説明

碍子およびその製造方法、並びに荷電粒子線装置

【課題】 絶縁耐性が高く、かつ劣化しにくい碍子を提供する。
【解決手段】 碍子(2)は、一対の電極(4a,4b)と該一対の電極(4a,4b)間に設けられた基体(5)とを有する。基体(5)は、表面における一部の領域(5a)が半導電性であり、その他の領域(5b)が絶縁性である結晶体からなる。上述の半導電性である一部の領域(5a)は、一対の電極(4a,4b)に電気的に接続されている。また、基体(5)は、一部の領域(5a)の表面抵抗値が10〜1011Ω/□であり、その他の領域(5b)の表面抵抗値が1012Ω/□以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍子およびその製造方法、並びに碍子を用いた荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ビーム露光装置等の荷電粒子線装置には、碍子が使用されている。この碍子は、カソードから放出された熱電子が碍子に蓄積されて、蓄積された熱電子により局所的な放電が生じてしまい、絶縁性が破壊されてしまうという問題があった。
【0003】
そこで、熱電子が碍子に蓄積されることを防止するために、碍子の外表面に高抵抗の金属酸化膜(以下、「高抵抗膜」ともいう。)を設けて、微小な電流を流すことが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、碍子の表面に高抵抗膜を設けると、熱電子が局所的に発生すること、および高抵抗膜の表面が外部環境によって部分的に汚染されていることなどにより、高抵抗膜に流れる電流は局所的なものとなる。そして、高抵抗膜は比較的薄いことから、局所的に高電圧がかかる、および局所的に温度が上昇するといった現象が生じる。このような場合に、高抵抗膜は、部分的に熱膨張を起こし、場合によっては、その熱膨張した部分が起点となって碍子の表面から剥がれてしまう可能性があった。これにより、高抵抗膜は機能が低下し、碍子が劣化するという問題があった。
【0006】
よって、絶縁耐性が高く、劣化しにくい碍子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る碍子は、一対の電極と該一対の電極間に設けられた基体とを有する碍子である。前記基体は、表面における一部の領域が半導電性であり、その他の領域が絶縁性である結晶体からなり、前記一部の領域は、前記一対の電極に電気的に接続されている。
【0008】
本発明の一形態に係る碍子の製造方法は、一対の電極と該一対の電極間に設けられた基体とを有する碍子であって、前記基体は、表面における一部の領域が半導電性であり、その他の領域が絶縁性である結晶体からなり、前記一部の領域は、前記一対の電極に電気的に接続されている碍子の製造方法であって、酸化アルミニウムの結晶相およびチタン酸アルミニウムの結晶相をそれぞれ含む結晶体を生成する結晶体生成工程と、前記一部の領域に対応する前記結晶体の表面領域において、前記チタン酸アルミニウムの結晶相を還元する還元工程と、前記結晶体の前記表面領域を研磨する研磨工程と、前記表面領域に電気的に接続されるように前記結晶体の表面上に前記一対の電極を形成する電極形成工程とを有する。
【0009】
本発明の一形態に係る荷電粒子線装置は、対象物に荷電粒子を照射する荷電粒子線装置であって、前記荷電粒子を放出する荷電粒子線源と、放出された前記荷電粒子を前記荷電粒子線源から絶縁する碍子であって、該荷電粒子が通過する貫通孔を有する碍子と、前記荷電粒子線源の少なくとも一部および前記碍子を内部に有するとともに、その内部において前記荷電粒子が到達する位置に前記対象物が配置される容器とを有し、前記碍子は、一対の電極と該一対の電極間に設けられた基体とを有し、前記貫通孔は、前記一対の電極および前記基体を貫通し、前記基体は、外表面および前記貫通孔に接する内表面の一方が半導電性であり、他方が絶縁性である結晶体からなり、前記外表面および前記内表面の前記一方は、前記一対の電極に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態に係る碍子によれば、絶縁耐性を高く維持できるとともに、より劣化しにくい碍子を実現できる。
【0011】
本発明の一形態にかかる碍子の製造方法によれば、絶縁耐性の高い、より劣化しにくい碍子を製造することができる。
【0012】
