説明

磁気シールド材及びモータ包装体

【課題】内包物の外面を簡易に被覆し、内包物から発生する磁場を長期にわたり確実に遮蔽することができる磁気シールド材を提供することである。
【解決手段】磁気シールド材1は、少なくとも基材層2と、磁気シールド層3と、熱接着性樹脂層4とが積層されていることにより、モータ等の外周面を磁気シールド材1により被覆する場合に、熱接着性樹脂層4同志を当接させて周縁を熱接着することでモータ等を収納することが可能であるので、モータ等から発生する磁場を遮蔽することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の内包物から発生する電磁波を遮断するための磁気シールド材及び該磁気シールド材によりモータ外周面を被覆したモータ包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線機器や電子機器、電気機器等の分野においては、機器の小型軽量化が要求されている。この要求に対応するため、狭いスペース内に駆動源としてのモータと、モータに隣接する電子制御回路等の周辺部品とが収納されるケースが多く見られるようになった。このように、モータと周辺部品が隣接して又は至近距離に設置された場合、磁力を利用して駆動するモータから発生する磁場により機器に誤動作が発生するという問題がある。
【0003】
従来、金属板の表面にポリエステルテープが貼着された帯状シールド材をモータ外周面に巻装し、モータから発生する磁場を遮蔽するものが存在する(特許文献1参照)。
【0004】
また、磁気シールド層を有する支持基材上に感圧接着剤層が設けられたラベル本体と、感圧接着材層上に積層された剥離ライナーとで構成された磁気シールドラベルが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平08−308159号公報
【特許文献2】特開2004−71070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の帯状シールド材は、ポリエステル面を外面とし帯状金属板を内面としてモータ外周面に巻装される形態であるため、モータ外周面に固定するには別途粘着テープを使用する必要がある。更に、帯状シールド材をモータ外周面に固定する作業が煩雑であるという問題もある。
【0006】
また、特許文献2の磁気シールドラベルは、剥離ライナーが剥がされ、感圧接着剤層によりモータ外周面に貼着されるため、使用環境においてモータが高温になると感圧接着剤層の粘着性が低下し、モータ外周面から剥れ落ちるという問題がある。そのため感圧接着剤層に耐熱性を付与する必要がある。
【0007】
そこで本発明は、内包物の外面を簡易に被覆し、内包物から発生する磁場を長期にわたり確実に遮蔽することができる磁気シールド材を提供することを目的とする。また、この磁気シールド材を備えたモータ包装体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の磁気シールド材は、少なくとも基材層と、磁気シールド層と、熱接着性樹脂層とが積層されてなる構成とする。
【0009】
上記の磁気シールド材において、前記熱接着性樹脂層には酸変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。
【0010】
また上記の磁気シールド材において、前記基材層には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、環状ポリオレフィン、ポリプロピレンのいずれかを用いることが好ましい。
【0011】
また上記の磁気シールド材において、前記磁気シールド層には、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0012】
また本発明のモータ包装体は、モータと、該モータを密封する上記の磁気シールド材とを備えた構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気シールド材は、少なくとも基材層と、磁気シールド層と、熱接着性樹脂層とが積層されていることにより、モータ等の外周面を磁気シールド材により被覆する場合に、熱接着性樹脂層同志を当接させて周縁を熱接着することでモータ等を収納することが可能であるので、モータ等から発生する磁場を遮蔽することができる。
【0014】
また、熱接着性樹脂層として酸変性ポリオレフィンを用いることにより、モータ等の外面の金属との密着性を向上させることができ、モータ収納スペースを小さくできる。
【0015】
また、基材層としてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、環状ポリオレフィン、ポリプロピレンのいずれかを用いることにより、使用環境においてモータ等の内包物が高温となった状態においても剥離することを防止できる。
【0016】
また、磁気シールド層としてアルミニウム箔を用いることにより、安価に磁気シールド材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、上記の本発明について図面等を用いて詳しく説明する。図1は、本発明にかかる磁気シールド材の一例の層構成を図解的に示す断面図である。磁気シールド材1は、基材層2、磁気シールド層3、熱接着性樹脂層4を順に積層したものである。
【0018】
基材層2は、外力から磁気シールド層3を保護し、特に外部からの突き刺しに対する耐突き刺し性を向上させると共に、使用環境化でモータ等の内包物が高温となった際に磁気シールド材に耐熱性を付与する目的で設ける。基材層2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン等の樹脂から形成される無延伸または延伸フィルムを使用することができる。
