説明

磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する方法及び装置

本発明は、磁化可能な粒子を含む懸濁液が、磁化可能な粒子を含む懸濁液をせん断するために、間隙(3)を通される、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する方法に関する。間隙(3)に磁界が与えられ、これにより磁化可能な粒子を含む懸濁液が磁界の存在下にせん断さる。本発明は、更に、磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断力を与えるために、磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる、少なくとも1つの間隙(3)を含む、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する装置に関する。該装置は、更に、少なくとも1つの間隙(3)に磁界を発生させるための、少なくとも1つの磁石を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する方法に関する。本発明は更に、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁化可能な粒子を含む懸濁液を使用する目的は、非常に多種に及んでいる。例えば、このような液体は、磁器記憶媒体の被覆剤として使用される。他の用途の分野は、封入液として、又は磁性液体として使用することを含む。磁化可能な粒子を含む懸濁液は通常、基礎液体、磁化可能な粒子、分散剤及びチキソトロープ剤を含んでいる。
【0003】
懸濁液の質は、磁化可能な粒子が相互に良好に分離された場合、そして懸濁液中の粒子の粒子表面が分散剤で被覆された場合、これに相応して良くなる。磁化可能な粒子を含む懸濁液の主たる性質、特に粘度と懸濁液の品質はこの影響を受ける。懸濁液が、非常に異なる両極性を有する成分から成る場合、界面活性物質がしばしば加えられる。量と表面積割合に依存して、ミセル、膜及び界面活性剤の複数層が形成されても良い。
【0004】
磁化可能な粒子の沈澱作用(堆積作用)の安定性を改良するために、例えば特許文献1(US−B6,203,717)から、有機無機クレイ(oranomineral clay)を磁性液体に加えることが公知である。有機無機クレイを層間剥離するために、高いせん断応力が懸濁液に与えられる。
【0005】
磁性液体中の粒子を均一な大きさにするために、特許文献2(US−A2004/0050430)から、間隙内で、その液体内に含まれている粒子で液体をせん断することが公知である。この目的のために、粒子を含む液体が、間隙で加圧される。磁性液体の特性を改良するための他の方法が、特許文献3(EP−B0672294)から公知である。ここで、汚染生成物が、研磨法によって、例えば研磨添加剤を加えることによって、粒子の表面から除去される。汚染生成物が除去された後、このような汚染生成物、例えば酸化物層が再形成されることを防ぐために、粒子は直ちに溶媒中に混合される。
【0006】
特許文献4(EP−B0755563)には、粒子の少なくとも90%が保護層に囲まれている磁性材料が開示されている。保護層は、硬化性ポリマー、熱可塑性材料、非磁性金属、セラミック、又はこれらの組み合わせから作られている。保護層は、磁性材料のせん断応力を高くし、そして使用期間中、これを保つために与えられる。特許文献5(EP−A0875790)には、有機ポリマーで被覆された磁化可能な粒子を含む磁性液体が開示されている。この場合、磁化可能な粒子は、摩損性及び沈澱の傾向を低減するために被覆される。
【0007】
磁化可能な粒子の沈澱(作用)を回避するために、磁性ルブリカント(磁性滑剤)に増粘剤を加えることが、特許文献6(US−B6,547,986)から公知である。増粘剤の量は、磁化可能な粒子の沈澱挙動(sedimentation behavior)を改良するように選択される。
【0008】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、使用者側で、磁界中のせん断条件に置かれた場合、懸濁特性を変化させ、そして基本粘度(basic viscosity)を高めることができる。このような変化は、使用中増粘(IUT)現象とも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US−B6,203,717
【特許文献2】US−A2004/0050430
【特許文献3】EP−B0672294
【特許文献4】EP−B0755563
【特許文献5】EP−A0875790
【特許文献6】US−B6,547,986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術から公知の懸濁特性の変化、例えば、粘度の増加、又は変更(modify)された沈澱特性が、使用の間、回避される、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する方法を提供することにある。本発明は、特に、装置内で使用される場合に、磁化可能な粒子を含む懸濁液の、使用中の粘度が増加する現象が低減可能である方法を提供することを目的とする。調整という用語は、(懸濁液又は磁化可能な粒子を含む懸濁液を使用可能な装置が、使用者に渡される前に、)磁化可能な粒子を含む懸濁液が処理される工程を意味している。
【0011】
本発明の他の目的は、本方法を行うことが可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整(状態調節)する方法であって、磁化可能な粒子を含む懸濁液が、磁化可能な粒子を含む懸濁液をせん断するために、間隙を通される方法によって達成される。磁界が間隙に与えられ、これにより磁化可能な粒子を含む懸濁液が、磁界の存在下にせん断される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従い設計された、回転板を有するせん断セルを示した図である。
【図2】図1に従うせん断セルを有する調整システムを示した図である。
【図3.1】本発明に従い設計された流通通路を、長さ方向の断面で示した図である。
【図3.2】図3.1に従う流通通路の断面を示した図である。
【図4】図3.1及び図3.2に従う流通通路を有する調整システムを示した図である。
【図5】本発明に従い設計された、第1の実施の形態におけるシリンダージオメトリーを有するせん断セルを示した図である。
【図6】本発明に従い設計された、第2の実施の形態におけるシリンダージオメトリーを有するせん断セルを示した図である。
【図7】押出機の構成を有する、本発明に従い設計されたせん断セルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、磁化可能な粒子を含む懸濁液は、通常、磁化可能な粒子及び液体を含む。任意に、添加剤を含んでも良い。
【0015】
磁化可能な粒子は、従来技術から公知の如何なる粒子であっても良い。
【0016】
磁化可能な粒子は、通常、平均径が0.1〜500μm、好ましくは0.1〜100μm、及び特に好ましくは1〜50μmである。磁化可能な粒子の形状は、均一であっても、均一でなくても良い。特に、これら粒子は、球状、棒状又は針状の粒子であっても良い。実質的に球状の形状をしている磁化可能な粒子を使用することが好ましい。例えば、噴霧した溶融金属(スプレー粉)によって、おおよそ球状の粒子が得られる。
