説明

磁性素子を有する情報媒体および情報検知装置

【課題】 情報媒体中の各磁性素子の情報を順次検知することにより、確実かつ容易に多ビット情報を検知することができる磁性素子を有する情報媒体および情報検知装置を提供する。
【解決手段】 情報媒体1は、1つ以上の磁性素子と前記磁性素子を所定方向に間隔をもって配置した基材とを有する磁性部材2と、磁性部材2を配置する本体部材3とを備える。情報媒体1は、磁性部材2に形成された1つ以上の磁性素子が順次励磁コイル5および検知コイル6の中を通過するように移動にされる。これにより、磁性部材2の磁性素子は、励磁コイル5により励磁され、この励磁された磁性素子の磁化反転時の出力を検知コイル6により読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性素子を有する情報媒体および情報検知装置に係り、特に1つ以上の磁性素子が所定方向に間隔をもって配置された情報媒体および情報検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有価証券等の不正複写による偽造防止などのセキュリティ上の問題を解決するため各種の方法や装置が提案されている。例えば、特定のパターンや赤外線吸収剤を含有する特殊インク等が潜像された特殊用紙を用いて有価証券等を作成して有価証券等の偽造防止を図る方法がある。この方法は、特殊用紙で作成された有価証券等がスキャナや複写機等により複写された場合、特殊用紙に潜像された特定のパターン、特殊インク等が目視可能な状態で印刷され、複写物であることが示されるように構成されている。しかし、このような方法は、特殊用紙に潜像された特定のパターンや特殊インク等を検出するために特殊用紙に作成された有価証券等の画像をスキャンもしくは所定方向から光を照射する等の動作が必要である。
【0003】
また、物品に内蔵された磁気素子の磁化反転磁界の強度を測定することにより物品を識別する方法が提案されている。これは、模倣することが困難な信号を発する磁気素子をICカードなどの小型携帯端末に組み込み、それを使用する際に交番磁界を印加することで問い合わせをし、小型携帯端末に組み込まれた磁気素子が急峻な磁化反転により発した固有の信号を検知することで、小型携帯端末を同定してセキュリティを確保するものである。例えば、特許文献1には、磁気を用いて非接触で識別することができる非接触型ICカード等の識別機能を有する物品およびその識別方法が開示されている。また、特許文献2には、物品に取り付けてその物品の種類や数量を識別する磁気マーカーを励磁する方法とその装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−306275号公報
【特許文献2】特開平5−126963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、複数の磁性素子を配置した情報媒体を励磁検知コイルの磁界発生領域に置き、各磁性素子の配置方向や保磁力等による磁化反転パルス特性(幅、発生間隔)の違いに基づいて多ビット検知を行っている。この方法では、磁性素子が付加された情報媒体を検知装置内に配置し、同時に各磁性素子の磁化反転パルス特性の違いを検知するので、ノイズや情報媒体の歪み等の特性劣化により正しく検知できない場合がある。そのため多ビット情報を正確に検知する方法が望まれている。
【0005】
従って本発明の目的は、情報媒体中の各磁性素子の情報を順次検知することにより、確実かつ容易に多ビット情報を検知することができる磁性素子を有する情報媒体および情報検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、1つ以上の磁性素子と前記磁性素子を所定方向に間隔をもって配置した基材とを有する磁性部材と、前記磁性部材を配置する本体部材とを備えた情報媒体により、達成される。ここで、前記1つ以上の磁性素子を第1の保磁力を有する1つ以上の第1の磁性素子と、前記第1の保磁力より大きな第2の保磁力を有する1つ以上の第2の磁性素子から構成することができる。この場合、前記第1の磁性素子と前記第2の磁性素子は前記基材のほぼ同じ位置にそれぞれ配置することができる。
【0007】
