説明

硬表面処理のための組成物

本発明は、硬表面を処理する、特に洗浄および/または汚れ忌避処理のための組成物であって、a)少なくとも式(I)
(H−A)−Z−[A−B−Si(OR(R3−r (I)
[式中、Zは少なくとも3個の炭素原子を有する(m+n)−価の基、Aは2価のポリオキシアルキレン基を表し、Zに結合するm+nポリオキシアルキレン基は互いに異なっていてよく、いずれの場合にも残基AはZに属する酸素原子を介してZと結合し、かつ、Aに属する酸素原子はBまたは水素に結合し、
Bは化学結合または1〜50個の炭素原子を有する2価の有機残基を表し、
ORは加水分解性基を意味し、RおよびRは、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基を表し、rは1〜3の整数を表し、
mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nは3〜100の値を有する。]のマルチアームシリルポリアルコキシレート、b)少なくとも1つの界面活性剤、c)水および/または少なくとも1つの非水溶媒、d)必要に応じて、さらに該組成物の他の成分と親和性がある、表面処理の従来成分および/または洗浄組成物を含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬表面のための処理剤、特に硬表面のための洗浄剤および汚れから表面を保護し、および/または表面から汚れの剥離を容易にするための薬剤の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や商業界のどちらにおいても、非常に多様な種類の汚れの影響にさらされている様々な種類の硬表面が存在している。壁や床タイル、ガラス、台所用品およびセラミック衛生陶器の表面が、ほんの一例として挙げられる。このような表面を洗浄するために、界面活性剤を含む薬剤が長い間使用されており、そのような薬剤の洗浄作用は、表面から汚れを剥離し、または洗い流すことができるように、汚れ粒子を可溶化する界面活性剤の能力により最初に決定される。しかしながら、表面の種類および汚れの種類によって、硬表面に汚れが非常に強く付着し得る。これは、汚れが表面に長時間残っている場合にはなおさらであり、付着は熟成過程によりなおいっそう強固になる。その結果、汚れを除去することはとても困難になり、洗浄に大きな問題を生じる。従って、近年、洗浄剤の洗浄力の改良だけでなく、すでに使用されている表面が汚れるのを防止する、または少なくとも遅らせる薬剤に関して研究が増えてきている。
【0003】
従って、製造中に汚れ忌避仕上げを提供し得る材料を用いた、様々な硬質材料のための方法が開発されている。しかしながら、そのような永久的な仕上げは複雑な方法でのみ提供することができ、通常、正規メーカーによりこのような方法で仕上げられた新規物質にのみ利用可能である。
【0004】
さらに、また一方で、少なくとも一定の耐用年数、汚れにくくまたはより容易に洗浄し得るように、家庭内で実行できるような方法で表面を仕上げ得る薬剤も見出されている。
【0005】
洗浄の促進および改善ならびに新しい汚れの防止は、セラミック衛生陶器の分野で特に実際的関心がある。とりわけ、水洗トイレの洗浄は、セラミックに付着した石灰および尿スケールおよび残糞の除去を伴う。従来のトイレ洗浄剤はしばしば、石灰や尿スケールに対する高い有効性を確保するために、例えばクエン酸やスルファミン酸のような有機酸を加えることにより酸性に製造されている。通常、便の汚れに対する洗浄能力も高いが、トイレの表面に対してトイレブラシを用いるような機械的な力を利用しなければならない。湿った便の汚れでさえもセラミック材料にしっかりと付着する力があり、この機械的な力は、汚れがより古くすでに乾燥している場合に大きくなる。
【0006】
国際特許出願WO2006/005358は、それぞれ少なくとも1つのアニオン性ビニルモノマー、4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するビニルモノマー、および非イオン性親水性ビニルモノマーまたは多官能性ビニルモノマーからなる共重合体を開示する。これらの共重合体は、洗浄剤において汚れの抑制剤として適当であり、例えば便の汚れに対して効果的である。
【0007】
しかしながら、これらの洗浄剤を使用しても、トイレ内部の新しい便の汚れに対する1回限りの使用を超えて続く持続的な洗浄度は、完全に満足するものに達することができない。
【0008】
さらなる問題は、石灰を分解するために、トイレ洗浄剤がしばしばセラミック上に長時間(しばしば数時間または一晩でさえも)作用するまで放置されるという事実に起因する。セラミックへの付着を促進するために、処方は通常増粘される。長時間の処置の場合には、膜が表面上に形成される。それは通常、製品の色によって着色し、乾くと除去が困難になる。
【0009】
水分作用に繰り返しさらされる硬表面は、しばしば微生物により侵され、バイオフィルムの形成をもたらす。バイオフィルムは、微生物(例えばバクテリア、藻類、菌、原虫)が含まれた粘質層(膜)からなる。これは衛生的な問題のみでなく美観的な問題も構成し得る。しばしば解決策として殺菌物質が使用される。しかしながら、多くのこれらの物質の生態毒性特性に起因する問題およびそれに関連する使用上の制限が、必ずしもないとは限らない。さらに、特に衛生上の利用において、バイオフィルムは不快臭のする物質を形成する一因となり、従って望まれない悪臭の源となる。
【0010】
硬表面を処理するための薬剤は、さらなる他の要求を満たしていなければならない。例えば、表面の外観にとっては、表面が処理された後、損傷されないことが重要である。ここで特に重要な因子は、元々のまたはきれいな状態が光沢仕上げである表面の光沢の保持および、例えば線や筋状での処理薬剤の残留回避である。
【0011】
最終的に、硬表面の汚れ忌避仕上げを提供するため、および/または汚れの剥離を容易にするため、および/またはバイオフィルムの形成または付着を減少させるための方法および薬剤に対する要求があり、独立した表面処理方法または、表面を洗浄し、同時に前述した特性を付与する洗浄法のコースにおいてこれらの効果を実現することができる。
【0012】
このような薬剤の製造においては、さらに、処方中に容易に組み込み可能な成分および良好な貯蔵安定性を示す薬剤が必要である。
【0013】
US6423661B1は、8個までのアームを含んでなるポリエーテルポリオールのOH基をイソシアナトシランと反応させることにより生成するシリル末端プレポリマーを記載する。プレポリマーとして記載される得られた化合物は、粘着剤中で用いられる。表面処理または洗浄剤における該プレポリマーの使用は開示されていない。
【0014】
US2003/0153712A1は、末端アルコキシシランおよびヒドロキシル基を有するポリウレタンプレポリマーを開示する。生成は、初めにポリエーテルジオールを半化学量論的な量のジイソシアネートと反応させ、その後さらに、得られたイソシアネート/ヒドロキシ化合物を、シリル基を導入するためにアミノシランで処理することにより行われる。この開示されたプレポリマーは、ジアームのポリアルコキシレートであり、シーリング剤および粘着剤を製造するために使用される。
【0015】
US2004/0096507A1は、ヘキサアームのポリエチレングリコール誘導体に関連し、また、主要な中心単位としてソルビトールから製造され得る完全にシリル末端化された誘導体を開示する。該文献に開示されるポリエチレングリコール誘導体は、生分解性の高分子ヒドロゲルの製造および/または医学的/製薬学的用途(例えば移植のような)に適当であることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2006/005358号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6423661号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0153712号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0096507号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、上述した先行技術の不都合を少なくとも一部修正することであった。特に、本目的は、硬表面、特にトイレのセラミックからの汚れおよびバイオフィルムの剥離性を改善するための薬剤を提供することであり、改質されたそのような表面上の汚れを防止することであった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
特定のシリルポリアルコキシレートを含有する薬剤が、処理されたすぐ後に表面を汚れから保護するため、および/または、表面から汚れを容易に剥離するために、特に適当であることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従って、本発明は、硬表面を処理、特に硬表面の洗浄および/または汚れ忌避処理を提供するための薬剤であって、
a)少なくとも1つの、式(I)

[式中、
Zは、少なくとも3個の炭素原子を有する(m+n)−価の基、Aは2価のポリオキシアルキレン基を表し、Zに結合するm+nポリオキシアルキレン基は互いに異なっていてよく、いずれの場合にも残基AはZに属する酸素原子を介してZと結合し、かつ、Aに属する酸素原子はBまたは水素に結合し、
Bは、化学結合または1〜50個の炭素原子を有する2価の有機残基を表し、
ORは加水分解性基を意味し、RおよびRは、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基を表し、rは1〜3の整数を表し、
mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nは3〜100の値を有する。]
のマルチアームシリルポリアルコキシレート、
b)少なくとも1つの界面活性剤、
c)水および/または少なくとも1つの非水溶媒、
d)必要に応じて、さらに、該薬剤の他の構成成分と親和性がある、表面処理の従来成分および/または洗浄成分を含有する薬剤を提供する。
【0020】
本発明の目的に対し、硬表面は、特に石材またはセラミック材、硬質プラスチック材、ガラスまたは金属の表面を含んでなる。硬表面は、例えば、壁、調理台、フローリングまたは衛生用品であり得る。特に、本発明はセラミック表面、好ましくはセラミック衛生陶器、特に便器に関する。
【0021】
表面を処理するために適当な方法は、表面上に薬剤を塗布し得る任意の従来法である。室温で薬剤が液状である特に望ましい場合には、好ましくは、吸水性のある布を用いて表面上に移された薬剤により、または表面にスプレーされた薬剤により、表面は処理される。しかしながら、処理は、例えば薬剤に表面を浸すことにより進められてもよい。
【0022】
本発明の目的のため、汚れ(dirtまたはsoiling)は、特に便による汚れおよび/またはバイオフィルムを意味するべきである。
【0023】
本発明の薬剤による硬表面の処理は、汚れから硬表面を保護し、および/または表面からの汚れの剥離を容易にする。特に、殺菌作用を示すことなく、該薬剤はバイオフィルムの形成を防止する。バイオフィルムの形成に対する本発明を使用した薬剤の有効性が、使用するシリルポリアルコキシレートの静菌作用に起因し、それにより微生物による該表面のコロニー形成が抑制され、表面上への微生物の付着および増殖が防止されているということは疑わしい。一方で、薬剤に対して殺菌作用が見られないため、上述した殺菌剤の使用の不都合に悩むことはない。
【0024】
本発明の薬剤は、硬表面に対する汚れのより容易な除去、再汚染の受け易さの減少および、特に洗浄剤の洗浄力の改善をもたらす。従って、その結果、処理または洗浄された表面は長期間きれいな状態となる。
【0025】