本発明の一形態に係る荷電粒子線装置によれば、より劣化しにくい荷電粒子線装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の碍子の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の碍子の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の荷電粒子線装置の構成例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による碍子を示す斜視図である。また、図2は、図1のA−A線における断面図である。図1,図2に示すように、碍子2は、一対の電極4a,4bと一対の電極4a,4bの間に設けられた筒形状の基体5とを有する。基体5は、結晶体からなり、その表面における一部の領域5aが半導電性であり、表面の他の領域5bが絶縁性である。そして、一部の領域5aおよび他の領域5aが、一対の電極4a,4bに電気的に接続されている。
【0015】
具体的には、碍子2において、基体5は、貫通孔6を有し、一部の領域5aとは、基体5の貫通孔6に接する表面、すなわち内周面であり、他の領域5aとは外周面である。ここで、碍子2の基体5の内周面は半導電性であり、外周面は絶縁性である。
【0016】
ここで、半導電性とは、表面抵抗値が10〜1011(Ω/□)であることをいい、絶縁性とは表面抵抗値が1012Ω/□以上であることをいう。これらに従うと、基体5は、内周面の表面抵抗値が10〜1011Ω/□であり、外周面の表面抵抗値が1012Ω/□以上である。なお、表面抵抗値は、四探針法により測定することができる。
【0017】
碍子2の内周面および外周面の表面抵抗値を上記範囲にそれぞれ設定することにより、碍子2に特に高い電圧が印加された場合でも、半導電性を有する内周面に微小な電流が流れて局部放電が抑制されるため、絶縁破壊が抑制され、その結果絶縁耐圧を高くすることができる。また、結晶体の一部である内周面に沿って電流が流れるため、基体5の表面に薄膜を形成した場合と比較して、薄膜と基体5との熱膨張係数の差などに起因する薄膜の剥がれといった問題が起こらず、碍子2の劣化を抑え、寿命を長くすることができる。
【0018】
なお、ここでは、基体5の内周面が半導電性であり、外周面が絶縁性であるとしたが、基体5の外周面を半導電性とし、内周面を絶縁性としても同様の作用効果が得られる。
【0019】
次に、上述した碍子2の好ましい実施形態について説明する。電極4a,4bは金属固体からなる。電極4a,4bは、例えば鉄−ニッケル−コバルト合金からなる。
【0020】
基体5は、酸化アルミニウムの結晶と、さらにTi,MnおよびNbから選択される1種以上の元素を含有させた半導電性結晶とを有することが好ましい。そして、酸化アルミニウムの結晶と半導電性結晶とを合わせた含有量が、基体5の主成分であることが好ましい。
【0021】
半導電性結晶は、チタン酸アルミニウムおよび酸化チタンのうち少なくとも1種からなることが好ましい。ここで、チタン酸アルミニウム又は酸化チタンに含まれるチタンは、平均の原子価が4未満である。チタン酸アルミニウムおよび酸化チタンは、完全に酸化された状態、例えば化学式でAlTiO、TiOからなる場合は、通常絶縁体であるが、チタンの原子価が4未満であると電気抵抗が低下する。すなわち、半導電性結晶は、より具体的には、AlTiO5−x又はTiO2−xであり、xは0より大きく、通常1以下である。これらの半導電性結晶を基体5の表面の一部の領域5bに形成することによって、その一部の領域5bを半導電性とすることができる。
【0022】
また、基体5は、α−アルミナ(アルミナを酸化アルミニウムともいう。)を主成分とし、半導電性結晶としてチタン酸アルミウムAlTiO5−xを含むことがさらに好ましい。この場合には、特に高い電圧に対する耐破壊性に優れたα−アルミナを主成分とするので、基体5がより絶縁破壊しにくくなる。ここで、基体5に含まれるα−アルミナは70〜85質量%、チタン酸アルミニウムAlTiO5−xが15〜30質量%であることが特に好ましい。
【0023】
次に、碍子2の製造方法について説明する。ここでは、基体5の形状が円筒形状の場合を例にして説明する。
【0024】
(1)酸化アルミニウムの結晶相およびチタン酸アルミニウムの結晶相をそれぞれ含む結晶体を生成する結晶体生成工程