【0017】
磁化可能な粒子の混合物、特に、異なる粒径分布、及び/又は異なる材料で形成された磁化可能な粒子の混合物を使用することも可能である。
【0018】
磁化可能な粒子は、鉄を含む粒子、ニッケルを含む粒子、又はコバルトを含む粒子から成る群から選ばれることが好ましい。これらは、例えば、鉄、鉄合金、鉄窒化物、炭化鉄、カルボニル鉄、ニッケル、コバルト、ステンレス鋼、シリコン鋼、又はこれらの合金又は混合物の粒子である。例えば二酸化クロムの粒子も含まれて良い。
【0019】
磁化可能な粒子は、被覆(被膜)を有していても良く、例えば、絶縁又は耐腐食無機物質、例えばケイ酸塩、フォスフェイト、酸化物、カーバイド、又は亜硝酸塩で、他の金属で、又は少なくとも1種のポリマーで被覆された鉄粉が使用されても良い。
【0020】
磁化可能な粒子は、カルボニル鉄粉(CEP)の状態で存在することが好ましい。カルボニル鉄粉は、プロトポルフィリン鉄(iron pentacarbonyl)の分解によって製造されることが好ましい。種々のタイプのCEPが、この技術分野の当業者にとって公知である。熱分裂によって得られる硬質CEPタイプに加え、還元カルボニル鉄も使用されて良い。これらの粉は、摩耗性が低く、そして機械的に柔らかい。硬質及び還元CEPタイプの表面処理した種類は、種々の方法で誘導される。最も一般的な、処理されたカルボニル鉄粉は、ケイ酸塩又はフォスフェイトで被覆されている。他の変更(modification)も可能である。カルボニル鉄を区別するための更なる基準は、適用性に実質的な影響を及ぼし得る、粒子の径分布である。分散したカルボニル鉄粉は、平均径が1〜30μmの範囲であることが好ましい。原則として、全てのカルボニル鉄粉タイプが適切である。磁化可能な粒子を含む懸濁液を使用する条件によって、特定の選択が記述される。
【0021】
磁化可能な粒子は、磁化可能な粒子を含む懸濁液中に、磁化可能な粒子を含む懸濁液の合計体積に対して、好ましくは15〜49体積%、特に好ましくは20〜48体積%の割合で含まれる。
【0022】
例えば、水又は有機溶媒は、磁化可能な粒子を分散させる基礎溶液として適切である。適切な有機溶媒は、例えば、ポリ−α−オレフィン、パラフィンオイル、油圧オイル、エステルオイル、塩素化芳香族化合物を含むオイル、及び塩素化及びフッ素化オイルである。更に、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、ポリエーテル、フッ素化ポリエーテル及びポリエーテルポリシロキサンポリマーも適切である。同様に、基礎溶液として適切なものは、アルコール又は炭素原子が5個以下のカルボン酸のアミド誘導体及び水溶性アミンである。適切な基礎溶液は、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アルキルアルコール、メルカプトエタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタン−2,4−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、モノホリン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、ホルムアルデヒド、アセトアミン、及びこれらに類似するものである。開いた、又は末端基が閉じたアルコールアルコキシレート及びイオン性液体が、更に適切である。上述した液体は、適切な基礎液体を得るために、任意に、複数のものを相互に混合しても良い。基礎液体として、ポリ−α−オレフィンが特に好ましい。
【0023】
磁化可能な粒子を含む懸濁液は、更に、少なくとも1種の添加剤を含んでも良い。添加剤は、通常、チキソトロープ剤、粘度調整剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、減摩剤/滑剤及び防食剤から成る群から選らばれる。
【0024】
粘度調整剤は、例えば、基礎溶液に溶解可能であり、処方物の粘度を変化させることができる溶媒、又は高分子添加物であって良い。適切な粘度調整剤は、例えば、極性溶媒、例えば、水、アセトン、アセトニトリル、分子アルコール、アミン、アミド、DMF、DMSO又は高分子添加剤、例えば、未変更(未変性)の、又は変更した多糖、ポリアクリレート及びポリ尿素である。
【0025】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、粘度調整剤として作用する添加剤を含む場合、これらは、磁化可能な粒子を含む懸濁液の合計質量に対して、好ましくは0.01〜13質量%、特に好ましくは0.01〜11質量%、特に0.05〜10質量%含まれる。
【0026】
チキソトロープ剤は、流量調節(flow limitation)を設定し、従って、磁化可能な粒子を含む懸濁液の液体中の粒子の沈澱に対抗作用する。チキソトロープ剤は、例えば、スメクタイトの天然又は合成の層状(layered)のケイ酸塩、(WO01/03150A1から公知の、任意に疎水的に変更しても良い、層状ケイ酸塩、例えばモンモリロナイトタイプ)、シリカゲル(アモルファス)、分散二酸化ケイ素(US5,667,715から公知)、ファイバー性シリケート(例えばミクロ化した海泡石又はアタプルガイト)、炭素粒子(US5,354,488から公知)、シリカゲル及びポリ尿素(DE19654461A1から公知)から成る群から選ばれる。炭水化物に基づくチキソトロープ剤、例えば、キサンタン、又はガラクトマンナン誘導体、グアー誘導体、及びイオン性又は非イオン性セルロース又はスターチエーテルも使用して良い。
【0027】
使用しても良い層状シリケートの例は、ベントナイト、モントモリオナイト、ヘクトライト、又は合成の層状のケイ酸塩、例えば、Rockwood Additives Ltd.からのLaponite(登録商標)及びこれらの変更された変形物である。更に、疎水的に変更(変性)した層状のケイ酸塩、及び従って疎水性の溶媒、例えばポリ−α−オレフィン及びシリコンに適応された層状のケイ酸塩を使用することも可能である。
【0028】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、チキソトロープ剤として作用する添加剤を含む場合、これらは、磁化可能な粒子を含む懸濁液の合計量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.01〜5質量%、特に0.05〜1質量%の濃度で含まれる。
【0029】
