磁気センサ装置
【課題】磁気センサ装置において媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲を広げることのできる磁気センサ装置を提供すること。
【解決手段】磁気センサ装置20において、磁気センサ素子40のセンサコア41では、幅方向W40に延在する胴部42から媒体移動路11の側に向けて突出した複数の集磁用突部43(集磁用突部431、432)が幅方向W40で互い離間しており、かかる複数の集磁用突部43には検出コイル49(検出コイル491、492)が巻回され、胴部42には励磁コイル48が巻回されている。磁気センサ素子40は、幅方向W40および集磁用突部43の突出方向(高さ方向V40)の双方に対して直交する厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されており、集磁用突部43はおよび検出コイル49は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yで離間する位置に設けられている。
【解決手段】磁気センサ装置20において、磁気センサ素子40のセンサコア41では、幅方向W40に延在する胴部42から媒体移動路11の側に向けて突出した複数の集磁用突部43(集磁用突部431、432)が幅方向W40で互い離間しており、かかる複数の集磁用突部43には検出コイル49(検出コイル491、492)が巻回され、胴部42には励磁コイル48が巻回されている。磁気センサ素子40は、幅方向W40および集磁用突部43の突出方向(高さ方向V40)の双方に対して直交する厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されており、集磁用突部43はおよび検出コイル49は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yで離間する位置に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体が取り付けられた物体や磁気インクで印刷が施された紙幣等といった媒体の磁気特性等を検出するための磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性体が取り付けられたカード等の物体や、磁気インクで印刷が施された紙幣等の磁気特性を検出するにあたっては、媒体の搬送路の途中位置に磁気センサ装置が設けられており、かかる磁気センサ装置は磁気センサ素子を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1に記載の磁気センサ装置において、磁気センサ素子は、図11(a)に示すように、センサコア91に対してコイル93、94が巻回された構造を有している。センサコア91では、磁気センサ素子90の幅方向W90に延在する胴部910から複数の突部911〜916が媒体1の媒体移動路11の側およびその反対側に向けて突出しており、媒体1の媒体移動路11側に向けて突出した3枚の突部911〜913のうち、幅方向W90の中央に位置する突部912にコイル93が励磁用コイルとして巻回されている。また、媒体1の媒体移動路11側とは反対側に向けて突出した3枚の突部914〜916のうち、幅方向W90の中央に位置する突部915にコイル94が差動検出用コイルとして巻回されている。ここで、磁気センサ素子90は、幅方向W90を媒体1の移動方向Xに向けて配置されており、幅方向W90および突部911〜916が突出する高さ方向V90の双方に対して直交する厚さ方向T90は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yに向いている。また、磁気センサ素子90は、媒体幅方向Yに複数配列されており、媒体1の移動に伴って媒体1の全体から磁気特性を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−241653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気センサ素子90では、幅方向W90の両端(媒体1の移動方向Xの両端)に位置する突部911、913の間に生成した磁束の変化を幅方向W90の中央に位置する突部912、915に巻回したコイル93、94で検出するため、厚さ方向T90(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)における感度分布では、図11(b)に示すように、センサコア91が存在する領域では高いが、磁気センサ素子90から厚さ方向T90(媒体幅方向Y)にわずかにずれただけでも感度が急激に低下することになる。このため、磁気センサ素子90を媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yに複数配列すると、2つの磁気センサ素子90で挟まれた領域では、感度が急激に低下してしまう。それ故、媒体1に付した磁性領域1aの幅が狭い場合、媒体1が媒体幅方向Yにずれて磁気センサ素子90の間を通過すると、媒体1の磁気特性を検出できなくなる等の問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、磁気センサ装置において媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲を広げることのできる磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、相対移動する媒体の磁気特性を検出する磁気センサ素子を備えた磁気センサ装置であって、前記磁気センサ素子は、該磁気センサ素子の幅方向に延在する胴部から前記媒体の媒体移動路の側に向けて突出して前記幅方向で互いに離間する複数の集磁用突部を備えたセンサコアと、前記胴部に巻回された励磁コイルと、前記複数の集磁用突部の各々に巻回された検出コイルと、を備え、前記磁気センサ素子は、前記幅方向および前記集磁用突部の突出方向の双方に対して直交する厚さ方向が前記媒体の移動方向に向くように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、磁気センサ素子のセンサコアでは、幅方向に延在する胴部から媒体の媒体移動路の側に向けて突出した複数の集磁用突部が幅方向で互いに離間しており、かかる複数の集磁用突部には検出コイルが巻回され、胴部には励磁コイルが巻回されている。このため、励磁コイルに通電すると、集磁用突部周辺に磁束が形成されるので、かかる磁束の変化を、集磁用突部に巻回された検出コイルを介して検出すれば、媒体の透磁率等の磁気特性を検出することができる。ここで、磁気センサ素子は、厚さ方向が媒体の移動方向に向くように配置されており、集磁用突部および検出コイルは、媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向で離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子は、センサコアが存在する領域、およびセンサコアが存在する領域から幅方向(媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向)にずれた位置にかけて略同等の感度を有し、媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲が広い。
【0009】
本発明は、前記センサコアの前記幅方向の寸法が前記厚さ方向の寸法より大である場合に適用すると、より効果的である。本発明によれば、センサコアの幅方向は、媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向であるため、センサコアの厚さ方向の寸法が小さくなっても、媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲が広い。
【0010】
本発明において、前記磁気センサ素子は、前記媒体の移動方向に対して交差する方向に複数配列されていることが好ましい。このように構成すると、媒体幅方向において、集磁用突部および検出コイルが複数配列された構造になるので、媒体幅方向全体にわたって同等の感度を実現することができる。
【0011】
本発明において、前記複数の突部の各々に巻回された前記検出コイルは、直列に電気的に接続されていることが好ましい。このように構成すると、複数の集磁用突部の各々に巻回された検出コイルでの検出結果が合計された出力を得ることができるので、感度を向上することができる。
【0012】
本発明において、前記励磁コイルは、前記幅方向で隣り合う2つの前記集磁用突部で挟まれた部分に巻回されていることが好ましい。このように構成すると、集磁用突部の数が幾つであっても、幅方向で隣り合う2つの集磁用突部の間に磁束を形成することができる。
【0013】
本発明において、前記集磁用突部は、3つ以上形成されており、当該3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部に巻回された前記検出コイルは、他の集磁用突部に巻回された前記検出コイルに比して巻回数が多いことが好ましい。このように構成すると、幅方向の両端部といった磁束密度が低い部分での感度を高めることができるので、磁気センサ素子の幅方向における検出感度を同等とすることができる。
【0014】
この場合、前記3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部は、他の集磁用突部に比して細いことが好ましい。このように構成すると、幅方向の両端部に位置する集磁用突部に巻回された検出コイルについては、他の集磁用突部に巻回された検出コイルに比して巻回数を多くことができる。
【0015】
本発明において、前記センサコアは、前記胴部から前記集磁用突部とは反対側に突出した突部を備えていることが好ましい。このように構成すると、励磁コイルから見たときの磁気抵抗を低減することができる。従って、同じ電流を流した時に発生する磁束を増大させることができるので、感度を向上することができる。また、センサコアを飽和させるフラックスゲート方式を採用した際、駆動電流が少なく済むので、消費電流や発熱を低減することができる。また、突部に差動用コイルを巻回しておけば、検出コイルでの検出結果と差動用コイルでの検出結果との差動を用いて、媒体の磁気特性を検出することができる。従って、温度変化等といった外乱を補償することができる。
【0016】
本発明において、前記センサコアは、アモルファス磁性材料層と、該アモルファス磁性材料層を両面側で挟む非磁性の基板と、を備えている構成を採用することができる。このようなセンサコアを用いれば、薄いセンサコアを提供できるので、媒体の移動方向における解像度を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、磁気センサ素子のセンサコアでは、幅方向に延在する胴部から媒体の媒体移動路の側に向けて突出した複数の集磁用突部が幅方向で互いに離間しており、かかる複数の集磁用突部には検出コイルが巻回され、胴部には励磁コイルが巻回されている。このため、励磁コイルに通電すると、集磁用突部周辺に磁束が形成されるので、かかる磁束の変化を、集磁用突部に巻回された検出コイルを介して検出すれば、媒体の透磁率等の磁気特性を検出することができる。ここで、磁気センサ素子は、厚さ方向が媒体の移動方向に向くように配置されており、集磁用突部および検出コイルは、媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向で離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子は、センサコアが存在する領域から幅方向(媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向)にずれた位置にかけても略同等の感度を有し、媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲が広い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した磁気センサ装置の説明図である。
【図3】本発明を適用した磁気センサ装置に用いた磁気センサ素子の説明図である。
【図4】本発明を適用した磁気センサ装置の磁気センサ素子に用いたセンサコアの構成例を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した磁気センサ装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明を適用した磁気センサ装置において磁気が検出される媒体に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。
【図7】本発明を適用した磁気パターン検出装置において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【図8】本発明を適用した磁気パターン検出装置を用いて、種類の異なる媒体から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【図9】本発明を適用した別の実施の形態に係る磁気センサ装置に用いた磁気センサ素子の説明図である。
【図10】本発明を適用したさらに別の実施の形態に係る磁気センサ装置に用いた磁気センサ素子の説明図である。
【図11】従来の磁気センサ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明では、磁気センサ素子40において、センサコア41の胴部42が延在している方向および集磁用突部43が離間している方向を磁気センサ素子40およびセンサコア41の幅方向W40とし、集磁用突部43が突出している方向を磁気センサ素子40およびセンサコア41の高さ方向V40とし、幅方向W40および高さ方向V40の双方に対して直交する方向を磁気センサ素子40およびセンサコア41の厚さ方向T40としている。また、媒体1の移動方向Xに直交する2方向のうち、媒体1の幅方向を媒体1の移動方向Xに直交する媒体幅方向Yとしている。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、磁気パターン検出装置の要部構成を模式的に示す説明図、および断面構成を模式的に示す説明図である。
【0021】
図1に示す磁気パターン検出装置100は、銀行券、有価証券等の媒体1から磁気を検知して真偽判別や種類の判別を行なう装置であり、ローラやガイド(図示せず)等によってシート状の媒体1を媒体移動路11に沿って移動させる搬送装置10と、この搬送装置10による媒体移動路11の途中位置で媒体1から磁気を検出する磁気センサ装置20とを有している。本形態において、ローラやガイドは、アルミニウム等といった非磁性材料から構成されている。本形態において、磁気センサ装置20は、媒体移動路11の下方に配置されているが、媒体移動路11の上方に配置されることもある。いずれの場合も、磁気センサ装置20は、センサ面21を媒体移動路11に向けるように配置される。
【0022】
