説明

硬化性組成物

【課題】 5℃以下のような低温でも硬化性に優れ、なおかつその硬化物が適度な柔軟性や耐水性を有する硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 酸素又は硫黄原子等のヘテロ原子を含む特定の構造を有するヘテロ環含有化合物、エポキシ基含有化合物、(メタ)アクリロイル基数が2〜6のアクリル系オリゴマー、並びに分子中にアミノ基に由来する活性水素を有するアミノ化合物からなることを特徴とする硬化性組成物;並びに該硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物及びその硬化物に関する。さらに詳しくは、低温硬化性に優れ、適度な柔軟性を有するエポキシ樹脂系硬化性組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その機械的特性、接着性、耐水性、耐薬品性等において優れた性質を有し、接着剤、塗料、ライニング等、種々の工業的用途に使用される代表的な樹脂である。
しかしながら、従来のエポキシ樹脂は、5℃以下のような低温では硬化性が悪く、硬化に極めて長時間を要することや、硬化が進行しないこともあるため、寒冷地や冬場の屋外での使用は困難であった。
エポキシ樹脂の低温硬化性を改善するために、これまでにエポキシ樹脂にアクリル系オリゴマーをブレンドする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開昭51−101100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらアクリル系オリゴマー類をブレンドすると、硬化物は固くて脆くなり、耐水性、耐薬品性が劣る問題があった。常温硬化や加熱硬化の場合には、脆さを改質するための希釈剤や添加剤が使用されることがある。しかしながら、そのような希釈剤や添加剤を低温で使用すると、硬化性の悪化をさらに助長したり、強度低下を引き起こしたりする。このため、5℃以下のような低温ではアクリル系オリゴマー類と汎用の希釈剤や添加剤の配合で適当な硬化組成物を得るのは困難であった。
本発明は5℃以下のような低温でも硬化性に優れ、なおかつその硬化物は適度な柔軟性や耐水性を有する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるヘテロ環含有化合物(A)、エポキシ基含有化合物(B)、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系オリゴマー(C)及びアミノ基に由来する活性水素を有するアミノ化合物(D)からなることを特徴とする硬化性組成物である。
【0005】
【化1】

【0006】
[式(1)中、nは1〜10の整数、X1、Y1及びZ1は、これらのうち2つが酸素原子で残りが硫黄原子、又は2つが硫黄原子で残りが酸素原子;R1は環状エーテル基含有化合物(E)の残基又は水素原子;R2は炭素数2〜10の炭化水素基である。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性組成物は、下記の効果を奏する。
(1)5℃のような低温でも実用に耐える硬化性を有する。
(2)硬化物は適度な柔軟性や耐水性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においてヘテロ環含有化合物(A)は、前記一般式(1)で示される。式中、nは1〜10の整数、好ましくは2〜8の整数である。X1、Y1及びZ1は、これらのうち2つが酸素原子で残りが硫黄原子、又は2つが硫黄原子で残りが酸素原子である。好ましくはX1が硫黄原子(S)で、Y1、Z1の一方が硫黄原子(S)で他方が酸素原子(O)である。
2は、環状エーテル基中の酸素原子以外の環を構成する残基である。これは炭素数(以下Cと略記)2〜10の炭化水素基であり、3価の炭化水素基>CH(CH2m−(mは1〜9の整数)で示される基であり、例えば>CHCH2−、>CHCH2CH2−、>CHCH2CH2CH2−、>CHCH2CH2CH2CH2CH2−等;4価の炭化水素基>CH(CH2mCH<(mは0〜8の整数)で示される基であり、例えば>CHCH<、>CHCH2CH<、>CHCH2CH2CH<、>CHCH2CH2CH2CH2CH<等が挙げられ、好ましいのは3価の炭化水素基であり、特に好ましいのは>CHCH2−、>CHCH2CH2−である。
1は水素原子又は環状エーテル基含有化合物(E)の残基であり、該(E)は一般式(2)で示される。
一般式
【0009】
【化2】

【0010】
環状エーテル基としては、環内に酸素原子を1個以上有するものならば特に限定されず、例えば分子内に環状エーテル基を1〜10個有する化合物が挙げられる。
環状エーテル基含有化合物(E)の例としては、後述するエポキシ基含有化合物(E1)、及びオキセタン化合物(E2)等が挙げられ、好ましいのは(E1)である。
(E1)としては、モノエポキサイド(e11)と分子中にエポキシ基を2個以上有するポリエポキサイド(E11)とが挙げられる。
モノエポキサイド(e11)としては、分子中に1個のエポキシ基を有していれば特に限定されず、用途、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては以下のものが挙げられる。
【0011】
(e11−1)C2〜24の炭化水素系オキシド[エチレンオキシド(以下EOと略記)、プロピレンオキシド(以下POと略記)、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、C5〜24のα−オレフィンオキシド、スチレンオキシド等];
(e11−2)C3〜19の炭化水素のグリシジルエーテル(n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチル−ヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル等);
