説明

磁性粒子に作用して干渉物質を検出する方法および装置

本発明は、リージョンオブアクションにある磁性粒子に作用する方法と装置に関する。この種の方法および装置は、リージョンオブアクションにある磁性粒子の空間的分布を決定し、または磁性粒子を局所的に加熱するために使用することができる。リージョンオブアクションに磁性粒子に加えて干渉物質があるとき、この干渉物質が加熱され好ましくない。この種の好ましくない加熱をさけるため、存在するかも知れない干渉物質を事前に検出する。干渉物質があるとき、システムパラメータを変更して検査や治療を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、リージョンオブアクション(region of action)にある磁性粒子に作用する方法および装置に関する。
【0002】
磁性粒子の検出は比較的容易であり、(特に医療上の)検査等に使用することができる。まだ公開されていないドイツ特許出願第DE10151778.5号(出願人参照番号第PHDE010289号)には、検査ゾーン(すなわちリージョンオブアクション)における磁性粒子の空間的分布を決定するための装置および方法と、好適な磁性粒子の使用とが記載されている。この特許出願は以下においてD1として参照する。検査ゾーンにおける磁性粒子の空間的分布を決定可能とするため、空間的に不均一な磁場を生成し、少なくともその一部ゾーンでは粒子の磁化が飽和状態とならないようにする。検査ゾーン内でこの粒子が飽和状態となっていないゾーンの位置を動かすと磁化が変化する。その変化は外部から検知することができ、検査ゾーン内の磁性粒子の空間的分に関する情報を与えてくれる。
【0003】
磁性粒子はその周囲を加熱するために使用することができ、これは発熱療法で使用される。まだ公開されていないドイツ特許出願第DE10238853.9号(出願人参照番号第PHDE020195号)には、この種の、磁性材料または磁化可能材料の磁化を変化させてオブジェクトの領域を局所的に加熱する方法およびシステムが記載されている。この特許出願は以下においてD2として参照する。目標領域(すなわちリージョンオブアクション)を局所的に加熱するため、磁場の強さが空間的なパターンを有する不均一な磁場を生成し、目標領域に磁場の強さが弱い第1のサブゾーンと磁場の強さが強い第2のサブゾーンとを生成するようにする。目標領域における2つのサブゾーンの空間的位置を所定周波数で切り替え、磁化の頻繁な切り替わりにより磁性粒子を所望の温度まで加熱する。
【0004】
しかし、文献D1とD2で開示した方法には、好ましくない加熱が生じることがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、この種の好ましくない加熱を減らすか無くすことができる方法を開発し、この方法を実施することができる装置を開発することである。
【0006】
この目的は、リージョンオブアクションにおいて、オブジェクトに導入された磁性粒子に作用する方法により達成される。前記方法は、
a)前記オブジェクト中または上の干渉物質を検出するステップと、
b)磁場の強さの空間的パターンを有する磁場を生成し、磁場が弱い第1のサブゾーン(301)と磁場がより強い第2のサブゾーン(302)を前記リージョンオブアクションに形成するステップと、
c)前記粒子の磁化が局所的に変化するように、前記リージョンオブアクション中の前記2つのサブゾーンの空間的位置を変更するステップと、
d)必要に応じて、前記リージョンオブアクション中の前記磁化に応じた信号を取得するステップと、を有し、
前記磁化は前記位置の変更により作用されることを特徴とする。
【0007】
本発明は以下の発見に基づく。すなわち、文献D1とD2に開示した方法を実行するにあたり、検査または治療をするオブジェクトの中またはそのオブジェクト上にある干渉物質でできたアイテムが加熱されることが観察された。この場合加熱が激しいのでオブジェクトに損傷を与えてしまう。本発明において、干渉物質とは強磁性物質および電流に対して高い導電性を有する物質であり、具体的には金属または合金である。オブジェクトが患者である場合、アマルガムでできた歯の詰め物、人工関節、骨をつなぐロッドやネジ、装飾品等(イヤリング、ピアス等)の患者が身につけているアイテムが加熱される。例えばシステムパラメータを変更することにより検査や治療中の加熱を防ぐことができる場合や、または事前に干渉物質を取り除くことができる場合などの一定の環境下では、文献D1とD2で開示した方法により計画した検査や治療を実行することができる。
