説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】イメージングスキャンの実行中における被検体の状態に適したタイミングでデータ収集を行って、より安定した血管画像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、トリガー生成手段、血流画像生成手段および制御手段を備える。トリガー生成手段は、被検体から磁気共鳴信号を収集することにより前記被検体の血流情報SIGNAL INTENSITYを取得し、前記血流情報SIGNAL INTENSITYに基づいてトリガーを生成する。血流画像生成手段は、前記トリガーを用いて前記被検体からイメージングデータを収集し、前記イメージングデータを用いて血流画像データを生成する。制御手段は、前記血流情報SIGNAL INTENSITYを取得するためのプローブシーケンスと前記イメージングデータを収集するためのイメージングシーケンスとを交互に繰り返して実行する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置に係り、特に、血流情報をトリガーとして血流像を得るMRA(Magnetic Resonance Angiography)を実施することが可能な磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、血流像を得る手法としてMRAが知られている。MRAのうち、造影剤を使用しないものは非造影MRAと呼ばれる。非造影MRAでは、ECG (electro cardiogram)同期を行って心臓から拍出された速い流速の血流を捕捉することにより良好に血管を描出するFBI (Fresh Blood Imaging)法が考案されている(例えば特許文献1参照)。FBI法は、SE (spin echo)系のシーケンスで3次元スキャンを実行し、血管像を横緩和(T2)強調画像として得る撮像法である。
【0004】
さらに、FBI法に併用される技術として、適切な心電同期の遅延時間を測定するためのECG-prepという技術が考案されている(例えば特許文献2参照)。ECG-prepは、イメージング用のFBIスキャンに先立って、予め血管画像を良好に撮像するために適切な心電同期の遅延時間を決定するための準備スキャンとしてECG-prepスキャンを行い、ECG-prepスキャンによって決定したECG遅延時間でFBIスキャンを実行するものである。ECG-prepスキャンは、ECG信号のR波をトリガーとしてトリガーからの遅延時間を徐々に変化させでデータ収集を行うことにより互いに時相が異なる複数の血管画像を得るプレスキャンである。このECG-prepスキャンによって得られた複数の血管画像から血管部分の輝度がより高い時相の血管画像を選択することにより、FBIスキャンにおけるECG遅延時間を決定することができる。
【0005】
一方、非造影MRAの別の手法として、PC (phase contrast) MRA法が知られている(例えば特許文献3参照)。PC MRA法は、PS (phase shift) MRA法とも呼ばれ、スピンの位相情報から血流を画像化する撮像法である。より具体的には、PC MRA法では、bipolar 傾斜磁場を印加すると、静止しているスピンの位相は傾斜磁場の印加前後において変化しないが血流内の動いているスピンの位相は傾斜磁場の印加前後においてシフトするという現象を利用して、動いているスピンのみが選択的に画像化される。傾斜磁場印加後に生じるスピンの位相のずれは、印加した傾斜磁場の強度と印加時間並びにスピンの速度に依存する。すなわち、スピンの位相は傾斜磁場の強度、印加時間およびスピンの速度の関数となる。このため、スピンの位相情報から血流速度や血流方向を算出することができる。
【0006】
この他の非造影MRA技術としては、ターゲットとなる血流にサチュレーションパルスを印加し、inflow効果を利用して撮像断面に流入する飽和した血液信号を画像化するTOF (time of flight)法が知られている。PC MRA法やTOF法では、FE (field echo)系のシーケンスで血管像が縦緩和(T1)強調画像として得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−5144号公報
【特許文献2】米国特許第6144201号明細書
【特許文献3】特開昭63−230157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のECG同期を伴うMRAでは、イメージングスキャンの実行前にECG-prepスキャンの実行やその他の手段により適切な遅延時間が決定される。従って、遅延時間を決定したときの被検体の状態とイメージングスキャンの実行中における被検体の状態が異なる場合には、適切な遅延時間も変化する可能性がある。そして、適切な遅延時間がECG-prepスキャンの実行時とイメージングスキャンの実行時とにおいて異なる場合には、ECG-prepスキャンの実行によって決定された不適切な遅延時間でイメージングスキャンを実行することとなる。このため、不適切なタイミングでデータが収集され、安定した画質やコントラストで血管像を得ることができないという問題がある。