説明

磁気ランダムアクセスメモリ

【課題】書き込み電流の低減と微細化に適したMTJ素子の形状を提案する。
【解決手段】本発明の例に関わるMTJ素子は、磁化方向が固定される第1強磁性層と磁化方向が磁場に応じて変化する第2強磁性層とを備える。第2強磁性層は、長軸方向を持つ本体部11aと、本体部11aから長軸とは異なる方向に突出する1つの突出部11bとから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM: magnetic random access memory)の記憶素子として使用される磁気抵抗効果素子(magnetoresistive element)の形状に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ランダムアクセスメモリは、磁気抵抗効果を利用するメモリデバイスであり、不揮発でありながら、高速性、高集積性、高信頼性という特徴を併せ持つため、DRAMやEEPROMなどのあらゆるメモリデバイスに取って代わるものとして注目されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
磁気ランダムアクセスメモリの記憶素子としては、例えば、トンネル磁気抵抗効果(TMR: tunnel magnetoresistive effect)を用いるMTJ(magnetic tunnel junction)素子が知られている。
【0004】
MTJ素子は、例えば、2つの強磁性層と、これらの間に配置される絶縁層(トンネルバリア)とから構成される。2つの強磁性層のうちの一つは、磁化方向が固定されるピン層(pinned layer)であり、他の一つは、磁化方向が磁場に応じて変化するフリー層(free layer)である。
【0005】
ピン層とフリー層の磁化方向が同じになったとき、MTJ素子の磁気抵抗値は最も低くなる。この状態を平行(parallel)とし、例えば、“0”に対応させる。また、ピン層とフリー層の磁化方向が逆になったとき、MTJ素子の磁気抵抗値は最も高くなる。この状態を反平行(anti-parallel)とし、例えば、“1”に対応させる。
【0006】
このようなMTJ素子の磁化状態は、例えば、磁場をMTJ素子のフリー層に与え、フリー層の磁化方向を反転させることにより決定する。この場合、磁場は、書き込み線に書き込み電流を流すことにより発生させる。
【0007】
しかし、現状では、フリー層の磁化方向を反転させるために必要な磁場が大きく、その磁場を発生させるための書き込み電流の値は、数mA〜数10mA程度となる。この値は、磁気ランダムアクセスメモリの実用化に当たっては、大き過ぎる値であり、このため、書き込み電流の低電流化が重要課題となっている。
【0008】
熱安定性やディスターブ耐性を劣化させずに書き込み電流の低電流化を実現するには、MTJ素子のアステロイド曲線(asteroid curve)を凹ませればよい。そのための技術として、MTJ素子の形状によりその磁化パターンを制御する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この技術によれば、アステロイド曲線を凹ますことができるMTJ素子の形状(例えば、十字形など)が提案されるが、その形状が複雑であるために微細化が困難であり、高集積化に向かないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−128067号公報
【非特許文献1】IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol.38, No.5, May 2003, pp.769-773
【非特許文献2】2004 Symposium on VLSI Circuits予稿集pp.217-220
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アステロイド曲線を凹ませることができ、かつ、微細化にも向いている磁気抵抗効果素子の形状を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、磁化方向が固定される第1強磁性層と磁化方向が印加される磁場に応じて変化する第2強磁性層とを備え、前記第2強磁性層は、長軸方向を持つ本体部と、前記本体部から前記長軸方向とは異なる方向に突出する1つの突出部とから構成される。
【0012】
本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリは、磁化方向が固定される第1強磁性層と磁化方向が印加される磁場に応じて変化する第2強磁性層とからなるアレイ状に配置される複数の磁気抵抗効果素子と、前記複数の磁気抵抗効果素子に対するデータ書き込みに用いる複数の書き込み線とを備え、前記第2強磁性層は、長軸方向を持つ本体部と、前記本体部から前記長軸方向とは異なる方向に突出する1つの突出部とから構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の例によれば、アステロイド曲線を凹ませることができ、かつ、微細化にも向いている磁気抵抗効果素子の形状を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0015】
1. 概要
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子の形状の特徴は、磁場に応じて磁化方向が変化するフリー層が、長軸方向を持つ本体部と、本体部から長軸方向とは異なる方向に突出する1つの突出部とから構成される点にある。
【0016】
ここで、長軸とは、本体部の中心を通る中心線で長いものをいい、長軸方向とは、長軸に平行方向である。また、短軸方向とは、長軸方向に直交するものをいう。
【0017】
フリー層の形状により磁気異方性の方向を決定する場合(このような磁気異方性を形状磁気異方性と称する)には、フリー層の本体部の磁気異方性の方向は、長軸方向に一致する。
【0018】