さらに、洗浄剤の処方に式(I)のシリルポリアルコキシレートを加えた場合には、便の汚れのより容易でより素早い除去のみでなく、乾燥した(場合によって着色した)洗浄剤自身の改善された洗い流しが可能であることがわかった。このような方法で処理された表面に便の汚れが生じた場合、汚れはかなりの機械的な力なしに次回トイレが流される時に除去することができる。一般的にこれは、さらにトイレブラシを用いることを必要とせず、洗浄水の機械的作用のみによって達成される。着色された洗浄剤処方が表面に処理のために長時間放置され、処方がある程度乾燥した場合でもなお、生じた着色膜は、次回トイレが流される時に容易におよび完全に除去される。
【0026】
界面活性剤含有洗浄剤における、添加剤としての式(I)のシリルポリアルコキシレートの使用は、表面をきれいにするだけでなく、同時に汚れからの保護を表面に与えることを、一段階で可能にする。この方法においては、例えば、石灰の蓄積、タンパク質や脂肪を含有する汚れの付着および細菌増殖が防止される。処理された表面はより長くきれいな状態のままであり、その後の洗浄はさらにかなり容易になる。これは、清浄度に何らのマイナス影響なしに、表面を洗浄する必要が少なくなること、その後の洗浄をさらに速くすすめることができ、および/または、より穏やかな洗浄剤を要し得ることにおいて、その後の洗浄がより少ない労力で済むことを意味する。好ましい場合、しばらくの間適当な洗浄作用を水のみで得ることができる。即ち、従来の洗浄剤の使用を必要としない。
【0027】
式(I)のシリルポリアルコキシレートは、容易にそして簡単に、該薬剤の他の構成成分と一緒に処方組みすることができ、特に、従来の洗浄剤処方中へとても簡単に組み込むこともできる。特に、これらの物質の有利な溶解特性は、従来の洗浄剤への組み込みが何らの制限(例えば噴霧性を損なうような)を生じないことを意味する。
【0028】
本発明の目的のためのマルチアームシリルポリアルコキシレートは、中心単位に星型配列または放射状に十分に結合したポリマーアームを含んでいる。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、式(I)のシリルポリアルコキシレートあるいは2つまたはそれ以上のこれらの化合物の混合物が使用され、質量平均(重量平均)分子量は、500〜50000、好ましくは1000〜20000、特に好ましくは2000〜10000になる。ここで、該シリルポリアルコキシレートは、シリルポリアルコキシレートの総重量に対して、好ましくは0.3〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%のケイ素を含有する。
【0030】
Zは、好ましくは少なくとも3価の、特に3価〜8価の非環状または環状の、3〜12個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。これは飽和または不飽和残基であることができ、特に芳香族である。Zは、特に好ましくはグリセロールの3価残基または糖の3価〜8価の残基、例えばソルビトールの6価残基またはスクロースの8価残基を表す。前記ポリオールのx価残基は、xアルコール性またはフェノール性ヒドロキシル基から水素原子の除去後に残るポリオールの分子断片を意味すると理解されるべきである。Zは、原則として、星型(プレ)ポリマーの製造に対する文献で既知である任意の中心単位であってよい。
【0031】
さらに、式(I)において、nは0、1または2を表し、mは3〜8の数を意味することが特に好ましい。
【0032】
Aは、好ましくは、ポリ−C〜Cアルキレンオキシド、特に好ましくはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの(共)重合体、特に60重量%までの、好ましくは30重量%までの、特に好ましくは20重量%までのプロピレンオキシドの割合を有する共重合体から選択される基を表し、ランダムおよび/またはブロックの共重合体であるポリマーであることができる。従って、本発明のさらに好ましい実施態様において、式(I)中のAは、−(CHR−CHR−O)−を表し、RおよびRは、互いに独立して水素、メチルまたはエチルを意味し、pは2〜10000の整数を表す。
【0033】
Bは、好ましくは化学結合または、好ましくは1〜50個の、特に2〜20個の炭素原子を有する2価の低分子量有機残基を表す。2価の低分子量有機残基の例は、短鎖脂肪族基およびヘテロ脂肪族基、例えば−(CH−、−(CH−、−C(O)−NH−(CH−および−C(O)−NH−X−NH−C(O)−NH−(CH−であり、Xは2価の芳香族基、例えばフェニレン基またはアルキリデン基を表す。Bは、特に好ましくは結合または残基−C(O)−NH−(CH−を表す。
【0034】
およびRは、好ましくは、互いに独立してメチルまたはエチルを表し、rは2または3を表す。−Si(OR(R3−rの例は、ジメチルエトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジイソプロピルエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基またはトリ−t−ブトキシシリル基であり、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が特に好ましい。
【0035】
およびRにとって、RおよびRが同一で、かつメチルまたはエチルを表すことが、特に好ましい。rが3であることがさらに好ましい。
【0036】
m+nの合計は、好ましくは3〜50、特に3〜10、特に好ましくは3〜8になり、式(I)中の中心単位Zへ結合するアームの数に一致する。従って、中心単位は、好ましくは3〜50個の、特に3〜10個の、特に好ましくは3〜8個の、アームの接続点としての機能を果たす酸素原子を有している。
【0037】
1つの特定の実施態様において、nは0である。nが0より大きい(n>0)場合には、比n/mは99/1〜1/99、好ましくは49/1〜1/49、特に9/1〜1/9の間である。
【0038】
本発明のさらに好ましい実施態様において、薬剤は、少なくとも2つの混合物、特に2〜4つの異なる式(I)のマルチアームシリルポリアルコキシレートを含有する。
【0039】
ここで、少なくとも2つの異なるマルチアームシリルポリアルコキシレートは、それらのアームの数で異なることが特に好ましい。ここで、3〜6個のアームを有する1つ目のシリルポリアルコキシレートは、6〜10個のアームを有する2つ目のシリルポリアルコキシレートと有利に結合する。
【0040】
特に好ましい混合物は、少なくとも2つの、n=0である式(I)の異なるマルチアームシリルポリアルコキシレートを含んでなる混合物であり、それらはm=3、m=6およびm=8である式(I)のマルチアームシリルポリアルコキシレートの群から選択される。
【0041】
2つの異なるマルチアームシリルポリアルコキシレートが用いられた場合、一般的に、それらは99:1〜1:99、好ましくは49:1〜1:49、特に好ましくは9:1〜1:9の量比で存在する。
【0042】
さらに、本発明の特に好ましい実施態様において、本発明の薬剤は、少なくとも1つの加水分解性ケイ酸誘導体を含有する。
【0043】
加水分解性ケイ酸誘導体は、特に、オルトケイ酸のエステル、特にテトラアルコキシシラン、特に好ましくはテトラエトキシシランを意味すると理解されるべきである。しかしながら、本発明の目的のために、加水分解性ケイ酸誘導体は、3個のアルコキシ基に加えて、ケイ素原子上に炭素残基も有する化合物、例えば、N−(トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン、ジメチルオクタデシル−3−(トリメトキシシリルプロピル)−アンモニウムクロリド、ジエチルホスフェートエチルトリエトキシシランおよびN−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸の三ナトリウム塩のような化合物を意味するべきと理解される。
【0044】
この実施態様において、シリルポリアルコキシレートまたはシリルポリアルコキシレート混合物と少なくとも1つの加水分解性ケイ酸誘導体の量比は、90:10〜10:90、好ましくは50:50〜10:90、特に40:60〜20:80であることが特に有利である。
【0045】
少なくとも1つの式(I)のシリルポリアルコキシレートが、本発明の薬剤において、いずれの場合も薬剤の総重量に対して0.001〜20重量%、特に0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の量で従来的に使用される。
【0046】
本発明により使用される式(I)のシリルポリアルコキシレートは、文献から既知でない場合、それらは既知の先行技術の官能化法から類推して、適当なマルチアームポリアルコキシレート前駆体を官能化することによって製造され得る。
【0047】
US2003/0153712A1に記載された末端アルコキシシランおよびヒドロキシル基を有するジアームのポリウレタンプレポリマーは、初めにポリエーテルジオールを半化学量論的のジイソシアネートと反応させ、その後さらに得られたイソシアネート/ヒドロキシ化合物を、シリル基を導入するためにアミノシランにより処理することにより製造される。原則としてこの文献中で使用される合成原理は、本発明の教示によるマルチアームのポリアルコキシレートの製造に転換し得る。
【0048】
US6423661B1は、イソシアナトシランと8個までのアームを含有してよいポリエーテルポリオールのOH基を反応させて製造するシリル末端プレポリマーを記載する。この文献の教示は、本発明の一般式(I)に含まれるプレポリマーを含んでなる。
【0049】
US2004/0096507A1は、ヘキサアームのポリエチレングリコール誘導体に関連し、本発明の一般式(I)に含まれる、中心単位としてソルビトールから製造し得る完全にシリル末端化された誘導体を開示する。
【0050】
本発明に使用されるシリルポリアルコキシレートを製造するための好適なポリアルコキシレート前駆体は、同じく、上述したマルチアーム構造をすでに含有し、各ポリマーアームの末端にヒドロキシル基(全てまたは一部を、−B−Si(OR(R3−r基に変換されてもよい)を含有するポリアルコキシレートである。本発明に使用されるシリルポリアルコキシレートのポリアルコキシレート前駆体は、一般式(II)により表現され得る。

式中、Z、A、mおよびnは、式(I)の化合物に対して記載したものと同様の意味を有する。
【0051】
適当なポリアルコキシレート前駆体は、例えば、星型またはマルチアームのポリエーテルポリマーの名称のもと、文献から既知である。これらのポリアルコキシレート前駆体は、適当なモノマー、特にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを、例えばグリセロールまたはソルビトールのような小さな多官能性分子を開始剤として使用して重合することにより製造される。挙げ得るマルチアームのポリエーテルポリオールの例は、米国特許第6423661号に記載されたような、グリセロール、スクロースおよびソルビトールのエトキシレートまたはプロポキシレートである。重合反応のランダム性のため、本発明に使用されるシリルポリアルコキシレートのポリマーアームに関する上記詳細は、特にアームの長さおよびアームの数(m+n)に関しては、いずれの場合も統計的平均とみなされるべきである。
【0052】
いくつかの適当なポリアルコキシレート前駆体は市販品を入手することもできる。この一例は、DOW ChemicalsからのVoranol4053(ポリエーテルポリオール〔ポリ(エチレンオキシドコ−プロピレンオキシド)〕)である。これは2つの異なるポリエーテルポリオールの混合物であり、中心単位としてグリセロールを有するトリアームのポリエーテルポリオール、および中心単位として甘蔗糖を有するオクタアームのポリエーテルポリオールからなる。該アームは、約12000の質量平均(重量平均)分子量の時、OH官能基(ヒドロキシ末端基)の平均数が6.9になる、約75%のEOおよび約25%のPOのランダム共重合体である。これは、約78%のオクタアームのポリエーテルポリオールおよび約22%のトリアームのポリエーテルポリオールの比を生じる。他の例は、WANHUA(中国)からのWanol R420である。これは、直鎖のポリ(プロピレン/エチレン)ジエチレングリコールおよびオクタアームのポリエーテルポリオール〔ポリ(プロピレンオキシ/エチレンオキシ)スクロース〕の、約15〜25:85〜75の比率での混合物である。他の市販品を入手可能なポリエーテルポリオールは、Dow ChemicalsからのVoranol CP 1421である。これは、約75/25のEO/PO比および約5000の質量平均(重量平均)分子量を有するトリアームのランダムポリ(エチレンオキシドコ−プロピレンオキシド)を含んでなる。