【0008】
本発明による方法の最初のステップにおいて、干渉物質はすべて検出される。検出にはいくつかの方法がある。コイル等の誘導手段の影響があるゾーンに干渉物質が来ると、磁場全体が変化する。これは、干渉物質が影響のあるゾーンに来た時に誘導手段のインダクタンスの測定値が変化するということである。請求項2に記載したように、この効果は干渉物質の存否を決定する際に用いることができる。一方で、既知の検出器をこの目的のために使用することができる。磁性粒子に作用するために用いる手段の1つが誘導手段であるとき、他方で、請求項3に記載したように、この誘導手段は検出器として用いることができる。これにより装置の部品を省略することができ、本方法を実行する装置をより経済的に作ることができる。
【0009】
あるいは、干渉物質の検出は請求項4に記載したように実行してもよい。検出のため、治療や検査専用に実行されるステップと同様なステップを実行する。しかし、検出中であっても、干渉物質が許容できないほど加熱しないように留意することは重要である。これは一方で、空間的分解能を低くすることで干渉物質の加熱が減るのであれば、低い空間的分解能を利用することにより達成される。文書D1とD2から分かるように、例えば、空間的分解能は、例えば、2つのサブゾーンをつくる磁場の強さを弱めることにより低くすることができる。リージョンオブアクションを離れるように2つのサブゾーンの空間的位置を変更することはできないので、2つのサブゾーンの空間的位置を変更する時間的に変化する磁場の強さの振幅を同時に下げる。これによりさらに加熱を減少させることができる。空間的分解能を下げる他の方法は、サブゾーンの空間的位置の変更中にスキャングリッドを粗くすることである。他方、検査や治療の場合よりもゆっくりと2つのサブゾーンの空間的位置を変更することにより、検出中の許容できない加熱を排除することができる。
【0010】
前述の方法には他の有利な効果がある。すなわち、干渉物質に磁場が作用する静的および動的な力も弱くなる。例えば、オブジェクトが、爆弾の破片が体内に入った患者であり、非常に強い磁場がかかりその力により、破片が動いてしまう場合にも役立つ。
【0011】
請求項5に記載した方法は、特に強磁性物質を検出するために使用される。検出の際にはオブジェクトに含まれている磁性粒子はないから、検出信号は干渉物質だけに由来する。
【0012】
請求項6に記載の方法を用いて、干渉物質の検出のすぐ後にオブジェクトの実際の検査や治療を実行することも可能であり、方法のシーケンスがより効率的になる。磁性粒子と干渉物質が両方ともオブジェクトにある場合、請求項7に記載したように、取得した信号のスペクトルを調べて、そのスペクトルには磁性粒子に由来するスペクトル成分と干渉物質に由来するスペクトル成分が含まれることが分かる。
【0013】
干渉物質の証拠を取得するために、例えば、取得した信号のスペクトルから磁性粒子の既知のスペクトル成分を差し引くと、それによって干渉物質のスペクトル成分が残るので、少なくとも干渉物質が存在するという結論を導き出すことが可能となる。
【0014】
干渉物質が検出されたとき、可能な限り除去すべきである。不可能であれば、オブジェクトを保護するために、必要であれば計画した検査や治療は放棄しなければならない。リージョンオブアクションの近くに干渉物質があるにもかかわらず、検査や治療を実行するときは、好適な手段をとることによって許容できない加熱のリスクを避けることができる。干渉物質は、例えば局所的に反対方向の磁場をかけることによりアクティブにスクリーンオフすることができ、また(金属スクリーン板等により)パッシブにスクリーンオフすることができる。このように、干渉物質への時間的に変化する磁場の作用は、干渉物質が加熱しないか治療や検査に干渉しない程度に減らすことができる。代替的または付加的に、請求項8に記載の方法は、例えば、時間的に変化する磁場を下げることにより実行してもよい。これは本方法の実行に好適な装置により自動的にすることができる。
【0015】
過度の加熱は請求項9に記載の方法を用いて避けることもできる。例えば、磁場を弱くしたり、2つのサブゾーンの空間的位置の変化がより粗いスキャングリッドで起こるようにしたりすることにより、空間的分解能を下げることができる。これはシステムパラメータを適当に変更することにより自動的にすることができる。使用する磁場を弱くし、時間的にゆっくり変化するパターンを使用する結果、干渉物質は過剰な加熱が無くなるくらい小さな作用しか持たなくなる。