本体部は、例えば、長辺が長軸方向に平行である長方形とすることにより、長軸方向に磁気異方性(形状磁気異方性)を持たせることができる。この場合、本体部の残留磁化の向きを決定する磁化容易軸方向は、長軸方向となり、磁化困難軸方向は、短軸方向となる。
【0019】
また、突出部は、例えば、長辺が長軸方向とは異なる方向に平行である長方形とすることにより、長軸方向とは異なる方向に磁気異方性(形状磁気異方性)を持たせることができる。この場合、突出部の残留磁化の向きを決定する磁化容易軸方向は、長軸方向とは異なる方向となる。
【0020】
尚、磁気異方性とは、磁化の向き易い方向を示す概念のことであり、材料の種類や組成、結晶軸の方向(作り方)、形状などにより制御することができる。
【0021】
本発明の例では、本体部から突出する突出部は1つのみである。突出部は、本体部の磁化反転をアシストする役割を果たす。そのために、例えば、本体部とピン層との磁気異方性を同じ方向に設定し、突出部の磁気異方性をピン層のそれとは異なる方向に設定する。また、突出部のサイズは、本体部のサイズよりも小さくする。
【0022】
この場合、突出部の磁化反転に必要なエネルギーは、本体部の磁化反転に必要なエネルギーよりも小さくなる。
【0023】
従って、データ書き込み時に、磁気抵抗効果素子に磁場を与えると、まず、突出部の磁化反転が進行し、これが牽引役となり、本体部の磁化反転も、突出部の磁化反転に追従して進行する。
【0024】
このように、突出部が本体部の磁化反転をアシストするため、結果的に、磁気抵抗効果素子のアステロイド曲線を凹ませることができる。
【0025】
その結果、熱安定性やディスターブ耐性を劣化させることなく、本体部の磁化反転に必要なスイッチング磁場のみを小さくできる。つまり、磁化反転に必要とされる書き込み電流の値を低減できる。
【0026】
ところで、本発明の例では、フリー層は、本体部と1つの突出部とから構成される。突出部は、例えば、図1に示すように、フリー層の形状が長軸に対して非対称となるように、本体部に結合される。このような形状としては、例えば、L字形、T字形などが考えられる。
【0027】
このような単純な形状とすることにより、例えば、十字形のような複雑な形状に比べて磁気抵抗効果素子の微細化を図ることができ、高集積化によるメモリ容量の増大を達成できる。
【0028】
尚、本発明の例の形状によれば、MR比は、本体部の残留磁化の向きに大きく依存し、突出部の残留磁化の向きには大きく依存しない。
【0029】
2. 実施の形態
次に、最良と思われるいくつかの実施の形態について説明する。
【0030】
(1) 第1実施の形態
図2は、第1実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示している。
【0031】
フリー層は、本体部(main body)11aと突出部(jut)11bから構成される。
【0032】
本体部11aは、X方向(長軸方向)に磁気異方性を有する。ここでは、本体部11aは、長辺がX、短辺がY(>X)の長方形を有しており、形状により磁気異方性が設定される。本体部11aの磁気異方性の方向は、ピン層の磁化方向と同じである。但し、本体部11aの磁化方向は、磁場により変化させることができ、その残留磁化の磁化方向は、ピン層の磁化方向と同じ(平行)、又は、逆(反平行)となる。
【0033】
突出部11bは、X方向とは異なる方向、本例では、X方向に直交するY方向(短軸方向)に磁気異方性を有する。ここでは、突出部11bは、長辺がYY、短辺がXX(>YY)の長方形を有しており、形状により磁気異方性が設定される。突出部11bの磁気異方性の方向は、ピン層の磁化方向と異なる。このため、突出部11bの磁化反転に必要なエネルギーは、本体部11aの磁化反転に必要なエネルギーよりも小さい。
【0034】
突出部11bは、本体部11aに物理的に結合される。本例では、突出部11bは、本体部(長方形)11aの長辺から突出した形となる。
【0035】
フリー層は、全体としては、L字形を有する。
但し、突出部11bのサイズは、本体部11aのサイズよりも小さく、フリー層全体の形状としては、長軸に対して非対称となる。
【0036】
具体的には、突出部(長方形)11bの長辺(長さの最大値)YYは、本体部(長方形)11aの長辺(長さの最大値)Xよりも小さく、突出部11bの短辺(幅の最大値)XXは、本体部11aの短辺(幅の最大値)Yよりも小さい。
【0037】
このような磁気抵抗効果素子に磁化反転のための磁場を与えると、まず、突出部11bの磁化反転が進行し、これに追従して、本体部11aの磁化反転も進行する。
【0038】
例えば、図3の状態1に示すように、データ“1”を記憶しているときの本体部の磁化方向(残留磁化の向き)を右向きとする。この時、突出部の磁化方向は、上向きとなる。フリー層全体としての磁化方向は、フリー層の形状(L字形)に沿った形なる。
【0039】
この状態から磁化反転を行い、磁気抵抗効果素子にデータ“0”を書き込もうとする場合、図3の状態3に示すように、例えば、磁気抵抗効果素子に合成磁場Hwl+Hblを与える。
【0040】
ここで、Hwlは、ワード線WLに流れる書き込み電流により発生する磁場であり、Hblは、ワード線WLに交差するビット線BLに流れる書き込み電流により発生する磁場である。
【0041】
この場合、まず、突出部の磁化反転が進行し、これが牽引役となり、本体部の磁化反転も、突出部の磁化反転に追従して進行する。このように、突出部の磁化状態が本体部の磁化反転をアシストするために、フリー層全体の磁化反転が起こり易くなり、その結果、アステロイド曲線が凹む(状態3)。
【0042】
また、図3の状態3に示すように、データ“0”を記憶しているときの本体部の磁化方向(残留磁化の向き)は、左向きとなり、突出部の磁化方向は、下向きとなる。フリー層全体としての磁化方向は、フリー層の形状(L字形)に沿った形なる。
【0043】
この状態から磁化反転を行い、磁気抵抗効果素子にデータ“1”を書き込もうとする場合、図3の状態1に示すように、例えば、磁気抵抗効果素子に合成磁場Hwl+Hblを与える。
