説明

磁気デバイス

【課題】磁気インピーダンス特性に優れた高感度で高精度な磁気デバイスを提供する。
【解決手段】磁気デバイス10は、例えば基板11の一面に配された、第一感磁体12を有する磁場検出部13と、第二感磁体14とからなる。第一感磁体12は、長手方向Lに沿って延びる長さS1の帯状に形成された磁性体からなる。第二感磁体14は、長手方向Lに沿って延び、第一感磁体12に対して離間距離Tで離間して帯状に形成された磁性体からなる。この第二感磁体14は、第一感磁体12の長さS1よりも短い長さS2に形成され、第一感磁体12に対して離間しつつ、磁気的に繋がった状態にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサなどに適用可能な磁気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コスト低減やチップ部品の削減を目的に、磁気インピーダンス素子等の機能素子を、例えば半導体などの基板に集積化したものが提案されている。このような磁気インピーダンス素子(MI)を磁気センサとして利用するものとしては、アモルファスMIが知られている。このアモルファスMIは、アモルファスワイヤをコイルで取り囲んだ構造を成し、外部磁場によって生じるアモルファスワイヤの出力変動をコイルで検出するものである。しかし、このアモルファスMIは、アモルファスワイヤとコイルとの位置合わせが困難であることや、形状が複雑であるなどの理由によって、量産が困難である。
【0003】
こうしたアモルファスMIに代わって、薄膜MIが提案されている。この薄膜MIは、基板上に磁性体薄膜などからなる帯状の感磁体(導電体)をメアンダ(つづら折り)形状に形成したものである。そして、この感磁体に高周波電流を流すと、外部磁場に応じてその透磁率が変化し、この透磁率の変化による磁気インピーダンスの変動を検出することによって、外部磁場を検出する磁気センサとして機能する。こうした薄膜MIは、基板上に導電体をめっき、スパッタなどによって形成すれば良く、小型、軽量で生産性にも優れている。
【0004】
しかし、このような薄膜MIにおいても、帯状の感磁体に外部磁場がかかると、感磁体の長手方向における端部に反磁界が生じ、感磁体の端部の磁区が乱されるために、磁気インピーダンス特性が低下するという課題があった。このため、例えば特許文献1においては、感磁体に電流を流すための電極を、感磁体の両端部を外して配置した磁界検出素子が記載されている。こうした特許文献1に記載の磁界検出素子では、強い反磁界が生じる感磁体の両端部を避けて電極を形成することによって、磁気インピーダンス特性の低下を防止できるとされている。
【特許文献1】特開2004−39837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような磁界検出素子では、感磁体の両端部を避けて電極を形成することによって、感磁体の電極より端部側の領域では電気的な反射が生じたり、隣り合う感磁体のこうした領域どうしの間で浮遊キャパシタンス成分が生じたりして、かえって磁気インピーダンス特性の低下を招くという課題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、磁気インピーダンス特性に優れた高感度で高精度な磁気デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の磁気デバイスは、帯状に形成された少なくとも1つ以上の第一感磁体を有する磁場検出部と、前記第一感磁体の長手方向の一端または両端に、前記第一感磁体に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体を備え、前記第二感磁体は前記長手方向に沿って延び、前記第一感磁体の長手方向の長さよりも短いことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の磁気デバイスは、請求項1において、前記磁場検出部は、前記第一感磁体が複数並列して配され、長手方向の端部どうしが電気的に接続されたメアンダ形状を成すことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の磁気デバイスは、請求項2において、互いに隣り合う前記第二感磁体は、少なくとも2つ以上連なって形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の磁気デバイスは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記磁場検出部の端部近傍には電気的に接続された電極を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気デバイスによれば、第一感磁体に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体を、第一感磁体の端部に形成することによって、高周波電流の反射や浮遊キャパシタンスを発生させることなく、磁気デバイスの特性が劣化する要因となる反磁界が強く発生する部位を第一感磁体から切り離してしまうことができる。よって、磁気インピーダンス特性に優れた高感度で高精度な磁気デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る磁気デバイスの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