(e11−3)C3〜30のモノカルボン酸のグリシジルエステル(グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等)、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン
等のエピハロヒドリン及びグリシドール等の水酸基含有オキシド等。
これらのうち好ましいのはC2〜24の炭化水素系オキシド(e11−1)、C3〜19の炭化水素のグリシジルエーテル(e11−2)である。
【0012】
ポリエポキサイド(E11)は、分子中に2個以上エポキシ基を有していれば特に限定されず、用途、目的に応じて適宜選択することができる。これらのうち好ましいのは分子中にエポキシ基を2〜6個有するものである。ポリエポキサイド(E11)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは分子量65以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]1,000以下であり、より好ましくは90〜500である。エポキシ当量がMn1,000以下であると、架橋構造がルーズにならず硬化物の耐水性、耐薬品性、機械的強度等の物性が良好であり、一方、エポキシ当量が分子量65以上であると硬化物の耐水性、耐薬品性、機械的強度等が良好な架橋構造となる。
ポリエポキサイド(E11)の例としては、下記(E11−1)〜(E11−5)が挙げられる。
【0013】
(E11−1)グリシジルエーテル型
(i)2価フェノール類のジグリシジルエーテル
2価フェノール類(C6〜30)のジグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールF、−A、−B、−ADおよび−Sジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0014】
(ii)3価〜6価又はそれ以上の、多価フェノール類のポリグリシジルエーテル
C6〜50又はそれ以上で、かつMn5,000以下の3価〜6価又はそれ以上の多価フェノール類のポリグリシジルエーテル、例えば、ピロガロールトリグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリオールトリグリシジルエーテル、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル、トリスメチル−tert−ブチル−ブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂(Mn400〜5,000)のグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂(Mn400〜5,000)のグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、又はホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mn400〜5,000)のポリグリシジルエーテル、及びレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるMn400〜5,000のポリフェノールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0015】
(iii)脂肪族2価アルコールのジグリシジルエーテル
C2〜100、かつMn5,000以下のジオールのジグリシジルエーテル例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグ
リシジルエーテル、ポリエチレングリコール(Mn150〜4,000)ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール(Mn180〜5,000)ジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール(Mn200〜5,000)ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド〔EO又はPO(1〜20モル)〕付加物のジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0016】
(iv)3価〜6価又はそれ以上の脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル
C3〜50又はそれ以上で、かつMn10,000以下の3価〜6価又はそれ以上の多価アルコール類のグリシジルエーテル例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、ポリ(n=2〜5)グリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0017】
(E11−2)グリシジルエステル型
C6〜20又はそれ以上で、2価〜6価又はそれ以上の芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステル、及びC6〜20又はそれ以上で、2価〜6価又はそれ以上の脂肪族もしくは脂環式ポリカルボン酸のグリシジルエステルが挙げられる。
(i)芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸類のグリシジルエステルとしては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等;
(ii)脂肪族もしくは脂環式ポリカルボン酸のグリシジルエステルとしては、上記フェノール系のグリシジルエステルの芳香核水添加物、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体(重合度は例えば2〜10)、トリカルバリル酸トリグリシジルエステル等が挙げられる。