【0016】
干渉物質の加熱だけでなく、他の検査で現れる好ましくない効果がある。外部磁場が作用するゾーンに干渉物質があるとき、例えば、うず電流または磁化の結果、干渉物質中またはその周囲に反対磁場が形成される。その反対磁場は外部磁場と重ね合わされ、全体として磁場を形成する。この全体としての磁場の磁力線は外部磁場の磁力線とは異なり、その結果として2つのサブゾーンの空間的位置は変化し、言い換えると制御不能にシフトまたは変位する。しかし、磁性粒子にねらったように作用するため、サブゾーンの位置は厳密に分かっていなければならない。2つのサブゾーンの空間内の現在位置の知識は必要であるが、このように限定され、または全く得られない。これにより正確性が損なわれ、治療や検査がうまくいかなくなる。このように干渉物質の検出により、好ましくない加熱に応じて対応できるだけでなく、ユーザをシステムの不正確性に向かわせることができる。
【0017】
請求項10に記載したように、本発明の目的は、リージョンオブアクション中の磁性粒子に作用する装置によっても達成できる。この装置は、
a)干渉物質を検出する手段と、
b)磁場が弱い第1のサブゾーンと磁場がより強い第2のサブゾーンを前記リージョンオブアクションに形成するように、磁場の強さの空間的パターンを有する磁場を生成する手段と、
c)前記リージョンオブアクション中の前記2つのサブゾーンの空間的位置を変更する手段と、
d)前記サブゾーンの空間的位置の変更により作用された、前記リージョンオブアクション中の前記磁化に応じた信号を、必要に応じて取得する手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項11、12、13に記載したこの装置の実施形態により、上に説明した方法を実行することができる。
【0019】
本発明の上記その他の態様を、以下に説明する実施形態を参照して明らかとし、詳しく説明する。
【0020】
本発明による方法を実施する装置を図4に示した。図において、参照数字1は検査対象を指し、この場合は患者である。その患者は患者プレゼンテーションテーブルに乗せられ、そのプレート2だけを示した。患者1とテーブルのプレート2の上方および下方には、コイルのペアが複数あり、そのリージョンオブアクションが検査ゾーンを決定している。第1のコイルペア3は同一構成の2つの巻き線3aと3bを有する。2つの巻き線3aと3bは患者の上方と下方に同一軸上に配置され、同じ大きさの電流を回転方向が逆向きに流す。これらの巻き線で生成される磁場には勾配がついており、その様子を図5に磁力線300として示した。コイルペアの垂直軸方向の磁場勾配はほぼ一定であり、この軸上の一点でゼロとなる。この無磁場の点から離れるに従って、空間内の3方向のいずれの方向であっても磁場は強くなる。無磁場点周辺のゾーン301(第1のサブゾーン)を点線で示したが、このゾーンでは磁場が弱いので、磁性粒子の磁化は飽和せず、このゾーン301の外側では飽和状態にある。ゾーン301の外側にあるゾーン302(第2のサブゾーン)では、磁性粒子の磁化は飽和状態にある。
【0021】
リージョンオブアクションにおいて、この勾配をつけた磁場に別の磁場を重畳すると、ゾーン301はこの重畳された磁場の方向にシフトし、シフトの大きさは重畳された磁場の強さとともに大きくなる。重畳された磁場が時間的に可変であれば、ゾーン301の位置は時間とともに空間内を移動する。さらに別に3つのコイルペア4、5、6があり、それぞれ巻き線4aと4b、5aと5b、および6aと6bを有しており、空間のどの方向であっても時間的に可変な磁場を生成することができる。これらのコイルペアの構成と機能、および操作の仕方については、文献D1およびD2を参照してほしい。
【0022】
最後に、図4にはさらに別のコイル7も示されており、その目的は検査ゾーンに生成された信号を検出することである。原理的に、磁場を生成するコイルペア3ないし6はいずれもこの目的には使用されない。受信コイルとして別のコイルを使用することには有利な点がある。信号対雑音比がよくなること(特に複数の受信コイルを使用したとき)と、そのコイルを他のコイルから切り離されているように構成およびスイッチできる点である。
【0023】