前記1つ以上の磁性素子は、前記基材に形成された磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を取り除いて作製されたもの、または前記基材に形成された磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を対応する前記基材部分を含めて取り除いて作製されたものとすることができる。また、前記1つ以上の第1の磁性素子は、前記基材上の1つ以上の第2の磁性素子上に形成された前記第1の磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を取り除いて作製されたもの、または前記基材上の1つ以上の第2の磁性素子上に形成された前記第1の磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を対応する基材部分を含めて取り除いて作製されたものとすることができる。
【0008】
前記本体部材は紙とすることができる。この場合、前記磁性部材は前記紙に漉き込むことができる。また、前記本体部材は、プラスチックのシートまたはラベルとすることができる。
【0009】
本発明に係る情報検知装置は、前記情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを備えるものである。ここで相対的に移動であるから前記情報媒体および前記コイルの少なくとも一方が移動すれば足りる。以下同様である。また、本発明に係る情報検知装置は、前記情報媒体に配置された1つ以上の第2の磁性素子を任意に磁化または消磁する情報書換手段と、前記情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の第1の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを備えるものである。さらに、本発明に係る情報書換検知装置は、前記情報媒体に配置された1つ以上の第2の磁性素子を任意に磁化または消磁する情報書換装置と、前記情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の第1の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを有する情報検知装置とを備えるものである。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、原稿読取り機および露光器を備えて前記情報媒体に画像を形成するものであって、前記情報媒体に配置された1つ以上の第2の磁性素子を任意に磁化または消磁する情報書換装置と、前記情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の第1の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを有する情報検知装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、情報媒体中の各磁性素子の情報を順次検知することにより、確実かつ容易に多ビット情報を検知することができる磁性素子を有する情報媒体および情報検知装置を得ることができる。本発明では、例えばPETフィルム等の薄板状の基材を用い、この基材に磁性素子を配置した磁性部材(スレッド)を用紙等の情報媒体に付与する(例えば漉き込む)。これにより情報媒体中に1つ又は複数の磁性素子を容易に、精度良く配置することが可能となり、ビット情報又は多ビット情報が形成された情報媒体を安価かつ容易に実現することができる。更に、2種類の磁性素子を形成したスレッドを情報媒体に付与することで、書き換え可能で印刷(プリント)または複写に用いることができる情報媒体を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る情報媒体およびその情報を検知する情報検知装置の一例を示す概略構成図である。図示のように、情報媒体1は、1つ又は複数の磁性素子と前記磁性素子を所定方向に間隔をもって配置した基材とを有する磁性部材2と、磁性部材2を配置する本体部材3とを備える。磁性部材2は本例ではスレッド状に形成されているがこれに限定されない。また、本体部材3は例えば紙とすることができるがこれに限定されず、プラスチックのシートやラベルなどのようなものであってもよい。本体部材3が紙の場合、磁性部材2は紙に漉き込むことができる。情報検知装置4は、励磁コイル5と検知コイル6とを備える。励磁コイル5には、パソコン(PC)等の情報処理装置11からの信号に基づいて励磁回路12により電流が付与される。また、検知コイル6からの出力は検知回路13により検出され、情報処理装置11に伝達される。
【0013】
