説明

硬化性組成物

【課題】溶剤を全くか、もしくはほとんど使用せずに塗布することが可能であり、さらには粘着材へと成形する際に良好な硬化速度が得られる硬化性組成物であって、かつ優れた耐熱クリープ性(耐熱保持力)、耐熱接着性を有し、被着体から剥がす際に被着体に糊残りがなくリサイクル性を高めることが可能な硬化物が得られる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】分子中に式−SiXで表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、分子中に式−SiRで表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)、アルキルフェノール樹脂(C−1)と金属酸化物及び/又は金属水酸化物(C−2)からなるキレート化合物(C)および硬化触媒(D)を含む硬化性組成物であって、硬化性組成物中のポリオキシアルキレン系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の重量比((A):(B))が95:5〜5:95であり、且つポリアルキレン系重合体の合計量((A)+(B))100重量部に対してキレート化合物(C)を5〜150重量部、硬化触媒(D)を0.1〜10重量部含むことを特徴とする硬化性組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤および/または粘着剤用途に使用される硬化性組成物に関し、更に詳しくは自動車部品、建築部材、電気・電子部品、包装材、繊維・皮革、衣料、ラベルなどの分野で接着剤および/または粘着剤用途に使用される硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着製品を製造する際、従来から最も広く用いられている方法は、天然ゴムあるいはアクリル系ポリマーに粘着付与樹脂やその他添加剤を添加し、これを有機溶剤で均一に溶解した後、この溶解液を紙やプラスチックフィルムなどの支持体の上に塗布し、加熱乾燥などによって有機溶剤を蒸発させ固化させる方法である。
【0003】
前記方法では、大量の有機溶剤を除去する工程が必要とされ、有機溶剤を蒸発させるための熱エネルギー、回収させるための設備にコストがかかる上、労働環境、防災および公害面でも問題がある。
【0004】
また、これら粘着剤の物性は、一般的に接着剤などと比べると特に高温時の接着性、耐クリープ性が低く充分満足できるレベルには到っていない。
【0005】
さらに、近年、リサイクル需要が高まる中、被着体から容易に除くことが出来る接着剤、粘着剤が望まれているが、前記の天然ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤では被着体から剥がす際に糊残りすることがあり、充分にリサイクル性を満足させるものではなかった。
【0006】
一方、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体に粘着付与樹脂および硬化触媒を混合した粘着剤組成物が特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されている。
【0007】
前記粘着剤組成物は無溶剤で使用することが可能であり、また、架橋硬化型の粘着剤であるため糊残りも少なく、リサイクル性を高めるのに有効な組成物である。しかしながら、これらの粘着剤組成物は、特に高温での使用条件下では粘着付与樹脂が溶融し、接着力、耐クリープ性に劣るという欠点があった。
【特許文献1】特開昭59−71377号公報
【特許文献2】特開昭60−35069号公報
【特許文献3】特開昭60−219280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、溶剤を全くか、もしくはほとんど使用せずに塗布することが可能であり、さらには粘着材へと成形する際に良好な硬化速度が得られる硬化性組成物であって、かつ優れた耐熱クリープ性(耐熱保持力)、耐熱接着性を有し、被着体から剥がす際に被着体に糊残りがなくリサイクル性を高めることが可能な硬化物が得られる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決する為に鋭意検討した結果、
・反応性ケイ素基を有するポリアルキレン系重合体、アルキルフェノール樹脂と金属酸化物及び/又は金属水酸化物からなるキレート化合物および硬化触媒からなる硬化性組成物について、その配合量を適正化することで、その硬化性組成物から得られる硬化物が、耐熱クリープ性(耐熱保持力)、耐熱接着性に優れる特徴を有すること。
・分子中にそれぞれ構造の異なる反応性ケイ素基(−SiXおよび−SiR)を有する2種のポリアルキレン系重合体を併用することにより、硬化性組成物の硬化速度、得られる硬化物の耐熱クリープ性(耐熱保持力)、耐熱接着性の改善効果がより顕著となること。
・前記硬化性組成物は、溶剤を全くか、もしくはほとんど使用せずに塗布することが可能なこと。
・前記硬化性組成物から得られる硬化物は、被着体から剥がす際に被着体に糊残りがなくリサイクル性を高めることが可能なこと。
などを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
(I).分子中に式−SiX(式中3個のXは、それぞれ独立に水酸基、または加水分解性基のいずれかである。)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、
分子中に式−SiR(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1つである。2個のXはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基のいずれかである。)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)、
アルキルフェノール樹脂(C−1)と金属酸化物及び/又は金属水酸化物(C−2)からなるキレート化合物(C)および硬化触媒(D)を含む硬化性組成物であって、
硬化性組成物中のポリオキシアルキレン系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の重量比((A):(B))が95:5〜5:95であり、且つポリアルキレン系重合体の合計量((A)+(B))100重量部に対してキレート化合物(C)を5〜150重量部、硬化触媒(D)を0.1〜10重量部含むことを特徴とする硬化性組成物、
(II).ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、下記一般式(1)で表される基を有することを特徴とする(I)に記載の硬化性組成物、
−NR−C(=O)− (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1つである。)
(III).ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、下記一般式(2)で表される基を有することを特徴とする(I)に記載の硬化性組成物、
−O−R−(Si(R2−a)(X)−O)−SiX (2)
(式中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基である。(m×(2−a))個のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および(RSiO−(3個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素である。)で表わされるトリオルガノシロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである。Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基である。m個の(Si(R2−a)(X)−O)中のaはそれぞれ独立に0、1または2である。mは0または、1〜19の整数である。)
(IV).アルキルフェノール樹脂(C−1)が、t−ブチルフェノール樹脂であることを特徴とする(I)〜(III)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(V).金属酸化物及び/又は金属水酸化物(C−2)が、酸化マグネシウムであることを特徴とする(I)〜(IV)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(VI).硬化性組成物中に、シランカップリング剤(E)をポリオキシアルキレン系重合体の合計量((A)+(B))100重量部に対して0.1〜20重量部含むことを特徴とする(I)〜(V)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(VII).シランカップリング剤(E)がアミノ基を有することを特徴とする(VI)に記載の硬化性組成物、
(VIII).硬化性組成物中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体(F)を含むことを特徴とする(I)〜(VII)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(IX).(I)〜(VIII)の硬化性組成物からなる粘着剤、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性組成物は、溶剤を全くか、もしくはほとんど使用せずに塗布することが可能であり、さらには粘着材へと成形する際に良好な硬化速度が得られ、かつ得られる硬化物は優れた耐熱クリープ性(耐熱保持力)、耐熱接着性を有し、被着体から剥がす際に被着体に糊残りがなくリサイクル性を高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の硬化性組成物は、分子中に式−SiX(式中3個のXは、それぞれ独立に水酸基、または加水分解性基のいずれかである。)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(以下、オキシアルキレン系重合体(A)と記載する場合もある。)を必須成分とする。
【0013】
オキシアルキレン系重合体(A)は、反応性ケイ素基を1分子あたり平均して1個以上有する。ここで、反応性ケイ素基とは、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有する有機基である。
【0014】
反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(A)は、シラノール縮合触媒によって加速される反応によりシロキサン結合が形成され、架橋する特徴を有する。
【0015】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を示す。)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0016】