【0053】
マルチアームのポリアルコキシレート前駆体のヒドロキシル末端基を−B−Si(OR(R3−r基に転化するために考え得る出発物質は、原則として、ポリアルコキシレート前駆体のヒドロキシ末端基に対して反応する官能基を含有する、任意の機能性シランである。例えばテトラメチルケイ酸塩およびテトラエチルケイ酸塩のようなテトラアルコキシシラン、例えば(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)トリエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシランおよび(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシランのような(メタ)アクリレートシラン、(3−イソシアナトプロピル)トリメトキシシラン、(3−イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシランおよび(イソシアナトメチル)トリメトキシシランのようなイソシアナトシラン、トリエトキシシリルウンデカナールおよびトリエトキシシリルブチルアルデヒドのようなアルデヒドシラン、(3−グリシドオキシプロピル)トリメトキシシランのようなエポキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物のようなシラン無水物、クロロメチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシランのようなハロゲンシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシランのようなヒドロキシシラン、およびテトラエチルシリケート(TEOS)であり、それらは例えば、Wacker Chemie GmbH(Burghausen)、Gelest,Inc.(Morrisville、米国)、またはABCR GmbH & Co.KG(Karlsruhe)から市販されており、または既知の方法を用いて製造され得る。テトラアルコキシシラン、イソシアナトシランまたはシラン無水物、特にイソシアナトシランまたはシラン無水物が、一般式(II)のマルチアームポリアルコキシレート前駆体と特に好ましく反応する。全てのヒドロキシ末端基が官能性シランと完全に反応した場合、アームの末端に−B−Si(OR(R3−r基のみを有する、即ちn=0の本発明に使用されるマルチアームシリルポリアルコキシレートが得られる。そのような場合、基Bは例えば結合のみからなるか、または、イソシアナトシランが官能性シランとして用いられる場合には、例えば基Aの末端酸素原子とともにウレタン基、および出発イソシアナトシランにおいてイソシアナト基とシリル基との間に位置する原子の基を含有する。全てのヒドロキシ末端がシラン無水物、例えば3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物と完全に反応する場合、同様に−B−Si(OR(R3−r基のみを有する、マルチアームシリルポリアルコキシレートが得られる。そのような場合、基Bは、基Aの末端酸素原子とともにエステル基、および出発シラン無水物において無水物基およびシリル基との間に位置する原子の基を含有する。
【0054】
本発明に使用される、アームの末端にヒドロキシル基および−B−Si(OR(R3−r基の両方を有する、一般式(I)のマルチアームシリルポリアルコキシレートが製造される場合、一般式(II)のポリアルコキシレート前駆体と、全末端ヒドロキシル基に対して半化学量論的な量の官能性シランを反応させる以下の方法が好ましい。即ち、前記−B−Si(OR(R3−r基が初めに導入されるが、マルチアームのポリアルコキシレート前駆体中の全ての末端ヒドロキシル基が反応するわけではない。この方法において、ヒドロキシル基および−Si(OR(R3−r基の両方の基を有するマルチアームのポリアルコキシレートが得られる。例えば、マルチアームのポリエーテルポリオールのヒドロキシ末端とイソシアナトシランの部分的な反応において、末端シリル基およびOH基(R=OH)の両方を有する、マルチアームのポリアルコキシレートが得られる。さらなる段階において、残りのまたは一部の残りのヒドロキシル基は、上述したように、得られた−B−Si(OR(R3−r基で修飾され得る。
【0055】
少なくとも1つのシリルポリアルコキシレートに加えて、本発明の水性薬剤に存在する他の成分は、種類および使用量に関して、シリルポリアルコキシレートと望まれない相互作用を生じないように選択すべきである。
【0056】
本発明の薬剤は、陰イオン性、非イオン性、両性および陽イオン性界面活性剤ならびにそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの界面活性剤を含有する。
【0057】
適当な陰イオン性界面活性剤は、好ましくはC〜C18のアルキルベンゼンスルホン酸塩、特にアルキル部分に約12個の炭素原子を有するC〜C18のアルキルベンゼンスルホン酸塩、C〜C20のアルカンスルホン酸塩、C〜C18のモノアルキル硫酸塩、エーテル部分に2〜6個のエチレンオキシド単位(EO)を有するC〜C18のアルキルポリグリコールエーテル硫酸塩およびスルホコハク酸モノ−およびジ−C〜C18−アルキルエステルである。さらに、C〜C18α−オレフィンスルホン酸塩、スルホン酸化したC〜C18脂肪酸、特にドデシルベンゼンスルホン酸、C〜C22カルボン酸アミドエーテル硫酸塩、C〜C18アルキルポリグリコールエーテルカルボン酸塩、C〜C18N−アシルタウリン酸塩、C〜C18N−サルコシン酸塩およびC〜C18アルキルイセチオン酸塩またはそれらの混合物を使用することも好ましい。陰イオン性界面活性剤は、好ましくはナトリウム塩として使用されるが、他のアルカリ塩またはアルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩として、またアンモニウム塩またはモノ−、ジ−、トリ−またはテトラアルキルアンモニウム塩の形態で、スルホン酸塩の場合にはそれらに対応する塩の形態、例えばドデシルベンゼンスルホン酸でも存在し得る。そのような界面活性剤の例は、ココアルキル硫酸ナトリウム、約15個のC原子を有するsec.−アルカンスルホン酸ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウムである。12〜14個のC原子を有する脂肪アルキル硫酸ナトリウムおよび脂肪アルキル+2EOエーテル硫酸塩が、特に好適であることがわかっている。
【0058】
主に挙げ得る非イオン性界面活性剤は、C〜C18アルコールポリグリコールエーテル、即ち、8〜18個のC原子をアルキル部分に有し、かつ2〜15個のエチレンオキシド(EO)および/またはプロピレンオキシド(PO)単位を有するエトキシ化および/またはプロポキシ化されたアルコール、2〜15個のEOを有するC〜C18カルボン酸ポリグリコールエステル、例えば獣脂肪酸+6EOエステル、12〜18個のC原子を脂肪酸部分に有し、かつ2〜8個のEOを有するエトキシ化された脂肪酸アミド、14〜20個のC原子を有する長鎖アミンオキシドおよび8〜14個のC原子をアルキル部分に有し、かつ1〜3個のグリコシド単位を有する長鎖アルキルポリグリコシドである。そのような界面活性剤の例は、5EOのオレイル−セチルアルコール、10EOのノニルフェノール、ラウリン酸ジエタノールアミド、ココアルキルジメチルアミンオキシドおよび平均1.4個のグルコース単位を有するココアルキルポリグルコシドである。特に2〜8個のEOを有するC〜C18脂肪アルコールポリグリコールエーテル、例えばC12脂肪アルコール+7EOエーテル、および1〜2個のグリコシド単位を有するC〜C10アルキルポリグリコシドが特に好ましく使用される。
【0059】
本発明の好ましい実施態様において、非イオン性界面活性剤はポリアルキレンオキシド、ここでポリアルキレンオキシドは末端基終端(End group−terminated)であってよい、特にアルコキシル化された1級アルコール、アルコキシル化された脂肪酸アルキルエステル、アミンオキシドおよびアルキルポリグリコシドならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
適当な両性界面活性剤は、例えば、式(Riii)(Riv)(Rv)NCHCOO〔式中、Riiiは、8〜25個、好ましくは10〜21個の炭素原子を有する(場合によっては、ヘテロ原子またはヘテロ原子の基により中断される)アルキル基を表し、RivおよびRvは、同一のまたは異なった、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。〕のベタイン、特に、C10〜C18アルキルジメチルカルボキシメチルベタインおよびC11〜C17アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシメチルベタインである。
【0061】
適当な陽イオン性界面活性剤は、とりわけ、式(Rvi)(Rvii)(Rviii)(Rix)N〔式中、Rvi〜Rixは、4つの同一のまたは異なった、特に2つの長鎖と2つの短鎖のアルキル基を表し、Xは陰イオン、特にハロゲンイオンを表す。〕の4級アンモニウム化合物であり、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジデシルアンモニウムクロリドおよびそれらの混合物である。
【0062】
しかしながら、好ましい実施態様において、薬剤が含有する最良の界面活性成分は、1つまたはそれ以上の陰イオン性界面活性剤、好ましくはC〜C18アルキル界面活性剤および/またはC〜C18アルキルエーテル硫酸塩であり、および/または、1つまたはそれ以上の非イオン性界面活性剤、好ましくは2〜8個のEOを有するC〜C18脂肪アルコールポリグリコールエーテルおよび/または1〜2個のグリコシド単位を有するC〜C10アルキルポリグルコシドである。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施態様において、本発明の薬剤は、特に8〜18個のC原子をアルキル部分に有し、かつ2〜15個のエチレンオキシド(EO)および/またはプロピレンオキシド(PO)単位を有するエトキシ化および/またはプロポキシ化されたアルコールならびに8〜14個のC原子をアルキル部分に有し、かつ1〜3個のグリコシド単位を有するアルキルポリグリコシドから選択される、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含有する。
【0064】
本発明の薬剤は、好ましくは、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、0.01〜20重量%の、特に0.05〜10重量%の、好ましくは0.1〜5重量%の、特に好ましくは0.2〜1重量%の量の界面活性剤を含有する。
【0065】
本発明の薬剤は、水および/または少なくとも1つの非水溶媒を含有する。好ましいと考えられる非水溶媒は、任意の望ましい割合の水混和性の溶剤である。非水溶媒としては、例えば、モノ−または多価アルコール、アルカノールアミン、グリコールエーテルおよびそれらの混合物が挙げられる。使用されるアルコールは、特にエタノール、イソプロパノールおよびn−プロパノールである。考え得るエーテルアルコールは、1分子につき10個までのC原子を有する十分に水溶性の化合物である。そのようなエーテルアルコールの例は、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert.−ブチルエーテルおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルであり、それらの中で、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルが同じく好ましい。しかしながら、好ましい実施態様においては、エタノールを非水溶媒として使用する。
