説明

硬化性配合物を噴霧する加圧旋回式霧化ノズルおよびそれに付随する方法並びにその使用

硬化性配合物を噴霧する加圧旋回式霧化ノズルは、漏斗状のキャビティと出口開口(17)を定める開口部材片(16)と、漏斗状のキャビティを閉鎖する注入部材片(18)とを備えており、漏斗状のキャビティが注入部材片(18)の前面側と出口開口(17)との間に旋回式小室(19)を形成している。注入部材片(18)には少なくとも2本の旋回式ポート(20)が設けられており、斯かるポートは旋回式小室(19)で終端してその中に硬化性配合物を注入することにより、硬化性配合物を旋回させる。複数の旋回式ポート(20)のそれぞれの最小断面積の和と較べて、旋回式小室(19)の側壁(24)は表面積が比較的小さいが、斯かる表面積は硬化性配合物を分散させて均一な噴霧型を達成するのには依然として十分な大きさである。旋回式小室(19)の寸法を低減することで、硬化性配合物はより効率よく霧化することができる。このようにして、ノズルを通る比較的少ない流量の硬化性配合物ならば変化させても、液滴寸法および噴霧型の安定性に及ぼされる影響は小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付の特許請求の範囲の請求項1の前提部分に規定されているような、硬化性配合物を表面に噴霧して前記表面に重合体層を生成するための加圧旋回式霧化ノズルに関するものである。本発明はまた、硬化性配合物を表面に噴霧する方法にも関連しており、斯かる方法においては本発明によるノズルが使用される。
【背景技術】
【0002】
硬化性配合物は、特に、金型(モールド)の表面に噴霧されるポリウレタン反応混合物のうち、例えば、車内計器盤、ドア内側鏡板、ダッシュボード小物入の蓋、変則レバー周辺コンソールなどのような車両用内装仕上げ部材または化粧板などを製造するためのものである。このようなポリウレタン反応混合物は通常は比較的粘性が高く、そのため、霧化するのが極めて困難である。
【0003】
請求項1の前提部分に規定されているような金型(モールド)の表面に噴霧してポリウレタン反応混合物の層を設けるための加圧旋回式ノズルは、既に、欧州特許明細書 EP-B-0 303 305号および EP-B-0 389 014号に開示されている。これら特許に開示されているノズルは開口部材片を有しており、斯かる開口部材片はノズルの出口開口部で終端する漏斗状のキャビティを定めている。漏斗状のキャビティは、その上流側最端部で注入部材片によって閉鎖されることで、注入部材片の前側と出口部材片との間に旋回式小室を形成するようになっている。注入部材片には2本または3本の旋回式ポートが設けられており、斯かるポートを通して硬化性配合物が旋回式小室に注入される。旋回運動が与えられると、硬化性配合物は中空の円錐噴霧型で出口開口から噴霧される。
【0004】
上記のような先行技術の特許文献に開示されている、金型(モールド)の複雑な成形面、特に、内部にキャビティが設けられている金型(モールド)の表面に硬化性配合物を噴霧して層を設けるためのノズルを利用した場合、ノズルは非常に小さく作られて、十分な噴霧距離を維持しながら狭いキャビティ内を移動することができるようにする必要がある。更に、硬化性配合物の流量は極めて低いため、近距離から噴霧した場合でも、硬化性配合物の薄層を金型(モールド)の表面に均一に塗布することができる。硬化性配合物は過剰に微細な薄霧状に霧化されることがなく、標的外の余分なところに飛散するのを回避している。
【0005】
硬化性配合物を金型(モールド)の表面に噴霧する場合、硬化性配合物の流量を変動させても噴霧のパターン(液滴寸法、噴霧型の安定性、すなわち、硬化性配合物の動力学的エネルギー)には過度に影響を及ぼすことが無いのが望ましい。これにより、近距離から端縁部や狭いキャビティ内などに噴霧する場合は硬化性配合物の流量を低減することができ、離れた距離からより広い表面に噴霧する場合は流量を増大させることができる。このように、噴霧することで設けることができる層の厚さがより均一になるとともに、サイクル時間を過度に長くしなくても標的外の余分なところに飛散するのを低減することができる。
【0006】
欧州特許明細書 EP-B-0 303 305号および EP-B-0 389 014号に開示されているようなノズルを用いて本件発明者らによって実施された試験結果の示すところでは、ポリウレタン反応混合物を霧化させてMVDが約95 μmである液滴にするような圧力で噴霧した場合、加える圧力を40%低下させると、結果的に流量は約30%減少し、噴霧した液滴のMVDは約65%だけ増大した(MVDとは、ASTM規格 E799-81に準拠して測定された場合の液滴の中間容積径(Medium Volume Diameter)のことである)。液滴寸法の増大は、燃料油を霧化した場合などに見られる率よりも遥かに激しい。デラヴァン社(Delavan)はイー・オー・オルソン(E. O. Olson)著の「油噴燃器の燃料ノズル(Fuel Nozzles for Oil Burners)」という題の論文によると、研究結果の示すところでは、中程度の液滴寸法は圧力変化の0.3乗として逆の変化を示した。従って、40%の圧力低下に対して液滴寸法は約16%だけ増大することになるが、これは、ポリウレタン反応混合物について実際に観察された液滴寸法よりも遥かに小さい。
【0007】
液滴が大きくなった場合の第1の欠点は、噴霧で生じた層に含まれる気泡が大きくなり、機械特性が劣悪化することである。もう1つ別な欠点は、液滴が大きいほど、生じる噴霧型は安定性が劣り、重力または空気流によって噴霧型が乱され易くなるため、所望の機械特性を有する均一な層を得るには、噴霧によって層の厚みを増す必要が生じることである。
【0008】
実際には、バイパスノズルまたはリターンフローノズル、空気式霧化ノズル、2開口型ノズル、複式ノズルなどのような、所謂、可変流ノズルが既に存在する。斯かるノズルにより、より多様に変化する流量がノズルを流れるようにすることができるが、硬化性配合物を噴霧するには全く不向きである。更に、そのようなノズルは、相対的に嵩張る。
【0009】
ポリウレタン反応混合物を可変流量で噴霧するのに好適なノズルは、国際公開公報WO-A-2005/000481号に開示されている。反応混合物の流量を変動させることができるようにするために、或る量の加圧ガスがこれに添加される。このようにして、このような量のガスのおかげで、ポリウレタン反応混合物の流量を低減することができるようになるが、同時に、ポリウレタン反応混合物に添加される加圧ガスの量を変動させることによっても流量を変化させることができる。しかしながら、このような気体の助けを借りた噴霧プロセスに関連する噴霧装置は複雑なうえに高額につく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許明細書 EP-B-0 303 305号
【特許文献2】欧州特許明細書 EP-B-0 389 014号
【特許文献3】国際公開公報WO-A-2005/000481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の観点の目的は、新規な加圧旋回式ノズルであって、比較的小さい流量で硬化性配合物を噴霧することで比較的粗大な液滴を生じることができるようにするとともに、上記のような比較的小さい流量を変動させることで噴霧される液滴寸法にできるだけ影響を与えないようにするノズルを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的のために、本発明の第1観点によるノズルは、以下に示す数式1によって表されるような出口開口からの距離に注入部材片が設置されるようにしたことを特徴とする。