高純度のアルミナ粉末68〜99質量%と、酸化チタン粉末1〜32質量%とを秤量し、水とともにボールミルにて混合、粉砕する。アルミナ粉末は、純度99質量%以上で、平均粒径が0.3〜1μmのアルミナ粉末を用いることが好ましい。得られたスラリーに有機バインダーを添加し、噴霧乾燥して顆粒を作製する。
【0025】
顆粒をプレス成形、CIP(冷間等方加圧)成形などの公知の方法で成形して円筒状の生成形体を作製する。成形圧は最大で80〜200MPaの範囲内であることが好ましい。
【0026】
加工した生成形体を最高温度1400〜1600℃で焼成してセラミック焼結体を作製する。このセラミック焼結体は、アルミナの結晶相とチタン酸アルミニウムの結晶相とを含んでいる。この焼成では、生成形体が収縮を開始する温度から最高温度までの昇温速度と、最高温度から結晶の粒成長が止まるまでの降温速度とを条件となるように制御し、アルミナ結晶の粒界にチタン酸アルミニウム結晶を分散させることが好ましい。
【0027】
得られた円筒状のセラミック焼結体は、後述の(2A)、(3A)の工程を経ることによって、その内周面が領域5a、すなわち半導電性となる。
【0028】
(2)半導電性にしようとする結晶体の表面領域において、チタン酸アルミニウムの結晶相を還元する還元工程
セラミック焼結体を、水素、窒素、若しくは水素/窒素混合ガスなどの還元雰囲気中で1000〜1500℃で還元する。好ましくは、セラミック焼結体を、水素ガス濃度7〜30体積%の窒素/水素混合ガス中において、1300〜1400℃で0.1〜4時間保持して還元する。
【0029】
この還元工程においては、通常、セラミック焼結体の表面全体を還元雰囲気に曝して還元する。
【0030】
ここで、還元する場合に、基体5の内周面に水素/窒素混合ガスを流しながら加熱する方法、すなわち基体5の内周面のみを還元雰囲気に曝し、基体5の他の表面部分を還元しないようにする方法を採用することもできる。このようにすれば、基体5の内周面のみを選択的に還元することができる。その他にも、基体5の内周面以外の表面にマスクをして還元雰囲気中に基体5を配置し、還元する方法を採用することができる。
【0031】
(3)結晶体の表面領域を研磨する研磨工程
筒形状の基体5の外周面全体を深さ方向(外周面から内周面に向かう方向)に深く、好ましくは外周面から1mm以上の深さまで、さらに好ましくは外周面から2mm以上の深さまで研磨する。基体5の内周面は焼肌面のまま残すか、又は内周面から外周面に向かう方向に0.5mm以下の深さまで研磨する。これによって、基体5の内周面に表面抵抗値が低い領域5bを形成することができる。
【0032】
領域5bが形成される理由は次の通りと推定される。還元後のセラミック焼結体に含まれるチタン(Ti)の酸化物であるチタン酸アルミニウムは、セラミック焼結体の表面に近い位置ほど還元されやすく、表面から離れた内部の位置ほど還元されにくい。チタン酸アルミニウムは還元されるほど電気抵抗が低下する傾向がある。セラミック焼結体を表面から内部に向かう方向に深く研磨加工すると、電気抵抗が高い絶縁性の部分が現れる。この部分が基体5の外周面となる。
【0033】
一方、基体5の内周面は、焼肌面において、チタン酸アルミニウムに含まれているチタンが還元されており、そのままで半導電性を有する。また、基体5の内周面を焼肌面とせず、表面から内部に向かう方向に0.5mm以下の深さまで加工した場合でも、その加工後の表面を、半導電性を有する基体5の内周面とすることができる。基体2の内周面の表面抵抗は、還元時のガス雰囲気の種類と濃度、還元温度、並びに研磨深さを変えることによって、変化させることができる。
【0034】
(4)半導電性の表面領域に電気的に接続されるように結晶体の表面上に一対の電極を形成する電極形成工程
次に、(3)で得られた基体5の両端面に、図1に示すような電極4a、4bを接続する。電極の材質は、鉄−ニッケル−コバルト合金などが選択される。基体と電極3の接合方法は、活性金属法などを用いることができる。
【0035】
上記の製造方法において、酸化チタン粉末に代えて、酸化ニオブ、又は酸化マンガンを用いても良い。ニオブを含む酸化物、又はマンガンを含む酸化物は、還元されるほど、電気抵抗が低下する傾向があり、基体5の内周面の表面抵抗を外周面よりも低くすることができる。酸化ニオブ、及び酸化マンガン以外にも、還元されることによって電気抵抗が低下する物質を用いても、基体5を作製することができる。
