度、好ましくは20〜150℃程度とすればよく、重合時間については0.2〜100時間程度、好ましくは1〜72時間程度とすればよい。
【0088】
光重合反応を行う場合には、光重合開始剤としては 、公知慣用の各種光重合開始剤 、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;キサントン類などを用いることができる。これらの光重合開始剤は 、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
光重合開始剤の配合量は、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と重合性不飽和結合を有する化合物の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.5〜5重量部程度とすればよい。
【0090】
光重合開始剤を用いる場合の重合方法の一例としては、例えば、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、重合性不飽和結合を有する化合物及び光重合開始剤を含む組成物を十分に撹拌した後、所定の形状のモールドに充填し、光を照射して重合反応を進行させればよい。光重合反応に用いる光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、水素ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウム−カドミウムレーザーなどを用いることができる。光照射エネルギー量は、使用する樹脂組成物の種類、成形体の形状などによって異なるが、通常、0.01〜500J/cm2程度、好ましくは0.1〜100J/cm2程度とすればよい。
【0091】
エポキシ樹脂組成物
上記一般式(1)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を含む硬化性組成物の第三の例として、該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、エポキシ化合物を含む組成物を挙げることができる(以下、「エポキシ樹脂組成物」ということがある)。
【0092】
該エポキシ樹脂組成物では、エポキシ化合物としては、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーなどを用いることができる。
【0093】
これらのエポキシ化合物については特に限定されず、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類;
1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類;
ビス〔4−(2,3−エポキシプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、1,4−ジ(2,3−エポキシプロピルチオ)ベンゼン等の多官能グリシジルチオエーテル類;
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジメチルジグリシジルヘキサヒドロフタレート等のグリシジルエステル類;ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、ブロモ化ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビフェノールグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールグリシジルエーテル、レゾルシングリシジルエーテル、ハイドロキノングリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレングリシジルエーテル、ビスフェノールノボラック樹脂グリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂グリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂グリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂グリシジルエーテル、テルペンフェノール樹脂グリシジルエーテル、ナフトールノボラック樹脂グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等の脂環式エポキシ樹脂化合物;
等を用いることができる。
【0094】
これらの内で、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビス〔4−(2,3−エポキシプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ブロモ化ビスフェノールAグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が好ましい。
【0095】
上記エポキシ化合物は、単独で用いても良いし、2種以上の任意のエポキシ化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0096】
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と、エポキシ化合物の混合割合については、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%程度と、エポキシ化合物を10〜95重量%程度とすればよく、好ましくは、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を20〜80重量%程度と、エポキシ化合物を20〜80重量%程度とすればよい。
【0097】
該エポキシ樹脂組成物には、更に、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、重合禁止剤、離型剤、消泡剤、ブルーイング剤、蛍光染料などの添加剤を適宜加えてもよい。
【0098】
該エポキシ樹脂組成物を用いて目的とする樹脂成形体を形成する方法については特に限定的ではないが、例えば、硬化促進剤を添加して熱重合反応を行う方法を例示できる。
【0099】
硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラメチルグアニジン等の第三級アミン類;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール等のイミダゾール類;ジオクチルすずジラウレート、すずオクチレート等の金属塩類等、公知の硬化促進剤を用いることができる。
【0100】
硬化促進剤の配合量は、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物とエポキシ化合物の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.1〜1重量部程度とすればよい。
【0101】
硬化促進剤を用いる場合の重合方法の一例としては、例えば、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、エポキシ化合物、及び硬化促進剤を含む組成物を十分に撹拌した後、所定の形状のモールドに充填し、加熱して重合反応を進行させればよい。重合温度及び重合時間については、樹脂組成物の組成、使用する硬化促進剤の種類およびその使用量等により異なるため一概には規定できないが、例えば重合温度については0〜200℃程度、好ましくは20〜150℃程度とすればよく、重合時間については0.2〜100時間程度、好ましくは1〜72時間程度とすればよい。
【0102】
(III)成形体
上記した含硫ウレタン樹脂組成物、ラジカル重合性樹脂組成物及びエポキシ樹脂組成物は、いずれも、必須モノマー成分として、一般式(1)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を含むものであり、これらの樹脂組成物から形成される成形体は、屈折率が高く、透明性に優れたものとなり、更に、耐熱性、耐光性なども良好である。例えば、屈折率については、1.6〜1.7程度という高い値となる。
【0103】
上記した含硫ウレタン樹脂組成物、ラジカル重合性樹脂組成物及びエポキシ樹脂組成物から形成される各成形体は、上記した優れた特性を利用して、眼鏡用プラスチックレンズ、フレネルレンズ、レンチキュアーレンズ、光ディスク基板、プラスチック光ファイバー、LCD用プリズムシート、導光板、拡散シート等の各種光学材料として特に有用性が高いものであるが、その他に、塗料、接着剤、封止材等の原料としても有効に利用できる。