【0044】
この場合、まず、突出部の磁化反転が進行し、これが牽引役となり、本体部の磁化反転も、突出部の磁化反転に追従して進行する。このように、突出部の磁化状態が本体部の磁化反転をアシストするために、フリー層全体の磁化反転が起こり易くなり、その結果、アステロイド曲線が凹む(状態1)。
【0045】
尚、図3の状態2,4では、本体部と突出部との間に磁壁が発生しており、フリー層全体としての磁化方向がフリー層の形状に沿った形となっていない。
【0046】
この場合、突出部の磁化状態が本体部の磁化反転を妨げ、フリー層全体としての磁化反転が起こり難い状態になり、アステロイド曲線が凹まない。
【0047】
従って、本発明の例では、図3の状態1,3を使用するように、磁気抵抗効果素子の磁化状態を制御する。
【0048】
以上、第1実施の形態では、長軸に対して非対称のL字形磁気抵抗効果素子について説明したが、このような形状によれば、アステロイド曲線を凹ませ、書き込み電流の低減を図ることができると共に、微細化による磁気抵抗効果素子の高集積化にも貢献できる。
【0049】
(2) 第2実施の形態
図4は、第2実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示している。
【0050】
この磁気抵抗効果素子は、第1の実施の形態の磁気抵抗効果素子の特徴を全て備えている。第2実施の形態の磁気抵抗効果素子が第1実施の形態の磁気抵抗効果素子と異なる点は、本体部11aと突出部11bの角部及び両者の結合部が丸みを帯びている点にある。
【0051】
通常、磁気抵抗効果素子は、フォトリソグラフィ技術により形成されたマスク材をマスクにして、エッチングにより形成される。しかし、磁気抵抗効果素子が微細化されてくると、このような角部や結合部の輪郭がぼやけ、丸みを帯びてくることが多い。つまり、設計上は、本体部11a及び突出部11bを四角形にしても、実際に形成される磁気抵抗効果素子については、本体部11aと突出部11bの角部及び両者の結合部は、丸みを帯びることになる。
【0052】
このような丸みは、エッジドメインによるMR比の低下を防止するのに有効である。従って、フォトリソグラフィの解像度に関係なく、積極的に、本体部11aと突出部11bの角部及び両者の結合部に丸みを付け、エッジドメインによるMR比の低下を防止するようにしてもよい。
【0053】
ここで、エッジドメインとは、エッジ部において磁化がエッジに沿った方向を向く現象のことである。エッジドメインは、MR比を低下させる原因になることが知られており、エッジドメインによるMR比の低下の割合は、磁気抵抗効果素子の微細化が進むほど大きくなる。
【0054】
従って、第2実施の形態のように、本体部11aと突出部11bの角部及び両者の結合部に丸みを付けて、エッジドメインによるMR比の低下を防ぐことは、磁気抵抗効果素子の高集積化を図る上で非常に有効である。
【0055】
(3) 第3実施の形態
図5乃至図8は、第3実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示している。
【0056】
この磁気抵抗効果素子は、フリー層全体としての形状を除き、第1の実施の形態の磁気抵抗効果素子の特徴を全て備えている。第3実施の形態の磁気抵抗効果素子が第1実施の形態の磁気抵抗効果素子と異なる点は、突出部11bの磁気異方性の方向が本体部11aの磁気異方性の方向に対して0°<θ<180°の範囲内で自由に設定できる、という点にある。
【0057】
即ち、突出部11bの磁気異方性は、本体部11aの磁気異方性の方向(X方向)に直交するY方向以外の方向に存在していてもよい。
【0058】
例えば、図5の例では、突出部11bの磁気異方性は、本体部11aの磁気異方性の方向に対して90°未満の角度の方向に存在する。また、図6の例では、突出部11bの磁気異方性は、本体部11aの磁気異方性の方向に対して90°を超える角度の方向に存在する。
【0059】
このような形状とすることにより、第1実施の形態により得られる効果に加えて、さらに、MR比を大きくし、読み出し信号量を増加させることができる、という効果が得られる。
【0060】
尚、本体部11aの磁気異方性の方向と突出部11bの磁気異方性の方向との角度θは、作り易さなどを考慮すると、30°以上150°以下の範囲内にあることが望ましい。
【0061】
また、図7及び図8に示すように、本体部11aと突出部11bの角部及び両者の結合部に丸みを付加してもよい。
【0062】
(4) 第4実施の形態
図9及び図10は、第4実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示している。
【0063】
この磁気抵抗効果素子は、本体部11aの形状を除き、第1の実施の形態の磁気抵抗効果素子の特徴を全て備えている。第4実施の形態の磁気抵抗効果素子が第1実施の形態の磁気抵抗効果素子と異なる点は、本体部(長方形)11aの先端部がテーパ状となるように切り落とされた点にある。
【0064】
本体部11aのテーパは、突出部11bが結合される辺側に鋭角が形成されるように付加される。
【0065】
このような形状とすることにより、第1実施の形態により得られる効果に加えて、さらに、エッジドメインを低減することができる、という効果を得ることができ、MR比の向上に寄与できる。
【0066】
尚、図10に示すように、本体部11aと突出部11bの角部及び両者の結合部に丸みを付加してもよい。
【0067】
(5) 第5実施の形態
図11乃至図14は、第5実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示している。
【0068】
この磁気抵抗効果素子は、フリー層全体としての形状を除き、第1の実施の形態の磁気抵抗効果素子の特徴を全て備えている。第5実施の形態の磁気抵抗効果素子が第1実施の形態の磁気抵抗効果素子と異なる点は、本体部11aと突出部11bとの結合部が、本体部11aの長辺の端部ではなく、その端部よりも内側にある、という点にある。
【0069】