本形態において、媒体1には、媒体1の移動方向Xに延在する細幅の磁性領域1aに磁気インクによって磁気パターンが付されており、かかる磁気パターンは、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気インクにより形成されている。例えば、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。そこで、本形態の磁気パターン検出装置100は、媒体1における磁気パターン毎の有無を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出する。また、本形態において、かかる2種類の磁気パターンの検出を行なうための磁気センサ装置20は共通である。従って、本形態の磁気パターン検出装置100は、以下の構成を有している。なお、ハード材とは、マグネットに用いる磁性材料のように、外部より磁界を印加すると、ヒステリシスが大きくて残留磁束密度が高く、容易に磁化される磁性材料である。これに対して、ソフト材とは、モータや磁気ヘッドのコア材のように、ヒステリシスが小さくて残留磁束密度が低く、容易に磁化されない磁性材料である。
【0023】
(磁気センサ装置20の構成)
図2は、本発明を適用した磁気センサ装置20の説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁気センサ素子の等のレイアウトを示す説明図、磁気センサ素子の向きを示す説明図、および2つの磁気センサ素子を幅方向に配列した場合の媒体1の移動方向Xに直交する媒体幅方向Yにおける感度分布を示す説明図である。
【0024】
図1および図2(a)に示すように、本形態の磁気パターン検出装置100において、磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁界を印加した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する磁気センサ素子40と、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40を覆う非磁性のケース25とを備えている。磁気センサ装置20は、媒体移動路11と略同一平面を構成するセンサ面21と、センサ面21に対して媒体1の移動方向の両側に連接する斜面部22、23とを備えており、かかる形状は、ケース25の形状によって規定されている。本形態では、斜面部22、23を設けてあるので、媒体1が引っ掛かりにくいという利点がある。
【0025】
磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向Xと交差する方向に延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40は、媒体1の移動方向Xと交差する方向に複数、配列されている。本形態において、磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向Xと交差する方向のうち、移動方向Xと直交する媒体幅方向Yに延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40は、移動方向Xと直交する媒体幅方向Yに複数、配列されている。
【0026】
本形態において、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子40に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子40および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。また、矢印X2で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第2磁石32、磁気センサ素子40および磁界印加用第1磁石31がこの順に配置されており、媒体1が矢印X1で示す方向および矢印X2で示す方向のいずれの方向に移動した場合でも、媒体1の磁気特性を検出することができる。ここで、磁気センサ素子40は、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との中間位置に配置されており、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子40との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子40との離間距離が等しい。なお、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子40および磁界印加用第2磁石32はいずれも、磁気センサ装置20のセンサ面21に対向するように配置されている。
【0027】
本形態において、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)は、フェライトやネオジウム磁石等の永久磁石35を備えている。磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、永久磁石35は、センサ面21に位置する側と、センサ面21が位置する側とは反対側とが異なる極に着磁されている。このため、永久磁石35において、センサ面21の側に位置する面が媒体1に対する着磁面350として機能する。すなわち、本形態の磁気パターン検出装置100においては、後述するように、矢印X1で示すように移動する媒体1が磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、かかる磁界によって着磁された後の媒体1が磁気センサ素子40を通過する。また、矢印X2で示すように移動する媒体1が磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第2磁石32から媒体1に磁界が印加され、かかる磁界によって着磁された後の媒体1が磁気センサ素子40を通過することになる。
【0028】
磁界印加用磁石30に用いた複数の永久磁石35はいずれも、サイズや形状は同一であるが、各々は、以下の向きに配置されている。まず、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yで隣り合う永久磁石35同士は、互いに反対の向きに着磁されている。すなわち、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yに配列された複数の永久磁石35のうち、1つの永久磁石35は、媒体移動路11側に位置する端部がN極に着磁され、媒体移動路11側とは反対側に位置する端部はS極に着磁されているが、この永久磁石35に対して媒体1の移動方向Xと直交する方向Yで隣り合う永久磁石35は、媒体移動路11側に位置する端部がS極に着磁され、媒体移動路11側とは反対側に位置する端部はN極に着磁されている。なお、本形態では、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子40を挟んで異なる極が対向している。但し、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子40を挟んで同じ極が対向するように配置されることもある。
【0029】
(磁気センサ素子40の構成)
図3は、本発明を適用した磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図3(a)、(b)、(c)は、磁気センサ素子40の正面図、この磁気センサ素子40に対する励磁波形の説明図、および磁気センサ素子40からの出力信号の説明図である。なお、図3(a)では、図面に対して垂直な方向で媒体1が移動する状態を示してある。
【0030】
図1(b)および図2(a)、(b)に示すように、磁気センサ素子40はいずれも、薄板状であり、幅方向W40のサイズは厚さ方向T40の寸法に比して大である。例えば、磁気センサ素子40は、図1(b)に示す非磁性部材46を除くと、厚さ方向T40における寸法が5〜50[μm]、幅方向W40における寸法が8〜10[mm]、高さ方向V40における寸法が5〜15[mm]である。かかる磁気センサ素子40は、媒体1の移動方向Xに厚さ方向T40を向けて配置されており、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yには幅方向W40が向いている。
【0031】
磁気センサ素子40は、両面がセラミック等からなる厚さ0.3mm〜1mm程度の薄板状の非磁性部材46により覆われている。かかる磁気センサ素子40は、磁気シールドケース(図示せず)に収納されていることもある。この場合、磁気シールドケースは、媒体移動路が位置する上方が開口しており、磁気センサ素子40は、媒体移動路11に向けて磁気シールドケースから露出した状態にある。
【0032】
図1(b)、図2(a)、(b)、および図3(a)に示すように、磁気センサ素子40は、センサコア41と、センサコア41に巻回された励磁コイル48と、センサコア41に巻回された検出コイル49とを備えている。本形態において、センサコア41は、磁気センサ素子40の幅方向W40に延在する胴部42と、胴部42から媒体1の媒体移動路11の側に向けて突出する集磁用突部43とを備えている。ここで、集磁用突部43は、胴部42の幅方向W40の両端部から媒体1の媒体移動路11の側に向けて突出した2つの集磁用突部431、432として構成されており、2つの集磁用突部431、432は、幅方向W40で離間している。また、センサコア41は、胴部42から集磁用突部43とは反対側に突出した突部44を備えており、本形態において、突部44は、胴部42の幅方向W40の両端部から媒体1の媒体移動路11の側とは反対側に向けて突出した2つの突部441、442として構成されている。
【0033】
このように構成したセンサコア41に対して、励磁コイル48は、胴部42において集磁用突部431、432および突部441、442で挟まれた部分に巻回されている。また、検出コイル49は、集磁用突部43に巻回されており、本形態において、検出コイル49は、センサコア41の2つの集磁用突部43(集磁用突部431、432)のうち、集磁用突部431に巻回された検出コイル491と、集磁用突部432に巻回された検出コイル492とからなる。ここで、2つの検出コイル491、492は、集磁用突部431、432に対して互いに逆方向に巻回されている。また、2つの検出コイル491、492は、1本のコイル線を集磁用突部431、432に対して連続して巻回してなるため、2つの検出コイル491、492は、直列に電気的に接続されている。なお、2つの検出コイル491、492を各々集磁用突部431、432に巻回した後、直列に電気的に接続してもよい。
【0034】
このように構成した磁気センサ素子40は、幅方向W40および集磁用突部43の突出方向(高さ方向V40)の双方に対して直交する厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されており、磁気センサ素子40において集磁用突部43(集磁用突部431、432)および検出コイル49(検出コイル491、492)が離間する幅方向W40は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yに向いている。
【0035】
磁気センサ素子40において、励磁コイル48には、図5を参照して後述する励磁回路50から交番電流(図3(b)参照)が定電流で印加される。このため、図3(a)に示すように、センサコア41の周りには、バイアス磁界が形成され、検出コイル49からは、図3(c)に示す検出波形の信号が出力されることになる。ここで、図3(c)に示す検出波形は、バイアス磁界および時間に対する微分的な信号である。
【0036】
また、磁気センサ素子40は、媒体幅方向Yに複数配置されている。かかる複数の磁気センサ素子40において、励磁コイル48および検出コイル49の巻回方向が同一である。このため、複数の磁気センサ素子40の各々の励磁コイル48に対して共通の励磁電流を供給した場合でも、隣り合う磁気センサ素子40の間において互いに隣り合う集磁用突部43の磁極が逆になるので、隣り合う磁気センサ素子40の間に磁束を発生させることができる。
【0037】
(磁気センサ素子40の構成例)
図4は、本発明を適用した磁気センサ装置20の磁気センサ素子40に用いたセンサコア41の構成例を示す説明図であり、図4(a)、(b)は、センサコア41の斜視図および分解斜視図である。
【0038】
図2(b)および図3(a)等を参照して説明した磁気センサ素子40のセンサコア41は、図4(a)、(b)に示すように、非磁性の第1基板41aと非磁性の第2基板41bとの間に磁性材料層41cが挟まれた構造になっている。本形態において、磁性材料層40cは、第1基板41aの一方面に接着層(図示せず)によって接着されたアモルファス(非晶質)金属の磁性材料からなる薄板状のアモルファス金属箔からなり、かかる第1基板41aの一方面には、磁性材料層41cを間に挟むように第2基板41bが接着層によって接合されている。かかる接着層はいずれも、ガラスクロス、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維補強材に樹脂材料を含浸してなるプリプレグを固化させてなる層であり、樹脂材料としては、エポキシ樹脂系やフェノール樹脂系、ポリエステル樹脂系等の熱硬化性樹脂が用いられる。磁性材料層41cとして用いたアモルファス金属箔は、ロールによる圧延によって形成されたものであり、コバルト系としては、Co−Fe−Ni−Mo−B−Si、Co−Fe−Ni−B−Si等のアモルファス合金、鉄系としては、Fe−B−Si、Fe−B−Si−C、Fe−B−Si−Cr、Fe−Co−B−Si、Fe−Ni−Mo−B等のアモルファス合金を例示することができる。
【0039】
ここで、第1基板41aと第2基板41bは、同一形状を有しており、センサコア41の外形形状を規定している。本形態において、第1基板41aおよび第2基板41bに用いられる非磁性の基板としては、アルミナ基板等のセラミック基板や、ガラス基板等を例示でき、十分な剛性を得られるのであれば、プラスチック基板を用いてもよい。第1基板41aおよび第2基板41bのうちの少なくとも一方は、切断等の工程の際に磁性材料層41cを確認できるように透光性基板であることが好ましい。なお、磁性材料層41cは、第1基板41aおよび第2基板41bより小さい。従って、磁性材料層41cは、第1基板41aおよび第2基板41bの外周縁よりもわずかに内側に位置しており、磁性材料層41cの外周縁(第1基板41aおよび第2基板41bの外周縁)は封止部になっている。
【0040】
かかる構成のセンサコア41を製造するには、第1基板41aに対して接着層を介して接合された磁性材料層41cをフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングした後、第1基板41aの一方面に対して、磁性材料層41cを間に挟むように第2基板41bを接着層によって接合する。その際、第1基板41aとして大型基板を用い、かかる大型基板上で複数の磁性材料層41cをパターニング形成した後、大型の第2基板41bを貼り合わせ、しかる後に、所定のサイズに切断する方法を採用すれば、センサコア41を効率よく製造することができる。