Rは、炭素数2〜4の2価のアルキレン基であれば特に限定されず、例えば、−CH−、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CH(C)CH−、−CHCHCHCH−、−C(CHCH−などが挙げられる。これらのなかでも、入手が容易なことから−CH(CH)CH−が好ましい。オキシアルキレン系重合体(A)は、1種類のみの繰り返し単位から構成されてもよく、複数種の繰り返し単位から構成されていてもよい。
【0017】
前記オキシアルキレン系重合体(A)は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、或いは、これらの混合物であってもよい。また、主鎖骨格中には、−R−O−以外の繰り返し単位を含んでもよく、特にウレタン結合あるいはウレア結合を有する繰り返し単位を含むオキシアルキレン系重合体は、該結合由来の水素結合により硬化物の粘着強度が高くなる場合がある。
【0018】
ウレタン結合を有する繰り返し単位を含む主鎖骨格としては、特に限定されず、例えば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;などと−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を表す)で表される繰り返し単位を有するポリオールとの共重合体などが挙げられる。
【0019】
また、−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を表す)以外の繰り返し単位の存在量は、重合体中に80重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。また、前記−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を表す)で示される繰り返し単位が重合体中に50重量%以上存在することが好ましく、80重量%以上存在することがより好ましい。
【0020】
オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格の製造方法としては、特に限定されず、例えば、
(a1)2価アルコール、多価アルコール、水酸基を有する各種オリゴマーなどの開始剤と、KOH、NaOHなどのアルカリ触媒、酸性触媒、アルミノポルフィリン金属錯体やシアン化コバルト亜鉛−グライム錯体触媒など複合金属シアン化物錯体触媒、などのすでに公知である触媒の存在下、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのモノエポキシドを開環重合することによって得る方法、
(a2)水酸基末端ポリエーテル系重合体をKOH、NaOH、KOCH、NaOCHなどの塩基性化合物の存在下、CHCl、CHBrなど2官能以上のハロゲン化アルキルと鎖延長反応させて得る方法、あるいは水酸基末端ポリエーテル系重合体を2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と鎖延長反応させて得る方法などが挙げられる。
【0021】
これらの中では、分子量分布が狭く、粘度の低い重合体が得られることから、前記(a1)の方法のうちの複合金属シアン化物錯体触媒を用いたモノエポキシドの開環重合が好ましい。
【0022】
反応性ケイ素基としては、特に限定されず、例えば、一般式(3)で示される基が挙げられる。
−(Si(R2−a)(X)−O)−SiX (3)
((m×(2−a))個のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および(RSiO−(3個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素である。)で表わされるトリオルガノシロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである。Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基である。m個の(Si(R2−a)(X)−O)中のaはそれぞれ独立に0、1または2である。mは0または、1〜19の整数である。)
一般式(3)中に記載のRとしては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基が挙げられる。これらのなかでも、メチル基が特に好ましい。
【0023】
一般式(3)中にXで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基が挙げられ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基などが挙げられる。これらのなかでも、加水分解性が穏やかで取扱い易いということからメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基が好ましい。
【0024】
1個の反応性ケイ素基中に存在する水酸基や加水分解性基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
反応性ケイ素基中のケイ素原子の数は1個でもよく2個以上でもよい。また、シロキサン結合などによりケイ素原子の連結された反応性ケイ素基の場合には20個程度でもよい。
【0026】
なお、反応性ケイ素基としては、入手性の容易さから、下記一般式(4)で示される基が好ましく、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基などが挙げられる。これらのなかでも、活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が好ましい。
−SiX (4)
(式中、Xは一般式(3)の表記と同じ。)
反応性ケイ素基は、オキシアルキレン系重合体(A)中に少なくとも1個必要であり、1.1〜5個存在することが好ましい。重合体1分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が1個未満になると硬化性が不十分になり、得られる硬化物が良好な粘着特性を発現し難くなる傾向がある。一方、5個よりも多くなると網目構造が密になり過ぎて、得られる硬化物の粘着特性が低下する傾向がある。
【0027】
反応性ケイ素基はオキシアルキレン系重合体(A)の分子鎖末端に存在していてもよく、内部に存在していてもよいが、反応性ケイ素基が分子鎖末端に存在すると、優れた粘着特性を発現する硬化物が得られ易くなるので好ましい。
【0028】
反応性ケイ素基をオキシアルキレン系重合体中に導入する方法としては、特に限定されず、種々の方法を用いることができる。
例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0029】
(イ)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基などの官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0030】
(ロ)分子中に水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有する有機重合体を得る。もしくは、たとえばエポキサイドを開環重合して有機重合体を得る際に不飽和基含有エポキサイドを開環共重合させ不飽和基含有有機重合体を得るなど重合反応に関与しない不飽和基を有するモノマーを共重合させて不飽和基含有有機重合体を得る。ついで、得られた反応性生物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを反応させてヒドロシリル化する方法。
【0031】
(ハ)(ロ)の方法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体にメルカプト基と反応性ケイ素基とを含有する化合物を反応させる方法。
【0032】
さらに、(イ)の方法のうち、末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法、あるいは末端にイソシアネート基を有する重合体とアミノ基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い添加率が得られるために好ましい。このような反応で得られるオキシアルキレン系重合体は、反応性ケイ素基とともに、下記一般式(1)で表される基を有する重合体となる。
−NR−C(=O)− (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1つである。)
なお、上記一般式(1)で表される基を有するオキシアルキレン系重合体(A)は、上記方法以外の方法でも得られ、たとえば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族系イソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネート類;などのジイソシアネート化合物と、−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を示す。)の繰り返し単位を有するポリオールとの鎖延長反応から得られるものが挙げられる。これは、反応性ケイ素基の導入方法に係わらず、一般式(1)の基を有する重合体である。
【0033】
(イ)の合成方法のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば特開平3−47825号公報に示される方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、末端にイソシアネート基を有する重合体とアミノ基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。前記アミノ基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えば、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
(ロ)の方法において、反応性ケイ素基を高い導入率で導入するためには、下記一般式(5)で表される不飽和基を含有する有機重合体に、下記一般式(6)で表されるヒドロシラン化合物を8族遷移金属触媒の存在下で反応させる方法が好ましい。8族遷移金属触媒としては、例えば、HPtCl・HO、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体などを挙げることができる。
−O−R−CR=CH (5)
(式中、Rは炭素数0〜20のアルキレン基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)
H−(Si(R2−a)(X)−O)−SiX (6)