【0036】
以上のようにして得られた碍子2は、例えば、荷電粒子線装置に使用することができる。図3は、荷電粒子線装置の構成例を示す図である。図3に示すように、荷電粒子線装置100は、荷電粒子を放出する荷電粒子線源101と、放出された荷電粒子を荷電粒子線源101から絶縁する碍子であって、該荷電粒子が通過する貫通孔を有する碍子102とを有する。また、荷電粒子線源101の少なくとも一部および碍子102は、容器103の内部に配置される。容器103は、例えば、真空チャンバであり、容器103の内部には、荷電粒子が到達する位置に対象物Pが配置される。対象物Pは、例えばステージS上に配置されてもよい。
【0037】
碍子102は、一対の電極104a,104bと、一対の電極104a,104b間に設けられた基体105とを有する。基体105は、貫通孔に接する内表面が半導電性であり、外表面は絶縁性である。
【0038】
また、荷電粒子線装置100は、一対の電極104a,104bに電圧を印加する電源装置106を有する。
【0039】
この構成によれば、微小な電流が基体105の内周面を流れることから、基体105の内周面の帯電を抑制することができ、いわゆるチャージアップが起こりにくい碍子を実現できる。
【0040】
よって、この構成は、電子顕微鏡に使用できる。この場合、荷電粒子源101は、電子銃であり、碍子102は、電極104a,104bを偏向電極とした加速器として作用する。
【0041】
なお、荷電粒子線装置100を電子顕微鏡として用いた場合、対象物Pである試料に電子が照射されると、二次電子が発生し、その二次電子が基体105の内周面に到達する場合がある。その場合、基体105の内周面に例えば金属薄膜が形成されていると、その二次電子によって金属粒子が脱硫し、試料に付着してしまうといった懸念がある。
【0042】
これに対し、本実施の形態による碍子102では、基体105を結晶体で構成し、表面の半導電性および絶縁性を結晶体の結晶相で実現することができるため、基体105に表面に形成された薄膜の粒子が脱硫して試料に付着してしまうといった問題を解消できる。
【0043】
さらに、図3の構成を、電子ビーム露光装置に適用することもできる。その場合は、基体105の内表面を絶縁性とし、基体105の外表面を半導電性とする。このようにすれば、電極104a,104bの一方であるカソードで発生した熱電子を基体105の外表面に電流として流すことが可能になり、局所的な放電が発生して碍子102の絶縁性が破壊されることを抑制できる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明の碍子の実施例を説明する。
(実施例)
まず、基体5の原料として、純度99.9質量%以上のアルミナ粉末と、ルチル型の酸化チタン(TiO)の粉末とを用いた。
【0045】
原料である各粉末をボールミルに投入して、水を用いて湿式で混合し粉砕した。粉砕後、有機バインダーを添加して撹拌した後、スプレードライヤを用いて噴霧乾燥し、顆粒を作製した。その後、顆粒をプレス成形法により成形した。生成形体の形状は、円筒形状であり、その寸法を、外径30mm、内径10mm、厚み(内周面と外周面との間の距離)10mm、および厚み方向に垂直な方向の長さ7mmとした。
【0046】
得られた生成形体を空気中1550℃で3時間保持して焼成し、焼結体を作製した。続いて、得られた焼結体を水素ガス10体積%/窒素ガス70体積%の混合ガス中において、1350℃で1時間保持して還元した。還元後、焼結体の表面を表1に示す深さまで加工して、基体5を作製した。両端面も加工して、円筒の内周面および外周面に沿った方向に垂直な方向な長さを4mmとした。
【0047】
また、図1の形状を有する電極4a,4bの材質としてコバール(鉄−ニッケル−コバルト系合金)を選択した。最後に、基体5と電極4a,4bとを、Ag−Cu−Ti系のロウ材を用いて接合し、碍子2を作製した。なお、図1,2においては、ロウ材は図示を省略した。
【0048】
このようにして得られた碍子2の電極4a,4b間に直流電圧をかけて基体5が破壊するかどうかを調べた。この場合において、直流電圧は0Vから20kVまで徐々に上げていった。
【0049】
この結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1からわかるように、試料No.1〜8の碍子は、20kVを印加しても絶縁破壊しなかった。