【0041】
(信号処理部60の構成)
図5は、本発明を適用した磁気センサ装置20の信号処理系の構成を示すブロック図である。本形態において、図5に示す回路は、図3(b)に示す交番電流を励磁コイル48に印加する励磁回路50と、検出コイル49に電気的に接続された信号処理部60とを備えている。信号処理部60は、磁気センサ装置20の検出コイル49から出力される信号から、残留磁束密度レベルに対応する第1信号S1、および透磁率レベルに対応する第2信号S2を抽出し、かかる信号の抽出結果と、媒体1と磁気センサ装置20との相対位置情報に基づいて、媒体1における複数種類の磁気パターンの有無および形成位置を検出する。より具体的には、信号処理部60は、磁気センサ装置20から出力された信号を増幅するアンプ61と、このアンプ61から出力された信号のピーク値およびボトム値を保持するピークホールド回路62およびボトムホールド回路63と、ピーク値とボトム値とを加算して第1信号S1を抽出する加算回路64と、ピーク値とボトム値とを減算して第2信号S2を抽出する減算回路65とを備えている。さらに、信号処理部60は、加算回路64および減算回路65から出力された各信号を磁気センサ装置20と媒体1との相対位置情報に関係づけて、記録部661に予め記録されている比較パターンとの照合を行って媒体1の真偽を判定する判定部66も備えている。かかる判定部66は、マイクロコンピュータ等により構成されており、ROMあるいはRAM等といった記録部(図示せず)に予め記録されているプログラムに基づいて所定の処理を行い、媒体1の真偽を判定する。
【0042】
(検出原理)
図6は、本発明を適用した磁気センサ装置20において磁気が検出される媒体1に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。図7は、本発明を適用した磁気パターン検出装置100において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体1から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【0043】
まず、図1および図2に示す矢印X1の方向に媒体1が移動する際に媒体1の真偽を判定する原理を説明する。本形態において、媒体1の磁性領域1aには、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンが形成されている。より具体的には、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。ここで、ハード材を含む磁気インキは、図6(b1)にヒステリシスループによって、残留磁束密度Brや透磁率μ等を示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは高いが、透磁率μは低い。これに対して、ソフト材を含む磁気インキは、図6(c1)にそのヒステリシスループを示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは低いが、透磁率μは高い。
【0044】
従って、以下に説明するように、残留磁束密度Brと透磁率μとを測定すれば、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。より具体的には、透磁率μは保持力Hcと相関性を有しているので、本形態では、残留磁束密度Brと保持力Hcとを測定していることになり、かかる残留磁束密度Brと保持力Hcとの比は、磁気インキ(磁性材料)によって相違する。それ故、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。また、残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)の測定値は、インキの濃淡や、媒体1と磁気センサ装置20との距離により変動するが、本形態では、磁気センサ装置20が同一位置で残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)を測定するため、残留磁束密度Brと保持力Hcとの比によれば、磁気インキの材質を確実に判別することができる。
【0045】
本形態の磁気パターン検出装置100において、媒体1が矢印X1で示す方向に移動して磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、磁界が印加された後の媒体1が磁気センサ素子40を通過する。それまでの間、検出コイル49からは、図6(a3)に示すように、図6(a2)に示すセンサコア41のB−Hカーブに対応する信号が出力される。従って、図5に示す加算回路64および減算回路65から出力される信号は各々、図6(a4)に示す通りである。
【0046】
ここで、フェライト粉等のハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第1の磁気パターンは、図6(b1)に示すように、高レベルの残留磁束密度Brを有する。このため、図7(a1)に示すように、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した際、第1の磁気パターンは、磁界印加用磁石30からの磁界により、磁石となる。このため、検出コイル49から出力される信号は、図6(b2)に示すように、第1の磁気パターンから直流的なバイアスを受けて、図6(b3)および図7(a2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧が矢印A1、A2で示すように、同一の方向にシフトするとともに、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量が相違する。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図5に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、図6(b4)に示す通りであり、磁気センサ素子40を媒体1の第1の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ハード材を含む磁気インクにより形成された第1の磁気パターンは、透磁率μが低いため、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第1の磁気パターンの残留磁束密度Brだけと見做すことができる。それ故、図5に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、磁気センサ素子40を媒体1の第1の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(b4)に示す信号と同様である。
【0047】
これに対して、軟磁性ステンレス紛等のソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第2の磁気パターンのヒステリシスループは、図6(c1)に示すように、図6(b1)に示すハード材を含む磁気インクによる第1の磁気パターンのヒステリシスカーブの内側を通り、残留磁束密度Brのレベルが低い。このため、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した後も、第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brのレベルが低い。但し、第2の磁気パターンは透磁率μが高いため、図7(b1)に示すように、磁性体として機能する。このため、検出コイル49から出力される信号は、図6(c2)に示すように、第2の磁気パターンの存在によって透磁率μが高くなっている分、図6(c3)および図7(b2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧は矢印A3で示すように高い方にシフトする一方、ボトム電圧は、矢印A4で示すように低い方にシフトする。その際、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量は絶対値が略等しい。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図5に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、図6(c4)に示す通りであり、磁気センサ素子40を媒体1の第2の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ソフト材を含む磁気インクにより形成された第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brが低いため、信号のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第2の磁気パターンの透磁率μだけと見做すことができる。それ故、図5に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、磁気センサ素子40を媒体1の第2の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(c4)に示す信号と同様である。
【0048】
(具体的な検出結果)
図8は、本発明を適用した磁気パターン検出装置100を用いて、種類の異なる媒体1から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【0049】
本形態の磁気パターン検出装置100では、加算回路64において磁気センサ素子40から出力される信号のピーク値とボトム値とを加算した第1信号S1は、磁気パターンの残留磁束密度レベルに対応する信号であり、かかる第1信号S1を監視すれば、ハード材を含む磁気インキにより形成された第1の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。また、減算回路65において磁気センサ素子40から出力される信号のピーク値とボトム値とを減算した第2信号S2は、磁気パターンの透磁率μに対応する信号であり、かかる第2信号S2を監視すれば、ソフト材を含む磁気インキにより形成された第2の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。それ故、磁界を印加したときの残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンの媒体1における磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて識別することができる。
【0050】
それ故、ハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが形成されている媒体1、およびソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが形成されている媒体1を検査すると、図8(a)、(b)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、媒体1の真偽を判定することができる。また、第1の磁気パターンおよび第2の磁気パターンの双方が形成されている2つの媒体1を検査すると、図8(c)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、かかる媒体1についても真偽を判定することができる。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置20において、磁気センサ素子40のセンサコア41では、幅方向W40に延在する胴部42から媒体移動路11の側に向けて突出した複数の集磁用突部43(集磁用突部431、432)が幅方向W40で互いに離間しており、かかる複数の集磁用突部43には検出コイル49(検出コイル491、492)が巻回され、胴部42には励磁コイル48が巻回されている。このため、励磁コイル48に通電すると、集磁用突部43周辺に磁束が形成されるので、かかる磁束の変化を、集磁用突部43に巻回された検出コイル49を介して検出すれば、媒体1の透磁率等の磁気特性を検出することができる。
【0052】
ここで、磁気センサ素子40は、厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されており、集磁用突部43および検出コイル49は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yで離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子40では、図2(c)に示すように、センサコア41が存在する領域、およびセンサコア41が存在する領域から幅方向W40(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)にわずかにずれた位置にかけて略同等の感度を有し、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yでの検出範囲が広い。
【0053】
また、磁気センサ素子40は、媒体幅方向Yに複数配列されているため、媒体1の媒体幅方向Y全体から磁気特性を検出することができる。しかも、本形態の磁気センサ素子40では、磁気センサ素子40から幅方向W40(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)にずれた位置でも比較的高い感度を有しており、図2(c)に示すように、媒体幅方向Yで隣り合う2つの磁気センサ素子40の間に相当する領域でも検出感度が著しく低下するということがない。それ故、本形態の磁気センサ装置20は、媒体幅方向Yでの検出範囲が広く、かつ、かかる広い範囲にわたって検出感度が同等である。ここで、媒体幅方向Yにおいて磁気センサ素子40の間に相当する部分の感度は、隣り合う磁気センサ素子40の距離の影響を受けるが、本形態では、磁気センサ素子40において寸法が大である幅方向W40を媒体幅方向Yに向けているので、厚さ方向T40を媒体幅方向Yに向けた場合と比して少ない数の磁気センサ素子40によって、媒体幅方向Yにおいて磁気センサ素子40の間に相当する部分の感度が安定した磁気センサ装置2を実現することができる。
【0054】
また、本形態では、磁気センサ素子40の厚さ方向T40における寸法が小さい。このため、磁気センサ装置20の移動方向Xにおけるサイズを小さくすることができるとともに、移動方向Xにおける分解能を向上することができる。
【0055】
また、本形態において、複数の集磁用突部43(集磁用突部431、432)の各々に巻回された検出コイル49(検出コイル491、492)は、直列に電気的に接続されている。このため、2つの検出コイル491、492での検出結果が合計された出力を得ることができる。
【0056】