((m×(2−a))個のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および(RSiO−(3個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素である。)で表わされるトリオルガノシロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである。3個のXはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基である。m個の(Si(R2−a)(X)−O)中のaはそれぞれ独立に0、1または2である。mは0または、1〜19の整数である。)
なお、一般式(5)中のRが水素またはメチル基であることがより好ましい。また、一般式(6)で表されるヒドロシラン化合物の具体例としては、例えば、トリクロロシランのようなハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシランのようなアルコキシシラン類;などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちでは特に、アルコキシシラン類が得られる組成物の加水分解が穏やかで取扱いやすいために好ましい。
【0035】
このような反応で得られるオキシアルキレン系重合体は、下記一般式(2)で表される基を有する重合体となる。
−O−R−(Si(R2−a)(X)−O)−SiX (2)
(式中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基である。(m×(2−a))個のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および(RSiO−(3個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素である。)で表わされるトリオルガノシロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである。3個のXはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基である。m個の(Si(R2−a)(X)−O)中のaはそれぞれ独立に0、1または2である。mは0または、1〜19の整数である。)
(ハ)の合成法としては、たとえばラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下で、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物をラジカル付加反応によって有機重合体の不飽和結合部位に導入する方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えばγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
以上の方法のなかで、(ハ)の方法で得られる重合体はメルカプトシランに起因する臭気が強いことから、(イ)の方法、または(ロ)の方法が好ましい。また、(イ)の方法と(ロ)の方法は一長一短である。(ロ)の方法で得られた反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、(イ)の方法で得られる重合体よりも低粘度で作業性の良い組成物となり、またウレタン結合、ウレア結合などの耐熱性を低下させる有機基を有さない点において好ましい。一方、(イ)の方法は重合体へのシリル基の導入が安価かつ生産性良く準備できる点において好ましい。
【0037】
オキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量としては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で10,000〜100,000が好ましく、15,000〜50,000がより好ましく、さらに25,000〜40,000が粘着特性発現上、及び取扱い上、特に好ましい。
【0038】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されず、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。また、粘度が低くなり取扱いが容易となることから1.4以下であることが特に好ましい。
【0039】
分子量分布は、各種の方法で測定可能であるが、通常はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による方法が一般的である。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、分子中に式−SiR(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1つである。2個のXはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基のいずれかである。)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)(以下、オキシアルキレン系重合体(B)と記載する場合もある。)を必須成分とする。
【0041】
オキシアルキレン系重合体(B)は、反応性ケイ素基を1分子あたり平均して1個以上有する。ここで、反応性ケイ素基とは、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有する有機基である。
【0042】
反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)は、シラノール縮合触媒によって加速される反応によりシロキサン結合が形成され、架橋する特徴を有する。
【0043】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)の主鎖骨格としては、
−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を示す。)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0044】
Rは、炭素数2〜4の2価のアルキレン基であれば特に限定されず、例えば、−CH−、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CH(C)CH−、−CHCHCHCH−、−C(CHCH−などが挙げられる。これらのなかでも、入手が容易なことから、−CH(CH)CH−が好ましい。オキシアルキレン系重合体(B)は、1種類のみの繰り返し単位から構成されてもよく、複数種の繰り返し単位から構成されていてもよい。
【0045】
前記オキシアルキレン系重合体(B)は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、或いは、これらの混合物であってもよい。また、主鎖骨格中には、−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を示す。)以外の繰り返し単位を含んでもよく、その存在量は、重合体中に80重量%以下が好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。また、前記−R−O−(Rは炭素数2〜4の2価のアルキレン基を示す。)で示される繰り返し単位が重合体中に50重量%以上存在することが好ましく、80重量%以上存在することがより好ましい。
【0046】
オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格の製造方法としては、特に限定されず、例えば、
(a1)2価アルコール、多価アルコール、水酸基を有する各種オリゴマーなどの開始剤と、KOH、NaOHなどのアルカリ触媒、酸性触媒、アルミノポルフィリン金属錯体やシアン化コバルト亜鉛−グライム錯体触媒など複合金属シアン化物錯体触媒、などのすでに公知である触媒の存在下、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのモノエポキシドを開環重合することによって得る方法、
(a2)水酸基末端ポリエーテル系重合体をKOH、NaOH、KOCH、NaOCHなどの塩基性化合物の存在下、CHCl、CHBrなど2官能以上のハロゲン化アルキルと鎖延長反応させて得る方法、あるいは水酸基末端ポリエーテル系重合体を2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と鎖延長反応させて得る方法などが挙げられる。
【0047】
これらの中では、分子量分布が狭く、粘度の低い重合体が得られることから、前記(a1)のうちの複合金属シアン化物錯体触媒を用いたモノエポキシドの開環重合が好ましい。
【0048】
反応性ケイ素基としては、特に限定されず、例えば、一般式(7)で示される基が挙げられる。
−(Si(R2−b)(X)−O)−SiR (7)
((m×(2−a))個のRおよび1個のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および(RSiO−(3個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素である。)で表わされるトリオルガノシロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである。Xは水酸基または加水分解性基を示す。bは0、1または2をそれぞれ示す。また、m個の(Si(R2−b)(X)−O)におけるbについて、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。)
一般式(7)中に記載のRおよびRとしては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基が挙げられる。これらのなかでも、メチル基が特に好ましい。
【0049】
一般式(7)中にXで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基が挙げられ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基などが挙げられる。これらのうち、加水分解性が穏やかで取扱い易いという点でメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基が好ましい。
オキシアルキレン系重合体(B)1分子中に含まれる加水分解性基や水酸基の総数を示す(Σb+c)は、3〜5であることが好ましい。なお、反応性ケイ素基中に存在する水酸基や加水分解性基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
反応性ケイ素基中のケイ素原子の数は1個でもよく2個以上でもよい。また、シロキサン結合などによりケイ素原子の連結された反応性ケイ素基の場合には20個程度でもよい。
【0051】
なお、反応性ケイ素基としては、入手性の容易さから、下記一般式(8)で示される基が好ましく、具体的には、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基などが挙げられる。このなかでも、活性が高く良好な硬化性が得られることから、ジメトキシメチルシリル基が好ましい。