【数1】


更に、比率Lo /Do は1よりも小さく、上記数式1において、
sc = 旋回式小室の側壁の表面積(単位 mm2)、
β = 旋回式ポートの傾斜角度、
sp,tot = 所定の全体的方向に直交する断面において測定された複数の旋回式ポートの最小断面積 Asp (単位 mm2)の和であり、この場合、硬化性配合物は旋回式小室における個々の旋回ポートを通して注入される、
o = 出口開口の長さ(単位 mm)、
o = 出口開口の直径(単位 mm)、
≦ = 小なりイコール記号、
であることを特徴とする。
【0013】
出口開口により近い位置に注入部材片を設置した場合、すなわち、旋回式小室の側壁の表面積Asc を低減した場合、流量を減少させたおかげで液滴寸法に及ぼされる影響は小さくなることが既に分かっている。詳細に説明すると、表面積Asc

【数2】


程度に小さくするべきであり、
ここで、

【数3】


の値は15より小さいかそれに等しい(≦ 15)のが好ましく、13より小さいかそれに等しい(≦ 13)のが更に好ましく、12より小さいかそれに等しい(≦ 12)のが最も好ましい。
【0014】
上記複数の旋回式ポートの断面表面積の和Asp,tot を増大させることによっても、比率

【数4】


は小さくすることができる。しかしながら、この結果、流量が増大する。本発明によるノズルは比較的小さい流量で噴霧することが意図されており、旋回式ポートの最小断面積Ap の和Asp,tot は0.9 mm よりも小さくなければならず、0.6 mmよりも小さいのが好ましい。
【0015】
旋回式小室の側壁の表面積Asc は無制限に低減されてよいわけではない。実際、最小表面積は均一な噴霧型を得ることができるようにする必要がある。この点について、比率、