さらに、励磁コイル48は、幅方向W40で隣り合う2つの集磁用突部43(集磁用突部431、432)で挟まれた部分に巻回されているため、本形態のように、集磁用突部43の数が2つの場合、および後述する形態のように集磁用突部43の数が3つ以上の場合のいずれであっても、幅方向W40で隣り合う2つの集磁用突部43の間に磁束を形成することができる。
【0057】
さらに、センサコア41は、胴部42から集磁用突部43とは反対側に突出した突部44を備えているため、励磁コイル48から見たときの磁気抵抗を低減することができる。従って、同じ電流を流した時に発生する磁束を増大させることができるので、感度を向上することができる。また、本形態のように、センサコア41を飽和させるフラックスゲート方式を採用した際、駆動電流が少なく済むので、消費電流や発熱を低減することができる。また、突部44に差動用コイルを巻回しておけば、検出コイル49での検出結果と差動用コイルでの検出結果との差動を用いて、媒体1の磁気特性を検出することができる。従って、温度変化等といった外乱を補償することができる。
【0058】
さらにまた、センサコア41は、アモルファスの薄い磁性材料層41cと、アモルファス磁性材料層41cを両面側で挟む非磁性の第1および第2基板41a、41bとを備えているため、磁気センサ素子40の厚さ方向T40における寸法がかなり小さい。このため、磁気センサ装置20の移動方向Xにおけるサイズを小さくすることができるとともに、移動方向Xにおける分解能を向上することができる。
【0059】
また、本形態の磁気センサ装置20において、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子40に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁気センサ素子40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。従って、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32)に磁性粉が吸着された場合でも、かかる磁性粉が磁気センサ素子40に付着することを防止することができる。また、磁気センサ素子40に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子40に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子40に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子40に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる。さらに、図1に示すように、矢印X1で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第1磁石31によって着磁し、その後、磁気センサ素子40によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができるとともに、矢印X2で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第2磁石32によって着磁し、その後、磁気センサ素子40によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができる。それ故、本形態の磁気パターン検出装置100を入出金機に用いれば、入金された媒体1の真偽を判定することができるとともに、出金される媒体1の真偽を判定することもできる。
【0060】
また、本形態の磁気パターン検出装置100では、共通の磁気センサ装置20によって、磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出するため、残留磁束密度レベルの測定と、透磁率レベルの測定との間に時間差が発生しない。それ故、磁気センサ装置20と媒体1とを移動させながら計測する場合でも、信号処理部60は、簡素な構成で高い精度の検出を行なうができる。また、搬送装置10についても、磁気センサ装置20を通過する箇所のみに走行安定性が求められるだけなので、構成の簡素化を図ることができる。
【0061】
さらに、本形態の磁気パターン検出装置100によれば、ハード材およびソフト材の双方を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1や、ハード材とソフト材の中間に位置する材料を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1についても、磁気パターンの検出を行なうことができる。すなわち、磁気特性が第1の磁気パターンと第2の磁気パターンの中間に位置するような磁気パターンについては、図6(d1)に示すように、ヒステリシスループが、図6(b1)に示すハード材の磁気パターンのヒステリシスループと図6(c1)に示すソフト材の磁気パターンのヒステリシスループとの中間に位置するので、図6(d4)に示す信号パターンを得ることができ、かかる磁気パターンについても、有無や形成位置を検出することができる。
【0062】
[別の実施の形態]
図9は、本発明を適用した別の実施の形態に係る磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図9(a)、(b)、(c)は、集磁用突部43の数が3つの場合の説明図、集磁用突部43の数が4つの場合の説明図、および集磁用突部43の数が5つの場合の説明図である。
【0063】
図1〜図8を参照して説明した磁気センサ素子40では、センサコア41に2つの集磁用突部43が構成されていたが、図9(a)、(b)、(c)に示すように、センサコア41の胴部42から集磁用突部43が3以上突出している構成を採用してもよい。このような構成の場合も、上記実施の形態と同様、集磁用突部43の各々に検出コイル49が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた部分に励磁コイル48が巻回されている。このため、集磁用突部43、検出コイル49および励磁コイル48の数は、以下の関係
集磁用突部43の数=検出コイル49の数
励磁コイル48の数=集磁用突部43の数−1=検出コイル49の数−1
になっている。
【0064】
図9(a)、(b)、(c)に示す形態のうち、図9(a)に示す磁気センサ素子40では、3つの集磁用突部43(集磁用突部431〜433)の各々に検出コイル49(検出コイル491〜493)が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた2箇所に励磁コイル48(励磁コイル481、482)が巻回されている。さらに、胴部42からは3つの集磁用突部43(集磁用突部431〜433)とは反対側に突部44(突部441〜443)が突出している。
【0065】
また、図9(b)に示す磁気センサ素子40では、4つの集磁用突部43(集磁用突部431〜434)の各々に検出コイル49(検出コイル491〜494)が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた3箇所に励磁コイル48(励磁コイル481〜483)が巻回されている。さらに、胴部42からは4つの集磁用突部43(集磁用突部431〜434)とは反対側に突部44(突部441〜444)が突出している。
【0066】
また、図9(c)に示す磁気センサ素子40では、5つの集磁用突部43(集磁用突部431〜434)の各々に検出コイル49(検出コイル491〜494)が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた4箇所に励磁コイル48(励磁コイル481〜483)が巻回されている。さらに、胴部42からは5つの集磁用突部43(集磁用突部431〜435)とは反対側に突部44(突部441〜445)が突出している。
【0067】
このような構成の磁気センサ素子40においても、上記実施の形態と同様、幅方向W40で隣り合う検出コイル49は互いに逆向きに巻回され、複数の検出コイル49は直列に電気的に接続されている。また、磁気センサ素子40において、幅方向W40で隣り合う励磁コイル48は互いに逆向きに巻回され、複数の励磁コイル43は直列あるいは並列に電気的に接続されている。
【0068】
また、図2(a)、(b)を参照して説明したように、磁気センサ素子40は、媒体幅方向Yに複数配置されている。その際、複数の磁気センサ素子40の間では、検出コイル49の巻回方向が一致している。また、複数の磁気センサ素子40の各々の励磁コイル48に対して共通の励磁電流を供給する場合、図10(b)に示すように、集磁用突部43が4つの場合(励磁コイル48が奇数の場合)、隣り合う磁気センサ素子40の間において、励磁コイル48の巻回方向を一致させてある。これに対して、図10(a)、(c)に示すように、集磁用突部43が3つあるいは5つの場合(励磁コイル48が偶数の場合)、隣り合う磁気センサ素子40の間において、励磁コイル48の巻回方向を逆にしてある。このように構成すると、隣り合う磁気センサ素子40の間において互いに隣り合う集磁用突部43の磁極が逆になるので、隣り合う磁気センサ素子40の間に磁束を発生させることができる。
【0069】
このように構成した磁気センサ装置20でも、磁気センサ素子40は、図1に示す磁気パターン検出装置100において、厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されるため、集磁用突部43および検出コイル49は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yで離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子40では、センサコア41が存在する領域、およびセンサコア41が存在する領域から幅方向W40(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)にわずかにずれた位置にかけて略同等の感度を有し、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yでの検出範囲が広い等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0070】
[さらに別の実施の形態]
図10は、本発明を適用したさらに別の実施の形態に係る磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図10(a)、(b)、(c)は、集磁用突部43の数が3つの場合の説明図、集磁用突部43の数が4つの場合の説明図、および集磁用突部43の数が5つの場合の説明図である。図10は、本発明を適用したさらに別の実施の形態に係る磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図10(a)、(b)、(c)は、集磁用突部43の数が3つの場合の説明図、集磁用突部43の数が4つの場合の説明図、および集磁用突部43の数が5つの場合の説明図である。
【0071】
図9に示す形態では、幅方向W40の両端部では、幅方向W40に比して磁束密度が低い。このような場合、検出コイル49の巻回数を、以下の関係
図9(a)に示す形態(検出コイル49の数=3)の場合
検出コイル491、493の巻回数>検出コイル492の巻回数
図9(b)に示す形態(検出コイル49の数=4)の場合
検出コイル491、494の巻回数>検出コイル492、493の巻回数
図9(c)に示す形態(検出コイル49の数=5)の場合
検出コイル491、495の巻回数>検出コイル492、493、494の巻回数
あるいは
検出コイル491、495の巻回数
>検出コイル492、494の巻回数
>検出コイル493の巻回数
に示すように、両端の検出コイル49の巻回数を他の検出コイル49の巻回数よりも多くすれば、幅方向W40における感度を均等化することができる。
【0072】
その際、図10(a)、(b)、(c)に示すように、集磁用突部43の太さを以下の関係
図10(a)に示す形態(検出コイル49の数=3)の場合
集磁用突部431、433の太さ<集磁用突部432の太さ
図10(b)に示す形態(検出コイル49の数=4)の場合
集磁用突部431、434の太さ<集磁用突部432、433の太さ
図10(c)に示す形態(検出コイル49の数=5)の場合
集磁用突部431、435の太さ<集磁用突部432、433、434の太さ
あるいは
集磁用突部431、435の太さ
<集磁用突部432、434の太さ
<集磁用突部433の太さ
に示すように、両端の集磁用突部43の太さを他の集磁用突部43の太さよりも大にすれば、両端の検出コイル49の巻回数を他の検出コイル49の巻回数よりも多く巻回するのに支障がない。
【0073】
(その他の実施の形態)
上記形態では、媒体1と磁気センサ装置20とを相対移動させるにあたって、媒体1の方を移動させたが、媒体1が固定で磁気センサ装置20が移動する構成を採用してもよい。また、上記形態では、磁界印加用磁石30に永久磁石を用いたが、電磁石を用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 媒体
11 媒体移動路
20 磁気センサ装置
30 磁界印加用磁石
40 磁気センサ素子
41 センサコア
42 センサコアの胴部
43 センサコアの集磁用突部
48 励磁コイル
49 検出コイル