図6は、図4に示した装置のブロック図である。図示したコイルペア3(簡単のため図6に示したコイルペアでは添え字aとbを省略した)には可制御電流源31により直流電流が供給される。この直流電流は制御部10によりスイッチオン・オフも含めて制御可能である。制御部10はワークステーション12と協働する。このワークステーション12は、リージョンオブアクション中の磁性粒子の分布を表す画像を表示するためのモニター13を備えている。ユーザはキーボードその他の入力部14を介して入力することができる。
【0024】
コイルペア4、5、6はそれぞれ電流アンプ41、51、61から電流を供給される。増幅される電流Ix、Iy、Izの時間軸上の波形はそれぞれ波形ジェネレータ42、52、62によりプリセットされ、この電流Ix、Iy、Izにより所望の磁場を生成する。波形ジェネレータ42、52、62は制御部10により制御される。その制御部10は、検査や治療に必要な時間軸上の波形を計算し、波形ジェネレータにロードする。検査や治療の途中で、これらの信号は波形ジェネレータから読み出され、アンプ41、51、61に入力される。アンプ41、51、61はコイルペア4、5、6が必要とする電流を生成する。
【0025】
一般的に、勾配コイル構成3の中心位置からのゾーン301のシフトと勾配コイル構成3を流れる電流との間の関係は非線形である。また、一般的に、中心を通る直線に沿ってゾーン301をシフトさせるときは、3つのコイルすべてが磁場を生成する必要がある。時間軸上の電流波形がプリセットされている場合、この直線に沿ったシフトを可能とするには、制御部10が例えば好適なテーブルを用いて制御すればよい。それゆえ、リージョンオブアクション中のいかなる形状の経路に沿ってもゾーン301をシフトさせることができる。
【0026】
オブジェクトを検査等するときに使用するコイル7が受信した信号は、好適なフィルター71を介してアンプ72に入力される。アンプ72からの出力信号は、アナログツーデジタルコンバータ73によりデジタル化され、画像処理部74に入力される。その画像処理部74は、その信号から、およびその信号を受信した際にゾーン301が占有していた位置から磁性粒子の空間的分布を再構成する。コイル7により受信した信号からの再構成については、前述の文献D1に詳しく記載されている。再構成した信号から画像を再構成し、ワークステーション12のモニター13に表示する。
【0027】
検査等の代わりに、本装置を用いてリージョンオブアクションを局所的に加熱することもできる。画像化と同様に、コイルペア4、5、6を用いてゾーン301をシフトし、制御部10を用いて波形ジェネレータ42、52、62を適宜制御する。磁性粒子の空間的分布を決定(し、さらに画像データを再構成)する目的で、またはリージョンオブアクションの局所的に加熱する目的で、ゾーン301をシフトすることに関する詳細な説明は、文献D1およびD2を参照してほしい。
【0028】
図1は、本発明による方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。患者1は歯にアマルガムの詰め物をしており、また首の領域を検査されるものと仮定する。通常、検査中は患者1の顎の領域をリージョンオブアクション中またはそのすぐそばに位置づける。ということは、コイルペア4、5、6からの時間的に可変な磁場により歯の詰め物が影響を受けてしまう。検査を実行する場合、歯の詰め物にうず電流が生じ、その結果詰め物が加熱され、患者1の顎の領域に恒久的な損傷を与えてしまう。
【0029】
それ故、患者1を検査または治療する前に、ステップM1において、図4に示した装置に属する誘導手段のインダクタンスを決定する。誘導手段はコイル4aであると仮定するが、図示した他のどのコイルであってもよい。一般に、コイルの(測定された)インダクタンスは、幾何学的パラメータと、コイル内の空間にある物体またはコイル内の空間を占めている物質の特性に依存することが知られている。また、コイルに電気エネルギーを供給すると、コイルのインダクタンスの大きさによって電流または電圧の波形が影響を受けることも知られている。これらの相互関係については当業者の一般的知識なので、これ以上詳細には説明しない。コイル4aのインダクタンスは、例えば、そのコイルに方形波の電圧パルスを印加し、その結果流れる電流の時間的な波形を分析することにより決定することができる。インダクタンスを決定する他の代替的な方法として、図4に示した装置の他のコイル(例えばコイル4b)を用いて交流磁場を生成し、その磁場によりコイル4aに電流を誘起してもよい。誘起された電流を参照して、コイル4aの測定インダクタンスに関して情報を得ることができる。