図1は、本発明の磁気デバイスの一例を示す斜視図である。また、図2は図に示す磁気デバイスの平面図である。本発明の磁気デバイス(磁気センサ)10は、例えば基板11の一面11aに配された、第一感磁体12を有する磁場検出部13と、第二感磁体14とからなる。
【0011】
第一感磁体12は、長手方向Lに沿って延びる長さS1の帯状に形成された磁性体からなる。第二感磁体14は、長手方向Lに沿って延び、第一感磁体12に対して離間距離Tで離間して帯状に形成された磁性体からなる。この第二感磁体14は、第一感磁体12の長さS1よりも短い長さS2に形成され、第一感磁体12に対して離間しつつ、磁気的に繋がった状態にされる。
【0012】
この磁気的に繋がった状態とは、即ち、第一感磁体12の磁場と第二感磁体14の磁場とが、離間距離Tを越えて一体の磁場として作用する状態である。そして離間距離Tは、こうした第一感磁体12と第二感磁体14とが磁気的に繋がった状態を維持できる範囲に設定される。
【0013】
このような構成の磁気デバイス10によれば、長手方向Lに沿った感磁方向の磁場を検出する磁気センサとして、磁気インピーダンス特性の向上を図ることができる。即ち、本発明の磁気デバイス10のように、第一感磁体12に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体14を、第一感磁体12の端部に形成することによって、高周波電流の反射や浮遊キャパシタンスを発生させることなく、磁気デバイスの特性が劣化する要因となる反磁界が強く発生する部位を第一感磁体12から切り離してしまうことができる。よって、電気的な反射や浮遊キャパシタンス成分など、磁場の高精度な検出を阻害する要因が、磁場検出部13を構成する第一感磁体12に生じることを防止でき、磁気インピーダンス特性に優れた高感度で高精度な磁気デバイス10を実現できる。
【0014】
基板11は、例えば半導体基板の一面に絶縁膜を形成したものや、樹脂などの絶縁性基板が用いられればよい。第一感磁体12は、例えば、CoNbZr,CoTi,CoZrなどのアモルファス薄膜からなる磁性体が好ましく用いられる。同様に、第二感磁体14も、例えば、CoNbZr,CoTi,CoZrなどのアモルファス薄膜からなる磁性体が好ましく用いられる。なお、第一感磁体12と第二感磁体14とは、必ずしも同じ部材で構成される必要は無く、互いに別な部材(磁性体)で構成されていても良い。
【0015】
第一感磁体12の長手方向に沿った長さS1と、第二感磁体14の長手方向に沿った長さS2との長さの比は、例えば、1:1〜6:1程度に形成されるのが好ましい。また、第一感磁体12と第二感磁体14との離間距離Tは、第一感磁体12の幅の例えば1〜50%程度になるように形成されればよい。
【0016】
なお、こうした第二感磁体14は、第一感磁体12の少なくとも一端に形成されていれば良く、好ましくは両端に形成されているのがよい。また、長手方向Lに直交する第二感磁体14の幅は、第一感磁体12の幅と必ずしも同じである必要は無く、第一感磁体12よりも幅広に形成されていても、あるいは幅狭に形成されていても良い。
【0017】
図3(a)は、本発明の磁気デバイスの他の一例を示す平面図である。この磁気デバイス20では、磁場検出部23は、帯状の第一感磁体22を複数(3つ)並列して配し、かつ、この第一感磁体22の長手方向Lの端部どうしを電気的に接続したメアンダ(つづら折り)形状を成している。これら第一感磁体22の両端部には、それぞれの第一感磁体22に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体24が、互いに並列して配されている。
【0018】
このように、磁場検出部23として、複数の第一感磁体22をメアンダ形状に接続したものを用いることによって、長手方向Lに沿った感磁方向の磁場を小さな面積でより高感度に検出することができる。そして、それぞれの第一感磁体22の端部に、第一感磁体22に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体24を形成することによって、電気的な反射や、浮遊キャパシタンス成分など、磁場の高精度な検出を阻害する悪要因が、磁場検出部23を構成する第一感磁体22に生じることを防止できる。
【0019】
以下、磁気デバイスの好ましい実施形態を列記する。図3(b)に示す磁気デバイス30では、磁場検出部33は、並列して配された複数(3つ)の第一感磁体32の端部どうしを電気的に接続したメアンダ形状を成している。そして、これら第一感磁体32の両端部には、それぞれの第一感磁体32に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体34が配されている。こうした第二感磁体34は、隣接する第二感磁体どうしが繋がった形状を成し、複数の第一感磁体32の端部を横断する大きさの幅をもつ。
【0020】
図3(c)に示す磁気デバイス40では、メアンダ形状を成す磁場検出部43を構成する第一感磁体42の一方の端部には、それぞれの第一感磁体42の幅と同じ幅で形成された第二感磁体44aが離間して形成される。また、第一感磁体42の他方の端部には、複数の第一感磁体42の間を横断する大きさの幅をもつ第二感磁体44bが離間して形成される。
【0021】
図3(d)に示す磁気デバイス50では、メアンダ形状を成す磁場検出部53を構成する第一感磁体52の両端部には、1つの第一感磁体52の幅と同じ幅で形成された第二感磁体54aと、2つの第一感磁体52の間を横断する大きさの幅をもつ第二感磁体54bとがそれぞれ離間して形成される。
【0022】