分散剤は、沈殿後の、液体中の磁化可能な粒子の再分散性を改良し、及び凝集(塊状化)を防止する添加剤である。適切な分散剤は、例えば、ポリマー分散剤、例えば、多糖、ポリアクリレート、ポリエステル、特にポリ−ヒドロキシステアリン酸のポリエステル、アルキド樹脂、長鎖アルコキシレート、及びポリアルキレンオキシド、例えば、BASF AGからのPluronic(登録商標)で、これらは、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド ブロックコポリマー及びポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドブトックコポリマーを含む。他の可能な分散剤は、この技術分野の当業者にとって公知のアニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性の界面活性剤で、その詳細を記載する必要のないものである。糖界面活性剤及びアルコールアルコキシレートが非イオン性界面活性剤として記載されて良く;カルボン酸塩、例えばオレイン酸塩及びステアリン酸塩、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルフォスフェート、アルキルエーテルフォスフェート、及びアルキルスルフォネートが、アニオン性界面活性剤として記載されて良く、及びアルキルアミンオキシドが、両性(amphoteric又はzwitterionic)界面活性剤の例として記載されて良い。
【0030】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、分散剤として作用する添加剤を含む場合、これらは、磁化可能な粒子を含む懸濁液の合計質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.05〜1質量%含まれる。
【0031】
磁化可能な粒子を含む懸濁液は、更に任意の他の添加剤、例えば、減磨剤、例えばテフロン(登録商標)粉、モリブデンサルファイド(モリブデン硫化物)、又はグラファイト粉、防食剤、耐磨耗添加剤及び酸化防止剤を含んでも良い。
【0032】
分散効率は、磁化可能な粒子を含む懸濁液を磁界の存在下にせん断することで顕著に増加させることができる。
従来技術から公知である、磁界のないせん断とは対照的に、磁界の存在下でのせん断は、懸濁特性を改良する。本発明では、より安定した懸濁液が製造可能で、該懸濁液は、再度、磁界中でせん断条件に置いても、粘度が増加しない。使用中の増粘問題が低減され、そして磁化可能な粒子の再分散性が改良される。
【0033】
使用中のせん断下の、磁化可能な粒子を含む懸濁液の熱的な安定性も改良される。
【0034】
更に、例えば、磁化可能な粒子を含む懸濁液の製造の間、分散時間を長くしても、磁界の存在下でのせん断には代えられないことがわかった。磁化可能な粒子を含む懸濁液を、磁界の存在下にせん断すると、分散時間を長くしたものと比較して、特性の更なる改良が得られる。
【0035】
調整の前に、磁化可能な粒子を含む懸濁液が通常、分散法によって製造される。磁化可能な粒子を含む懸濁液のせん断は、磁化可能な粒子を含む懸濁液が案内される間隙、すなわち、相互に相対的に移動可能な少なくとも2つ表面によって境界付けられたせん断間隙によって行われて良い。少なくとも2つの表面の相対的な動きは、例えば、一つの表面を固定し、そして第2の表面を動かすことによって達成されても良い。この替わりに、2つの表面を異なる速度で移動させるか、又は反対方向に移動させることも可能である。
【0036】
懸濁液を製造するために、例えば、Ultra−Turrax(登録商標)又はボールミルが使用される。Ultra−Turrax(登録商標)は、非常に速く回転するブレードを備えた攪拌棒である。ブレードは、24,000rpm以下で回転する。これにより、高いせん断力が生成され、磁化可能な粒子、及び任意に分散剤と添加剤の、製造される懸濁液内での分散がなされる。このような懸濁液は、ボールミル内で製造されても良い。この方法で、非常に微細な分散物が製造される。これにより製造された分散物の特性を更に改良するために、次に磁界の存在下でのせん断による調整が本発明に従い行われる。
【0037】
好ましい一実施の形態では、磁化可能な粒子及び溶媒、及び任意に添加剤が、磁界の存在下に、分散法で同様に混合される。磁化可能な粒子を含む懸濁液の特性の改良は、磁界の存在下に分散させることによっても達成される。
【0038】
懸濁液中の磁化可能な粒子の濃度に依存して、せん断間隙内の磁界の強さ、又は磁束密度が、せん断の位置で調節可能であることが好ましい。適切な磁束密度は、0.05〜1.2Tの範囲に存在することが好ましい。適切な磁束密度は、0.1〜1Tの範囲に存在することが特に好ましい。
【0039】
磁束密度を調節可能とすることを目的として、磁界を発生させるために電磁石を使用することが好ましく、そして磁界は、せん断面に対して垂直であることが好ましい。
【0040】
磁化可能な粒子を含む懸濁液のせん断は、磁化可能な粒子を含む懸濁液が案内される、(相互に相対的に移動可能な、少なくとも2つの表面によって境界付けられた)間隙によって達成されて良い。
【0041】
間隙が、相互に相対的に移動可能な、少なくとも2つの表面によって境界付けられている場合、一つの表面が固定板であり、他の表面が固定板と面した回転板であることが好ましい。回転板は、中心軸の回りを回転することが好ましい。固定板と回転板は通常、回転板が回転する軸が、固定板(固定子板)に対して垂直に延びるように配置される。
【0042】
この替わりの実施の形態では、せん断間隙(せん断ギャップ)は、一方が他方に挿入された状態の2個の同軸シリンダーによって境界付けられている。この場合、せん断間隙は、内側シリンダーの外側径と、外側シリンダーの内側径によって形成されている。間隙内のせん断は、同軸での回転運動について、シリンダーを相互に相対的に動かすことによって誘発される。ここで、原則として異なる配置構成が想定される:第1の変形例では、外側シリンダーが回転し、内側シリンダーが静止しており、及びトルク(回転モーメント)を測定するために使用される(Couette system)。第2の実施の形態では、外側シリンダーが静止し、内側シリンダーが駆動され、そしてトルク測定が同時に行われる(Searle system)。2個のシリンダーは、せん断間隙に対して平行に配置された同じ軸に配置されている。せん断の間、せん断間隙は、磁界に曝され、該磁界は、せん断面に対して垂直であることが好ましい。懸濁液で満たすことができる体積は、主としてせん断間隙によって形成されることが好ましい。内側及び外側シリンダーの底部又は上部表面の間隔は、例えば、せん断間隙の高さの範囲で、可能な限り小さく選択されるべきである。シリンダーの配置構成を流れる場合、流れが生じないデッドボリュームが形成されるべきではない。
【0043】
替わりの実施の形態では、せん断間隙は、側面シリンダー表面とこのシリンダーに挿入されたスクリューシャフトによって境界付けられている(押出原理)。2個以上のスクリューシャフトを有する押出機も想定されて良い。せん断間隙内に配置された、磁化可能な粒子を含む懸濁液は、せん断の間、磁界に曝され、これにより懸濁液の粘度が相当(顕著)に増加する。磁界は、適切な電磁石又は永久磁石によって、外側からシリンダー壁を通って、施しても良く、又、適切な磁界発生器によって、内側からスクリューを介して施しても良い。
【0044】
他の実施の形態では、磁化可能な粒子を含む懸濁液が通される間隙は、通路(チャンネル)である。せん断は、断面が小さな通路によって行われる。従って、通路内で、大きな圧力降下が発生し得る。圧力降下のために、せん断応力が磁化可能な粒子を含む懸濁液に作用し、これにより、懸濁液のせん断が行われる。間隙が、磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる通路の状態で設計される場合、断面は、長方形であることが好ましい。この場合、ある磁石ヨークが通路の上に配置され、そして他の磁石ヨークがその下に配置されて良く、これにより、通路に磁界を発生させて良い。この替わりに、通路が他の所望の如何なる断面を有していても良い。しかしながら、長方形の通路とは対象的に、この場合、磁界の分布は理想的にはならない。