【0030】
一般的に、コイルが発信回路に組み込まれている場合、回路のパラメータはコイルのインダクタンスに応じて変化することが知られている。この代替案は、ここで説明する装置で使用され、コイル4aは発信回路に接続され、そのインピーダンスは周波数の関数として決定することができる。発信回路の他の部品には何も変化無しにそのインピーダンスが変化したとき、コイルのインピーダンスが変化している。この方法は先行技術として知られているので、これ以上詳しくは説明しない。コイル4aの他、発信回路の他の部品はインピーダンスZMを測定する測定手段とともに波形ジェネレータ42に格納されている。干渉物質(interfering material)を検出可能とするため、インピーダンスの測定はワークステーション12を介してユーザ制御エレメント14により駆動される。ワークステーション12は、制御部10を介して波形ジェネレータ41に発信回路の周波数依存インピーダンスZMを自動的に決定させ、その値を制御部10に送信させる。この目的のため、制御部10は別の双方向リンクIMを介して波形ジェネレータ41と結合している。測定されたインピーダンスZMは制御部10によりワークステーション12に送られる。
【0031】
次のステップM2において、測定されたインピーダンスZMを基準インピーダンスZRと比較して、(複素)インピーダンス差ΔZを決定する。測定されたインピーダンスZMは一般に複素数値であり、同様に基準インピーダンスZRも通常は複素数値である。インピーダンス差ΔZの決定は、ワークステーション12の計算パワーに応じて多数またはすべての周波数で行うことができる。しかし、計算の負荷を低減するため、一般に変化が大きいと期待される選択された小数の周波数だけについてこの複素数値の比較を行ってもよい。この場合、リージョンオブアクションに何もオブジェクトや関連アイテムが無いときに測定した発信回路のインピーダンスが基準インピーダンスZRとなる。
【0032】
ステップM3において、決定されたインピーダンス差ΔZをインピーダンスの最大許容差ΔZMAXと比較する。このインピーダンスの最大許容差ΔZMAXは、干渉物質がリージョンオブアクションに導入されていないオブジェクトでも発信回路のインピーダンスが(最小量ではあっても)変化するということにより起こる。例えば患者の場合、複数の患者で測定し、その結果インピーダンスの差ΔZMAXの値を決定することができる。各測定の時にリージョンオブアクションに干渉物質および磁性粒子を有さない患者がいる。
【0033】
決定されたインピーダンス差ΔZが最大許容インピーダンス差ΔZMAXより小さいとき、干渉物質は検出されておらず、文献D1またはD2にあるように、ステップM4で引き続き治療または検査を無条件で行う。決定されたインピーダンス差ΔZが最大許容インピーダンス差ΔZMAXより大きいとき、ステップM5において、表示部13に適当な表示をすることにより装置のユーザにその旨通知する。次のステップM6において、期待される干渉物質やその周囲の発熱を減らすように、または無くすように、ワークステーション12によりシステムパラメータが変更される。この目的のため、例えば、制御部100に設定する磁場およびその時間的パターンの最大値を小さくする。制御部10は、プリセットされた磁場の強さの減少に合わせてコイルペア4ないし6を通る電流を減らすように制御するが、この制御は電流アンプ42、52、62と波形ジェネレータ41、51、61の電流レベルを下げたり時間的波形の変化を遅くしたりすることにより行う。また、コイルペア3による勾配磁場の強さも制御可能電流源31により下げられる。このように設定したシステムではオブジェクトの検査や治療の目的が達成できない場合は、この時点で検査や治療を中断して、干渉物質を取り除くことができる。このため、図1でステップM6とM4の間の矢印は点線で示されている。
【0034】
これとは代替的に、干渉物質を図4に示した装置からスクリーンオフ(screen off)する。患者1の首領域を検査する前述の場合、歯にアマルガムの詰め物があることを検出すると、装置のユーザは患者1の首領域をスクリーンオフしてもよい。この目的のため、磁性金属スクリーン板を、患者1の顎領域と、図4に示した装置のリージョンオブアクションとの間に置く。こうすることにより、コイル4、5、6による磁場の時間的変動の効果を減らし、加熱を許容範囲まで引き下げる。