即ち、第5実施の形態では、フリー層全体としての形状は、L字形というよりは、T字形に近くなっている。
【0070】
例えば、図11の例では、突出部11bは、本体部11aの長辺の端部よりも少し内側に入った位置で、本体部11aに物理的に結合される。また、図13の例では、突出部11bは、本体部11aの長辺の中央又はほぼ中央で、本体部11aに物理的に結合される。
【0071】
このような形状においても、第1実施の形態により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0072】
尚、図12及び図14に示すように、本体部11aと突出部11bの角部及び両者の結合部に丸みを付加してもよい。
【0073】
(6) 第6実施の形態
第6実施の形態は、フリー層の形状とピン層の形状との関係に関する。
【0074】
図15乃至図18は、第6実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子の形状を示している。
【0075】
フリー層(Free-Layer)の形状としては、上述の第1乃至第5実施の形態の例のいずれも採用できるが、ここでは、第1実施の形態のL字形を例に説明する。
【0076】
ピン層(Pinned-Layer)は、四角形を有し、半導体基板上から平面的に見た場合に、フリー層を完全に覆っている。
【0077】
ピン層の磁気異方性の方向は、フリー層の本体部の磁気異方性の方向と同じであり、X方向である。ピン層は、正方形に近い長方形を有しているため、形状磁気異方性が小さい。そこで、ピン層については、例えば、ピン層を構成する材料の結晶軸により磁気異方性を持たせる結晶軸磁気異方性が形状磁気異方性よりも大きくなるように構成する。
【0078】
図15及び図16は、フリー層の形状とピン層の形状とが異なる例である。
【0079】
下部電極(Bottom-Electrode)、ピン層(Pin-Layer, Pinned-Layer)及びトンネルバリア(Insulator)は、同一形状(四角形)を有している。
【0080】
ピン層は、反強磁性層(Pin-Layer)と強磁性層(Pinned-Layer)とから構成される。ピン層を構成する強磁性層は、反強磁性層との交換結合力により、その磁化方向が固定される。
【0081】
フリー層(Free-Layer)及び上部電極(Top-Electrode)は、同一形状(L字形)を有し、下部電極、ピン層及びトンネルバリアとは、異なる形状となる。
【0082】
下部電極、ピン層及びトンネルバリアは、第1マスクを用いて、エッチングにより一度に加工され、フリー層及び上部電極は、第1マスクとは異なる第2マスクを用いて、エッチングにより一度に加工される。
【0083】
尚、破線の矢印は、ピン層の磁化方向を示し、実線の矢印は、フリー層の磁化方向を示している。
【0084】
図17及び図18は、フリー層の形状とピン層の形状とが同じ例である。
【0085】
下部電極(Bottom-Electrode)は、四角形を有している。
【0086】
ピン層(Pin-Layer, Pinned-Layer)、トンネルバリア(Insulator)、フリー層(Free-Layer)及び上部電極(Top-Electrode)は、同一形状(L字形)を有し、下部電極とは、異なる形状となる。
【0087】
ピン層は、反強磁性層(Pin-Layer)と強磁性層(Pinned-Layer)とから構成される。ピン層を構成する強磁性層は、反強磁性層との交換結合力により、その磁化方向が固定される。
【0088】
ピン層、トンネルバリア、フリー層及び上部電極は、第1マスクを用いて、エッチングにより一度に加工される。下部電極は、第1マスクとは異なる第2マスクを用いて、エッチングにより加工される。
【0089】
尚、破線の矢印は、ピン層の磁化方向を示し、実線の矢印は、フリー層の磁化方向を示している。
【0090】
(7) 第7実施の形態
第7実施の形態は、フリー層の構造に関する。
【0091】
図19及び図20は、第7実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子のフリー層の構造を示している。
【0092】
フリー層(Free-Layer)は、1つの強磁性層から構成することもできるが、例えば、図19に示すように、強磁性結合又は反強磁性結合する2つの強磁性層12a,12bから構成してもよい。このような構造にすると、アステロイド曲線が磁化困難軸方向に大きく伸びるため、熱安定性やディスターブ耐性を向上できる。
【0093】
また、フリー層は、例えば、図20に示すように、強磁性結合又は反強磁性結合する2つの強磁性層12a,12bとこれらの間に配置される絶縁層(非磁性層)13とから構成することもできる。このような構造にしても、アステロイド曲線を磁化困難軸方向に大きく伸ばすことができ、熱安定性やディスターブ耐性を向上できる。
【0094】
(8) 第8実施の形態
図21は、第8実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子の形状を示している。
【0095】
下部電極(Bottom-Electrode)、ピン層(Pin-Layer, Pinned-Layer)及びトンネルバリア(Insulator)は、四角形を有する。ピン層は、X方向に磁気異方性を有し、その磁化方向は、破線の矢印で示すように、右向きに固定されている。
【0096】
フリー層(Free-Layer)及び上部電極(Top-Electrode)は、L字形を有する。フリー層は、本体部11aと突出部11bから構成される。
【0097】
本体部11aの磁気異方性の方向は、ピン層の磁気異方性の方向(X方向)とは異なる。本体部11aは、例えば、長方形を有し、形状により磁気異方性が設定される。本体部11aの磁化方向は、磁場により変化させることができ、その残留磁化の磁化方向は、実線の矢印で示すように、ピン層の磁化方向に近い方向(平行)、又は、ピン層の磁化方向に対して逆方向に近い方向(反平行)となる。
【0098】