【0045】
本発明は、更に、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する装置であって、磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断力を与えるために、磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる、少なくとも1つの間隙を含む装置に関する。この装置は、更に、少なくとも1つの間隙に磁界を発生させるための、少なくとも1つの磁石を含む。
【0046】
少なくとも1つの間隙に磁界を発生させるために、少なくとも1個の磁石を配置し、磁石の極が間隙の反対側に位置することが好ましい。これにより、磁界は、間隙内のせん断面に対して垂直に発生される。
【0047】
要求に応じて磁界を施し、そして任意に磁界の強さを変化させるために、磁石を電磁石にすることが好ましい。この替わりに、少なくとも1個の電磁石の替わりに、少なくとも1個の永久磁石を使用することも可能である。電磁石と永久磁石の両方を使用することも可能である。磁界が調節可能な場合、本発明に従う装置を、例えば、組成が異なる、特に懸濁液に含まれる磁化可能な粒子の濃度が異なる、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整するために使用して良い。この場合、磁界の強さは、調整される磁化可能な粒子を含む懸濁液に、それぞれ適応されて良い。
【0048】
本発明に従う装置の第一の実施の形態では、少なくとも一つの間隙が、磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断力を与えるために、相互に相対的に移動可能な少なくとも二つの平面(板)によって境界付けられている。上述のように、間隙を、二つの対向する平面で境界付けることも可能である。この場合、一つの平面を固定し、そして第2の平面を動かして良い。この替わりに、二つの平面を異なる速度で動かしても良い。例えば、二つの平面が異なる速度を有するか、又は反対方向に動いても良い。
【0049】
相互に動くことが可能な平面の相対的な動きを可能とするために、一方では、平面を相互に相対的に移動させることが可能である。この場合、例えば、一つの平面を固定し、そして少なくとも2個のローラーの回りを回り、上記平面に面した無端ベルトを配置し、これにより相対的な動きを生じさせることも可能である。
【0050】
しかしながら、少なくとも一つの平面が回転板であることが特に好ましい。回転板は、中心回転軸(中心回転軸は、第2の平面(板)に対して垂直に延びるように配置されている)の回りを回転する。これにより、間隙の均一な幅が確保される。間隙を境界付けている両方の平面が、回転板として形成された場合、二つの平面の回転軸は、同軸であることが好ましい。しかしながら、通常、ある平面は固定板(固定子板)として形成され、そしてある平面は回転板として形成される。この場合、上述のように、回転板の回転軸は、固定板に対して垂直に延びていることが好ましい。
【0051】
間隙が二つの対向する回転板で境界付けられている場合、一方の回転板が、他方の回転板よりも速い速度で回転することが好ましく、又は二つの回転板が反対方向に回転することが好ましい。
【0052】
間隙を境界付けている回転板及び固定板の表面、又は第2の回転板の表面は、平らな面表面、平らな及び円錐状の面表面であることが好ましく、又はそれぞれが、円錐状の面表面であることが好ましい。ある面表面が平らであり、そしてある面表面が円錐状の場合、又は両方の面平面が円錐状に設計されている場合、間隙の幅は、回転軸に向かって狭くなる。
【0053】
エネルギー投入量を記録するために、回転板又はシリンダー構成の回転速度及びトルクの両方を記録する必要がある。トルクの測定は、回転速度が設定された場合に必要とされ、そして回転速度の測定は、トルクが設定された場合に必要とされる。両方の測定量が常に連続的に記録されることが好ましい。せん断セル(shear cell)の体積と(一つの)せん断間隙/複数のせん断間隙の寸法を使用して、これらの測定値から比エネルギー投入量(specific energy input)を計算することができる。
【0054】
上述したせん断セルは、高い比エネルギー投入量のために、加熱される。この理由で、せん断セルを自動温度調節(サーモスタット)することが好ましい(種類に関係なく)。このことは、せん断セルを自動温度調節した浴槽、又は温度制御された窯(kiln)に完全に漬けることによって行われても良い。この替わりに、せん断セルのハウジングに、内部を適切な冷却剤が循環する冷却流路を設けても良い。この変形例は、せん断間隙に対して比較的緊密に冷却を行うことができるという有利な点を有している。更に、せん断セルのために、冷却空気流を使用することも可能である。
【0055】
本発明に従い設計された第2の実施の形態では、磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断力を施す(与える)少なくとも一つの間隙は、磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる流通通路(flow channel)である。磁化可能な粒子を含む懸濁液に与えられるせん断力は、この場合では、流通通路内の懸濁液の流速と圧力降下に依存する。十分に大きい圧力降下又は十分に大きいせん断を、磁化可能な粒子を含む懸濁液に及ぼすために、間隙は、0.08〜5mmの高さを有することが好ましい。選択した処理量が同じである場合、間隙の高さが低くなると、懸濁液に及ぼされるせん断速度は大きくなる。高さに加え、間隙内の圧力低下は、間隙の長さにも依存する。間隙の、高さに対する長さの割合又は直径に対する長さの割合が大きい程、圧力降下は大きくなる。このことは、間隙の高さが低くなると、同一の圧力降下を達成するために必要とされる通路(流通通路)は短くなることを意味する。
【0056】
断面が長方形の流通通路の場合、間隙内に磁界を発生させるために、磁石が通路の上部と下部に設けられ、これにより磁界が通路に浸透(透過)する。磁石は、永久磁石であっても、電磁石であっても良い。磁界を発生させるために、磁石は、磁石のN極が、通路の一方側に配置され、そして磁石のS極が他方側に配置されるように設けられる。複数の磁石が流通通路の長さに亘って、並びあって配置される場合、それぞれ同じ極を通路の一方側に配置し、これにより、磁界を、通路の前長に亘り均一にすることが可能である。しかしながら、この替わりに例えば、磁石のN極とS極を、通路の一方側で交互に配置し、そしてこれに対応して、通路の他方側で反対の極を交互に配置し、これにより通路内の磁界を極対から極対へと変化させることも可能である。
【0057】
通路の配置構成において、せん断エネルギー投入量を測定するために、通路の処理量と圧力降下を測定するための装置が設けられることが好ましい。押出機の配置構成では、スクリューのトルクと処理量又はスクリューの回転速度が記録されることが好ましい。
【0058】