【0035】
図2は本発明の第2の実施解体を示すフローチャートである。ここでもステップM10において干渉物質を検出する。この目的のため、文献D1とD2に記載されているようにゾーン301を空間内で移動させるが、空間的分解能は下げ、検出中に干渉物質が加熱されないようにする。空間的分解能の引き下げはいろいろな方法で実行することができる。例えば、
−コイルペア3からの勾配磁場を小さくし、その結果ゾーン301の空間的範囲は拡大する。
−ゾーン301が検査や治療の場合よりもリージョンオブアクションのかなり小さいエリアを通過するような時間的パターンをコイルペア4、5、6からの磁場が描く。これはスキャングリッドの拡大に相当する。
【0036】
また、ゾーン301が移動するスピードを下げてもよい。この目的のため、コイルペア4、5、6を流れる電流の周波数を下げる。
【0037】
最初、患者は図4の装置に入っており、磁性粒子は今のところ投与されていない。ゾーン301をリージョンオブアクション内に移動すると、特に強磁性物質が時間的に変動する磁場の作用を受け、その結果として磁性粒子の影響について文献D1とD2に記載した信号に類似した信号が生じる。この信号はコイル7で受信され、フィルター71を介してアンプ72に入力され、アナログツーデジタルコンバータ73によりデジタル化され、画像処理部74に入力される。ステップM11において画像処理部74は信号の強度|S|が所定の閾値|SMAX|より大きいかどうかをチェックする。この場合も、リージョンオブアクションに干渉(強磁性)物質を有しない患者がいる時であっても(小さくても)信号が受信されることを考慮して、閾値|SMAX|を導き出す。他のステップM4、M5、M6は図1のステップM10と同じである。
【0038】
図3は本発明の第3の実施形態を示すフローチャートである。この場合、患者にはあらかじめ磁性粒子を投与してある。干渉物質を検出するため、最初のステップM10は図2のステップM10と同じであり、これを実行する。
【0039】
この場合も、受信信号Sは前処理に続き画像処理部74に行く。画像処理部74はステップM12において信号Sを対応するスペクトル成分に分解して周波数分析を行う。次のステップM13で行われる比較のため、画像処理部74は基準スペクトルを供給する。この基準スペクトルは、リージョンオブアクションに置かれた、磁性粒子を投与されたが干渉物質を何ら有していない患者からの信号から導出される。必要な規格化の後、測定した信号の個々の周波数成分を基準スペクトルの個々の周波数成分から差し引く。干渉物質が無い時、すべての周波数成分についてその差はほぼゼロであり、ステップM4を実行することができる。干渉物質が有る時、少なくとも一部の周波数成分にはその干渉物質に由来する差が残る。この場合ステップM5とM6を実行する。ステップM4、M5、M6は図1と図2のステップに相当する。
【0040】
図3に示した方法を用いると、どんな干渉物質でも検出することができる。例えば、強磁性物質はそれ自体が信号成分を生成するという点で、図2に示した方法における振る舞いと同様の振る舞い方をする。うず電流が生じる干渉物質は間接的に検出することができる。うず電流により発生する逆方向の磁場により、測定信号中の個々のスペクトル成分が変化することにより、周辺の磁性粒子に作用する。この変化は基準スペクトルからの差異を取ることにより検出できることは前述の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第3の実施形態を示すフローチャートである。
【図4】本発明による方法を実施する装置を示す概略図である。
【図5】装置に含まれるコイルにより生成された磁力線のパターンを示す概略図である。
【図6】図4に示した装置を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リージョンオブアクションにおいて、オブジェクトに導入された磁性粒子に作用する方法であって、
a)前記オブジェクト中または前記オブジェクト上の干渉物質を検出するステップと、
b)磁場の強さの空間的パターンを有する磁場を生成し、磁場が弱い第1のサブゾーンと磁場がより強い第2のサブゾーンを前記リージョンオブアクションに形成するステップと、