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、イメージングスキャンの実行中における被検体の状態に適したタイミングでデータ収集を行って、より安定した血管画像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、被検体から磁気共鳴信号を収集することにより前記被検体の血流情報を取得し、前記血流情報に基づいてトリガーを生成するトリガー生成手段と、前記トリガーを用いて前記被検体からイメージングデータを収集し、前記イメージングデータを用いて血流画像データを生成する血流画像生成手段と、前記血流情報を取得するためのプローブシーケンスと前記イメージングデータを収集するためのイメージングシーケンスとを交互に繰り返して実行する制御を行う制御手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置においては、イメージングスキャンの実行中における被検体の状態に適したタイミングでデータ収集を行って、より安定した血管画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1に示すRFコイルの詳細構成の一例を示す図。
【図3】図2に示す被検体の体表側に設けられるコイル要素の配置例を示す図。
【図4】図2に示す被検体の背面側に設けられるコイル要素の配置例を示す図。
【図5】図1に示すコンピュータの機能ブロック図。
【図6】図5に示す撮像条件設定部において設定されるプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスに基づくプレスキャンおよびイメージングスキャンの実行手順を示す図。
【図7】図6に示すプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスのデータ収集領域の一例を示す図。
【図8】図5に示す撮像条件設定部において設定されるプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスに基づくプレスキャンおよびイメージングスキャンの実行手順の別の例を示す図。
【図9】図5に示す撮像条件設定部において設定されるプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスに基づくプレスキャンおよびイメージングスキャンの実行手順の更に別の例を示す図。
【図10】図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりTOF法により被検体の血管画像を撮像する場合の手順を示すフローチャート。
【図11】図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりSSFPシーケンスをイメージングシーケンスとして差分処理を伴って被検体の血管画像を撮像する場合の手順を示すフローチャート。
【図12】図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりFBI法により差分処理を伴って被検体Pの血管画像を撮像する場合の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
【0015】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23およびRFコイル24を備えている。
【0016】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0017】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0018】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0019】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0020】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0021】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0022】
RFコイル24は、送信器29および/または受信器30と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0023】
図2は図1に示すRFコイル24の詳細構成の一例を示す図であり、図3は図2に示す被検体Pの体表側に設けられるコイル要素24cの配置例を示す図、図4は図2に示す被検体Pの背面側に設けられるコイル要素24cの配置例を示す図である。
【0024】
図2に示すようにRFコイル24は、筒状の全身用(WB:whole-body)24aコイルとフェーズドアレイコイル24bを備えている。フェーズドアレイコイル24bは、複数のコイル要素24cを備えており、被検体Pの体表側と背面側とにそれぞれ複数のコイル要素24cが配置される。
【0025】
例えば図3に示すように被検体の体表側には、広範囲の撮影部位がカバーされるようにx方向に4列、z方向に8列の合計32個のコイル要素24cが配置される。また、図4に示すように被検体の背面側にも同様に広範囲の撮影部位がカバーされるようにx方向に4列、z方向に8列の合計32個のコイル要素24cが配置される。背面側では、被検体Pの背骨の存在を考慮した感度向上の観点から、体軸付近に他のコイル要素24cよりも小さいコイル要素24cが配置される。