【数5】


は6より大きいかそれに等しく、7より大きいかそれに等しい(≧ 7)のが好ましく、8より大きいかそれに等しい(≧ 8)のがより好ましく、8.5より大きいかそれに等しい(≧ 8.5)のが最も好ましいことが分かっている。
【0016】
流量が液滴寸法に及ぼす影響を少なくするために、比率Lo /Do は最終的には1よりも小さくなければならず、0.6よりも小さいのが好ましく、0.5 よりも小さいのがより好ましく、0.4よりも小さいのが最も好ましい。
【0017】
本発明によるノズルの好ましい実施例においては、上記旋回式ポートの各々の最小断面積は、硬化性配合物が旋回式ポートにより旋回式小室に注入される際の所定の全体的方向に直交する断面について測定され、0.07 mm よりも大きく、更に、0.08 mm よりも大きいのが好ましいが、0.25 mm よりは小さく、更に、0.20 mm よりも小さいのが好ましく、0.15 mm よりも小さいのがより好ましい。
【0018】
硬化した(部分的であれ)硬化性配合物の小片などによって旋回式ポートが詰まる恐れを減じるために、旋回式ポートは各々が十分に大きな断面積を有している必要がある。しかしながら、個々の旋回式ポートの断面積が小さくなるほど、設けることのできる旋回式ポートの本数は増えるうえに、旋回式小室の側壁を越えた先で分散される硬化性配合物はより均一にすることができる。このことは、硬化性配合物が均一に分散された状態で均一な噴霧型を得ることができるようにするという観点から重要である。
【0019】
本発明の更にもう1つの観点では、硬化性配合物が旋回式ポートから旋回式小室に注入される際の所定の全体的方向は、長手方向軸線とこれに直交するとともに個々の旋回式ポートの出口の中心を通る直線とを含んでいる或る長手方向の面に直角に交差して投影されると、長手方向軸線に直交している横断面Bとの間に角度γ を成すが、この角度は、旋回小室の側壁が上記横断面Bとの間に成す平均角度αav よりは少なくとも8° は大きく、少なくとも12° は大きいのが好ましい。
【0020】
硬化性配合物が旋回小室の側壁に対して或る角度のもとに注入されるという事実のおかげで、より向上した噴射形状が得られる。
本発明は、加圧旋回式霧化ノズルにより、硬化性配合物を表面に噴霧することにより表面に重合体層を生成する方法にも関連している。斯かる方法は、本発明による加圧旋回式霧化ノズルを使用することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるノズルを使って、ポリウレタン反応混合物を金型表面に噴霧する原理を例示した概略図である。
【図2】本発明によるノズルによって達成することができる噴霧パターンについて、反応混合液が中空の円錐形状で噴霧されているのを例示した概略側面図である。
【図3】本発明によるノズルを例示した断面図である。
【図4】図3に示されたノズルの頂面平面図である。
【図5】図3および図4に示されたノズルの注入部材片の頂面平面図である。
【図6】図5に示された注入部材片の側面図である。
【図7】図3に例示されているノズルの開口部材片および注入部材片の拡大断面図である。
【図8】図7に類似しているがその変形例を示した拡大断面図である。
【図9】図7に類似しているがその変形例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の上記以外の詳細および利点は、本発明によるノズルおよび方法の幾つかの特定の実施例を記した後段の説明から明らかになる。後段の詳細な説明で使用されている参照番号は添付の図面と連携している。
【0023】
本発明は、加圧旋回式霧化ノズルに関するものであり、更にまた、上記ノズルにより硬化性配合物を表面に噴霧して表面に重合体層を生成する方法にも関連している。斯かるノズルは、所謂、無気噴霧ノズルであり、すなわち、噴霧パターンに作用させるのに気体が全く添加されないノズルである。硬化性配合物とは、特に、ポリウレタンを生成する複数成分の反応混合物のことであり、本明細書では「ポリウレタン反応混合物」と称されている。硬化性配合物は、任意で、物理的または化学的な発泡剤を含有していてもよく、斯かる発泡剤は、表面に硬化性配合物の発泡層を堆積させる。上記以外に、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのような硬化性配合物を噴霧するようにしてもよいが、更なる詳細な説明は、ポリウレタン反応混合物を噴霧する処理に言及しながら行う。上記のような混合物は、通例は、2種類の成分、すなわち、イソシアネート成分とポリオール成分とを混合することにより得られるが、3種類以上の成分流を利用することもできる。噴霧されるポリウレタン反応混合物は溶剤(一例として、水を含む)を含んでいないのが好ましく、または、少量の溶剤を含んでいる場合は10重量%未満であるのが好ましく、5重量%未満であるのがより好ましいが、これにより、反応混合物は噴霧される際に比較的高い粘性を示す。
【0024】
噴霧によるポリウレタン層は、通常は平均密度が300 g/リットルよりも高く、400 g/リットルよりも高いのが好ましく、600 g/リットルよりも高いのが最も好ましい。ポリウレタン層は剛性ポリウレタン層であってもよいが、軟質のエラストマーポリウレタン層であるのが好ましく、特に、所謂、ポリウレタン被膜の平均厚さ(被膜の体積をその表面積で除算することにより決まる)の範囲が0.1 mmから3 mmであるのが好ましく、更に、0.3 mmから2 mmであるのが好ましい。実際には、特に、計器盤、ドア鏡板、変則レバー周辺コンソールなどのような車両の内装仕上げ部材を製造するために、剛性の支持層が被覆層の背面に供与され、これら2層の間には中間発泡層が供与されるのが好ましい。
【0025】
噴霧によりポリウレタン被膜を設けるのに好適な反応混合物は、例えば、欧州特許明細書EP-B-0 379 246号などに開示されている。このような反応混合物は、反応混合物を噴霧する直前にイソシアネート成分およびポリオール成分を混合することにより合成される。イソシアネート成分は、光安定性に富むポリウレタン被膜を達成するように、脂肪族イソシアネートを基本構成にするとよい。しかし、実際には、光安定性を欠いたポリウレタン被膜を噴霧することもできる。このような被膜に好適な反応混合物については、反応性がより高い芳香族ポリイソシアネートが使用される。この場合、被膜を生成した後に前記被膜の上に塗料層が塗布されるか、または、被膜用の反応混合物を金型表面に噴霧する前に金型内被膜層として金型表面に塗料層が塗布されるか、いずれかにより被膜を光安定状態にするのが好ましい。
【0026】
ポリウレタン反応混合物を噴霧する基本原理は図1に例示されている。
【0027】