【0066】
非水溶媒は、本発明の薬剤中に、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、0.01〜99.9重量%の、特に0.1〜50重量%の、特に好ましくは2〜20重量%の量で存在してよい。
【0067】
水は、本発明の薬剤中に、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、1〜98重量%の、特に50〜95重量%の、特に好ましくは80〜93重量%の量で存在する。
【0068】
さらに好ましい実施態様において、本発明の薬剤は増粘剤を含有する。洗濯洗剤および洗浄剤における先行技術で使用された任意の粘度調整剤が、原則として、この目的のために考慮され得る。そのような例として、例えば有機天然増粘剤(寒天、カラギーナン、トラガカント、アラビアゴム、アルギン酸塩、ペクチン、ポリオース、グァー粉末、イナゴマメ粉末、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン)、有機修飾した天然物質(カルボキシメチルセルロースおよびその他のセルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなど、種子粉末エーテル)、有機全合成増粘剤(ポリアクリルおよびポリメタクリル化合物、ビニルポリマー、ポリカルボン酸、ポリエーテル、ポリイミン、ポリアミド)および無機増粘剤(ポリケイ酸、粘土鉱物、例えばモンモリロナイト、ゼオライト、シリカ)がある。ポリアクリルおよびポリメタクリル化合物としては、例えばポリアルケニルポリエーテル、特にスクロース、ペンタエリスリトールまたはプロピレンのアリルエーテルと架橋した、アクリル酸の高分子量ホモポリマー(International Dictionary of Cosmetic Ingredients of The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association(CTFA)によるINCI名:カルボマー)が挙げられ、これは、カルボキシビニルポリマーとしても既知である。このようなポリアクリル酸は、とりわけ、3V SigmaからPolygel(登録商標)、例えばPolygel(登録商標)DAの商品名のもと、およびB.F.GoodrichからCarbopol(登録商標)、例えばCarbopol(登録商標)940(分子量約4,000,000)、Carbopol(登録商標)941(分子量約1,250,000)またはCarbopol(登録商標)934(分子量3,000,000)の商品名のもと入手し得る。これらはさらに下記のアクリル酸共重合体も含む:(i)アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの単純エステル(好ましくはC1〜4アルカノールにより形成される)の群からの2つまたはそれ以上のモノマーの共重合体(INCI名:アクリレートコポリマー)、これらには、例えばメタクリル酸、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルの共重合体(Chemical Abstracts ServiceによるCAS名:25035−69−2)またはアクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチル(CAS25852−37−3)が含まれ、例えば、Rohm & HaasからAculyn(登録商標)およびAcusol(登録商標)の商品名のもと、ならびにDegussa(Goldschmidt)からTego(登録商標)Polymer、例えば陰イオン性非会合性ポリマーAculyn(登録商標)22、Aculyn(登録商標)28、Aculyn(登録商標)33(架橋)、Acusol(登録商標)810、Acusol(登録商標)823およびAcusol(登録商標)830(CAS25852−37−3)の商品名のもと入手し得る;(ii)架橋した高分子量アクリル酸共重合体としては、例えば、スクロースまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋した、C10〜30アルキルアクリレートとアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの単純エステル(好ましくはC1〜4アルカノールにより形成される)の群からの1つのまたはそれ以上のモノマーとの共重合体(INCI名:アクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー)が含まれ、これらは、例えば、B.F.GoodrichからCarbopol(登録商標)、例えば疎水性化Carbopol(登録商標)EDT 2623およびCarbopol(登録商標)AQUA 30(以前はCarbopol(登録商標)EX473)の商品名のもと入手し得る。
さらなる増粘剤は、多糖およびヘテロ多糖、特に多糖ゴム、例えばアラビアゴム、寒天、アルギン酸およびその塩、グァー、ガラナ、トラガカント、ゲラン、ラムザン、デキストランまたはキサンタンおよびこれらの誘導体、例えばプロポキシル化グァーおよびこれらの混合物である。他の多糖増粘剤、例えばデンプンまたはセルロース誘導体を代替として使用することができるが、好ましくは多糖ゴムに加えて使用し得る。これらは、例えば多種多様の異なる起源のデンプンおよびデンプン誘導体、例えばヒドロキシエチルデンプン、リン酸デンプンエステルまたは酢酸デンプン、あるいはカルボキシメチルセルロースまたはそのナトリウム塩、メチル−、エチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−、ヒドロキシプロピルメチル−またはヒドロキシエチルメチルセルロースまたは酢酸セルロースである。特に好ましい多糖増粘剤は、微生物性の陰イオン性ヘテロ多糖キサンタンゴムであり、これは、Xanthomonas campestrisおよびいくつかの他の種によって好気性条件下で製造され、2〜15×106の分子量を有し、例えば、KelcoからKeltrol(登録商標)およびKelzan(登録商標)の商品名のもと、ならびにRhodiaからRhodopol(登録商標)の商品名のもと入手し得る。さらに、フィロケイ酸塩を増粘剤として使用し得る。これらには、例えば、フィロケイ酸マグネシウムまたはフィロケイ酸ナトリウム/マグネシウムが含まれ、Solvay AlkaliからLaponite(登録商標)、特にLaponite(登録商標)RDまたはLaponite(登録商標)RDS、ならびにSued−Chemieからのケイ酸マグネシウム、特にOptigel(登録商標)の商品名のもと入手し得る。好ましい実施態様において、本発明の薬剤は、キサンタンガムおよびサクシノグリカンガムを含有する。
【0069】
本発明の薬剤が増粘剤を含有する場合、後者は一般的に、0.01〜30重量%、特に0.2〜15重量%の量で存在する。
【0070】
対象とする用途に応じて、本発明の薬剤の粘度を、幅広い範囲で調整し得る。従って、低粘度の事実上水様処方は多目的および浴室洗浄剤にとって好まれ、一方、高粘度の粘稠処方は、他の用途、例えば洗浄剤にとって好まれ得る。一般的に本発明の薬剤の粘度は、1〜3000mPa・s、好ましくは200〜1500mPa・s、特に好ましくは400〜900mPa・s(ブルックフィールド ロトビスコ LV−DV II プラス粘度計、スピンドル31、20℃、20rpm)である。
【0071】
好ましい実施態様において、本発明の薬剤は9未満のpH値、特に0〜6の、好ましくは1〜5の、特に好ましくは2〜4のpH値を有する。
【0072】
さらに、特に好ましい実施態様において、本発明の薬剤は、少なくとも1つの酸を含有する。適当な酸は、特に、有機酸、例えばギ酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸およびグルコン酸またはアミドスルホン酸である。しかしながら、酸として酢酸を使用することは好ましくない。また一方で、さらに、無機酸、塩酸、硫酸、リン酸および硝酸またはそれらの混合物を使用し得る。特に好ましい酸は、アミドスルホン酸、クエン酸、乳酸およびギ酸からなる群から選択される酸である。それらは、好ましくは、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、0.01〜30重量%、特に好ましくは0.2〜15重量%の量で使用される。
【0073】
さらに、本発明の薬剤は、薬剤、特に硬表面のための洗浄剤の、本発明に使用する物質と望ましくない態様の相互作用を生じない他の従来成分を含有し得る。
【0074】
考え得るそのような構成成分は、例えば、膜形成剤、抗菌活性成分、ビルダー(Builders)、腐食防止剤、錯化剤、アルカリ、防腐剤、漂白剤、酵素ならびに香料および染料である。全体的に、該薬剤は、好ましくは30重量%以下の、好ましくは0.01〜30重量%、特に0.2〜15重量%の他の成分を含有すべきである。
【0075】
本発明の薬剤は、表面の濡れ性の改善に役立ち得る膜形成剤を含有し得る。原則として、洗濯洗剤および洗浄洗剤における先行技術で使用された任意の膜形成ポリマーが、本目的のために考慮される。しかしながら、好ましくは、膜形成剤は、好ましくは200〜20,000,000の間の、特に好ましくは5,000〜200,000の間の分子量を有するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される。膜形成剤は、0.01〜30重量%、特に0.2〜15重量%の量で有利に使用される。
【0076】
本発明の薬剤は、さらに、1つまたはそれ以上の抗菌活性成分を、好ましくは0.01〜1重量%、特に0.05〜0.5重量%、特に好ましくは0.1〜0.3重量%の量で含有し得る。適当な抗菌活性成分は、例えば、アルコール、アルデヒド、抗菌性酸またはその塩、カルボン酸、酸アミド、フェノール、フェノール誘導体、ジフェニル、ジフェニルアルカン、尿素誘導体、酸素または窒素アセタールおよびホルマール、ベンズアミジン塩、イソチアゾールおよびその誘導体、例えばイソチアゾリンおよびイソチアゾリノン、フタルイミド誘導体、ピリジン誘導体、抗菌性界面活性化合物、グアニジン、抗菌性両性化合物、キノリン、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、ヨード−2−プロピニルカルバメート、ヨード、ヨードフォアおよび過酸化物である。好ましい抗菌活性成分は、好ましくは、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、1,3−ブタンジオール、フェノキシエタノール、1,2−プロピレングリコール、グリセロール、ウンデセン酸、クエン酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、チモール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−ブロモ−4−クロロフェノール)、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、N−(4−クロロフェニル)−N’−(3,4−ジクロロフェニル)−尿素、N,N’−(1,10−デカンジルジ−1−ピリジニル−4−イリデン)−ビス(1−オクタンアミン)ジヒドロクロリド、N−N’−ビス(4−クロロフェニル)−3,12−ジイミノ−2,4,11,13−テトラアザテトラデカンジイミドアミド、抗菌性4級界面活性化合物、グアニジンからなる群から選択される。好ましい抗菌性界面活性4級化合物は、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ヨードニウム基、アルソニウム基を含有する。さらに、洗浄剤に、香料と同時に抗菌活性精油を使用することもできる。しかしながら、特に好ましい抗菌活性成分は、サリチル酸、4級界面活性剤、特に塩化ベンザルコニウム、過酸化化合物、特に過酸化水素、アルカリ金属次亜塩素酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
