磁性金属酸化物で被覆されたポリマー性ナノ粒子及びその使用
本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなるナノ粒子を提供し、ここで、少なくとも1種の活性薬剤が、該ポリマーに共有結合で結合し、前記ナノ粒子は、磁性金属酸化物の外表面に物理的に又は共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤を任意選択でさらに含むことができる。これらのナノ粒子を含有する医薬組成物は、とりわけ、腫瘍及び炎症の検出及び治療のために使用される可能性がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマー(該ポリマーには少なくとも1種の活性薬剤が共有結合で結合している)からなるナノ粒子、並びにその医薬組成物及び使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、大きさが数ナノメートルから0.1μmまでの範囲の球状粒子である。粒度分布の狭いナノスケールのポリマー性粒子は、一般に、制御された沈殿法又は不均一重合技術によって、例えば、最適な乳化又は逆乳化重合法によって形成される。固体材料の特性は、それらの大きさをナノメートルサイズの領域にまで縮小すると、劇的な変化を受ける。粒子が小さいほど、それらを構成する原子の部分がより大きく表面に配置されることに留意することが重要である。特に約20nm未満の大きさのナノ粒子は、大きな材料では観察されない表面及び界面現象、例えば、より低い融点及び沸点、より低い焼結温度及び低減された流動抵抗を顕著に示す。
【0003】
それらの球状形状及び大きな表面積を考慮すると、ナノスケールの粒子は、複合材料、触媒、三次元構造体及び光工学的用途などの材料科学における多様な諸問題に対して巧妙な解決策を提供する可能性があり、さらには、特異的な細胞標識及び分離、細胞増殖、アフィニティークロマトグラフィー、診断、血液灌流による特異的血液浄化、薬物送達及び制御放出などの生物医学的応用で使用できる(Bockstallerら、2003年;Hergtら、2004年;Margelら、1999年)。それぞれの応用は、種々の最適な物理的及び化学的特性を有するポリマー性ナノ粒子を必要とする。種々の表面化学、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、ピリジン、アミド、アルデヒド及びフェニルクロロメチルなどの多様な表面官能基を有する多種類のナノスケール粒子の合成及び使用が、既に、発表されている(Margelら、1999年)。このようなナノ粒子は、多様な工業的及び医学的応用、例えば、酵素固定化、オリゴヌクレオチド及びペプチド合成、薬物送達、特異的な細胞標識及び分離、医療用造影、生物学的接着剤、及び難燃性ポリマーに向けて設計されている。(Bunkerら、1994年;Szymonifka及びChapman、1995年;Margelら、1999年;国際公開第2004/045494号;Galperinら、2007年)。
【0004】
特に興味があるのは、望ましくない化合物から磁界によって粒子及び/又はその複合体を分離するのに通常使用される磁気特性をもつ粒子である。それらの磁気特性のため、これらの粒子は、磁気記録、磁気シーリング、電磁遮蔽及び生物医学的応用などのいくつかのさらなる重要な応用を有する。磁性酸化鉄、すなわちマグネタイト及びマグヘマイトのナノ粒子は、生物医学的応用、例えば、磁気温熱療法、磁気ドラッグターゲッティング、磁気細胞分離のために、及びMRI造影剤として研究されてきた主要な粒子である(Lacosteら、1993年;Green−Sadanら、2005年;Leemputten及びHorisberger、1974年;Hergtら、2004年)。磁性酸化鉄ナノ粒子は、非毒性で生分解性があり、MRI造影剤としての臨床的使用が既に承認されている。これらのナノ粒子は、通常、化学量論的濃度の第一鉄及び第二鉄イオン、並びにデキストランなどのポリマー性安定剤を含む水性溶液に、塩基、例えば、NaOH又はアンモニアを、pHが塩基性(通常は8.0より高く)となるまで添加することによって調製される。得られた被覆磁性酸化鉄ナノ粒子を、次いで、種々の方法によって、例えば、磁気カラム又は透析によって洗浄する。有効な酸化鉄磁性ナノ粒子を合成するための広範な努力が、この数年実施されてきたが、これらのナノ粒子の殆どは、インビボでの医学的応用で有毒であると考えられる広い粒度分布、鉄イオンの溶脱、及び凝集進行に向かう不安定性などの重大な欠点をもつ。
【0005】
本明細書中に完全に開示されているように参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第99/062079号及び同一出願人の対応する欧州特許第1088315号B1は、鉄イオンとのキレートを形成するポリマー、例えば、水性溶液中に溶解されたゼラチン上への酸化鉄の制御された核形成、それに続く、該ゼラチン/酸化鉄核上への酸化鉄膜の薄層の段階的成長によって形成される、新規な均一磁性ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を開示している。これらの磁性ナノ粒子は、極めて狭い粒度分布で、且つ約10nmから100nmまで範囲の大きさで調製することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなり、少なくとも1種の活性薬剤が、該ポリマーに共有結合で結合している、ナノ粒子を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、上で規定したようなナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物、並びに各種使用方法を提供する。
【0008】
本発明の医薬組成物は、とりわけ、腫瘍を検出するのに;腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、又は患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに;腫瘍の増殖を低減又は阻害し、さらにその大きさを監視するのに;且つ候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答を評価するのに使用される可能性がある。加えて、これらの組成物は、炎症部位の検出及び前記炎症の治療に、並びに2型糖尿病、肥満、及び食欲不振の治療に使用される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
さらなる態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなり、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤が、該磁性金属酸化物の外表面に結合している、ナノ粒子を提供する。本発明は、さらに、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、これらのナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物、並びに各種使用方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を4回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である。
【図1B】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を5回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である。
【図1C】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を6回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である
【図1D】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を7回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である。
【図2】例1に記載のように調製され、且つ水に分散されたゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子の直径のヒストグラムを示す図である。
【図3A】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の高分解能TEM(HTEM)を示す図である。
【図3B】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の電子線回折(ED)画像を示す図である。
【図4】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンを示す図である。
【図5】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のメスバウアースペクトルを示す図である。
【図6】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子について得られた室温での磁化(VSM)ループを示す図である。
【図7】例2に記載のような、蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の調製の核形成ステップを図解した図である。
【図8】10℃での35日間の、遊離の腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)の安定性を、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子に複合されたTRAIL(NP−TRAIL)と比較して示した図である。
【図9A】ヒトA172神経膠腫細胞における、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)、遊離TRAIL(100ng/mL)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng/mL)によって誘導されるアポトーシスを示す図である。
【図9B】原発性HF2020腫瘍から確立された神経膠腫球における、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)、遊離TRAIL(100ng/mL)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng/mL)によって誘導されるアポトーシスを示す図である。
【図10】ヒト神経膠腫標本HF1254、HF1308及びHF2020から確立された神経膠腫球状体のアポトーシスに対する遊離TRAIL及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の効果を示す図である。球状体を、24穴プレート中に播種し、培地(Control)、TRAIL(100ng/mL)、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng/mL)で処理した。細胞死は、処理の24時間後にLDHアッセイを使用して判定した。結果は、2つの異なる実験における三つ組の平均±SEである。
【図11】神経膠腫細胞U87、A172及びU251に対する、並びに神経膠腫細胞HF1308、HF1254及びHF1316の一次培養に対する遊離TRAIL(100ng/mL)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng TRAIL/mL)の細胞毒性効果を示す図である。ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独又はPBS(Control)は、対照として役立った。細胞死は、処理の24時間後にFACS分析によって判定した。
【図12】A172細胞に対する非蛍光の又は蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子に複合されたTRAILの細胞毒性効果を示す図である。A172細胞を、対照ナノ粒子(NP−Control)、TRAIL複合型非蛍光ナノ粒子(NP−TRAIL)、対照ローダミン標識化ナノ粒子(NPR−Control)又はTRAIL複合型ローダミン標識化ナノ粒子(NPR−TRAIL)と共に5時間インキュベートした。細胞アポトーシスは、プロピジウムヨージド染色及びFACS分析を使用して判定し、結果は、3つの異なる実験の平均±SEである。
【図13】TRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)の神経膠腫細胞中への特異的内部移行を、正常な星状細胞と比較して示す図である。NPR−TRAILを、A172細胞と及び正常な星状細胞と共に30分間インキュベートし、細胞の免疫蛍光を、共焦点顕微鏡法を使用して判定した。結果は、類似の結果を与えた3つの実験の1つを表す。
【図14】U87、A172、U251及びLN−18神経膠腫細胞系に対するγ−照射及とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NR−TRAIL)との相乗効果を示す図である。細胞を、NP−TRAIL(5ng TRAIL/mL)と、又はゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独と共に24時間インキュベートするか、或いはγ−照射(10Gyを2時間)し、次いでNP−TRAIL(NP−TRAIL+Rad、5ng TRAIL/mL)と、又はNP単独(NP−Rad)と24時間処理した。細胞アポトーシスは、FACS分析によって判定した。
【図15】cRGDペプチド(cRGD)及びcRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−cRGD)は、両方とも、対照又はゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独で処理した細胞と比較して、神経膠腫U251細胞における自己貪食、すなわち断続染色の増加を誘導することを示す図である。
【図16】子宮頸癌細胞系HeLa、乳癌細胞系MCF−7及び肺癌細胞A549のアポトーシスに対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の効果を示す図である。各種細胞系を、TRAIL(100ng/mL)、NP−TRAIL(50ng TRAIL/mL)、ナノ粒子(NP)単独又はPBS(Control)と共に24時間インキュベートし、データを、平均±SEとして示す。
【図17A】腫瘍標本2355から確立された神経膠腫幹細胞球状体に対するγ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)との相乗効果を示す図である。細胞を、TRAIL(100ng/mL)、ナノ粒子(NP)単独(Control)又はNP−TRAIL(50ng/mL)のどれかと24時間処理し、次いで、上清液を捕集し、LDH分析を実施した。照射(IR)とTRAILとの併用効果を評価するために、細胞を、まず5Gyの放射線で照射し、4時間後にTRAIL又はNP−TRAILのどちらかでさらに24時間処理した。細胞死は、培養上清液中のLDH濃度を使用して判定した。結果は、3つの同じ実験の中の、三つ組で実施された1つの実験を表す。
【図17B】腫瘍標本2303から確立された神経膠腫幹細胞球状体に対するγ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)との相乗効果を示す図である。細胞を、TRAIL(100ng/mL)、ナノ粒子(NP)単独(Control)又はNP−TRAIL(50ng/mL)のどれかと24時間処理し、次いで、上清液を捕集し、LDH分析を実施した。照射(IR)とTRAILとの併用効果を評価するために、細胞を、まず5Gyの放射線で照射し、4時間後にTRAIL又はNP−TRAILのどちらかでさらに24時間処理した。細胞死は、培養上清液中のLDH濃度を使用して判定した。結果は、3つの同じ実験の中の、三つ組で実施された1つの実験を表す。
【図18】卵巣癌細胞のアポトーシスに対するIL−12及びIL−12複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−IL−12)の効果を示す図である。卵巣癌細胞を、培地単独、IL−12(50ng/mL)、ナノ粒子(NP、50μg/mL)単独又はNP−IL−12(50ngの結合IL−12/mL)で処理し、24時間インキュベートし、次いで、LDHアッセイを使用して細胞死について分析した。
【図19】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)又はナノ粒子(NP)単独のどちらかで処理されたラットからの腫瘍切片を示す図である。ラット脳中の異種移植片としてヒトU251神経膠腫細胞を採用し、腫瘍を7日間発育させ、その時点で、NP又はNP−TRAILのどちらかを腫瘍部位に頭蓋内で注入した。処理の7日後に、PBS(示さない)、NP又はNP−TRAILで処理された対照ラットの腫瘍における細胞アポトーシスの程度を調べ、細胞アポトーシスを、アポトーシス細胞を特異的に検出するTUNEL染色(褐色染色)を使用して判定した。
【図20】ヒトU251を移植されたラットの生存に対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の効果を示す図である。腫瘍細胞移植の7日後に、ナノ粒子(NP)単独、NP−TRAIL又はPBSを腫瘍中に直接的に注入し、動物を、窮迫及び/又は罹患の徴候について観察し、その時点で安楽死させた。
【図21】罹患時点での腫瘍容積に対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)(21C)の効果をナノ粒子(NP)単独(21B)又はPBS(21A)投与と比較して示す図である。ラットを安楽死の時点でホルマリン灌流し、脳を摘出し、H&E染色を実施した。代表的な腫瘍容積切片を示す。一連の写真上の数字は、安楽死の日を表す。
【図22】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の投与が、ナノ粒子(NP)単独又はPBSの投与と比較して、総合的な腫瘍量の減少をもたらすことを示す図である。ラットに頭蓋内でヒトU251細胞を移植し、7日後に、NP−TRAIL、NP又はPBSを投与した。21日目に動物を安楽死させ、脳組織を摘出し、容積測定のため切片に切断した。スライドを、この判定で使用されるすべてのスライドに対して同一の設定で写真記録した。容積を、15枚目毎の5μm切片について腫瘍の最大幅及び長さを測定することによって判定した。各切片の容積を判定し、腫瘍端に達するまで次に測定される切片までの切片数を乗算する。
【図23】腫瘍増殖部位を追跡するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)の能力を示す図である。U251腫瘍細胞移植の7日後に、ローダミン標識化NP(NPR)を、ラット脳の対側半球中に移植した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影のために急速凍結した。パネルA、D及びGは、NPR注入部位に近い脳梁部分におけるNPRの画像を示し;パネルB、E及びHは、NPR移植の部位を示し;パネルC、F及びIは、腫瘍細胞部位に近い脳梁部分におけるNPRの画像を示す。倍率は、4×(パネルA、B、C);10×(パネルD、E、F);及び20×(パネルG、H、I)である。
【図24】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の投与が、具体的にはパネルb、d及びfで示される大きな領域の組織破壊をもたらし、これは、ナノ粒子(NP)単独又はPBS投与のどちらでも観察されないことを示す図である。0日目に、ヌードラットにU251n腫瘍を移植し;7日目に、NP−TRAIL、NP単独又はPBSを腫瘍内で投与し;14日目に、動物を安楽死させ、組織を摘出した。NP−TRAIL(パネルa〜f);NP(パネルg〜l);PBS(パネルm〜r)。倍率は、1×(パネルa、c、e、g、i、k、m、o、q);10×(パネルb、d、f、h、j、l、n、r)である。矢印は、腫瘍塊の下部を示す。
【図25】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)を受け入れたラットにおける腫瘍細胞破壊の増加を、ナノ粒子(NP)又はPBSの単独と比較して示す図である。0日目に、動物にヒトU251n細胞を移植し、7日目に、PBS、NP又はNP−TRAILを投与した。14日目に、動物を安楽死させ、脳組織を処理し、ヘマトキシリン(hemotoxylin)及びエオシン染色した。PBS(パネルa〜b);NP(パネルc〜e);NP−TRAIL(パネルf〜h)。倍率は40×。
【図26】MRIによって示されるように、TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)(26B)は、ナノ粒子(NP)単独(26A)と比較して、腫瘍の縁端及び内部の両方でより低いシグナル強度を誘導することを示す図であり、NP−TRAILが、ヌードラット内に移植されたヒト神経膠腫異種移植片の境界及び内部に到達することを示している。U251nヒト神経膠腫細胞をヌードラット中に移植し、11日後に、NP又はNP−TRAILを腫瘍の対側側に頭蓋内で注入した。8日後に、MR画像を得た。各図は、MRIの4連続切片を示し、各切片は、エコー時間(TE)を異にする4枚の画像を有する。より長いTE(小ボックス中の右下画像)。鉄によるより大きなシグナル強度損失(黒色)。R−右;L−左;IS−注入部位(左);Tm−腫瘍(右);LV−脳側室;及び3V−第三脳室。
【図27】インビボで腫瘍細胞によって取り込まれるTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)の能力を示す図である。GFP−U251腫瘍細胞移植の7日後に、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)単独又はNPR−TRAILを、腫瘍塊内に直接的に移植した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれNPR及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示す)のために急速凍結した。パネルG、H及びIに示すように、NPR−TRAILは、腫瘍塊の領域に見出されるばかりでなく、腫瘍細胞と共存している(パネルI)。しかし、NPR単独は、腫瘍塊の領域中に見出されるが、腫瘍細胞と共存していない(パネルD、E、及び特にF)。対照動物は、PBSで処理した。
【図28】cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−cRGD)は、インビボで腫瘍細胞に向かって移動することを示す図である。GFP−U251腫瘍細胞移植の7日後に、NPR−cRGD(約2μgのcRGDペプチドに結合している0.05mgのナノ粒子を含む10μL)を、ヌードラット脳の対側側に注入した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれ、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示す)のために急速凍結した。
【図29】cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−cRGD)及びTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)が両方ともインビボで損傷部位に向かって移動することを示す図である。損傷は、脳の左側でのPBSのニードル注入によって誘導し、4日後に、5μL(25μg)のローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)単独、NPR−TRAIL(50ngの結合TRAIL)及びNPR−cRGDを、脳の対側側に注入した。4日後に、動物を屠殺し、NPRの蛍光を、蛍光顕微鏡下で視覚化した。示したように、NPRは、脳の他の部位に殆ど存在しなかったが、それらの分布は豊富であった。NPR−TRAILは、主として損傷部位に沿って局在した。対照的に、NPR−cRGDは、損傷脳側の全体にわたって及び脳梁に沿って分布した。
【図30A】膀胱癌腫瘍細胞TSU−PR1に対する、TRAIL(10〜100ng/mL)、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、TRAILに結合している10〜40ng/mL)のプロテアソーム阻害薬(PS、5mM)の不在又は存在下の両方での効果を示す図である。24時間後に、細胞死を、LDHアッセイを使用して判定した。100%の細胞死は、Triton X−100で処理した細胞で判定し、データを正規化した。
【図30B】乳癌細胞MDA−MB及び正常乳腺細胞MCF10Aの両方に対する、TRAIL(10〜100ng/mL)、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、TRAILに結合している10〜40ng/mL)のプロテアソーム阻害薬(PS、5mM)の不在又は存在下の両方での効果を示す図である。24時間後に、細胞死を、LDHアッセイを使用して判定した。100%の細胞死は、Triton X−100で処理した細胞で判定し、データを正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなり、少なくとも1種の活性薬剤が該ポリマーに共有結合で結合しているナノ粒子を提供する。
【0012】
本発明の磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子は、あたかも本明細書中に完全に開示されているように参照によりその全体で本明細書に組み込まれる国際公開第99/062079号に開示されている磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子をベースにするが、さらに、該ナノ粒子内部のポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤を含む。このようなナノ粒子は、当技術分野で周知の任意の適した方法、例えば、後記の例1〜3に詳細に記載される方法によって、すなわち、少なくとも1種の活性薬剤が共有結合で結合している金属キレート形成ポリマー、例えば、ゼラチン(ここで、前記ポリマーは、水性溶液に溶解される)上への磁性金属酸化物、例えば、酸化鉄の制御された核形成、それに続く、ポリマー/金属酸化物核上への磁性金属酸化物薄膜層の段階的成長によって調製することができる。これらの例中で示されるように、この収率はほぼ100%である。
【0013】
後記の例1〜2では、金属キレート形成ポリマーとしてのゼラチン及び磁性金属酸化物としての酸化鉄からなる、本発明の磁性ナノ粒子の調製について説明する。これらの例中で示されるように、本発明の磁性ナノ粒子は、極めて狭い粒度分布で、且つ約10nm〜約100nmの範囲の大きさで調製できる。さらに、これらの例は、ナノ粒子の均一性、原子秩序、磁気特性及び結晶特性を詳細に示す。本発明のナノ粒子は超常磁性である、すなわち、それらは、磁界の存在下で磁化されるが、磁界の不在下で残留磁気は観察されない。
【0014】
例1〜2中に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の表面分析は、ナノ粒子の内部及び表面の両方にゼラチンが存在することを立証した。見出されたように、表面のゼラチンは、ナノ粒子、並びにそれを介して適切なリガンドを共有結合で結合できるカルボキシレート及び第一級アミンなどの官能基に対して、凝集に対抗するさらなる安定化を提供する。
【0015】
好ましくは、本発明のナノ粒子の大きさは、300nm未満、より好ましくは100nm未満である。
【0016】
本発明によれば、本発明のナノ粒子の調製に使用される金属キレート形成ポリマーは、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシレート、−SH、エーテル、イミン、ホスフェート又はスルフィド基などから選択される、金属イオン、特に鉄イオンを結合することができる官能基を有するポリマーでよい。好ましい実施形態において、金属キレート形成ポリマーは、ゼラチン、ポリメチレンイミン、キトサン又はポリリシン、より好ましくはゼラチンから選択される。
【0017】
一実施形態において、前記の金属キレート形成ポリマーを被覆する磁性金属酸化物は、酸化鉄又は酸化鉄から誘導されるフェライトである。酸化鉄は、マグネタイト、マグヘマイト、又はこれらの混合物でよく、フェライトは、式(Fe,M)3O4の酸化物であり、ここで、Mは、好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+又はNi2+から選択される遷移金属イオンである。好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子の調製に使用される磁性金属酸化物は、酸化鉄である。
【0018】
本発明によれば、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、限定はされないが、蛍光染料、造影剤、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択できる。
【0019】
一実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、蛍光染料である。蛍光染料の例には、限定はされないが、ローダミン又はフルオレセインが含まれる。
【0020】
別の実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、造影剤、すなわち、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)において体内構造の視認性を向上させるのに使用される化合物である。X線造影のための造影剤の例には、限定はされないが、非水溶性であり、嚥下される又は浣腸剤として投与される消化管中でのみ使用される、硫酸バリウムをベースにした造影剤、並びに身体の殆どどこでも、特に静脈内及び動脈内、鞘内(脊椎)及び腹腔内で使用できる、ヨウ素をベースにした水溶性造影剤が含まれる。一般に使用されるヨウ素化造影剤は、ジアトリゾエート(Hypaque50)、メトリゾエート(Isopaque Coronar370)、イオキサグレート(Hexabrix)、イオパミドール(Isovue370)、イオヘキソール(Omnipaque350)、イオキシラン(Oxilan)、イオプロミド及びイオジキサノール(Visipaque320)である。
【0021】
さらなる実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、ペプチド又はペプチド模倣体である。
【0022】
フィブロネクチン及びビトロネクチンなどの細胞外マトリックス要素のアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(Arg−Gly−Asp;RGD)モチーフは、インテグリンに結合し、インテグリンで媒介される接着は、細胞の生存、増殖及び移動を調節する細胞内シグナル伝達事象をもたらす。RGDを含むペプチドを選別するファージディスプレイ法によって得られるデータは、それらのペプチドが腫瘍血管の内皮内膜へ選択的に結合することを明らかにした。RGDペプチドは、また、シグナル伝達を遅延させ、細胞の移動に影響を及ぼし、腫瘍細胞の退縮又はアポトーシスを誘導する。内皮又は腫瘍細胞のどちらかのインテグリンへ結合することによって、RGDペプチドは、腫瘍転移過程にとって必須である、腫瘍細胞−細胞外マトリックス及び腫瘍細胞−内皮細胞の接着を阻害して細胞輸送をインビボで調節する能力がある。いくつかの研究は、RGDを含む化合物が、腫瘍細胞の転移過程をインビトロ及びインビボで妨害できることを指摘している。個々のインテグリンに対して特異的であるペプチドは、かなり興味深く、医学的意義があり得る。αvβ3インテグリンは、腫瘍血管新生に関連することが明らかにされた最初のインテグリンであり、αvβ3インテグリンを特異的に封鎖するRGDペプチドは、薬物を腫瘍血管系に向ける上での、腫瘍及び網膜の血管新生の阻害薬、骨粗鬆阻症の阻害薬としての有望性を示す。結果として、インテグリンに結合するペプチド及びペプチド模倣体を設計及び産生するのに多くの研究が注ぎ込まれた。
【0023】
好ましい一実施形態において、ペプチド又はペプチド模倣体は、かくして、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体である。より好ましい実施形態において、cRGDペプチドは、配列がシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−Lys(配列番号1)のcRGDペプチドである。
【0024】
よりさらなる実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、ポリペプチドである。
【0025】
腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL、Apo−2リガンド、Apo−2L又はTRAIL/Apo2Lとも呼ばれる)は、サイトカインに属する腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバーであり、その細胞死受容体の関与を介してアポトーシスを開始する能力がある。このファミリーのさらなるメンバーは、例えば、TNFα(TNFとも呼ばれる)、TNFβ、TL1A(TNF様リガンド)、リンホトキシン−β(LTβ)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX−40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも呼ばれる)、Apo−3リガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも呼ばれる)及びTALL−1(BlyS、BAFF又はTHANKとも呼ばれる)である(国際公開第2004/001009号;Wang及びEl−Deiry、2003年)。
【0026】
TRAILは、その細胞外ドメインのCD95L(28%同一)及びTNF(23%同一)との配列相同性をベースにして最初に同定されクローン化されたII型膜貫通タンパク質である。ヒトTRAILポリペプチドの天然配列は、281アミノ酸長であるが、若干の細胞は、細胞外領域のポリペプチドの酵素的開裂によって天然の溶性形態のポリペプチドを産生できる。他の殆どのTNFファミリーメンバーと同様、TRAILは、2つのそのサブユニット間の界面でそれぞれ受容体分子を結合するホモ三量体を生成する。実際、TRAILは、TNFリガンドファミリーの殆どと同様、異なる生物活性をもつことのできる膜結合形態及び可溶性形態の両方中に見出される。TNFファミリーの4つのメンバー、すなわち、Fasリガンド、TNFα、TL1A及びTRAILは、アポトーシスを誘導するそれらの能力ゆえに、卓越している。他のTNFファミリーメンバーとは異なり、可溶性TRAIL(sTRAIL)は、システイン残基が一緒にZn原子に配位し、三量体の安定性及び最適な生物学的活性にとって必須である特有の構造的特徴を有する。機能研究は、TRAILが、結腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳の腫瘍、並びに黒色腫、白血病及び多発性骨髄腫を含む各種腫瘍細胞系においてインビトロでアポトーシスを誘導する強力な能力を有するが、殆どの正常細胞ではそうではないことを示し、癌治療におけるその潜在的な治療的応用を強調した(国際公開第2004/001009号;Wang及びEl−Deiry、2003年;Ashkenaziら、1999年;Carlo−Stellaら、2007年;Smythら、2003年)。効力又は細胞死誘導に関してTRAILのように真に癌細胞特異的である薬剤は、極めて少数のみである。その発現がしっかりと調節され、且つ活性化細胞上で単に一過性で発現されることの多い他のTNFファミリーメンバーと対照的に、TRAILのmRNAは、広範な範囲の組織中で恒常的に発現される。TRAILの主な生物学的機能は、アポトーシスの誘導であると思われるが、このリガンドの完全な生理学的役割は、今なお完全には解明されていない。肝臓のナチュラルキラー(NK)細胞上でのTRAILの発現は、NK細胞の大部分が、野生型及びT−細胞欠乏マウス中でTRAIL及びIFNγの両方を恒常的に産生するので、NK細胞からオートクリン様式で分泌されるIFNγによって調節されるように思われる。マウスでの遺伝子ノックアウト研究は、TRAILが、免疫細胞による抗腫瘍監視において重要な役割を有すること、及びそれが、胸腺細胞のアポトーシスを媒介し、自己免疫疾患の誘導において重要であることを示した。
【0027】