磁化可能な粒子を含む懸濁液を充分に調整するために、装置は通常、更に磁化可能な粒子を含む懸濁液が含まれる保管容器を含む。磁化可能な粒子を含む懸濁液は通常、ポンプを使用して、保管容器から少なくとも一つの間隙を通って運ばれる。充分に調整(conditioning)するために、磁化可能な粒子を含む懸濁液を、間隙に数回にわたって流すことが好ましい。この場合、磁化可能な粒子を含む懸濁液を間隙に通す回数は、調整工程に必要とされるエネルギー投入量に依存することが考えられる。
【0059】
使用中の増粘の低減に加え、磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整することにより、再分散性も改良される。例えば、本発明に従い調整された磁化可能な粒子を含む懸濁液は、20日間の保管時間の後、未調整の磁化可能な粒子を含む懸濁液と比較して、少ない労力で、再分散させることができる。20日間の保管の後の差異は、約5のファクターである。このことは、本発明に従い調整された、磁化可能な粒子を含む懸濁液は、未調整の磁化可能な粒子を含む懸濁液と比較して、5のファクターだけ低い仕事量(workload)で再分散することができることを意味する。
【0060】
以下に図面を使用して本発明の実施の形態を説明する。
【0061】
図1は、本発明に従い設計された、回転板を有するせん断セルを示している。
【0062】
せん断セル1は、間隙3を有しており、間隙3を、磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる。懸濁液は、間隙3内でせん断される。磁化可能な粒子を含む懸濁液は、入口通路5を通して間隙3に供給される。図1に示したせん断セル1の実施の形態では、入口通路5は中央に配置されている。磁化可能な粒子を含む懸濁液は、通路5を通って間隙3内に流れ、間隙3を流通し、そして一つ以上の出口通路7を通ってせん断セル1から排出される。ここで説明した実施の形態では、せん断セル1は、2個の出口通路7を有している。しかしながら、せん断セル1が出口通路7を1個だけ有することも可能であり、又は2個を超える出口通路7を有することも可能である。
【0063】
間隙3は、第1の板9(第1の平面9)と第2の板11(第2の平面11)によって境界付けられている。ここで説明している実施の形態の第1の板9は、固定板13である。入口通路5は、固定板を、その中央部で通り抜けている。
【0064】
第2の板11は、回転板15として設計されており、固定板13に面している。このようにして、間隙3は、固定板13の表面17と、回転板15の表面19によって境界付けられている。
【0065】
固定板13の表面17及び回転板15の表面19は、図1に示したように、平らであって良い。更に、固定板13の表面17と回転板15の表面19を円錐形に設計することも可能である。この場合の円錐の先端は、回転板15の表面19と固定板13の表面17の中央、すなわち、回転軸23が回転板15と固定板13を通る箇所に位置している。更に、固定板13の表面17が平らであり、回転板15の表面19が円錐形であることも可能であり、又回転板15の表面19が平らであり、固定板13の表面17が円錐形であることも可能である。固定板13の表面17、又は回転板15の表面19が円錐形に設計されている場合、円錐の頂角は、0.3〜6°の範囲であることが好ましい。
【0066】
回転板15は、回転シャフト21に結合されている。回転シャフト21は、駆動部(図示せず)と結合されている。駆動部と回転シャフト21によって、回転板15に回転モーメントが与えられる。
【0067】
回転軸23は、回転シャフト21の中心を延びている。回転軸23は、回転板15に対して垂直に、及び固定板13に対して垂直に延びるように配置されている。間隙3の均一な間隙幅が、このようにして達成される。
【0068】
せん断セル1の運転の間に、間隙3から磁化可能な粒子を含む懸濁液が出ないようにするために、せん断セル1は、ハウジング25を更に含む。ハウジング25は、固定板13、回転板15及び間隙3を囲んでいる。
【0069】
ここで説明している実施の形態では、ハウジング25に開口部27が形成されており、開口部27を通って、回転板15の回転シャフト21が延びている。回転シャフト21は、ハウジング25の開口部27で、ベアリング(図1には、その詳細は省略されている)によって支持されていることが好ましい。この技術分野の当業者にとって公知の、所望の全てのベアリングがベアリングとして好ましい。例えば、ボールベアリング、ニードルベアリング、シリンダーベアリング又はこれらに類似するものが使用されて良い。更にハウジング25は、(開口部27の回転シャフト21とハウジング25の間に設けられた)シーリング要素29によって周囲からシール(封印)されている。シーリング要素29は、例えばO−リング、シャフトシーリングリング、クワッドリング、ラビリンスシール、又はスライディングリングシールであって良い。回転要素を固定要素からシールする、この技術分野の当業者にとって公知の、如何なる他の所望のシールも可能である。
【0070】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が間隙3から回転板15の周囲に流出することを防止するために、ここで説明する実施の形態では、回転板15は、(出口通路7の代わりに)第2のシーリング要素31によって囲まれている。シーリングは、一方では回転板15の外側周囲に位置し、他方ではハウジング25に位置する第2のシーリング要素31によって達成される。シーリング要素29のように、第2のシーリング要素29は、O−リング、シャフトシーリングリング、クワッドリング、ラビリンスシール、又はスライディングリングシールであって良い。回転要素を固定要素からシールする、この技術分野の当業者にとって公知の、如何なる他の所望のシールも可能である。
【0071】
磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整するために、磁化可能な粒子を含む懸濁液が、入口通路5を通って間隙3に供給される。回転板15の回転モーメントによって、磁化可能な粒子を含む懸濁液に、せん断力が与えられる。同時に、間隙には、磁界が透過(通過)する。この目的のために、磁石の第1のヨーク33が、回転板15の間隙に対する反対側に位置し、その第2のヨーク35が、固定板の間隙3に対する反対側に位置している。磁石は、永久磁石であって良く、又は電磁石であって良い。磁石は電磁石であることが好ましい。第1のヨーク(yoke)33及び第2のヨークは、極化(pole)されており、これにより、磁界が第1のヨーク33と第2のヨーク35の間に発生する。そして磁界は、間隙3に透過(浸透)する。このようにして、磁化可能な粒子を含む懸濁液の間隙3内でのせん断が、磁界の存在下に行われる。与えられた磁界の強さは、せん断間隙内の磁束密度が、0.05〜1.2T、好ましくは0.1〜1.2T、特に0.2〜0.8Tの範囲になるように選択される。
【0072】
図1に従うせん断セルを有する調整システムが図2に示されている。
【0073】
調整システムは、せん断セルに加え、保管容器37、供給ライン39、戻りライン41及びポンプ43を有している。ポンプ43は、供給ライン39に配置されている。磁化可能な粒子を含む懸濁液は、ポンプ43によって入口通路5に供給され、そしてせん断セル1に供給される。次に磁化可能な粒子を含む懸濁液は、固定板(stator plate)13と回転板15の間の間隙3を流れ、そして出口通路7を通ってせん断セル1から出てくる。出口通路7は、戻りライン41に開口しており、戻りライン41を通って磁化可能な粒子を含む懸濁液が保管容器37に輸送して戻される。十分な調整を行うために、保管容器37内の内容物を、せん断セル1に数回に亘って通す必要がある。