本発明の薬剤は、水溶性および/または水不溶性ビルダーを使用し得る。ここで、水溶性ビルダーは、一般的に、硬表面で不溶性残分が残る傾向がより小さいビルダーとして好ましい。本発明の目的に対して存在し得る従来のビルダーは、低分子量ポリカルボン酸およびその塩、ホモポリマーおよびコポリマーポリカルボン酸およびその塩、クエン酸およびその塩、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩である。水不溶性ビルダーはゼオライトを含み、前記ビルダー物質の混合物とともに、同様に使用し得る。
【0078】
適当な腐食防止剤は、例えば、下記に記載するような物質(それらのINCI名により記載)である:シクロヘキシルアミン、リン酸2アンモニウム、シュウ酸2リチウム、ジメチルアミノメチルプロパノール、シュウ酸2カリウム、リン酸2カリウム、リン酸2ナトリウム、ピロリン酸2ナトリウム、テトラプロペニルコハク酸2ナトリウム、ヘキソキシエチルジエチルアンモニウム、リン酸塩、ニトロメタン、ケイ酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ステアラミドプロピルジメチコン、ピロリン酸4カリウム、ピロリン酸4ナトリウム、トリイソプロパノールアミン。
【0079】
金属イオン封鎖剤としても既知である錯化剤は、薬剤の安定性または外観における不利な影響、例えば曇りを防止するために、錯化および金属イオンの不活性化をすることができる成分である。一方では、多くの成分と混合できない水の硬度のカルシウムやマグネシウムイオンを錯化することは重要である。他方では、例えば鉄または銅のような重金属イオンの錯体形成は、完成した薬剤の酸化分解を遅らせる。さらに、錯化剤は洗浄作用を支持する。下記の、INCI名により記載した錯化剤が、適当な例である:アミノトリメチレン、ホスホン酸、ベータ−アラニンアセト酢酸、EDTAカルシウム2ナトリウム、クエン酸、シクロデキストリン、シクロヘキサンジアミン4酢酸、クエン酸2アンモニウム、EDTA2アンモニウム、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、EDTA2カリウム、アザシクロペンタンジホスホン酸2ナトリウム、EDTA2ナトリウム、ピロリン酸2ナトリウム、EDTA、エチドロン酸、ガラクタル酸、グルコン酸、グルクロン酸、HEDTA、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、メチルシクロデキストリン、3リン酸5カリウム、アミノトリメチレンホスホン酸5ナトリウム、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウム、ペンテト酸5ナトリウム、3リン酸5ナトリウム、ペンテト酸、フィチン酸、クエン酸カリウム、EDTMPカリウム、グルコン酸カリウム、ホリリン酸カリウム、カリウムトリスホスホノメチルアミンオキシド、リボニック酸、キトサンメチレンホスホン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸ナトリウム、ジヒドロキシエチルグリシン酸ナトリウム、EDTMPナトリウム、グルセプト酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グリセレス−1ホリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、ポリジメチルグリシノフェノールスルホン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、TEA−EDTA、TEA−ホリリン酸、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチドロン酸4カリウム、ピロリン酸4カリウム、EDTA4ナトリウム、エチドロン酸4ナトリウム、ピロリン酸4ナトリウム、EDTA3カリウム、ジカルボキシメチルアラニン酸3ナトリウム、EDTA3ナトリウム、HEDTA3ナトリウム、NTA3ナトリウムおよびリン酸3ナトリウム。
【0080】
さらに、本発明の薬剤はアルカリを含む。本発明の薬剤に使用される塩基は、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属水和物および炭酸塩、特に炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの群からの塩基である。しかしながら、アンモニアおよび/または1分子あたり9個までの炭素原子を有するアルカノールアミン、好ましくはエタノールアミン、特にモノエタノールアミンを使用することができる。
【0081】
本発明の薬剤は、同様に防腐剤を含有し得る。原則として、抗菌活性剤に関連して述べた物質を、本目的のために使用し得る。
【0082】
本発明によれば、さらに漂白剤を含有し得る。適当な漂白剤は、過酸化物、過酸、過ホウ酸を含み、過酸化水素が特に好ましい。一方で、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性処方の洗浄剤では、毒性の塩素ガス蒸気を放出するため適当ではないが、アルカリ性洗浄剤では使用し得る。特定の状況下では、漂白剤に加えて漂白活性因子が存在し得る。
【0083】
本発明の薬剤は、酵素、特にプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、ヒドロラーゼおよび/またはセルラーゼを含有し得る。これらは、薬剤に、先行技術で確立された任意の形態で加えることができる。液状またはゲル状の薬剤の場合、特に有利にはできる限り濃縮した、低含水量のおよび/または安定剤と組み合わせた酵素溶液が含まれる。あるいは、酵素は、例えば、好ましくは天然ポリマーと一緒に酵素溶液を噴霧乾燥または押出することによりカプセル化されていてよく、または例えば酵素が固体ゲルとして封入されたカプセルまたは酵素含有コアが水、空気および/または化学物質に不浸透性の保護層で覆われたコアシェルタイプのようなカプセル状であってもよい。さらに活性剤、例えば、安定剤、乳化剤、顔料、漂白剤または染料が多重に塗布されてよい。このような被膜は、本来既知の方法、例えば振とう造粒または回転造粒あるいは流動床工程により塗布される。そのような顆粒は、例えば高分子フィルム形成体の適用により低粉塵であり、また被膜のおかげで貯蔵において安定している。
【0084】
さらに、酵素を含有する薬剤は、例えば物理的影響、酸化、タンパク分解的切断に起因する、例えば不活性化、変性、分解のようなダメージから、本発明の薬剤に含まれる酵素を保護するために、酵素安定剤を含有することができる。使用される酵素に応じて、適当な酵素安定剤は、特に:ベンザミジン塩酸塩、ホウ砂、ホウ酸、ボロン酸あるいはその塩またはそのエステル、芳香族基を有する前記全ての誘導体、例えば置換されたフェニルボロン酸あるいはその塩またはそのエステル;ペプチドアルデヒド(還元されたC末端を有するオリゴペプチド)、アミノアルコール、例えばモノ−、ジ−、トリエタノール−およびプロパノールアミンおよびそれらの混合物、C12までの脂肪族カルボン酸、例えばコハク酸、他のジカルボン酸または前記酸の塩;末端基終端脂肪酸アミドアルコキシレート;低脂肪族アルコールおよび特にポリオール、例えばグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはソルビトール;ならびに還元剤および抗酸化剤、例えば亜硫酸ナトリウムや還元糖である。さらに適当な安定剤は、先行技術から既知である。好ましくは、安定剤を組み合わせて、例えばポリオール、ホウ酸および/またはホウ砂の組み合わせ、ホウ酸またはホウ酸塩、還元塩およびコハク酸または他のジカルボン酸の組み合わせ、あるいはホウ酸またはホウ酸塩とポリオールまたはポリアミノ化合物および還元塩との組み合わせで使用される。
【0085】
最後に、本発明の薬剤は、さらなる成分として1つまたはそれ以上の香料および/または1つまたはそれ以上の染料を含有し得る。水溶性染料および油溶性染料のいずれも使用することができるが、一方では、例えば漂白剤のような他の構成成分との適合性を確保する必要性があり、一方では、長期間の処置の場合にも、表面、特にトイレのセラミック表面に対して染料の使用が実質的作用を有すべきでない。同様に、適当な香料の選択は、洗浄剤の他の構成成分との相互作用の可能性のみによって制限される。
【0086】
本発明の薬剤は好ましくは洗浄剤であり、特にセラミックのための洗浄剤、特に好ましくはセラミックの衛生陶器のための洗浄剤である。
【0087】
本発明の薬剤は、本薬剤に存在する成分を他の成分とを適当に混合することによる、先行技術における従来的な方法で製造され得る。
【0088】
また、本発明は、個々の構成成分を他の構成成分と混合する、本発明の薬剤のための製造方法も提供する。
【0089】
また、本発明は、先行文献に記載されたような、表面を本発明の薬剤に接触させる硬表面を処理するための方法も提供する。
【0090】
この方法は、例えば、汚れ忌避特性あるいは、本発明の薬剤により、本発明の処理に従ってもたらされる1つまたはそれ以上の他の特性を与えるために、表面に対する独立した処理方法として実行され得る。ここで、表面を本発明の薬剤と接触させる。
【0091】
本発明による方法は、好ましくは、薬剤を表面全体に分散し、有利にはその後、1秒〜20分、好ましくは1〜10分の処理時間の後濯ぎ流す、あるいは放置して乾燥させるような方法で行われる。
【0092】
好ましい実施態様の方法において、接触は、5〜50℃、特に15〜35℃の温度で行われる。
【0093】
好ましい実施態様において、本発明による方法は、表面洗浄に役立つ洗浄方法である。
【0094】
特に、本発明による方法は、セラミック、ガラス、ステンレス鋼またはプラスチック材料の表面を処理するために役立つ。
【0095】
本発明の他の実施態様は、汚れからの硬表面の保護および/または新たな汚れの容易な剥離のための本発明の薬剤の使用に関する。汚れは、特に便の汚れおよび/またはバイオフィルムおよび/またはタンパク質の沈着を含んでいる。
【0096】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の薬剤は、水洗トイレの表面からの便汚れおよび/またはバイオフィルムの除去の改良、および/またはそのような表面が便汚れやバイオフィルムにより新たに汚れることを軽減することに役立つ。この目的を達成するために、薬剤を、有利には表面全体に分散し、好ましくは1〜10分の処理時間後濯ぎ流す、あるいは放置して乾燥させる。このような方法で表面が処理された場合、しばしば機械的補助、例えばトイレ用ブラシを用いることなく、便の汚れは容易に除去される。さらに、いくらかの乾燥した洗浄剤残留物は、より容易に洗い流すことができる。
【0097】
本発明の他の実施態様は、硬表面の撥水仕上げを提供し、および/または水にさらした後の硬表面の乾燥時間の短縮のための、本発明の薬剤の使用に関する。
【0098】
洗浄原因に対して、一方の親水性特性からなる表面にとっては、そのような表面を従来の水ベースの洗浄液によりすぐに濡らすことができるため、洗浄工程が楽になり、好都合である。一方で、水によりまたは水ベースの洗浄剤により洗浄された表面にとっては、できる限り早く、再び水の膜がなくなることが望ましい。即ち、テフロン被膜の調理なべのように、水を可能な限り完全にそして早く乾燥させることで、水の膜が表面に残らない。さもなければ、水の膜が乾ききった場合に、例えば石灰沈着のような過剰の汚れが表面上に残り得る。それは、汚く見え、また例えばタンパク質や微生物による新たな汚れを促進し得る。このため、表面を親水性の状態にする本発明の薬剤により表面を処理することがとても好都合である。これらは濡れ性および汚れの脱離を容易にし、同時に表面が容易に水膜を「脱湿する(dewetted)」ことを確保し、水滴が形成され、過剰の汚れが後に残ることを回避する。この特性は、特に、表面が石灰、汚れおよびバイオフィルム沈着にさらされる、例えば典型的な便器、洗面台、バスタブおよびシャワー室のような場所で都合がよい。本特性の他の効果は、処理した表面から水が早く排水され、結果としてより早く乾燥することである。洗浄工程において、洗浄水による濯ぎは、一般的に洗浄製品により表面が処理された後に要求される。この濯ぎの後、早く乾燥することは、例えば表面の早い乾燥が消費者の洗浄度の印象を向上させるため、表面にとって望ましい。