【0018】
(E11−3)グリシジルアミン型
C6〜20又はそれ以上で、2〜10又はそれ以上の活性水素原子をもつ芳香族アミン類のグリシジルアミン及び脂肪族、脂環式若しくは複素環式アミン類のグリシジルアミンが挙げられる。
(i)芳香族アミン類のグリシジルアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジエチルジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノール等;
(ii)脂肪族アミン類のグリシジルアミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン等;
(iii)脂環式アミン類のグリシジルアミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミンの水添化合物等が挙げられる。
複素環式アミンのグリシジルアミンとしてはトリスグリシジルメラミン等が挙げられる。
【0019】
(E11−4)鎖状脂肪族エポキサイド
C6〜50又はそれ以上で2〜6価又はそれ以上の鎖状脂肪族エポキサイド、例えばエポキシ当量130〜1,000のエポキシ化ポリブタジエン(Mn90〜2,500)、エポキシ化大豆油(Mn130〜2,500)等が挙げられる。
(E11−5)脂環式エポキサイド
C6〜50又はそれ以上で、かつMn2,500以下、エポキシ基の数1〜4又はそれ以上の脂環式エポキサイド、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル3’、4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン等が挙げられる。また、前記フェノール類のエポキシ化合物の核水添化物も含む。
なお(E11−1)〜(E11−5)以外のものでも、活性水素と反応可能なグリシジル基をもつエポキシ樹脂であれば使用できる。又、これらのポリエポキシ化合物は、二種以上併用できる。これらのうち、好ましいのはグリシジルエーテル型(E11−1)、及びグリシジルエステル型(E11−2)であり、特に好ましいのは、グリシジルエーテル型(E11−1)である。(E11−1)のうち、好ましいのは2価フェノール類、2価脂肪族アルコールのジグリシジルエーテルである。
【0020】
オキセタン化合物(E2)としては、C6〜20の脂肪族系オキセタン化合物(3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等)、C7〜30の芳香族系オキセタン化合物(ベンジルオキセタン、キシリレンビスオキセタン等)、C6〜30の脂肪族カルボン酸系オキセタン化合物(アジペートビスオキセタン等)、C8〜30の芳香族カルボン酸系オキセタン化合物(テレフタレートビスオキセタン等)、C8〜30の脂環式カルボン酸系オキセタン化合物(シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタン等)、芳香族イソシアネート系オキセタン化合物(MDIビスオキセタン等)、C2〜20の硫黄系オキセタン化合物(チイラン、2−メチルチイラン、2,2−ジメチルチイラン、2−ヘキシルチイラン、2−フェニルチイラン等)等が挙げられる。
環状エーテル基含有化合物(E)として、エポキシ基含有化合物(E1)を使用したヘテロ環含有化合物(A1)は、下記一般式(3)、(4)で示される。
一般式
【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
[式中、nは1〜10の整数。Y2、Z2は一方がSで他方がOであり、好ましいのは、Y2がO、Z2がSである。R3はポリエポキシ化合物(E11)又はモノエポキシ化合物(e11)の残基である。R4は脂環式エポキサイドの残基である。ここで特に好ましいのは、nが1、Y2がO、Z2がS、R3がモノエポキサイド(e11)のエポキシ基を除く残基である。]
【0024】
本発明のヘテロ環含有化合物(A)の製造方法は特に限定されないが、例えば環状エーテル基含有化合物(E)の環状エーテル基に対し、0.5〜10倍当量の二硫化炭素、硫化カルボニル及び二酸化炭素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、溶剤中触媒存在下で反応させることにより得られる。二硫化炭素、硫化カルボニル及び二酸化炭素のうち好ましいのは二硫化炭素である。
必要な場合は溶剤を使用する。使用溶媒は、反応を阻害せず原料及び生成物を溶解するものなら特に制限はなく、通常非プロトン性溶剤が使用される。例えばエーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルセロソルブ、ジオキソラン、トリオキサン、ジブチルセロソルブ、ジエチルカービトール、ジブチルカービトール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等)、その他極性溶剤(アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられ、好ましいのはテトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチルである。
触媒としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、沃化リチウム、塩化カリウム、臭化カルシウム等が挙げられ、好ましいのは臭化リチウムである。触媒の量は、(E)の環状エーテル基に対し、0.001〜1.0倍当量、好ましくは0.01〜0.1倍当量である。
【0025】
反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜70℃である。