【0026】
一方、受信器30は、デュプレクサ30a,アンプ30b、切換合成器30cおよび受信系回路30dを備えている。デュプレクサ30aは、送信器29、WB24aコイルおよびWB24aコイル用のアンプ30bと接続される。アンプ30bは、各コイル要素24cおよびWB24aコイルの数だけ設けられ、それぞれ個別に各コイル要素24cおよびWB24aコイルと接続される。切換合成器30cは、単一または複数個設けられ、切換合成器30cの入力側は、複数のアンプ30bを介して複数のコイル要素24またはWB24aコイルと接続される。受信系回路30dは、各コイル要素24cおよびWB24aコイルの数以下となるように所望の数だけ設けられ、切換合成器30cの出力側に設けられる。
【0027】
WB24aコイルは、RF信号の送信用のコイルとして用いることができる。また、NMR信号の受信用のコイルとして各コイル要素24cを用いることができる。さらに、WB24aコイルを受信用のコイルとして用いることもできる。
【0028】
このため、デュプレクサ30aは、送信器29から出力された送信用のRF信号をWB24aコイルに与える一方、WB24aコイルにおいて受信されたNMR信号を受信器30内のアンプ24dを経由して切換合成器30cに与えるように構成されている。また、各コイル要素24cにおいて受信されたNMR信号もそれぞれ対応するアンプ24dを経由して切換合成器30cに出力されるように構成されている。
【0029】
切換合成器30cは、コイル要素24cやWB24aコイルから受けたNMR信号の合成処理および切換を行って、対応する受信系回路30dに出力するように構成されている。換言すれば、受信系回路30dの数に合わせてコイル要素24cやWB24aコイルから受けたNMR信号の合成処理および切換が切換合成器30cにおいて行われ、所望の複数のコイル要素24cを用いて撮影部位に応じた感度分布を形成して様々な撮影部位からのNMR信号を受信できるように構成されている。
【0030】
ただし、コイル要素24cを設けずに、WB24aコイルのみでNMR信号を受信するようにしてもよい。また、切換合成器30cを設けずに、コイル要素24cやWB24aコイルにおいて受信されたNMR信号を直接受信系回路30dに出力するようにしてもよい。さらに、より多くのコイル要素24cを広範囲に亘って配置することもできる。
【0031】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
【0032】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0033】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0034】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0035】
図5は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0036】
コンピュータ32は、プログラムにより撮像条件設定部40、シーケンスコントローラ制御部41、k空間データベース42、画像再構成部43、画像データベース44および血流像作成部45として機能する。撮像条件設定部40は、プローブシーケンス設定部40A、イメージングシーケンス設定部40B、閾値設定部40C、トリガー生成部40Dを有する。
【0037】
撮像条件設定部40は、表示装置34に撮影条件の設定画面を表示させて入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ制御部41に与える機能を有する。特に、撮像条件設定部40は、血流像を生成するためのイメージングデータを収集するためのイメージングシーケンスおよびイメージングシーケンスにおいてトリガーを生成するために参照される血流情報を取得するためのプローブシーケンスを設定する機能、プローブシーケンスをプレスキャン用のパルスシーケンスとして設定し、プレスキャンにより取得された血流情報に基づいてデータの信号値、血流信号の位相変化量または血流速度に対する閾値を設定する機能、単一または複数のプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスを交互に繰り返すパルスシーケンスをイメージングスキャン用のシーケンスとして設定し、プローブシーケンスにより収集されたデータの値が閾値の範囲内にあるか否かを判定して閾値内にあると判定される場合にはイメージングシーケンスを実行するためのトリガーを生成する機能を備えている。
【0038】
プローブシーケンスを設定する機能はプローブシーケンス設定部40Aに、イメージングシーケンスを設定する機能はイメージングシーケンス設定部40Bに、データの信号値、血流信号の位相変化量または血流速度に対する閾値を設定する機能は閾値設定部40Cに、閾値判定を行ってトリガーを生成する機能はトリガー生成部40Dに、それぞれ備えられる。そして、トリガーが生成された場合に所定のパルスシーケンスが撮像条件設定部40からシーケンスコントローラ制御部41に出力されるように構成される。
【0039】
図6は、図5に示す撮像条件設定部40において設定されるプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスに基づくプレスキャンおよびイメージングスキャンの実行手順を示す図である。