【発明の効果】
【0104】
上記した本発明の硬化性樹脂組成物は、高屈折率を付与するために有効なモノマー成分として、従来使用されているモノマー成分と比較して安価な化合物である4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を用いたものであって、形成される樹脂成形体は、高屈折率で透明性に優れ、更に、耐熱性、耐光性等も良好となる。このため、本発明の硬化性樹脂組成物は、特に、プラスチックレンズ等の各種の光学材料として有用性の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造例と、本発明の実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0106】
製造例1 (4, 4’−ジメルカプトジフェニルスルホンの製造例)
攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積100mlのフラスコに、4,4’−ジメチルチオジフェニルスルホン8.4g(27mmol)およびトルエン50.0gを加え、昇温して、液温を75℃に保ちながら、塩素ガス4.8g(68mmol)を吹き込み、攪拌しながら1時間反応させた。その結果、系内でビス(4−クロロメチルスルファニルフェニル)スルホンが生成した。
【0107】
その後、水20.0gを加え、攪拌しながら液温を110℃に昇温し、12時間加水分解反応を進行させた。反応終了後、冷却し、析出した結晶を濾過することにより、4, 4’−ジメルカプトジフェニルスルホン6.9gを得た。4,4’−ジメチルチオジフェニルスルホンに対する収率は90%であった。
【0108】
実施例1
製造例1で得られた4, 4’−ジメルカプトジフェニルスルホン10g(25重量%)、ビス(2−メタクリロイルチオエチル)スルフィド10g(25重量%)、及びジビニルベンゼン20g(50重量%)を均一に混合して硬化性組成物を得た。この硬化性組成物100重量部に、ラジカル重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V−40)0.8重量部を添加し、均一に溶解させた。
【0109】
次に、この硬化性組成物を十分に脱気した後、直径5cm、厚さ0.3cmのガラスモールドに注入し、90℃で10時間保った後、脱型した。得られた光学材料は均一で無色透明であった。以下の方法により、得られた光学材料の各物性を評価した。その結果を表1に示す。
(1)屈折率およびアッベ数
アッベ屈折計((株)アタゴ製、4T型)を用いて、20℃における屈折率およびアッベ数を測定した。
(2)透過率
分光光度計(株式会社日立製作所製、型番:U−4100)を用いて特定波長(λ=420nm)における透過率を測定した。
(3)耐光性試験
上記(2)の手順により透過率を測定した後、キセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型番:X25)を用いて、放射強度60W/m(300〜400nm域における積算)の光を500時間照射して、光照射後の透過率を測定した。光照射前の特定波長における透過率を100とし、光照射後の特定波長における透過率から劣化率を算出した(劣化率(%)=光照射後の特定波長における透過率/光照射前の特定波長における透過率×100)。
【0110】
実施例2
製造例1で得られた4, 4’−ジメルカプトジフェニルスルホン20g(50重量%)とm−キシリレンジイソシアナート20g(50重量%)を均一に混合して硬化性組成物を得た。
【0111】
次に、この硬化性組成物を十分に脱気した後、直径5cm、厚さ0.3cmのガラスモールドに注入し、80℃で10時間保った後、脱型した。得られた光学材料は均一で無色透明であった。実施例1と同様にして、各物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0112】
実施例3
表1に示した硬化性組成物100重量部に、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業(株)製)0.5重量部を添加し、均一に混合して硬化性組成物を得た。
【0113】
次に、この硬化性組成物を十分に脱気した後、直径5cm、厚さ0.3cmのガラスモールドに注入し、80℃で10時間保った後、脱型した。得られた光学材料は均一で無色透明であった。実施例1と同様にして、各物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0114】
比較例1
表1に示した成分組成を用いたこと以外は実施例1と同様にして硬化性樹脂を調製し、成形体を作製した。得られた各成形体について、実施例1と同様にして各物性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0115】
表1中、S2EGはビス(2−メタクリロイルチオエチル)スルフィドを、MPGはビス〔4−(2,3−エポキシプロピルチオ)フェニル〕スルフィドを、MPSは4,4’−チオジベンゼンチオールをそれぞれ示す。
【0116】
【表1】

【0117】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜3で得られた光学材料は、いずれも、従来の優れた光学材料(比較例1の材料)と比較すると、屈折率及びアッベ数などの光学的性能はほぼ同程度であるが、光照射前後で透過率の減少率が大幅に抑制されており、優れた耐光性を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、及び該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%と、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を10〜95重量%含有する硬化性組成物であって、
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物が、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、およびイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
一般式(1):
【化2】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、及び該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%と、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を10〜95重量%含有する硬化性組成物であって、
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物が、重合性不飽和結合を有する化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項3】
一般式(1):
【化3】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物、及び該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を、両者の合計量を100重量%として、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物を5〜90重量%と、4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物を10〜95重量%含有する硬化性組成物であって、
4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物と共重合可能な化合物が、エポキシ化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物を共重合して得られる硬化物からなる光学材料。

【公開番号】特開2011−241289(P2011−241289A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114107(P2010−114107)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】