情報の検知は次のようにして行われる。まず、情報媒体1は、磁性部材2に形成された1つ以上の磁性素子が順次励磁コイル5および検知コイル6の中を通過するように、図の矢印方向に移動にされる。これにより、磁性部材2の磁性素子は、励磁コイル5により励磁され、この励磁された磁性素子の磁化反転時の出力(例えば大バルクハウゼン効果によるパルス出力)を検知コイルにより読み取る。
【0014】
検知動作時、情報処理装置11は、励磁回路12と検知回路13とのタイミング制御を行う。例えば、励磁回路12が周波数1kHzの電流を励磁コイル5に流す制御を行うことにより、周波数1kHzの交番磁界が励磁コイル5の形状に対応した所定の空間に発生する。情報処理装置11は、励磁回路12で生成された周波数1kHzの電流の立ち上がり方向で電流値が0になる時間、すなわち電流の向きが負から正へ逆転する時の時間を検出し、この検出した時間に交番磁界の一周期に一回のタイミングで検知回路13へ基準信号を出力する。検知回路13は、この基準信号のタイミングに基づき検知コイル6で検出された検出信号を入力する。検出信号は図示しない記憶装置に格納することができる。情報処理装置11は、検出信号から交番磁界成分を除去し、除去後の信号のうちの正の信号成分を増幅し、ノイズ成分を除去して各磁性素子の磁化反転時の磁気パルスに対応したパルス信号を検出する。検出されたパルス信号は、「1」または「0」の値で表現された多ビット情報に変換される。
【0015】
このように、情報媒体1が励磁コイル5および検知コイル6の中を順次移動することで、磁性部材2に形成された1つ以上の磁性素子から出力が順次検知される。各磁性素子を1ビットに対応させることにより情報媒体1から容易かつ確実に多ビット情報の読取りを実現することができる。
本発明によれば、1つ又は複数の磁性素子を基材に形成した磁性部材を紙等からなる情報媒体に付加(漉き込み等)することで、情報媒体にビット情報特に多ビット情報を容易かつ確実に形成可能とすることができる。このようにして構成した情報媒体は例えばセキュリティ用紙として不正複写による偽造防止とに役立たせることができる。この情報媒体の構造等について以下詳述する。
【0016】
図2は本発明に係る情報媒体の一実施例を示す図で、(a)は情報媒体の平面図、(b)は(a)の一部拡大図である。本実施例では、情報媒体20は、1つ以上の磁性素子21と磁性素子21を所定方向に間隔をもって配置した基材22とを有する磁性部材23と、磁性部材23を配置する本体部材としての用紙24とを備える。磁性部材23はスレッド状に形成されているので、以下スレッド23という。スレッド23は、図2(b)に示すように、基材22上に1つ以上の磁性素子21が所定方向に間隔Dをもって配置されている。基材22としては、例えば1〜10μm厚程度のPETフィルムを用いることができる。この基材22に、例えばFe−Co系のアモルファス材からなるワイヤー状の軟磁性材料の磁性素子21を間隔Dで配置する。磁性素子21は、例えば、径が20μm、長さが10〜30mm程度、保磁力が10Oe未満、配置間隔Dが例えば10〜30mm程度である。このように構成したスレッド23を、例えば用紙22の作製時に用紙中に漉き込むことによりセキュリティ用紙を作製する。これにより用紙中に1つ又は複数の磁性素子を容易かつ精度良く配置することが可能となり、多ビット情報が形成された用紙を安価に容易に実現することができる。
【0017】
図3は、本発明に係る情報媒体の他の実施例を示す図で、(a)は情報媒体の平面図、(b)は(a)の一部拡大図である。本実施例が図2の実施例と異なる点は、保磁力の異なる2種類の1つ以上の磁性素子を備える点である。すなわち、本実施例では、情報媒体30は、2種類の1つ以上の磁性素子31a,31bと磁性素子31a,31bを所定方向に間隔をもって配置した基材32とを有する磁性部材33と、磁性部材33を配置する本体部材としての用紙34とを備える。磁性素子31aは被検出素子であり例えばFe−Co系のアモルファス材を、また磁性素子31bはバイアス磁界の付与素子であり例えばフェライト系、酸化鉄等を用いることができる。磁性部材33はスレッド状に形成されているので、以下スレッド33という。スレッド33は、図3(b)に示すように、基材32上に1つ以上の磁性素子31a,31bが所定方向に間隔Dをもって配置されている。2種類の磁性素子31a,31bは互いに保磁力が異なり、例えば磁性素子31aの保磁力は10Oe未満(例えば1〜2Oe)、磁性素子31bの保磁力は磁性素子31aのそれより大きく10Oe以上である。磁性素子31a,31bは、基材32中のほぼ同じ位置に配置され、配置間隔はD(10〜30mm程度)とされる。この2種類の磁性素子31a,31bと基材32からなるスレッド33を、用紙34の作製時に用紙中に配置(例えば、漉き込み)することで、書き換え可能なセキュリティ用紙を容易に実現することができる。