突出部11bは、本体部11aの磁化方向とは異なる方向、本例では、本体部11aの磁化方向に直交する方向に磁気異方性を有する。突出部11bの磁気異方性の方向も、ピン層の磁気異方性の方向(X方向)とは異なる。突出部11bは、例えば、長方形を有し、形状により磁気異方性が設定される。突出部11bの磁化反転に必要なエネルギーは、本体部11aの磁化反転に必要なエネルギーよりも小さい。
【0099】
突出部11bは、本体部11aに物理的に結合される。本例では、突出部11bは、本体部(長方形)11aの長辺から突出した形となる。
【0100】
フリー層は、全体としては、L字形を有する。
但し、突出部11bのサイズは、本体部11aのサイズよりも小さく、フリー層全体の形状としては、長軸に対して非対称となる。
【0101】
このような形状においても、アステロイド曲線を凹ませ、書き込み電流の低減を図ることができると共に、微細化による磁気抵抗効果素子の高集積化にも貢献できる。
【0102】
(9) 第9実施の形態
図22は、第9実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子の形状を示している。
【0103】
下部電極(Bottom-Electrode)は、四角形を有する。
【0104】
ピン層(Pin-Layer, Pinned-Layer)、トンネルバリア(Insulator)、フリー層(Free-Layer)及び上部電極(Top-Electrode)は、L字形を有する。フリー層及びピン層は、本体部11aと突出部11bから構成される。
【0105】
本体部11aは、例えば、長方形を有し、形状により磁気異方性が設定される。ピン層の本体部11a及び突出部11bの磁化方向は、破線の矢印で示すように、固定される。フリー層の本体部11aの磁化方向は、磁場により変化させることができ、その残留磁化の磁化方向は、実線の矢印で示すように、ピン層の磁化方向と同じ(平行)、又は、ピン層の磁化方向と逆(反平行)に設定される。
【0106】
フリー層の突出部11bは、フリー層の本体部11aの磁化方向とは異なる方向、本例では、フリー層の本体部11aの磁化方向に直交する方向に磁気異方性を有する。フリー層の突出部11bは、例えば、長方形を有し、形状により磁気異方性が設定される。
【0107】
フリー層の突出部11bの磁化反転に必要なエネルギーは、フリー層の本体部11aの磁化反転に必要なエネルギーよりも小さい。
【0108】
突出部11bは、本体部11aに物理的に結合される。本例では、突出部11bは、本体部(長方形)11aの長辺から突出した形となる。
【0109】
フリー層及びピン層は、全体としては、L字形を有する。
但し、突出部11bのサイズは、本体部11aのサイズよりも小さく、フリー層全体の形状としては、長軸に対して非対称となる。
【0110】
このような形状においても、アステロイド曲線を凹ませ、書き込み電流の低減を図ることができると共に、微細化による磁気抵抗効果素子の高集積化にも貢献できる。
【0111】
(10) 第10実施の形態
第10実施の形態は、上述の第1乃至第9実施の形態に関わる磁気抵抗効果素子を用いた磁気ランダムアクセスメモリに関する。
【0112】
図23は、第10実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルアレイの概要を示している。
【0113】
本例の磁気ランダムアクセスメモリは、1つの磁気抵抗効果素子(MTJ素子)に対して、交差する2つの書き込み線を用いてデータ書き込みを実行するいわゆる二軸書き込み方式を採用する。
【0114】
メモリセルアレイ(Memory Cell Array)は、アレイ状に配置される複数の磁気抵抗効果素子MTJから構成される。メモリセルアレイ内には、X方向に延びる複数のワード線WLとY方向に延びる複数のビット線BLが配置される。
【0115】
複数のワード線WLの両端には、例えば、複数のワード線ドライバ/シンカー(WL Driver/Sinker)が接続され、複数のビット線BLの両端には、複数のビット線ドライバ/シンカー(BL Driver/Sinker)が接続される。
【0116】
メモリセル構造としては、様々なタイプのものを適用できるが、以下に、代表的な構造のいくつかを示す。
【0117】
図24に示すメモリセル構造は、2つの書き込み線、即ち、ワード線WLとビット線BLとの交差部に1つの磁気抵抗効果素子MTJのみを配置するいわゆるクロスポイントタイプである。この構造によれば、選択素子を必要としないため、リソグラフィ技術により許される範囲内でMTJ素子を最密に配置することができ、メモリ容量の増大に貢献できる。
【0118】
図25に示すメモリセル構造は、1つの磁気抵抗効果素子MTJに1つの選択素子(MOSトランジスタ)RSTを接続するいわゆる 1Tr-1MTJ タイプである。この構造によれば、選択素子RSTにより、読み出し時のノイズを減らし、読み出し選択性を向上させることができる。
【0119】
図26に示すメモリセル構造は、n(nは、複数)個の磁気抵抗効果素子MTJに1つの選択素子(MOSトランジスタ)RSTを接続するいわゆる 1Tr-nMTJ タイプである。この構造によれば、読み出し選択性の向上と共に、クロスポイントタイプに近い高集積化を実現することができる。
【0120】
(11) 第11実施の形態
第11実施の形態は、磁気抵抗効果素子と書き込み線との位置関係に関する。
【0121】
図27乃至図30は、第11実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリの磁気抵抗効果素子と書き込み線との位置関係を示している。
【0122】
図27の例では、ワード線(書き込み線)WLは、磁気抵抗効果素子MTJのフリー層の本体部の中央を通過する。本例では、ワード線WLは、磁気抵抗効果素子MTJの直下に配置されるが、直上に配置されてもよい。また、ビット線(書き込み線)BLも、磁気抵抗効果素子MTJのフリー層の本体部の中央を通過する。本例では、ビット線BLは、磁気抵抗効果素子MTJの直上に配置されるが、直下に配置されてもよい。