第1工程において、2種類の成分、すなわち、ポリオールおよびイソシアネートが調製量だけ攪拌タンク1Aからポンプ2Aにより投入され、また、攪拌タンク1Bからポンプ2Bにより投入されてから、熱交換器3Aおよび3Bでそれぞれに所望温度まで加熱された後で、噴霧ノズル5が設けられている可動式噴霧ガン4で混合される。この噴霧ノズル5からは、反応混合物は所定の噴霧パターンに従って表面6に噴霧されるが、特に、金型表面に噴霧される。反応混合物を硬化させた後は、成形ポリウレタン層9は金型表面6から取外すことができるが、この取外し処理は、任意で、噴霧ポリウレタン層9の背面に1層または複数層の追加層を供与した後に行われてもよい。ポリウレタン層は必ずしも金型表面に噴霧されなければならない訳ではなく、製造する予定である成形されるべき物品のまた別な層に噴霧されてもよく、そのような層の具体例として、例えば、金型内被膜層に噴霧されるか、または、外側被膜層に噴霧されてもよいが、斯かる外側被膜層は金型表面に既に噴霧済みで尚且つポリウレタン層である場合もある。このような外側ポリウレタン層も本発明によるノズルにより噴霧することができ、例えば、脂肪族層であり、内側層は芳香族ポリウレタン層であってもよい。内側層は外側層と同じ密度にしてもよいが、外側層よりも密度を低くすることもできる。
【0028】
ノズル5から粘性の反応混合物を噴霧する際、通常、得られる噴霧パターンは液膜7から構成されており、斯かる液膜は、例えば0.5 cm から20 cmの距離dに亘って落下した後で散らばって液滴8となる。噴霧プロセスは以下の態様で制御されるのが好ましく、すなわち、反応混合物がノズルから噴霧されて、そのまま、直接、液滴8の形態になってASTM規格 E 799-81に準拠して測定される、50 μmより大きく、60 μmよりも大きいのが好ましく、70 μmよりも大きいのがより好ましく、80 μmよりも大きいのが最も好ましい中間容積径(MVD)を有している液滴8の形態になるか、または、液膜7の形態を取ってから、ノズル5から距離dの位置付近で散らばって上記のような液滴8になるか、いずれかであるように制御される。噴霧プロセスは更に以下の態様で制御されるのが好ましく、すなわち、液滴8が500 μmより小さく、300 μmよりも小さいのが好ましく、200 μmより小さいのがより好ましく、150 μmより小さいのが最も好ましい中間容積径を有するように制御される。狭いキャビティ内に噴霧する場合、ノズルと金型表面との間の距離、すなわち、噴霧距離Dは距離dよりも短く、この距離dを越えた後で液膜は散らばって液滴となり、液膜7の形状であった反応混合物が金型表面6に達する。
【0029】
反応混合物は円錐形または楕円錐形に噴霧されるが、斯かる円錐は中空であるのが好ましい。中空の円錐形状の噴霧型が図2に例示されているが、層厚さをより均一にすることができるという事実に鑑みて、この噴霧型が好ましい。
【0030】
ポリウレタン層は2段階以上の相で金型表面に噴霧されるのが好ましい。第1段階では、ポリウレタン反応混合物はより高い流量で噴霧されるのが好ましく、通常はより離れた噴霧距離Dから噴霧される。次の段階では、流量を減じることで、噴霧距離Dを短くして金型表面のより複雑な形状部に噴霧したり、金型表面の端縁部に噴霧することができるようにするのが好ましい。このようにして、層の厚さをより均一にすることができるようになるとともに、標的外の余分なところに噴霧するのを緩和することができるようになる。噴霧によりポリウレタン層を設ける際の吹付けの最大流量と最小流量の間の割合は、1.1よりも大きいかそれに等しい(≧ 1.1)のが好ましく、特に、1.2よりも大きいかそれに等しい(≧ 1.2)のが好ましく、特に、1.3よりも大きいかそれに等しい(≧ 1.3)のがより好ましい。
【0031】
上述のように、硬化性配合物は少なくとも2種類の成分、特に、ポリオールとイソシアネートの成分を所定の割合で混合することにより合成される。或る流量から別な流量に移行させる間、ポンプ2Aおよびポンプ2Bの動作は以下の態様で制御されるのが好ましく、すなわち、流量を変動させている間も2種の反応成分の割合が一定に保たれるように制御されるのが好ましい。このように、或る流量から別な流量に切替える間、重合体層の噴霧を中断する必要はない。これには、異なる流量に切替えている間に材料が喪失されることが全くないという利点がある。噴霧により、ありふれた機器類の鏡板の被膜を設けた際に、材料は約10%節約することができたが、噴霧時間の上昇は約5%にすぎなかった。
【0032】
流量を低下させても、液滴寸法が大きくなりすぎたせいで噴霧仕上げ層中に包含される空気の泡が大きくなりすぎるのを回避し得なくなって噴霧型が安定を欠くのを防止し得なくなることがないようにするのが望ましい。他方で、流量を増大させても、液滴寸法が小さくなりすぎたせいで微細すぎる霧状になるのを回避し得なくなることがないようにするのが望ましい。最大流量と最小流量のいずれの流量で噴霧している場合でも、生成される液滴の中間容積径は上述の寸法範囲に入るようにするのが好ましい。
【0033】
本発明により、ノズルを通る硬化性配合物の流量を変動させても液滴寸法に及ぼされる影響を少なくすることができる、新規なノズルが提案されている。
【0034】
図3は、本発明による加圧旋回式霧化ノズルの第1実施例を例示している。斯かる噴霧ノズル5はハウジング10を有しており、斯かるハウジングの管状端部11には内側ネジ筋12が切ってあり、これを利用してノズルは噴霧ガン4の静止混合機13の遠位端の上にネジ固定することができる。ハウジング10には長手方向軸線の方向の穿孔14が更に設けられており、前記穿孔より大きい、開放端が設けられている横断方向穿孔15で終端している供給チャネルを形成している。横断方向穿孔15の内面はネジが切られており、これに対応するネジが立てられた開口部材片16が上記穿孔15にねじ込まれる。
【0035】
開口部材片16は中空部材片であり、底面が開放状態になっており、尚且つ、漏斗状のキャビティを定めるとともに頂面部には出口開口17を定めている。漏斗状のキャビティはその長手方向軸線aが出口開口17の中心を通っている。注入部材片18は開放状態にある底面から出口開口17に挿入されて、漏斗状のキャビティを、そこを流れる液体に関して上流側の端部で閉鎖している。このようにして、漏斗状のキャビティは注入部材片18の前面と出口開口17の間で旋回式小室19を形成している。
【0036】
図面に例示されている実施例においては、旋回式小室19の側壁24、すなわち、漏斗状のキャビティの定められた面は円錐形であり、漏斗状のキャビティの長手方向軸線aを通る複数の長手断面に対して角度αを成しており、斯かる角度は概ね30° から60°の間の角度であり、横断面Bはこの長手方向軸線aに直交している。例えば、上記長手断面について見た場合には側壁が湾曲しているという事実のせいで角度αが一定ではない場合は、平均角度αav は30°から60°の間の角度を取るべきであり、平均角度αav は表面重み付け平均であり、同じ角度αを示している側壁の表面領域を考慮している。図8に例示されている実施例においては、注入部材片18に隣接して設置されている側壁24の第1部分24'は横断面Bとの間に角度α'を成しており、同時に、出口開口17に隣接して設置されている側壁24の第2部分24''は横断面Bとの間に角度α'を成している。第1部分24'の表面積がA1 で第2部分24''の表面積がA2 である場合、αav