【0018】
図4(a)〜(e)は、図3に示す実施例に係る情報媒体の情報書き換え方法の一例を示す図である。本例では、情報書換装置40が設けられる。情報書換装置40は情報検知装置から独立して設けることもできるし、情報検知装置内に設けることもできる。情報書換装置40は電磁石(磁気ヘッド)41を有する。磁気ヘッド41は励磁回路43に接続される。励磁回路43は情報処理装置42からの信号に基づいて磁気ヘッド41に電流を付与する。磁気ヘッド41への電流付与のタイミングは、情報媒体(用紙)の移動速度、用紙に付加された各磁性素子の間隔等に応じて、情報処理装置42により制御される。
【0019】
情報を記録するときは、図4(a)に示すように、磁気ヘッド41を用紙34中のスレッド33部分に配置し、スレッド33がこの磁気ヘッド41の近傍を通過するように用紙34あるいは磁気ヘッド41を移動する。ここでは、磁性素子31a,31bが磁気ヘッド41を通過するときに、磁気ヘッド41から直流磁場を与え磁性素子31bを磁化する場合と、磁気ヘッドから交流磁場を与え磁性素子31bの磁化を消磁する場合の2通りを選択し、情報の記録を行う。
【0020】
このようにして情報が記録されたスレッド33の検知出力について、図4(b)〜(e)で説明する。図4(b)は、磁気ヘッド41で交流磁場を与え、磁性素子31bを消磁した例を示す。この場合、スレッド33を励磁検知コイル(励磁コイルおよび検知コイル)44の近傍を通過させることにより、全ての磁性素子31aから、パルス出力を検知することができる。このバイアス磁界0(未磁化)の検知信号45は図4(c)に示すようになる。また図4(d)は、磁気ヘッド41により、磁性素子31bを直流磁場を与え磁化した場合(31b−1)と、交流磁場を与え消磁した場合(31b−2)が混在している例を示す。磁化された磁性素子31b−1と同じ位置に配置された磁性素子31aは、磁性素子31bの保磁力(10Oe以上)により、常に一定の磁場が磁性素子31aにかかり、励磁検知コイル44を通過時でも、磁性素子31aによる出力を検知することができない。一方消磁された磁性素子31b−2と同じ位置に配置された磁性素子31aは、励磁検知コイル44を通過時に、磁界変化により出力を検知することができる。この一部バイアス磁界が動作しているときの検知信号45は図4(e)に示すようになる。このように、記録すべき情報に応じて、磁気ヘッドにより磁性素子31bを磁化あるいは消磁することにより、自由に情報の書き換えが可能となる。
【0021】
図5(a)〜(d)は、磁性部材(スレッド)の作製方法の一例を示す図である。図2の実施例のスレッド23は例えば次のようにして作製される。図5(a)に示すように、基材22に、1本の磁性素子21用の磁性ワイヤー51を形成する。その後、磁性ワイヤー51の一部53を取り除き1つ以上の磁性素子21を作製する。または、図5(b)に示すように、基材22に、1本の磁性素子21用の磁性ワイヤー51を形成する。その後、磁性ワイヤー51の一部53を対応する基材部分(図中の破線部分)を含めて取り除き、1つ以上の磁性素子21を作製する。これによりスレッド23を作製することができる。
【0022】
また、図3の実施例のスレッド33は例えば次のようにして作製される。図5(c)に示すように、蒸着、スパッタあるいは貼り付け等により1つ以上の磁性素子31bが形成された基材32に、1本の磁性素子31a用の磁性ワイヤー52を形成する。その後、磁性ワイヤー52の一部53を取り除き1つ以上の磁性素子31aを作製する。または、図5(d)に示すように、上記と同様にして1つ以上の磁性素子31bが形成された基材32に、1本の磁性素子31a用の磁性ワイヤー52を形成する。その後、磁性ワイヤー52の一部53を対応する基材部分(図中の破線部分)を含めて取り除き、1つ以上の磁性素子31aを作製する。これによりスレッド33を作製することができる。
【0023】
これ以外でも、例えば、基材32にあらかじめ磁性素子31bを蒸着、スパッタあるいは貼り付けにより、ある間隔で形成し、この磁性素子31bが形成された領域に磁性素子31aを順次配置(接着等による貼りつけ)することで用紙に漉き込むべきスレッドを形成することができる。あるいは、磁性素子31bを形成した基材32と、磁性素子31aを形成した基材32を張り合わせることでも書き換え可能なスレッドを容易に確実に形成することができる。
【0024】