【0099】
また、本発明は、硬表面に静菌作用を付与するための、本発明の薬剤の使用も提供する。
【0100】
本発明に使用する式(I)のシリルポリアルコキシレートの1つの特別な効果は、処理された表面での微生物の成長によるコロニー形成が、本目的に必須である殺菌性なしに抑制されることである。このように、表面の仕上がりは、結果として細菌増殖を防止し、または実質的に遅くする。特に殺菌剤の使用が、環境および消費者保護に関連して、次第により批判的になっているという事実をふまえると、これは先行技術に対する明確な効果である。
【0101】
従って、本発明の他の実施態様は、式(I)

[式中、
Zは、少なくとも3個の炭素原子を有する(m+n)−価の基、Aは2価のポリオキシアルキレン基を表し、Zに結合するm+nポリオキシアルキレン基は互いに異なっていてよく、いずれの場合にも残基AはZに属する酸素原子を介してZと結合し、かつ、Aに属する酸素原子はBまたは水素に結合し、
Bは、化学結合または1〜50個の炭素原子を有する2価の有機残基を表し、
ORは加水分解性基を意味し、RおよびRは、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基を表し、rは1〜3の整数を表し、
mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nは3〜100の値を有する。]
のマルチアームシリルポリアルコキシレートの、硬表面上に静菌仕上がりを提供するための使用に関する。
【実施例】
【0102】
A.合成例
1.ヘキサアームのトリエトキシシリル末端ポリアルコキシレートの製造
使用した出発物質は、ポリエーテルポリオール(開始剤としてソルビトールを使用して、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの陰イオン性開環重合により製造された、80/20のEO/PO比および12000g/molの分子量を有する、ヘキサアームのランダムポリ(エチレンオキシドコ−プロピレンオキシド))である。反応前に、ポリエーテルポリオールを、真空下で攪拌しながら80℃で1時間加熱した。ポリエーテルポリオール(3g、0.25mmol)、トリエチレンジアミン(9mg、0.081mmol)とジブチル錫ジラウレート(9mg、0.041mmol)の無水トルエン(25ml)溶液を前溶解した;そこに、(3−イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン(0.6ml、2.30mmol)の無水トルエン(10ml)溶液を滴下した。この溶液の攪拌を、50℃で一晩続けた。真空下でトルエンを除去した後、粗生成物を無水エーテルで繰り返し濯いだ。真空乾燥後、星形プレポリマーのポリマーアームの遊離末端それぞれにトリエトキシシリル基を有している生成物が、無色粘性液として得られた。IR(フィルム、cm−1):3349(m,−CO−NH−),2868(s,−CH−,−CH),1719(s,−C=O),1456(m,−CH,−CH),1107(s,−C−O−C−),954(m,−Si−O−)。H−NMR(ベンゼン−d,ppm):1.13(d,ポリマーアームの−CH),1.21(t,シラン末端基の−CH),3.47(s,ポリマーアームの−CH),3.74(q,シラン末端基の−CH)。得られたトリエトキシシリル末端ポリアルコキシレートは、13500の分子量を示す。
【0103】
2.トリアームのトリエトキシシリル末端ポリアルコキシレートの製造
Voranol CP 1421(Dow Chemicals)を、真空下で攪拌しながら80℃で1時間乾燥させた。317mg(1.0当量)の(3−イソシアナトプロピル)−トリエトキシシランを、2.04g(0.41mmol)の乾燥させたポリエーテルポリオールにゆっくりと加えた。さらに反応混合物を、保護ガス下、100℃で2日間、IR測定におけるNCO基の振動バンドが消失するまで攪拌した。ポリエーテルポリオールのポリマーアームの遊離末端それぞれにトリエトキシシリル基を有している生成物が、無色粘性液として得られた。
【0104】
3.トリアームおよびオクタアームのトリエトキシシリル末端ポリアルコキシレート混合物の製造
Voranol 4053(Dow Chemicals)を真空下で攪拌しながら80℃で1時間乾燥させた。20.9mg(0.01%)のジブチル錫ジラウレートおよび30.3g(1.0当量)の(3−イソシアナトプロピル)トリエトキシシランを、209g(16.9mmol)の乾燥させたポリエーテルポリオールにゆっくりと加えた。さらに反応混合物を、保護ガス下、室温で2日間、IR測定におけるNCOバンドが消失するまで攪拌した。ポリエーテルポリオールのポリマーアームの遊離末端それぞれにトリエトキシシリル基を有し、約20/80比でトリアームおよびオクタアームのポリアルコキシレートの混合物を構成している生成物が、無色粘性液として得られた。
【0105】
B.試験方法および結果
1.2.IKW〔German Cosmetic,Toiletry,Perfumery and Detergent Association〕バラスト汚物による易洗浄試験
IKWバラスト汚物は、SOEFW−Journal 1998,124,1029により作製した。試験表面をバラスト汚物で覆い、室温で一晩乾燥させた。乾燥後、該表面を流水で濯いだ。該表面上に残った汚れ(白い油脂層)の量および分布を、易洗浄効果の基準として使用した。
【0106】
1.3.靴クリーム汚物による易洗浄試験
靴クリーム汚物は、以下のようにして作製した:黒色靴クリーム(6.5重量%)、マゾラオイル(3.5重量%)、グレービー(26重量%)および水道水(64重量%)の混合物を、100℃で2時間煮沸した。靴クリーム汚物が、その後20分間攪拌し、室温まで冷却することにより得られた。試験表面を靴クリーム汚物に2分間浸した。取り出した後、該試験表面を室温で1分間乾燥させ、その後流水で濯いだ。該表面上に残った汚れ(白い油脂層)の量および分布を、易洗浄効果の基準として使用した。
【0107】
1.4.合成便汚物による易洗浄試験
合成便汚れは、独国特許DE10357232B3により作製した。そこに記載された試験方法と同様の方法で、便汚物を、金属鋳型を使った試験表面上のスポット(直径10mm)に均一に塗布し、室温で15分間乾燥させた。乾燥後、水洗トイレの洗浄工程を模した実験用濯ぎ装置において、試験表面を均一な流水下で洗い流した。洗浄の始まりから黄褐色の便汚物が表面から完全に除去されるまでの経過時間(秒)および該表面上に残った汚れ(白い油脂層)の量および分布を、易洗浄効果の基準として使用した。洗浄後、表面が早く再び乾燥するかどうかも考慮された。
【0108】
1.5.抗石灰試験
試験は、高いカルシウム/マグネシウム含量を有するContrexブランドのミネラル水を使用して行った。試験表面を、この水に室温で24時間浸した。取り出した後、該試験表面を大気中で2時間乾燥させ、その後蒸留水に20分間浸した。取り出した後、該試験表面を大気中でさらに2時間乾燥させた。その後、最初に定性的光学評価を、表面上の石灰の存在および量に関して行った。その後、表面に蓄積した石灰の量の定量を行った。このために、蓄積した石灰は希塩酸で溶解され、得られた水溶液中のカルシウムおよびマグネシウムイオンの量を、滴定(メトローム標準法)により測定した。規格化された石灰の量(mg/cm)を、抗石灰効果の基準として使用した。
【0109】
1.6.微生物学的研究
1.6.1.付着性試験における生体反発力(Biorepulsive power)
試験用物質の生体反発力は、Staphylococcus aureus DSM799およびPseudomonas aeruginosa DSM939を用いた微生物に対する付着性試験において決定された。このために、試験される物質には、例えば、セラミック、プラスチック材料、ステンレスおよびガラスのような家庭用関連硬表面が適用された。最初に、面積18×18mmの試験片を滅菌蒸留水で洗浄し、乾燥させた。このようにして準備された試験片に、微生物懸濁液を塗布し1時間培養した。その後、微生物懸濁液を吸引し、試験片を2度洗浄した。滅菌試験プレートに移し替えた後、S.aureusに対する試験片に栄養寒天を塗布し、その後30℃で48時間培養した。P.aeruginosaの場合には、試験片を緩衝液中で振とうし、その後10%TZCを加えた栄養寒天を塗布し、その後30℃で24時間培養した。振とう液を、膜を通してフィルター濾過し、該フィルターをCASO寒天で30℃、24時間培養した。試験片に微生物によるコロニー形成がなされるかどうかで判断され得る微生物増殖の程度は、未処理表面に対して、コントロール片の微生物増殖を100%として示される。
【0110】
1.6.2.バイオフィルム試験における抗バイオフィルム特性
セラミック上の被膜の表面活性に関して現実的な条件下で長期の兆候を得るために、被覆表面(2×2cm)を24時間、バイオフィルム増殖にさらした。試験片を6空間からなるマイクロタイタープレートに置いた。そこへ、水性環境中で安定的なバイオフィルムを形成する、Dermacoccus nishinomiyaensis DSM 20448、Bradyrhizobium japonicum DSM 1982およびXanthomonas campestris DSM 1526からなる微生物混合物を、微生物数106CFU/ml加えた。バイオフィルム試験のために、上記濃度の微生物を、小型のバイオフィルム試験システムとして用いられるマイクロタイタープレートに希釈完全培地(DGHM〔German Society for Hygiene & Microbiology〕水で50倍に希釈したTBY)とともに入れた。各浴に対して2度の測定を行った。即ち、1つの浴につき2つの試験片を測定した。6ウェルプレートは、30℃で24時間、60rpmで振とうした。規定の培養時間の後、微生物数をカウントするため、各浴から1ml取り出し、トリプトン−NaCl溶液で希釈し、CASO寒天に塗りこんだ。得られたプレートを37℃で24時間培養した後、カウントを行った。試験片をマイクロタイターから取り出し、室温で乾燥させた後、それぞれ6mlの0.01%サフラニンO溶液で15分間染色した。染色液を吸引した後、試験片から非結合染色剤を除去するために試験片を濯いだ。乾燥後、染色された試験片を評価した。
【0111】
1.6.3.WCリアクトルにおける現実的条件下の実験試験
段落1.6.2.と同時に、ほぼ自動的に作動し、トイレの機能を模した構造のWCリアクトルにおける現実的な条件下で、試験片を調査した。このシステムは、いくつかの異なる表面の試験システムにおいて、短期から長期(本件の総実行時間は2日)にわたる付着性およびバイオフィルム形成を調査することを可能にする。マイクロタイターシステムとは違い、これは新鮮培地(TBY/DGHM水 1:50)が試験片に連続して流れ続ける動的システムである。さらに、いくつかの段階で表面を乾燥させ、その後再び液体により覆った。この交互の循環はトイレの循環と非常によく似ていて、同様にセラミック表面を交互に濡らし、または乾かすことができる。膜厚および均一性に関して、リアクトルにおいて作製されたバイオフィルムは、マイクロタイタープレートにより作製されたバイオフィルムと一致する。微生物叢がシステム中に定着できるように、リアクトルをまず680mlの培地で満たし、1.6.2.に記載した微生物混合物を植菌し、一晩培養した。現実のトイレのように、タイムスイッチにより順に調整された電磁弁の開閉による貯蔵タンクからの水により、フラッシング(洗浄)が行われた。湾曲した便器は、アダプターを用いてリアクトル内部に取り付けられた試験片により再現された。1度の出水で、約600mlの水が使用された。それぞれ1日および2日の培養後、洗浄を15回行った(各出水サイクルは20分間続く)。最初の試験片は、出水を行わず、または数回の出水を行って、初日の朝に取り出した。2度目の取り出しは、フラッシング後、午後に行った;リアクトルは、フラッシングを行わず一晩培地で満たしていた。リアクトルから取り出した後、試験片を室温で乾燥させ、その後6mlの0.01%サフラニンO溶液で15分間染色した。染色液を吸引した後、試験片から非結合染色剤を除去するために、試験片を濯いだ。乾燥後、染色した試験片をスキャンし、Corel Draw Paint9により評価した。使用した基材の表面に起因するバックグラウンド値を測定値から減じることができるように、未処理表面もスキャンした。