【0074】
図3.1は、本発明に従い設計された、調整のための流通通路を、長さ方向部分で示している。
【0075】
図3.1に示した実施の形態では、間隙3は流通通路45によって形成されている。流通通路45は、下側の第1の板9とその上側の第2の板11によって境界付けられている。調整のために、磁化可能な粒子を含む懸濁液が、入口47を通って流通通路45に供給される。磁化可能な粒子を含む懸濁液は、出口を通って流通通路45から出てくる。流通通路45を流れると、第1の板9と第2の板11の壁の摩擦のために、及び磁化可能な粒子の相互の摩擦のために、(流通通路45を流れる間、)磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断力が及ぼされる。本発明に従えば、せん断が磁界の存在下に行われるので、間隙3を形成する流通通路45には磁界が透過する。この目的のために、磁石の第1のヨーク33が、間隙3から第1の板9の反対側に配置され、そしてその第2のヨーク35が、間隙3から第2の板11の反対側に配置される。図1に示したせん断セルと同様に、磁石は永久磁石でも良く、又は電磁石でも良い。ヨーク33、35は、2個の対向するヨーク33、35の間に磁界が形成されるように極化(pole)される。本発明に従えば、流通通路45に沿って磁石を1個だけ備えることも可能であり、この場合、磁石の第1のヨーク33は、第1の板9に位置され、そして磁石の第2のヨーク35は、第2の板11に位置される。更に、図3.1に示したように、複数個の磁石を並びあった状態で配置することも、当然可能である。ここで、一方では、隣合う磁石の第1のヨーク33及び第2のヨーク35が同じ様に極化することが可能であり、これにより磁界は、流通通路45全体に均等に向けられる。この替わりに、隣合う磁石の第1のヨーク33及び第2のヨーク35が、それぞれ異なって極化され、隣合う2個の磁石の間で磁界が変わり、反対方向に向けられることも可能である。
【0076】
流通通路45内の磁化を均一にするために、図3.2に示したように、流通通路が長方形の断面を有することが好ましい。この場合、流通通路45の側面境界が、側壁51によって形成される。流通通路45は、その幅と比較して、高さが低いことが好ましい。
【0077】
境界付けている壁を動作させることによって、追加的なせん断を行う場合、例えばより短く設計された流通通路45も製造されて良い。このことは、例えば、流通通路45の上側を境界付けている第2の板11を回転ベルトの状態に設計することによって可能である。この場合、回転ベルトによって形成された、流通通路の境界は、第1の板9に対して動作して良い。追加的なせん断が与えられる。更に、第1の板9と第2の板11を動作させることも可能であり、この場合、第1の板9と第2の板11を異なる速度、又は反対方向に動作させることが好ましい。この場合、第1の板9と第2の板11を、それぞれ無端ベルトの状態で設計し、それぞれを、少なくとも2個のシャフトの回りを回転(巡回)させ、これによりベルトとして設計された第1の板9と第2の板11を駆動させることが好ましい。
【0078】
流通通路が、その全長に亘って一定の高さを有している図3.1及び図3.2に示した実施の形態の他に、流通通路45の高さをその長さにおいて変化させることも可能である。例えば、流通通路45の高さをその長さに亘って増加、又は減少させることができる。更に、流通通路45の高さが増加し、そして次に減少する区分を交互させることも可能である。例えば、流通通路45を境界付けている第1の板9と第2の板11を、波形に設計し、流通通路45を波形状に延長させることも可能である。第1の板9と第2の板11を、波状に設計する場合、波形のピークを相互に対向させ、これにより、通路高さの連続的な増加と減少を構成しても良い。磁化可能な粒子を含む懸濁液が通る通路について、この技術分野の当業者にとって公知の他の如何なるプロフィールも可能である。
【0079】
流通通路の長さに対する高さの割合、及び磁束密度は、通路内で、5バールの圧力降下が達成されるように選択されることが好ましい。圧力降下は、好ましくは10〜200バールの範囲、特に50〜100バールの範囲である。
【0080】
図4は、図3.1及び図3.2に従う流通通路を有する調整システムを示している。図2に示した調整システムと同様に、本調整システムは、保管容器37、供給ライン39、戻りライン41及びポンプ43を有している。供給ライン39は、流通通路45の入口47に連結されている。ポンプ43によって、磁化可能な粒子を含む懸濁液は、保管容器37から流通通路45にポンプ輸送される。磁化可能な粒子を含む懸濁液は、出口49を通って流通通路から、戻りライン41へと流れ、これにより磁化可能な粒子を含む懸濁液は、保管容器47に戻る。調整のために、(それぞれ第1のヨーク33と第2のヨーク35によって形成された磁石を使用して、)流通通路45に磁界が発生される。磁化可能な粒子を含む懸濁液を、保管容器37から流通通路45に数回に亘って通すことにより、十分な調整が達成される。
【0081】
回転板を有するせん断セル及び図3.1及び3.2に従う流通通路に加え、せん断セルは、懸濁液をせん断するのに適切な他の形態(状態)を有していても良い。他の適切な形態は、例えば、押出機の構成を有するシリンダージオメトリー壁を有するせん断セルである。
【0082】
第1の実施の形態のシリンダージオメトリーを有するせん断セルを、図5に示す。
【0083】
シリンダージオメトリー61を有するせん断セルは、固定ハウジング63を有している。固定ハウジング63は、回転シリンダー65を囲んでいる。この目的のために、シリンダー65は、ハウジングを貫通するシャフト67と結合されている。シャフト67は、駆動部と結合されている。
【0084】
間隙3は、シリンダー65と固定ハウジング63の間に形成されている。磁化可能な粒子を含む懸濁液は、入口通路5を流れ、間隙3に入る。懸濁液は、間隙3を流れ、そして出口通路7を通って、せん断セル61から出る。
【0085】
本発明に従い、磁界69は、ここでは矢印で現した磁線(磁界の線)が、間隙内の懸濁液の流れ方向に垂直になるように与えられている。磁界69を発生させるために、例えば、固定ハウジング63をコイルで取り囲むことも可能である。均等に向けられた磁界を得るために、磁石の一つのヨークをハウジングの外側に配置し、そして磁石の第2のヨークをシリンダー65の内側に配置することが好ましい。
【0086】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が(回転シリンダー65の表面を囲み、従って同様にシリンダー状に形成された)間隙3にのみ流れるように、間隙3は、その端部で、適切なシーリング要素71によって閉塞されている。シーリング要素71は、磁化可能な粒子を含む懸濁液が、回転シリンダー65の端部表面73とハウジング63の間に入ることを防止する。
【0087】
図6は、第2の実施の形態における、シリンダージオメトリーを有するせん断セルを示している。
【0088】