【数6】


に等しい。湾曲した側壁24については、図9に例示されているように、平均角度αavは同じ方法で算定することができる。
【0037】
注入部材片18は4個の旋回式ポート20(すなわち、20a、20b、20c、20d)を備えており、これらポートを通して、長手方向軸線の方向の穿孔14を通して供給される反応混合物が所定の全体的方向に従って旋回式小室19に注入されるが、全体的方向は凡その速度ベクトル21で示されている。図5および図6に例示されているように、注入部材片18は、例えば、円筒状部22および中空の開口部材片16の内部に嵌合する円錐台部23から構成されており、より詳細に説明すると、円錐台部23は開口部材片16の円錐形の内側面に嵌合している。円錐台形の上位面においては、4本の溝が設けられて、旋回式ポート20を形成している。これら溝または旋回式ポート20は各々が円筒状の穿孔25によって供給路14に接続されているが、円筒状の穿孔25は注入部材片18の底面側の中央で終端しており、反応混合物の流れは4本の穿孔25および旋回式ポート20で分流される。
【0038】
旋回式ポート20のそれぞれの配向を設定している態様としては、反応混合物を旋回式小室19に注入する所定の全体的方向21が、漏斗状のキャビティの長手方向軸線aを含んでいる長手方向の面Aであって、尚且つ、長手方向軸線aに直交するとともに個々の旋回式ポート20の出口の中心cを通る直線bに直交しているような長手方向の面Aに直角に投影されると、長手方向軸線aに直交している横断面Bとの間に角度βを成すような配向になっており、この角度βは30°から60°までの間の角度である。図6の表示では、角度βは旋回式ポート20aについて見て取れるが、角度βを決定するために利用することができる長手方向の面A、中心c、および、直線bは、図5および図6においてはこの旋回式ポート20aについて例示されている。
【0039】
旋回式ポート20はそれぞれ断面が、個々の旋回式ポート20により反応混合物が旋回式小室20に注入される所定の全体的方向21に直交する断面C(旋回式ポート20bについて図示されている)について測定されるのが好ましく、斯かる断面Cは一定ではなく、旋回式小室20に向かうにつれて減少している。このように、ノズル全体にわたる圧力降下が緩和されている。図5および図6に例示されている実施例においては、漏斗状のキャビティの側壁に直交して測定される旋回式ポート20の深さが旋回式小室19に向かうにつれて減少しているという事実により、溝はその断面積が逓減されている。旋回式ポート20の断面積が一定ではないという事実のせいで、反応混合物の流れの方向は旋回式ポート20の断面全体で変動するため、反応混合物が旋回式小室19に注入される所定の全体的方向21は、旋回式ポート20を出ていく反応混合物の凡その速度ベクトルに一致する(旋回式ポートの全断面にかかる反応混合物の速度の大きさが均一であると仮定すれば、凡その速度ベクトルが決まる)。
【0040】
旋回式ポート20の深さは、反応混合物が旋回式小室19に注入される所定の全体的方向21が旋回式小室19の長手方向軸線aに直交している上記横断面Bとの間に角度γを成している限りは、旋回式小室19に向かうにつれて減少し、斯かる角度γは、角度αよりも大きく、または、旋回式小室19の側壁24と横断面Bとの間に形成される平均角度αav よりも大きい。角度γは図6においては旋回式ポート20bについて見て取れる。旋回式ポート20bについての角度γを決定するために、所定の全体的方向21がもう1つ別な長手方向の面D(旋回式ポート20aの傾斜角βを決定するために利用される面Aと同一である)に直角に投影されるが、斯かる平面Dはここでもまた、漏斗状のキャビティの長手方向軸線aとこれに直交するとともに旋回式ポート20bの中心cを通る直線eとを含んでいる。ここで、角度γが、全体的方向21の上記のような投影と横断面Bとの間の角度と決まる。角度γは平均角度αav より少なくとも8°は大きいのが好ましく、平均角度αavより少なくとも12°は大きいのがより好ましい(平均角度αav は、角度αが一定である場合にはこの角度αに等しい)。このようにして、反応混合物は旋回式小室19の側壁24に対して或る角度のもとに注入されることで、旋回式小室内で既により良好に拡散している状態になる。
【0041】
図8および図9に例示されている実施例においては、角度αav と角度γの差は、角度αが出口開口17に向かうにつれて小さくなるような態様で漏斗状のキャビティを成形することにより達成される(または、増大する)。角度αは、図8に例示されているように、不連続的な態様で減少するか、または、図9に例示されているように、連続的な態様で減少するか、いずれであってもよい。図9の実施例では、側壁24のみならず、注入部材18の漏斗状部23も湾曲しており、斯かる漏斗状部は開口部材片16の円錐形の内側面に嵌合する。これに代わる例として、図7および図8に例示されているように注入部材片18はそのまま真直ぐに維持して、旋回式小室19の側壁24のみを湾曲させるようにすることもできる。
【0042】
更に別な実施例においては、図面には例示されていないが、旋回式ポート20は、複数の溝によって形成される代わりに複数の穿孔によって形成されてもよい。このようにして、これら穿孔の方向を選択することにより、角度γを制御することができる。
【0043】
本発明によるノズルには少なくとも2本の旋回式ポート20が設けられているが、少なくとも3本の旋回式ポート20が設けられているのが好ましく、少なくとも4本の旋回式ポート20が設けられているのがより好ましい。それを超える本数の旋回式ポート20により、旋回式小室において反応混合物をより良好に分散させることができ、すなわち、より均一な噴射型を達成することができるが、同じ総流量について、旋回式ポート20の本数が多いほど、当然、旋回式ポート20の各々の最小断面積Asp は小さくなる。旋回式ポートの幅を増大させることにより(更にまた、これに対応して旋回式ポートの深さを減じることにより)、旋回式小室内の反応混合物をより良好に分散させることができるようになる。よって、好ましい実施例においては、旋回式ポート20はそれぞれの出口の幅wが上記長手方向軸線aに直交する横断面Bについて測定されるが、その方向は、注入部材片18の前面側の外周に正接する方向であり、複数の旋回式ポート20の幅wの和は、注入部材片18の前面側の外周の少なくとも11%はあり、少なくとも14%であるのがより好ましく、少なくとも17%であるのが最も好ましい。
【0044】
本発明によるノズルは、比較的小さい流量で噴霧することを意図した小型ノズルである。旋回式ポート20は極めて細いせいで、それぞれの最小断面積Asp,tot は反応混合物が個々の旋回式ポート20により旋回式小室20に注入される所定の全体的方向21に直交している断面C(旋回式ポート20bについて例示されている)について測定されるが、そのような最小断面積の和は0.9 mm よりも小さく、更に、0.6 mmよりも小さいのが好ましい。旋回式ポート20は各々が、詰まる恐れを緩和するために、上記所定の全体的方向21に直交する断面Cについて測定される個々の最小断面積Asp が0.07 mm よりも大きくなっており、0.08 mmよりも大きいのが好ましい。旋回式ポートの本数を増やして流れすなわち反応混合物を分流することができるようにするために、それぞれの最小断面積Asp は0.25 mmよりも小さいのが好ましく、0.20 mmよりも小さいのがより好ましく、0.15 mmよりも小さいのが最も好ましい。
【0045】
出口開口17はその最小断面積Aeoが漏斗状のキャビティの長手方向軸線aに直交する横断面について測定されるが、斯かる最小断面積は旋回式ポート20それぞれの断面積Asp の和Asp,tot に対して相関的に大きくなっているとともに、特に、断面積Aspの和Asp,tot の少なくとも1.3倍は大きく、少なくとも1.5倍は大きいのが好ましく、少なくとも1.7倍は大きいのがより好ましい。このようにして、比較的粘性に富む硬化性配合物を効果的に噴霧することができるようになる。更に、この点で、出口開口17はその長さLoが長手方向軸線aの方向に測定されるが、斯かる長さは上記長手方向軸線aに直交する平面について測定される出口開口17の最小径Do よりも小さくなる。長さLo は出口開口17の最小径Do の0.6倍小さく、0.5倍小さいのがより好ましく、更に0.4倍小さいのが最も好ましい。
【0046】
図面に例示されている実施例において、出口開口17は円筒形であるため、その長さLo および直径Doは容易に測定することができる。旋回式小室19から出口開口17までの間の遷移部が湾曲している場合、または、出口開口17からノズルの外側までの間の遷移部が湾曲している場合、ノズルの内側面に正接して、尚且つ、漏斗状のキャビティの長手方向軸線aと同一平面内に存する線が長手方向軸線aとの間に30°よりも小さい角度を成している位置で出口開口17が始まり、または、終端している。
【0047】
本発明の第1の観点によるノズルの必須特性の1つは、旋回式小室19の側壁24の表面積Asc が良好に限定された両極限の範囲内にあることである。より詳細に説明すると、比率