【0112】
2.シリルポリアルコキシレートによる製造処方
2.1.処方A
合成例1のシリルポリアルコキシレート(4.8重量%)、水(2.4重量%)および酢酸(2.4重量%)のエタノール(100重量%になるまで加える)混合物を、室温で1日間攪拌した。1重量部の該混合物を、20重量部の下記組成の薬剤と混合した。
8−10アルキルポリグリコシド 2.5g
乳酸 2.0g
水 100gになるまで加える
【0113】
2.2.処方B
下記組成による処方を、構成成分を混合することにより製造した。
合成例1のシリルポリアルコキシレート 0.25g
8−10アルキルポリグリコシド 2.5g
乳酸 2.0g
水 100gになるまで加える
【0114】
2.3.処方C
下記組成による処方を、構成成分を混合することにより製造した。
合成例1のシリルポリアルコキシレート 0.25g
8−10アルキルポリグリコシド 1.0g
脂肪アルコールエトキシレート 1.0g
ギ酸 5.0g
水 100gになるまで加える
【0115】
2.4.処方D1
合成例1のシリルポリアルコキシレート(2.50重量%)、テトラエトキシシラン(5.00重量%)、水(3.75重量%)および酢酸(3.75重量%)のエタノール(100重量%になるまで加える)混合物を、室温で1日間攪拌した。1重量部の該混合物を、5重量部の下記組成の薬剤と混合した。
8−10アルキルポリグリコシド 1.0g
脂肪アルコールエトキシレート 1.0g
ギ酸 5.0g
水 100gになるまで加える
【0116】
2.5.処方D2
合成例1のシリルポリアルコキシレート(2.50重量%)、テトラエトキシシラン(15.00重量%)、水(3.75重量%)および酢酸(3.75重量%)のエタノール(100重量%になるまで加える)混合物を、室温で1日間攪拌した。1重量部の該混合物を、5重量部の下記組成の薬剤と混合した。
8−10アルキルポリグリコシド 1.0g
脂肪アルコールエトキシレート 1.0g
ギ酸 5.0g
水 100gになるまで加える
【0117】
2.6.処方D3
合成例1のシリルポリアルコキシレート(2.50重量%)、テトラエトキシシラン(15.00重量%)、水(3.75重量%)および酢酸(3.75重量%)のエタノール(100重量%になるまで加える)混合物を、室温で1日間攪拌した。1重量部の該混合物を、5重量部の下記組成の薬剤と混合した。
8−10アルキルポリグリコシド 2.5g
乳酸 2.0g
水 100gになるまで加える
【0118】
2.6.処方E
合成例1のシリルポリアルコキシレート(2.0重量%)、N−(トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン(4.0重量%)、水(1.0重量%)および酢酸(1.0重量%)のエタノール(100重量%になるまで加える)混合物を、室温で1日間攪拌した。1重量部の該混合物を、10重量部の下記組成の薬剤と混合した。
8−10アルキルポリグリコシド 1.0g
脂肪アルコールエトキシレート 1.0g
ギ酸 5.0g
水 100gになるまで加える
【0119】
3.表面処理および表面の調査
3.1.急速乾燥効果
2.1で作製した処方Aを、洗浄した艶出しタイルまたはガラス表面に噴霧した。短時間の処理後、表面を流水で濯いだ。このような方法で、親水性(水接触角約40°)および撥水性(低ヒステリシス)を同時に有する被膜を得た。この撥水性によって、該表面は水により濯いだ時すぐに乾く。
【0120】
3.2.IKWバラスト汚物による易洗浄試験
2.1で作製した処方Aを、洗浄した艶出しタイルまたはガラス表面に噴霧した。短時間の処理後、表面を流水で濯いだ。1.2により作製された表面、対照となる未処理の艶出しタイルまたはガラス表面で易洗浄試験を行った。同一条件下で、作製された被膜上のIKWバラスト汚物は完全に除去されるが、被覆されていない艶出しタイルまたはガラス表面では白い油脂層が残ることが確証された。
【0121】
3.3.靴クリーム汚物による易洗浄試験
2.1で作製した処方Aを、洗浄した艶出しタイルまたはガラス表面に噴霧した。短時間の処理後、表面を流水で濯いだ。1.3により作製された表面、対照となる未処理の艶出しタイルまたはガラス表面で易洗浄試験を行った。同一条件下で、作製された被膜上の靴クリーム汚物は完全に除去されるが、被覆されていない艶出しタイルまたはガラス表面では白い油脂層が残ることが確証された。
【0122】
3.4.合成便汚物による易洗浄試験
2.4、2.5および2.7により作製された処方D1、D2およびEを、洗浄した艶出しタイルタイルの表面(Villeroy & Bochの艶出し試験トイレ用タイル)にそれぞれ均一に塗布した。10分間の処置後、表面を流水で濯いだ。1.4により作製された表面、対照となる未処理の艶出しタイルまたはガラス表面で易洗浄試験を行った。同一条件下で、対照と比較して、本発明により処理された表面から便汚物は早く除去され、残留物(白い油脂層)は少なかった。結果を下記表に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
3.5.抗石灰試験
洗浄したスライド(26cm×76cm)を、2.6.により作製した処方D3に浸した。短時間の処理後、表面を流水で濯いだ。この方法により、スライドの両側に被膜を得た。1.5により作製された表面、対照となる未処理の表面で抗石灰試験を行った。同一条件下で、作製された被膜上では石灰沈着は事実上目に見えなかったが、被覆していない表面でははっきりと白い油脂層が残った。さらに滴定による定量で、本発明の処方により石灰沈着の約90%の減少が明らかになった。
【0125】
3.6.微生物学的研究
3.6.1.付着性試験における生体反発力試験
初めに、本発明のシリルポリアルコキシレートおよびその処方が殺菌活性を示すかどうかを試験した。このために、合成例1のシリルポリアルコキシレート(5.0重量%)、水(2.5重量%)、酢酸(2.5重量%)のエタノール(100重量%まで加える)混合物を、1.6.1に記載された微生物学的試験のための試験試料として使用した。シリルポリアルコキシレートなしの混合物を対照として用いた。細菌増殖はどちらの試験試料でも同一の結果を示した。即ち、約0.1〜約5%のシリルポリアルコキシレートの濃度範囲は、S.aureusおよびP.aeruginosaの増殖に対して影響がない。
【0126】
さらに、本発明の薬剤により処理した表面で、細菌付着性試験を1.6.1の方法に従って行った。このために、合成例1のシリルポリアルコキシレート(4.8重量%)、水(2.4重量%)、酢酸(2.4重量%)のエタノール(100重量%まで加える)混合物を、室温で1日攪拌した。その後、界面活性剤含有薬剤(薬剤の構成:C8−10アルキルポリグリコシド2.5g、乳酸2.0g、水100gになるまで加える)により、シリルポリアルコキシレートの最終濃度が0.3重量%になるよう希釈した(処方F1)。同様の方法で、テトラエトキシシラン(重量基準でシリルポリアルコキシレートの2倍量)が存在する他の処方(処方F2)を作製した。ガラスカバー片(20mm×20mm)を、それぞれの処方に1分間浸し、その後流水で濯いだ。未処理のガラスカバー片を対照として用いた。結果、本発明によるいずれの処方も、使用した2種の試験菌(Staphylococcus aureusおよびPseudomonas aeruginosa)によるガラスへの付着性において、対照と比較して明らかに比較的大きな減少をもたらすことが明らかになった。これは、殺菌活性ではなく純粋に生体反発効果である。トイレや風呂の衛生状態に関連する水性微生物P.Aeruginosaに対して、最良の微生物忌避性が本発明の処方により示され、コントロールと比較して検出される微生物が50%以上減少した。
【0127】
3.6.2.バイオフィルム試験における抗バイオフィルム特性
該試験は、1.6.2の方法により、すでに3.6.1で記載した処方F1を用いて行った。艶出しセラミックタイル(25mm×25mm)は、エタノールで洗浄した後乾燥させた。約15cm離れたところから、処方F1を洗浄した艶出しタイルに噴霧し、15分間放置した後、水により濯いだ。4、5および7回噴霧された艶出しタイルを作製するため、該手順を15分後に繰り返した。いずれの場合もコントロールは、界面活性剤含有薬剤(薬剤の構成:C8−10アルキルポリグリコシド2.5g、乳酸2.0g、水100gになるまで加える)のみを噴霧した艶出しタイルとした。その後、艶出しタイルを60℃で2時間乾燥させ、試験のために用いた。処方F1により処理された艶出しタイルは、コントロールと比較して明らかにバイオフィルムの目に見える減少を示し、この効果は、7回噴霧した艶出しタイルで最もはっきりとしていた。培養分析により、これらの効果は殺菌活性に起因するものではない。
【0128】
3.6.3.WCリアクトルにおける現実的な条件下での実験試験
該試験は、1.6.3の方法に従って行った。このために、艶出しタイル(25mm×25mm)に、処方F1を用いて、いずれの場合も各艶出しタイルに6回の噴霧行程を3.6.2に記載されたように噴霧した。いずれの場合もコントロールは、3.6.2に記載されたのと同様の界面活性剤含有薬剤のみを噴霧した艶出しタイルとした。増加するフラッシング段階の後、本発明による処理によりセラミックに対する微生物による付着がかなり減少し得ることがわかった。2日間の激しい濯ぎの後でさえも、艶出しタイルは、コントロールと比較してバイオフィルム形成において50%以上の減少を示すという本発明による仕上がりを備えている。
【0129】
3.7.易洗浄特性に関する、本発明により処理された表面と先行技術により処理された表面との比較
洗浄用途において、疎水性、特に超疎水性表面が、易洗浄特性を得るためにしばしば用いられる。1つの典型的な例は、車のフロントガラスのための疎水性雨水撥水性処方である。この例における、ペルフルオロシランから製造された約100°の水接触角の疎水性表面を、本発明により処理された表面と易洗浄効果に関して比較した。このために、まず2つの処方が作製された:合成例1のシリルポリアルコキシレート(0.50重量%)、水(0.25重量%)、酢酸(0.25重量%)およびエタノール(100重量%になるまで加える)の混合物を、室温で2日間攪拌した(処方G)。1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシラン(10重量%)、水(7.0重量%)、酢酸(7.0重量%)およびエタノール(100重量%になるまで加える)からなるもう一方の混合物は、室温で1日攪拌した(処方V)。本発明により被覆された親水性表面を、処方Gにスライドを浸し、その後流水により濯ぐことにより作製した。ペルフルオロシラン被膜は、スライド上に処方Vを浸漬被覆(引き出しスピード 50mm/分)し、その後エタノールと流水で濯ぐことにより作製した。未処理のスライドを対照として用いた。比較は、1.3(靴クリーム試験)に記載したように、またはインクの流出挙動(インク試験)の比較により行った。このために、問題になっている表面をインクに浸し、その後ゆっくりと引き出した。該表面の濡れ性または液体忌避特性を分析した。処方GまたはVにより処理した表面からインクはよく流れ落ちるが、本発明により処理された表面ではインクの跡が完全になくなっているのに対して、処方Vにより処理した表面ではいくつかの分離したインクの滴が残っており、対照表面はほとんど完全にインクで覆われていた。靴クリーム試験では、対照表面および処方Vにより処理した表面で残留汚物が残ったが、本発明により処理した表面では完全に汚物がなくなった。本実施例は、本発明による処理が表面を撥水性にするだけでなく、同時に表面への泥・油汚れの沈殿を効果的に防止し得ることを示す。
【0130】
3.8.該処方生成物の安定性試験