前記の通り製造されたヘテロ環含有化合物(A)のMnは好ましくは120〜12,000であり、より好ましくは200〜8,000である。ヘテロ環当量は好ましくは120〜1,200であり、より好ましくは200〜800である。25℃での粘度は好ましくは20Pa・s以下であり、より好ましくは10Pa・s以下、特に好ましくは5Pa・s以下であり、最も好ましくは1Pa・s以下である。
上記の様にして得られるヘテロ環含有化合物(A)としては、具体的には表1に記載したものが挙げられる。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明におけるエポキシ基含有化合物(B)とは分子中にエポキシ基を有するエポキシ化合物であり、前記の(E11)と同じものが挙げられる。これらのうち好ましいのは(E11−1)である。
【0028】
本発明における(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系オリゴマー(C)とは、分子中に官能基としてアクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を有するオリゴマーであり、好ましいのは該官能基を2〜6個有するオリゴマーである。より好ましいのはアクリロイル基を2〜6個有するオリゴマーである。(C)のMnは好ましくは170〜2,000であり、より好ましくは200〜1,000である。Mnが170以上であると脆さのない硬化物が得られ、2,000以下であると架橋構造がルーズにならず硬化物の強度、耐久性等の物性が良好である。
【0029】
(C)のアクリル系オリゴマーの例としては、以下の(C1)〜(C2)がそれぞれ挙げられ、これらの2種類以上の混合物を使用することもできる。
(C1)2官能(メタ)アクリレート
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレン(C2〜6)グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリ(3〜20)アルキレン(C2〜3)グリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)メタン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシエチレン(好ましくは重合度=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレン(好ましくは重合度=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(好ましくは重合度=2〜12)ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシエチレン(好ましくは重合度=2〜8)化ビスフェノールA・ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレン(好ましくは重合度=2〜6)化ビスフェノールA・ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシエチレン(好ましくは重合度=2〜8)化水添ビスフェノールA・ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレン(好ましくは重合度=2〜6)化水添ビスフェノールA・ジ(メタ)アクリレート等;
(C2)3官能〜6官能(メタ)アクリレート
グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ−、ペンタ−およびテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ−およびトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(アクリロイルオキシプロピルオキシメチル)プロパン、トリメチロールプロパンPO(好ましくは2〜11モル)付加物のトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO(好ましくは2〜15モル)付加物のトリアクリレート等。
【0030】
本発明におけるアミノ化合物(D)は、分子中にアミノ基に由来する活性水素を有する化合物であれば特に限定されず、用途、目的に応じて適宜選択することができる。好ましいのは分子中に1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に由来する活性水素を2〜10個有する化合物であり、より好ましいのは3〜6個有する化合物である。(D)の活性水素当量(活性水素1個当りの分子量)は、好ましくは15〜500であり、より好ましくは20〜200である。活性水素当量が15以上500以下であると架橋構造がルーズにならず硬化物の強度、耐久性等の物性が良好である。
【0031】
アミノ化合物(D)の例としては、以下の(D1)〜(D9)が挙げられる。
(D1)脂肪族ポリアミン類(C2〜18、官能基数2〜7、分子量60以上かつMn500以下):
(i)脂肪族ポリアミン〔C2〜6のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(C2〜6)ポリアミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等]〕
(ii)これらのアルキル(C1〜4)又はヒドロキシアルキル(C2〜4)置換体〔ジアルキル(C1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等〕
(iii)脂環又は複素環含有脂肪族ポリアミン〔3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等〕