図6は、本発明に係る情報検知装置を組み込んだ画像形成装置(複写機)の一例を示す図である。本例では、磁気ヘッドによる情報書き換えは本発明に係る情報媒体(以下、専用紙という)が給紙トレイから排出された直後に行われ、情報検知は用紙排出トレイ出口近傍で行われる。
【0025】
図6に示すように、複写機60は、プラテンガラス上にプラテンカバーで押えられた原稿63をスキャンして原稿63から画情報を読み取り、画像処理して印刷出力用の出力画像データを出力する原稿読取り機64と、給紙トレイ65から給紙された専用紙66上に原稿読取り機64から出力された出力画像データに対応した画情報を印刷する画像形成部67(図中の一点鎖線で囲まれた部分)と、画情報が印刷された専用紙66から専用紙固有の情報を検出する情報検知装置68とを備える。原稿読取り機64は例えば情報処理装置を備え、画像形成部67および情報検知装置68に接続されており、複写機60全体を統括制御する。
【0026】
画像形成部67は、原稿読取り機64から入力された出力画像データに応じてレーザ光を感光ドラム69へ出射し、感光ドラム69の走査露光制御を行う露光装置70と、露光装置70の走査露光制御により感光ドラム69表面上に形成された潜像を各色のトナーで現像してトナー画像を形成する現像器71と、現像器71により感光ドラム69上に形成されたトナー画像を転写する転写ドラム72と、転写ドラム72上に形成されたトナー画像を給紙トレイ65から給紙された専用紙66上に定着させる定着器73とを備える。
【0027】
給紙トレイ65に蓄積収納されている専用紙66には、専用紙66に特有の情報が付与されており、この専用紙66の情報と専用紙66に印刷された画情報とを対応付けて文書管理する。専用紙66の情報は、予め情報に対応付けされた少なくとも一種類以上の1つ以上の磁性素子が専用紙66に形成付与されて表現されており、画情報が印刷された専用紙66が排出トレイ74に排出される途上で情報検知装置68により検知される。具体的には、排出トレイ74と画像形成部67との間に配置された励磁コイル75および検知コイル76内を専用紙66が移動することで、専用紙66に配置された1つ以上の磁性素子が励磁コイル75により順次励磁され、この励磁により1つ以上の磁性素子から順次発生される信号が検知コイル76により検出され、検出結果に基づき情報検知装置68が専用紙66に付与された1つ又は複数の磁性素子に対応付けられた情報を検知するように構成されている。
【0028】
さらに、給紙トレイ65の直後に、磁気ヘッド77を配置し、給紙時に磁気ヘッド77により専用紙66の情報を書き換えることができる。磁気ヘッド77は、情報書換装置78に接続されている。情報書換装置78は原稿読取り機64により制御されることができ、、また情報検知装置68に組み込むこともできる。
【0029】
このように構成された複写機60が原稿63の画情報を複写印刷し、画情報と画情報が印刷された専用紙66とを対応付けて文書管理するまでの処理動作について以下簡単に説明する。まず、ユーザが複写機60のプラテンカバーを開き、複写したい原稿63をプラテンガラス上に配置後、プラテンカバーを閉じ、図示しない複写開始ボタンを押下すると、原稿読取り機64がプラテンガラス上の原稿63をスキャンして原稿63から画情報を読み取る。原稿63から読み取られた画情報は、画像処理されて画像形成部67の露光装置70へ出力される。露光装置70は、原稿読取り機64で画像処理されて出力された出力画像データに基づきレーザ光を感光ドラム69上に出射して走査露光する。
【0030】
感光ドラム69は、図示しない駆動手段により図中の矢印方向に沿って所定の速度で回転しており、感光ドラム69の表面が一様に帯電された後、露光装置70で制御されたレーザ光の走査露光により感光ドラム69の表面上に出力画像データに対応した静電潜像が形成され、静電潜像に対応したそれぞれの色のトナーが現像器71から供給されトナー像が形成される。なお、現像器71には、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等の現像剤が導入されている。感光ドラム69の表面上に形成されたトナー像は、給紙トレイ65から給紙されて転写ドラム72上に保持された専用紙66へ静電力によって転写され、専用紙66とともに定着器73へ搬送されて定着器73により専用紙66上へ熱定着される。この場合、必要に応じて情報書換装置78からの信号に基づいて磁気ヘッド77により専用紙66の情報を書き換えることができる。
【0031】