2.1で作製された処方を、外観(濁り、沈殿等)ならびに本発明による親水性および撥水性表面の作製能力に関して現実的な条件下(室温および通常の大気湿度)で試験した。試験は1ヶ月の時間間隔で行った。このために、処方を上述したように艶出しタイルおよびガラス表面に塗布し、得られた表面の水による濡れ性/撥水性について評価した。結果、試験期間内(約1年)に、外観または活性に関して処方に変化がなかったことが明らかとなり、これは上述の条件下において該処方が安定であることを示している。
【0131】
3.9.安定性試験
2.1で作製された処方Aを、洗浄した艶出しまたはガラス表面に噴霧した。短時間の処理後、表面を流水で濯いだ。この方法により、親水性(水接触角約40°)および撥水性(低ヒステリシス)を同時に有する被膜を得た。処理した艶出しタイルまたはガラス表面を通常の条件下(室温および通常の大気湿度)で保管し、1ヶ月間隔でそれらの水による濡れ性/撥水性について評価した。その結果、試験期間内(約8ヶ月)に、表面の濡れ性および水流出挙動について発見し得る変化はなかったことが明らかになり、これは該被膜が上述した条件下で安定であることを示している。
【0132】
3.10.異なるシリルポリアルコキシレートに対する結果
IKWバラスト汚物試験(1.2参照)および靴クリーム汚物試験(1.3参照)のどちらにおいても、合成例1のシリルポリアルコキシレートにより得られた結果と同様の結果が、合成例2および3のシリルポリアルコキシレートにより得られた。全てのこれらの物質が、これらの試験において、対照よりも非常に明らかに優れていることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬表面を処理、特に硬表面の洗浄および/または汚れ忌避処理を提供するための薬剤であって、
a)少なくとも1つの、式(I)

[式中、
Zは、少なくとも3個の炭素原子を有する(m+n)−価の基、Aは2価のポリオキシアルキレン基を表し、Zに結合するm+nポリオキシアルキレン基は互いに異なっていてよく、いずれの場合にも残基AはZに属する酸素原子を介してZと結合し、かつ、Aに属する酸素原子はBまたは水素に結合し、
Bは、化学結合または1〜50個の炭素原子を有する2価の有機残基を表し、
ORは加水分解性基を意味し、RおよびRは、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基を表し、rは1〜3の整数を表し、
mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nは3〜100の値を有する。]
のマルチアームシリルポリアルコキシレート、
b)少なくとも1つの界面活性剤、
c)水および/または少なくとも1つの非水溶媒、
d)必要に応じて、さらに、該薬剤の他の構成成分と親和性がある、表面処理の従来成分および/または洗浄成分
を含有する薬剤。
【請求項2】
式(I)のシリルポリアルコキシレートが、500〜50000の質量平均(重量平均)分子量を有する、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
式(I)において、Zが少なくとも3価、特に3価〜8価の、3〜12個の炭素原子を有する非環状または環状炭化水素基を表す、請求項1または2に記載の薬剤。
【請求項4】
式(I)において、nが0、1または2を表し、かつmが3〜8の数を意味する、請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項5】
式(I)において、Aが−(CHR−CHR−O)−を表し、RおよびRが、互いに独立して、水素、メチルまたはエチルを意味し、pが2〜10000の整数を意味する、請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
式(I)において、Bが結合または残基−C(O)−NH−(CH−を表す、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【請求項7】
式(I)において、RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルを表す、請求項1〜6のいずれかに記載の薬剤。
【請求項8】
式(I)において、rが3である、請求項1〜7のいずれかに記載の薬剤。
【請求項9】
少なくとも2つの異なる式(I)のマルチアームシリルポリアルコキシレートの混合物を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】
少なくとも2つの異なるマルチアームシリルポリアルコキシレートがアームの数で異なる、請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
混合物が、m=3、m=6およびm=8である式(I)のマルチアームシリルポリアルコキシレートの群から選択され、n=0である少なくとも2つの異なる式(I)のマルチアームシリルポリアルコキシレートを含んでなる、請求項9または10に記載の薬剤。
【請求項12】
2つの異なるマルチアームシリルポリアルコキシレートが、99:1〜1:99、好ましくは49:1〜1:49、特に9:1〜1:9の比率で存在する、請求項9〜11のいずれかに記載の薬剤。
【請求項13】
少なくとも1つの加水分解性ケイ酸誘導体、好ましくは少なくとも1つのオルトケイ酸のエステル、特に少なくとも1つのテトラアルコキシシラン、特に好ましくはテトラエトキシシランを含有する、請求項1〜12のいずれかに記載の薬剤。
【請求項14】
シリルポリアルコキシレートとケイ酸誘導体の量比が、90:10〜10:90、好ましくは50:50〜10:90、特に40:60〜20:80になる、請求項13に記載の薬剤。
【請求項15】
少なくとも1つの式(I)のシリルポリアルコキシレートが、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、0.001〜20重量%、特に0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の量で存在している、請求項1〜14のいずれかに記載の薬剤。
【請求項16】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤の群から選ばれてなる、請求項1〜15のいずれかに記載の薬剤。
【請求項17】
非イオン性界面活性剤が、ポリアルキレンオキシド(ここでポリアルキレンオキシドは末端基終端であってよい)、特にアルコキシル化された第1級アルコール、アルコキシル化された脂肪酸アルキルエステル、アミンオキシドおよびアルキルポリグリコシドならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項16に記載の薬剤。
【請求項18】
少なくとも1つの界面活性剤を、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、0.01〜20重量%、特に0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.2〜1重量%の量で含有する、請求項1〜17のいずれかに記載の薬剤。
【請求項19】
非水溶媒が、1価または多価アルコール、アルカノールアミン、グリコールエーテルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜18のいずれかに記載の薬剤。
【請求項20】
非水溶媒を、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、0.01〜99.9重量%、特に0.1〜50重量%、特に好ましくは2〜20重量%の量で含有する、請求項1〜19のいずれかに記載の薬剤。
【請求項21】
水を、いずれの場合も薬剤の総重量に対して、1〜98重量%、特に50〜95重量%、特に好ましくは80〜93重量%の量で含有する、請求項1〜20のいずれかに記載の薬剤。
【請求項22】
増粘剤を含有する、請求項1〜21のいずれかに記載の薬剤。
【請求項23】
増粘剤が、キサンタンガムおよびサクシノグリカンガム並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の薬剤。
【請求項24】
粘度(ブルックフィールド ロトビスコ LV−DV II プラス粘度計、スピンドル31、20℃、20rpm)が、1〜3000mPa・s、好ましくは200〜1500mPa・s、特に好ましくは400〜900mPa・sである、請求項1〜23のいずれかに記載の薬剤。
【請求項25】
pH値が9未満である、請求項1〜24のいずれかに記載の薬剤。
【請求項26】
pH値が0〜6、好ましくは1〜5、特に好ましくは2〜4である、請求項25に記載の薬剤。
【請求項27】
酸を含有する、請求項1〜26のいずれかに記載の薬剤。
【請求項28】
洗浄剤である、請求項1〜27のいずれかに記載の薬剤。
【請求項29】
セラミック、特にセラミック衛生陶器のための洗浄剤である、請求項28に記載の薬剤。
【請求項30】
個々の構成成分を互いに混合する、請求項1〜29のいずれかに記載の薬剤を製造する方法。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれかに記載の薬剤と表面を接触させる、硬表面の処理方法。
【請求項32】
薬剤を表面上に散布し、1秒〜20分、好ましくは1〜10分の処置時間の後濯ぎ流す、または放置して乾燥させる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
5〜50℃、特に15〜35℃の温度で接触を行う、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
洗浄方法である、請求項31〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
硬表面がセラミック、ガラス、ステンレス鋼またはプラスチック材料の表面である、請求項31〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
汚れから硬表面を保護し、および/または表面から新たな汚れの脱離を容易にするための、請求項1〜30のいずれかに記載の薬剤の使用。
【請求項37】
汚れが、便汚れおよび/またはバイオフィルムおよび/またはタンパク質の沈着を含んでなる、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
硬表面の撥水加工仕上げを提供するため、および/または水にさらした後の硬表面の乾燥時間を短縮するための、請求項1〜30のいずれかに記載の薬剤の使用。
【請求項39】
硬表面の静菌性仕上げを提供するための、請求項1〜30のいずれかに記載の薬剤の使用。
【請求項40】
硬表面の静菌性仕上げを提供するための、式(I)

[式中、
Zは、少なくとも3個の炭素原子を有する(m+n)−価の基、Aは2価のポリオキシアルキレン基を表し、Zに結合するm+nポリオキシアルキレン基は互いに異なっていてよく、いずれの場合にも残基AはZに属する酸素原子を介してZと結合し、かつ、Aに属する酸素原子はBまたは水素に結合し、
Bは、化学結合または1〜50個の炭素原子を有する2価の有機残基を表し、
ORは加水分解性基を意味し、RおよびRは、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基を表し、rは1〜3の整数を表し、
mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nは3〜100の値を有する。]
のマルチアームシリルポリアルコキシレートの使用。

【公表番号】特表2010−511763(P2010−511763A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539726(P2009−539726)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063204
【国際公開番号】WO2008/068236
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】