−SiR (8)
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1つである。2個のXはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基のいずれかである。)
反応性ケイ素基は、オキシアルキレン系重合体(B)中に少なくとも1個必要であり、1.1〜5個存在することが好ましい。重合体1分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が1個未満になると硬化性が不十分になり、得られる硬化物が良好なゴム弾性を発現し難くなる傾向がある。一方、5個よりも多くなると網目構造が密になり過ぎて、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0052】
反応性ケイ素基はオキシアルキレン系重合体(B)の分子鎖末端に存在していてもよく、内部に存在していてもよいが、反応性ケイ素基が分子鎖末端に存在すると、優れた粘着特性を発現する硬化物が得られ易くなるので好ましい。
【0053】
反応性ケイ素基をオキシアルキレン系重合体(B)中に導入する方法としては、特に限定されず、種々の方法を用いることができる。
例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0054】
(イ)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基などの官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0055】
(ロ)分子中に水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有する有機重合体を得る。もしくは、たとえばエポキサイドを開環重合して有機重合体を得る際に不飽和基含有エポキサイドを開環共重合させ不飽和基含有有機重合体を得るなど重合反応に関与しない不飽和基を有するモノマーを共重合させて不飽和基含有有機重合体を得る。ついで、得られた反応性生物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを反応させてヒドロシリル化する方法。
【0056】
(ハ)(ロ)法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体にメルカプト基と反応性ケイ素基とを含有する化合物を反応させる方法。
【0057】
(イ)の合成方法のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば特開平3−47825号公報に示される方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えば、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、末端にイソシアネート基を有する重合体とアミノ基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。前記アミノ基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えば、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
(ロ)の方法において、反応性ケイ素基を高い導入率で導入するためには、下記一般式(9)で表される不飽和基を含有する有機重合体に、下記一般式(10)で表されるヒドロシラン化合物を8族遷移金属触媒の存在下で反応させる方法が好ましい。8族遷移金属触媒としては、例えば、HPtCl・HO、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体などを挙げることができる。
−R−CR=CH (9)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
H−(Si(R2−b)(X)−O)−SiR (10)
(式中R、R、X、b、mは前記に同じ。)
なお、一般式(9)中のRが水素またはメチル基であることがより好ましい。また、一般式(10)で表されるヒドロシラン化合物の具体例としては、例えば、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランのようなハロゲン化シラン類;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシランのようなアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランのようなアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランのようなケトキシメートシラン類;などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちでは特に、アルコキシシラン類が得られる組成物の加水分解が穏やかで取扱いやすいために好ましい。
【0059】
(ハ)の合成法としては、たとえばラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下で、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物をラジカル付加反応によって有機重合体の不飽和結合部位に導入する方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えばγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
以上の方法のなかで、(ハ)の方法で得られる重合体はメルカプトシランに起因する臭気が強いことから、(イ)の方法、または(ロ)の方法が好ましい。また、(イ)の方法と(ロ)の方法は一長一短である。(ロ)の方法で得られた反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、(イ)の方法で得られる重合体よりも低粘度で作業性の良い組成物となり、またウレタン結合、ウレア結合などの耐熱性を低下させる有機基を有さない点において好ましい。一方、(イ)の方法は重合体へのシリル基の導入が安価かつ生産性良く準備できる点において好ましい。
【0061】
オキシアルキレン系重合体(B)の数平均分子量としては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で10,000〜100,000が好ましく、15,000〜50,000がより好ましく、さらに25,000〜40,000が粘着特性発現上、及び取扱い上、特に好ましい。
【0062】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されず、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。また、粘度が低くなり取扱いが容易となることから1.4以下であることが特に好ましい。
【0063】
分子量分布は、各種の方法で測定可能であるが、通常はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による方法が一般的である。
【0064】
硬化性組成物中に含まれるオキシアルキレン系重合体(A)と(B)の重量比は95:5〜5:95であることが必要である。オキシアルキレン系重合体(A)の重量比が95を超えると、得られる弾性体の粘着特性が低下する傾向にある。一方、オキシアルキレン系重合体(B)の重量比が95を超えると硬化速度が遅くなり、成形性が悪化する傾向がある。より好ましくはオキシアルキレン系重合体(A)と(B)の重量比が80:20〜20:80であり、さらに好ましくは70:30〜30:70である。
【0065】
本発明の硬化性組成物は、アルキルフェノール樹脂(C−1)と、金属酸化物及び/又は金属水酸化物(C−2)からなるキレート化合物(C)を必須成分とする。
【0066】
ここでキレート化合物(C)は、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物に粘着性を付与する役割を担う。
【0067】
キレート化合物(C)の構成成分であるアルキルフェノール樹脂(C−1)としては、特に限定されず、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、iso−プロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノールなどの各種アルキルフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。アルキルフェノール樹脂として、市販されているものの例としては、タッキロール(住友化学工業)、タマノル(荒川化学)、ヒタノール(日立化学)などが挙げられる。
【0068】
キレート化合物(C)の構成成分である金属酸化物および/又は金属水酸化物(C−2)としては、特に限定されず、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化鉛(PbO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))などが挙げられる。
【0069】
前記のアルキルフェノール樹脂(C−1)と、前記の金属酸化物および/又は金属水酸化物(C−2)から得られるキレート化合物(C)のなかでも、得られる硬化物の耐熱クリープ性(耐熱保持力)、耐熱接着性が特に優れることから、t−ブチルフェノール樹脂と酸化マグネシウムからなるキレート化合物が特に好ましい。
【0070】
キレート化合物(C)の配合量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対し、5〜150重量部が必要である。配合量が5重量部未満の場合、得られる硬化物に充分な粘着性付与効果が現れない傾向がある。また、配合量が150重量部を超えると硬化性組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなったり、得られる硬化物の耐寒性が低下する傾向がある。作業性および物性発現のバランスを考慮すると、配合量は、20〜100重量部が好ましく、40〜80重量部がより好ましい。
【0071】
キレート化合物(C)の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。以下に具体例を示すがこれに限定されるものではない。
【0072】
アルキルフェノール樹脂を適当な溶剤に溶解させた後、金属酸化物及び/又は金属水酸化物を樹脂100重量部に対し3〜20重量部の割合で加え、数時間攪拌することによりキレート化合物(C)が得られる。