【0019】
また基材層2は、情報表示部として好適に使用することができる。例えば、基材層2の裏面に用途に応じて製品名、履歴番号、シリアル番号などの文字情報やコード情報等の情報を印刷することができる。なお、基材層2の厚さは例えば5〜50μmとすることができる。
【0020】
また、磁気シールド層3としては、透磁率の高い材質が用いられ、例えば、鉄箔、ステンレス箔、アルミニウム箔などの金属箔が挙げられる。特に、コストを勘案するとアルミニウム箔が好ましい。磁気シールド層3には、製造過程における腐食の防止などを目的として、例えば、亜鉛メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理などの表面処理を施してもよい。磁気シールド層3(表面処理をする場合には処理後)の厚さは、例えば10〜100μmとすることができ、好ましくは15〜60μm程度である。10μm未満では、十分な磁気シールド効果が得られず、100μmを超えると、経済性が悪いだけでなく、スペース上の制約が生じたり、ラベルにしたときのハンドリング性を損なうなどの欠点がある。
【0021】
また、熱接着性樹脂層4としては、モータ等の外面の金属との密着性に優れ、磁気シールド材3の端縁を対向させ熱接着できる樹脂であればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、不飽和カルボン酸でグラフト変性した酸変性オレフィンからなるフィルムの単体ないし混合物等からなるフィルムを適宜選択して用いればよい。なお、モータ等の外面の金属との高い密着性を考慮すると、不飽和カルボン酸でグラフト変性した酸変性オレフィンからなるフィルムを用いるのが好ましい。なお、熱接着性樹脂層4の厚さは、20〜80μmとすることができ、好ましくは30〜70μmである。20μm未満では十分なヒートシール強度を得ることができず、80μm超ではスペース上の制約を生じる等の欠点がある。
【0022】
なお、基材層2と磁気シールド層3との積層、磁気シールド層3と熱接着性樹脂層4との積層には、接着剤や熱溶融性樹脂を介して積層する方法、熱溶融したプラスチック材料を磁気シールド層3上に直接塗布したり、押出しラミネートする方法等の公知の積層方法を用いることができる。
【0023】
上記磁気シールド材3でモータを密封包装すると、モータから発生する磁場を遮蔽することが可能となる。この包装形態としては、三方シール袋、4方シール袋、ピロー袋、ガゼット袋等の公知の包装形態を挙げることができる。
【0024】
次に、本発明の実施例について説明する。まず、磁気シールド層3としてのアルミニウム箔(40μm厚さ)の一方の面と、基材層2としてのポリエチレンナフタレートフィルム(25μm厚さ)とを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法により貼り合わせる。次いでアルミニウム箔の他方の面に熱接着性樹脂層4としての溶融状態の酸変性ポリプロピレンフィルム(不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレン、50μm厚さ)を積層し磁気シールド材1を得る。
【0025】
得られた磁気シールド材1を用い3方シール袋を作製し、開口部からモータを収納したのち開口部を熱接着しモータ包装体を得る。このようにして得られたモータ包装体の磁気シールド性は良好であり、また密封性も良好であった。
【0026】
なお、磁気シールド材1はモータの包装に利用する以外にも、家庭用や自動車用など様々な環境で使用される無線機器や電子機器、電気機器等内部で発生する電磁波を遮蔽するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にかかる磁気シールド材の一例の層構成を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 磁気シールド材
2 基材層
3 磁気シールド層
4 熱接着性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と、磁気シールド層と、熱接着性樹脂層とが積層されてなる磁気シールド材。
【請求項2】
前記熱接着性樹脂層が酸変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1記載の磁気シールド材。
【請求項3】
前記基材層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、環状ポリオレフィン、ポリプロピレンのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の磁気シールド材。
【請求項4】
前記磁気シールド層が、アルミニウム箔であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気シールド材。
【請求項5】
モータと、該モータを密封する請求項1から4のいずれかに記載の磁気シールド材とを備えたモータ包装体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−95978(P2007−95978A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283175(P2005−283175)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】