(iv)芳香環含有脂肪族アミン(C8〜15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミン等)
【0032】
(D2)脂環式ポリアミン(C4〜15、官能基数2〜3):1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)等;
(D3)複素環式ポリアミン(C4〜15、官能基数2〜3):ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等;
(D4)芳香族ポリアミン(C6〜20、官能基数2〜3、分子量100以上かつMn1,000以下):
(i)非置換芳香族ポリアミン〔1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリアミン、ナフチレンジアミン等;
【0033】
(ii)核置換アルキル基〔メチル、エチル、n−及びi−プロピル、ブチル等のC1〜C4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミン、例えば2,4−及び2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等〕、及びこれらの異性体の種々の割合の混合物;
【0034】
(iii)核置換電子吸引基(Cl、Br、I、F等のハロゲン;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;ニトロ基等)を有する芳香族ポリアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−ジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフイド、ビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフイド、4,4’−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−フルオロアニリン)、4−アミノフェニル−2−クロロアニリン等〕;
【0035】
(iv)2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン〔上記(i)〜(iii)の芳香族ポリアミンの−NH2の一部又は全部が−NH−R’(R’はアルキル基例えばメチル、エチル等の低級アルキル基)で置き換ったもの〕〔4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼン等〕;
(D5)ポリアミドポリアミン:ジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン(官能基数2〜7の上記アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン等)との縮合により得られるポリアミドポリアミン(Mn200〜1,000)等;
(D6)ポリエーテルポリアミン:ポリエーテルポリオール(前述のポリアルキレングリコール等)のシアノエチル化物の水素化物(分子量100以上かつMn1,000以下)等;
(D7)エポキシ付加ポリアミン:エポキシ化合物[上記ポリエポキサイド(E11)並びにモノエポキサイド(e11)]1モルをポリアミン(上記アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン等)に1〜30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン(分子量100以上かつMn1,000以下)等;
【0036】
(D8)シアノエチル化ポリアミン:アクリロニトリルとポリアミン(上記アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン等)との付加反応により得られるシアノエチル化ポリアミン、(ビスシアノエチルジエチレントリアミン等)(分子量100以上かつMn500以下)等;
(D9)その他のポリアミノ化合物:(i)ヒドラジン類(ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン等)、(ii)ジヒドラジッド類(コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジッド、イソフタル酸ジヒドラジッド、テレフタル酸ジヒドラジッド等)、(iii)グアニジン類(ブチルグアニジン、1−シアノグアニジン等)、(iv)ジシアンジアミド等、並びにこれらの2種以上の混合物。
上記(D1)〜(D9)のうち、本発明の硬化性組成物に低温硬化性を与えるために好ましいのは(D1)、(D2)、(D3)及び(D5)であり、特に好ましいのは(D1)である。
【0037】
本発明の硬化性組成物において、(A):(B):(C):(D)の配合比は、全体を100としたときの重量%で、好ましくは1〜40:10〜90:1〜40:5〜60であり、より好ましくは2〜30:20〜90:2〜30:10〜50であり、特に好ましくは2〜20:30〜85:2〜20:15〜50である。(A)が1以上であると硬化物の柔軟性が良好となり、40以下であると適度な強度を有する。(B)が10以上90以下であると硬化物が適度な強度を有する。(C)が1以上であると低温硬化性が良好になり、40以下であると適度な可使時間が得られ、作業性が良好となる。(D)が5以上であると硬化物が適度な強度を有し、60以下であるとアミンブラッシングを生じない(水分の影響を受けない硬化物が得られることを意味する)。
硬化性組成物中の(B)の含有量は、重量%で好ましくは5〜90であり、より好ましくは25〜85である。(B)の量が5〜90の範囲であると硬化物が適度な強度を有する。
【0038】
本発明の硬化性組成物には、硬化剤としてアミノ基に由来する活性水素基を有するアミノ化合物(D)が必須成分であるが、硬化性をより促進する目的で、必要により硬化促進触媒として塩基性化合物(F)をさらに含有させることができる。