【0073】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、キレート化合物(C)以外の粘着性付与樹脂が添加される。粘着性付与樹脂としては、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、スチレン系ブロック共重合体、その水素添加物、フェノール系樹脂、変性フェノール系樹脂(例えば、カシューオイル変性フェノール系樹脂、トール油変性フェノール系樹脂など)、テルペンフェノール系樹脂、キシレン−フェノール系樹脂、シクロペンタジエン−フェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、キシレン系樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、石油樹脂(例えば、C5炭化水素系樹脂、C9炭化水素系樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂など)、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、DCPD樹脂石油樹脂などが挙げられる。これらは1種類のみを添加してもよく、複数を混合添加しても良い。
【0074】
スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物としては、特に限定されず、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレ−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)などが挙げられる。粘着性付与樹脂を添加する場合その添加量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して、5〜1,000重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。
【0075】
本発明の硬化性組成物は、硬化触媒(D)を必須成分とする。
【0076】
硬化触媒(D)としては、特に限定されず、通常使用される反応性ケイ素基の反応を促進するシラノール縮合触媒が挙げられ、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート、ビスアセチルアセトナトジイソプロポキシチタンなどのチタン化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジメチルマレエート、ジブチル錫ジエチルマレエート、ジブチル錫ジブチルマレエート、ジブチル錫ジオクチルマレエート、ジブチル錫ジトリデシルマレエート、ジブチル錫ジベンジルマレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジエチルマレエート、ジオクチル錫ジオクチルマレエート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジノニルフェノキサイド、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジエチルアセトアセトナート、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物などの4価の有機錫化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナートなどのジルコニウム化合物類が挙げられる。
【0077】
また、前記の化合物に加えてアミン化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミン化合物との反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、カルボン酸化合物とアミン化合物との塩など反応物、オクチル酸鉛などが挙げられる。
【0078】
硬化触媒(D)の配合量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部であることが必要である。配合量が0.1重量部未満では硬化速度が遅くなり、一方、10重量部以上ではオープンタイムが短くなりすぎて、組成物を塗布できなくなるなど作業性が低下する傾向がある。適切な硬化速度を得る為には、配合量は0.5〜8重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。
【0079】
本発明の硬化性組成物は、アミノ基を有するシランカップリング剤(E)を配合することがのぞましい。
【0080】
ここで、シランカップリング剤(E)は本発明の硬化性組成物より得られる硬化物の耐クリープ性や接着性を高める役割を担う。
【0081】
シランカップリング剤(E)としては、特に限定されず、例えば、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン類;ビニルトリメトキシシランなどのビニル型不飽和基を有するアルコキシシラン類;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。これらの中でも、アミノ基を有するアルコキシシラン類やその反応物が、得られる硬化物がクリープ性、接着性に優れることから好ましい。
【0082】
前記シランカップリング剤は1種類のみを配合してもよく、複数種を組み合わせて配合してもよい。
【0083】
シランカップリング剤(E)の配合量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、2〜8重量部が特に好ましい。 配合量が0.1〜20重量部の場合は、得られる硬化物は粘着剤としての使用に適した弾性を有し、クリープ性、接着性に優れたものとなる。
【0084】
本発明の硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体(F)を配合することがのぞましい。
【0085】
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体(F)(以下、(共)重合体(F)と記載する場合もある。)は、本発明の硬化性組成物より得られる硬化物の耐クリープ性や接着性を高める役割を担う。
【0086】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体とは、繰り返し単位として1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物からなる重合体、繰り返し単位として複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物からなる共重合体、および、繰り返し単位として1種または複数種の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物と、これと共重合可能な化合物からなる共重合体を示す。なお、記載方法「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」は、アクリル酸アルキルエステルおよび/または、メタクリル酸アルキルエステルを示すものであり、以後の記載方法においても同様の意味を示す。
【0087】
繰り返し単位として使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、特に限定されず、従来から公知のものが挙げられ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸セチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸ビフェニルなどを挙げられる。
【0088】
また、メタクリル酸エステル化合物としては、特に限定されず、従来から公知のものが挙げられ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸セチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ビフェニルなどが挙げられる。
【0089】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体(F)の主鎖骨格は、実質的に1種または2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物からなるが、ここでいう実質的に前記の化合物からなるとは、(共)重合体(F)中に存在する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物由来の繰り返し単位の割合が50%をこえることを意味する。また、(共)重合体(F)中に存在する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物由来の繰り返し単位の割合は、70%以上が好ましい。
【0090】
さらに、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の中では、相溶性、安定性の点から、分子鎖が実質的に(a)炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物と、(b)炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物からなる共重合体(以下、(共)重合体(F)−aと記載する場合もある)が好ましい。
【0091】
(共)重合体(F)−aにおける(a)炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、一般式(11):
CH=C(R10)COOR11 (11)
(式中R10は水素原子またはメチル基、R11は炭素数1から8のアルキル基を示す)で示される化合物である。
【0092】
一般式(11)中に記載のR11としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基などの炭素数1〜8、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2のアルキル基を挙げられる。
【0093】
なお、(共)重合体(F)−a中に含まれるR11は必ずしも1種類のアルキル基に限定されるものでは無い。
【0094】
また、(共)重合体(F)−aにおける(b)炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、一般式(12):
CH=C(R10)COOR12 (12)
(式中R10は一般式(11)の表記と同じ。R12は炭素数10以上のアルキル基を示す。)で表される化合物である。
【0095】
一般式(12)中に記載のR12としては、特に限定されず、例えば、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、炭素数22のアルキル基、ビフェニル基などの炭素数10以上、通常は10〜30、好ましくは10〜20の長鎖アルキル基が挙げられる。なお、(共)重合体(F)−a中に含まれるR11は必ずしも1種類のアルキル基に限定されるものでは無い。
【0096】
(共)重合体(F)−aの分子鎖は実質的に(a)および(b)の化合物からなるが、ここでいう実質的に(a)および(b)の化合物からなるとは、(共)重合体(F)−a中に存在する(a)および(b)の化合物由来の繰り返し単位の割合が50%をこえることを意味する。