100 磁気パターン検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体が取り付けられた物体や磁気インクで印刷が施された紙幣等といった媒体の磁気特性等を検出するための磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性体が取り付けられたカード等の物体や、磁気インクで印刷が施された紙幣等の磁気特性を検出するにあたっては、媒体の搬送路の途中位置に磁気センサ装置が設けられており、かかる磁気センサ装置は磁気センサ素子を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1に記載の磁気センサ装置において、磁気センサ素子は、図11(a)に示すように、センサコア91に対してコイル93、94が巻回された構造を有している。センサコア91では、磁気センサ素子90の幅方向W90に延在する胴部910から複数の突部911〜916が媒体1の媒体移動路11の側およびその反対側に向けて突出しており、媒体1の媒体移動路11側に向けて突出した3枚の突部911〜913のうち、幅方向W90の中央に位置する突部912にコイル93が励磁用コイルとして巻回されている。また、媒体1の媒体移動路11側とは反対側に向けて突出した3枚の突部914〜916のうち、幅方向W90の中央に位置する突部915にコイル94が差動検出用コイルとして巻回されている。ここで、磁気センサ素子90は、幅方向W90を媒体1の移動方向Xに向けて配置されており、幅方向W90および突部911〜916が突出する高さ方向V90の双方に対して直交する厚さ方向T90は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yに向いている。また、磁気センサ素子90は、媒体幅方向Yに複数配列されており、媒体1の移動に伴って媒体1の全体から磁気特性を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−241653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気センサ素子90では、幅方向W90の両端(媒体1の移動方向Xの両端)に位置する突部911、913の間に生成した磁束の変化を幅方向W90の中央に位置する突部912、915に巻回したコイル93、94で検出するため、厚さ方向T90(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)における感度分布では、図11(b)に示すように、センサコア91が存在する領域では高いが、磁気センサ素子90から厚さ方向T90(媒体幅方向Y)にわずかにずれただけでも感度が急激に低下することになる。このため、磁気センサ素子90を媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yに複数配列すると、2つの磁気センサ素子90で挟まれた領域では、感度が急激に低下してしまう。それ故、媒体1に付した磁性領域1aの幅が狭い場合、媒体1が媒体幅方向Yにずれて磁気センサ素子90の間を通過すると、媒体1の磁気特性を検出できなくなる等の問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、磁気センサ装置において媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲を広げることのできる磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、相対移動する媒体の磁気特性を検出する磁気センサ素子を備えた磁気センサ装置であって、前記磁気センサ素子は、該磁気センサ素子の幅方向に延在する胴部から前記媒体の媒体移動路の側に向けて突出して前記幅方向で互いに離間する複数の集磁用突部を備えたセンサコアと、前記胴部に巻回された励磁コイルと、前記複数の集磁用突部の各々に巻回された検出コイルと、を備え、前記磁気センサ素子は、前記幅方向および前記集磁用突部の突出方向の双方に対して直交する厚さ方向が前記媒体の移動方向に向くように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、磁気センサ素子のセンサコアでは、幅方向に延在する胴部から媒体の媒体移動路の側に向けて突出した複数の集磁用突部が幅方向で互いに離間しており、かかる複数の集磁用突部には検出コイルが巻回され、胴部には励磁コイルが巻回されている。このため、励磁コイルに通電すると、集磁用突部周辺に磁束が形成されるので、かかる磁束の変化を、集磁用突部に巻回された検出コイルを介して検出すれば、媒体の透磁率等の磁気特性を検出することができる。ここで、磁気センサ素子は、厚さ方向が媒体の移動方向に向くように配置されており、集磁用突部および検出コイルは、媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向で離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子は、センサコアが存在する領域、およびセンサコアが存在する領域から幅方向(媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向)にずれた位置にかけて略同等の感度を有し、媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲が広い。
【0009】
本発明は、前記センサコアの前記幅方向の寸法が前記厚さ方向の寸法より大である場合に適用すると、より効果的である。本発明によれば、センサコアの幅方向は、媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向であるため、センサコアの厚さ方向の寸法が小さくなっても、媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲が広い。
【0010】
本発明において、前記磁気センサ素子は、前記媒体の移動方向に対して交差する方向に複数配列されていることが好ましい。このように構成すると、媒体幅方向において、集磁用突部および検出コイルが複数配列された構造になるので、媒体幅方向全体にわたって同等の感度を実現することができる。
【0011】
本発明において、前記複数の突部の各々に巻回された前記検出コイルは、直列に電気的に接続されていることが好ましい。このように構成すると、複数の集磁用突部の各々に巻回された検出コイルでの検出結果が合計された出力を得ることができるので、感度を向上することができる。
【0012】
本発明において、前記励磁コイルは、前記幅方向で隣り合う2つの前記集磁用突部で挟まれた部分に巻回されていることが好ましい。このように構成すると、集磁用突部の数が幾つであっても、幅方向で隣り合う2つの集磁用突部の間に磁束を形成することができる。
【0013】
本発明において、前記集磁用突部は、3つ以上形成されており、当該3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部に巻回された前記検出コイルは、他の集磁用突部に巻回された前記検出コイルに比して巻回数が多いことが好ましい。このように構成すると、幅方向の両端部といった磁束密度が低い部分での感度を高めることができるので、磁気センサ素子の幅方向における検出感度を同等とすることができる。
【0014】
この場合、前記3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部は、他の集磁用突部に比して細いことが好ましい。このように構成すると、幅方向の両端部に位置する集磁用突部に巻回された検出コイルについては、他の集磁用突部に巻回された検出コイルに比して巻回数を多くことができる。
【0015】
本発明において、前記センサコアは、前記胴部から前記集磁用突部とは反対側に突出した突部を備えていることが好ましい。このように構成すると、励磁コイルから見たときの磁気抵抗を低減することができる。従って、同じ電流を流した時に発生する磁束を増大させることができるので、感度を向上することができる。また、センサコアを飽和させるフラックスゲート方式を採用した際、駆動電流が少なく済むので、消費電流や発熱を低減することができる。また、突部に差動用コイルを巻回しておけば、検出コイルでの検出結果と差動用コイルでの検出結果との差動を用いて、媒体の磁気特性を検出することができる。従って、温度変化等といった外乱を補償することができる。
【0016】
本発明において、前記センサコアは、アモルファス磁性材料層と、該アモルファス磁性材料層を両面側で挟む非磁性の基板と、を備えている構成を採用することができる。このようなセンサコアを用いれば、薄いセンサコアを提供できるので、媒体の移動方向における解像度を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、磁気センサ素子のセンサコアでは、幅方向に延在する胴部から媒体の媒体移動路の側に向けて突出した複数の集磁用突部が幅方向で互いに離間しており、かかる複数の集磁用突部には検出コイルが巻回され、胴部には励磁コイルが巻回されている。このため、励磁コイルに通電すると、集磁用突部周辺に磁束が形成されるので、かかる磁束の変化を、集磁用突部に巻回された検出コイルを介して検出すれば、媒体の透磁率等の磁気特性を検出することができる。ここで、磁気センサ素子は、厚さ方向が媒体の移動方向に向くように配置されており、集磁用突部および検出コイルは、媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向で離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子は、センサコアが存在する領域から幅方向(媒体の移動方向に対して直交する媒体幅方向)にずれた位置にかけても略同等の感度を有し、媒体の移動方向と直交する媒体幅方向での検出範囲が広い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した磁気センサ装置の説明図である。
【図3】本発明を適用した磁気センサ装置に用いた磁気センサ素子の説明図である。
【図4】本発明を適用した磁気センサ装置の磁気センサ素子に用いたセンサコアの構成例を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した磁気センサ装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明を適用した磁気センサ装置において磁気が検出される媒体に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。
【図7】本発明を適用した磁気パターン検出装置において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【図8】本発明を適用した磁気パターン検出装置を用いて、種類の異なる媒体から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【図9】本発明を適用した別の実施の形態に係る磁気センサ装置に用いた磁気センサ素子の説明図である。
【図10】本発明を適用したさらに別の実施の形態に係る磁気センサ装置に用いた磁気センサ素子の説明図である。
【図11】従来の磁気センサ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明では、磁気センサ素子40において、センサコア41の胴部42が延在している方向および集磁用突部43が離間している方向を磁気センサ素子40およびセンサコア41の幅方向W40とし、集磁用突部43が突出している方向を磁気センサ素子40およびセンサコア41の高さ方向V40とし、幅方向W40および高さ方向V40の双方に対して直交する方向を磁気センサ素子40およびセンサコア41の厚さ方向T40としている。また、媒体1の移動方向Xに直交する2方向のうち、媒体1の幅方向を媒体1の移動方向Xに直交する媒体幅方向Yとしている。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、磁気パターン検出装置の要部構成を模式的に示す説明図、および断面構成を模式的に示す説明図である。
【0021】
図1に示す磁気パターン検出装置100は、銀行券、有価証券等の媒体1から磁気を検知して真偽判別や種類の判別を行なう装置であり、ローラやガイド(図示せず)等によってシート状の媒体1を媒体移動路11に沿って移動させる搬送装置10と、この搬送装置10による媒体移動路11の途中位置で媒体1から磁気を検出する磁気センサ装置20とを有している。本形態において、ローラやガイドは、アルミニウム等といった非磁性材料から構成されている。本形態において、磁気センサ装置20は、媒体移動路11の下方に配置されているが、媒体移動路11の上方に配置されることもある。いずれの場合も、磁気センサ装置20は、センサ面21を媒体移動路11に向けるように配置される。
【0022】
本形態において、媒体1には、媒体1の移動方向Xに延在する細幅の磁性領域1aに磁気インクによって磁気パターンが付されており、かかる磁気パターンは、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気インクにより形成されている。例えば、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。そこで、本形態の磁気パターン検出装置100は、媒体1における磁気パターン毎の有無を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出する。また、本形態において、かかる2種類の磁気パターンの検出を行なうための磁気センサ装置20は共通である。従って、本形態の磁気パターン検出装置100は、以下の構成を有している。なお、ハード材とは、マグネットに用いる磁性材料のように、外部より磁界を印加すると、ヒステリシスが大きくて残留磁束密度が高く、容易に磁化される磁性材料である。これに対して、ソフト材とは、モータや磁気ヘッドのコア材のように、ヒステリシスが小さくて残留磁束密度が低く、容易に磁化されない磁性材料である。
【0023】
(磁気センサ装置20の構成)
図2は、本発明を適用した磁気センサ装置20の説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁気センサ素子の等のレイアウトを示す説明図、磁気センサ素子の向きを示す説明図、および2つの磁気センサ素子を幅方向に配列した場合の媒体1の移動方向Xに直交する媒体幅方向Yにおける感度分布を示す説明図である。
【0024】
図1および図2(a)に示すように、本形態の磁気パターン検出装置100において、磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁界を印加した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する磁気センサ素子40と、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40を覆う非磁性のケース25とを備えている。磁気センサ装置20は、媒体移動路11と略同一平面を構成するセンサ面21と、センサ面21に対して媒体1の移動方向の両側に連接する斜面部22、23とを備えており、かかる形状は、ケース25の形状によって規定されている。本形態では、斜面部22、23を設けてあるので、媒体1が引っ掛かりにくいという利点がある。
【0025】
磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向Xと交差する方向に延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40は、媒体1の移動方向Xと交差する方向に複数、配列されている。本形態において、磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向Xと交差する方向のうち、移動方向Xと直交する媒体幅方向Yに延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40は、移動方向Xと直交する媒体幅方向Yに複数、配列されている。
【0026】