TRAILは、その受容体との相互作用を介してアポトーシスを誘導する。これまで、TRAILに対するDR4、KILLER/DR5、DcR1(Trail−R3 TRID)及びDcR2(TRAIL−R4)を含む4種の相同ヒト受容体、並びに最初はRANKL/OPGL受容体として同定されるオステオプロテゲリン(OPG)と呼ばれる第5番目の可溶性受容体が同定されている。DR4及びDR5は、両方とも、保存デスドメイン(DD)モチーフを含み、アポトーシスシグナルを送ることができる。残りの3種の受容体は、過剰発現された場合にTRAIL誘導性アポトーシスを阻害するそれらの能力に対して「デコイ」として作用すると思われる。デコイ受容体1(DcR1)及びDcR2は、DR4及びDR5の細胞外ドメインに近い相同性を有する。DcR2は、切断型非機能性細胞質DDを有し、一方、DcR1は、サイトゾル領域を欠き、糖リン脂質部分を介して原形質膜につなぎ留められる。TRAILに対する受容体としてのOPGの生理学的関連性は、生理学的温度でのこのリガンドに対する親和性が極めて低いので、不明である。TRAILの選択的抗腫瘍活性に対して考え得る説明は、デコイ受容体が、腫瘍細胞と比較して正常細胞中で優先的に発現され、TRAILの作用を妨害することである(国際公開第2004/001009号;Wang及びEl−Deiry、2003年;Carlo−Stella、2007年;Shahら、2003年)。もう1つの考え得る説明は、殆どの腫瘍細胞系が、アゴニストTRAIL受容体を発現するが、アンタゴニスト受容体をまったく又は検出できないレベルで発現することであり、一方、正常細胞は、アンタゴニストTRAIL受容体を発現することが見出されており、それゆえ、TRAILは、腫瘍細胞だけの選択的致死を可能にすることができる(Weiら、2006年)。
【0028】
初期の有望な結果にもかかわらず、最近の研究は、種々の腫瘍においていくつかのTRAIL抵抗性癌細胞を同定している。癌細胞のTRAILに対する抵抗性は、細胞死受容体の差別的発現を含むことのできる各種分子標的の調節を介して発現すると思われる。細胞死受容体のシグナル伝達経路の分子的解析をベースにして、TRAILの効力を高めるために、TRAILと組み合わせた通常的抗癌薬の投与又は照射を含むいくつかの新たな取り組みが開発されている(Shankar及びSrivastava、2004年;Smythら、2003年)。
【0029】
したがって、好ましい一実施形態において、ポリペプチドは、サイトカイン、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β;TNF関連サイトカイン又はインターロイキン(IL)である。TNF関連サイトカインの非制限的例には、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド及びApo−3リガンドが含まれ、TRAILが好ましい。最も好ましい実施形態において、サイトカインはTRAILである。インターロイキンの非制限的例には、抗腫瘍活性を有する任意のインターロイキンが含まれ、IL−12、IL−23及びIL−27が好ましい。
【0030】
別の実施形態において、ポリペプチドは酵素である。
【0031】
さらなる実施形態において、ポリペプチドは、アバスチン又はレミケードなどの抗体である。アバスチンは、血管内皮増殖因子(VEGF)に対抗するモノクローナル抗体であり、新たな血管の形成を封鎖することによって腫瘍の増殖を阻害するための癌治療で使用される。レミケードは、TNFα、炎症応答をトリガーし且つ維持する鍵となるサイトカインの1つに結合すること、及びそれがTNFα受容体に結合するのを防止することによって自己免疫障害を治療するのに使用されるモノクローナル抗体である。
【0032】
よりさらなる実施形態において、ポリペプチドは、ホルモン、すなわち、インスリン、オベスタチン又はグレリンなどのポリペプチドホルモンである。
【0033】
別の実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、小分子である。
【0034】
好ましい一実施形態において、小分子は、アントラサイクリン化学療法薬である。アントラサイクリン化学療法薬は、ダウノルビシン(アドリアマイシンとしても知られる)、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロンを含むアントラサイクリンファミリーの任意の化学療法薬でよい。より好ましい実施形態において、アントラサイクリン化学療法薬は、キニン含有アントラサイクリンであり、腫瘍学において最も広範に処方され、利用される効果的な化学療法薬であるドキソルビシンである。ドキソルビシンは、膀胱、胃、卵巣、肺及び甲状腺の腫瘍を含む広範な範囲のヒト悪性腫瘍で指示され、乳癌、並びに急性リンパ芽球性及び骨髄性白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、ユーイング及び骨原生骨腫瘍、軟部組織肉腫、及び小児癌(神経芽細胞腫及びウィルムス腫瘍など)を含むその他の徴候の治療に利用できる最も活性のある薬剤の1つである。
【0035】
別の好ましい実施形態において、小分子は、葉酸代謝拮抗薬、すなわち、葉酸の機能を損なう薬物である。葉酸代謝拮抗薬のよく知られ且つ好ましい例が、酵素であるジヒドロ葉酸レダクターゼを阻害し、かくしてプリン及びピリミジン合成にとって必須であるテトラヒドロ葉酸の形成を防止し、結果としてDNA、RNA及びタンパク質の産生阻害をもたらす葉酸類似体である、メトトレキセートである。葉酸代謝拮抗薬のその他の例には、トリメトプリム、ピリメタミン及びペメトレキセドが含まれる。葉酸代謝拮抗薬はヌクレオチドの代謝を妨げるので、それらの作用は、急速に分裂する細胞を特異的に標的とする。
【0036】
さらなる好ましい実施形態において、小分子は、抗生物質である。
【0037】
さらに別の好ましい実施形態において、小分子は、アミン由来ホルモン、すなわち、アミノ酸であるチロシン及びトリプトファンの誘導体である。アミン由来ホルモンの非制限的例には、カテコールアミン、例えば、エピネフリン、ノルエピネフリン及びドーパミン、並びにチロキシンが含まれる。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態において、小分子は、脂質又はリン脂質由来ホルモン、すなわち、リノール酸及びアラキドン酸などの脂質並びにリン脂質から誘導されるホルモンである。脂質及びリン脂質由来ホルモンの主な部類が、コレステロールから誘導されるステロイドホルモン、例えば、テストステロン及びコルチゾール、並びにエイコサノイド、すなわち、プロスタグランジンである。
【0039】
よりさらなる好ましい実施形態において、小分子は、抗炎症薬である。
【0040】
抗炎症薬は、痛風のための標準的治療であるコルチコステロイド、アルカロイドコルヒチン、或いは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、限定はされないが、アスピリン、コリン及びサリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサール、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサレート、サリチル酸ナトリウム、スリンダック、トルメチンナトリウム及びバルデコキシブから選択できる。
【0041】
前記のすべてを考慮して、1つの好ましい実施形態において、金属キレート形成ポリマーはゼラチンであり、金属酸化物は酸化鉄であり、ゼラチンに共有結合で結合している薬剤は、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、又は(v)これらの組合せから選択される。より好ましい実施形態において、ゼラチンに共有結合で結合している前記少なくとも1種の薬剤は、蛍光染料又はTRAILである。
【0042】
本発明によれば、前に規定したナノ粒子は、磁性金属酸化物の外表面に物理的に又は共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤をさらに含むことができ、ここで、前記少なくとも1種の活性薬剤は、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤と同一又は異なるものである。
【0043】
一実施形態において、前記活性薬剤は、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している。
【0044】
後記の例4中で示されるように、磁性ナノ粒子を各種のポリマー、例えば、多糖類、タンパク質及びポリエチレングリコールで被覆することによって、これらの磁性ナノ粒子を安定化し、且つ外面の官能基をこれらの磁性ナノ粒子に共有結合で結合するための各種技術が確立された。これら被覆の官能基を、次いで、種々の試薬、例えば、タンパク質、酵素及び生物医学的応用のための薬物を共有結合させるのに使用した。
【0045】
したがって、一実施形態において、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している活性薬剤は、実際には、磁性金属酸化物表面に結合した官能基を含む分子を介して結合している。いくつかの実施形態において、この分子は、多糖類、より好ましくはキトサン;タンパク質、より好ましくはゼラチン又はアルブミン;ペプチド;或いはポリアミンから選択されるポリマーを含む。
【0046】
別の実施形態において、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している活性薬剤は、実際には、磁性金属酸化物外表面に結合した活性化リガンドを介して結合している。好ましい実施形態において、活性化リガンドは、塩化アクリロイル、ジビニルスルホン(DVS)、ジカルボニルイミダゾール、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)又はm−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルである。より好ましい実施形態において、活性化リガンドはDVSである。
【0047】
上述のように、いくつかの場合では、活性化リガンドを、さらに、金属酸化物被覆の外側に伸びたポリマーに結合できる。
【0048】
例5中で示されるように、活性薬剤を、磁性金属酸化物の外表面に物理的に結合することもできる。この物理的結合は、活性薬剤(単数又は複数)と磁性金属酸化物の外表面との間の非共有結合性相互作用、例えば、疎水性結合、イオン性相互作用及び水素結合に基づく。
【0049】
したがって、別の実施形態において、(b)の活性薬剤(単数又は複数)は、磁性金属酸化物の外表面に物理的に結合している。
【0050】
本発明によれば、磁性金属酸化物の外表面に結合している少なくとも1種の活性薬剤は、限定はされないが、ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤について前に規定したような、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択できる。一実施形態において、前記ペプチド又はペプチド模倣体は、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドは、サイトカイン、酵素、抗体、好ましくはアバスチン又はレミケード、或いはホルモン、好ましくはインスリン、オベスタチン又はグレリンであり;前記サイトカインは、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン、或いはインターロイキン(IL)、好ましくは抗腫瘍活性を有するIL、より好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27から選択され;前記小分子は、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬、抗生物質、アミン由来ホルモン、脂質又はリン脂質由来ホルモン、抗炎症薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬から選択される。
【0051】
磁性金属酸化物の表面に共有結合又は物理的のどちらかで結合している活性薬剤(単数又は複数)の濃度は、結合形成パラメーター、例えば、工程中での活性薬剤(単数又は複数)濃度を変更することによって制御できる。
【0052】
好ましい一実施形態において、本発明は、前に規定したようなナノ粒子を提供し、ここで、前記ポリマーはゼラチンであり、前記磁性金属酸化物は酸化鉄であり、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、又は(v)これらの組合せから選択され、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、(vi)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(vii)cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、(viii)抗腫瘍活性を有するインターロイキン、好ましくはIL−12、又は(ix)これらの組合せから選択される。より好ましい実施形態において、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、蛍光染料又はTRAILであり、磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤はTRAILである。
【0053】
別の態様において、本発明は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0054】
本発明の医薬組成物は、各種の生物学的、医学的及び治療的応用のために使用できる。
【0055】
一実施形態において、本出願の医薬組成物は、診断、薬物安定化、薬物送達及び薬物の制御放出に使用される。
【0056】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、蛍光染料である。この医薬組成物は、腫瘍検出のために使用できる。
【0057】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、造影剤である。この医薬組成物は、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)に使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)のための方法に関する。
【0058】
好ましい実施形態において、この組成物は、磁性金属酸化物の外表面に結合している腫瘍特異的細胞マーカーを結合することができる分子をさらに含むことができる。この組成物は、腫瘍の検出に使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前に規定したような医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の検出方法に関する。
【0059】
用語「腫瘍特異的細胞マーカーを結合することができる分子」は、本明細書中で使用する場合、腫瘍に付随する抗原に向けられた抗体又はそのフラグメント;腫瘍に付随するリガンドに特異的な受容体又はそのフラグメント;或いは腫瘍に付随する受容体のリガンドを指す。
【0060】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくは、ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含み、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、同一又は異なって、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される。好ましい実施形態において、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TRAIL、ドキソルビシン、メトトレキセート又はこれらの組合せから選択され、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される。この医薬組成物は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残存している腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに使用できる。本発明は、かくして、さらに、前記患者に前記医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の増殖を低減又は阻害する、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害する方法に関する。
【0061】
よりさらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される。好ましい実施形態において、磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される。この医薬組成物は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、及びその大きさを監視するのに使用できる。本発明は、かくして、さらに、前記患者に前記医薬組成物を投与することを含む、患者における腫瘍の増殖を低減又は阻害する、及びその大きさを監視する方法に関する。
【0062】
用語「腫瘍」は、本明細書中で使用する場合、限定はされないが、脳腫瘍、好ましくは神経膠腫、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、白血病又は多発性骨髄腫、好ましくは神経膠腫などの任意の腫瘍、並びにそれらの転移を指す。好ましい実施形態において、腫瘍は神経膠腫である。
【0063】
脳腫瘍、特に悪性神経膠腫は、最も侵襲性のヒト癌に属する。悪性神経膠腫を有する患者は、これらの脳腫瘍が、従来の癌治療である放射線又は化学療法に殆ど応答しないので、不幸な予後を有する(Weiら、2006年)。神経膠腫の侵襲性の性質の原因となる特徴には、広範な脳水腫及び高度の血管新生に加えて、急速な増殖、遠い脳領域へのびまん性増殖及び浸潤が含まれる。悪性神経膠腫を有する患者は、1年未満の生存期間中央値をもち、長期生存者は偶然に存在するだけである。腫瘍と正常脳組織とを区別する上での困難性、及び脳を浸潤する神経膠腫の並外れた能力は、神経膠腫の療法及び診断において深刻な難題を提起し(Gieseら、2003年)、現在、神経外科、放射線療法又は化学療法におけるさらなる進歩が、これらの患者の予後を相当に改善するとは予想されない(Desjardinsら、2005年)。
【0064】
さらに、現代臨床神経腫瘍学において、組織病理学的診断は、任意の他のパラメーターを超えて、治療決定及び予後推定に影響を及ぼす。残念ながら、星状細胞腫瘍のはなはだしい不均一性は、それらの病理学的分類をやや困難にしている(Sansonら、2004年)。現在、神経膠芽細胞腫に対する特異的マーカーは存在せず、これらの患者の診断は、腫瘍検体の組織学的評価によって判定される。さらに、マーカーは、低悪性度星状細胞腫の神経膠芽細胞腫への進行を予測するのに利用できない。したがって、神経膠腫に特異的なマーカーの同定は、脳腫瘍の診断、並びに予後及び低悪性度星状細胞腫の腫瘍への進行の予測を助けることができる。
【0065】
未分化型星状細胞腫及び多形性神経芽細胞腫を含む悪性神経膠腫は、最も一般的な原発性脳腫瘍である。現在の治療選択肢には、手術、放射線療法及び化学療法が含まれるが、予後は、極めて不良であり、かくして、代替治療手段の開発が、強く望まれる。遺伝子療法は、悪性神経膠腫に対する革新的な治療手段と考えられ、この10年間に、中枢神経系中での外来遺伝子の発現を可能にする送達システムの開発に大きな関心が寄せられてきた。この目的に関して、カチオン性アルブミンナノ粒子、リポソーム及び不完全複製単純ヘルペスウイルス(HSV)中に組み込まれた、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)をコードするプラスミド又はベクターが開発された。(Shahら、2003年;Van Meir及びBellail、2004年;Carlo−Stellaら、2007年;Wei Luら、2006年;Zhangら、2002年)。しかし、通常の治療に比べた遺伝子療法戦略の優越性に関する客観的な証拠を提供する、説得力のある臨床試験は出現していない。遺伝子療法に対する代わりの取り組みには、腫瘍中へのTRAILの直接送達が含まれる。この取り組みは、しかし、TRAILの制約された安定性及びその低いバイオアベイラビリティー、細胞膜を横切る上での非効率性、及び貧弱なインビボでの代謝安定性のため、難題を提示する(Denicourt及びDowdy、2004年;Shir及びLevitzki、2001年;Shahら、2003年;国際公開第2004/045494号)。
【0066】
したがって、好ましい実施形態において、腫瘍は神経膠腫である。
【0067】
本発明の医薬組成物は、腫瘍の増殖を、その大きさを監視して又はしないで、低減又は阻害すること、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害することを目指す場合に、放射線療法と組み合わせて使用することができる。それを考慮して、(i)腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、(ii)患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための、或いは(iii)腫瘍の増殖を低減又は阻害し、且つその大きさを監視するための、前に規定したような各種方法を、放射線療法と組み合わせて実施することができる。
【0068】
酸化鉄が炎症部位に誘引されることは周知であるので、よりさらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子を含有し、ここで、前記磁性金属酸化物は酸化鉄であり、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は抗炎症薬である。この医薬組成物は、個体における炎症部位の検出及び前記炎症の治療に使用することができる。本発明は、かくして、炎症部位を検出するための、及び前記炎症を治療するための方法に関するものであり、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む。
【0069】
さらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、それぞれ独立にインスリンである。この医薬組成物は、2型糖尿病を治療するのに使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、2型糖尿病を治療する方法に関する。
【0070】
さらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、それぞれ独立にオベスタチンである。この医薬組成物は、肥満を治療するのに使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、肥満を治療する方法に関する。
【0071】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、それぞれ独立にグレリンである。この医薬組成物は、食欲不振を治療するのに使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、食欲不振を治療する方法に関する。
【0072】
さらなる態様において、本発明は、候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答性を評価する方法に関するものであり、前記腫瘍から採取された生検材料からの細胞を前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含み、ここで、ナノ粒子中の磁性金属酸化物の外表面に結合している活性薬剤は、評価される候補化合物であり、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択され、且つ該ナノ粒子は、ポリマーに共有結合で結合している蛍光染料又は造影剤を含む。
【0073】
別の態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなるナノ粒子を提供し、ここで、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に結合している。
【0074】
もっぱらナノ粒子の外表面に、並びに金属キレート形成ポリマー及び磁性金属酸化物に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子の大きさに関する各種の規定は、少なくとも1種の活性薬剤をポリマーに共有結合で結合するに際して前に規定した磁性ナノ粒子に関して規定したものと同じである。さらに、磁性ナノ粒子に関して規定したように、抗腫瘍活性を有する薬剤を、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で又は物理的に結合することができる。
【0075】
前に規定したように、抗腫瘍活性を有する薬剤は、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子でよい。
【0076】
一実施形態において、抗腫瘍活性を有する薬剤は、cRGDペプチド又はペプチド模倣体などのペプチド又はペプチド模倣体、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体である。好ましい実施形態において、cRGDペプチドは、配列番号1のcRGDペプチドである。
【0077】
さらなる実施形態において、抗腫瘍活性を有する薬剤は、サイトカイン、例えば、TNF−α、TNF−βなどのポリペプチド;TNF関連サイトカイン又はインターロイキンである。TNF関連サイトカインの非制限的例には、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、及びApo−3リガンドが含まれる。好ましい実施形態において、サイトカインは、TRAIL、IL−12、IL−23又はIL−27、より好ましくはTRAILである。
【0078】
さらに別の実施形態において、抗腫瘍活性を有する薬剤は、小分子である。小分子の非制限的例には、前に規定したようなアントラサイクリン化学療法薬及び葉酸代謝拮抗薬、好ましくはそれぞれドキソルビシン及びメトトレキセートが含まれる。
【0079】
一実施形態において、本発明は、もっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子を提供し、ここで、前記ペプチド又はペプチド模倣体は、cRGDペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドは、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TNF−α、TNF−β、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン;インターロイキン(IL)、好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27;或いは抗体、好ましくはアバスチンから選択されるサイトカインであり;前記小分子は、メトトレキセートから選択される葉酸代謝拮抗薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬、又はこれらの組合せから選択される。好ましい実施形態において、前記ポリマーはゼラチンであり、前記磁性金属酸化物は酸化鉄であり、且つ抗腫瘍活性を有する前記少なくとも1種の薬剤は、TNF又はTNF関連サイトカイン、アントラサイクリン化学療法薬、葉酸代謝拮抗薬、又はこれらの組合せである。最も好ましい実施形態において、抗腫瘍活性を有する前記少なくとも1種の薬剤は、TRAILである。
【0080】
さらに他の態様において、本発明は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、前に規定したようにもっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0081】
好ましい実施形態において、この医薬組成物は、もっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子を含有し、ここで、抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤は、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、ドキソルビシン、メトトレキセート又はこれらの組合せである。
【0082】
前に規定したように、もっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに使用することができる。本発明は、かくして、さらに、腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための方法に関するものであり、前記患者に前記医薬組成物を投与することを含む。前に説明したように、これらのナノ粒子を、放射線療法と組み合わせて使用できる。したがって、この方法は、放射線療法と組み合わせて実施できる。
【0083】
さらに別の態様において、本発明は、候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答性を評価する方法に関するものであり、前記腫瘍から採取された生検材料からの細胞を、前に規定したようにもっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子、好ましくはもっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含み、ここで、ナノ粒子の磁性金属酸化物の外表面に結合している抗腫瘍薬は、評価される候補化合物である。
【0084】
本発明によって提供される医薬組成物は、通常の技術、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年に記載のように調製できる。組成物は、固体、半固体又は液体形態でよく、さらに、医薬として許容し得る増量剤、担体又は希釈剤、及びその他の不活性成分及び賦形剤を含むことができる。さらに、医薬組成物は、ナノ粒子の徐放出用に設計することができる。組成物は、任意の適切な経路、例えば、静脈内、経口、非経口、直腸、経皮又は局所で投与できる。投与量は、患者の状態で左右され、実施者によって適切と考えられるように決定される。
【0085】
投与経路は、活性化合物を適切な又は望ましい作用部位に効果的に輸送する任意の経路でよく、静脈内経路が好ましい。固体担体を経口投与用に使用するなら、調合物を、錠剤化し、硬質ゼラチンカプセル中に粉末又はペレットの形態で充填することができ、或いはロゼンジの形態でもよい。液体担体を使用するなら、調合物は、シロップ、乳液又は軟質ゼラチンカプセルの形態でよい。タルク及び/又は炭水化物の担体又は結合剤などを有する錠剤、糖衣錠又はカプセルは、経口適用に特に適している。錠剤、糖衣錠又はカプセル用の好ましい担体には、乳糖、コーンスターチ及び/又は馬鈴薯デンプンが含まれる。
【0086】
上述のように、悪性神経膠腫は、患者における最も一般的な原発性の頭蓋内腫瘍である。これらの腫瘍の予後は、それらが、放射線又は化学療法に殆ど応答しないので、不良である。腫瘍と正常脳組織とを区別する上での困難性、及び脳に浸潤する神経膠腫の並外れた能力は、神経膠腫の療法及び診断において深刻な難題を提起する。
【0087】
TRAILは、初期には細胞膜で発現され、続いてタンパク質分解プロセシングで誘導される膜貫通タンパク質である。溶性TRAIL(sTRAIL)は、殆どの正常細胞を避けながら、多様な起源の腫瘍細胞でアポトーシスを誘導することができる。しかし、以前の殆どの研究は、細胞培養で実施されたが、インビボでのsTRAILの送達及び効率は、あまり確立されておらず、成功していない。インビボでのsTRAIL治療に関する主な障害は、タンパク質分解の切断によるその短い半減期のせいであり、それゆえ、過剰量のsTRAILを必要とする。インビボでのsTRAIL治療は、TRAILを脳に投与する上での困難、及びインビボにおけるTRAILに対する神経膠腫の相対的鈍感性のため、神経膠腫腫瘍に対して特別な効果はない。
【0088】
後記の例6〜8は、少なくとも1種の活性薬剤が、ナノ粒子内部のポリマーに共有結合で結合し、且つ任意選択で、同一又は異なる活性薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に結合している場合、並びに活性薬剤がポリマーに共有結合で結合しなかった場合の両方での、本発明のゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を用いて実施したインビトロ及びインビボでの各種実験を詳細に説明する。
【0089】
これらの例中に示すように、蛍光及び非蛍光性ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子の両方に対するTRAILの複合化は、sTRAILを有意に安定化し、sTRAILの酵素分解を最小化し、それによって、腫瘍細胞のアポトーシスに必須なsTRAILの量を低減した。この取り組みは、効率的なアポトーシスのための腫瘍細胞へのsTRAILの選択的送達を可能にする。さらに、sTRAIL複合型ナノ粒子は、浸潤性腫瘍細胞を選択的に追跡し、インビボで細胞毒性効果を発揮し、腫瘍を有する動物の生存を有意に増加させた。sTRAIL複合型ナノ粒子の細胞毒性効果に抵抗性であった腫瘍細胞は、低レベルのγ−照射と、それに続くsTRAIL複合型ナノ粒子での治療との併用治療を使用することによって敏感になった。別法として、これらの細胞を、1種を超える活性薬剤が複合されたナノ粒子で効率的に治療した。この目的に使用される活性薬剤は、sTRAIL、及びcRGDペプチド、IL−12、cRGDペプチド及びアドリアマイシンなどのその他の抗癌薬(単数又は複数)であった。これらの薬剤を、種々の組合せで、磁性金属酸化物表面、ナノ粒子内部のポリマーのどちらかに、或いはその両方に結合した。
【0090】
治療的応用に加えて、これらのsTRAIL複合型ナノ粒子は、MRI及び/又は蛍光による腫瘍造影のためのマーカーとして役立った。ヒト神経膠腫腫瘍を移植された動物モデルにおいてこれらの造影モダリティを使用することによって、sTRAIL複合型ナノ粒子は、腫瘍部位に移行し、腫瘍の周辺及び内部に蓄積し、一方、sTRAILを結合していないナノ粒子は、より徐々に移行し、腫瘍細胞の周辺のみに蓄積することが立証された。sTRAILを複合したナノ粒子を、sTRAILを安定化するための、腫瘍を診断するための、及びアポトーシスを誘導するために腫瘍を標的化することを助けるためのビヒクルとして使用する。蛍光染料をポリマーに結合したナノ粒子を使用することによって、sTRAIL複合型ナノ粒子が、浸潤性腫瘍細胞を識別し、標的にすることがさらに示された。神経膠腫細胞を特異的に標的にするsTRAIL複合型ナノ粒子の能力を、脳内腫瘍の境界を判定するのに、及び再発性神経膠腫と放射線誘導性壊死とを区別するのに採用することもできる。加えて、神経膠腫以外の腫瘍細胞、例えば、癌腫、乳癌及び肺癌を標的とすること、及びそれらのアポトーシスを誘導することに関するsTRAIL複合型ナノ粒子の効率を立証した。
【0091】
本発明を、これより以下の非制限的実施例により説明する。
【実施例】
【0092】
(例1)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の合成及び特徴づけ
大きさが約5nmから100nmの範囲であり狭い粒度分布のゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、国際公開第99/062079号に詳細に記載のように、核形成、それに続くゼラチン/酸化鉄核上への磁性酸化鉄薄膜の制御された成長によって調製した。核形成ステップは、ゼラチンのキレート形成部位へのFe+2イオンの錯体形成、それに続くキレート化されたFe+2のFe+3への部分酸化(ほぼ50%まで)を基礎とし、その結果、水溶性ゼラチンはキレート化されたFe+2及びFe+3イオンの両方を含んでいた。次いで、NaOH又は代わりにアンモニア水溶液を約pH9.5となるまで添加することによってゼラチン/酸化鉄の核を形成した。ゼラチン核上への磁性膜の成長は、核形成ステップを数回繰り返すことによって完遂された。
【0093】