【数7】


は17よりも小さいか、或いは、それに等しく、その理由は、この態様では、ノズルを通る流量の変動が生成される液滴の寸法に及ぼす影響が小さくなることが分かっているからである。しかしながら、旋回式小室内の反応混合物を十分に分散させることで十分に均一な噴霧型を得ることができるようにするには、上述の比率は6よりも大きいかそれに等しくなければならない。比率

【数8】


は15よりも小さいかそれに等しいのが好ましいが、13より小さいかそれに等しいのがより好ましく、12よりも小さいかそれに等しいのが最も好ましいが、但しその場合、上記比率は7よりも大きいかそれに等しく、8よりも大きいかそれに等しいのがより好ましく、8.5より大きいかそれに等しいのが最も好ましい。
【0048】
旋回式小室20の高さHを増すことで旋回式小室19の側壁24の表面積Asc は増大させることができ、高さHを減らすことで減少させることができるが、この場合、高さHは注入部材片18から出口開口17までの距離である。
【0049】
好ましい実施例においては、漏斗状のキャビティはその断面積Afc が上記長手方向軸線aに直交して、尚且つ、旋回式ポート20の出口を通る横断面Bについて測定されるが、斯かる断面積については、比率

【数9】


は1.7よりも大きいかそれに等しく、しかも、6.5よりも小さいかそれに等しいことがいえる。この比率が1.7よりも小さい場合、旋回式小室19内の反応混合物を十分に分散させるのが困難となり、換言すると、十分に均一な噴霧型を達成するのが困難となる。他方で、この比率が6.5よりも大きい場合は、通常は、反応混合物を霧化する効率が劣り、結果として、ノズルを通る流量の変化時に液滴寸法の変動が大きくなってしまう。上記比率

【数10】


は4.4より小さいかこれに等しいのが好ましいが、3.6よりも小さいかこれに等しいのがより好ましい。更に、比率

【数11】


は2.0よりも大きいかこれに等しいのが好ましく、2.2より大きいかこれに等しいのがより好ましい。
【実施例】
【0050】
図3から図7に例示されているような通常の構成で、9種類のノズルを作成した。各ノズルの相違点は、それぞれの注入部材片18の高さが、より詳細に言うと、斯かる注入部材片の円錐台部23の高さが互いに異なっていることである。こうして、旋回式小室19の側壁24の表面積Asc もノズルごとに異ならせた。注入部材片18に設けられた穿孔25の傾斜の調節は、これら互いに異なるノズルのそれぞれの複数の旋回式ポート20が全て同じ長さとなるように実施された。
【0051】
これら全部のノズルを使って、流量10 g/秒と流量14 g/秒の両方で同じポリウレタン反応混合物を噴霧し、ノズル全体の圧力降下を測定した。更に、液滴の中間容積径をASTM規格 E 799-81に準拠して測定し、幅5 mmのスリットが設けられた表面にポリウレタン反応混合物を噴霧することにより、また、上記表面の上方をノズルに通過させると同時に上記表面の下に設置された紙シートの上方を通過させることにより、噴霧型を判定した。こうして得た結果を表1に要約する。

【表1】

【0052】
表1の結果の示すところでは、旋回式小室の寸法の低減がノズル全体の圧力降下に影響を及ぼすことは実質的にないが、液滴寸法の変化に重要な影響を与えている点は驚嘆に値する。既に前段までに述べたが、油噴燃器の燃料ノズルの分野の研究の示すところでは、中間液滴寸法は圧力変化の0.3乗として逆に変動する。圧力降下は9種類の試験を受けたノズルの全部について実質的に同じであるので、液滴寸法の増大も同じとなることが予測されるが、この場合は明瞭にはそういい難かった。更に、燃料ノズルについて分かっている公式に従えば、44%の圧力低下は約19%の液滴寸法増大に対応しているが、これは、本実施例で観察された液滴寸法増加よりも遥かに少ない。このような差異は、ポリウレタン反応混合物の粘性のせいであるか、そうでなければ、ポリウレタン反応混合物の表面張力が原因である可能性がある。しかし、主たる理由のうち最も可能性の高いものとして、ポリウレタン反応混合物が比較的低い流量で噴霧された結果として液滴が粗大になったことが考えられる。従って、流量が更に低下することで液滴寸法により多大な効果を有するようになり、よって、噴霧型の安定性にもより大きな効果を及ぼすようになる。このことは、溝が幾分深くなっているという事実を除いて表のNo.2ノズルと同一であるノズルを使った、また別な試験でも既に明らかになっている。14 g/秒から10 g/秒まで流量が低減した結果としてノズル全体の圧力降下は47%低下して、尚且つ、液滴寸法は68%(100 μmから168 μmへ)増大するが、流量が17.5 g/秒から12.5 g/秒まで減少した結果、ノズル全体の圧力降下は同程度(45%)に減少するが、液滴寸法の増大は小さくなる(95 μmから135 μmへ増大し、すなわち、液滴寸法の増大率はわずか42%である)。
【0053】
14 g/秒および10 g/秒のいずれの流量で噴霧した場合も、ノズルNo. 9により得られる噴霧型は主として、4本の尾を引く流れが紙シートの上に4個の別個の点を生じる型であった。ノズルNo. 8を使って噴霧した場合、4個の主たる点と点の間に更に幾つか別な点が生じる。ノズルNo. 7を使った場合、噴霧パターンは既に均一さを増しているが、ノズルNo. 6はより均一な噴霧型を生じる。最も均一な噴霧型は、ノズルNo. 5から吹付けて得られた。もう1つ別な試験は、比率