本形態において、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子40に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子40および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。また、矢印X2で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第2磁石32、磁気センサ素子40および磁界印加用第1磁石31がこの順に配置されており、媒体1が矢印X1で示す方向および矢印X2で示す方向のいずれの方向に移動した場合でも、媒体1の磁気特性を検出することができる。ここで、磁気センサ素子40は、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との中間位置に配置されており、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子40との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子40との離間距離が等しい。なお、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子40および磁界印加用第2磁石32はいずれも、磁気センサ装置20のセンサ面21に対向するように配置されている。
【0027】
本形態において、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)は、フェライトやネオジウム磁石等の永久磁石35を備えている。磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、永久磁石35は、センサ面21に位置する側と、センサ面21が位置する側とは反対側とが異なる極に着磁されている。このため、永久磁石35において、センサ面21の側に位置する面が媒体1に対する着磁面350として機能する。すなわち、本形態の磁気パターン検出装置100においては、後述するように、矢印X1で示すように移動する媒体1が磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、かかる磁界によって着磁された後の媒体1が磁気センサ素子40を通過する。また、矢印X2で示すように移動する媒体1が磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第2磁石32から媒体1に磁界が印加され、かかる磁界によって着磁された後の媒体1が磁気センサ素子40を通過することになる。
【0028】
磁界印加用磁石30に用いた複数の永久磁石35はいずれも、サイズや形状は同一であるが、各々は、以下の向きに配置されている。まず、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yで隣り合う永久磁石35同士は、互いに反対の向きに着磁されている。すなわち、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yに配列された複数の永久磁石35のうち、1つの永久磁石35は、媒体移動路11側に位置する端部がN極に着磁され、媒体移動路11側とは反対側に位置する端部はS極に着磁されているが、この永久磁石35に対して媒体1の移動方向Xと直交する方向Yで隣り合う永久磁石35は、媒体移動路11側に位置する端部がS極に着磁され、媒体移動路11側とは反対側に位置する端部はN極に着磁されている。なお、本形態では、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子40を挟んで異なる極が対向している。但し、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子40を挟んで同じ極が対向するように配置されることもある。
【0029】
(磁気センサ素子40の構成)
図3は、本発明を適用した磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図3(a)、(b)、(c)は、磁気センサ素子40の正面図、この磁気センサ素子40に対する励磁波形の説明図、および磁気センサ素子40からの出力信号の説明図である。なお、図3(a)では、図面に対して垂直な方向で媒体1が移動する状態を示してある。
【0030】
図1(b)および図2(a)、(b)に示すように、磁気センサ素子40はいずれも、薄板状であり、幅方向W40のサイズは厚さ方向T40の寸法に比して大である。例えば、磁気センサ素子40は、図1(b)に示す非磁性部材46を除くと、厚さ方向T40における寸法が5〜50[μm]、幅方向W40における寸法が8〜10[mm]、高さ方向V40における寸法が5〜15[mm]である。かかる磁気センサ素子40は、媒体1の移動方向Xに厚さ方向T40を向けて配置されており、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yには幅方向W40が向いている。
【0031】
磁気センサ素子40は、両面がセラミック等からなる厚さ0.3mm〜1mm程度の薄板状の非磁性部材46により覆われている。かかる磁気センサ素子40は、磁気シールドケース(図示せず)に収納されていることもある。この場合、磁気シールドケースは、媒体移動路が位置する上方が開口しており、磁気センサ素子40は、媒体移動路11に向けて磁気シールドケースから露出した状態にある。
【0032】
図1(b)、図2(a)、(b)、および図3(a)に示すように、磁気センサ素子40は、センサコア41と、センサコア41に巻回された励磁コイル48と、センサコア41に巻回された検出コイル49とを備えている。本形態において、センサコア41は、磁気センサ素子40の幅方向W40に延在する胴部42と、胴部42から媒体1の媒体移動路11の側に向けて突出する集磁用突部43とを備えている。ここで、集磁用突部43は、胴部42の幅方向W40の両端部から媒体1の媒体移動路11の側に向けて突出した2つの集磁用突部431、432として構成されており、2つの集磁用突部431、432は、幅方向W40で離間している。また、センサコア41は、胴部42から集磁用突部43とは反対側に突出した突部44を備えており、本形態において、突部44は、胴部42の幅方向W40の両端部から媒体1の媒体移動路11の側とは反対側に向けて突出した2つの突部441、442として構成されている。
【0033】
このように構成したセンサコア41に対して、励磁コイル48は、胴部42において集磁用突部431、432および突部441、442で挟まれた部分に巻回されている。また、検出コイル49は、集磁用突部43に巻回されており、本形態において、検出コイル49は、センサコア41の2つの集磁用突部43(集磁用突部431、432)のうち、集磁用突部431に巻回された検出コイル491と、集磁用突部432に巻回された検出コイル492とからなる。ここで、2つの検出コイル491、492は、集磁用突部431、432に対して互いに逆方向に巻回されている。また、2つの検出コイル491、492は、1本のコイル線を集磁用突部431、432に対して連続して巻回してなるため、2つの検出コイル491、492は、直列に電気的に接続されている。なお、2つの検出コイル491、492を各々集磁用突部431、432に巻回した後、直列に電気的に接続してもよい。
【0034】
このように構成した磁気センサ素子40は、幅方向W40および集磁用突部43の突出方向(高さ方向V40)の双方に対して直交する厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されており、磁気センサ素子40において集磁用突部43(集磁用突部431、432)および検出コイル49(検出コイル491、492)が離間する幅方向W40は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yに向いている。
【0035】
磁気センサ素子40において、励磁コイル48には、図5を参照して後述する励磁回路50から交番電流(図3(b)参照)が定電流で印加される。このため、図3(a)に示すように、センサコア41の周りには、バイアス磁界が形成され、検出コイル49からは、図3(c)に示す検出波形の信号が出力されることになる。ここで、図3(c)に示す検出波形は、バイアス磁界および時間に対する微分的な信号である。
【0036】
また、磁気センサ素子40は、媒体幅方向Yに複数配置されている。かかる複数の磁気センサ素子40において、励磁コイル48および検出コイル49の巻回方向が同一である。このため、複数の磁気センサ素子40の各々の励磁コイル48に対して共通の励磁電流を供給した場合でも、隣り合う磁気センサ素子40の間において互いに隣り合う集磁用突部43の磁極が逆になるので、隣り合う磁気センサ素子40の間に磁束を発生させることができる。
【0037】
(磁気センサ素子40の構成例)
図4は、本発明を適用した磁気センサ装置20の磁気センサ素子40に用いたセンサコア41の構成例を示す説明図であり、図4(a)、(b)は、センサコア41の斜視図および分解斜視図である。
【0038】
図2(b)および図3(a)等を参照して説明した磁気センサ素子40のセンサコア41は、図4(a)、(b)に示すように、非磁性の第1基板41aと非磁性の第2基板41bとの間に磁性材料層41cが挟まれた構造になっている。本形態において、磁性材料層40cは、第1基板41aの一方面に接着層(図示せず)によって接着されたアモルファス(非晶質)金属の磁性材料からなる薄板状のアモルファス金属箔からなり、かかる第1基板41aの一方面には、磁性材料層41cを間に挟むように第2基板41bが接着層によって接合されている。かかる接着層はいずれも、ガラスクロス、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維補強材に樹脂材料を含浸してなるプリプレグを固化させてなる層であり、樹脂材料としては、エポキシ樹脂系やフェノール樹脂系、ポリエステル樹脂系等の熱硬化性樹脂が用いられる。磁性材料層41cとして用いたアモルファス金属箔は、ロールによる圧延によって形成されたものであり、コバルト系としては、Co−Fe−Ni−Mo−B−Si、Co−Fe−Ni−B−Si等のアモルファス合金、鉄系としては、Fe−B−Si、Fe−B−Si−C、Fe−B−Si−Cr、Fe−Co−B−Si、Fe−Ni−Mo−B等のアモルファス合金を例示することができる。
【0039】
ここで、第1基板41aと第2基板41bは、同一形状を有しており、センサコア41の外形形状を規定している。本形態において、第1基板41aおよび第2基板41bに用いられる非磁性の基板としては、アルミナ基板等のセラミック基板や、ガラス基板等を例示でき、十分な剛性を得られるのであれば、プラスチック基板を用いてもよい。第1基板41aおよび第2基板41bのうちの少なくとも一方は、切断等の工程の際に磁性材料層41cを確認できるように透光性基板であることが好ましい。なお、磁性材料層41cは、第1基板41aおよび第2基板41bより小さい。従って、磁性材料層41cは、第1基板41aおよび第2基板41bの外周縁よりもわずかに内側に位置しており、磁性材料層41cの外周縁(第1基板41aおよび第2基板41bの外周縁)は封止部になっている。
【0040】
かかる構成のセンサコア41を製造するには、第1基板41aに対して接着層を介して接合された磁性材料層41cをフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングした後、第1基板41aの一方面に対して、磁性材料層41cを間に挟むように第2基板41bを接着層によって接合する。その際、第1基板41aとして大型基板を用い、かかる大型基板上で複数の磁性材料層41cをパターニング形成した後、大型の第2基板41bを貼り合わせ、しかる後に、所定のサイズに切断する方法を採用すれば、センサコア41を効率よく製造することができる。
【0041】
(信号処理部60の構成)
図5は、本発明を適用した磁気センサ装置20の信号処理系の構成を示すブロック図である。本形態において、図5に示す回路は、図3(b)に示す交番電流を励磁コイル48に印加する励磁回路50と、検出コイル49に電気的に接続された信号処理部60とを備えている。信号処理部60は、磁気センサ装置20の検出コイル49から出力される信号から、残留磁束密度レベルに対応する第1信号S1、および透磁率レベルに対応する第2信号S2を抽出し、かかる信号の抽出結果と、媒体1と磁気センサ装置20との相対位置情報に基づいて、媒体1における複数種類の磁気パターンの有無および形成位置を検出する。より具体的には、信号処理部60は、磁気センサ装置20から出力された信号を増幅するアンプ61と、このアンプ61から出力された信号のピーク値およびボトム値を保持するピークホールド回路62およびボトムホールド回路63と、ピーク値とボトム値とを加算して第1信号S1を抽出する加算回路64と、ピーク値とボトム値とを減算して第2信号S2を抽出する減算回路65とを備えている。さらに、信号処理部60は、加算回路64および減算回路65から出力された各信号を磁気センサ装置20と媒体1との相対位置情報に関係づけて、記録部661に予め記録されている比較パターンとの照合を行って媒体1の真偽を判定する判定部66も備えている。かかる判定部66は、マイクロコンピュータ等により構成されており、ROMあるいはRAM等といった記録部(図示せず)に予め記録されているプログラムに基づいて所定の処理を行い、媒体1の真偽を判定する。
【0042】
(検出原理)
図6は、本発明を適用した磁気センサ装置20において磁気が検出される媒体1に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。図7は、本発明を適用した磁気パターン検出装置100において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体1から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【0043】
まず、図1および図2に示す矢印X1の方向に媒体1が移動する際に媒体1の真偽を判定する原理を説明する。本形態において、媒体1の磁性領域1aには、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンが形成されている。より具体的には、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。ここで、ハード材を含む磁気インキは、図6(b1)にヒステリシスループによって、残留磁束密度Brや透磁率μ等を示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは高いが、透磁率μは低い。これに対して、ソフト材を含む磁気インキは、図6(c1)にそのヒステリシスループを示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは低いが、透磁率μは高い。
【0044】
従って、以下に説明するように、残留磁束密度Brと透磁率μとを測定すれば、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。より具体的には、透磁率μは保持力Hcと相関性を有しているので、本形態では、残留磁束密度Brと保持力Hcとを測定していることになり、かかる残留磁束密度Brと保持力Hcとの比は、磁気インキ(磁性材料)によって相違する。それ故、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。また、残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)の測定値は、インキの濃淡や、媒体1と磁気センサ装置20との距離により変動するが、本形態では、磁気センサ装置20が同一位置で残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)を測定するため、残留磁束密度Brと保持力Hcとの比によれば、磁気インキの材質を確実に判別することができる。