簡潔には、平均乾燥直径が15nmのナノ粒子を、200mgのゼラチン(Sigma社)を含む80mLの水溶液に、FeCl2溶液(10ミリモル/5mLのH2O)続いてNaNO2溶液(7ミリモル/5mLのH2O)を添加することによって調製した。10分間反応させた後、NaOH水溶液(1N)をpH9.5になるまで添加した。この手順を、4回、又はより大きな粒子が所望されるならそれ以上繰り返した。次いで、形成された磁性ナノ粒子を、磁気勾配カラムを使用して洗浄して過剰な試薬を洗い流した。表面分析により、ナノ粒子の内部及び表面上の両方でのゼラチンの存在が立証された。表面のゼラチンは、ナノ粒子、並びにそれを介して適切なリガンドを共有結合で結合できるカルボキシレート及び第一級アミンなどの官能基に対して、凝集に対抗するさらなる安定化を提供する。図1A〜1Dは、成長ステップ中で磁性薄膜形成工程をそれぞれ4〜7回繰り返すことによって形成される、大きくなった平均直径を有する磁性ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。図2は、前記のように調製され、水に分散された乾燥平均直径が15nmの磁性ナノ粒子が、約100nmの水力学的平均直径を有する1本の狭い個体群をもつことを示している。図3A〜3Bは、0.479nmのd−間隔を有する結晶構造を示している高分解能TEM(HTEM)画像(3A)、磁性ナノ粒子の結晶的特性を示す鮮明な環を描写している電子線回折(ED)画像(3B)を示す。図4は、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンを示し、これらのナノ粒子の結晶核が、殆ど完全にマグヘマイト(γ−Fe2O3)からなることを示している。X線ラインの拡がりから、15nmの磁性核の平均直径が導き出される。図5は、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のメスバウアースペクトルを示し、さらに、これらのナノ粒子がマグヘマイトからなることを示している。まず、この核形成及び成長工程によってマグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子が作り出され、次いで、それが、熱力学的により安定な酸化鉄、マグヘマイトへ酸化されたと想定される。図6は、乾燥直径が15nmのマグヘマイト型ナノ粒子の室温でのヒステリシスループを表し、これらのナノ粒子のM(H)曲線は、いかなる保持力をも示さず、且つ10,000エルステッド(Oe)で飽和せず、一方、10,000エルステッドで得られる磁気モーメントが、約41emu/gであることを示している。この特性は、両方とも、超常磁性挙動を代表する。
【0094】
様々な大きさ及び特性を有する均一なゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、以前に国際公開第99/062079号に開示されているように、調製条件、例えば、酸化試薬、鉄塩の種類、pH及び温度を変えて調製した。乾燥直径が15nmより小さく5nmまでの大きさの均一なナノ粒子を、酸、例えば、pHが約1.0のHCl、又はEDTA及びシュウ酸などの鉄キレートを形成するリガンドを用いる、15nmのナノ粒子の漸進的表面溶解によって調製した。所望の直径を達成した後に、磁性ナノ粒子を、蒸留水中で洗浄した。
【0095】
(例2)蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の合成
蛍光染料を主として磁性複合ナノ粒子内に封じ込めた、蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、図7に図示するように、ゼラチンを、蛍光染料に共有結合で結合しているゼラチンに代えて例1に記載のように調製した。例えば、200mgのゼラチンを含む20mL水溶液に、5mgのローダミンイソチオシアネート(RITC)を含む0.5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)を徐々に添加することによって、ローダミンで標識されたナノ粒子を調製した。水溶液のpHをNaOH水溶液(1N)を添加して9.5まで上昇させ、溶液を60℃で1時間振盪した。この方法は、ゼラチンのヒドロキシル及びアミン基の一部とRITCのイソチオシアネートとの間のチオ尿素及び/又はチオウレタン結合を介する共有結合の形成を含む。次いで、過剰のRITCを、前者の水溶液の60℃でのH2Oに対する徹底的な透析(カットオフ:12〜14000)、又は磁気カラムを通す洗浄によって、ゼラチンと複合したローダミン鎖から除去した。溶液の容積を80mLに調整し、次いで例1に記載のように合成を継続した。
【0096】
類似の方法を、他の適切な染料、例えば、フルオレセインを用いて実施した。
【0097】
(例3)薬物(単数又は複数)を含むゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の合成
薬物を含むゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、ゼラチンを、薬物に共有結合で結合しているゼラチンに代えて、例1に記載のように調製した。例えば、アドリアマイシン(Aldrich社)を、Melamed及びMargel(2001年)が発表しているようなカルボジイミド活性化法によって共有結合でゼラチンに結合した。簡潔には、200mgのゼラチン及び5mgのアドリアマイシンを含む20mLのMES緩衝液(0.01M、pH5.0、Sigma社)に、123mgのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド、Sigma社)及び82mgのCDC(1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホン酸塩、Sigma社)を添加し、次いで、溶液を、60℃で2時間振盪した。溶液を、水に対する透析(カットオフ:12〜14000)によって洗浄して過剰な試薬を洗い流した。溶液の容積を80mLに調整し、次いで、例1に記載のように合成を継続した。
【0098】
類似の方法で、メトトレキセート又は/及びsTRAILを別々に又は組み合わせて共有結合でゼラチンに結合した、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を調製した。
【0099】
(例4)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の官能化
例1〜3に記載のように調製したゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の表面に官能基を作り出すための各種方法は、(i)被覆形成ポリマー、例えば、デキストランのナノ粒子表面に対する高い親和性、(ii)マイケル付加反応による、ナノ粒子表面上の官能基と、所望の官能性リガンド(例えば、ナノ粒子表面上で活性化される二重結合を有するタンパク質などのアミノリガンド)との間での共有結合の形成、又はMelamed及びMargel(2001年)が発表しているようなカルボジイミド活性化法による、カルボキシレート基(ゼラチン被覆に属する)に対する共有結合の形成、及び(iii)ナノ粒子表面上での被覆形成ポリマー、例えば、ゼラチン又はアルブミンの沈殿などの様々な原理に基づいて開発されている。ナノ粒子表面の官能基を、次いで、様々な活性化法によって、各種薬物、例えば、TRAIL及びcRGDペプチドを共有又は物理的に結合するのに使用した。
【0100】
4(i)活性化される二重結合を用いる官能化
例1〜3に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子にジビニルスルホン(DVS)を、当初の[DVS]/[ナノ粒子]の重量比を4/1として添加し、次いで、トリエチルアミンを10.5のpHに到達するように添加し、続いて60℃で一夜インキュベートした。形成された官能化ゼラチン/酸化鉄−DVSナノ粒子、又は蛍光染料標識化ゼラチン/酸化鉄−DVSナノ粒子を、次いで、磁気勾配カラムを用い0.1M重炭酸塩緩衝液(pH=8.3)で洗浄し、4℃で貯蔵した。
【0101】
4(ii)活性化される二重結合を含む架橋型デキストラン被覆を用いる官能化
例1〜3に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の水性分散液に2%(w/v)デキストラン(MW48,000、Sigma社)を添加し、デキストランを溶解した後、水性分散液を85℃で3時間振盪した。デキストランで被覆されたナノ粒子を、磁気カラムを使用し、水で洗浄して過剰なデキストランを洗い流した。物理的に吸着されたデキストランの水性連続相中への漏れを防止するために、及び表面で活性化される二重結合を生じさせるために、デキストラン被覆の架橋を、DVSを用いて前記の4(i)に記載のように実施した。
【0102】
4(iii)活性化される二重結合の不在又は存在下でゼラチン又はアルブミン被覆を用いる官能化
例1〜3に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の水性分散液に0.2%(w/v)ゼラチンを添加し、次いで、水性分散液を85℃で3時間振盪した。水性分散液を室温まで冷却し、次いで、ゼラチンで被覆されたナノ粒子を、磁気カラムを用いて洗浄した。必要なら、前記の4(i)に記載のようにDVS誘導体化を実施した。
【0103】
ゼラチンをウシ又はヒト血清アルブミンに代えて、ナノ粒子上のアルブミン被覆を同様に実施した。
【0104】
(例5)官能性ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子上への薬物の固定化
5(i)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのヒトTRAIL又はIL12の固定化
例4に記載のように調製された1mgのゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を含む1mLの重炭酸塩緩衝分散液(0.1M、pH=8.3)に、20μgのヒトTRAIL(hTRAIL、CytoLab社、イスラエル)を添加し、次いで、分散液を室温で60分間混合した。この方法は、ナノ粒子の残留二重結合とTRAILの第一級アミノ基とのマイケル付加による結合形成を含む。次いで、活性化される残留二重結合の封鎖を、グリシンを用い、グリシン(1%w/v)を添加すること及び分散液の混合を室温でさらに60分間継続することによって実施した。過剰な未結合のhTRAIL及びグリシンを、磁気勾配カラムを使用してPBS(pH=7.4)で除去した。結合したhTRAILの濃度は、ELISA Development Kit(900−K141、ロット番号11041410、CytoLab社、イスラエル)で測定して、約2000ng/mgナノ粒子であることが見出された。
【0105】
hTRAILをIL12に代えて、ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上にIL12を同様に結合した。
【0106】
5(ii)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのcRGDペプチドの固定化
上記5(i)に記載の実験を、20μgのhTRAILを配列シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−Lys)(配列番号1)を有する3mgのcRGDペプチド(Peptides International社、Louisville、ケンタッキー州40224、米国)に代えて繰り返した。ネガティブ対照として、cRGDペプチドを配列シクロ(Arg−Ala−Asp−D−Phe−Lys)を有するcRADペプチド(Peptides International社)に代えて類似の方法を実施した。
【0107】
5(iii)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのhTRAIL及びcRGDペプチドの固定化
前記5(i)に記載の実験を、グリシンを3mgのcRGDペプチドに代えて繰り返し、結果として、残っているDVSの活性化される残留二重結合をcRGDペプチドに複合した。
【0108】
5(iv)ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子上への生物活性試薬、例えば、hTRAIL及び/又はcRGDペプチドの固定化
ヒトTRAIL及び/又はcRGDペプチドを、例1〜3及び例4(iii)により調製されたゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子に、Melamed及びMargel(2001年)に記載のようなカルボジイミド活性化法により共有結合で結合した。簡潔には、200mgのナノ粒子を含む20mLのMES緩衝液(0.01M、pH5.0、Sigma社)に、123mgのNHS及び82mgのCDCを添加し、次いで、ナノ粒子分散液を室温で3時間振盪した。活性化されたナノ粒子を、磁気勾配カラムを使用してPBSで徹底的に洗浄し、次いで、20mLの洗浄された活性化ナノ粒子分散液に、8mgのhTRAIL又は50mgのcRGDペプチドを含む5mLのPBS溶液を添加した。懸濁液を、室温で約8時間振盪し、次いで、残留活性化基の封鎖を、グリシン(200mg)又はcRGDペプチド(50mg)のどちらかを用いて、それぞれ5(i)又は5(iii)に記載のように実施した。
【0109】
5(v)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのアバスチン又はレミケードの固定化
例4に記載のように調製された1mgのゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を含む1mLの重炭酸塩緩衝分散液(0.1M、pH=8.3)に、20μgのモノクローナル抗体、アバスチン(Bevacizumab、Genentech社)又はレミケード(Infliximab)を添加し、次いで、分散液を室温で60分間混合する。この方法は、ナノ粒子の残留二重結合とアバスチン又はレミケードの第一級アミノ基とのマイケル付加による結合形成を含む。次いで、残留活性化二重結合の封鎖を、グリシンを用い、グリシン(1%w/v)を添加すること及び分散液の混合を室温でさらに60分間継続することによって実施する。過剰の未結合アバスチン又はレミケード及びグリシンを、磁気勾配カラムを使用してPBS(pH=7.4)で除去する。
【0110】
5(vi)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子上への生物活性試薬、例えば、hTRAILの物理的固定化
例3に記載のように調製された1mgの非官能化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子、又は例4(iii)に記載のように調製されたアルブミン被覆化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を含む1mLの重炭酸塩又はPBS緩衝分散液(0.1M、pH=8.3)に、20μgのヒトTRAIL(hTRAIL、CytoLab社、イスラエル)を添加した。次いで、分散液を室温で120分間混合し、結果として、hTRAILを、非被覆又はアルブミン被覆化ナノ粒子に非共有結合で結合した。この物理的な結合形成は、TRAILとナノ粒子との間の非共有結合性相互作用、例えば、疎水性結合、イオン性相互作用及び水素結合に基づく。過剰の未結合hTRAILを、磁気勾配カラムを使用してPBS(pH=7.4)で除去した。
【0111】
5(vii)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子上へのヒトTRAILの固定化
ヒトsTRAILを、Melamed及びMargel(2001年)が発表しているようなカルボジイミド活性化法により、ゼラチン/酸化鉄ナノ粒子に直接結合した。典型的な実験において、10mgのナノ粒子を含む15mLのMES緩衝液(0.1M、pH5.0)に、123mgのNHS及び82mgのCDCを添加した。次いで、ナノ粒子混合物を、室温で約3時間振盪した。活性化されたナノ粒子を、磁気勾配カラムを使用して洗浄した。次いで、8mLの洗浄された活性化ナノ粒子のPBS分散液に、0.5mgのsTRAILを含むPBS溶液(2mL)を添加した。次いで、分散液を室温で約2時間振盪した。次いで、残留活性化二重結合の封鎖を、グリシン又は第一級アミノポリエチレングリコールを用いて、グリシン(1%w/v)(又は第一級アミノポリエチレングリコール、5mg)を添加すること、及び分散液の混合を室温でさらに60分間継続することによって実施した。過剰の未結合hTRAIL及びグリシン(又はアミノポリエチレングリコール)を、磁気勾配カラムを使用して、PBS(pH=7.4)で除去した。
【0112】
5(i)〜5(vi)に記載の結合生物活性剤の濃度は、結合パラメーター、例えば、hTRAIL濃度を変更することによって制御した。
【0113】
(例6)インビトロ研究:神経膠腫細胞の標的化、造影及びアポトーシス
材料及び方法
細胞系:次の実験で使用されるすべての細胞は、American Tissue Culture Collection(ATCC)又はHermelin Brain Tumor Center(Henry Ford Hospital、Detroit、ミシガン州)から入手した。すべての細胞は、10%FBS(Hyclone社、Logan、ユタ州)、2mMのL−グルタミン及び100μg/mLのストレプトマイシン−ペニシリンで補足されたDMEM(Invitrogen社)中、5%CO2下に37℃で培養した。
【0114】
細胞アポトーシスの測定:細胞のアポトーシスは、プロピジウムヨージド(PI)染色を使用して測定し、Riccardi及びNicoletti(2006年)によって発表されているようなフローサイトメトリーによって、及びBlassら(2002年)によって発表されているような抗ヒストン抗体を使用するELISA(Cell Death Detection ELISA Kit)によって分析した。細胞(106/mL)を、37℃の6穴プレートに播種し、指示された処理(10μL以下のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)又はペプチド、例えば、TRAIL、又は未結合若しくはペプチド結合型ナノ粒子を含むPBSを添加)で24時間処理した。剥離細胞及びトリプシン処理接着細胞を、捕集し、氷上において70%エタノール中で1時間固定し、PBSで洗浄し、RNアーゼ(50μM)と室温で15分間処理した。次いで、細胞を、PI(5μg/mL)で染色し、Becton−Dickinsonセルソーターで分析した。
【0115】
細胞の生存能を、死亡細胞から培地に放出される細胞質酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(Sigma社から購入したキット)を測定することによって、さらに定量的に評価した。この目的の場合、対照及び処理細胞から上清液を捕集し、続いて遠心(1,400×g、10分間)し、上清液を96穴プレートに移し、製造業者の説明書に従ってLDHを測定した。
【0116】
6(i)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子への複合化によるTRAILの安定化
分解に対する遊離及び複合型TRAILの安定性を調べるために、遊離TRAIL(100ng)又はTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、100ng TRAIL)のどちらかを含む1mLのPBSを10℃でインキュベートし、TRAILの濃度を35日間測定した。図8は、ナノ粒子へのTRAILの複合化が、TRAILを安定化し、その結果、複合型TRAILの初期濃度を10℃で35日目まで維持したことを示している。対照的に、遊離TRAILは、これらの条件下で有意に分解した。
【0117】
6(ii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、ヒト神経膠腫細胞及び原発性腫瘍から確立された神経膠腫球におけるアポトーシスを誘導する
ヒト神経膠腫細胞A172を、TRAIL(100ng/mL)又はNP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)のどちらかと5時間インキュベートした。細胞アポトーシスを、プロピジウムヨージド染色で判定し、フローサイトメトリー(FACS)及び細胞の形態学的外観の両方によって分析した。図9Aは、遊離TRAILが、細胞の約48%のアポトーシスを誘導し、一方、NP−TRAILは、細胞の約57%のアポトーシスを誘導し、ナノ粒子単独は、有意な細胞アポトーシスを誘導しなかったことを示している。換言すれば、複合型TRAILによって誘導されるアポトーシス活性は、遊離のそれによって誘導されるものに比べて少なくとも10倍高かった。
【0118】
遊離TRAIL(100ng/mL)及びNP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)のアポトーシス効果を、3種の異なる腫瘍、すなわち、HF2020、HF1254及びHF1308に由来する神経膠腫球状体を使用してさらに試験した。これらの培養物は、それらが、その三次元構造及び細胞−細胞相互作用を維持するので、元々の腫瘍により類似している。見出されたように、図9Bに示すHF2020、及びHF1308に由来する神経膠腫球状体は、TRAIL又はNP−TRAILに応答して細胞アポトーシスを受けたが、一方HF1254は、わずかに軽度の細胞アポトーシスを受けた。詳細には、図9B及び図10に示すように、TRAIL及びNP−TRAILは、両方とも、HF2020及びHF1308神経膠腫球状体においてLDH濃度を有意に高めた。
【0119】
6(iii)各種神経膠腫細胞系及び神経膠腫一次培養物における、遊離TRAIL及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の細胞毒性効果
神経膠腫細胞U87、A172及びU251、並びに神経膠腫細胞HF1308、HF1254及びHF1316の一次培養物を、TRAIL(100ng/mL)、NP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)又はゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独と共に24時間インキュベートした。次いで、細胞を、捕集し、プロピジウムヨージドで染色し、FACS分析でsub−G0集団(アポトーシス細胞)について分析した。図11は、すべての場合に、NP単独の細胞毒性効果は、PBSによって引き起こされる効果と相違なかったこと、及びNP−TRAILは、遊離TRAILのそれに比べて有意により高い細胞毒性活性を呈示したことを示している。
【0120】
6(iv)各種神経膠腫細胞におけるTRAIL複合型非蛍光及び蛍光染料標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の細胞毒性効果
ヒト神経膠腫細胞A172細胞を、非蛍光ナノ粒子(NP−Control)、NP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)及びTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL、10ng TRAIL/mL)と共に5時間インキュベートした。アポトーシスを、プロピジウムヨージド染色を使用して判定し、FACSで分析した。図12に示すように、NPR−TRAILによって誘導されるアポトーシス(51%)は、NP−TRAILによって誘導されるもの(45%)に類似していた。同様の結果が、他の神経膠腫細胞、例えば、U251及びU87についても観察された。これらの結果は、蛍光性TRAIL複合型ナノ粒子が、それらの非蛍光性対応物に類似し、遊離TRAILのそれに比べて約10倍多い神経膠腫細胞のアポトーシスを誘導することを示している。
【0121】
6(v)蛍光性TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の神経膠腫細胞中への特異的内部移入
正常星状細胞に比較した神経膠腫細胞に対するNP−TRAILの特異性を、NPR−TRAILを用いて調べた。詳細には、ヒト神経膠腫細胞A172及び正常ヒト星状細胞を、NPR−TRAIL(10ng TRAIL/mL)と共に30分間インキュベートし、細胞を、共焦点顕微鏡を使用して観察し、写真撮影した。図13に示すように、NPR−TRAILは、処理の30分以内にA172細胞に入り込み、ER/ゴルジ領域に蓄積し、一方、正常星状細胞では極めて弱い蛍光が観察された。同様に、TRAILと複合されていないNPRは、両方の細胞型において細胞に入り込まなかった(データは示さない)。これらの結果は、NPR−TRAILが、おそらく、TRAIL受容体への結合形成に続く内部移入によって神経膠腫細胞に入り込み、且つそれらは、細胞中に薬物を送達するTRAIL複合型ナノ粒子の能力に対して重要な関連を有する可能性があることを示している。
【0122】
6(vi)γ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子との相乗効果
NP−TRAILは、多くの神経膠腫細胞系においてアポトーシスを誘導したが、この処理に抵抗性のあるいくつかの神経膠腫細胞が存在した。かくして、γ線は、TRAIL受容体の発現を高めることによって腫瘍細胞のTRAILに対する感度を高めることが報告されているので、神経膠腫細胞のアポトーシスに対するNP−TRAILとγ線との併用処理の効果を調べた。詳細には、TRAILに対して敏感であったA172及びU251細胞、並びにTRAILに対して低い応答を示したU87細胞、及びTRAIL処理に抵抗性であったLN−18細胞を採用し、最適状態に及ばない濃度のNP−TRAIL(5ng TRAIL/mL)及びγ線(10Gy)を使用した。細胞をNP単独、NP−TRAIL(5ng TRAIL/ml)、γ線(10Gy)、又はNP−TRAIL(5ng TRAIL/ml)とγ線(10Gy)の組合せで処理した。併用処理では、細胞を、最初に照射し、2時間後に、NP単独で又はNP−TRAILで処理した。24時間後に、細胞アポトーシスを判定した。図14は、併用処理によって誘導されるアポトーシスが、有意に高められたこと、及び低線量のγ−照射を付加することが、NP−TRAILに対するいくつかの神経膠腫細胞の抵抗性を克服したことを示している。
【0123】
6(vii)cRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫細胞において自己貪食を誘導する
神経膠腫細胞中で誘導される別のタイプの細胞死は、Gozuacik及びKimchi(2004年)の文献に記載のようなII型細胞死又は自己貪食である。自己貪食を特徴付けるために、細胞を、LC3−GFPプラスミドでトランスフェクトし、自己貪食性空胞形成の蓄積を調べた。見出されたように、対照細胞では、IC3−GFPが細胞中のいたるところに出現したが、自己貪食細胞では、断続染色が観察された。それを考慮して、NP単独で処理された対照細胞中及びcRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−cRGD)で処理された細胞中のLC3−GFPのパターンを調べた。この目的のために、U251細胞を、LC3−GFPで24時間トランスフェクトし、細胞を、cRGDペプチド(10μg/mL)、NP単独又はNP−cRGD(約4μg cRGD/mL)でさらに24時間処理し、次いで、断続GFP染色を有する細胞の割合を計算した。図15に示すように、約24時間で、cRGDで処理された細胞の約30%及びNP−cRGDで処理された細胞の約18%が、LC3−GFPの高められた断続パターンを示した。それとは対照的に、対照又はNPで処理された細胞のほんの2〜3%が、断続染色を示した。
【0124】
6(viii)TRAIL及びcRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の相乗効果
この実験では、TRAIL処理に抵抗性であったLN−18細胞を、NP−TRAIL、TRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子(例5(iii)に記載のように調製された)又はアドリアマイシンを含むTRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子(例3及び5(iii)に記載のように調製された)と共に24時間インキュベートした。付加的薬物(cRGDペプチド及びアドリアマイシン)の相乗効果が、NP−TRAILでは約8%、TRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子では約25%、及びアドリアマイシンを含むTRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子では45%であった、アポトーシスパーセントの有意な増加によって立証された。
【0125】
6(ix)各種腫瘍細胞のアポトーシスに対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の効果
この実験では、神経膠腫以外の腫瘍細胞に対するNP−TRAILの効果を、子宮頸癌細胞系HeLa、乳癌細胞系MCF−7及び肺癌細胞A549を使用して調べた。図16は、5時間のインキュベーション後のTRAIL(100ng/mL)、NP−TRAIL(50ng TRAIL/mL)、NP単独又はPBS(対照)のアポトーシス効果を示している。示したように、PBS及びNPは、両方とも、微々たるアポトーシス効果を有したのに、NP−TRAILは、TRAILによって誘導されるものの少なくとも2倍である有意なアポトーシスを誘導し、ナノ粒子へのTRAILの複合化は、そのアポトーシス効果を維持し、さらには各種癌細胞に対するその効果を増大させたことを示した。細胞アポトーシスは、プロピジウムヨージド(PI)染色を使用して判断し、フローサイトメトリーで分析した。
【0126】
6(x)ヒト神経膠腫幹細胞球に対するγ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子との相乗効果
神経膠腫幹細胞を、腫瘍標本2355及び2303から確立し、球状体として増殖させ、培養組織中に2ヶ月間維持した。神経膠腫幹細胞は、自己複製を示し、ポリ−L−リシン上で星状細胞、ニューロン及びオリゴデンドロサイトに分化した。細胞に対するNP及びNP−TRAILの効果を調べるために、球状体を、6穴プレートに播種し、TRAIL(100ng/mL)、NP単独又はNP−TRAIL(50ng TRAIL/mL)で24時間処理した。次いで、上清液を捕集し、LDH分析を実施した。
【0127】
γ線とTRAILとの併用効果を評価するために、細胞を、まず5Gyの放射線で照射し、4時間後に、TRAIL又はNP−TRAILのどちらかでさらに24時間処理した。細胞死を、培養上清液中のLDH濃度を使用して判定した。様々な処理で誘導されるアポトーシス効果は、両方の神経膠腫幹細胞系で類似しており、図17A〜17Bに示した。NP単独、γ−照射単独又は遊離TRAILでは微々たるアポトーシス効果が観察された。NP−TRAILは、中位のアポトーシス効果を誘導したが、NP−TRAIL及び遊離TRAILは、両方とも、γ−照射と一緒になって、有意なアポトーシスを誘導した。
【0128】
6(xi)IL−12複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、ヒト卵巣癌細胞においてアポトーシスを誘導する
卵巣癌細胞を、培地単独、IL−12(50ng/mL)、NP(50μg/mL)又はIL−12複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−IL−12、50ng IL−12/mL)で処理し、24時間インキュベートし、次いで、LDHアッセイを使用して細胞死について分析した。図18に示すように、IL−12及びNP−IL−12は、両方とも、さらに細胞形態に反映されたように、培養細胞中で細胞死を誘導した。
【0129】
(例7)インビボ研究:神経膠腫細胞の標的化、造影及びアポトーシス
材料及び方法
細胞系及び動物:U251細胞を、ATCC(Manassas、バージニア州)又はHermelin Brain Tumor Center(Henry Ford Hospital、Detroit、ミシガン州)から得た。すべての細胞を、10%FBS(Hyclone社、Logan、ユタ州)、2mMのL−グルタミン及び100μg/mLストレプトマイシン−ペニシリンで補足されたDMEM(Invitrogen社)中、5%CO2下に37℃で培養した。雌性Nu/Nuラットを、NCI Fredericks社(Fort Detricks、メリーランド州)から得た。すべてのラットが、腫瘍移植の時点で6〜8週齢であった。
【0130】
腫瘍移植及びナノ粒子投与:ラットを、入荷後、使用に先立って1週間順化させた。腫瘍細胞の移植に先立って、動物を麻酔し、無菌手術に備えた。頭皮を貫いて長さ1cmの切り目を作り、26ゲージのニードルを使用して、捩じることによって、正中線の右側に2mm且つ背側に2mmの位置に頭骨を通して穴を静かに開けた。次いで、動物を、マイクロ−マニピュレーター及びシリンジホルダーを具備した脳定位固定装置(Kopf社、Tujunga、カリフォルニア州)中に配置した。ニードルを事前に形成した穴中に3mm下げ、0.5mm上昇させ、腫瘍塊(5μL)を、全部で2.5分にわたって徐々に注入した。ニードルを、定位置に1分間残し、次いで、1分間にわたって徐々に上昇させた。脳定位固定装置から動物を取り出し、穴をボーンワックスで密閉し、頭皮を縫い合わせ、動物を回復について監視した。腫瘍移植後の4、7又は10日目に、対照ナノ粒子(0.05mg)の存在しない若しくは存在するPBS(10μL)、TRAIL複合型ナノ粒子(0.05mgのナノ粒子に複合された100ngのTRAIL)又は遊離TRAIL(100、200又は800ng)を、同一手法で同側又は対側半球中に移植した。選んだ時点又は罹患徴候の時点のどちらかで、生理食塩水、それに続く10%ホルマリンでの標準灌流を実施した。脳を取り出し、さらなる処置のため10%中性緩衝ホルマリン中に一夜浸漬した。蛍光で標識された腫瘍及びナノ粒子を可視化するために、選んだ時点で、生理食塩水での標準灌流を実施した。脳を取り出し、さらなる可視化に向けて、クライオスタットを使用して切片化のために急速凍結した。
【0131】
組織化学、免疫組織化学、ナノ粒子の可視化及びアポトーシスの検出:ホルマリンで固定した組織をパラフィン中に包埋し、切片化(5μm)し、組織形態学的評価のためにヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。ヘマトキシリンは、核、細胞質の酸性領域及び軟骨マトリックスを青色に染色する。エオシンは、細胞質の塩基性領域及びコラーゲン繊維をピンク色に染色する(Gartner及びHiatt、2001年)。5μmの切片を、60℃のオーブン中で1時間乾燥し、定型的にddH2Oに至るまで脱パラフィンした。ヒト細胞を検出するには、切片を1:250で希釈のヒトミトコンドリア抗体(Chemicon社、カタログ#H10060)と共にインキュベートした。免疫組織化学は、Biocare Medical Nemesis 7200(Concord社、カリフォルニア州)染色剤及び試薬を使用して実施した。切片を、Biocare Sniperブロックで7分間封鎖し、Biocare希釈液中、一次抗体と共に60分間インキュベートした。緩衝液で洗い流した後、切片を、アビジン−ビオチンで15分間封鎖した。洗い流した後、汎用リンク、続いて、HP(Biocare社)及びBetazoid DABを使用して抗原を検出した。緩衝液に続いてdH2Oで洗い流し、CATヘマトキシリンで10秒間対比染色した。対照切片を、一次抗体なしで処理した。
【0132】
ナノ粒子の可視化(青色)のためのゴモリ鉄反応染色(Sheehan及びHrapchak、1980年)を、ホルマリン固定パラフィン包埋組織からの5μm切片を利用して行った。5μm切片を60℃のオーブン中で1時間乾燥し、定型的にddH2Oに至るまで脱パラフィンした。残りのすべてのステップには、酸で洗浄したガラス器具を使用した。スライドを、等部の20%HCl及び10%ヘロシアン化カリウム水中に10〜20分間浸漬した。次いで、スライドを、ddH2O中で十分洗い流し、Nuclear Fast Redで2分間対比染色し、続いて脱水、洗浄し、次いでカバーガラスをかぶせた。各染色に対する陽性対照として脾臓の切片を使用した。
【0133】
アポトーシス細胞の染色は、アポトーシス細胞を特異的に検出するTUNEL染色(褐色染色)を使用して実施した(Shahら、2003年)。簡潔には、ホルマリン固定パラフィン包埋組織の染色を、Apoptag Peroxidase In Situ Apoptosis Detection Kit(Chemicon社、Temecula、カリフォルニア州)を製造業者の説明書に従って利用して実施した。簡潔には、ホルマリン固定パラフィン包埋組織からの5μm切片を、60℃のオーブン中で1時間乾燥し、定型的に脱パラフィンした。次いで、組織を、プロテイナーゼK(20μg/mL)で15分間、室温で前処理した。スライドをddH2O中で2回洗浄し、内在性ペルオキシダーゼを3.0%過酸化水素/PBS中、室温で5分間失活させた。スライドをPBS中で2回洗浄し、各スライドに75μL/5cm2の平衡緩衝液を少なくとも10秒間添加した。過剰の液体を軽く叩き落し、55μL/5cm2のTdT酵素を添加した。スライドを1時間インキュベートし、次いで、停止/洗浄緩衝液中で撹拌しながら15秒間、次いで室温で10分間洗浄した。次に、スライドを、3種のPBSでそれぞれ1分間洗浄し、続いて65μL/5cm2の抗ジゴキシゲニン複合体と共に30分間インキュベートした。4種のPBSでの各2分間に続いて、スライドを、75μL/5cm2のペルオキシダーゼ基質と共に室温で3〜6分間インキュベートした。スライドを、最後の3種のddH2Oでそれぞれ1分間洗浄し、ddH2O中で5分間インキュベートし、次いで、メチルグリーンを用い室温で10分間対比染色し、ddH2Oで洗浄し、100%n−ブタノールで洗浄し、キシレンで脱水し、パーマウント(permount)を用いてカバーガラスをかぶせた。
【0134】
造影:免疫組織学的及び組織化学的画像は、×10、×20及び×40の対物レンズをニコンDXM1200Cデジタルカメラに連結し、Dell Optiplex GX620コンピューター上のACT−1Cソフトウェアを使用してデジタル化された、ニコンEclipse E800M顕微鏡を使用して室温で撮影した。複合像作製のためにAdobe Photoshop中にTiff画像を取り込んだ。挿入写真は、Photoshopを使用して行われた拡大写真である。