塩基性化合物(F)としては、3級アミノ化合物(F1)、ソジウムメチラート、カセイソーダ、カセイカリ、炭酸リチウム等のアルカリ化合物(F2)、トリエチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン等のルイス塩基化合物(F3)等が挙げられる。これらのうち好ましいのは3級アミノ化合物(F1)である。
【0039】
上記の好ましい3級アミノ化合物(F1)は分子中に3級アミノ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例としては以下の(F1−1)〜(F1−3)が挙げられる。
(F1−1)脂肪族3級アミン:C3〜20、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、1,2−ジメチルイミダゾール、テトラエチルメチレンジアミン、テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン、ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)−エチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)モルホリン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコール(3−ジメチル)アミノプロピルエーテル等;
(F1−2)フェノール核含有脂肪族3級アミン:C9〜20、例えばN,N−ジメチルアミノメチルフェノール[通称(エポキシ樹脂の関連文献、総説等で使用されている名称。以下同じ。)「DMP−10」]、トリス(N,N−ジメチルアミノメチルフェノール(通称「DMP−30」)等;
(F1−3)含窒素複素環化合物:C6〜20、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7[通称「DBU」、サンアプロ社製、登録商標]、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5[通称「DBN」、サンアプロ社製、登録商標]、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7[通称「DBA−DBU」、サンアプロ社製、登録商標]、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等。
【0040】
3級アミノ化合物(F1)は得ようとする硬化速度、可使時間に応じて種類、添加量とも適宜選択すればよいが、ヘテロ環含有化合物(A)100重量部に対して0.1〜50重量部程度添加されるのが好ましい。
【0041】
硬化性組成物にはさらに必要に応じて前記以外の添加剤、例えば(1)シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の接着性付与剤、(2)ヒンダードアミン類、硫黄含有化合物等の酸化防止剤、(3)ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等の紫外線吸収剤、(4)金属石けん類、重金属(例えば亜鉛、錫、鉛、カドミウム等)の無機及びおよび有機塩類、有機錫化合物等の安定剤、(5)フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、ひまし油、流動パラフィン、アルキル多環芳香族炭化水素等の可塑剤、(6)パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、重合ワックス、密ロウ、鯨ロウ、低分子量(Mn1,000〜10,000)ポリオレフィン等のワックス類、(7)ベンジルアルコール、タール、ビチューメン等の非反応性希釈剤、(8)エステル(カーボンブラック、酸化チタン、赤色酸化鉄、鉛丹、パラレッド、紺青等の顔料又は染料、(9)エステル(酢酸エチル等)、芳香族炭化水素(トルエン等)、アルコール(メタノール等)、エーテル(ジエチルエーテル等)、ケトン(メチルエチルケトン等)等の溶剤、(10)発泡剤、(11)消泡剤、(12)脱水剤、(13)帯電防止剤、(14)抗菌剤、(15)防かび剤、(16)香料、(17)難燃剤、(18)分散剤、(19)ラジカル重合開始剤等を添加することができる。これらは2種以上を併用することも可能である。
これらの添加量は特に限定されないが、好ましくは(A)〜(D)の合計を100重量部としたとき、0.01〜10重量部である。
【0042】
本発明の硬化性組成物の製造方法としては、用いられる材料を混合、分散できる方法であれば特に限定されず、例えば、以下の方法等が例示される。
(i)ガラスビーカー、缶、プラスチックカップ等の適当な容器中にて、撹拌棒、ヘラ等により混練する。
(ii)ダブルヘリカルリボン翼、ゲート翼等により混練する。
(iii)プラネタリーミキサー、ビーズミル、3本ロール等により混練する。
(iv)エクストルーダー型混練押出し機により混練する。
このようにして製造された本発明の硬化性組成物の粘度は、好ましくは25℃で10,000mPa・s以下であり、より好ましくは5,000mPa・s以下、特に好ましくは3,000mPa・s以下である。
【0043】
本発明の低温硬化性組成物の硬化機構は、まずアミノ基に由来する活性水素基を有するアミノ化合物(D)の活性水素含有基が(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系オリゴマー(C)の活性化された不飽和結合とマイケル付加反応する。同時に該(D)が前記ヘテロ環含有化合物(A)と反応して開環しメルカプト基を発生し、そのメルカプト基がエポキシ化合物(B)と反応する。この場合に(D)は(B)とも反応するが、(B)との反応速度は(D)よりも(C)やメルカプト基の方が大きい。