図6に示したせん断セル61は、図5に示したせん断セルとは異なり、磁化可能な粒子を含む懸濁液の供給がシャフト67を介して行われる。この目的のために、シャフト67は、空洞のシャフトとして設計されている。磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる間隙77は、シリンダー65の上端面75とハウジング63の間に形成されている。懸濁液は、間隙77に沿ってシリンダー状の間隙3(間隙3には、磁界69が透過している)に入る。出口通路7は、シャフト67から、ハウジング63の反対側に位置している。この替わりに、逆の流れ方向も可能である。この場合、懸濁液は、出口通路7を通って供給され、そしてシャフト67を通ってせん断セル61から出る。
【0089】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、空洞シャフトとして設計されたシャフト67から間隙77へと通るようにするために、シャフト67には、少なくとも1個の開口部79が形成されている。開口部79は、例えばボア(穴)であって良い。
【0090】
図5又は図6に示したシリンダージオメトリーを有するせん断セルを使用して運転される調整システムは、回転板又は流通通路を有するせん断セルが設けられた調整システムと類似して構成される。図2及び図4に示した流れシステムの場合、このことは、示されているせん断セル又は示されている流通通路が、シリンダージオメトリーを有する対応するせん断セルに、単に替えられることを意味する。
【0091】
図7は、押出機の構成を有するせん断セルを示している。
【0092】
図7に示したように、押出機を有するせん断セル81は、特に、高粘度の媒体内に粒子を分散させるのに使用される。
【0093】
個々の成分は、じょうご83を通して、別々に又は一緒に懸濁液に加えられる。押出の構成を有するせん断セル81が、粒子を分散させるために使用されず、調整のためにのみ使用される場合、磁化可能な粒子を既に含んでいる懸濁液が、じょうご83を通って送られて良い。
【0094】
押出機の構成を有するせん断セル81は、固定ハウジング85を有し、固定ハウジング85は、押出スクリュー87を囲んでいる。磁化可能な粒子を含む懸濁液が通り、そして調整のために磁界69が透過する間隙3が、押出スクリュー87とハウジング85の間に形成される。
【0095】
押出機の構成を有するせん断セル81が高い粘度を有する媒体内で粒子を分散させるために使用される場合、懸濁液が押出機の構成を有するせん断セルを通る間、懸濁液の分散と調整が同時に行われる。
【0096】
粘度が高い媒体が押出機を流れるようにするために、押出スクリューは回転可能に備えられ、及びシャフト67によって駆動される。じょうご83を通して供給された材料は、間隙3に沿って設けられた押出スクリュー87を使用して出口通路7に送られる。出口通路7では、微細に分散され、そして調整された磁化可能な粒子を含む懸濁液が、押出機の構成を有するせん断セルから出てくる。
【0097】
例えば、シリンダージオメトリーを有するせん断セル61内での磁界の付与に従い、ハウジング85が磁界を発生させるコイルによって囲まれた押出機の構成を有するせん断セル81内で、磁界の付与が行われる。この替わりに、シリンダー壁及び/又はスクリュー上に、又は内部に永久磁石を配置することも可能である。
【0098】
押出機の構成を有するせん断セル81が使用される調整システムが、図2及び図4に示した、回転板を有するせん断セル1又は流通通路を有する調整システムに従い、同様に構成される。この場合、回転板を有するせん断セル又は流通通路は、押出機の構成を有するせん断セル81に替えられる。
【0099】
押出機の構成を有するせん断セル81が、高い粘度を有する媒体内に粒子を分散させるために使用される場合、代用として、出発材料を保管容器からじょうご83を通して輸送し、及び出口通路7から流出する微細に分散され且つ調整された懸濁液を更なるリザーバー(貯蔵器)に供給することも可能である。リザーバーに貯められた懸濁液をじょうご83を介して押出機に供給することも可能であり、この場合、既に分散された懸濁液のいくらかを、押出機内の出発材料に混合することが可能である。この替わりに、懸濁液を更に他のせん断セル内で調整することも可能である。
【実施例】
【0100】
90質量%のカルボニル鉄粉。9.05質量%のポリ−α−オレフィン、0.45質量%の変更したアタプルガイト(attapulgite)(Akzo−NobelからのArquad C2−75で変更された、EngelhardからのAttagel 50)、及び0.5質量%のアルキド樹脂を、以下の実施例のために使用した。
【0101】
比較例
図1に示した、間隙高さが2mm、及び外径が300mmの回転板を有するせん断セルを、磁化可能な粒子を含む懸濁液を、磁界を与えることなく調整するために運転した。回転板の回転速度は、400 1/minであった。磁化可能な粒子を含む懸濁液に与えられたせん断力は、せん断速度が6283 1/sで、1.1kPaであった。懸濁液の体積が10 lで、3e10J/mの所望のエネルギー投入で、調整時間は22.8hであった。
【0102】
実施例1
0.5Tの磁界が、比較例のせん断セルに与えられた。回転板は、35 l/minの回転速度で運転された。25.4 kPaのせん断力が、550 1/sのせん断速度で、磁化可能な粒子を含む懸濁液に与えられた。製造体積が10リットルで、3e10J/mの所望のエネルギー投入で、調整時間は11hであった。磁界を与えることにより、同一のエネルギー投入量で、非常に短いせん断時間が、遅いせん断速度で達成された。
【0103】
実施例2
図1に示したせん断セルを使用した。回転板の外径は、150mmで、そして間隙の高さは1mmであった。回転板は、35 1/minの回転速度で運転された。間隙を流れる、磁化可能な粒子を含む懸濁液に、22.5 kPaのせん断力、及び550 1/sのせん断速度が与えられた。0.11 l/hの体積処理量及び磁化可能な粒子を含む懸濁液の合計体積が10 lで、3e10J/mエネルギー投入を与えるために、調整時間が87.7 hであった。
【0104】
実施例1及び2で行われたように、調整が磁界の存在下に行われた場合、20日間の保管時間の後に再分散させるための作業が、ファクター5だけ低減された。
【0105】
実施例3
調整を、図3に示したように流通通路内で行った。この目的のために、間隙高さが2ミリメートルで、長さが1200メリメートルの流通通路を使用した。間隙を囲んだ磁石により発生された磁界は、約0.5Tであった。3e10J/mのエネルギー投入量を達成するために、磁化可能な粒子を含む懸濁液を通路に、300バールの圧力降下で1000回通す必要があった。これとは対称的に、30バールの圧力降下しかない場合には、通した回数は、10000回必要であった。
【0106】
間隙を1000回流した場合、20ミリメートルの間隙幅、2ミリメートルの高さ、及び1200ミリメートルの通路長さにおいて、24時間で10 lの合計体積処理量のために、せん断速度が8700 1/sであった。
【0107】
実施例4