【0097】
(共)重合体(F)−a中に存在する(a)および(b)の化合物由来の繰り返し単位の割合は、70%以上が好ましい。(共)重合体(F)−a中に存在する(a)および(b)の化合物由来の繰り返し単位の割合が50%未満になると反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(A)と共重合体(F)−aの相溶性が低下し、白濁する傾向があり、接着特性も低下する傾向がある。
【0098】
また、(共)重合体(F)−a中に存在する(a)、(b)の化合物由来の繰り返し単位の割合は、重量比((a)由来:(b)由来)で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がより好ましい。前記割合が95:5より大きくなると相溶性が低下し、40:60より小さくなるとコスト的に不利になる傾向がある。
【0099】
(共)重合体(F)中には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物由来の繰り返し単位に加えて、これらと共重合性を有する化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物と共重合性を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのアクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアミド基、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基を含む化合物;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレンなどに起因する化合物などが挙げられる。
【0100】
(共)重合体(F)成分の分子量には特に制限はないが、GPCにおけるポリスチレン換算での数平均分子量が500から100,000のものが好ましく、2,000〜50,000のものがより好ましく、5,000〜30,000のものが、取り扱いが容易なこと、粘着特性に優れることなどから特に好ましい。
【0101】
(共)重合体(F)の製造方法としては、特に限定されず、通常のビニル重合の方法例えば、ラジカル反応による溶液重合法や塊重合法などが挙げられる。反応は、通常前記の化合物およびラジカル開始剤や連鎖移動剤、溶剤などを加えて50〜150℃で行われる。
【0102】
前記ラジカル開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなど、連鎖移動剤の例としては、n−ドデシルメルカプタン,t−ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類や含ハロゲン化合物などが挙げられる。溶剤としては、例えば、エーテル類、炭化水素類、エステル類などの非反応性の溶剤を使用するのが好ましい。
【0103】
(共)重合体(F)は、得られる硬化物の粘着特性、最終接着強度が優れることから、反応性ケイ素基を有していることが好ましい。
【0104】
(共)重合体(F)に反応性ケイ素基を導入する方法としては、特に限定されず、種々の方法が挙げられ、例えば、
(ニ)、重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物を、化合物(a)、(b)とともに共重合させる方法、
(ホ)、重合性不飽和結合と反応性官能基(以下Y’基という)を有する化合物(例えば、アクリル酸)を化合物(a)、(b)とともに共重合させたのち、生成した共重合体を反応性ケイ素基およびY’基と反応しうる官能基(以下Y’’基という)を有する化合物(例えば、イソシアネート基と−Si(OCH基を有する化合物)と反応させる方法、
(ヘ)連鎖移動剤として反応性ケイ素基を有するメルカプタンの存在下、化合物(a)、(b)を共重合させる方法、
(ト)反応性ケイ素基を有するアゾビスニトリル化合物やジスルフィド化合物を開始剤として化合物(a)、(b)を共重合させる方法、
(チ)リビングラジカル重合法によって化合物(a)、(b)を重合させ、分子末端に反応性ケイ素基を導入する方法、などが挙げられる。また、(ニ)〜(チ)の方法を各々任意に組み合わせることも可能である。例えば、(ニ)と(ヘ)の組み合わせとして、連鎖移動剤として反応性ケイ素基を有するメルカプタンの存在下、重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物を、化合物(a)、(b)とともに共重合させる方法をとることも可能である。
【0105】
(ニ)記載の重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物としては、一般式(13):
CH=C(R10)−COOR13−(Si(R2−d)(X)−O)−SiR3−e (13)
(式中R10は一般式(11)の表記と同じ。R13は炭素数1〜6の2価のアルキレン基である。(m×(2−d))個のRおよび(3−e)個のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および(RSiO−(3個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素である。)で表わされるトリオルガノシロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。dは0、1または2、eは0、1または2をそれぞれ示す。また、m個の(Si(R2−d)(X)−O)におけるdについて、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。)で示される化合物、または、一般式(14):
CH=C(R10)−(Si(R2−d)(X)−O)−SiR3−e (14)
(式中R10は一般式(11)の表記と同じ。R、R、X、d、e、mは一般式(13)の表記と同じ。)で示される化合物があげられる。
【0106】
一般式(13)中に記載のR13としては、特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基が挙げられる。
【0107】
一般式(13)または(14)記載の化合物は、共重合の際1種類のみを使用してもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
一般式(13)または(14)記載の化合物としては、特に限定されず、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのγ−メタクリロキシプロピルアルキルポリアルコキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのγ−アクリロキシプロピルアルキルポリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルアルキルポリアルコキシシランなどが挙げられる。
【0109】
(ホ)記載のY’基およびY’’基の例としては、種々の基の組み合わせが可能であるが、例えば、Y’基としてアミノ基、水酸基、カルボン酸基を、Y’’基としてイソシアネート基を挙げることができる。
【0110】
また別の一例として、特開昭62−70405号公報、特開平09−272714号公報、特開昭59−168014号公報に記載されているように、Y’基としてはアリル基、Y’’基としては水素化ケイ素基(H−Si)を挙げることができる。この場合、8族遷移金属の存在下で、ヒドロシリル化反応によりY’基とY’’基は結合しうる。
【0111】
(ヘ)記載の連鎖移動剤として使用する反応性ケイ素基を有するメルカプタンとしては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。また、特開昭60−228516号公報に記載されているように、化合物(a)および(b)を、2官能ラジカル重合性化合物および連鎖移動剤としてアルコキシシリル基を有するメルカプタンの存在下で共重合させる方法も可能である。
【0112】
(ト)記載の、反応性ケイ素基を有するアゾビスニトリル化合物やジスルフィド化合物としては、例えば、特開昭60−23405号公報、特開昭62−70405号公報などに記載されている、アルコキシシリル基を有するアゾビスニトリル化合物やアルコキシシリル基を有するジスルフィド化合物が挙げられる。
【0113】
(チ)記載の方法としては、特開平09−272714号公報などに記載されている方法が挙げられる。
【0114】
その他、特開昭59−168014号公報、特開昭60−228516号公報などに記載されている、反応性ケイ素基をもつメルカプタンと反応性ケイ素基をもつラジカル重合開始剤を併用する方法も挙げられる。
【0115】
(共)重合体(F)中の反応性ケイ素基の数は、特に限定されず、接着力への効果、コストの点から、共重合体(F)1分子中に平均0.1個以上2.0個以下、さらに好ましくは0.5個以上1.5個以下が好ましい。
【0116】
また、1個のケイ素原子上に3個の水酸基および/または加水分解性基有することが粘着性の発現速度の点から好ましい。
【0117】
本発明の組成物における反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)と(共)重合体(F)の配合割合は、(共)重合体(F)の量が反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、20〜160重量部がより好ましく、通常、目的とする用途、性能に応じて適宜選択される。
【0118】
本発明の硬化性組成物は低粘度の重合体を使用するため、キレート化合物と混合しても常温で十分塗工可能であるが、より作業性を良好にするために、40〜180℃に加温して塗工することが好ましく、60〜150℃がより好ましく、80〜130℃が作業性および硬化性組成物の安定性確保の点から特に好ましい。
【0119】
また、本発明の硬化性組成物からなる粘着剤は、従来の溶剤型粘着剤とは異なり、実質的に無溶剤でも使用可能であるが、より作業性を良好にするために溶剤を併用することも可能である。使用される溶剤としては、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)、キレート化合物(C)を溶解し得るものであれば、特に限定されず、従来公知のものが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は併用して用いることができる。
【0120】
本発明の硬化性組成物は、前記以外に必要に応じて充填材、可塑剤、安定剤などを添加される。
【0121】