原稿63の画情報が熱定着されて印刷された専用紙66は、排出トレイ74へ排出される途上で情報検知装置68に接続された励磁コイル75と検知コイル76のそれぞれが形成する空間内を移動し、その際に専用紙66に形成された情報に対応付けされた1つ以上の磁性素子が励磁コイル75から発せられる所定の交番磁界を受けて磁化され、磁化反転時に発する急峻な磁気パルスが検知コイル76を介して検出され、検出結果に基づき専用紙66の識別情報が情報検知装置68により検出される。
【0032】
情報検知装置68によって検出された情報は、原稿読取り機64へ出力され、原稿読取り機64が情報検知装置68で読み取られた専用紙66の情報と、原稿読取り機64で読み取られた原稿63の画情報とを対応付けて図示しないデータベースへ記憶管理し、文書管理を行う。このように動作する複写機60を用いることにより、原稿63の画情報と画情報が印刷された専用紙66の情報とを対応付けて文書管理することができる。また、文書管理された原稿を複写機60で複写する際、複写機60が原稿に付与された情報に基づき原稿が複写可または複写不可のいずれかを判別し、複写不可と判別した場合は、複写禁止動作を行うような構成とすることで、不用意な複写等による機密情報の漏洩を防止することが可能となる。
【0033】
図7は、本発明に係る情報検知装置を組み込んだ画像形成装置(複写機)の他の例を示す図である。本例では、磁気ヘッドによる情報書き換えおよび情報検知はオートドキュメントフィーダー(ADF)の用紙通過経路内で行われる。その他は図6の例と同様であるので、以下異なる点について説明する。図7に示すように、複写機80は、ADF81を備える。ADF81の用紙通過経路内には、情報書換装置78に接続された磁気ヘッド77と、その下流には情報検知装置68に接続された励磁コイル75および検知コイル76が配置されている。本例では、専用紙82が複写原稿としてADF81を用いて移送され、必要に応じて磁気ヘッド77により情報の書き換えが行われ、また原稿読取り機64により画情報が読取られ、さらに励磁コイル75および検知コイル76により専用紙82の情報が検出される。検出された情報は情報検知装置68を介して原稿読取り機64へ出力される。これにより原稿読取り機64は複写可または複写不可のいずれかを判別し、複写可と判別した場合は用紙83に専用紙82の画情報を印刷し、複写不可と判別した場合は、印刷処理動作を禁止する制御を行う。これにより、不用意な複写等による機密情報の漏洩を防止することが可能となる。
【0034】
このように、本発明では、例えば有価証券等の不正複写による偽造防止、機密情報や個人情報等の情報漏洩防止あるいは文書管理等のために、固有の情報を有する情報媒体を形成し、これを例えば印刷機や複写機等に適用する。情報を印刷または複写する用紙としては、用紙固有の情報が付与された専用紙が用いられ、専用紙の情報と、専用紙に印刷または複写された情報とを対応付けて管理することで、文書管理が可能な複写機または印刷機等として用いられる。また、管理された機密情報や有価証券等が本発明に係る情報検知装置が装備された複写機等で複写されようとした場合は、機密情報等が印刷された専用紙または有価証券等に付与された情報を情報検知装置が検出し、この検出した情報に基づき複写動作禁止等の制御を行うことで機密情報や有価証券等の不正複写を防止し情報漏洩防止、機密保持、偽造防止等を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は磁性素子を有する情報媒体および情報検知装置に係り、特に1つ以上の磁性素子が所定方向に間隔をもって配置された情報媒体および情報検知装置に関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る情報媒体およびその情報を検知する情報検知装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る情報媒体の一実施例を示す図で、(a)は情報媒体の平面図、(b)は(a)の一部拡大図である。
【図3】本発明に係る情報媒体の他の実施例を示す図で、(a)は情報媒体の平面図、(b)は(a)の一部拡大図である。
【図4】(a)〜(e)は図3に示す実施例に係る情報媒体の情報書き換え方法の一例を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は磁性部材(スレッド)の作製方法の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る情報検知装置を組み込んだ画像形成装置(複写機)の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る情報検知装置を組み込んだ画像形成装置(複写機)の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 情報媒体