回転板が、互いに平行に配置された2枚の固定板の間に位置している点で、図1に示したせん断セルとは異なるせん断セルを使用した。従って、せん断セルは、2個のせん断間隙(1個は回転板の上側に、そしてもう1個はその下側に位置している)を有している。回転板と固定板は同軸上に配置され、そして固定板の上側と下側に配置された2個の永久磁石又は電磁石によって、磁界がせん断間隙内に導かれた。これらは、ドライブシャフトを通して供給するために、回転板に中央孔を有していた。固定板は、最大直径が40mmで、回転板は半径が19mmであった。駆動軸の領域では、回転板は、固定板からシールされそして支持されていた。従って、得られたせん断ギャップは、最小径が5mmで、最大径が19mmであった。せん断間隙の高さは、各場合において1mmであった。せん断セルは、典型的には、100rpmの回転速度で運転され、これにより間隙内で、200 1/sの最大せん断速度が得られた。このセル内で磁性液体を、0.9Nmのトルク(トルクは、回転軸で測定した)でせん断した。シールの摩擦トルクも考慮した。与えられた回転速度及び得られたトルクで、1.8時間後に、3e10J/mの特定のエネルギー投入量が達成された。この場合の入力は、10ワットである。より大きい体積を調整するために、せん断セルを対応して幾度も満たす必要がある。
【0108】
調整が、実施例4で行われたように、磁界の存在下になされる場合、20日間の保管時間の後に再分散させるための作業(work)は、ファクター5だけ低減されることがわかった。
【符号の説明】
【0109】
1 せん断セル
3 間隙
5 入口通路
7 出口通路
9 第1の板
11 第2の板
13 固定板
15 回転板
17 固定板13の表面
19 回転板15の表面
21 回転軸(ローター軸)
23 回転軸
25 ハウジング
27 開口部
29 シール要素
31 第2のシール要素
33 第1のヨーク
35 第2のヨーク
37 保管容器
39 供給ライン
41 戻りライン
43 ポンプ
45 流通通路
47 入口
49 出口
51 側壁
61 シリンダージオメトリーを有するせん断セル
63 固定ハウジング
65 シリンダー
67 シャフト
69 磁界
71 シール要素
73 シリンダーの端面
75 シリーンダーの上側端面
77 間隙
79 開口部
81 押出構造を有するせん断セル
83 じょうご
85 ハウジング
87 押出スクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する方法であって、
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断を引き起こすために、間隙(3)を通され、及び間隙(3)に磁界が与えられ、これにより磁化可能な粒子を含む懸濁液が磁界の存在下にせん断されることを特徴とする方法。
【請求項2】
磁界の強さが調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
間隙(3)が、相互に動くことができる少なくとも2つの表面で境界付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
間隙(3)は、固定板(13)及び、固定板(13)と対向し及び中央回転軸(23)の回りを回転する回転板(15)によって境界付けられているか、又は間隙(3)は、回転シリンダー(65)と、回転シリンダー(65)を囲む固定ハウジング(63)によって境界付けられていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、基礎液体、磁化可能な粒子、及び任意に添加剤を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
磁化可能な粒子を含む懸濁液が、磁化可能な粒子を、懸濁液の全体積に対して、少なくとも15体積%含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
磁化可能な粒子が、カルボニル−鉄粉であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
基礎液体がポリ−α−オレフィンであることを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
磁界の存在下にせん断を行なう前に、磁化可能な粒子、ポリマー、溶媒及び任意に含まれる添加剤が、分散工程で一緒に混合され、磁化可能な粒子を含む懸濁液を形成することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
磁化可能な粒子を含む懸濁液を調整する装置であって、
磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断力を与えるために、磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる、少なくとも1つの間隙(3)を含み、更に、少なくとも1つの間隙(3)に磁界を発生させるための、少なくとも1つの磁石を含むことを特徴とする装置。
【請求項11】
磁石が電磁石であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの間隙(3)が、磁化可能な粒子を含む懸濁液にせん断力を与えるために、相互に動くことができる板(9、11)によって境界付けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
相互に動くことが可能な、少なくとも1つの板(11)が、中央回転軸(23)の回りを回転する回転板(15)であることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
回転板(15)が、固定板(13)に面して配置され、間隙(3)が、回転板(15)と固定板(13)によって境界付けられていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
回転板(15)が、第2の回転板に対向して配置され、間隙が2つの対向する回転板によって境界付けられていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
回転板(15)、及び固定板(13)、又は第2の回転板が、それぞれ平坦、平坦及び円錐、又はそれぞれが円錐の板表面(17、19)を有することを特徴とする請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つの間隙(3)が、磁化可能な粒子を含む懸濁液が流れる流通通路(45)であることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項18】
間隙(3)の高さが、0.2mm〜10mmの範囲であることを特徴とする請求項10〜17の何れか1項に記載の装置。
【請求項19】
更に、せん断によって発生した熱を消散させる冷却システムを含むことを特徴とする請求項10〜18の何れか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3.1】
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【図3.2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−505236(P2011−505236A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535359(P2010−535359)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066164
【国際公開番号】WO2009/068535
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】