c)前記粒子の磁化が局所的に変化するように、前記リージョンオブアクション中の前記2つのサブゾーンの空間的位置を変更するステップと、
d)必要に応じて、前記リージョンオブアクション中の前記磁化に応じた信号を取得するステップと、を有し、
前記磁化は前記位置の変更により作用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記オブジェクトへの前記磁性粒子の導入の前に、前記オブジェクトと誘導手段との間の距離の変化の結果である、前記誘導手段のインダクタンスの変化を測定することにより前記干渉物質を検出することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記誘導手段は、前記サブゾーンの空間的位置の変更において、および適用可能な場合には前記信号の取得において、前記磁場の生成に使用される手段の一つであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記検出にあたり、ステップb)ないしd)は最初低い空間的分解能および/または低いスピードで実行され、
前記取得された信号を分析し、少なくとも干渉物質の有無に関する情報を取得することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記検出をするまで前記磁気粒子は前記オブジェクトに導入されないことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記検出の前に前記磁性粒子が導入され、
前記分析において、前記取得した信号の干渉物質に由来する信号成分を調べることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、干渉物質は前記取得した信号のスペクトル組成から検出されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか一項に記載の方法であって、干渉物質があるとき、前記磁性粒子が作用される間、時間的変化を小さくした磁場を用い、前記2つのサブゾーンの空間的位置を変更することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか一項に記載の方法であって、干渉物質があるとき、前記磁性粒子の作用がある間に、空間分解能を下げてステップb)およびc)を実行することを特徴とする方法。
【請求項10】
リージョンオブアクション中の磁性粒子に作用する装置であって、
a)干渉物質を検出する手段と、
b)磁場が弱い第1のサブゾーンと磁場がより強い第2のサブゾーンを前記リージョンオブアクションに形成するように、磁場の強さの空間的パターンを有する磁場を生成する手段と、
c)前記リージョンオブアクション中の前記2つのサブゾーンの空間的位置を変更する手段と、
d)前記サブゾーンの空間的位置の変更により作用された、前記リージョンオブアクション中の前記磁化に応じた信号を、必要に応じて取得する手段と、を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、前記サブゾーンの空間的位置の変化および/または前記信号の取得のために、前記磁場の生成に使用される、少なくとも1つの誘導手段のインダクタンスを測定する測定手段を有することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10に記載の装置であって、少なくとも干渉物質のあるなしに関する情報を取得するための分析部を有する装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記分析部は、前記取得した信号の磁性粒子および干渉物質により発生した信号成分を調べるものであることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−524081(P2006−524081A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506464(P2006−506464)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001119
【国際公開番号】WO2004/091392
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】