図4(a)に示す磁気デバイス60では、磁場検出部63は、並列して配された複数(5つ)の第一感磁体62の端部どうしを電気的に接続したメアンダ形状を成している。そして、これら第一感磁体62の両端部には、それぞれの第一感磁体62に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体64が配されている。
【0023】
図4(b)に示す磁気デバイス70では、メアンダ形状を成す磁場検出部73を構成する第一感磁体72の両端部には、複数の第一感磁体72の間を横断する大きさの幅をもつ第二感磁体74がそれぞれ離間して形成される。
【0024】
図4(c)に示す磁気デバイス80では、メアンダ形状を成す磁場検出部83を構成する第一感磁体82の両端部には、1つの第一感磁体82の幅と同じ幅で形成された第二感磁体84aと、2つの第一感磁体82の間を横断する大きさの幅をもつ第二感磁体84bとがそれぞれ離間して形成される。
【0025】
本発明の磁気デバイスでは、磁場検出部の端部近傍に電気的に接続された電極を備えることも好ましい。図5は、本発明の他の実施形態を示す平面図である。この実施形態の磁気デバイス90は、基板91に形成され、長手方向Lに沿って延びる、磁場検出部93を成す第一感磁体92と、この第一感磁体92に対して離間しつつ磁気的に繋がった第二感磁体94とを備える。
【0026】
そして、磁場検出部93の両端部には、それぞれ電極95が電気的に接続される。こうした電極95から第一感磁体92に高周波電流を流し、磁場検出部93に印加される磁場によって生じるインピーダンスの変化を測定することによって、長手方向Lに沿った感磁方向における外部磁場の強度を検出することができる。
【0027】
このような構成の磁気デバイス90においても、電気的な反射や、浮遊キャパシタンス成分など、磁場の高精度な検出を阻害する悪要因が、磁場検出部93を構成する第一感磁体92に生じることを防止することで、磁気インピーダンス特性に優れた高感度で高精度な磁気デバイス90を得ることができる。
【0028】
このような磁場検出部の端部近傍に電気的に接続された電極を備える磁気デバイスにおいても、磁場検出部をメアンダ形状にするなど、磁場検出精度を高める構造にするのが好ましい。例えば、図6(a)に示す磁気デバイス101では、磁場検出部103は、並列して配された複数(3つ)の第一感磁体102の端部どうしを電気的に接続したメアンダ形状を成している。また、これら第一感磁体102の両端部には、それぞれの第一感磁体102に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体104が配されている。そして、磁場検出部101の両端部には、それぞれ電極105が電気的に接続される。
【0029】
また、例えば、図6(b)に示す磁気デバイス111では、磁場検出部113は、並列して配された複数(5つ)の第一感磁体112の端部どうしを電気的に接続したメアンダ形状を成している。また、これら第一感磁体112の両端部には、複数の第一感磁体112の間を横断する大きさの幅をもつ第二感磁体114がそれぞれ離間して形成される。そして、磁場検出部111の両端部には、それぞれ電極115が電気的に接続される。
【0030】
本発明の磁気デバイスの製造方法としては、例えば、基板の一面に磁性膜を形成し、この磁性膜をエッチングによって、第一感磁体や第二感磁体を象った形状に形成すればよい。また、基板の一面に第一感磁体や第二感磁体の外形を象った形状のレジスト層を形成し、このレジスト層をマスクとして磁性膜を積層する方法も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の磁気デバイスの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の磁気デバイスの一例を示す平面図である。
【図3】本発明の磁気デバイスの他の一例を示す平面図である。
【図4】本発明の磁気デバイスの他の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の磁気デバイスの他の一例を示す平面図である。
【図6】本発明の磁気デバイスの他の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 磁気デバイス、11 基板、12 第一感磁体、13 磁場検出部、14 第二感磁体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成された少なくとも1つ以上の第一感磁体を有する磁場検出部と、
前記第一感磁体の長手方向の一端または両端に、前記第一感磁体に対して離間させつつ磁気的に繋がった第二感磁体を備え、
前記第二感磁体は前記長手方向に沿って延び、前記第一感磁体の長手方向の長さよりも短いことを特徴とする磁気デバイス。
【請求項2】
前記磁場検出部は、前記第一感磁体が複数並列して配され、長手方向の端部どうしが電気的に接続されたメアンダ形状を成すことを特徴とする請求項1記載の磁気デバイス。
【請求項3】
互いに隣り合う前記第二感磁体は、少なくとも2つ以上連なって形成されていることを特徴とする請求項2記載の磁気デバイス。
【請求項4】
前記磁場検出部の端部近傍には電気的に接続された電極を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−60454(P2008−60454A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237529(P2006−237529)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】