2 磁性部材
3 本体部材
4 情報検知装置
5 励磁コイル
6 検知コイル
12 励磁回路
13 検知回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の磁性素子と前記磁性素子を所定方向に間隔をもって配置した基材とを有する磁性部材と、前記磁性部材を配置する本体部材とを備えたことを特徴とする情報媒体。
【請求項2】
前記1つ以上の磁性素子が第1の保磁力を有する1つ以上の第1の磁性素子と、前記第1の保磁力より大きな第2の保磁力を有する1つ以上の第2の磁性素子からなることを特徴とする請求項1記載の情報媒体。
【請求項3】
前記第1の磁性素子と、前記第2の磁性素子が前記基材のほぼ同じ位置にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項2記載の情報媒体。
【請求項4】
前記1つ以上の磁性素子が、前記基材に形成された磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を取り除いて作製されたものであることを特徴とする請求項1記載の情報媒体。
【請求項5】
前記1つ以上の磁性素子が、前記基材に形成された磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を対応する前記基材部分を含めて取り除いて作製されたものであることを特徴とする請求項1記載の情報媒体。
【請求項6】
前記1つ以上の第1の磁性素子が、前記基材上の1つ以上の第2の磁性素子上に形成された前記第1の磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を取り除いて作製されたものであることを特徴とする請求項2記載の情報媒体。
【請求項7】
前記1つ以上の第1の磁性素子が、前記基材上の1つ以上の第2の磁性素子上に形成された前記第1の磁性素子用の磁性ワイヤーの一部を対応する基材部分を含めて取り除いて作製されたものであることを特徴とする請求項2記載の情報媒体。
【請求項8】
前記本体部材が紙であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の情報媒体。
【請求項9】
前記磁性部材が前記紙に漉き込まれていることを特徴とする請求項8記載の情報媒体。
【請求項10】
前記本体部材がプラスチックのシートまたはラベルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の情報媒体。
【請求項11】
請求項1に記載の情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを備えたことを特徴とする情報検知装置。
【請求項12】
請求項2に記載の情報媒体に配置された1つ以上の第2の磁性素子を任意に磁化または消磁する情報書換手段と、前記情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の第1の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを備えたことを特徴とする情報検知装置。
【請求項13】
請求項2に記載の情報媒体に配置された1つ以上の第2の磁性素子を任意に磁化または消磁する情報書換装置と、前記情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の第1の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを有する情報検知装置とを備えたことを特徴とする情報書換検知装置。
【請求項14】
原稿読取り機および露光器を備えて請求項2に記載の情報媒体に画像を形成する画像形成装置であって、前記情報媒体に配置された1つ以上の第2の磁性素子を任意に磁化または消磁する情報書換装置と、前記情報媒体に対して相対的に移動して前記情報媒体に配置された1つ以上の第1の磁性素子を順次励磁する励磁コイルおよび前記励磁により発生した信号を検出する検知コイルとを有する情報検知装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−91988(P2006−91988A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273458(P2004−273458)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】