【0135】
蛍光画像は、×4、×10及び×20の対物レンズをデジタルカメラに連結したニコンC1共焦点顕微鏡を使用して室温で撮影した。複合像作製のために、ビットマップ画像をAdobe Photoshop中に取り込んだ。
【0136】
インビボでのMR造影研究:適切な麻酔状態は、ハロタン(N2:O2が2:1の混合物中で、導入には3%、維持には0.7〜1.5%)を使用して得られた。麻酔されたラットを、BRUKERコンソール(Bellerica、マサチューセッツ州)にインターフェースで連結された7テスラの穴径20cmの超伝導マグネット(Magnex Scientific社、Abingdon、英国)中に配置した。最大勾配が45ガウス/cmの12cm自己シールド型勾配セットを使用した。ラジオ周波数(RF)のパルスを、動物頭骨の中心線上に配置された直径3.2cmの表面受信コイルからのTTL制御によって能動的にデカップルされた直径7.5cmのサドル型コイルによって印加した。脳定位固定イヤーバーを使用して、造影処理中の動きを最小化した。フィードバック制御されたウォーターバスを使用して、直腸温度を37±0.5℃に維持した。各MRIセッションでのマグネット中での動物の再現性ある配置のために、改変された迅速低角度撮影(FLASH)造影シーケンスを採用した。MR研究は、T1−及びT2−及びT2*加重MRIスキャンを使用して実施した。酸化鉄で標識された細胞を検出する場合、一般に採用されるスキャンは、T2*W勾配エコーである。T1−、T2−及びT2*加重MRIスキャンのための平均検査時間は、脳腫瘍のインビボ研究の場合、それぞれ、ほぼ9、13及び13分であった。MRIを取得するために、次のパラメーターを使用した:T1−加重多重スライスシーケンス(TR/TE=500/10ミリ秒、128×128マトリックス、13〜15スライス、1mm厚、32mm撮像視野(FOV)、励起回数(NEX)=4)。T2加重画像は、標準二次元フーリエ変換(2DTF)多重スライス(13〜15)多重エコー(6エコー)MRIを使用して得た。6セットの一連の画像(各セットに対して13〜15スライス)を、10、20、30、40、50及び60ミリ秒のTE並びに3000ミリ秒のTRを使用して得た。画像は、32mmのFOV、1mmのスライス厚、128×128のマトリックス、及びNEX=2を使用して作製した。T2*加重画像は、標準多重スライス(13〜15スライス)、多重勾配エコー(6エコー)MRIを使用して得た。6セットの一連の画像(各セットに対して13〜15スライス)は、5、10、15、20、25及び30ミリ秒のTE並びに3000ミリ秒のTRを使用して得た。画像は、32mmのFOV、1mmのスライス厚、128×128のマトリックス及びNEX=2を使用して作製した。T2及びT2*画像の両方を使用して、T2及びT2*マップを測定した。三次元(3D)勾配エコーMR画像は、TR=100ミリ秒、TE=6ミリ秒、10°のフリップ角(FA)、32×32×16mm3のFOV、256×192×64のマトリックス、及びNEX=1を使用して得た。全シーケンスの総時間はほぼ20分間であった。体温を維持するために、加熱パッドを使用した。直腸プローブを使用して、体温をモニターした。画像品質を3テスラと7テスラのMR装置間で比較するために、ランダムに選択された動物は、3テスラを使用するMRIを受けた。3テスラのMRIで造影する場合、適切な麻酔は、塩化ケタミン及びキシラジンを注入することによって達成された。加熱された覆布でラットを適切に覆って体温を維持した。
【0137】
7(i)神経膠腫動物モデルの確立
TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)のインビボでの効果を調べるために、2種の神経膠腫動物モデルを確立した。第1モデルでは、ヒトU87又はU251細胞を、ヌードマウス中に頭蓋内で移植した。第2モデルでは、新鮮な手術腫瘍検体からのヒト神経膠腫細胞を採用し、ヌードラット中に移植し、元々の腫瘍の初期特性を維持する腫瘍を作り出し、かくして様々な抗癌治療に対するこれらの腫瘍の応答を予測できる系を提供した。
【0138】
7(ii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫において細胞アポトーシスを誘導する
NP−TRAILのインビボでの効果を調べるために、異種移植片としてヒトU251神経膠腫細胞を採用した。腫瘍を7日間発育させ、その時点で、NP−TRAIL、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独又はPBSを腫瘍部位に頭蓋内で注入した。治療の7日後に、細胞アポトーシスの程度を調べた。細胞アポトーシスは、アポトーシス細胞を特異的に検出するTUNEL染色(褐色染色)を使用して判定した。図19は、NP単独又はNP−TRAILのどちらかで処理されたラットからの腫瘍切片を示す。示したように、NP単独は、有意な程度の細胞アポトーシスを誘導しなかったが、NP−TRAILは、TUNEL(褐色染色)陽性細胞によって判定されるような大規模な細胞アポトーシスを誘導した。なお、PBSで処理されたラットでも、有意な細胞アポトーシスは、示されなかった(データは示さない)。
【0139】
7(iii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫において生存を延長する
NP−TRAIL(100ng TRAIL)が生存上の利益を提供できるか否かを判定するために、PBS、NP単独又はNP−TRAILを、ヌードラット脳中の異種移植片ヒトU251腫瘍中に腫瘍内で直接的に送達した。次いで、動物を、罹患の徴候についてモニターし、任意の徴候の出現又は腫瘍移植後85日目の時点で安楽死させた。図20に示すように、NP−TRAILでの処理は、NP単独(p=0.0248)又はPBS(p=0.0288)のそれを超えて生存を有意に延長した。罹患時点での代表的腫瘍の顕微鏡写真を図21A〜21Cに示す。腫瘍罹患のために安楽死させた動物では大きな腫瘍が明らかであるが、打ち切った動物では腫瘍は明らかでない。しかし、これらの動物では若干の瘢痕形成が、明らかである(矢印)。各シリーズは、同一動物及び2mm離れた切片から撮影される。また、NP−TRAIL(100ng TRAIL)を含む10μLの注入されるPBSを100、200及び800ngのsTRAILに代えたsTRAILを用いて、類似の実験を完遂した。これらの実験は、PBSで観察されたものに類似の生存結果を示した。しかし、より高濃度のsTRAILでの実験は、オリゴデンドロサイトに対して若干の傷害を示した。
【0140】
7(iv)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫において腫瘍容積を低減する
腫瘍量に対するNP−TRAILの効果を判定するために、PBS、NP単独又はNP−TRAILを、ヌードラットの脳中の異種移植片ヒトU251腫瘍中に腫瘍内で直接的に送達した。腫瘍移植の21日後に動物を安楽死させ、切片化及びH&E染色のために脳を摘出した。脳を、2mmのブロックに切断し、処理し、明確な腫瘍をもつブロックを、5μmの切片に切断し、15番目毎に切片を確保しH&Eで染色し、このスライドに関する腫瘍容積を判定した。15番目毎のスライドに関する腫瘍の最大の幅及び高さを測定し、明白な腫瘍を有する各スライドに関して最大のW×HX(5×15)を乗算することによって総腫瘍量を決定し、これらの数を加算した。統計的有意性を、FischerのPLSDを使用するStatviewを用いて決定した(有意水準5%)。図22に示すように、NP−TRAILの投与は、NP単独又はPBSと比較して腫瘍量を有意に低減した。NP単独とPBS投与の間で有意差は認められなかった。
【0141】
7(v)腫瘍追跡能力
NPが移植部位から腫瘍増殖部位に移動する能力は、特に脳腫瘍の療法に対する、NPの有用な治療潜在能力である。したがって、その能力を判定するために、0日目に、U251腫瘍細胞をヌードラットの脳の左半球中に移植し、7日後に、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)を腫瘍移植と同方向ではあるが対側半球中に投与した。11日目(NPR投与の4日後)に、動物を安楽死させ、生理食塩水で灌流し、脳を取り出し、凍結切片化及び共焦点顕微鏡法での分析のために急速凍結した。図23に示すように、NPRは、脳梁に沿って追跡することが容易に認められる。若干のNPRは、むしろ腫瘍塊から遠い方に移動するが、大部分のNPRは、左半球中の腫瘍塊に向かって移動していることが認められた。類似の挙動が、ローダミン標識化TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)について観察された。
【0142】
7(vi)腫瘍破壊
この実験では、腫瘍を破壊するNP−TRAILの能力を判定した。詳細には、0日目に、ヌードラットにU251n腫瘍を移植した。7日目に、NP−TRAIL、NP単独又はPBSを新生物内で投与し、14日目に、動物を安楽死させ、組織を摘出した。図24に示すように、NP−TRAILの投与は、NP単独又はPBSを投与された動物では認められなかった、腫瘍塊の底部における大きな腫瘍破壊領域の発生につながった。NP−TRAIL投与に続いて、多くの壊死及びアポトーシス細胞が、この領域内に認められたが(右パネル)、NP又はPBS投与の後では認められなかった。図25は、療法に続く腫瘍破壊領域の大きな拡大を示している。
【0143】
7(vii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、MRIで示されるように、ヌードラット内に移植されたヒト神経膠腫異種移植片の境界及び内部に到達する
U251nヒト神経膠腫細胞をヌードラットに移植し、11日後に、NP又はNP−TRAILを、腫瘍の対側側に頭蓋内で注入した。8日後に、MR画像を得た。図26A〜26Bに示すように、NP−TRAIL(26B)は、腫瘍の縁端及び内部の両方で、NP単独(26A)に比較してより低いシグナル強度を誘導した。低い強度は、ナノ粒子の存在を暗示する。
【0144】
7(viii)腫瘍細胞によるTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のインビボ取り込み
GFP−U251腫瘍細胞を移植して7日後に、腫瘍塊内にNPR単独又はNPR−TRAILを直接的に移植した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれNPR及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示している)のために急速凍結した。図27に示すように、NPR単独は、腫瘍細胞の周辺領域中に見出されたが、腫瘍細胞と共存せず(パネルD、E、F)、NPR−TRAILは、腫瘍細胞と共存して腫瘍破壊領域中に見出された(パネルG、H、I)。さらに、NPR−TRAILで処理された動物中で認められる腫瘍は、PBS又はNPRで処理された動物の両方中で認められる腫瘍に比較して退化していることを示しており、この切片中で明瞭に認められる腫瘍細胞は、ほんの少数であった。この実験は、例6(v)においてインビトロで示されたように、TRAILが、腫瘍細胞のNP取り込みにつながったことを示している。
【0145】
7(ix)cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の神経膠腫への移動
GFP−U251腫瘍細胞を移植して7日後に、cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−cRGD、約2μgのcRGDペプチドに複合された0.05mgのナノ粒子を含む10μL)を、脳の対側側に注入した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれNPR及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示している)のために急速凍結した。図28は、NPR−cRGDが、腫瘍部位に移動したことを示している。
【0146】
7(x)cRGDペプチド及びTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の損傷部位に向けた移動
損傷は、脳の左側でのPBSのニードル注入によって誘導した。4日後に、5μL(25μg)のNPR単独、NPR−TRAIL(50ng TRAIL)及びNPR−cRGDを、脳の対側側に注入した。4日後に、動物を屠殺し、蛍光顕微鏡下でNPRの蛍光を可視化した。図29に示すように、脳の反対側にNPRは殆ど存在しなかったが、それらの分布は豊富であった。NPR−TRAILは主として損傷部位に沿って局在した。対照的に、NPR−cRGDは、損傷脳の側の全体にわたって、さらに脳梁に沿って分布した。これらの結果は、ナノ粒子が、損傷部位を追跡する若干の能力を有すること、及びNPR−TRAILが、損傷部位での選択的蓄積を示すことを示唆している。NPR−cRGDは、追跡能力を有するが、それらの分布は、損傷部位に限定されず、それらは、やはりそこに蓄積する炎症細胞に結合する可能性がある。これらの結果は、薬物を脳損傷、脳卒中及び脳の炎症性疾患に送達するためにNP系を使用することに対して重要な関連を有する。
【0147】
(例8)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の膀胱癌細胞、乳癌細胞及び正常乳腺細胞に対する細胞毒性効果
これらの実験では、TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の神経膠腫細胞以外の各種癌細胞に対する細胞毒性効果を判定した。詳細には、使用する癌細胞系は、膀胱癌細胞TSU−PR1及び乳癌細胞MDA−MBとし、対照として正常乳腺細胞MCF10Aを使用した。加えて、プロテアソーム阻害薬(PS)、大部分の細胞内タンパク質分解の原因である多触媒性プロテイナーゼ複合体と組み合わせたNP−TRAILのこれらの細胞に対する効果を研究した。プロテアソームの薬理学的阻害薬は、インビトロ及びインビボで抗腫瘍活性を有する。前臨床研究は、プロテアソームの阻害が、TRAILなどのその他癌治療薬の活性を、部分的には化学療法抵抗性の経路を下向き調節することによって増強することを立証している。
【0148】
細胞(1×105/ウェル)を、PS(5mM)の不在又は存在下で、様々な濃度のTRAIL(10〜100ng/mL)、NP又はNP−TRAIL(10〜40ng TRAIL/mL)で処理した。細胞死は、24時間後にLDHアッセイを使用して判定した。100%の細胞死は、Triton X−100で処理された細胞中で判定し、データを正規化した。
【0149】
図30A〜30Bに示すように、正常乳腺細胞MCF10Aは、上記処理のすべてに対して応答せず、これらの処理が正常細胞に対して非毒性であることを示した。さらに示すように、NP−TRAILの活性は、PSでの処理の後で増強された。この発見は、特に効果的な治療戦略を計画する場合に、大きな重要性を有する可能性がある。
【0150】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマー(該ポリマーには少なくとも1種の活性薬剤が共有結合で結合している)からなるナノ粒子、並びにその医薬組成物及び使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、大きさが数ナノメートルから0.1μmまでの範囲の球状粒子である。粒度分布の狭いナノスケールのポリマー性粒子は、一般に、制御された沈殿法又は不均一重合技術によって、例えば、最適な乳化又は逆乳化重合法によって形成される。固体材料の特性は、それらの大きさをナノメートルサイズの領域にまで縮小すると、劇的な変化を受ける。粒子が小さいほど、それらを構成する原子の部分がより大きく表面に配置されることに留意することが重要である。特に約20nm未満の大きさのナノ粒子は、大きな材料では観察されない表面及び界面現象、例えば、より低い融点及び沸点、より低い焼結温度及び低減された流動抵抗を顕著に示す。
【0003】
それらの球状形状及び大きな表面積を考慮すると、ナノスケールの粒子は、複合材料、触媒、三次元構造体及び光工学的用途などの材料科学における多様な諸問題に対して巧妙な解決策を提供する可能性があり、さらには、特異的な細胞標識及び分離、細胞増殖、アフィニティークロマトグラフィー、診断、血液灌流による特異的血液浄化、薬物送達及び制御放出などの生物医学的応用で使用できる(Bockstallerら、2003年;Hergtら、2004年;Margelら、1999年)。それぞれの応用は、種々の最適な物理的及び化学的特性を有するポリマー性ナノ粒子を必要とする。種々の表面化学、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、ピリジン、アミド、アルデヒド及びフェニルクロロメチルなどの多様な表面官能基を有する多種類のナノスケール粒子の合成及び使用が、既に、発表されている(Margelら、1999年)。このようなナノ粒子は、多様な工業的及び医学的応用、例えば、酵素固定化、オリゴヌクレオチド及びペプチド合成、薬物送達、特異的な細胞標識及び分離、医療用造影、生物学的接着剤、及び難燃性ポリマーに向けて設計されている。(Bunkerら、1994年;Szymonifka及びChapman、1995年;Margelら、1999年;国際公開第2004/045494号;Galperinら、2007年)。
【0004】
特に興味があるのは、望ましくない化合物から磁界によって粒子及び/又はその複合体を分離するのに通常使用される磁気特性をもつ粒子である。それらの磁気特性のため、これらの粒子は、磁気記録、磁気シーリング、電磁遮蔽及び生物医学的応用などのいくつかのさらなる重要な応用を有する。磁性酸化鉄、すなわちマグネタイト及びマグヘマイトのナノ粒子は、生物医学的応用、例えば、磁気温熱療法、磁気ドラッグターゲッティング、磁気細胞分離のために、及びMRI造影剤として研究されてきた主要な粒子である(Lacosteら、1993年;Green−Sadanら、2005年;Leemputten及びHorisberger、1974年;Hergtら、2004年)。磁性酸化鉄ナノ粒子は、非毒性で生分解性があり、MRI造影剤としての臨床的使用が既に承認されている。これらのナノ粒子は、通常、化学量論的濃度の第一鉄及び第二鉄イオン、並びにデキストランなどのポリマー性安定剤を含む水性溶液に、塩基、例えば、NaOH又はアンモニアを、pHが塩基性(通常は8.0より高く)となるまで添加することによって調製される。得られた被覆磁性酸化鉄ナノ粒子を、次いで、種々の方法によって、例えば、磁気カラム又は透析によって洗浄する。有効な酸化鉄磁性ナノ粒子を合成するための広範な努力が、この数年実施されてきたが、これらのナノ粒子の殆どは、インビボでの医学的応用で有毒であると考えられる広い粒度分布、鉄イオンの溶脱、及び凝集進行に向かう不安定性などの重大な欠点をもつ。
【0005】
本明細書中に完全に開示されているように参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第99/062079号及び同一出願人の対応する欧州特許第1088315号B1は、鉄イオンとのキレートを形成するポリマー、例えば、水性溶液中に溶解されたゼラチン上への酸化鉄の制御された核形成、それに続く、該ゼラチン/酸化鉄核上への酸化鉄膜の薄層の段階的成長によって形成される、新規な均一磁性ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を開示している。これらの磁性ナノ粒子は、極めて狭い粒度分布で、且つ約10nmから100nmまで範囲の大きさで調製することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなり、少なくとも1種の活性薬剤が、該ポリマーに共有結合で結合している、ナノ粒子を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、上で規定したようなナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物、並びに各種使用方法を提供する。
【0008】
本発明の医薬組成物は、とりわけ、腫瘍を検出するのに;腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、又は患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに;腫瘍の増殖を低減又は阻害し、さらにその大きさを監視するのに;且つ候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答を評価するのに使用される可能性がある。加えて、これらの組成物は、炎症部位の検出及び前記炎症の治療に、並びに2型糖尿病、肥満、及び食欲不振の治療に使用される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
さらなる態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなり、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤が、該磁性金属酸化物の外表面に結合している、ナノ粒子を提供する。本発明は、さらに、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、これらのナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物、並びに各種使用方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を4回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である。
【図1B】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を5回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である。
【図1C】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を6回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である
【図1D】例1に記載のように、成長ステップ中に薄い磁性被覆加工を7回繰り返すことによって調製された、増大した平均直径を有するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を示す図である。
【図2】例1に記載のように調製され、且つ水に分散されたゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子の直径のヒストグラムを示す図である。
【図3A】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の高分解能TEM(HTEM)を示す図である。
【図3B】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の電子線回折(ED)画像を示す図である。
【図4】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンを示す図である。
【図5】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のメスバウアースペクトルを示す図である。
【図6】例1に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子について得られた室温での磁化(VSM)ループを示す図である。
【図7】例2に記載のような、蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の調製の核形成ステップを図解した図である。
【図8】10℃での35日間の、遊離の腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)の安定性を、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子に複合されたTRAIL(NP−TRAIL)と比較して示した図である。
【図9A】ヒトA172神経膠腫細胞における、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)、遊離TRAIL(100ng/mL)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng/mL)によって誘導されるアポトーシスを示す図である。
【図9B】原発性HF2020腫瘍から確立された神経膠腫球における、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)、遊離TRAIL(100ng/mL)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng/mL)によって誘導されるアポトーシスを示す図である。
【図10】ヒト神経膠腫標本HF1254、HF1308及びHF2020から確立された神経膠腫球状体のアポトーシスに対する遊離TRAIL及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の効果を示す図である。球状体を、24穴プレート中に播種し、培地(Control)、TRAIL(100ng/mL)、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng/mL)で処理した。細胞死は、処理の24時間後にLDHアッセイを使用して判定した。結果は、2つの異なる実験における三つ組の平均±SEである。
【図11】神経膠腫細胞U87、A172及びU251に対する、並びに神経膠腫細胞HF1308、HF1254及びHF1316の一次培養に対する遊離TRAIL(100ng/mL)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、10ng TRAIL/mL)の細胞毒性効果を示す図である。ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独又はPBS(Control)は、対照として役立った。細胞死は、処理の24時間後にFACS分析によって判定した。
【図12】A172細胞に対する非蛍光の又は蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子に複合されたTRAILの細胞毒性効果を示す図である。A172細胞を、対照ナノ粒子(NP−Control)、TRAIL複合型非蛍光ナノ粒子(NP−TRAIL)、対照ローダミン標識化ナノ粒子(NPR−Control)又はTRAIL複合型ローダミン標識化ナノ粒子(NPR−TRAIL)と共に5時間インキュベートした。細胞アポトーシスは、プロピジウムヨージド染色及びFACS分析を使用して判定し、結果は、3つの異なる実験の平均±SEである。
【図13】TRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)の神経膠腫細胞中への特異的内部移行を、正常な星状細胞と比較して示す図である。NPR−TRAILを、A172細胞と及び正常な星状細胞と共に30分間インキュベートし、細胞の免疫蛍光を、共焦点顕微鏡法を使用して判定した。結果は、類似の結果を与えた3つの実験の1つを表す。
【図14】U87、A172、U251及びLN−18神経膠腫細胞系に対するγ−照射及とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NR−TRAIL)との相乗効果を示す図である。細胞を、NP−TRAIL(5ng TRAIL/mL)と、又はゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独と共に24時間インキュベートするか、或いはγ−照射(10Gyを2時間)し、次いでNP−TRAIL(NP−TRAIL+Rad、5ng TRAIL/mL)と、又はNP単独(NP−Rad)と24時間処理した。細胞アポトーシスは、FACS分析によって判定した。
【図15】cRGDペプチド(cRGD)及びcRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−cRGD)は、両方とも、対照又はゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独で処理した細胞と比較して、神経膠腫U251細胞における自己貪食、すなわち断続染色の増加を誘導することを示す図である。
【図16】子宮頸癌細胞系HeLa、乳癌細胞系MCF−7及び肺癌細胞A549のアポトーシスに対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の効果を示す図である。各種細胞系を、TRAIL(100ng/mL)、NP−TRAIL(50ng TRAIL/mL)、ナノ粒子(NP)単独又はPBS(Control)と共に24時間インキュベートし、データを、平均±SEとして示す。
【図17A】腫瘍標本2355から確立された神経膠腫幹細胞球状体に対するγ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)との相乗効果を示す図である。細胞を、TRAIL(100ng/mL)、ナノ粒子(NP)単独(Control)又はNP−TRAIL(50ng/mL)のどれかと24時間処理し、次いで、上清液を捕集し、LDH分析を実施した。照射(IR)とTRAILとの併用効果を評価するために、細胞を、まず5Gyの放射線で照射し、4時間後にTRAIL又はNP−TRAILのどちらかでさらに24時間処理した。細胞死は、培養上清液中のLDH濃度を使用して判定した。結果は、3つの同じ実験の中の、三つ組で実施された1つの実験を表す。
【図17B】腫瘍標本2303から確立された神経膠腫幹細胞球状体に対するγ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)との相乗効果を示す図である。細胞を、TRAIL(100ng/mL)、ナノ粒子(NP)単独(Control)又はNP−TRAIL(50ng/mL)のどれかと24時間処理し、次いで、上清液を捕集し、LDH分析を実施した。照射(IR)とTRAILとの併用効果を評価するために、細胞を、まず5Gyの放射線で照射し、4時間後にTRAIL又はNP−TRAILのどちらかでさらに24時間処理した。細胞死は、培養上清液中のLDH濃度を使用して判定した。結果は、3つの同じ実験の中の、三つ組で実施された1つの実験を表す。
【図18】卵巣癌細胞のアポトーシスに対するIL−12及びIL−12複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−IL−12)の効果を示す図である。卵巣癌細胞を、培地単独、IL−12(50ng/mL)、ナノ粒子(NP、50μg/mL)単独又はNP−IL−12(50ngの結合IL−12/mL)で処理し、24時間インキュベートし、次いで、LDHアッセイを使用して細胞死について分析した。
【図19】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)又はナノ粒子(NP)単独のどちらかで処理されたラットからの腫瘍切片を示す図である。ラット脳中の異種移植片としてヒトU251神経膠腫細胞を採用し、腫瘍を7日間発育させ、その時点で、NP又はNP−TRAILのどちらかを腫瘍部位に頭蓋内で注入した。処理の7日後に、PBS(示さない)、NP又はNP−TRAILで処理された対照ラットの腫瘍における細胞アポトーシスの程度を調べ、細胞アポトーシスを、アポトーシス細胞を特異的に検出するTUNEL染色(褐色染色)を使用して判定した。
【図20】ヒトU251を移植されたラットの生存に対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の効果を示す図である。腫瘍細胞移植の7日後に、ナノ粒子(NP)単独、NP−TRAIL又はPBSを腫瘍中に直接的に注入し、動物を、窮迫及び/又は罹患の徴候について観察し、その時点で安楽死させた。
【図21】罹患時点での腫瘍容積に対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)(21C)の効果をナノ粒子(NP)単独(21B)又はPBS(21A)投与と比較して示す図である。ラットを安楽死の時点でホルマリン灌流し、脳を摘出し、H&E染色を実施した。代表的な腫瘍容積切片を示す。一連の写真上の数字は、安楽死の日を表す。
【図22】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の投与が、ナノ粒子(NP)単独又はPBSの投与と比較して、総合的な腫瘍量の減少をもたらすことを示す図である。ラットに頭蓋内でヒトU251細胞を移植し、7日後に、NP−TRAIL、NP又はPBSを投与した。21日目に動物を安楽死させ、脳組織を摘出し、容積測定のため切片に切断した。スライドを、この判定で使用されるすべてのスライドに対して同一の設定で写真記録した。容積を、15枚目毎の5μm切片について腫瘍の最大幅及び長さを測定することによって判定した。各切片の容積を判定し、腫瘍端に達するまで次に測定される切片までの切片数を乗算する。
【図23】腫瘍増殖部位を追跡するゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)の能力を示す図である。U251腫瘍細胞移植の7日後に、ローダミン標識化NP(NPR)を、ラット脳の対側半球中に移植した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影のために急速凍結した。パネルA、D及びGは、NPR注入部位に近い脳梁部分におけるNPRの画像を示し;パネルB、E及びHは、NPR移植の部位を示し;パネルC、F及びIは、腫瘍細胞部位に近い脳梁部分におけるNPRの画像を示す。倍率は、4×(パネルA、B、C);10×(パネルD、E、F);及び20×(パネルG、H、I)である。
【図24】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の投与が、具体的にはパネルb、d及びfで示される大きな領域の組織破壊をもたらし、これは、ナノ粒子(NP)単独又はPBS投与のどちらでも観察されないことを示す図である。0日目に、ヌードラットにU251n腫瘍を移植し;7日目に、NP−TRAIL、NP単独又はPBSを腫瘍内で投与し;14日目に、動物を安楽死させ、組織を摘出した。NP−TRAIL(パネルa〜f);NP(パネルg〜l);PBS(パネルm〜r)。倍率は、1×(パネルa、c、e、g、i、k、m、o、q);10×(パネルb、d、f、h、j、l、n、r)である。矢印は、腫瘍塊の下部を示す。
【図25】TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)を受け入れたラットにおける腫瘍細胞破壊の増加を、ナノ粒子(NP)又はPBSの単独と比較して示す図である。0日目に、動物にヒトU251n細胞を移植し、7日目に、PBS、NP又はNP−TRAILを投与した。14日目に、動物を安楽死させ、脳組織を処理し、ヘマトキシリン(hemotoxylin)及びエオシン染色した。PBS(パネルa〜b);NP(パネルc〜e);NP−TRAIL(パネルf〜h)。倍率は40×。
【図26】MRIによって示されるように、TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)(26B)は、ナノ粒子(NP)単独(26A)と比較して、腫瘍の縁端及び内部の両方でより低いシグナル強度を誘導することを示す図であり、NP−TRAILが、ヌードラット内に移植されたヒト神経膠腫異種移植片の境界及び内部に到達することを示している。U251nヒト神経膠腫細胞をヌードラット中に移植し、11日後に、NP又はNP−TRAILを腫瘍の対側側に頭蓋内で注入した。8日後に、MR画像を得た。各図は、MRIの4連続切片を示し、各切片は、エコー時間(TE)を異にする4枚の画像を有する。より長いTE(小ボックス中の右下画像)。鉄によるより大きなシグナル強度損失(黒色)。R−右;L−左;IS−注入部位(左);Tm−腫瘍(右);LV−脳側室;及び3V−第三脳室。
【図27】インビボで腫瘍細胞によって取り込まれるTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)の能力を示す図である。GFP−U251腫瘍細胞移植の7日後に、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)単独又はNPR−TRAILを、腫瘍塊内に直接的に移植した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれNPR及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示す)のために急速凍結した。パネルG、H及びIに示すように、NPR−TRAILは、腫瘍塊の領域に見出されるばかりでなく、腫瘍細胞と共存している(パネルI)。しかし、NPR単独は、腫瘍塊の領域中に見出されるが、腫瘍細胞と共存していない(パネルD、E、及び特にF)。対照動物は、PBSで処理した。