充填材としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、カーボンブラック、溶融シリカ、沈降性シリカ、けいそう土、白土、カオリン、クレー、タルク、木粉、クルミ殻粉、もみ殻粉、無水ケイ酸、石英粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、アルミナ、ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素などの無機充填材や、パルプ、木綿チップなどの木質充填材、粉末ゴム、再生ゴム、熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂の微粉末、ポリエチレンなどの中空体などの有機充填材が挙げられる。これらのなかでも、炭酸カルシウムが、得られる硬化物の物性が優れること、コスト優位性があることなどから好ましい。
充填材は、1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0122】
充填材を添加する場合、その添加量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して1〜100重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましい。添加量が100重量部をこえると粘度増加により作業性が低下する傾向があり、また、得られる硬化物の粘着特性も低下する傾向がある。
【0123】
可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレートなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチルなどの脂肪族二塩基酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ可塑剤類;ポリプロピレングリコールやその誘導体などのポリエーテル類;ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体などが挙げられる。これらの可塑剤は1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0124】
可塑剤を添加する場合、その添加量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して1〜100重量部が好ましく、1〜30重量部がよりに好ましい。添加量が、1重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなる傾向があり、100重量部を超えると硬化物の粘着特性が低下する傾向がある。
【0125】
安定剤としては、特に限定されず、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0126】
酸化防止剤を添加すると得られる硬化物の耐熱性、耐候性を高めることができる。酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が挙げられる。これらのなかでも、特にヒンダードフェノール系が好ましい。
【0127】
酸化防止剤を添加する場合、その添加量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0128】
光安定剤を添加すると、得られる硬化物の光酸化劣化を防止することができる。光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などが挙げられる。このなかでも、特にヒンダードアミン系が好ましい。
【0129】
光安定剤を添加する場合、その添加量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0130】
紫外線吸収剤を添加すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物などが挙げられる。このなかでも、特にベンゾトリアゾール系が好ましい。
【0131】
紫外線吸収剤を添加する場合、その添加量は、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0132】
また、フェノール系やヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用して使用することが好ましい。
【0133】
さらに、本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物又は得られる硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤の例としては、例えば、難燃剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、溶剤、防かび剤などが挙げられる。これらの各種添加剤は単独で添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0134】
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水などの成分を配合しておき、該配合材と重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。
【0135】
本発明の硬化性組成物の調整法としては、特に限定されず、例えば、前記した成分を配合し、ミキサー、ロール、ニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなど通常の方法を用いることができる。
【0136】
本発明の硬化性組成物から得られる硬化物は、自動車部品、建築部材、電気・電子部品、包装材、繊維・皮革、衣料、ラベルなどの分野で接着剤および/または粘着剤として好適に使用される。なお、粘着剤として使用する場合は、紙、プラスチックフィルムなどの支持体の上で本発明の硬化性組成物を硬化前または硬化後にテープ、ラベル、シート等の形状に加工した後、紙、プラスチックフィルムなどの支持体を取り除き使用される。また、接着剤として使用する場合は、硬化性組成物を被着体に塗布し、硬化前に別の被着体を貼り合せ使用される。なお、本発明の硬化性組成物を接着として使用する場合は、粘着剤として使用する場合よりも、高い耐熱クリープ性(耐熱保持力)、接着性を得ることが可能である。
【実施例】
【0137】
本発明の硬化性組成物を実施例に基づいて説明する。
【0138】
以下合成例、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの合成例、実施例に限定されるものではない。
【0139】
(合成例1)
数平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒を用いてプロピレンオキシドを重合することにより数平均分子量29,000(GPCより求めたポリスチレン換算値)のポリオキシプロピレンジオールを得た。得られたポリオキシプロピレンジオールとナトリウムメトキシドを反応させた後、塩化アリルを反応させて、末端水酸基を不飽和基に変換した。この不飽和基末端ポリオキシプロピレン重合体の不飽和基1モルに対して、トリメトキシシラン0.6モルを白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下反応させて、分子末端にトリメトキシシリル基を有する数平均分子量30,500(GPCより求めたポリスチレン換算値)、分子量分布が1.32のケイ素上に3個の水酸基または加水分解性基を有する反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た(ポリマーA)。
【0140】
(合成例2)
数平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒を用いてプロピレンオキシドを重合することにより数平均分子量25,000(GPCより求めたポリスチレン換算値)のポリオキシプロピレンジオールを得た。得られたポリオキシプロピレンジオールの水酸基1モルに対してγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン0.7モルを加えてウレタン化反応を行い、分子末端にトリメトキシシリル基を有する数平均分子量26,400(GPCより求めたポリスチレン換算値)、分子量分布が1.40のケイ素上に3個の水酸基または加水分解性基を有する反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た(ポリマーB)。
【0141】
(合成例3)
数平均分子量5,200のポリオキシプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートを攪拌機付き耐圧反応容器に入れて混合した後、錫触媒(ジブチル錫ジラウレートの10%DOP溶液)を添加した。80℃で4時間攪拌することにより、分子量約15,000のイソシアネート基末端重合体を得た(分子量はイソシアネート基の滴定値(0.579%)より算出)。60℃まで冷却した後、重合体のイソシアネート基1モルに対してγ−アミノアミノプロピルトリメトキシシラン0.7モルを加えて反応させることにより、分子末端にトリメトキシシリル基を有する数平均分子量17,000(GPCより求めたポリスチレン換算値)、分子量分布が1.86のケイ素上に3個の水酸基または加水分解性基を有する反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た(ポリマーC)。
【0142】
(合成例4)
数平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒を用いてプロピレンオキシドを重合することにより数平均分子量29,000(GPCより求めたポリスチレン換算値)のポリオキシプロピレンジオールを得た。得られたポリオキシプロピレンジオールとナトリウムメトキシドを反応させた後、塩化アリルを反応させて、末端水酸基を不飽和基に変換した。この不飽和基末端ポリオキシプロピレン重合体の不飽和基1モルに対して、メチルジメトキシシラン0.7モルを白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下反応させて、分子末端にメチルジメトキシシリル基を有する数平均分子量30,000(GPCより求めたポリスチレン換算値)、分子量分布が1.30のケイ素上に2個の水酸基または加水分解性基を有する反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た(ポリマーD)。
【0143】
(合成例5)
105℃に加熱したトルエン40g中に、メタクリル酸メチル15g、アクリル酸ブチル60g、メタクリル酸ステアリル20g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4.5gおよび重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.3gをトルエン15gに溶かした溶液を5時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.10gをトルエン10gに溶かした溶液を追加して2時間撹拌することにより、固形分濃度60重量%、数平均分子量が11,000(GPCより求めたポリスチレン換算値)、分子量分布が1.64のアクリル系共重合体を得た(ポリマーE)。