【0045】
本形態の磁気パターン検出装置100において、媒体1が矢印X1で示す方向に移動して磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、磁界が印加された後の媒体1が磁気センサ素子40を通過する。それまでの間、検出コイル49からは、図6(a3)に示すように、図6(a2)に示すセンサコア41のB−Hカーブに対応する信号が出力される。従って、図5に示す加算回路64および減算回路65から出力される信号は各々、図6(a4)に示す通りである。
【0046】
ここで、フェライト粉等のハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第1の磁気パターンは、図6(b1)に示すように、高レベルの残留磁束密度Brを有する。このため、図7(a1)に示すように、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した際、第1の磁気パターンは、磁界印加用磁石30からの磁界により、磁石となる。このため、検出コイル49から出力される信号は、図6(b2)に示すように、第1の磁気パターンから直流的なバイアスを受けて、図6(b3)および図7(a2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧が矢印A1、A2で示すように、同一の方向にシフトするとともに、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量が相違する。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図5に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、図6(b4)に示す通りであり、磁気センサ素子40を媒体1の第1の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ハード材を含む磁気インクにより形成された第1の磁気パターンは、透磁率μが低いため、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第1の磁気パターンの残留磁束密度Brだけと見做すことができる。それ故、図5に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、磁気センサ素子40を媒体1の第1の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(b4)に示す信号と同様である。
【0047】
これに対して、軟磁性ステンレス紛等のソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第2の磁気パターンのヒステリシスループは、図6(c1)に示すように、図6(b1)に示すハード材を含む磁気インクによる第1の磁気パターンのヒステリシスカーブの内側を通り、残留磁束密度Brのレベルが低い。このため、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した後も、第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brのレベルが低い。但し、第2の磁気パターンは透磁率μが高いため、図7(b1)に示すように、磁性体として機能する。このため、検出コイル49から出力される信号は、図6(c2)に示すように、第2の磁気パターンの存在によって透磁率μが高くなっている分、図6(c3)および図7(b2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧は矢印A3で示すように高い方にシフトする一方、ボトム電圧は、矢印A4で示すように低い方にシフトする。その際、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量は絶対値が略等しい。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図5に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、図6(c4)に示す通りであり、磁気センサ素子40を媒体1の第2の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ソフト材を含む磁気インクにより形成された第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brが低いため、信号のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第2の磁気パターンの透磁率μだけと見做すことができる。それ故、図5に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、磁気センサ素子40を媒体1の第2の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(c4)に示す信号と同様である。
【0048】
(具体的な検出結果)
図8は、本発明を適用した磁気パターン検出装置100を用いて、種類の異なる媒体1から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【0049】
本形態の磁気パターン検出装置100では、加算回路64において磁気センサ素子40から出力される信号のピーク値とボトム値とを加算した第1信号S1は、磁気パターンの残留磁束密度レベルに対応する信号であり、かかる第1信号S1を監視すれば、ハード材を含む磁気インキにより形成された第1の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。また、減算回路65において磁気センサ素子40から出力される信号のピーク値とボトム値とを減算した第2信号S2は、磁気パターンの透磁率μに対応する信号であり、かかる第2信号S2を監視すれば、ソフト材を含む磁気インキにより形成された第2の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。それ故、磁界を印加したときの残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンの媒体1における磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて識別することができる。
【0050】
それ故、ハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが形成されている媒体1、およびソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが形成されている媒体1を検査すると、図8(a)、(b)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、媒体1の真偽を判定することができる。また、第1の磁気パターンおよび第2の磁気パターンの双方が形成されている2つの媒体1を検査すると、図8(c)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、かかる媒体1についても真偽を判定することができる。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置20において、磁気センサ素子40のセンサコア41では、幅方向W40に延在する胴部42から媒体移動路11の側に向けて突出した複数の集磁用突部43(集磁用突部431、432)が幅方向W40で互いに離間しており、かかる複数の集磁用突部43には検出コイル49(検出コイル491、492)が巻回され、胴部42には励磁コイル48が巻回されている。このため、励磁コイル48に通電すると、集磁用突部43周辺に磁束が形成されるので、かかる磁束の変化を、集磁用突部43に巻回された検出コイル49を介して検出すれば、媒体1の透磁率等の磁気特性を検出することができる。
【0052】
ここで、磁気センサ素子40は、厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されており、集磁用突部43および検出コイル49は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yで離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子40では、図2(c)に示すように、センサコア41が存在する領域、およびセンサコア41が存在する領域から幅方向W40(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)にわずかにずれた位置にかけて略同等の感度を有し、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yでの検出範囲が広い。
【0053】
また、磁気センサ素子40は、媒体幅方向Yに複数配列されているため、媒体1の媒体幅方向Y全体から磁気特性を検出することができる。しかも、本形態の磁気センサ素子40では、磁気センサ素子40から幅方向W40(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)にずれた位置でも比較的高い感度を有しており、図2(c)に示すように、媒体幅方向Yで隣り合う2つの磁気センサ素子40の間に相当する領域でも検出感度が著しく低下するということがない。それ故、本形態の磁気センサ装置20は、媒体幅方向Yでの検出範囲が広く、かつ、かかる広い範囲にわたって検出感度が同等である。ここで、媒体幅方向Yにおいて磁気センサ素子40の間に相当する部分の感度は、隣り合う磁気センサ素子40の距離の影響を受けるが、本形態では、磁気センサ素子40において寸法が大である幅方向W40を媒体幅方向Yに向けているので、厚さ方向T40を媒体幅方向Yに向けた場合と比して少ない数の磁気センサ素子40によって、媒体幅方向Yにおいて磁気センサ素子40の間に相当する部分の感度が安定した磁気センサ装置2を実現することができる。
【0054】
また、本形態では、磁気センサ素子40の厚さ方向T40における寸法が小さい。このため、磁気センサ装置20の移動方向Xにおけるサイズを小さくすることができるとともに、移動方向Xにおける分解能を向上することができる。
【0055】
また、本形態において、複数の集磁用突部43(集磁用突部431、432)の各々に巻回された検出コイル49(検出コイル491、492)は、直列に電気的に接続されている。このため、2つの検出コイル491、492での検出結果が合計された出力を得ることができる。
【0056】
さらに、励磁コイル48は、幅方向W40で隣り合う2つの集磁用突部43(集磁用突部431、432)で挟まれた部分に巻回されているため、本形態のように、集磁用突部43の数が2つの場合、および後述する形態のように集磁用突部43の数が3つ以上の場合のいずれであっても、幅方向W40で隣り合う2つの集磁用突部43の間に磁束を形成することができる。
【0057】
さらに、センサコア41は、胴部42から集磁用突部43とは反対側に突出した突部44を備えているため、励磁コイル48から見たときの磁気抵抗を低減することができる。従って、同じ電流を流した時に発生する磁束を増大させることができるので、感度を向上することができる。また、本形態のように、センサコア41を飽和させるフラックスゲート方式を採用した際、駆動電流が少なく済むので、消費電流や発熱を低減することができる。また、突部44に差動用コイルを巻回しておけば、検出コイル49での検出結果と差動用コイルでの検出結果との差動を用いて、媒体1の磁気特性を検出することができる。従って、温度変化等といった外乱を補償することができる。
【0058】
さらにまた、センサコア41は、アモルファスの薄い磁性材料層41cと、アモルファス磁性材料層41cを両面側で挟む非磁性の第1および第2基板41a、41bとを備えているため、磁気センサ素子40の厚さ方向T40における寸法がかなり小さい。このため、磁気センサ装置20の移動方向Xにおけるサイズを小さくすることができるとともに、移動方向Xにおける分解能を向上することができる。
【0059】
また、本形態の磁気センサ装置20において、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子40に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁気センサ素子40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。従って、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32)に磁性粉が吸着された場合でも、かかる磁性粉が磁気センサ素子40に付着することを防止することができる。また、磁気センサ素子40に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子40に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子40に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子40に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる。さらに、図1に示すように、矢印X1で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第1磁石31によって着磁し、その後、磁気センサ素子40によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができるとともに、矢印X2で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第2磁石32によって着磁し、その後、磁気センサ素子40によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができる。それ故、本形態の磁気パターン検出装置100を入出金機に用いれば、入金された媒体1の真偽を判定することができるとともに、出金される媒体1の真偽を判定することもできる。
【0060】