【数12】


が9.0に等しいノズルを使って実施されたが、これもまた、極めて均一な噴霧型を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性配合物を表面(6)に噴霧して前記表面の上に重合体層(9)を生成する加圧旋回式霧化ノズル(5)は、
− 漏斗状のキャビティを定めるとともに長さがLoで直径がDoである出口開口(17)を定めており、前記漏斗状のキャビティが長手方向軸線(a)に沿って延びるとともに前記出口開口(17)において液体流の下流側最端部で終端している開口部材片(16)と、
− 前記漏斗状のキャビティを液体流の上流側最端部で閉鎖することで、漏斗状のキャビティが前記注入部材片(18)の前面側と前記出口開口(17)との間で旋回式小室(19)を形成している注入部材片(18)であって、少なくとも2本の旋回式ポート(20)を有しており、前記旋回式ポートの各々に入口と出口が設けられており、前記旋回式小室(19)において前記旋回式ポートは各々の端部が所定の全体的方向(21)に従って硬化性配合物を旋回式小室(19)に注入することで硬化性配合物を旋回させるようにした注入部材片(18)とを備えており、
− 前記旋回式ポート(20)は各々の最小断面積Asp が前記所定の全体的方向(21)に直交している断面(C)について測定されるが、前記旋回式ポート(20)の前記最小断面積Asp の和Asp,tot は0.9 mm2 より小さく、更に、0.6 mm2 よりも小さいのが好ましく、
− 前記旋回式小室(19)はその側壁(24)の表面積がAsc であるとともに前記長手方向軸線(a)を通る複数の長手の断面において長手方向軸線(a)に直交する横断面(B)との間に平均角度αav を成し、前記平均角度αav は30°から60°までの間の値を取り、
− 前記旋回式ポート(20)のそれぞれの配向を設定する態様として、前記所定の全体的方向(21)は、前記長手方向軸線(a)を含んでいる長手の面(A)であって、尚且つ、長手方向軸線(a)と直交しているとともに個々の旋回式ポート(20)の出口の中心(c)を通る直線(b)に直交している長手の面(A)に直角に投影されると、実質的に前記横断面(B)との間に角度βを成し、前記角度βは30°から60°までの間の値を取り、
前記注入部材片(18)は前記出口開口(17)から以下に示す数式1において規定されるような距離(H)だけ離れた位置に設置され、

【数1】

ここで、比率Lo /Do は1よりも小さい、
ことを特徴とする、加圧旋回式霧化ノズル。
【請求項2】
前記注入部材片(18)は前記出口開口(17)から以下に示す数式2において規定されるような距離(H)だけ離れた位置に設置され、

【数2】


ここで、

【数3】


の値は13より小さいかそれに等しい(≦ 13)のが好ましく、12より小さいかそれに等しい(≦ 12)のがより好ましいことを特徴とする、請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記注入部材片(18)は前記出口開口(17)から以下に示す数式4において規定されるような距離(H)だけ離れた位置に設置され、

【数4】


ここで、

【数5】


の値は8より大きいかそれに等しい(≧ 8)のが好ましく、8.5より大きいかそれに等しい(≧ 8.5)のがより好ましいことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記所定の全体的方向(21)は、前記長手方向軸線(a)を含んでおり尚且つこれに直交しているとともに個々の旋回式ポート(20)の出口の中心(c)を通る直線(e)を含んでいるもう1つ別な長手の面(D)に直角に投影されると、前記横断面(B)との間に角度(γ)を成し、前記角度は前記平均角度αav よりも少なくとも8°は大きく、更に、前記平均角度αav よりも少なくとも12°は大きいのが好ましいことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のノズル。
【請求項5】
硬化性配合物を表面(6)に噴霧して前記表面の上に重合体層(9)を生成する加圧旋回式霧化ノズル(5)は、
− 漏斗状のキャビティを定めるとともに長さがLo で直径がDo である出口開口(17)を定めており、前記漏斗状のキャビティが長手方向軸線(a)に沿って延びるとともに前記出口開口(17)において液体流の下流側最端部で終端している開口部材片(16)と、
− 前記漏斗状のキャビティを液体流の上流側最端部で閉鎖することで、漏斗状のキャビティが前記注入部材片(18)の前面側と前記出口開口(17)との間で旋回式小室(19)を形成している注入部材片(18)であって、少なくとも2本の旋回式ポート(20)を有しており、前記旋回式ポートの各々に入口と出口が設けられており、前記旋回式小室(19)において前記旋回式ポートは各々の端部が所定の全体的方向(21)に従って硬化性配合物を旋回式小室(19)に注入することで硬化性配合物を旋回させるようにした注入部材片(18)とを備えており、
− 前記旋回式ポート(20)は各々の最小断面積Asp が前記所定の全体的方向(21)に直交している断面(C)について測定されるが、前記旋回式ポート(20)の前記最小断面積Asp の和Asp,tot は0.9 mm2 より小さく、更に、0.6 mm2 よりも小さいのが好ましく、
− 前記旋回式小室(19)はその側壁(24)の表面積がAsc であるとともに前記長手方向軸線(a)を通る複数の長手の断面において長手方向軸線(a)に直交する横断面(B)との間に平均角度αav を成し、前記平均角度αav は30°から60°までの間の値を取り、
− 前記旋回式ポート(20)のそれぞれの配向を設定する態様として、前記所定の全体的方向(21)は、前記長手方向軸線(a)を含んでいる長手の面(A)であって、尚且つ、長手方向軸線(a)と直交しているとともに個々の旋回式ポート(20)の出口の中心(c)を通る直線(b)に直交している長手の面(A)に直角に投影されると、実質的に前記横断面(B)との間に角度βを成し、前記角度βは30°から60°までの間の値を取り、
比率Lo /Do は1よりも小さく、
前記所定の全体的方向(21)は、前記長手方向軸線(a)を含んでおり尚且つこれに直交しているとともに個々の旋回式ポート(20)の出口の中心(c)を通る直線(e)を含んでいるもう1つ別な長手の面(D)に直角に投影されると、前記横断面(B)との間に角度(γ)を成し、前記角度は前記平均角度αav よりも少なくとも8°は大きく、更に、前記平均角度αav よりも少なくとも12°は大きいのが好ましいことを特徴とする、加圧旋回式霧化ノズル。
【請求項6】
前記旋回式ポート(20)のそれぞれの配向を設定する態様は、前記所定の全体的方向(21)を前記もう1つ別な長手の面(D)に投影することで前記横断面(B)との間に角度(γ)を成すようになっており、前記角度は前記平均角度αav よりも少なくとも8°は大きく、更に、前記平均角度αav よりも少なくとも12°は大きいのが好ましいことを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のノズル。
【請求項7】
前記旋回式ポート(20)は前記注入部材片(18)に設けられている複数の溝によって形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載のノズル。
【請求項8】
前記複数の溝(20)の深さは、それぞれの入口から出口に向けて減少していることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載のノズル。
【請求項9】
前記旋回式ポート(20)のそれぞれの前記入口は、前記注入部材片(18)に設けられている穿孔(25)により注入部材片(18)の背面側と流体連絡状態にあることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のノズル。
【請求項10】
前記旋回式ポート(20)はそれぞれの出口で幅(w)が前記長手方向軸線(a)に直交する横断面(B)について前記注入部材片(18)の前面側の外周に正接する方向に測定され、個々の前記旋回式ポート(20)の幅(w)の和は、注入部材片(18)の前面側の前記外周の少なくとも11%であることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれかに記載のノズル。
【請求項11】
個々の前記旋回式ポート(20)の幅(w)の和は、前記外周の少なくとも14%であり、更に、少なくとも17%であるのが好ましい、請求項10に記載のノズル。
【請求項12】
前記旋回式ポート(20)の各々の前記最小断面積Aspは前記所定の全体的方向(21)に直交する断面(C)について測定されて、0.07 mm2 よりも大きく、更に、0.08 mm2 よりも大きいのが好ましいが、但し尚且つ、0.25 mm2 よりは小さく、更に、0.20 mm2 よりも小さいのが好ましく、0.15 mm2 よりも小さいのが最も好ましいことを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載のノズル。
【請求項13】
前記長手方向軸線(a)に直交して尚且つ前記旋回式ポート(20)のそれぞれの出口を通る横断面(B)について測定されると、以下に示す数式6に規定された条件