【0144】
(合成例6)
合成例1で得たポリマーA20重量部、合成例4で得たポリマーD50重量部および
合成例5で得たポリマーE50重量部(うち固形分は30重量部)を混合した後、120℃での加熱減圧によりトルエンを脱揮し、重合体混合物を得た(ポリマーF)。
【0145】
(一液配合物製造例1〜5,7,8)
t−ブチルフェノール樹脂としてタマノル520S(荒川化学)100重量部をトルエン100重量部に溶解したのち、金属酸化物として酸化マグネシウム(MgO)を10重量部添加し、30℃で10時間攪拌することによりt−ブチルフェノール樹脂と酸化マグネシウムのキレート化合物(C)を得た。続いて表1に示す割合で反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および/または(B)(配合物4に関しては(A)成分、(B)成分および(F)成分の重量体混合物)とキレート化合物(C)/トルエン溶液、さらには酸化防止剤としてIRGANOX245を混合した後、さらにシランカップリング剤(E:A−1120およびA−174)を添加し10分間撹拌した。最後に表1に示す硬化触媒(D)を添加し10分間攪拌した後、減圧脱泡し、カートリッジに配合物を充填し一液配合物1〜5,7,8を得た。
【0146】
(一液配合物製造例6)
t−ブチルフェノール樹脂としてタマノル520S(荒川化学)100重量部をトルエン100重量部に溶解したのち、金属酸化物として酸化マグネシウム(MgO)を10重量部添加し、30℃で10時間攪拌することによりt−ブチルフェノール樹脂と酸化マグネシウムのキレート化合物(C)を得た。続いて表1に示す割合で反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)とキレート化合物(C)/トルエン溶液、さらには酸化防止剤としてIRGANOX245を混合した後、100℃での加熱減圧によりトルエンを脱揮した。その後、シランカップリング剤(E:A−174)を添加し10分間撹拌した。最後に硬化触媒(D)を添加し10分間攪拌した後、減圧脱泡し、カートリッジに配合物を充填し一液配合物6を得た。
【0147】
(一液配合物製造例9)
t−ブチルフェノール樹脂としてタマノル520S(荒川化学)100重量部をトルエン100重量部に溶解した。続いて表1に示す割合で反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)とt−ブチルフェノール樹脂/トルエン溶液、さらには酸化防止剤としてIRGANOX245を混合した後、さらにシランカップリング剤(E:A−1120およびA−174)を添加し10分間撹拌した。最後に表1に示す硬化触媒(D)を添加し10分間攪拌した後、減圧脱泡し、カートリッジに配合物を充填し一液配合物9を得た。
【0148】
(一液配合物製造例10)
テルペン−フェノール樹脂(ヤスハラケミカル YSポリスターS145)100重量部をトルエン100重量部に溶解したのち、金属酸化物として酸化マグネシウム(MgO)を10重量部添加し、30℃で10時間攪拌した。続いて得られた溶液を表1に示す割合で反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)および(B)、さらには酸化防止剤としてIRGANOX245と混合し、さらにシランカップリング剤(E:A−1120およびA−174)を添加し10分間撹拌した。最後に表1に示す硬化触媒(D)を添加し10分間攪拌した後、減圧脱泡し、カートリッジに配合物を充填し一液配合物10を得た。
【0149】
(実施例1〜6)
配合物1〜6を用い、下記に示す方法で粘着材への成形性(硬化時間)、および耐熱クリープ性(耐熱保持力)を測定した。
【0150】
(比較例1〜6)
配合物7〜10を用い、下記に示す方法で粘着材への成形性(硬化時間)、および耐熱クリープ性(耐熱保持力)を測定した。
【0151】
また、アクリル系両面テープとして日東電工No.5000NS、あるいは住友スリーエムY−4950を用いて、下記に示す方法で耐熱クリープ性(耐熱保持力)を測定した。
【0152】
粘着材への成形性(硬化時間)の評価:
配合物1〜10を(実施例6は配合物6を充填したカートリッジを100℃に加温した後)、23℃、50%RHの雰囲気下でPETフィルム上(コロナ放電処理、厚さ50μm)に塗布し、アプリケーターにより100μmに厚み調整した。その後、すぐに100℃に加温し、100℃雰囲気下での硬化時間を測定した。硬化時間の測定は、所定の時間経過後、配合物の表面に新たなPETフィルムを貼り合せて2kgローラーを1回かけ、すぐにそのPETフィルムを剥がし、その際に配合物がPETフィルムに転写されなくなった時間を硬化時間とした。
(3分以内は○、3分を超える場合は×とした。)
耐熱クリープ性(耐熱保持力)の評価:
(配合物1〜10)
配合物1〜10を(実施例6は配合物6を充填したカートリッジを100℃に加温した後)、23℃、50%RHの雰囲気下でPETフィルム上(コロナ放電処理、厚さ50μm)に塗布し、アプリケーターにより100μmに厚み調整した。その後、すぐに100℃に加温し、前記の方法で測定した硬化時間経過後に、得られた硬化物の表面に剥離紙を貼り合せ2kgローラーを2回かけた。その後、23℃で3日養生した後、作成した粘着フィルムを25mm幅の短冊状にカットし、表面を280番のサンドペーパーで研磨した25mm幅のステンレス板SUS304に貼りあわせた。それを水平に固定した後、粘着フィルムの一端を折り曲げ、その先に接着面に対して90度方向に荷重がかかるように錘(500g/25mm)をぶら下げて、60分間に剥離した距離を各種温度で測定した。但し、60分以内に60mm以上剥離したものに関しては60mm剥離するのに要した時間を測定した。また、目視により、SUSへ粘着剤が転移している場合は糊残り有り、転移が見られない場合は糊残り無しとした。
(アクリル系両面テープ)
アクリル系両面粘着テープの片側をステンレス板SUS304に貼り合せ、その後23℃で3日間養生した。その後、上記と同様の方法で粘着テープの端に錘をぶら下げ、保持力を各種温度で測定した。また、目視により、SUSへ粘着剤が転移している場合は糊残り有り、転移が見られない場合は糊残り無しとした。
【0153】
得られ評価結果を表1に示す。
【0154】
【表1】

表1に示すように、実施例に記載の組成物は良好な成形性を示すとともに、得られる硬化物は高温下においても優れた耐クリープ性(保持力)を発現した。さらに、剥がれた際は、糊残りはなかった。これは、例えば、部材などを回収する際、作業を容易にするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に式:−SiX(式中3個のXは、それぞれ独立に水酸基、または加水分解性基のいずれかである。)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、
分子中に式:−SiR(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1つである。2個のXはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基のいずれかである。)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)、
アルキルフェノール樹脂(C−1)と金属酸化物及び/又は金属水酸化物(C−2)からなるキレート化合物(C)および硬化触媒(D)を含む硬化性組成物であって、
硬化性組成物中のポリオキシアルキレン系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の重量比((A):(B))が95:5〜5:95であり、且つポリアルキレン系重合体の合計量((A)+(B))100重量部に対してキレート化合物(C)を5〜150重量部、硬化触媒(D)を0.1〜10重量部含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、下記一般式(1)で表される基を有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
−NR−C(=O)− (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1つである。)
【請求項3】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、下記一般式(2)で表される基を有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
−O−R−(Si(R2−a)(X)−O)−SiX (2)
(式中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基である。(m×(2−a))個のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および(RSiO−(3個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素である。)で表わされるトリオルガノシロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである。Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基である。m個の(Si(R2−a)(X)−O)中のaはそれぞれ独立に0、1または2である。mは0または、1〜19の整数である。)
【請求項4】
アルキルフェノール樹脂(C−1)が、t−ブチルフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
金属酸化物及び/又は金属水酸化物(C−2)が、酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
硬化性組成物中に、シランカップリング剤(E)をポリオキシアルキレン系重合体の合計量((A)+(B))100重量部に対して0.1〜20重量部含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
シランカップリング剤(E)がアミノ基を有することを特徴とする請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
硬化性組成物中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体(F)を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の硬化性組成物からなる粘着剤。

【公開番号】特開2008−239809(P2008−239809A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82499(P2007−82499)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】