また、本形態の磁気パターン検出装置100では、共通の磁気センサ装置20によって、磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出するため、残留磁束密度レベルの測定と、透磁率レベルの測定との間に時間差が発生しない。それ故、磁気センサ装置20と媒体1とを移動させながら計測する場合でも、信号処理部60は、簡素な構成で高い精度の検出を行なうができる。また、搬送装置10についても、磁気センサ装置20を通過する箇所のみに走行安定性が求められるだけなので、構成の簡素化を図ることができる。
【0061】
さらに、本形態の磁気パターン検出装置100によれば、ハード材およびソフト材の双方を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1や、ハード材とソフト材の中間に位置する材料を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1についても、磁気パターンの検出を行なうことができる。すなわち、磁気特性が第1の磁気パターンと第2の磁気パターンの中間に位置するような磁気パターンについては、図6(d1)に示すように、ヒステリシスループが、図6(b1)に示すハード材の磁気パターンのヒステリシスループと図6(c1)に示すソフト材の磁気パターンのヒステリシスループとの中間に位置するので、図6(d4)に示す信号パターンを得ることができ、かかる磁気パターンについても、有無や形成位置を検出することができる。
【0062】
[別の実施の形態]
図9は、本発明を適用した別の実施の形態に係る磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図9(a)、(b)、(c)は、集磁用突部43の数が3つの場合の説明図、集磁用突部43の数が4つの場合の説明図、および集磁用突部43の数が5つの場合の説明図である。
【0063】
図1〜図8を参照して説明した磁気センサ素子40では、センサコア41に2つの集磁用突部43が構成されていたが、図9(a)、(b)、(c)に示すように、センサコア41の胴部42から集磁用突部43が3以上突出している構成を採用してもよい。このような構成の場合も、上記実施の形態と同様、集磁用突部43の各々に検出コイル49が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた部分に励磁コイル48が巻回されている。このため、集磁用突部43、検出コイル49および励磁コイル48の数は、以下の関係
集磁用突部43の数=検出コイル49の数
励磁コイル48の数=集磁用突部43の数−1=検出コイル49の数−1
になっている。
【0064】
図9(a)、(b)、(c)に示す形態のうち、図9(a)に示す磁気センサ素子40では、3つの集磁用突部43(集磁用突部431〜433)の各々に検出コイル49(検出コイル491〜493)が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた2箇所に励磁コイル48(励磁コイル481、482)が巻回されている。さらに、胴部42からは3つの集磁用突部43(集磁用突部431〜433)とは反対側に突部44(突部441〜443)が突出している。
【0065】
また、図9(b)に示す磁気センサ素子40では、4つの集磁用突部43(集磁用突部431〜434)の各々に検出コイル49(検出コイル491〜494)が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた3箇所に励磁コイル48(励磁コイル481〜483)が巻回されている。さらに、胴部42からは4つの集磁用突部43(集磁用突部431〜434)とは反対側に突部44(突部441〜444)が突出している。
【0066】
また、図9(c)に示す磁気センサ素子40では、5つの集磁用突部43(集磁用突部431〜434)の各々に検出コイル49(検出コイル491〜494)が巻回され、胴部42において幅方向W40で隣り合う集磁用突部43で挟まれた4箇所に励磁コイル48(励磁コイル481〜483)が巻回されている。さらに、胴部42からは5つの集磁用突部43(集磁用突部431〜435)とは反対側に突部44(突部441〜445)が突出している。
【0067】
このような構成の磁気センサ素子40においても、上記実施の形態と同様、幅方向W40で隣り合う検出コイル49は互いに逆向きに巻回され、複数の検出コイル49は直列に電気的に接続されている。また、磁気センサ素子40において、幅方向W40で隣り合う励磁コイル48は互いに逆向きに巻回され、複数の励磁コイル43は直列あるいは並列に電気的に接続されている。
【0068】
また、図2(a)、(b)を参照して説明したように、磁気センサ素子40は、媒体幅方向Yに複数配置されている。その際、複数の磁気センサ素子40の間では、検出コイル49の巻回方向が一致している。また、複数の磁気センサ素子40の各々の励磁コイル48に対して共通の励磁電流を供給する場合、図10(b)に示すように、集磁用突部43が4つの場合(励磁コイル48が奇数の場合)、隣り合う磁気センサ素子40の間において、励磁コイル48の巻回方向を一致させてある。これに対して、図10(a)、(c)に示すように、集磁用突部43が3つあるいは5つの場合(励磁コイル48が偶数の場合)、隣り合う磁気センサ素子40の間において、励磁コイル48の巻回方向を逆にしてある。このように構成すると、隣り合う磁気センサ素子40の間において互いに隣り合う集磁用突部43の磁極が逆になるので、隣り合う磁気センサ素子40の間に磁束を発生させることができる。
【0069】
このように構成した磁気センサ装置20でも、磁気センサ素子40は、図1に示す磁気パターン検出装置100において、厚さ方向T40が媒体1の移動方向Xに向くように配置されるため、集磁用突部43および検出コイル49は、媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Yで離間する位置に設けられている。このため、磁気センサ素子40では、センサコア41が存在する領域、およびセンサコア41が存在する領域から幅方向W40(媒体1の移動方向Xに対して直交する媒体幅方向Y)にわずかにずれた位置にかけて略同等の感度を有し、媒体1の移動方向Xと直交する媒体幅方向Yでの検出範囲が広い等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0070】
[さらに別の実施の形態]
図10は、本発明を適用したさらに別の実施の形態に係る磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図10(a)、(b)、(c)は、集磁用突部43の数が3つの場合の説明図、集磁用突部43の数が4つの場合の説明図、および集磁用突部43の数が5つの場合の説明図である。図10は、本発明を適用したさらに別の実施の形態に係る磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図10(a)、(b)、(c)は、集磁用突部43の数が3つの場合の説明図、集磁用突部43の数が4つの場合の説明図、および集磁用突部43の数が5つの場合の説明図である。
【0071】
図9に示す形態では、幅方向W40の両端部では、幅方向W40に比して磁束密度が低い。このような場合、検出コイル49の巻回数を、以下の関係
図9(a)に示す形態(検出コイル49の数=3)の場合
検出コイル491、493の巻回数>検出コイル492の巻回数
図9(b)に示す形態(検出コイル49の数=4)の場合
検出コイル491、494の巻回数>検出コイル492、493の巻回数
図9(c)に示す形態(検出コイル49の数=5)の場合
検出コイル491、495の巻回数>検出コイル492、493、494の巻回数
あるいは
検出コイル491、495の巻回数
>検出コイル492、494の巻回数
>検出コイル493の巻回数
に示すように、両端の検出コイル49の巻回数を他の検出コイル49の巻回数よりも多くすれば、幅方向W40における感度を均等化することができる。
【0072】
その際、図10(a)、(b)、(c)に示すように、集磁用突部43の太さを以下の関係
図10(a)に示す形態(検出コイル49の数=3)の場合
集磁用突部431、433の太さ<集磁用突部432の太さ
図10(b)に示す形態(検出コイル49の数=4)の場合
集磁用突部431、434の太さ<集磁用突部432、433の太さ
図10(c)に示す形態(検出コイル49の数=5)の場合
集磁用突部431、435の太さ<集磁用突部432、433、434の太さ
あるいは
集磁用突部431、435の太さ
<集磁用突部432、434の太さ
<集磁用突部433の太さ
に示すように、両端の集磁用突部43の太さを他の集磁用突部43の太さよりも大にすれば、両端の検出コイル49の巻回数を他の検出コイル49の巻回数よりも多く巻回するのに支障がない。
【0073】
(その他の実施の形態)
上記形態では、媒体1と磁気センサ装置20とを相対移動させるにあたって、媒体1の方を移動させたが、媒体1が固定で磁気センサ装置20が移動する構成を採用してもよい。また、上記形態では、磁界印加用磁石30に永久磁石を用いたが、電磁石を用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 媒体
11 媒体移動路
20 磁気センサ装置
30 磁界印加用磁石
40 磁気センサ素子
41 センサコア
42 センサコアの胴部
43 センサコアの集磁用突部
48 励磁コイル
49 検出コイル
100 磁気パターン検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する媒体の磁気特性を検出する磁気センサ素子を備えた磁気センサ装置であって、
前記磁気センサ素子は、該磁気センサ素子の幅方向に延在する胴部から前記媒体の媒体移動路の側に向けて突出して前記幅方向で互い離間する複数の集磁用突部を備えたセンサコアと、前記胴部に巻回された励磁コイルと、前記複数の集磁用突部の各々に巻回された検出コイルと、を備え、
前記磁気センサ素子は、前記幅方向および前記集磁用突部の突出方向の双方に対して直交する厚さ方向が前記媒体の移動方向に向くように配置されていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記センサコアの前記幅方向の寸法は、前記厚さ方向の寸法より大であることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記磁気センサ素子は、前記媒体の移動方向に対して交差する方向に複数配列されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記複数の集磁用突部の各々に巻回された前記検出コイルは、直列に電気的に接続されていることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記励磁コイルは、前記幅方向で隣り合う2つの前記集磁用突部で挟まれた部分に巻回されていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記集磁用突部は、3つ以上形成されており、
当該3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部に巻回された前記検出コイルは、他の集磁用突部に巻回された前記検出コイルに比して巻回数が多いことを特徴とする請求項5に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部は、他の集磁用突部に比して細いことを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記センサコアは、前記胴部から前記集磁用突部とは反対側に突出した突部を備えていることを特徴とする請求項2乃至7の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記センサコアは、アモルファス磁性材料層と、該アモルファス磁性材料層を両面側で挟む非磁性の基板と、を備えていることを特徴とする請求項2乃至8の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項1】
相対移動する媒体の磁気特性を検出する磁気センサ素子を備えた磁気センサ装置であって、
前記磁気センサ素子は、該磁気センサ素子の幅方向に延在する胴部から前記媒体の媒体移動路の側に向けて突出して前記幅方向で互い離間する複数の集磁用突部を備えたセンサコアと、前記胴部に巻回された励磁コイルと、前記複数の集磁用突部の各々に巻回された検出コイルと、を備え、
前記磁気センサ素子は、前記幅方向および前記集磁用突部の突出方向の双方に対して直交する厚さ方向が前記媒体の移動方向に向くように配置されていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記センサコアの前記幅方向の寸法は、前記厚さ方向の寸法より大であることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記磁気センサ素子は、前記媒体の移動方向に対して交差する方向に複数配列されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記複数の集磁用突部の各々に巻回された前記検出コイルは、直列に電気的に接続されていることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記励磁コイルは、前記幅方向で隣り合う2つの前記集磁用突部で挟まれた部分に巻回されていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記集磁用突部は、3つ以上形成されており、
当該3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部に巻回された前記検出コイルは、他の集磁用突部に巻回された前記検出コイルに比して巻回数が多いことを特徴とする請求項5に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記3つ以上の集磁用突部のうち、前記幅方向の両端部に位置する集磁用突部は、他の集磁用突部に比して細いことを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記センサコアは、前記胴部から前記集磁用突部とは反対側に突出した突部を備えていることを特徴とする請求項2乃至7の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記センサコアは、アモルファス磁性材料層と、該アモルファス磁性材料層を両面側で挟む非磁性の基板と、を備えていることを特徴とする請求項2乃至8の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−163832(P2011−163832A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24790(P2010−24790)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
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