【図28】cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−cRGD)は、インビボで腫瘍細胞に向かって移動することを示す図である。GFP−U251腫瘍細胞移植の7日後に、NPR−cRGD(約2μgのcRGDペプチドに結合している0.05mgのナノ粒子を含む10μL)を、ヌードラット脳の対側側に注入した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれ、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示す)のために急速凍結した。
【図29】cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−cRGD)及びTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)が両方ともインビボで損傷部位に向かって移動することを示す図である。損傷は、脳の左側でのPBSのニードル注入によって誘導し、4日後に、5μL(25μg)のローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)単独、NPR−TRAIL(50ngの結合TRAIL)及びNPR−cRGDを、脳の対側側に注入した。4日後に、動物を屠殺し、NPRの蛍光を、蛍光顕微鏡下で視覚化した。示したように、NPRは、脳の他の部位に殆ど存在しなかったが、それらの分布は豊富であった。NPR−TRAILは、主として損傷部位に沿って局在した。対照的に、NPR−cRGDは、損傷脳側の全体にわたって及び脳梁に沿って分布した。
【図30A】膀胱癌腫瘍細胞TSU−PR1に対する、TRAIL(10〜100ng/mL)、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、TRAILに結合している10〜40ng/mL)のプロテアソーム阻害薬(PS、5mM)の不在又は存在下の両方での効果を示す図である。24時間後に、細胞死を、LDHアッセイを使用して判定した。100%の細胞死は、Triton X−100で処理した細胞で判定し、データを正規化した。
【図30B】乳癌細胞MDA−MB及び正常乳腺細胞MCF10Aの両方に対する、TRAIL(10〜100ng/mL)、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、TRAILに結合している10〜40ng/mL)のプロテアソーム阻害薬(PS、5mM)の不在又は存在下の両方での効果を示す図である。24時間後に、細胞死を、LDHアッセイを使用して判定した。100%の細胞死は、Triton X−100で処理した細胞で判定し、データを正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなり、少なくとも1種の活性薬剤が該ポリマーに共有結合で結合しているナノ粒子を提供する。
【0012】
本発明の磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子は、あたかも本明細書中に完全に開示されているように参照によりその全体で本明細書に組み込まれる国際公開第99/062079号に開示されている磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子をベースにするが、さらに、該ナノ粒子内部のポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤を含む。このようなナノ粒子は、当技術分野で周知の任意の適した方法、例えば、後記の例1〜3に詳細に記載される方法によって、すなわち、少なくとも1種の活性薬剤が共有結合で結合している金属キレート形成ポリマー、例えば、ゼラチン(ここで、前記ポリマーは、水性溶液に溶解される)上への磁性金属酸化物、例えば、酸化鉄の制御された核形成、それに続く、ポリマー/金属酸化物核上への磁性金属酸化物薄膜層の段階的成長によって調製することができる。これらの例中で示されるように、この収率はほぼ100%である。
【0013】
後記の例1〜2では、金属キレート形成ポリマーとしてのゼラチン及び磁性金属酸化物としての酸化鉄からなる、本発明の磁性ナノ粒子の調製について説明する。これらの例中で示されるように、本発明の磁性ナノ粒子は、極めて狭い粒度分布で、且つ約10nm〜約100nmの範囲の大きさで調製できる。さらに、これらの例は、ナノ粒子の均一性、原子秩序、磁気特性及び結晶特性を詳細に示す。本発明のナノ粒子は超常磁性である、すなわち、それらは、磁界の存在下で磁化されるが、磁界の不在下で残留磁気は観察されない。
【0014】
例1〜2中に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の表面分析は、ナノ粒子の内部及び表面の両方にゼラチンが存在することを立証した。見出されたように、表面のゼラチンは、ナノ粒子、並びにそれを介して適切なリガンドを共有結合で結合できるカルボキシレート及び第一級アミンなどの官能基に対して、凝集に対抗するさらなる安定化を提供する。
【0015】
好ましくは、本発明のナノ粒子の大きさは、300nm未満、より好ましくは100nm未満である。
【0016】
本発明によれば、本発明のナノ粒子の調製に使用される金属キレート形成ポリマーは、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシレート、−SH、エーテル、イミン、ホスフェート又はスルフィド基などから選択される、金属イオン、特に鉄イオンを結合することができる官能基を有するポリマーでよい。好ましい実施形態において、金属キレート形成ポリマーは、ゼラチン、ポリメチレンイミン、キトサン又はポリリシン、より好ましくはゼラチンから選択される。
【0017】
一実施形態において、前記の金属キレート形成ポリマーを被覆する磁性金属酸化物は、酸化鉄又は酸化鉄から誘導されるフェライトである。酸化鉄は、マグネタイト、マグヘマイト、又はこれらの混合物でよく、フェライトは、式(Fe,M)3O4の酸化物であり、ここで、Mは、好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+又はNi2+から選択される遷移金属イオンである。好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子の調製に使用される磁性金属酸化物は、酸化鉄である。
【0018】
本発明によれば、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、限定はされないが、蛍光染料、造影剤、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択できる。
【0019】
一実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、蛍光染料である。蛍光染料の例には、限定はされないが、ローダミン又はフルオレセインが含まれる。
【0020】
別の実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、造影剤、すなわち、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)において体内構造の視認性を向上させるのに使用される化合物である。X線造影のための造影剤の例には、限定はされないが、非水溶性であり、嚥下される又は浣腸剤として投与される消化管中でのみ使用される、硫酸バリウムをベースにした造影剤、並びに身体の殆どどこでも、特に静脈内及び動脈内、鞘内(脊椎)及び腹腔内で使用できる、ヨウ素をベースにした水溶性造影剤が含まれる。一般に使用されるヨウ素化造影剤は、ジアトリゾエート(Hypaque50)、メトリゾエート(Isopaque Coronar370)、イオキサグレート(Hexabrix)、イオパミドール(Isovue370)、イオヘキソール(Omnipaque350)、イオキシラン(Oxilan)、イオプロミド及びイオジキサノール(Visipaque320)である。
【0021】
さらなる実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、ペプチド又はペプチド模倣体である。
【0022】
フィブロネクチン及びビトロネクチンなどの細胞外マトリックス要素のアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(Arg−Gly−Asp;RGD)モチーフは、インテグリンに結合し、インテグリンで媒介される接着は、細胞の生存、増殖及び移動を調節する細胞内シグナル伝達事象をもたらす。RGDを含むペプチドを選別するファージディスプレイ法によって得られるデータは、それらのペプチドが腫瘍血管の内皮内膜へ選択的に結合することを明らかにした。RGDペプチドは、また、シグナル伝達を遅延させ、細胞の移動に影響を及ぼし、腫瘍細胞の退縮又はアポトーシスを誘導する。内皮又は腫瘍細胞のどちらかのインテグリンへ結合することによって、RGDペプチドは、腫瘍転移過程にとって必須である、腫瘍細胞−細胞外マトリックス及び腫瘍細胞−内皮細胞の接着を阻害して細胞輸送をインビボで調節する能力がある。いくつかの研究は、RGDを含む化合物が、腫瘍細胞の転移過程をインビトロ及びインビボで妨害できることを指摘している。個々のインテグリンに対して特異的であるペプチドは、かなり興味深く、医学的意義があり得る。αvβ3インテグリンは、腫瘍血管新生に関連することが明らかにされた最初のインテグリンであり、αvβ3インテグリンを特異的に封鎖するRGDペプチドは、薬物を腫瘍血管系に向ける上での、腫瘍及び網膜の血管新生の阻害薬、骨粗鬆阻症の阻害薬としての有望性を示す。結果として、インテグリンに結合するペプチド及びペプチド模倣体を設計及び産生するのに多くの研究が注ぎ込まれた。
【0023】
好ましい一実施形態において、ペプチド又はペプチド模倣体は、かくして、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体である。より好ましい実施形態において、cRGDペプチドは、配列がシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−Lys(配列番号1)のcRGDペプチドである。
【0024】
よりさらなる実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、ポリペプチドである。
【0025】
腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL、Apo−2リガンド、Apo−2L又はTRAIL/Apo2Lとも呼ばれる)は、サイトカインに属する腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバーであり、その細胞死受容体の関与を介してアポトーシスを開始する能力がある。このファミリーのさらなるメンバーは、例えば、TNFα(TNFとも呼ばれる)、TNFβ、TL1A(TNF様リガンド)、リンホトキシン−β(LTβ)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX−40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも呼ばれる)、Apo−3リガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも呼ばれる)及びTALL−1(BlyS、BAFF又はTHANKとも呼ばれる)である(国際公開第2004/001009号;Wang及びEl−Deiry、2003年)。
【0026】
TRAILは、その細胞外ドメインのCD95L(28%同一)及びTNF(23%同一)との配列相同性をベースにして最初に同定されクローン化されたII型膜貫通タンパク質である。ヒトTRAILポリペプチドの天然配列は、281アミノ酸長であるが、若干の細胞は、細胞外領域のポリペプチドの酵素的開裂によって天然の溶性形態のポリペプチドを産生できる。他の殆どのTNFファミリーメンバーと同様、TRAILは、2つのそのサブユニット間の界面でそれぞれ受容体分子を結合するホモ三量体を生成する。実際、TRAILは、TNFリガンドファミリーの殆どと同様、異なる生物活性をもつことのできる膜結合形態及び可溶性形態の両方中に見出される。TNFファミリーの4つのメンバー、すなわち、Fasリガンド、TNFα、TL1A及びTRAILは、アポトーシスを誘導するそれらの能力ゆえに、卓越している。他のTNFファミリーメンバーとは異なり、可溶性TRAIL(sTRAIL)は、システイン残基が一緒にZn原子に配位し、三量体の安定性及び最適な生物学的活性にとって必須である特有の構造的特徴を有する。機能研究は、TRAILが、結腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳の腫瘍、並びに黒色腫、白血病及び多発性骨髄腫を含む各種腫瘍細胞系においてインビトロでアポトーシスを誘導する強力な能力を有するが、殆どの正常細胞ではそうではないことを示し、癌治療におけるその潜在的な治療的応用を強調した(国際公開第2004/001009号;Wang及びEl−Deiry、2003年;Ashkenaziら、1999年;Carlo−Stellaら、2007年;Smythら、2003年)。効力又は細胞死誘導に関してTRAILのように真に癌細胞特異的である薬剤は、極めて少数のみである。その発現がしっかりと調節され、且つ活性化細胞上で単に一過性で発現されることの多い他のTNFファミリーメンバーと対照的に、TRAILのmRNAは、広範な範囲の組織中で恒常的に発現される。TRAILの主な生物学的機能は、アポトーシスの誘導であると思われるが、このリガンドの完全な生理学的役割は、今なお完全には解明されていない。肝臓のナチュラルキラー(NK)細胞上でのTRAILの発現は、NK細胞の大部分が、野生型及びT−細胞欠乏マウス中でTRAIL及びIFNγの両方を恒常的に産生するので、NK細胞からオートクリン様式で分泌されるIFNγによって調節されるように思われる。マウスでの遺伝子ノックアウト研究は、TRAILが、免疫細胞による抗腫瘍監視において重要な役割を有すること、及びそれが、胸腺細胞のアポトーシスを媒介し、自己免疫疾患の誘導において重要であることを示した。
【0027】
TRAILは、その受容体との相互作用を介してアポトーシスを誘導する。これまで、TRAILに対するDR4、KILLER/DR5、DcR1(Trail−R3 TRID)及びDcR2(TRAIL−R4)を含む4種の相同ヒト受容体、並びに最初はRANKL/OPGL受容体として同定されるオステオプロテゲリン(OPG)と呼ばれる第5番目の可溶性受容体が同定されている。DR4及びDR5は、両方とも、保存デスドメイン(DD)モチーフを含み、アポトーシスシグナルを送ることができる。残りの3種の受容体は、過剰発現された場合にTRAIL誘導性アポトーシスを阻害するそれらの能力に対して「デコイ」として作用すると思われる。デコイ受容体1(DcR1)及びDcR2は、DR4及びDR5の細胞外ドメインに近い相同性を有する。DcR2は、切断型非機能性細胞質DDを有し、一方、DcR1は、サイトゾル領域を欠き、糖リン脂質部分を介して原形質膜につなぎ留められる。TRAILに対する受容体としてのOPGの生理学的関連性は、生理学的温度でのこのリガンドに対する親和性が極めて低いので、不明である。TRAILの選択的抗腫瘍活性に対して考え得る説明は、デコイ受容体が、腫瘍細胞と比較して正常細胞中で優先的に発現され、TRAILの作用を妨害することである(国際公開第2004/001009号;Wang及びEl−Deiry、2003年;Carlo−Stella、2007年;Shahら、2003年)。もう1つの考え得る説明は、殆どの腫瘍細胞系が、アゴニストTRAIL受容体を発現するが、アンタゴニスト受容体をまったく又は検出できないレベルで発現することであり、一方、正常細胞は、アンタゴニストTRAIL受容体を発現することが見出されており、それゆえ、TRAILは、腫瘍細胞だけの選択的致死を可能にすることができる(Weiら、2006年)。
【0028】
初期の有望な結果にもかかわらず、最近の研究は、種々の腫瘍においていくつかのTRAIL抵抗性癌細胞を同定している。癌細胞のTRAILに対する抵抗性は、細胞死受容体の差別的発現を含むことのできる各種分子標的の調節を介して発現すると思われる。細胞死受容体のシグナル伝達経路の分子的解析をベースにして、TRAILの効力を高めるために、TRAILと組み合わせた通常的抗癌薬の投与又は照射を含むいくつかの新たな取り組みが開発されている(Shankar及びSrivastava、2004年;Smythら、2003年)。
【0029】
したがって、好ましい一実施形態において、ポリペプチドは、サイトカイン、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β;TNF関連サイトカイン又はインターロイキン(IL)である。TNF関連サイトカインの非制限的例には、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド及びApo−3リガンドが含まれ、TRAILが好ましい。最も好ましい実施形態において、サイトカインはTRAILである。インターロイキンの非制限的例には、抗腫瘍活性を有する任意のインターロイキンが含まれ、IL−12、IL−23及びIL−27が好ましい。
【0030】
別の実施形態において、ポリペプチドは酵素である。
【0031】
さらなる実施形態において、ポリペプチドは、アバスチン又はレミケードなどの抗体である。アバスチンは、血管内皮増殖因子(VEGF)に対抗するモノクローナル抗体であり、新たな血管の形成を封鎖することによって腫瘍の増殖を阻害するための癌治療で使用される。レミケードは、TNFα、炎症応答をトリガーし且つ維持する鍵となるサイトカインの1つに結合すること、及びそれがTNFα受容体に結合するのを防止することによって自己免疫障害を治療するのに使用されるモノクローナル抗体である。
【0032】
よりさらなる実施形態において、ポリペプチドは、ホルモン、すなわち、インスリン、オベスタチン又はグレリンなどのポリペプチドホルモンである。
【0033】
別の実施形態において、金属キレート形成ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤は、小分子である。
【0034】
好ましい一実施形態において、小分子は、アントラサイクリン化学療法薬である。アントラサイクリン化学療法薬は、ダウノルビシン(アドリアマイシンとしても知られる)、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロンを含むアントラサイクリンファミリーの任意の化学療法薬でよい。より好ましい実施形態において、アントラサイクリン化学療法薬は、キニン含有アントラサイクリンであり、腫瘍学において最も広範に処方され、利用される効果的な化学療法薬であるドキソルビシンである。ドキソルビシンは、膀胱、胃、卵巣、肺及び甲状腺の腫瘍を含む広範な範囲のヒト悪性腫瘍で指示され、乳癌、並びに急性リンパ芽球性及び骨髄性白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、ユーイング及び骨原生骨腫瘍、軟部組織肉腫、及び小児癌(神経芽細胞腫及びウィルムス腫瘍など)を含むその他の徴候の治療に利用できる最も活性のある薬剤の1つである。
【0035】
別の好ましい実施形態において、小分子は、葉酸代謝拮抗薬、すなわち、葉酸の機能を損なう薬物である。葉酸代謝拮抗薬のよく知られ且つ好ましい例が、酵素であるジヒドロ葉酸レダクターゼを阻害し、かくしてプリン及びピリミジン合成にとって必須であるテトラヒドロ葉酸の形成を防止し、結果としてDNA、RNA及びタンパク質の産生阻害をもたらす葉酸類似体である、メトトレキセートである。葉酸代謝拮抗薬のその他の例には、トリメトプリム、ピリメタミン及びペメトレキセドが含まれる。葉酸代謝拮抗薬はヌクレオチドの代謝を妨げるので、それらの作用は、急速に分裂する細胞を特異的に標的とする。
【0036】
さらなる好ましい実施形態において、小分子は、抗生物質である。
【0037】
さらに別の好ましい実施形態において、小分子は、アミン由来ホルモン、すなわち、アミノ酸であるチロシン及びトリプトファンの誘導体である。アミン由来ホルモンの非制限的例には、カテコールアミン、例えば、エピネフリン、ノルエピネフリン及びドーパミン、並びにチロキシンが含まれる。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態において、小分子は、脂質又はリン脂質由来ホルモン、すなわち、リノール酸及びアラキドン酸などの脂質並びにリン脂質から誘導されるホルモンである。脂質及びリン脂質由来ホルモンの主な部類が、コレステロールから誘導されるステロイドホルモン、例えば、テストステロン及びコルチゾール、並びにエイコサノイド、すなわち、プロスタグランジンである。
【0039】
よりさらなる好ましい実施形態において、小分子は、抗炎症薬である。
【0040】
抗炎症薬は、痛風のための標準的治療であるコルチコステロイド、アルカロイドコルヒチン、或いは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、限定はされないが、アスピリン、コリン及びサリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサール、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサレート、サリチル酸ナトリウム、スリンダック、トルメチンナトリウム及びバルデコキシブから選択できる。
【0041】
前記のすべてを考慮して、1つの好ましい実施形態において、金属キレート形成ポリマーはゼラチンであり、金属酸化物は酸化鉄であり、ゼラチンに共有結合で結合している薬剤は、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、又は(v)これらの組合せから選択される。より好ましい実施形態において、ゼラチンに共有結合で結合している前記少なくとも1種の薬剤は、蛍光染料又はTRAILである。
【0042】
本発明によれば、前に規定したナノ粒子は、磁性金属酸化物の外表面に物理的に又は共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤をさらに含むことができ、ここで、前記少なくとも1種の活性薬剤は、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤と同一又は異なるものである。
【0043】
一実施形態において、前記活性薬剤は、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している。
【0044】
後記の例4中で示されるように、磁性ナノ粒子を各種のポリマー、例えば、多糖類、タンパク質及びポリエチレングリコールで被覆することによって、これらの磁性ナノ粒子を安定化し、且つ外面の官能基をこれらの磁性ナノ粒子に共有結合で結合するための各種技術が確立された。これら被覆の官能基を、次いで、種々の試薬、例えば、タンパク質、酵素及び生物医学的応用のための薬物を共有結合させるのに使用した。
【0045】
したがって、一実施形態において、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している活性薬剤は、実際には、磁性金属酸化物表面に結合した官能基を含む分子を介して結合している。いくつかの実施形態において、この分子は、多糖類、より好ましくはキトサン;タンパク質、より好ましくはゼラチン又はアルブミン;ペプチド;或いはポリアミンから選択されるポリマーを含む。
【0046】
別の実施形態において、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している活性薬剤は、実際には、磁性金属酸化物外表面に結合した活性化リガンドを介して結合している。好ましい実施形態において、活性化リガンドは、塩化アクリロイル、ジビニルスルホン(DVS)、ジカルボニルイミダゾール、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)又はm−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルである。より好ましい実施形態において、活性化リガンドはDVSである。
【0047】
上述のように、いくつかの場合では、活性化リガンドを、さらに、金属酸化物被覆の外側に伸びたポリマーに結合できる。
【0048】
例5中で示されるように、活性薬剤を、磁性金属酸化物の外表面に物理的に結合することもできる。この物理的結合は、活性薬剤(単数又は複数)と磁性金属酸化物の外表面との間の非共有結合性相互作用、例えば、疎水性結合、イオン性相互作用及び水素結合に基づく。
【0049】
したがって、別の実施形態において、(b)の活性薬剤(単数又は複数)は、磁性金属酸化物の外表面に物理的に結合している。
【0050】
本発明によれば、磁性金属酸化物の外表面に結合している少なくとも1種の活性薬剤は、限定はされないが、ポリマーに共有結合で結合している活性薬剤について前に規定したような、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択できる。一実施形態において、前記ペプチド又はペプチド模倣体は、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドは、サイトカイン、酵素、抗体、好ましくはアバスチン又はレミケード、或いはホルモン、好ましくはインスリン、オベスタチン又はグレリンであり;前記サイトカインは、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン、或いはインターロイキン(IL)、好ましくは抗腫瘍活性を有するIL、より好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27から選択され;前記小分子は、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬、抗生物質、アミン由来ホルモン、脂質又はリン脂質由来ホルモン、抗炎症薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬から選択される。
【0051】
磁性金属酸化物の表面に共有結合又は物理的のどちらかで結合している活性薬剤(単数又は複数)の濃度は、結合形成パラメーター、例えば、工程中での活性薬剤(単数又は複数)濃度を変更することによって制御できる。
【0052】
好ましい一実施形態において、本発明は、前に規定したようなナノ粒子を提供し、ここで、前記ポリマーはゼラチンであり、前記磁性金属酸化物は酸化鉄であり、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、又は(v)これらの組合せから選択され、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、(vi)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(vii)cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、(viii)抗腫瘍活性を有するインターロイキン、好ましくはIL−12、又は(ix)これらの組合せから選択される。より好ましい実施形態において、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、蛍光染料又はTRAILであり、磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤はTRAILである。
【0053】
別の態様において、本発明は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0054】
本発明の医薬組成物は、各種の生物学的、医学的及び治療的応用のために使用できる。
【0055】
一実施形態において、本出願の医薬組成物は、診断、薬物安定化、薬物送達及び薬物の制御放出に使用される。
【0056】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、蛍光染料である。この医薬組成物は、腫瘍検出のために使用できる。
【0057】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、造影剤である。この医薬組成物は、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)に使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)のための方法に関する。
【0058】
好ましい実施形態において、この組成物は、磁性金属酸化物の外表面に結合している腫瘍特異的細胞マーカーを結合することができる分子をさらに含むことができる。この組成物は、腫瘍の検出に使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前に規定したような医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の検出方法に関する。
【0059】
用語「腫瘍特異的細胞マーカーを結合することができる分子」は、本明細書中で使用する場合、腫瘍に付随する抗原に向けられた抗体又はそのフラグメント;腫瘍に付随するリガンドに特異的な受容体又はそのフラグメント;或いは腫瘍に付随する受容体のリガンドを指す。
【0060】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくは、ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含み、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、同一又は異なって、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される。好ましい実施形態において、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TRAIL、ドキソルビシン、メトトレキセート又はこれらの組合せから選択され、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される。この医薬組成物は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残存している腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに使用できる。本発明は、かくして、さらに、前記患者に前記医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の増殖を低減又は阻害する、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害する方法に関する。
【0061】
よりさらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤は、蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される。好ましい実施形態において、磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される。この医薬組成物は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、及びその大きさを監視するのに使用できる。本発明は、かくして、さらに、前記患者に前記医薬組成物を投与することを含む、患者における腫瘍の増殖を低減又は阻害する、及びその大きさを監視する方法に関する。
【0062】
用語「腫瘍」は、本明細書中で使用する場合、限定はされないが、脳腫瘍、好ましくは神経膠腫、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、白血病又は多発性骨髄腫、好ましくは神経膠腫などの任意の腫瘍、並びにそれらの転移を指す。好ましい実施形態において、腫瘍は神経膠腫である。
【0063】
脳腫瘍、特に悪性神経膠腫は、最も侵襲性のヒト癌に属する。悪性神経膠腫を有する患者は、これらの脳腫瘍が、従来の癌治療である放射線又は化学療法に殆ど応答しないので、不幸な予後を有する(Weiら、2006年)。神経膠腫の侵襲性の性質の原因となる特徴には、広範な脳水腫及び高度の血管新生に加えて、急速な増殖、遠い脳領域へのびまん性増殖及び浸潤が含まれる。悪性神経膠腫を有する患者は、1年未満の生存期間中央値をもち、長期生存者は偶然に存在するだけである。腫瘍と正常脳組織とを区別する上での困難性、及び脳を浸潤する神経膠腫の並外れた能力は、神経膠腫の療法及び診断において深刻な難題を提起し(Gieseら、2003年)、現在、神経外科、放射線療法又は化学療法におけるさらなる進歩が、これらの患者の予後を相当に改善するとは予想されない(Desjardinsら、2005年)。
【0064】
さらに、現代臨床神経腫瘍学において、組織病理学的診断は、任意の他のパラメーターを超えて、治療決定及び予後推定に影響を及ぼす。残念ながら、星状細胞腫瘍のはなはだしい不均一性は、それらの病理学的分類をやや困難にしている(Sansonら、2004年)。現在、神経膠芽細胞腫に対する特異的マーカーは存在せず、これらの患者の診断は、腫瘍検体の組織学的評価によって判定される。さらに、マーカーは、低悪性度星状細胞腫の神経膠芽細胞腫への進行を予測するのに利用できない。したがって、神経膠腫に特異的なマーカーの同定は、脳腫瘍の診断、並びに予後及び低悪性度星状細胞腫の腫瘍への進行の予測を助けることができる。
【0065】
未分化型星状細胞腫及び多形性神経芽細胞腫を含む悪性神経膠腫は、最も一般的な原発性脳腫瘍である。現在の治療選択肢には、手術、放射線療法及び化学療法が含まれるが、予後は、極めて不良であり、かくして、代替治療手段の開発が、強く望まれる。遺伝子療法は、悪性神経膠腫に対する革新的な治療手段と考えられ、この10年間に、中枢神経系中での外来遺伝子の発現を可能にする送達システムの開発に大きな関心が寄せられてきた。この目的に関して、カチオン性アルブミンナノ粒子、リポソーム及び不完全複製単純ヘルペスウイルス(HSV)中に組み込まれた、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)をコードするプラスミド又はベクターが開発された。(Shahら、2003年;Van Meir及びBellail、2004年;Carlo−Stellaら、2007年;Wei Luら、2006年;Zhangら、2002年)。しかし、通常の治療に比べた遺伝子療法戦略の優越性に関する客観的な証拠を提供する、説得力のある臨床試験は出現していない。遺伝子療法に対する代わりの取り組みには、腫瘍中へのTRAILの直接送達が含まれる。この取り組みは、しかし、TRAILの制約された安定性及びその低いバイオアベイラビリティー、細胞膜を横切る上での非効率性、及び貧弱なインビボでの代謝安定性のため、難題を提示する(Denicourt及びDowdy、2004年;Shir及びLevitzki、2001年;Shahら、2003年;国際公開第2004/045494号)。
【0066】
したがって、好ましい実施形態において、腫瘍は神経膠腫である。
【0067】
本発明の医薬組成物は、腫瘍の増殖を、その大きさを監視して又はしないで、低減又は阻害すること、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害することを目指す場合に、放射線療法と組み合わせて使用することができる。それを考慮して、(i)腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、(ii)患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための、或いは(iii)腫瘍の増殖を低減又は阻害し、且つその大きさを監視するための、前に規定したような各種方法を、放射線療法と組み合わせて実施することができる。
【0068】
酸化鉄が炎症部位に誘引されることは周知であるので、よりさらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子を含有し、ここで、前記磁性金属酸化物は酸化鉄であり、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は抗炎症薬である。この医薬組成物は、個体における炎症部位の検出及び前記炎症の治療に使用することができる。本発明は、かくして、炎症部位を検出するための、及び前記炎症を治療するための方法に関するものであり、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む。
【0069】
さらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、それぞれ独立にインスリンである。この医薬組成物は、2型糖尿病を治療するのに使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、2型糖尿病を治療する方法に関する。
【0070】
さらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、それぞれ独立にオベスタチンである。この医薬組成物は、肥満を治療するのに使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、肥満を治療する方法に関する。