【0123】
図28の例では、ワード線(書き込み線)WLは、磁気抵抗効果素子MTJのフリー層の突出部の中央を通過する。このような位置関係にすることで、ワード線WLを流れる書き込み電流により発生する磁場Hwlを効率的に突出部に与えることができる。
【0124】
尚、本例では、ビット線(書き込み線)BLの位置については、特に限定されないため、ここでは省略する。ワード線WLは、磁気抵抗効果素子MTJの直下に配置されるが、直上に配置されてもよい。
【0125】
図29の例では、ビット線(書き込み線)BLは、磁気抵抗効果素子MTJのフリー層の突出部の中央を通過する。このような位置関係にすることで、ビット線BLを流れる書き込み電流により発生する磁場Hblを効率的に突出部に与えることができる。
【0126】
尚、本例では、ワード線(書き込み線)WLの位置については、特に限定されないため、ここでは省略する。ビット線BLは、磁気抵抗効果素子MTJの直上に配置されるが、直下に配置されてもよい。
【0127】
図30の例では、ビット線(書き込み線)BLは、磁気抵抗効果素子MTJのフリー層の本体部の直下又は直上(フリー層の中央以外の部分を含む)を通過する。このような位置関係にすることで、ビット線BLを流れる書き込み電流により発生する磁場Hblを効率的に本体部に与えることができる。
【0128】
尚、本例では、ワード線(書き込み線)WLの位置については、特に限定されないため、ここでは省略する。ビット線BLは、磁気抵抗効果素子MTJの直上に配置されるが、直下に配置されてもよい。
【0129】
(12) 第12実施の形態
第12実施の形態は、メモリセルアレイを構成する複数の磁気抵抗効果素子の向きに関する。
【0130】
図31及び図34は、第12実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルアレイの概要を示している。
【0131】
上述の第10実施の形態に示すメモリセルアレイ(図23)では、磁気抵抗効果素子MTJは、全て同じ方向を向いている。
【0132】
この場合、レイアウト的には単純となるが、特に、選択素子を用いるメモリセル構造(例えば、図25や図26に示すメモリセル構造)を採用する場合には、1つのメモリセル当たりの面積が大きくなる問題が発生する。
【0133】
そこで、特に、選択素子を用いるメモリセル構造を採用する場合には、第12実施の形態のように、例えば、メモリセルアレイ(Memory Cell Array)を構成する複数の磁気抵抗効果素子のうち、Y方向(列方向)に隣接する2つの磁気抵抗効果素子を点対称又は線対称に配置する。
【0134】
この場合、例えば、これら2つの磁気抵抗効果素子に対応する2つの選択素子(MOSトランジスタ)のドレイン領域を共有することができるため、1つのメモリセル当たりの面積を小さくし、高集積化を実現できる。
【0135】
(13) 第13実施の形態
第13実施の形態は、トグル書き込み方式を採用する磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルアレイに関する。
【0136】
図35及び図36は、第13実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルアレイの概要を示している。
【0137】
メモリセルアレイ(Memory Cell Array)は、アレイ状に配置される複数の磁気抵抗効果素子MTJから構成される。メモリセルアレイ内には、X方向に延びる複数のワード線WLとY方向に延びる複数のビット線BLが配置される。
【0138】
複数のワード線WLの両端には、例えば、複数のワード線ドライバ/シンカー(WL Driver/Sinker)が接続され、複数のビット線BLの両端には、複数のビット線ドライバ/シンカー(BL Driver/Sinker)が接続される。
【0139】
ここで、第13実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリが上述の第10実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリ(図23)と異なる点は、磁気抵抗効果素子MTJの本体部の磁気異方性が、その磁気抵抗効果素子MTJの直下又は直上のワード線WL又はビット線BLが延びる方向に対して45°の角度の方向に設定されている、という点にある。
【0140】
この場合、書き込み選択性を確保しつつ書き込み電流の値を小さくできる、という利点を持つトグル書き込み方式の適用により、高性能な磁気ランダムアクセスメモリを提供できる。
【0141】
(14) 第14実施の形態
図37及び図38は、第14実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルアレイの概要を示している。
【0142】
本例の磁気ランダムアクセスメモリは、1つの磁気抵抗効果素子(MTJ素子)に対して、1つの書き込み線を用いてデータ書き込みを実行するいわゆる一軸書き込み方式を採用する。
【0143】
メモリセルアレイ(Memory Cell Array)は、アレイ状に配置される複数の磁気抵抗効果素子MTJから構成される。メモリセルアレイ内には、X方向に延びる複数のビット線BLが配置される。
【0144】
複数のビット線BLの一端には、例えば、複数のビット線ドライバ(BL Driver)が接続される。複数のビット線BLの各々には、複数のサブビット線SBLの一端が接続される。
【0145】
サブビット線SBLの直上又は直下には、磁気抵抗効果素子MTJが配置される。磁気抵抗効果素子MTJは、その本体部の磁気異方性がサブビット線SBLが延びる方向に対して所定の角度(例えば、45°)をなすように配置される。
【0146】
サブビット線SBLの他端は、選択素子(例えば、MOSトランジスタ)を経由して接地点に接続される。
【0147】
フリー層、ピン層及び下部電極のレイアウトは、図15乃至図18に示すように設定してもよいし、また、図21及び図22に示すように設定してもよい。