【数6】


を満たすように、前記漏斗状のキャビティは横断面Afc を有しており、前記出口開口(17)は最小断面積がAeo であることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載のノズル。
【請求項14】
以下に示す数式7に規定された条件

【数7】


を満たし、前記値は3.6よりも小さいかそれに等しい(≦ 3.6)のが好ましいことを特徴とする、請求項13に記載のノズル。
【請求項15】
以下に示す数式8に規定された条件

【数8】


を満たし、前記値は2.2よりも大きいかそれに等しい(≧ 2.2)のが好ましいことを特徴とする、請求項13または請求項14に記載のノズル。
【請求項16】
前記比率Lo /Do は0.6 よりも小さく、更に、0.5 よりも小さいのが好ましく、 0.4 よりも小さいのがより好ましいことを特徴とする、請求項1から請求項15のいずれかに記載のノズル。
【請求項17】
前記出口開口(17)は最小断面積がAeo であり、前記最小断面積Aeo は1.3 * Asp,tot よりも大きいかそれに等しく(≧1.3 * Asp,tot )、更に、 1.5 * Asp,tot よりも大きいかそれに等しい(≧ 1.5 * Asp,tot )のが好ましく、1.7 *Asp,tot よりも大きいかそれに等しい(≧ 1.7 * Asp,tot )のがより好ましいことを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれかに記載のノズル。
【請求項18】
加圧旋回式霧化ノズル(5)により表面に硬化性配合物を噴霧することによって前記表面の上に重合体層(9)を生成する方法であって、請求項1から請求項17のいずれかに記載の加圧旋回式霧化ノズル(5)を使用することを特徴としている、方法。
【請求項19】
前記硬化性配合物はその中に溶剤を多くても10重量%しか含有しておらず、前記溶剤のこの割合はせいぜい5重量%であるのが好ましく、実質的に溶剤を全く含有していないのが好ましいことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記硬化性配合物はポリウレタン反応混合物であり、特に、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分を含んでいる混合物であることを特徴とする、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記硬化性配合物は液滴(8)の形態で前記ノズル(5)から噴霧され、前記液滴の中間容積径はASTM規格 E 799-81に準拠して決まり、50 μm よりも大きく、更に、60 μm よりも大きいのが好ましく、70 μm よりも大きいのがより好ましく、80 μm よりも大きいのが最も好ましく、または、前記硬化性配合物は液膜(7)の形態で噴霧され、前記液膜は前記ノズル(5)から或る距離(d)離れた位置で散らばって前記液滴(8)になることを特徴とする、請求項18から請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記硬化性配合物は液滴(8)の形態で前記ノズル(5)から噴霧され、前記液滴の中間容積径はASTM規格 E 799-81に準拠して決まり、500 μm よりも小さく、更に、300 μm よりも小さいのが好ましく、200 μm よりも小さいのがより好ましく、150 μm よりも小さいのが最も好ましく、または、前記硬化性配合物は液膜(7)の形態で噴霧され、前記液膜は前記ノズル(5)から或る距離(d)離れた位置で散らばって前記液滴(8)になることを特徴とする、請求項18から請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記硬化性配合物を前記表面(6)の上に噴霧する場合、硬化性配合物の流量は変動され、最高流量と最低流量の比は1.1よりも大きいかそれに等しく(≧ 1.1)、特に、1.2よりも大きいかそれに等しく、(≧ 1.2)、1.3よりも大きいかそれに等しいのがより好ましい(≧ 1.3)ことを特徴とする、請求項18から請求項22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記最高流量および前記最低流量のいずれの流量で噴霧する場合も、液滴(8)の中間容積径は請求項20および請求項21に記載の範囲に入ることを特徴とする、請求項21から請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記硬化性配合物を前記表面(6)の上に噴霧する場合、硬化性配合物の前記流量は変動され、硬化性配合物は少なくとも2種類の成分を所定の比率で混合することにより合成され、前記所定の比率は或る流量から別な流量に移行する間も維持されることを特徴とする、請求項18から請求項24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
請求項1から請求項17のいずれかに記載の加圧旋回式霧化ノズル(5)を使用することで、前記ノズル(5)により硬化性配合物を表面の上に噴霧することによって前記表面に重合体層(9)を生成するようにした、ノズルの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−528839(P2010−528839A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510651(P2010−510651)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055478
【国際公開番号】WO2008/148419
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508270864)レクティセル アウトモービルジステメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】