【0071】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子を含有し、ここで、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤は、それぞれ独立にグレリンである。この医薬組成物は、食欲不振を治療するのに使用できる。本発明は、かくして、必要とする個体に前記医薬組成物を投与することを含む、食欲不振を治療する方法に関する。
【0072】
さらなる態様において、本発明は、候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答性を評価する方法に関するものであり、前記腫瘍から採取された生検材料からの細胞を前に規定したような磁性ポリマー/金属酸化物複合ナノ粒子、好ましくはゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含み、ここで、ナノ粒子中の磁性金属酸化物の外表面に結合している活性薬剤は、評価される候補化合物であり、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択され、且つ該ナノ粒子は、ポリマーに共有結合で結合している蛍光染料又は造影剤を含む。
【0073】
別の態様において、本発明は、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなるナノ粒子を提供し、ここで、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に結合している。
【0074】
もっぱらナノ粒子の外表面に、並びに金属キレート形成ポリマー及び磁性金属酸化物に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子の大きさに関する各種の規定は、少なくとも1種の活性薬剤をポリマーに共有結合で結合するに際して前に規定した磁性ナノ粒子に関して規定したものと同じである。さらに、磁性ナノ粒子に関して規定したように、抗腫瘍活性を有する薬剤を、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で又は物理的に結合することができる。
【0075】
前に規定したように、抗腫瘍活性を有する薬剤は、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子でよい。
【0076】
一実施形態において、抗腫瘍活性を有する薬剤は、cRGDペプチド又はペプチド模倣体などのペプチド又はペプチド模倣体、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体である。好ましい実施形態において、cRGDペプチドは、配列番号1のcRGDペプチドである。
【0077】
さらなる実施形態において、抗腫瘍活性を有する薬剤は、サイトカイン、例えば、TNF−α、TNF−βなどのポリペプチド;TNF関連サイトカイン又はインターロイキンである。TNF関連サイトカインの非制限的例には、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、及びApo−3リガンドが含まれる。好ましい実施形態において、サイトカインは、TRAIL、IL−12、IL−23又はIL−27、より好ましくはTRAILである。
【0078】
さらに別の実施形態において、抗腫瘍活性を有する薬剤は、小分子である。小分子の非制限的例には、前に規定したようなアントラサイクリン化学療法薬及び葉酸代謝拮抗薬、好ましくはそれぞれドキソルビシン及びメトトレキセートが含まれる。
【0079】
一実施形態において、本発明は、もっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子を提供し、ここで、前記ペプチド又はペプチド模倣体は、cRGDペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドは、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TNF−α、TNF−β、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン;インターロイキン(IL)、好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27;或いは抗体、好ましくはアバスチンから選択されるサイトカインであり;前記小分子は、メトトレキセートから選択される葉酸代謝拮抗薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬、又はこれらの組合せから選択される。好ましい実施形態において、前記ポリマーはゼラチンであり、前記磁性金属酸化物は酸化鉄であり、且つ抗腫瘍活性を有する前記少なくとも1種の薬剤は、TNF又はTNF関連サイトカイン、アントラサイクリン化学療法薬、葉酸代謝拮抗薬、又はこれらの組合せである。最も好ましい実施形態において、抗腫瘍活性を有する前記少なくとも1種の薬剤は、TRAILである。
【0080】
さらに他の態様において、本発明は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、前に規定したようにもっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0081】
好ましい実施形態において、この医薬組成物は、もっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子を含有し、ここで、抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤は、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、ドキソルビシン、メトトレキセート又はこれらの組合せである。
【0082】
前に規定したように、もっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子は、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに使用することができる。本発明は、かくして、さらに、腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための方法に関するものであり、前記患者に前記医薬組成物を投与することを含む。前に説明したように、これらのナノ粒子を、放射線療法と組み合わせて使用できる。したがって、この方法は、放射線療法と組み合わせて実施できる。
【0083】
さらに別の態様において、本発明は、候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答性を評価する方法に関するものであり、前記腫瘍から採取された生検材料からの細胞を、前に規定したようにもっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するナノ粒子、好ましくはもっぱらナノ粒子の外表面に結合している抗腫瘍薬を有するゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含み、ここで、ナノ粒子の磁性金属酸化物の外表面に結合している抗腫瘍薬は、評価される候補化合物である。
【0084】
本発明によって提供される医薬組成物は、通常の技術、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年に記載のように調製できる。組成物は、固体、半固体又は液体形態でよく、さらに、医薬として許容し得る増量剤、担体又は希釈剤、及びその他の不活性成分及び賦形剤を含むことができる。さらに、医薬組成物は、ナノ粒子の徐放出用に設計することができる。組成物は、任意の適切な経路、例えば、静脈内、経口、非経口、直腸、経皮又は局所で投与できる。投与量は、患者の状態で左右され、実施者によって適切と考えられるように決定される。
【0085】
投与経路は、活性化合物を適切な又は望ましい作用部位に効果的に輸送する任意の経路でよく、静脈内経路が好ましい。固体担体を経口投与用に使用するなら、調合物を、錠剤化し、硬質ゼラチンカプセル中に粉末又はペレットの形態で充填することができ、或いはロゼンジの形態でもよい。液体担体を使用するなら、調合物は、シロップ、乳液又は軟質ゼラチンカプセルの形態でよい。タルク及び/又は炭水化物の担体又は結合剤などを有する錠剤、糖衣錠又はカプセルは、経口適用に特に適している。錠剤、糖衣錠又はカプセル用の好ましい担体には、乳糖、コーンスターチ及び/又は馬鈴薯デンプンが含まれる。
【0086】
上述のように、悪性神経膠腫は、患者における最も一般的な原発性の頭蓋内腫瘍である。これらの腫瘍の予後は、それらが、放射線又は化学療法に殆ど応答しないので、不良である。腫瘍と正常脳組織とを区別する上での困難性、及び脳に浸潤する神経膠腫の並外れた能力は、神経膠腫の療法及び診断において深刻な難題を提起する。
【0087】
TRAILは、初期には細胞膜で発現され、続いてタンパク質分解プロセシングで誘導される膜貫通タンパク質である。溶性TRAIL(sTRAIL)は、殆どの正常細胞を避けながら、多様な起源の腫瘍細胞でアポトーシスを誘導することができる。しかし、以前の殆どの研究は、細胞培養で実施されたが、インビボでのsTRAILの送達及び効率は、あまり確立されておらず、成功していない。インビボでのsTRAIL治療に関する主な障害は、タンパク質分解の切断によるその短い半減期のせいであり、それゆえ、過剰量のsTRAILを必要とする。インビボでのsTRAIL治療は、TRAILを脳に投与する上での困難、及びインビボにおけるTRAILに対する神経膠腫の相対的鈍感性のため、神経膠腫腫瘍に対して特別な効果はない。
【0088】
後記の例6〜8は、少なくとも1種の活性薬剤が、ナノ粒子内部のポリマーに共有結合で結合し、且つ任意選択で、同一又は異なる活性薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に結合している場合、並びに活性薬剤がポリマーに共有結合で結合しなかった場合の両方での、本発明のゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を用いて実施したインビトロ及びインビボでの各種実験を詳細に説明する。
【0089】
これらの例中に示すように、蛍光及び非蛍光性ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子の両方に対するTRAILの複合化は、sTRAILを有意に安定化し、sTRAILの酵素分解を最小化し、それによって、腫瘍細胞のアポトーシスに必須なsTRAILの量を低減した。この取り組みは、効率的なアポトーシスのための腫瘍細胞へのsTRAILの選択的送達を可能にする。さらに、sTRAIL複合型ナノ粒子は、浸潤性腫瘍細胞を選択的に追跡し、インビボで細胞毒性効果を発揮し、腫瘍を有する動物の生存を有意に増加させた。sTRAIL複合型ナノ粒子の細胞毒性効果に抵抗性であった腫瘍細胞は、低レベルのγ−照射と、それに続くsTRAIL複合型ナノ粒子での治療との併用治療を使用することによって敏感になった。別法として、これらの細胞を、1種を超える活性薬剤が複合されたナノ粒子で効率的に治療した。この目的に使用される活性薬剤は、sTRAIL、及びcRGDペプチド、IL−12、cRGDペプチド及びアドリアマイシンなどのその他の抗癌薬(単数又は複数)であった。これらの薬剤を、種々の組合せで、磁性金属酸化物表面、ナノ粒子内部のポリマーのどちらかに、或いはその両方に結合した。
【0090】
治療的応用に加えて、これらのsTRAIL複合型ナノ粒子は、MRI及び/又は蛍光による腫瘍造影のためのマーカーとして役立った。ヒト神経膠腫腫瘍を移植された動物モデルにおいてこれらの造影モダリティを使用することによって、sTRAIL複合型ナノ粒子は、腫瘍部位に移行し、腫瘍の周辺及び内部に蓄積し、一方、sTRAILを結合していないナノ粒子は、より徐々に移行し、腫瘍細胞の周辺のみに蓄積することが立証された。sTRAILを複合したナノ粒子を、sTRAILを安定化するための、腫瘍を診断するための、及びアポトーシスを誘導するために腫瘍を標的化することを助けるためのビヒクルとして使用する。蛍光染料をポリマーに結合したナノ粒子を使用することによって、sTRAIL複合型ナノ粒子が、浸潤性腫瘍細胞を識別し、標的にすることがさらに示された。神経膠腫細胞を特異的に標的にするsTRAIL複合型ナノ粒子の能力を、脳内腫瘍の境界を判定するのに、及び再発性神経膠腫と放射線誘導性壊死とを区別するのに採用することもできる。加えて、神経膠腫以外の腫瘍細胞、例えば、癌腫、乳癌及び肺癌を標的とすること、及びそれらのアポトーシスを誘導することに関するsTRAIL複合型ナノ粒子の効率を立証した。
【0091】
本発明を、これより以下の非制限的実施例により説明する。
【実施例】
【0092】
(例1)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の合成及び特徴づけ
大きさが約5nmから100nmの範囲であり狭い粒度分布のゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、国際公開第99/062079号に詳細に記載のように、核形成、それに続くゼラチン/酸化鉄核上への磁性酸化鉄薄膜の制御された成長によって調製した。核形成ステップは、ゼラチンのキレート形成部位へのFe+2イオンの錯体形成、それに続くキレート化されたFe+2のFe+3への部分酸化(ほぼ50%まで)を基礎とし、その結果、水溶性ゼラチンはキレート化されたFe+2及びFe+3イオンの両方を含んでいた。次いで、NaOH又は代わりにアンモニア水溶液を約pH9.5となるまで添加することによってゼラチン/酸化鉄の核を形成した。ゼラチン核上への磁性膜の成長は、核形成ステップを数回繰り返すことによって完遂された。
【0093】
簡潔には、平均乾燥直径が15nmのナノ粒子を、200mgのゼラチン(Sigma社)を含む80mLの水溶液に、FeCl2溶液(10ミリモル/5mLのH2O)続いてNaNO2溶液(7ミリモル/5mLのH2O)を添加することによって調製した。10分間反応させた後、NaOH水溶液(1N)をpH9.5になるまで添加した。この手順を、4回、又はより大きな粒子が所望されるならそれ以上繰り返した。次いで、形成された磁性ナノ粒子を、磁気勾配カラムを使用して洗浄して過剰な試薬を洗い流した。表面分析により、ナノ粒子の内部及び表面上の両方でのゼラチンの存在が立証された。表面のゼラチンは、ナノ粒子、並びにそれを介して適切なリガンドを共有結合で結合できるカルボキシレート及び第一級アミンなどの官能基に対して、凝集に対抗するさらなる安定化を提供する。図1A〜1Dは、成長ステップ中で磁性薄膜形成工程をそれぞれ4〜7回繰り返すことによって形成される、大きくなった平均直径を有する磁性ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。図2は、前記のように調製され、水に分散された乾燥平均直径が15nmの磁性ナノ粒子が、約100nmの水力学的平均直径を有する1本の狭い個体群をもつことを示している。図3A〜3Bは、0.479nmのd−間隔を有する結晶構造を示している高分解能TEM(HTEM)画像(3A)、磁性ナノ粒子の結晶的特性を示す鮮明な環を描写している電子線回折(ED)画像(3B)を示す。図4は、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンを示し、これらのナノ粒子の結晶核が、殆ど完全にマグヘマイト(γ−Fe2O3)からなることを示している。X線ラインの拡がりから、15nmの磁性核の平均直径が導き出される。図5は、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のメスバウアースペクトルを示し、さらに、これらのナノ粒子がマグヘマイトからなることを示している。まず、この核形成及び成長工程によってマグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子が作り出され、次いで、それが、熱力学的により安定な酸化鉄、マグヘマイトへ酸化されたと想定される。図6は、乾燥直径が15nmのマグヘマイト型ナノ粒子の室温でのヒステリシスループを表し、これらのナノ粒子のM(H)曲線は、いかなる保持力をも示さず、且つ10,000エルステッド(Oe)で飽和せず、一方、10,000エルステッドで得られる磁気モーメントが、約41emu/gであることを示している。この特性は、両方とも、超常磁性挙動を代表する。
【0094】
様々な大きさ及び特性を有する均一なゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、以前に国際公開第99/062079号に開示されているように、調製条件、例えば、酸化試薬、鉄塩の種類、pH及び温度を変えて調製した。乾燥直径が15nmより小さく5nmまでの大きさの均一なナノ粒子を、酸、例えば、pHが約1.0のHCl、又はEDTA及びシュウ酸などの鉄キレートを形成するリガンドを用いる、15nmのナノ粒子の漸進的表面溶解によって調製した。所望の直径を達成した後に、磁性ナノ粒子を、蒸留水中で洗浄した。
【0095】
(例2)蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の合成
蛍光染料を主として磁性複合ナノ粒子内に封じ込めた、蛍光染料で標識されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、図7に図示するように、ゼラチンを、蛍光染料に共有結合で結合しているゼラチンに代えて例1に記載のように調製した。例えば、200mgのゼラチンを含む20mL水溶液に、5mgのローダミンイソチオシアネート(RITC)を含む0.5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)を徐々に添加することによって、ローダミンで標識されたナノ粒子を調製した。水溶液のpHをNaOH水溶液(1N)を添加して9.5まで上昇させ、溶液を60℃で1時間振盪した。この方法は、ゼラチンのヒドロキシル及びアミン基の一部とRITCのイソチオシアネートとの間のチオ尿素及び/又はチオウレタン結合を介する共有結合の形成を含む。次いで、過剰のRITCを、前者の水溶液の60℃でのH2Oに対する徹底的な透析(カットオフ:12〜14000)、又は磁気カラムを通す洗浄によって、ゼラチンと複合したローダミン鎖から除去した。溶液の容積を80mLに調整し、次いで例1に記載のように合成を継続した。
【0096】
類似の方法を、他の適切な染料、例えば、フルオレセインを用いて実施した。
【0097】
(例3)薬物(単数又は複数)を含むゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の合成
薬物を含むゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を、ゼラチンを、薬物に共有結合で結合しているゼラチンに代えて、例1に記載のように調製した。例えば、アドリアマイシン(Aldrich社)を、Melamed及びMargel(2001年)が発表しているようなカルボジイミド活性化法によって共有結合でゼラチンに結合した。簡潔には、200mgのゼラチン及び5mgのアドリアマイシンを含む20mLのMES緩衝液(0.01M、pH5.0、Sigma社)に、123mgのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド、Sigma社)及び82mgのCDC(1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホン酸塩、Sigma社)を添加し、次いで、溶液を、60℃で2時間振盪した。溶液を、水に対する透析(カットオフ:12〜14000)によって洗浄して過剰な試薬を洗い流した。溶液の容積を80mLに調整し、次いで、例1に記載のように合成を継続した。
【0098】
類似の方法で、メトトレキセート又は/及びsTRAILを別々に又は組み合わせて共有結合でゼラチンに結合した、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を調製した。
【0099】
(例4)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の官能化
例1〜3に記載のように調製したゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の表面に官能基を作り出すための各種方法は、(i)被覆形成ポリマー、例えば、デキストランのナノ粒子表面に対する高い親和性、(ii)マイケル付加反応による、ナノ粒子表面上の官能基と、所望の官能性リガンド(例えば、ナノ粒子表面上で活性化される二重結合を有するタンパク質などのアミノリガンド)との間での共有結合の形成、又はMelamed及びMargel(2001年)が発表しているようなカルボジイミド活性化法による、カルボキシレート基(ゼラチン被覆に属する)に対する共有結合の形成、及び(iii)ナノ粒子表面上での被覆形成ポリマー、例えば、ゼラチン又はアルブミンの沈殿などの様々な原理に基づいて開発されている。ナノ粒子表面の官能基を、次いで、様々な活性化法によって、各種薬物、例えば、TRAIL及びcRGDペプチドを共有又は物理的に結合するのに使用した。
【0100】
4(i)活性化される二重結合を用いる官能化
例1〜3に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子にジビニルスルホン(DVS)を、当初の[DVS]/[ナノ粒子]の重量比を4/1として添加し、次いで、トリエチルアミンを10.5のpHに到達するように添加し、続いて60℃で一夜インキュベートした。形成された官能化ゼラチン/酸化鉄−DVSナノ粒子、又は蛍光染料標識化ゼラチン/酸化鉄−DVSナノ粒子を、次いで、磁気勾配カラムを用い0.1M重炭酸塩緩衝液(pH=8.3)で洗浄し、4℃で貯蔵した。
【0101】
4(ii)活性化される二重結合を含む架橋型デキストラン被覆を用いる官能化
例1〜3に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の水性分散液に2%(w/v)デキストラン(MW48,000、Sigma社)を添加し、デキストランを溶解した後、水性分散液を85℃で3時間振盪した。デキストランで被覆されたナノ粒子を、磁気カラムを使用し、水で洗浄して過剰なデキストランを洗い流した。物理的に吸着されたデキストランの水性連続相中への漏れを防止するために、及び表面で活性化される二重結合を生じさせるために、デキストラン被覆の架橋を、DVSを用いて前記の4(i)に記載のように実施した。
【0102】
4(iii)活性化される二重結合の不在又は存在下でゼラチン又はアルブミン被覆を用いる官能化
例1〜3に記載のように調製されたゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の水性分散液に0.2%(w/v)ゼラチンを添加し、次いで、水性分散液を85℃で3時間振盪した。水性分散液を室温まで冷却し、次いで、ゼラチンで被覆されたナノ粒子を、磁気カラムを用いて洗浄した。必要なら、前記の4(i)に記載のようにDVS誘導体化を実施した。
【0103】
ゼラチンをウシ又はヒト血清アルブミンに代えて、ナノ粒子上のアルブミン被覆を同様に実施した。
【0104】
(例5)官能性ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子上への薬物の固定化
5(i)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのヒトTRAIL又はIL12の固定化
例4に記載のように調製された1mgのゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を含む1mLの重炭酸塩緩衝分散液(0.1M、pH=8.3)に、20μgのヒトTRAIL(hTRAIL、CytoLab社、イスラエル)を添加し、次いで、分散液を室温で60分間混合した。この方法は、ナノ粒子の残留二重結合とTRAILの第一級アミノ基とのマイケル付加による結合形成を含む。次いで、活性化される残留二重結合の封鎖を、グリシンを用い、グリシン(1%w/v)を添加すること及び分散液の混合を室温でさらに60分間継続することによって実施した。過剰な未結合のhTRAIL及びグリシンを、磁気勾配カラムを使用してPBS(pH=7.4)で除去した。結合したhTRAILの濃度は、ELISA Development Kit(900−K141、ロット番号11041410、CytoLab社、イスラエル)で測定して、約2000ng/mgナノ粒子であることが見出された。
【0105】
hTRAILをIL12に代えて、ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上にIL12を同様に結合した。
【0106】
5(ii)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのcRGDペプチドの固定化
上記5(i)に記載の実験を、20μgのhTRAILを配列シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−Lys)(配列番号1)を有する3mgのcRGDペプチド(Peptides International社、Louisville、ケンタッキー州40224、米国)に代えて繰り返した。ネガティブ対照として、cRGDペプチドを配列シクロ(Arg−Ala−Asp−D−Phe−Lys)を有するcRADペプチド(Peptides International社)に代えて類似の方法を実施した。
【0107】
5(iii)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのhTRAIL及びcRGDペプチドの固定化
前記5(i)に記載の実験を、グリシンを3mgのcRGDペプチドに代えて繰り返し、結果として、残っているDVSの活性化される残留二重結合をcRGDペプチドに複合した。
【0108】
5(iv)ゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子上への生物活性試薬、例えば、hTRAIL及び/又はcRGDペプチドの固定化
ヒトTRAIL及び/又はcRGDペプチドを、例1〜3及び例4(iii)により調製されたゼラチン/酸化鉄複合ナノ粒子に、Melamed及びMargel(2001年)に記載のようなカルボジイミド活性化法により共有結合で結合した。簡潔には、200mgのナノ粒子を含む20mLのMES緩衝液(0.01M、pH5.0、Sigma社)に、123mgのNHS及び82mgのCDCを添加し、次いで、ナノ粒子分散液を室温で3時間振盪した。活性化されたナノ粒子を、磁気勾配カラムを使用してPBSで徹底的に洗浄し、次いで、20mLの洗浄された活性化ナノ粒子分散液に、8mgのhTRAIL又は50mgのcRGDペプチドを含む5mLのPBS溶液を添加した。懸濁液を、室温で約8時間振盪し、次いで、残留活性化基の封鎖を、グリシン(200mg)又はcRGDペプチド(50mg)のどちらかを用いて、それぞれ5(i)又は5(iii)に記載のように実施した。
【0109】
5(v)ゼラチン/酸化鉄−DVS磁性複合ナノ粒子上へのアバスチン又はレミケードの固定化
例4に記載のように調製された1mgのゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を含む1mLの重炭酸塩緩衝分散液(0.1M、pH=8.3)に、20μgのモノクローナル抗体、アバスチン(Bevacizumab、Genentech社)又はレミケード(Infliximab)を添加し、次いで、分散液を室温で60分間混合する。この方法は、ナノ粒子の残留二重結合とアバスチン又はレミケードの第一級アミノ基とのマイケル付加による結合形成を含む。次いで、残留活性化二重結合の封鎖を、グリシンを用い、グリシン(1%w/v)を添加すること及び分散液の混合を室温でさらに60分間継続することによって実施する。過剰の未結合アバスチン又はレミケード及びグリシンを、磁気勾配カラムを使用してPBS(pH=7.4)で除去する。
【0110】
5(vi)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子上への生物活性試薬、例えば、hTRAILの物理的固定化
例3に記載のように調製された1mgの非官能化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子、又は例4(iii)に記載のように調製されたアルブミン被覆化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子を含む1mLの重炭酸塩又はPBS緩衝分散液(0.1M、pH=8.3)に、20μgのヒトTRAIL(hTRAIL、CytoLab社、イスラエル)を添加した。次いで、分散液を室温で120分間混合し、結果として、hTRAILを、非被覆又はアルブミン被覆化ナノ粒子に非共有結合で結合した。この物理的な結合形成は、TRAILとナノ粒子との間の非共有結合性相互作用、例えば、疎水性結合、イオン性相互作用及び水素結合に基づく。過剰の未結合hTRAILを、磁気勾配カラムを使用してPBS(pH=7.4)で除去した。
【0111】
5(vii)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子上へのヒトTRAILの固定化
ヒトsTRAILを、Melamed及びMargel(2001年)が発表しているようなカルボジイミド活性化法により、ゼラチン/酸化鉄ナノ粒子に直接結合した。典型的な実験において、10mgのナノ粒子を含む15mLのMES緩衝液(0.1M、pH5.0)に、123mgのNHS及び82mgのCDCを添加した。次いで、ナノ粒子混合物を、室温で約3時間振盪した。活性化されたナノ粒子を、磁気勾配カラムを使用して洗浄した。次いで、8mLの洗浄された活性化ナノ粒子のPBS分散液に、0.5mgのsTRAILを含むPBS溶液(2mL)を添加した。次いで、分散液を室温で約2時間振盪した。次いで、残留活性化二重結合の封鎖を、グリシン又は第一級アミノポリエチレングリコールを用いて、グリシン(1%w/v)(又は第一級アミノポリエチレングリコール、5mg)を添加すること、及び分散液の混合を室温でさらに60分間継続することによって実施した。過剰の未結合hTRAIL及びグリシン(又はアミノポリエチレングリコール)を、磁気勾配カラムを使用して、PBS(pH=7.4)で除去した。
【0112】
5(i)〜5(vi)に記載の結合生物活性剤の濃度は、結合パラメーター、例えば、hTRAIL濃度を変更することによって制御した。
【0113】
(例6)インビトロ研究:神経膠腫細胞の標的化、造影及びアポトーシス
材料及び方法
細胞系:次の実験で使用されるすべての細胞は、American Tissue Culture Collection(ATCC)又はHermelin Brain Tumor Center(Henry Ford Hospital、Detroit、ミシガン州)から入手した。すべての細胞は、10%FBS(Hyclone社、Logan、ユタ州)、2mMのL−グルタミン及び100μg/mLのストレプトマイシン−ペニシリンで補足されたDMEM(Invitrogen社)中、5%CO2下に37℃で培養した。
【0114】
細胞アポトーシスの測定:細胞のアポトーシスは、プロピジウムヨージド(PI)染色を使用して測定し、Riccardi及びNicoletti(2006年)によって発表されているようなフローサイトメトリーによって、及びBlassら(2002年)によって発表されているような抗ヒストン抗体を使用するELISA(Cell Death Detection ELISA Kit)によって分析した。細胞(106/mL)を、37℃の6穴プレートに播種し、指示された処理(10μL以下のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)又はペプチド、例えば、TRAIL、又は未結合若しくはペプチド結合型ナノ粒子を含むPBSを添加)で24時間処理した。剥離細胞及びトリプシン処理接着細胞を、捕集し、氷上において70%エタノール中で1時間固定し、PBSで洗浄し、RNアーゼ(50μM)と室温で15分間処理した。次いで、細胞を、PI(5μg/mL)で染色し、Becton−Dickinsonセルソーターで分析した。
【0115】
細胞の生存能を、死亡細胞から培地に放出される細胞質酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(Sigma社から購入したキット)を測定することによって、さらに定量的に評価した。この目的の場合、対照及び処理細胞から上清液を捕集し、続いて遠心(1,400×g、10分間)し、上清液を96穴プレートに移し、製造業者の説明書に従ってLDHを測定した。
【0116】
6(i)ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子への複合化によるTRAILの安定化
分解に対する遊離及び複合型TRAILの安定性を調べるために、遊離TRAIL(100ng)又はTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL、100ng TRAIL)のどちらかを含む1mLのPBSを10℃でインキュベートし、TRAILの濃度を35日間測定した。図8は、ナノ粒子へのTRAILの複合化が、TRAILを安定化し、その結果、複合型TRAILの初期濃度を10℃で35日目まで維持したことを示している。対照的に、遊離TRAILは、これらの条件下で有意に分解した。
【0117】
6(ii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、ヒト神経膠腫細胞及び原発性腫瘍から確立された神経膠腫球におけるアポトーシスを誘導する
ヒト神経膠腫細胞A172を、TRAIL(100ng/mL)又はNP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)のどちらかと5時間インキュベートした。細胞アポトーシスを、プロピジウムヨージド染色で判定し、フローサイトメトリー(FACS)及び細胞の形態学的外観の両方によって分析した。図9Aは、遊離TRAILが、細胞の約48%のアポトーシスを誘導し、一方、NP−TRAILは、細胞の約57%のアポトーシスを誘導し、ナノ粒子単独は、有意な細胞アポトーシスを誘導しなかったことを示している。換言すれば、複合型TRAILによって誘導されるアポトーシス活性は、遊離のそれによって誘導されるものに比べて少なくとも10倍高かった。
【0118】
遊離TRAIL(100ng/mL)及びNP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)のアポトーシス効果を、3種の異なる腫瘍、すなわち、HF2020、HF1254及びHF1308に由来する神経膠腫球状体を使用してさらに試験した。これらの培養物は、それらが、その三次元構造及び細胞−細胞相互作用を維持するので、元々の腫瘍により類似している。見出されたように、図9Bに示すHF2020、及びHF1308に由来する神経膠腫球状体は、TRAIL又はNP−TRAILに応答して細胞アポトーシスを受けたが、一方HF1254は、わずかに軽度の細胞アポトーシスを受けた。詳細には、図9B及び図10に示すように、TRAIL及びNP−TRAILは、両方とも、HF2020及びHF1308神経膠腫球状体においてLDH濃度を有意に高めた。
【0119】
6(iii)各種神経膠腫細胞系及び神経膠腫一次培養物における、遊離TRAIL及びTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の細胞毒性効果
神経膠腫細胞U87、A172及びU251、並びに神経膠腫細胞HF1308、HF1254及びHF1316の一次培養物を、TRAIL(100ng/mL)、NP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)又はゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独と共に24時間インキュベートした。次いで、細胞を、捕集し、プロピジウムヨージドで染色し、FACS分析でsub−G0集団(アポトーシス細胞)について分析した。図11は、すべての場合に、NP単独の細胞毒性効果は、PBSによって引き起こされる効果と相違なかったこと、及びNP−TRAILは、遊離TRAILのそれに比べて有意により高い細胞毒性活性を呈示したことを示している。
【0120】
6(iv)各種神経膠腫細胞におけるTRAIL複合型非蛍光及び蛍光染料標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の細胞毒性効果
ヒト神経膠腫細胞A172細胞を、非蛍光ナノ粒子(NP−Control)、NP−TRAIL(10ng TRAIL/mL)、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)及びTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL、10ng TRAIL/mL)と共に5時間インキュベートした。アポトーシスを、プロピジウムヨージド染色を使用して判定し、FACSで分析した。図12に示すように、NPR−TRAILによって誘導されるアポトーシス(51%)は、NP−TRAILによって誘導されるもの(45%)に類似していた。同様の結果が、他の神経膠腫細胞、例えば、U251及びU87についても観察された。これらの結果は、蛍光性TRAIL複合型ナノ粒子が、それらの非蛍光性対応物に類似し、遊離TRAILのそれに比べて約10倍多い神経膠腫細胞のアポトーシスを誘導することを示している。