【0148】
第14実施の形態に関わる一軸書き込み方式の磁気ランダムアクセスメモリよれば、1つの磁気抵抗効果素子MTJに対するデータ書き込みを1つの書き込み線のみを使用することにより行えるため、高集積化によるメモリ容量の増大に貢献できる。
【0149】
加えて、書き込み動作時のいわゆる半選択状態のメモリセルのディスターブ不良を低減することができる。
【0150】
(15) 第15実施の形態
第15実施の形態は、本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子が適用される磁気ランダムアクセスメモリの読み出し回路に関する。
【0151】
図39は、クロスポイント型メモリセルアレイを示している。
【0152】
読み出し/書き込みワード線WLと読み出し/書き込みビット線BLとは、互いに交差しており、その交差部に磁気抵抗効果素子Cが配置される。磁気抵抗効果素子Cは、読み出し/書き込みワード線WL及び読み出し/書き込みビット線BLに電気的に接続される。
【0153】
磁気抵抗効果素子Cと読み出し/書き込みワード線WLとの間には、ダイオードDが配置される。ダイオードDは、クロスポイント型メモリセルアレイに特有の読み出し/書き込み時におけるいわゆる回り込み電流(sneak current)を防止する機能を有する。回り込み電流は、例えば、このダイオードDと、非選択の読み出し/書き込みワード線WL及び非選択の読み出し/書き込みビット線BLにバイアス電圧を与えることにより回避する。
【0154】
読み出し/書き込みワード線WLには、例えば、選択トランジスタSTwを経由してセンスアンプSAが接続される。読み出し/書き込みビット線BLには、例えば、選択トランジスタSTBを経由して電源が接続される。
【0155】
図40は、はしご型メモリセルアレイを示している。
【0156】
書き込みビット線BLwと読み出しビット線BLrとの間には、はしご状に複数の磁気抵抗効果素子Cが配置される。書き込みビット線BLwと読み出しビット線BLrは、同一方向に延びている。
【0157】
磁気抵抗効果素子Cの直下には、書き込みワード線WLが配置される。書き込みワード線WLは、磁気抵抗効果素子Cから一定距離だけ離れて配置され、書き込みビット線BLwに交差する方向に延びる。
【0158】
読み出しビット線BLrには、例えば、選択トランジスタSTを経由して抵抗素子Rが接続される。センスアンプSAは、抵抗素子Rの両端に発生する電圧を検出することにより読み出しデータをセンスする。書き込みビット線BLwの一端には、電源が接続され、他端には、例えば、選択トランジスタSTを経由して接地点が接続される。
【0159】
図41及び図42は、それぞれ1トランジスタ−1MTJ型メモリセルアレイを示している。
【0160】
書き込みワード線WLと読み出し/書き込みビット線BLとは、互いに交差しており、その交差部に磁気抵抗効果素子Cが配置される。磁気抵抗効果素子Cは、読み出し/書き込みビット線BLに電気的に接続される。磁気抵抗効果素子Cの直下には、書き込みワード線WLが配置される。書き込みワード線WLは、磁気抵抗効果素子Cから一定距離だけ離れている。
【0161】
磁気抵抗効果素子Cの一端は、例えば、選択トランジスタST2を経由してセンスアンプSAに接続される。読み出し/書き込みビット線BLは、選択トランジスタST1を経由して電源に接続される。
【0162】
尚、図42の構造では、磁気抵抗効果素子Cの一端は、引き出し線としての下部電極Lに接続される。このため、磁気抵抗効果素子Cの直下に選択トランジスタST2が配置されても、書き込みワード線WLを磁気抵抗効果素子Cの近傍に配置することができる。
【0163】
以上、本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子が適用される磁気ランダムアクセスメモリの代表例について説明したが、本発明の例は、これら代表例以外の磁気ランダムアクセスメモリにも適用できる。
【0164】
尚、磁気抵抗効果素子の磁化容易軸方向は、書き込みワード線に平行であってもよいし、書き込みビット線に平行であってもよい。また、磁気抵抗効果素子の磁化容易軸方向は、2本の書き込み線(書き込みワード/ビット線)が延びる方向に対して45°の方向を向いていてもよい。
【0165】
4. その他
本発明の例によれば、磁場に応じて磁化方向が変化するフリー層が、長軸方向に磁気異方性を有する本体部と、本体部から突出し、長軸方向とは異なる方向に磁気異方性を有する1つの突出部とから構成される。
【0166】
従って、データ書き込み時に、磁気抵抗効果素子に磁場を与えると、まず、突出部の磁化反転が進行し、これが牽引役となり、本体部の磁化反転も、突出部の磁化反転に追従して進行する。
【0167】
このように、突出部が本体部の磁化反転をアシストするため、結果的に、磁気抵抗効果素子のアステロイド曲線を凹ませることができる。
【0168】
本発明の例は、上述の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、構成要素を変形して具体化できる。また、上述の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の例の概念としてのフリー層の形状を示す図。
【図2】第1実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図3】フリー層の磁化方向について示す図。