【0052】
参考例として、上記の還元をしなかった以外は、実施例と同様にして、碍子の試料No.9を作製し、実施例と同様にして絶縁耐圧の評価をした。その結果、14kVで基体が割れた。
【0053】
実施例の試料No.1〜8および参考例の試料No.9の絶縁破壊の評価後、さらに次の分析を行った。必要に応じて、基体の内周面を測定できるようにするため、試料を切断した。
【0054】
(1)表面抵抗値をそれぞれ四探針法により測定した。測定装置は、表面抵抗値が10Ω/□未満の場合は、株式会社三菱化学アナリテックの抵抗率計ロレスタ−EP,ロレスタ−GPを使用した。表面抵抗が10Ω/□以上の場合は、ハイレスタ−UPとMCPプローブ等を併用して測定した。
【0055】
(2)X線回折法により、試料に含まれる結晶相を特定した。主結晶相はα−アルミナであり、さらに、チタン酸アルミニウムが検出された。実施例の試料No.1〜8は、チタン酸アルミニウム中のチタンが還元されていることがX線回折の結果から推定された。一方、試料No.9にはチタン酸アルミニウムが含まれていたが、チタンは還元されていなかった。
【0056】
(3)試料No.1〜9の組成をICP発光分光分析法により測定した。その結果、基体5のTiO換算(質量%)でのTiの含有量は、測定誤差の範囲内において、原料中の含有量と同じであることがわかった。Ti(チタン)の含有量は、いずれの試料においてもチタン酸アルミニウムAlTiO換算で18質量%であった。
【符号の説明】
【0057】
2:碍子
4a,4b:電極
5:基体
6:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と該一対の電極間に設けられた基体とを有する碍子であって、前記基体は、表面における一部の領域が半導電性であり、その他の領域が絶縁性である結晶体からなり、前記一部の領域は、前記一対の電極に電気的に接続されている碍子。
【請求項2】
前記基体は、前記一部の領域の表面抵抗値が10〜1011Ω/□であり、前記その他の領域の表面抵抗値が1012Ω/□以上である請求項1に記載の碍子。
【請求項3】
前記一対の電極および前記基体を貫通する貫通孔を有し、
前記一部の領域は、前記貫通孔に接する表面である請求項1又は請求項2に記載の碍子。
【請求項4】
一対の電極と該一対の電極間に設けられた基体とを有する碍子であって、前記基体は、表面における一部の領域が半導電性であり、その他の領域が絶縁性である結晶体からなり、前記一部の領域は、前記一対の電極に電気的に接続されている碍子の製造方法であって、
酸化アルミニウムの結晶相およびチタン酸アルミニウムの結晶相をそれぞれ含む結晶体を生成する結晶体生成工程と、
前記一部の領域に対応する前記結晶体の表面領域において、前記チタン酸アルミニウムの結晶相を還元する還元工程と、
前記結晶体の前記表面領域を研磨する研磨工程と、
前記表面領域に電気的に接続されるように前記結晶体の表面上に前記一対の電極を形成する電極形成工程と
を有する碍子の製造方法。
【請求項5】
前記研磨工程において、研磨後の表面抵抗値に応じて、前記結晶体を研磨する厚みを制御する請求項3に記載の碍子の製造方法。
【請求項6】
対象物に荷電粒子を照射する荷電粒子線装置であって、
前記荷電粒子を放出する荷電粒子線源と、
放出された前記荷電粒子を前記荷電粒子線源から絶縁する碍子であって、該荷電粒子が通過する貫通孔を有する碍子と、
前記荷電粒子線源の少なくとも一部および前記碍子を内部に有するとともに、その内部において前記荷電粒子が到達する位置に前記対象物が配置される容器と
を有し、
前記碍子は、一対の電極と該一対の電極間に設けられた基体とを有し、前記貫通孔は、前記一対の電極および前記基体を貫通し、前記基体は、外表面および前記貫通孔に接する内表面の一方が半導電性であり、他方が絶縁性である結晶体からなり、前記外表面および前記内表面の前記一方は、前記一対の電極に電気的に接続されている荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−277865(P2010−277865A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129749(P2009−129749)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】