【0121】
6(v)蛍光性TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の神経膠腫細胞中への特異的内部移入
正常星状細胞に比較した神経膠腫細胞に対するNP−TRAILの特異性を、NPR−TRAILを用いて調べた。詳細には、ヒト神経膠腫細胞A172及び正常ヒト星状細胞を、NPR−TRAIL(10ng TRAIL/mL)と共に30分間インキュベートし、細胞を、共焦点顕微鏡を使用して観察し、写真撮影した。図13に示すように、NPR−TRAILは、処理の30分以内にA172細胞に入り込み、ER/ゴルジ領域に蓄積し、一方、正常星状細胞では極めて弱い蛍光が観察された。同様に、TRAILと複合されていないNPRは、両方の細胞型において細胞に入り込まなかった(データは示さない)。これらの結果は、NPR−TRAILが、おそらく、TRAIL受容体への結合形成に続く内部移入によって神経膠腫細胞に入り込み、且つそれらは、細胞中に薬物を送達するTRAIL複合型ナノ粒子の能力に対して重要な関連を有する可能性があることを示している。
【0122】
6(vi)γ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子との相乗効果
NP−TRAILは、多くの神経膠腫細胞系においてアポトーシスを誘導したが、この処理に抵抗性のあるいくつかの神経膠腫細胞が存在した。かくして、γ線は、TRAIL受容体の発現を高めることによって腫瘍細胞のTRAILに対する感度を高めることが報告されているので、神経膠腫細胞のアポトーシスに対するNP−TRAILとγ線との併用処理の効果を調べた。詳細には、TRAILに対して敏感であったA172及びU251細胞、並びにTRAILに対して低い応答を示したU87細胞、及びTRAIL処理に抵抗性であったLN−18細胞を採用し、最適状態に及ばない濃度のNP−TRAIL(5ng TRAIL/mL)及びγ線(10Gy)を使用した。細胞をNP単独、NP−TRAIL(5ng TRAIL/ml)、γ線(10Gy)、又はNP−TRAIL(5ng TRAIL/ml)とγ線(10Gy)の組合せで処理した。併用処理では、細胞を、最初に照射し、2時間後に、NP単独で又はNP−TRAILで処理した。24時間後に、細胞アポトーシスを判定した。図14は、併用処理によって誘導されるアポトーシスが、有意に高められたこと、及び低線量のγ−照射を付加することが、NP−TRAILに対するいくつかの神経膠腫細胞の抵抗性を克服したことを示している。
【0123】
6(vii)cRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫細胞において自己貪食を誘導する
神経膠腫細胞中で誘導される別のタイプの細胞死は、Gozuacik及びKimchi(2004年)の文献に記載のようなII型細胞死又は自己貪食である。自己貪食を特徴付けるために、細胞を、LC3−GFPプラスミドでトランスフェクトし、自己貪食性空胞形成の蓄積を調べた。見出されたように、対照細胞では、IC3−GFPが細胞中のいたるところに出現したが、自己貪食細胞では、断続染色が観察された。それを考慮して、NP単独で処理された対照細胞中及びcRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−cRGD)で処理された細胞中のLC3−GFPのパターンを調べた。この目的のために、U251細胞を、LC3−GFPで24時間トランスフェクトし、細胞を、cRGDペプチド(10μg/mL)、NP単独又はNP−cRGD(約4μg cRGD/mL)でさらに24時間処理し、次いで、断続GFP染色を有する細胞の割合を計算した。図15に示すように、約24時間で、cRGDで処理された細胞の約30%及びNP−cRGDで処理された細胞の約18%が、LC3−GFPの高められた断続パターンを示した。それとは対照的に、対照又はNPで処理された細胞のほんの2〜3%が、断続染色を示した。
【0124】
6(viii)TRAIL及びcRGDペプチド複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の相乗効果
この実験では、TRAIL処理に抵抗性であったLN−18細胞を、NP−TRAIL、TRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子(例5(iii)に記載のように調製された)又はアドリアマイシンを含むTRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子(例3及び5(iii)に記載のように調製された)と共に24時間インキュベートした。付加的薬物(cRGDペプチド及びアドリアマイシン)の相乗効果が、NP−TRAILでは約8%、TRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子では約25%、及びアドリアマイシンを含むTRAIL及びcRGDペプチド複合型ナノ粒子では45%であった、アポトーシスパーセントの有意な増加によって立証された。
【0125】
6(ix)各種腫瘍細胞のアポトーシスに対するTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の効果
この実験では、神経膠腫以外の腫瘍細胞に対するNP−TRAILの効果を、子宮頸癌細胞系HeLa、乳癌細胞系MCF−7及び肺癌細胞A549を使用して調べた。図16は、5時間のインキュベーション後のTRAIL(100ng/mL)、NP−TRAIL(50ng TRAIL/mL)、NP単独又はPBS(対照)のアポトーシス効果を示している。示したように、PBS及びNPは、両方とも、微々たるアポトーシス効果を有したのに、NP−TRAILは、TRAILによって誘導されるものの少なくとも2倍である有意なアポトーシスを誘導し、ナノ粒子へのTRAILの複合化は、そのアポトーシス効果を維持し、さらには各種癌細胞に対するその効果を増大させたことを示した。細胞アポトーシスは、プロピジウムヨージド(PI)染色を使用して判断し、フローサイトメトリーで分析した。
【0126】
6(x)ヒト神経膠腫幹細胞球に対するγ−照射とTRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子との相乗効果
神経膠腫幹細胞を、腫瘍標本2355及び2303から確立し、球状体として増殖させ、培養組織中に2ヶ月間維持した。神経膠腫幹細胞は、自己複製を示し、ポリ−L−リシン上で星状細胞、ニューロン及びオリゴデンドロサイトに分化した。細胞に対するNP及びNP−TRAILの効果を調べるために、球状体を、6穴プレートに播種し、TRAIL(100ng/mL)、NP単独又はNP−TRAIL(50ng TRAIL/mL)で24時間処理した。次いで、上清液を捕集し、LDH分析を実施した。
【0127】
γ線とTRAILとの併用効果を評価するために、細胞を、まず5Gyの放射線で照射し、4時間後に、TRAIL又はNP−TRAILのどちらかでさらに24時間処理した。細胞死を、培養上清液中のLDH濃度を使用して判定した。様々な処理で誘導されるアポトーシス効果は、両方の神経膠腫幹細胞系で類似しており、図17A〜17Bに示した。NP単独、γ−照射単独又は遊離TRAILでは微々たるアポトーシス効果が観察された。NP−TRAILは、中位のアポトーシス効果を誘導したが、NP−TRAIL及び遊離TRAILは、両方とも、γ−照射と一緒になって、有意なアポトーシスを誘導した。
【0128】
6(xi)IL−12複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、ヒト卵巣癌細胞においてアポトーシスを誘導する
卵巣癌細胞を、培地単独、IL−12(50ng/mL)、NP(50μg/mL)又はIL−12複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−IL−12、50ng IL−12/mL)で処理し、24時間インキュベートし、次いで、LDHアッセイを使用して細胞死について分析した。図18に示すように、IL−12及びNP−IL−12は、両方とも、さらに細胞形態に反映されたように、培養細胞中で細胞死を誘導した。
【0129】
(例7)インビボ研究:神経膠腫細胞の標的化、造影及びアポトーシス
材料及び方法
細胞系及び動物:U251細胞を、ATCC(Manassas、バージニア州)又はHermelin Brain Tumor Center(Henry Ford Hospital、Detroit、ミシガン州)から得た。すべての細胞を、10%FBS(Hyclone社、Logan、ユタ州)、2mMのL−グルタミン及び100μg/mLストレプトマイシン−ペニシリンで補足されたDMEM(Invitrogen社)中、5%CO2下に37℃で培養した。雌性Nu/Nuラットを、NCI Fredericks社(Fort Detricks、メリーランド州)から得た。すべてのラットが、腫瘍移植の時点で6〜8週齢であった。
【0130】
腫瘍移植及びナノ粒子投与:ラットを、入荷後、使用に先立って1週間順化させた。腫瘍細胞の移植に先立って、動物を麻酔し、無菌手術に備えた。頭皮を貫いて長さ1cmの切り目を作り、26ゲージのニードルを使用して、捩じることによって、正中線の右側に2mm且つ背側に2mmの位置に頭骨を通して穴を静かに開けた。次いで、動物を、マイクロ−マニピュレーター及びシリンジホルダーを具備した脳定位固定装置(Kopf社、Tujunga、カリフォルニア州)中に配置した。ニードルを事前に形成した穴中に3mm下げ、0.5mm上昇させ、腫瘍塊(5μL)を、全部で2.5分にわたって徐々に注入した。ニードルを、定位置に1分間残し、次いで、1分間にわたって徐々に上昇させた。脳定位固定装置から動物を取り出し、穴をボーンワックスで密閉し、頭皮を縫い合わせ、動物を回復について監視した。腫瘍移植後の4、7又は10日目に、対照ナノ粒子(0.05mg)の存在しない若しくは存在するPBS(10μL)、TRAIL複合型ナノ粒子(0.05mgのナノ粒子に複合された100ngのTRAIL)又は遊離TRAIL(100、200又は800ng)を、同一手法で同側又は対側半球中に移植した。選んだ時点又は罹患徴候の時点のどちらかで、生理食塩水、それに続く10%ホルマリンでの標準灌流を実施した。脳を取り出し、さらなる処置のため10%中性緩衝ホルマリン中に一夜浸漬した。蛍光で標識された腫瘍及びナノ粒子を可視化するために、選んだ時点で、生理食塩水での標準灌流を実施した。脳を取り出し、さらなる可視化に向けて、クライオスタットを使用して切片化のために急速凍結した。
【0131】
組織化学、免疫組織化学、ナノ粒子の可視化及びアポトーシスの検出:ホルマリンで固定した組織をパラフィン中に包埋し、切片化(5μm)し、組織形態学的評価のためにヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。ヘマトキシリンは、核、細胞質の酸性領域及び軟骨マトリックスを青色に染色する。エオシンは、細胞質の塩基性領域及びコラーゲン繊維をピンク色に染色する(Gartner及びHiatt、2001年)。5μmの切片を、60℃のオーブン中で1時間乾燥し、定型的にddH2Oに至るまで脱パラフィンした。ヒト細胞を検出するには、切片を1:250で希釈のヒトミトコンドリア抗体(Chemicon社、カタログ#H10060)と共にインキュベートした。免疫組織化学は、Biocare Medical Nemesis 7200(Concord社、カリフォルニア州)染色剤及び試薬を使用して実施した。切片を、Biocare Sniperブロックで7分間封鎖し、Biocare希釈液中、一次抗体と共に60分間インキュベートした。緩衝液で洗い流した後、切片を、アビジン−ビオチンで15分間封鎖した。洗い流した後、汎用リンク、続いて、HP(Biocare社)及びBetazoid DABを使用して抗原を検出した。緩衝液に続いてdH2Oで洗い流し、CATヘマトキシリンで10秒間対比染色した。対照切片を、一次抗体なしで処理した。
【0132】
ナノ粒子の可視化(青色)のためのゴモリ鉄反応染色(Sheehan及びHrapchak、1980年)を、ホルマリン固定パラフィン包埋組織からの5μm切片を利用して行った。5μm切片を60℃のオーブン中で1時間乾燥し、定型的にddH2Oに至るまで脱パラフィンした。残りのすべてのステップには、酸で洗浄したガラス器具を使用した。スライドを、等部の20%HCl及び10%ヘロシアン化カリウム水中に10〜20分間浸漬した。次いで、スライドを、ddH2O中で十分洗い流し、Nuclear Fast Redで2分間対比染色し、続いて脱水、洗浄し、次いでカバーガラスをかぶせた。各染色に対する陽性対照として脾臓の切片を使用した。
【0133】
アポトーシス細胞の染色は、アポトーシス細胞を特異的に検出するTUNEL染色(褐色染色)を使用して実施した(Shahら、2003年)。簡潔には、ホルマリン固定パラフィン包埋組織の染色を、Apoptag Peroxidase In Situ Apoptosis Detection Kit(Chemicon社、Temecula、カリフォルニア州)を製造業者の説明書に従って利用して実施した。簡潔には、ホルマリン固定パラフィン包埋組織からの5μm切片を、60℃のオーブン中で1時間乾燥し、定型的に脱パラフィンした。次いで、組織を、プロテイナーゼK(20μg/mL)で15分間、室温で前処理した。スライドをddH2O中で2回洗浄し、内在性ペルオキシダーゼを3.0%過酸化水素/PBS中、室温で5分間失活させた。スライドをPBS中で2回洗浄し、各スライドに75μL/5cm2の平衡緩衝液を少なくとも10秒間添加した。過剰の液体を軽く叩き落し、55μL/5cm2のTdT酵素を添加した。スライドを1時間インキュベートし、次いで、停止/洗浄緩衝液中で撹拌しながら15秒間、次いで室温で10分間洗浄した。次に、スライドを、3種のPBSでそれぞれ1分間洗浄し、続いて65μL/5cm2の抗ジゴキシゲニン複合体と共に30分間インキュベートした。4種のPBSでの各2分間に続いて、スライドを、75μL/5cm2のペルオキシダーゼ基質と共に室温で3〜6分間インキュベートした。スライドを、最後の3種のddH2Oでそれぞれ1分間洗浄し、ddH2O中で5分間インキュベートし、次いで、メチルグリーンを用い室温で10分間対比染色し、ddH2Oで洗浄し、100%n−ブタノールで洗浄し、キシレンで脱水し、パーマウント(permount)を用いてカバーガラスをかぶせた。
【0134】
造影:免疫組織学的及び組織化学的画像は、×10、×20及び×40の対物レンズをニコンDXM1200Cデジタルカメラに連結し、Dell Optiplex GX620コンピューター上のACT−1Cソフトウェアを使用してデジタル化された、ニコンEclipse E800M顕微鏡を使用して室温で撮影した。複合像作製のためにAdobe Photoshop中にTiff画像を取り込んだ。挿入写真は、Photoshopを使用して行われた拡大写真である。
【0135】
蛍光画像は、×4、×10及び×20の対物レンズをデジタルカメラに連結したニコンC1共焦点顕微鏡を使用して室温で撮影した。複合像作製のために、ビットマップ画像をAdobe Photoshop中に取り込んだ。
【0136】
インビボでのMR造影研究:適切な麻酔状態は、ハロタン(N2:O2が2:1の混合物中で、導入には3%、維持には0.7〜1.5%)を使用して得られた。麻酔されたラットを、BRUKERコンソール(Bellerica、マサチューセッツ州)にインターフェースで連結された7テスラの穴径20cmの超伝導マグネット(Magnex Scientific社、Abingdon、英国)中に配置した。最大勾配が45ガウス/cmの12cm自己シールド型勾配セットを使用した。ラジオ周波数(RF)のパルスを、動物頭骨の中心線上に配置された直径3.2cmの表面受信コイルからのTTL制御によって能動的にデカップルされた直径7.5cmのサドル型コイルによって印加した。脳定位固定イヤーバーを使用して、造影処理中の動きを最小化した。フィードバック制御されたウォーターバスを使用して、直腸温度を37±0.5℃に維持した。各MRIセッションでのマグネット中での動物の再現性ある配置のために、改変された迅速低角度撮影(FLASH)造影シーケンスを採用した。MR研究は、T1−及びT2−及びT2*加重MRIスキャンを使用して実施した。酸化鉄で標識された細胞を検出する場合、一般に採用されるスキャンは、T2*W勾配エコーである。T1−、T2−及びT2*加重MRIスキャンのための平均検査時間は、脳腫瘍のインビボ研究の場合、それぞれ、ほぼ9、13及び13分であった。MRIを取得するために、次のパラメーターを使用した:T1−加重多重スライスシーケンス(TR/TE=500/10ミリ秒、128×128マトリックス、13〜15スライス、1mm厚、32mm撮像視野(FOV)、励起回数(NEX)=4)。T2加重画像は、標準二次元フーリエ変換(2DTF)多重スライス(13〜15)多重エコー(6エコー)MRIを使用して得た。6セットの一連の画像(各セットに対して13〜15スライス)を、10、20、30、40、50及び60ミリ秒のTE並びに3000ミリ秒のTRを使用して得た。画像は、32mmのFOV、1mmのスライス厚、128×128のマトリックス、及びNEX=2を使用して作製した。T2*加重画像は、標準多重スライス(13〜15スライス)、多重勾配エコー(6エコー)MRIを使用して得た。6セットの一連の画像(各セットに対して13〜15スライス)は、5、10、15、20、25及び30ミリ秒のTE並びに3000ミリ秒のTRを使用して得た。画像は、32mmのFOV、1mmのスライス厚、128×128のマトリックス及びNEX=2を使用して作製した。T2及びT2*画像の両方を使用して、T2及びT2*マップを測定した。三次元(3D)勾配エコーMR画像は、TR=100ミリ秒、TE=6ミリ秒、10°のフリップ角(FA)、32×32×16mm3のFOV、256×192×64のマトリックス、及びNEX=1を使用して得た。全シーケンスの総時間はほぼ20分間であった。体温を維持するために、加熱パッドを使用した。直腸プローブを使用して、体温をモニターした。画像品質を3テスラと7テスラのMR装置間で比較するために、ランダムに選択された動物は、3テスラを使用するMRIを受けた。3テスラのMRIで造影する場合、適切な麻酔は、塩化ケタミン及びキシラジンを注入することによって達成された。加熱された覆布でラットを適切に覆って体温を維持した。
【0137】
7(i)神経膠腫動物モデルの確立
TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)のインビボでの効果を調べるために、2種の神経膠腫動物モデルを確立した。第1モデルでは、ヒトU87又はU251細胞を、ヌードマウス中に頭蓋内で移植した。第2モデルでは、新鮮な手術腫瘍検体からのヒト神経膠腫細胞を採用し、ヌードラット中に移植し、元々の腫瘍の初期特性を維持する腫瘍を作り出し、かくして様々な抗癌治療に対するこれらの腫瘍の応答を予測できる系を提供した。
【0138】
7(ii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫において細胞アポトーシスを誘導する
NP−TRAILのインビボでの効果を調べるために、異種移植片としてヒトU251神経膠腫細胞を採用した。腫瘍を7日間発育させ、その時点で、NP−TRAIL、ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP)単独又はPBSを腫瘍部位に頭蓋内で注入した。治療の7日後に、細胞アポトーシスの程度を調べた。細胞アポトーシスは、アポトーシス細胞を特異的に検出するTUNEL染色(褐色染色)を使用して判定した。図19は、NP単独又はNP−TRAILのどちらかで処理されたラットからの腫瘍切片を示す。示したように、NP単独は、有意な程度の細胞アポトーシスを誘導しなかったが、NP−TRAILは、TUNEL(褐色染色)陽性細胞によって判定されるような大規模な細胞アポトーシスを誘導した。なお、PBSで処理されたラットでも、有意な細胞アポトーシスは、示されなかった(データは示さない)。
【0139】
7(iii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫において生存を延長する
NP−TRAIL(100ng TRAIL)が生存上の利益を提供できるか否かを判定するために、PBS、NP単独又はNP−TRAILを、ヌードラット脳中の異種移植片ヒトU251腫瘍中に腫瘍内で直接的に送達した。次いで、動物を、罹患の徴候についてモニターし、任意の徴候の出現又は腫瘍移植後85日目の時点で安楽死させた。図20に示すように、NP−TRAILでの処理は、NP単独(p=0.0248)又はPBS(p=0.0288)のそれを超えて生存を有意に延長した。罹患時点での代表的腫瘍の顕微鏡写真を図21A〜21Cに示す。腫瘍罹患のために安楽死させた動物では大きな腫瘍が明らかであるが、打ち切った動物では腫瘍は明らかでない。しかし、これらの動物では若干の瘢痕形成が、明らかである(矢印)。各シリーズは、同一動物及び2mm離れた切片から撮影される。また、NP−TRAIL(100ng TRAIL)を含む10μLの注入されるPBSを100、200及び800ngのsTRAILに代えたsTRAILを用いて、類似の実験を完遂した。これらの実験は、PBSで観察されたものに類似の生存結果を示した。しかし、より高濃度のsTRAILでの実験は、オリゴデンドロサイトに対して若干の傷害を示した。
【0140】
7(iv)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、神経膠腫において腫瘍容積を低減する
腫瘍量に対するNP−TRAILの効果を判定するために、PBS、NP単独又はNP−TRAILを、ヌードラットの脳中の異種移植片ヒトU251腫瘍中に腫瘍内で直接的に送達した。腫瘍移植の21日後に動物を安楽死させ、切片化及びH&E染色のために脳を摘出した。脳を、2mmのブロックに切断し、処理し、明確な腫瘍をもつブロックを、5μmの切片に切断し、15番目毎に切片を確保しH&Eで染色し、このスライドに関する腫瘍容積を判定した。15番目毎のスライドに関する腫瘍の最大の幅及び高さを測定し、明白な腫瘍を有する各スライドに関して最大のW×HX(5×15)を乗算することによって総腫瘍量を決定し、これらの数を加算した。統計的有意性を、FischerのPLSDを使用するStatviewを用いて決定した(有意水準5%)。図22に示すように、NP−TRAILの投与は、NP単独又はPBSと比較して腫瘍量を有意に低減した。NP単独とPBS投与の間で有意差は認められなかった。
【0141】
7(v)腫瘍追跡能力
NPが移植部位から腫瘍増殖部位に移動する能力は、特に脳腫瘍の療法に対する、NPの有用な治療潜在能力である。したがって、その能力を判定するために、0日目に、U251腫瘍細胞をヌードラットの脳の左半球中に移植し、7日後に、ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR)を腫瘍移植と同方向ではあるが対側半球中に投与した。11日目(NPR投与の4日後)に、動物を安楽死させ、生理食塩水で灌流し、脳を取り出し、凍結切片化及び共焦点顕微鏡法での分析のために急速凍結した。図23に示すように、NPRは、脳梁に沿って追跡することが容易に認められる。若干のNPRは、むしろ腫瘍塊から遠い方に移動するが、大部分のNPRは、左半球中の腫瘍塊に向かって移動していることが認められた。類似の挙動が、ローダミン標識化TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−TRAIL)について観察された。
【0142】
7(vi)腫瘍破壊
この実験では、腫瘍を破壊するNP−TRAILの能力を判定した。詳細には、0日目に、ヌードラットにU251n腫瘍を移植した。7日目に、NP−TRAIL、NP単独又はPBSを新生物内で投与し、14日目に、動物を安楽死させ、組織を摘出した。図24に示すように、NP−TRAILの投与は、NP単独又はPBSを投与された動物では認められなかった、腫瘍塊の底部における大きな腫瘍破壊領域の発生につながった。NP−TRAIL投与に続いて、多くの壊死及びアポトーシス細胞が、この領域内に認められたが(右パネル)、NP又はPBS投与の後では認められなかった。図25は、療法に続く腫瘍破壊領域の大きな拡大を示している。
【0143】
7(vii)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子は、MRIで示されるように、ヌードラット内に移植されたヒト神経膠腫異種移植片の境界及び内部に到達する
U251nヒト神経膠腫細胞をヌードラットに移植し、11日後に、NP又はNP−TRAILを、腫瘍の対側側に頭蓋内で注入した。8日後に、MR画像を得た。図26A〜26Bに示すように、NP−TRAIL(26B)は、腫瘍の縁端及び内部の両方で、NP単独(26A)に比較してより低いシグナル強度を誘導した。低い強度は、ナノ粒子の存在を暗示する。
【0144】
7(viii)腫瘍細胞によるTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子のインビボ取り込み
GFP−U251腫瘍細胞を移植して7日後に、腫瘍塊内にNPR単独又はNPR−TRAILを直接的に移植した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれNPR及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示している)のために急速凍結した。図27に示すように、NPR単独は、腫瘍細胞の周辺領域中に見出されたが、腫瘍細胞と共存せず(パネルD、E、F)、NPR−TRAILは、腫瘍細胞と共存して腫瘍破壊領域中に見出された(パネルG、H、I)。さらに、NPR−TRAILで処理された動物中で認められる腫瘍は、PBS又はNPRで処理された動物の両方中で認められる腫瘍に比較して退化していることを示しており、この切片中で明瞭に認められる腫瘍細胞は、ほんの少数であった。この実験は、例6(v)においてインビトロで示されたように、TRAILが、腫瘍細胞のNP取り込みにつながったことを示している。
【0145】
7(ix)cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の神経膠腫への移動
GFP−U251腫瘍細胞を移植して7日後に、cRGDペプチド複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NPR−cRGD、約2μgのcRGDペプチドに複合された0.05mgのナノ粒子を含む10μL)を、脳の対側側に注入した。4日後に、動物を安楽死させ、脳を摘出し、切片化及び造影(赤色及び緑色は、それぞれNPR及びGFP−U251腫瘍細胞の存在を示している)のために急速凍結した。図28は、NPR−cRGDが、腫瘍部位に移動したことを示している。
【0146】
7(x)cRGDペプチド及びTRAIL複合型ローダミン標識化ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の損傷部位に向けた移動
損傷は、脳の左側でのPBSのニードル注入によって誘導した。4日後に、5μL(25μg)のNPR単独、NPR−TRAIL(50ng TRAIL)及びNPR−cRGDを、脳の対側側に注入した。4日後に、動物を屠殺し、蛍光顕微鏡下でNPRの蛍光を可視化した。図29に示すように、脳の反対側にNPRは殆ど存在しなかったが、それらの分布は豊富であった。NPR−TRAILは主として損傷部位に沿って局在した。対照的に、NPR−cRGDは、損傷脳の側の全体にわたって、さらに脳梁に沿って分布した。これらの結果は、ナノ粒子が、損傷部位を追跡する若干の能力を有すること、及びNPR−TRAILが、損傷部位での選択的蓄積を示すことを示唆している。NPR−cRGDは、追跡能力を有するが、それらの分布は、損傷部位に限定されず、それらは、やはりそこに蓄積する炎症細胞に結合する可能性がある。これらの結果は、薬物を脳損傷、脳卒中及び脳の炎症性疾患に送達するためにNP系を使用することに対して重要な関連を有する。
【0147】
(例8)TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子の膀胱癌細胞、乳癌細胞及び正常乳腺細胞に対する細胞毒性効果
これらの実験では、TRAIL複合型ゼラチン/酸化鉄磁性複合ナノ粒子(NP−TRAIL)の神経膠腫細胞以外の各種癌細胞に対する細胞毒性効果を判定した。詳細には、使用する癌細胞系は、膀胱癌細胞TSU−PR1及び乳癌細胞MDA−MBとし、対照として正常乳腺細胞MCF10Aを使用した。加えて、プロテアソーム阻害薬(PS)、大部分の細胞内タンパク質分解の原因である多触媒性プロテイナーゼ複合体と組み合わせたNP−TRAILのこれらの細胞に対する効果を研究した。プロテアソームの薬理学的阻害薬は、インビトロ及びインビボで抗腫瘍活性を有する。前臨床研究は、プロテアソームの阻害が、TRAILなどのその他癌治療薬の活性を、部分的には化学療法抵抗性の経路を下向き調節することによって増強することを立証している。
【0148】
細胞(1×105/ウェル)を、PS(5mM)の不在又は存在下で、様々な濃度のTRAIL(10〜100ng/mL)、NP又はNP−TRAIL(10〜40ng TRAIL/mL)で処理した。細胞死は、24時間後にLDHアッセイを使用して判定した。100%の細胞死は、Triton X−100で処理された細胞中で判定し、データを正規化した。
【0149】
図30A〜30Bに示すように、正常乳腺細胞MCF10Aは、上記処理のすべてに対して応答せず、これらの処理が正常細胞に対して非毒性であることを示した。さらに示すように、NP−TRAILの活性は、PSでの処理の後で増強された。この発見は、特に効果的な治療戦略を計画する場合に、大きな重要性を有する可能性がある。
【0150】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなるナノ粒子であって、少なくとも1種の活性薬剤が、該ポリマーに共有結合で結合しているナノ粒子。
【請求項2】
その大きさが0.3μm未満、好ましくは0.1μm未満である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ポリマーが、金属イオンを結合することができる、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシレート、−SH、エーテル、イミン、ホスフェート又はスルフィド基から選択される官能基を有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記ポリマーが、ゼラチン、ポリメチレンイミン、キトサン又はポリリシン、好ましくはゼラチンから選択される、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記磁性金属酸化物が、酸化鉄又は酸化鉄由来のフェライト、好ましくは酸化鉄である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記酸化鉄が、マグネタイト、マグヘマイト、又はこれらの混合物から選択され、且つ前記フェライトが、式(Fe,M)3O4の酸化物であり、ここで、Mが、好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+又はNi2+から選択される遷移金属イオンを表す、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料、造影剤、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記蛍光染料が、ローダミン又はフルオレセインであり;前記ペプチド又はペプチド模倣体が、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含有するペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドが、サイトカイン、酵素、抗体、好ましくはアバスチン若しくはレミケード、又はホルモン、好ましくはインスリン、オベスタチン若しくはグレリンであり;前記サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン、或いはインターロイキン(IL)、好ましくは抗腫瘍活性を有するIL、より好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27から選択され;且つ前記小分子が、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬、抗生物質、アミン由来ホルモン、脂質又はリン脂質由来ホルモン、抗炎症薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬から選択される、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記ポリマーがゼラチンであり;前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり;前記少なくとも1種の活性薬剤が、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、或いは(v)これらの組合せから選択される、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
磁性金属酸化物の外表面に物理的に又は共有結合で結合した少なくとも1種の活性薬剤をさらに含み、ここで、前記少なくとも1種の活性薬剤は、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤と同一又は異なるものである、請求項1から9までのいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に、該磁性金属酸化物表面に結合している官能基を含む分子を介して共有結合で結合している、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
官能基を含む前記分子が、多糖類、好ましくはキトサン、タンパク質、好ましくはゼラチン又はアルブミン、ペプチド、或いはポリアミンから選択されるポリマーを含む、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に、該磁性金属酸化物表面に結合した活性化リガンドを介して共有結合で結合している、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記活性化リガンドが、塩化アクリロイル、ジビニルスルホン(DVS)、ジカルボニルイミダゾール、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)又はm−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、好ましくはDVSから選択される、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
磁性金属酸化物の外表面に結合した前記少なくとも1種の活性薬剤が、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記ペプチド又はペプチド模倣体が、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含有するペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドが、サイトカイン、酵素、抗体、好ましくはアバスチン若しくはレミケード、又はホルモン、好ましくはインスリン、オベスタチン若しくはグレリンであり;前記サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン、或いはインターロイキン(IL)、好ましくは抗腫瘍活性を有するIL、より好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27から選択され;且つ前記小分子が、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬、抗生物質、アミン由来ホルモン、脂質又はリン脂質由来ホルモン、抗炎症薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬から選択される、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記ポリマーがゼラチンであり;前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり;ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、或いは(v)これらの組合せから選択され;且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、(vi)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(vii)cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、(viii)抗腫瘍活性を有するインターロイキン、好ましくはIL−12、或いは(ix)これらの組合せから選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項18】
ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料又はTRAILであり;且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAILである、請求項17に記載のナノ粒子。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項に記載のナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物。
【請求項20】
診断、薬物の安定化、薬物の送達、又は薬物の制御放出で使用するための、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
腫瘍の検出で使用するための、ポリマーに共有結合で結合している蛍光染料を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
診断で使用するための、ポリマーに共有結合で結合しているX線造影又は磁気共鳴造影(MRI)用造影剤を含み、磁性金属酸化物の外表面に結合している腫瘍特異的細胞マーカーを結合することができる分子を任意選択で含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残存する腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、同一又は異なって、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド若しくはペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される、医薬組成物。
【請求項24】
ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAIL、ドキソルビシン、メトトレキセート、又はこれらの組合せから選択され、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、及びその大きさを監視するのに使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される、医薬組成物。
【請求項26】
磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記腫瘍が、神経膠腫、脳腫瘍、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、白血病又は多発性骨髄腫、好ましくは神経膠腫から選択される、請求項21から26までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
個体における炎症部位の検出及び前記炎症の治療で使用するための請求項20に記載の医薬組成物であって、前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、抗炎症薬である、医薬組成物。
【請求項29】
2型糖尿病の治療で使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、それぞれ独立に、インスリンである、医薬組成物。
【請求項30】
肥満の治療で使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、それぞれ独立に、オベスタチンである、医薬組成物。
【請求項31】
食欲不振の治療で使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、それぞれ独立に、グレリンである、医薬組成物。
【請求項32】
必要とする個体に請求項21又は22に記載の医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の検出方法。
【請求項33】
患者に請求項23又は24に記載の医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、或いは前記患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための方法。
【請求項34】
患者に請求項25又は26に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記患者における腫瘍の増殖を低減又は阻害し、且つその大きさを監視するための方法。
【請求項35】
放射線療法と組み合わせた、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
腫瘍から採取された生検材料に由来する細胞を請求項10に記載のナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含む、候補化合物での治療に対する前記腫瘍細胞の応答性を評価する方法であって、ナノ粒子中の磁性金属酸化物の外表面に結合している活性薬剤が、評価される候補化合物であり、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド若しくはペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬、或いはこれらの組合せから選択され、且つ該ナノ粒子が、ポリマーに共有結合で結合している蛍光染料又は造影剤を含む、方法。
【請求項37】
必要とする個体に請求項19に記載の医薬組成物を投与することを含む、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)のための方法であって、ナノ粒子が、ポリマーに共有結合で結合している造影剤を含む、方法。
【請求項38】
必要とする個体に請求項28に記載の医薬組成物を投与することを含む、炎症部位を検出し、且つ前記炎症を治療する方法。
【請求項39】
必要とする個体に請求項29に記載の医薬組成物を投与することを含む、2型糖尿病の治療方法。
【請求項40】
必要とする個体に請求項30に記載の医薬組成物を投与することを含む、肥満の治療方法。
【請求項41】
必要とする個体に請求項31に記載の医薬組成物を投与することを含む、食欲不振の治療方法。
【請求項42】
磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなるナノ粒子であって、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド、又は小分子から選択される抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に結合している、ナノ粒子。
【請求項43】
その大きさが、300nm未満、好ましくは100nm未満である、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項44】
前記ポリマーが、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシレート、−SH、エーテル、イミン、ホスフェート、又はスルフィド基から選択される、金属イオンを結合することができる官能基を有する、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項45】
前記ポリマーが、ゼラチン、ポリメチレンイミン、キトサン又はポリリシン、好ましくはゼラチンから選択される、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項46】
前記磁性金属酸化物が、酸化鉄、又は酸化鉄由来のフェライト、好ましくは酸化鉄である、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項47】
前記酸化鉄が、マグネタイト、マグヘマイト、又はこれらの混合物から選択され、且つ前記フェライトが、式(Fe,M)3O4の酸化物であり、ここで、Mが、好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+又はNi2+から選択される遷移金属イオンを表す、請求項46に記載のナノ粒子。
【請求項48】
前記少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項49】
前記少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に物理的に結合している、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項50】
前記少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の表面に結合している官能基を含む分子を介して結合している、請求項48に記載のナノ粒子。
【請求項51】
官能基を含む前記分子が、多糖類、好ましくはキトサン;タンパク質、好ましくはゼラチン又はアルブミン;ペプチド;或いはポリアミンから選択されるポリマーを含む、請求項50に記載のナノ粒子。
【請求項52】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、磁性金属酸化物の表面に結合した活性化リガンドを介して結合している、請求項48に記載のナノ粒子。
【請求項53】
前記活性化リガンドが、塩化アクリロイル、ジビニルスルホン(DVS)、ジカルボニルイミダゾール、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、又はm−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、好ましくはDVSから選択される、請求項52に記載のナノ粒子。
【請求項54】
前記ペプチド又はペプチド模倣体が、cRGDペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドが、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TNF−α、TNF−β、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン;インターロイキン(IL)、好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27;或いは抗体、好ましくはアバスチンから選択されるサイトカインであり;前記小分子が、メトトレキセートから選択される葉酸代謝拮抗薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;或いはこれらの組合せから選択される、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項55】
前記ポリマーがゼラチンであり、前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり、且つ前記少なくとも1種の薬剤が、TNF又はTNF関連サイトカイン、アントラサイクリン化学療法薬、葉酸代謝拮抗薬、或いはこれらの組合せである、請求項54に記載のナノ粒子。
【請求項56】
前記少なくとも1種の薬剤が、TRAILである、請求項55に記載のナノ粒子。
【請求項57】
請求項42から56までのいずれか一項に記載のナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための医薬組成物。
【請求項58】
少なくとも1種の薬剤が、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、ドキソルビシン、メトトレキセート、又はこれらの組合せである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記腫瘍が、神経膠腫、脳腫瘍、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、白血病、又は多発性骨髄腫、好ましくは神経膠腫から選択される、請求項57又は58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、請求項42から56までのいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項61】
放射線療法と組み合わせて使用するための、請求項60に記載のナノ粒子。
【請求項62】
患者に請求項57又は58に記載の医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、或いは前記患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための方法。
【請求項63】
放射線療法と組み合わせた、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
腫瘍から採取された生検材料に由来する細胞を請求項42に記載のナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含む、候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答性を評価する方法であって、ナノ粒子の磁性金属酸化物の外表面に結合している抗腫瘍薬剤が、評価される候補化合物である、方法。
【請求項1】
磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなるナノ粒子であって、少なくとも1種の活性薬剤が、該ポリマーに共有結合で結合しているナノ粒子。
【請求項2】
その大きさが0.3μm未満、好ましくは0.1μm未満である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ポリマーが、金属イオンを結合することができる、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシレート、−SH、エーテル、イミン、ホスフェート又はスルフィド基から選択される官能基を有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記ポリマーが、ゼラチン、ポリメチレンイミン、キトサン又はポリリシン、好ましくはゼラチンから選択される、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記磁性金属酸化物が、酸化鉄又は酸化鉄由来のフェライト、好ましくは酸化鉄である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記酸化鉄が、マグネタイト、マグヘマイト、又はこれらの混合物から選択され、且つ前記フェライトが、式(Fe,M)3O4の酸化物であり、ここで、Mが、好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+又はNi2+から選択される遷移金属イオンを表す、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料、造影剤、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記蛍光染料が、ローダミン又はフルオレセインであり;前記ペプチド又はペプチド模倣体が、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含有するペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドが、サイトカイン、酵素、抗体、好ましくはアバスチン若しくはレミケード、又はホルモン、好ましくはインスリン、オベスタチン若しくはグレリンであり;前記サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン、或いはインターロイキン(IL)、好ましくは抗腫瘍活性を有するIL、より好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27から選択され;且つ前記小分子が、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬、抗生物質、アミン由来ホルモン、脂質又はリン脂質由来ホルモン、抗炎症薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬から選択される、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記ポリマーがゼラチンであり;前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり;前記少なくとも1種の活性薬剤が、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、或いは(v)これらの組合せから選択される、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
磁性金属酸化物の外表面に物理的に又は共有結合で結合した少なくとも1種の活性薬剤をさらに含み、ここで、前記少なくとも1種の活性薬剤は、ポリマーに共有結合で結合している少なくとも1種の活性薬剤と同一又は異なるものである、請求項1から9までのいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に、該磁性金属酸化物表面に結合している官能基を含む分子を介して共有結合で結合している、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
官能基を含む前記分子が、多糖類、好ましくはキトサン、タンパク質、好ましくはゼラチン又はアルブミン、ペプチド、或いはポリアミンから選択されるポリマーを含む、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に、該磁性金属酸化物表面に結合した活性化リガンドを介して共有結合で結合している、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記活性化リガンドが、塩化アクリロイル、ジビニルスルホン(DVS)、ジカルボニルイミダゾール、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)又はm−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、好ましくはDVSから選択される、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
磁性金属酸化物の外表面に結合した前記少なくとも1種の活性薬剤が、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド又は小分子から選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記ペプチド又はペプチド模倣体が、環状のRGD(cRGD)ペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含有するペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドが、サイトカイン、酵素、抗体、好ましくはアバスチン若しくはレミケード、又はホルモン、好ましくはインスリン、オベスタチン若しくはグレリンであり;前記サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン、或いはインターロイキン(IL)、好ましくは抗腫瘍活性を有するIL、より好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27から選択され;且つ前記小分子が、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬、抗生物質、アミン由来ホルモン、脂質又はリン脂質由来ホルモン、抗炎症薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬から選択される、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記ポリマーがゼラチンであり;前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり;ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、(i)蛍光染料、好ましくはローダミン又はフルオレセイン、(ii)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(iii)アントラサイクリン化学療法薬、好ましくはドキソルビシン、(iv)葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキセート、或いは(v)これらの組合せから選択され;且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、(vi)TNF又はTNF関連サイトカイン、好ましくはTRAIL、(vii)cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、(viii)抗腫瘍活性を有するインターロイキン、好ましくはIL−12、或いは(ix)これらの組合せから選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項18】
ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料又はTRAILであり;且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAILである、請求項17に記載のナノ粒子。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項に記載のナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬組成物。
【請求項20】
診断、薬物の安定化、薬物の送達、又は薬物の制御放出で使用するための、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
腫瘍の検出で使用するための、ポリマーに共有結合で結合している蛍光染料を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
診断で使用するための、ポリマーに共有結合で結合しているX線造影又は磁気共鳴造影(MRI)用造影剤を含み、磁性金属酸化物の外表面に結合している腫瘍特異的細胞マーカーを結合することができる分子を任意選択で含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残存する腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、同一又は異なって、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド若しくはペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される、医薬組成物。
【請求項24】
ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAIL、ドキソルビシン、メトトレキセート、又はこれらの組合せから選択され、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、及びその大きさを監視するのに使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド又はペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬;或いはこれらの組合せから選択される、医薬組成物。
【請求項26】
磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、又はこれらの組合せから選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記腫瘍が、神経膠腫、脳腫瘍、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、白血病又は多発性骨髄腫、好ましくは神経膠腫から選択される、請求項21から26までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
個体における炎症部位の検出及び前記炎症の治療で使用するための請求項20に記載の医薬組成物であって、前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、蛍光染料又は造影剤であり、且つ磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、抗炎症薬である、医薬組成物。
【請求項29】
2型糖尿病の治療で使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、それぞれ独立に、インスリンである、医薬組成物。
【請求項30】
肥満の治療で使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、それぞれ独立に、オベスタチンである、医薬組成物。
【請求項31】
食欲不振の治療で使用するための請求項19に記載の医薬組成物であって、ポリマーに共有結合で結合している前記少なくとも1種の活性薬剤、及び磁性金属酸化物の外表面に結合している前記少なくとも1種の活性薬剤が、それぞれ独立に、グレリンである、医薬組成物。
【請求項32】
必要とする個体に請求項21又は22に記載の医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の検出方法。
【請求項33】
患者に請求項23又は24に記載の医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、或いは前記患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための方法。
【請求項34】
患者に請求項25又は26に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記患者における腫瘍の増殖を低減又は阻害し、且つその大きさを監視するための方法。
【請求項35】
放射線療法と組み合わせた、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
腫瘍から採取された生検材料に由来する細胞を請求項10に記載のナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含む、候補化合物での治療に対する前記腫瘍細胞の応答性を評価する方法であって、ナノ粒子中の磁性金属酸化物の外表面に結合している活性薬剤が、評価される候補化合物であり、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンドから選択されるTNF関連サイトカイン;IL−12、IL−23又はIL−27から選択される抗腫瘍活性を有するインターロイキン;cRGDペプチド、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、cRGDペプチド模倣体、RGDを含むペプチド若しくはペプチド模倣体;抗体、好ましくはアバスチン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;葉酸代謝拮抗薬、或いはこれらの組合せから選択され、且つ該ナノ粒子が、ポリマーに共有結合で結合している蛍光染料又は造影剤を含む、方法。
【請求項37】
必要とする個体に請求項19に記載の医薬組成物を投与することを含む、X線造影又は磁気共鳴造影(MRI)のための方法であって、ナノ粒子が、ポリマーに共有結合で結合している造影剤を含む、方法。
【請求項38】
必要とする個体に請求項28に記載の医薬組成物を投与することを含む、炎症部位を検出し、且つ前記炎症を治療する方法。
【請求項39】
必要とする個体に請求項29に記載の医薬組成物を投与することを含む、2型糖尿病の治療方法。
【請求項40】
必要とする個体に請求項30に記載の医薬組成物を投与することを含む、肥満の治療方法。
【請求項41】
必要とする個体に請求項31に記載の医薬組成物を投与することを含む、食欲不振の治療方法。
【請求項42】
磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーからなるナノ粒子であって、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド、又は小分子から選択される抗腫瘍活性を有する少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に結合している、ナノ粒子。
【請求項43】
その大きさが、300nm未満、好ましくは100nm未満である、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項44】
前記ポリマーが、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシレート、−SH、エーテル、イミン、ホスフェート、又はスルフィド基から選択される、金属イオンを結合することができる官能基を有する、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項45】
前記ポリマーが、ゼラチン、ポリメチレンイミン、キトサン又はポリリシン、好ましくはゼラチンから選択される、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項46】
前記磁性金属酸化物が、酸化鉄、又は酸化鉄由来のフェライト、好ましくは酸化鉄である、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項47】
前記酸化鉄が、マグネタイト、マグヘマイト、又はこれらの混合物から選択され、且つ前記フェライトが、式(Fe,M)3O4の酸化物であり、ここで、Mが、好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+又はNi2+から選択される遷移金属イオンを表す、請求項46に記載のナノ粒子。
【請求項48】
前記少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に共有結合で結合している、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項49】
前記少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の外表面に物理的に結合している、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項50】
前記少なくとも1種の薬剤が、磁性金属酸化物の表面に結合している官能基を含む分子を介して結合している、請求項48に記載のナノ粒子。
【請求項51】
官能基を含む前記分子が、多糖類、好ましくはキトサン;タンパク質、好ましくはゼラチン又はアルブミン;ペプチド;或いはポリアミンから選択されるポリマーを含む、請求項50に記載のナノ粒子。
【請求項52】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、磁性金属酸化物の表面に結合した活性化リガンドを介して結合している、請求項48に記載のナノ粒子。
【請求項53】
前記活性化リガンドが、塩化アクリロイル、ジビニルスルホン(DVS)、ジカルボニルイミダゾール、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、又はm−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、好ましくはDVSから選択される、請求項52に記載のナノ粒子。
【請求項54】
前記ペプチド又はペプチド模倣体が、cRGDペプチド又はペプチド模倣体、好ましくは配列番号1のcRGDペプチド、或いは非環式のRGDを含むペプチド又はペプチド模倣体であり;前記ポリペプチドが、TNF−α;TNF−β;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TNF−α、TNF−β、TALL−1、TNF様リガンドTL1A、リンホトキシン−β(LT−β)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド又はApo−3リガンド、好ましくはTRAILから選択されるTNF関連サイトカイン;インターロイキン(IL)、好ましくはIL−12、IL−23又はIL−27;或いは抗体、好ましくはアバスチンから選択されるサイトカインであり;前記小分子が、メトトレキセートから選択される葉酸代謝拮抗薬、或いはダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロン、好ましくはドキソルビシンから選択されるアントラサイクリン化学療法薬;或いはこれらの組合せから選択される、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項55】
前記ポリマーがゼラチンであり、前記磁性金属酸化物が酸化鉄であり、且つ前記少なくとも1種の薬剤が、TNF又はTNF関連サイトカイン、アントラサイクリン化学療法薬、葉酸代謝拮抗薬、或いはこれらの組合せである、請求項54に記載のナノ粒子。
【請求項56】
前記少なくとも1種の薬剤が、TRAILである、請求項55に記載のナノ粒子。
【請求項57】
請求項42から56までのいずれか一項に記載のナノ粒子及び医薬として許容し得る担体を含有する、腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに使用するための医薬組成物。
【請求項58】
少なくとも1種の薬剤が、TRAIL、配列番号1のcRGDペプチド、IL−12、ドキソルビシン、メトトレキセート、又はこれらの組合せである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記腫瘍が、神経膠腫、脳腫瘍、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、白血病、又は多発性骨髄腫、好ましくは神経膠腫から選択される、請求項57又は58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
腫瘍の増殖を低減又は阻害するのに、或いは患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するのに使用するための、請求項42から56までのいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項61】
放射線療法と組み合わせて使用するための、請求項60に記載のナノ粒子。
【請求項62】
患者に請求項57又は58に記載の医薬組成物を投与することを含む、腫瘍の増殖を低減又は阻害するための、或いは前記患者において腫瘍を外科的に除去した部位に残された腫瘍細胞の増殖を低減又は阻害するための方法。
【請求項63】
放射線療法と組み合わせた、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
腫瘍から採取された生検材料に由来する細胞を請求項42に記載のナノ粒子と接触させること、及び腫瘍細胞の生存率を監視することを含む、候補化合物での治療に対する腫瘍細胞の応答性を評価する方法であって、ナノ粒子の磁性金属酸化物の外表面に結合している抗腫瘍薬剤が、評価される候補化合物である、方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24a】
【図24b】
【図24c】
【図24d】
【図24e】
【図24f】
【図24g】
【図24h】
【図24i】
【図24j】
【図24k】
【図24l】
【図24m】
【図24n】
【図24o】
【図24p】
【図24q】
【図24r】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24a】
【図24b】
【図24c】
【図24d】
【図24e】
【図24f】
【図24g】
【図24h】
【図24i】
【図24j】
【図24k】
【図24l】
【図24m】
【図24n】
【図24o】
【図24p】
【図24q】
【図24r】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【公表番号】特表2010−540513(P2010−540513A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526423(P2010−526423)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001286
【国際公開番号】WO2009/040811
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504164206)バーイラン ユニバーシティー (7)
【出願人】(593053221)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001286
【国際公開番号】WO2009/040811
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504164206)バーイラン ユニバーシティー (7)
【出願人】(593053221)
【Fターム(参考)】
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