【図4】第2実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図5】第3実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図6】第3実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図7】第3実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図8】第3実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図9】第4実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図10】第4実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図11】第5実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図12】第5実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図13】第5実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図14】第5実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の形状を示す図。
【図15】第6実施の形態の磁気抵抗効果素子の形状を示す図。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図。
【図17】第6実施の形態の磁気抵抗効果素子の形状を示す図。
【図18】図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図。
【図19】第7実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の構造を示す図。
【図20】第7実施の形態の磁気抵抗効果素子のフリー層の構造を示す図。
【図21】第8実施の形態の磁気抵抗効果素子の形状を示す図。
【図22】第9実施の形態の磁気抵抗効果素子の形状を示す図。
【図23】第10実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリを示す図。
【図24】メモリセル構造の例を示す図。
【図25】メモリセル構造の例を示す図。
【図26】メモリセル構造の例を示す図。
【図27】第11実施の形態の書き込み線の位置関係を示す図。
【図28】第11実施の形態の書き込み線の位置関係を示す図。
【図29】第11実施の形態の書き込み線の位置関係を示す図。
【図30】第11実施の形態の書き込み線の位置関係を示す図。
【図31】第12実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリを示す図。
【図32】磁気抵抗効果素子と書き込み線との位置関係を示す図。
【図33】第12実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリを示す図。
【図34】磁気抵抗効果素子と書き込み線との位置関係を示す図。
【図35】第13実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリを示す図。
【図36】磁気抵抗効果素子と書き込み線との位置関係を示す図。
【図37】第14実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリを示す図。
【図38】磁気抵抗効果素子と書き込み線との位置関係を示す図。
【図39】第15実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリの読み出し回路を示す図。
【図40】第15実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリの読み出し回路を示す図。
【図41】第15実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリの読み出し回路を示す図。
【図42】第15実施の形態の磁気ランダムアクセスメモリの読み出し回路を示す図。
【符号の説明】
【0170】
11a: 本体部、 11b: 突出部、 12a,12b: 強磁性層、 13: 絶縁層、 MTJ: 磁気抵抗効果素子、 WL: ワード線、 BL: ビット線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が固定される第1強磁性層と磁化方向が印加される磁場に応じて変化する第2強磁性層とを具備し、前記第2強磁性層は、長軸方向を持つ本体部と、前記本体部から前記長軸方向とは異なる方向に突出する1つの突出部とから構成されることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記長軸方向は、前記第1強磁性層の磁化方向と異なることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
磁化方向が固定される第1強磁性層と磁化方向が印加される磁場に応じて変化する第2強磁性層とからなるアレイ状に配置される複数の磁気抵抗効果素子と、前記複数の磁気抵抗効果素子に対するデータ書き込みに用いる1本以上の書き込み線とを具備し、前記第2強磁性層は、長軸方向を持つ本体部と、前記本体部から前記長軸方向とは異なる方向に突出する1つの突出部とから構成されることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項4】
前記複数の磁気抵抗効果素子のうち列方向に隣接する2つの磁気抵抗効果素子は、点対称又は線対称に配置されることを特徴とする請求項3に記載の磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項5】
前記長軸方向は、前記1本以上の書き込み線が延びる方向と異なることを特徴とする請求項3に記載の磁気ランダムアクセスメモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2006−185961(P2006−185961A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374966(P2004−374966)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】