【0044】
従って、本発明の硬化性組成物の各成分の貯蔵及び使用形態としては、(D)を他の成分と独立した形で保存し、使用直前に混合する必要がある。なお、他の(A)、(B)及び(C)はそれぞれ単独で保存し使用時に他の成分と混合して用いることも、混合して保存することも可能である。[任意成分である塩基性化合物(F)は、第4成分として、単独で保存し、使用時に他の成分と混合して用いることも、(D)中に添加した形で保存することもできる。]
【0045】
硬化条件については、硬化温度は好ましくは−25℃以上であり、低温でも硬化する。温度が高いほど硬化性が速くなる。より好ましくは0〜100℃であり、特に好ましくは5〜40℃である。硬化時間は好ましくは数分〜100時間である。
硬化物は、耐水性、耐薬品性、機械的物性、接着性等の物性に優れる。
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例中の部は重量部を表わす。
また、実施例中の評価項目の試験方法は以下の通りである。
【0047】
[指触乾燥時間]
0℃で予め温調した試料を、表2の組成で配合し、2分間ガラス棒で十分に攪拌混合した後、鋼板上に600μm厚に塗布し、0℃で乾燥させる。ドライングレコーダーの痕跡が下地鋼板まで達した後、再び下地鋼板が見えなくなるまでの時間を測定。塗布直後からの時間を半硬化時間とした。
[曲げ強さ、曲げ弾性率]
20℃で予め温調した試料を、表2の組成で配合し、2分間ガラス棒で十分に撹拌混合し20℃で7日間養生した後、JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に従い、曲げ強さと曲げ弾性率を測定した。
【0048】
[曲げたわみ率]
JIS K 6911の曲げ強さ測定試験において、試験破断時のたわみ距離(mm)と支点間距離(mm)から下式により計算した。

曲げたわみ率(%)= たわみ距離(mm)×100/支点間距離(mm)

[吸水率]
20℃で予め温調した試料を、表2の組成で配合し、2分間ガラス棒で十分に撹拌混合し直径50mm、厚さ3mmの円盤状に注型し20℃で7日間養生した後、蒸留水に7日間浸積させ、浸積前後の重量変化を測定した。
【0049】
製造例1
反応容器に二硫化炭素90部と臭化リチウム5部を仕込んで攪拌溶解し、58部の2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを40℃以下に保ちながら滴下した後、40℃で5時
間熟成した。減圧下で過剰の二硫化炭素を留去した後、ろ過して、25℃での粘度30mPa・s、ヘテロ環基当量262の淡黄色液体のヘテロ環化合物(A−1)を得た。
【0050】
製造例2
反応容器に58部の2−エチルヘキシルグリシジルエーテルと臭化リチウム5部を仕込んで撹拌溶解し、密閉したのち71部の硫化カルボニルを40℃以下に保ちながら圧入した後、40℃で5時間熟成した。減圧下で過剰の硫化カルボニルを留去した後、ろ過して、25℃での粘度35mPa・s、ヘテロ環基当量246の淡黄色液体のヘテロ環化合物(A−2)を得た。
【0051】
実施例1〜7、比較例1〜6
表2に示した配合量で各成分を混合攪拌し、前記の試験方法により硬化性組成物の性能評価試験を行った。上記実施例1〜7、比較例1〜6の評価結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表2中の各成分は以下のものを使用した。
エピコート828:ポリエポキサイド(油化シェルエポキシ社製、ビスフェノールAジグ
リシジルエーテル、エポキシ当量190)
ネオマーDA−600:5官能アクリルオリゴマー(三洋化成工業社製、ジペンタエリス
リトールペンタアクリレート)
ネオマーPA−305:2官能アクリルオリゴマー(三洋化成工業社製:ポリプロピレン
グリコールジアクリレート)
ブレンマーPDE−100:2官能メタアクリルオリゴマー(日本油脂社製:ジエチレン
グリコールジメタアクリレート)
テトラエチレンペンタミン:脂肪族ポリアミン(活性水素当量27)
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の硬化性組成物は、機械的特性、接着性、耐水性、耐薬品性等において優れた性質を有し、接着剤、塗料、ライニング等、種々の工業的用途に使用される。特に5℃以下のような低温でも硬化性がよく、寒冷地や冬場の屋外での使用も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるヘテロ環含有化合物(A)、エポキシ基含有化合物(B)、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系オリゴマー(C)及びアミノ基に由来する活性水素を有するアミノ化合物(D)からなることを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

[式(1)中、nは1〜10の整数、X1、Y1及びZ1は、これらのうち2つが酸素原子で残りが硫黄原子、又は2つが硫黄原子で残りが酸素原子;R1は環状エーテル基含有化合物(E)の残基又は水素原子;R2は炭素数2〜10の炭化水素基である。]
【請求項2】
(A)、(B)、(C)および(D)の合計重量に基づく配合比[(A):(B):(C):(D)]が、(1〜40):(10〜90):(1〜40):(5〜60)である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。

【公開番号】特開2006−152279(P2006−152279A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316925(P2005−316925)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】