【0040】
図6において(A)は、プローブシーケンスを用いたプレスキャンを、(B)は、プレスキャンにより取得された血流情報に基づいて閾値を設定した例を、(C)は、プローブシーケンスおよびイメージングシーケンスを交互に繰り返すイメージングスキャンを、それぞれ示す。また、図6(A), (B), (C)の横軸は時間を示し、図6(B)の縦軸は血流信号の強度または血流の速度を示す。尚、図6(B)の縦軸は血流信号の位相変化量としてもよい。
【0041】
図6(A)に示すようにプローブシーケンス設定部40Aによりプレスキャン用にプローブシーケンスが設定される。プローブシーケンスとしては、血流情報としてターゲットとなる血管からの信号の変化、ターゲットとなる血管からの信号の時間的な位相変化またはターゲットとなる血管を流れる血流の速度変化を得ることが可能なシーケンスであれば任意のシーケンスを用いることができる。すなわち、プローブシーケンスは、ターゲットとなる血管からの生データのピーク値、ターゲットとなる血管からの生データの絶対値のピーク値、ターゲットとなる血管からの生データから生成される画像データの輝度値のピーク値、ターゲットとなる血管を流れる血流からの信号の時間的な位相変化またはターゲットとなる血管を流れる血流の速度等の血流情報を取得するためのシーケンスとされる。
【0042】
ターゲットとなる血管からの生データのピーク値、ターゲットとなる血管からの生データの絶対値のピーク値または画像データの輝度値のピーク値を血流情報として取得する場合には、例えば、ターゲットとなる血管を含む断面領域または3次元領域をペンシル励起等のように局所的に励起し、励起されたターゲット血管を含むスライスまたはボリューム全体からk空間(フーリエ空間とも言う)中心を通る1ライン分のk空間データ(k0データ)をダイナミックに収集するFE系またはSE系のシーケンスをプローブシーケンスに設定することができる。この場合、イメージングシーケンスと同種のシーケンスをプローブシーケンスとすれば撮影条件の設定が簡易となる。
【0043】
一方、ターゲットとなる血管を流れる血流の速度を血流情報として取得する場合には、フローシーケンスをプローブシーケンスに設定すればよい。フローシーケンスによりk空間中心を通る1ライン分のk空間データ(k0データ)を収集すれば、血流の速度を取得することができる。具体的には、2軸方向の速度に応じたグラジエント強度を有する流速エンコード傾斜磁場(VENC: Velocity Encoding)または位相変化を与えるためのフローパルスを伴うフローシーケンスを用いて、傾斜磁場を制御して2つの生データを収集すれば、生データの差分によって得られる位相差を2軸方向の成分を有する速度に換算することができる。この場合、通常、VENCを伴う撮像を極性を反転させて2回実施される。
【0044】
また、ターゲットとなる血管を流れる血流からの信号の時間的な位相変化を血流情報として取得する場合には、単一の極性のMPG (motion probing gradient)パルスの印加を伴うPCシーケンスを用いて信号の位相変化を取得することができる。例えば、基準となる信号の位相と各時相における信号との間における位相の差分を順次求めることにより信号の位相変化量の時間変化を取得することができる。また、時間的に隣接する信号間における位相の差分を順次求めることによっても信号の位相変化量の時間変化を取得することができる。ただし、基準となる信号の位相と各時相における信号との間における位相の差分を信号の位相変化量とすれば、変化の特徴がより良好に現れる血流情報が得られると考えられる。
【0045】
そして、ダイナミックなプローブシーケンスの実行によって各時刻において得られる血管からの生データのピーク値、血管からの生データの絶対値のピーク値または血流の速度や信号の位相変化量を時間軸方向にプロットすると、図6(B)に示すようなプロットデータが得られる。例えば、プローブシーケンスの実行によって収集された生データをFFT (fast Fourier transform)すれば、生データの絶対値を得ることができる。この生データの絶対値の最大値をプロットするとターゲットとなる血流信号の強度の時間変化を示すプロットデータが得られる。一方、FFTを行わずに生データのピーク値をそのままプロットしても同様なプロットデータが得られる。
【0046】
このように、プローブシーケンスとしてPCシーケンスやフローシーケンス等のシーケンスを用いてボーラストラッキングを行うことにより、時間分解能を維持しつつ、ターゲット血管の血流の流速や血流信号の強度または位相変化量の時間変化を示すプロットデータをプローブデータとして取得することができる。尚、k0データ近傍の数ライン分のk空間データをプローブシーケンスで収集するようにしても良いが、収集データを少なくすることにより時間分解能を向上させることができる。特に1ライン分のk空間データのみをプローブシーケンスで収集すれば時間分解能を最大限向上させることができる。
【0047】
プローブデータは、血流からの信号強度、信号の位相変化量または速度の時間変化を表しているため、心拍に同期して変化する。そして、血流からの信号強度が十分に大きくなっている期間、信号の位相変化量が大きくなっている期間または血流の流速が十分に速くなっている期間がイメージングデータの収集に適している期間と考えることができる。つまり、血流からの信号強度が十分に大きくなっている期間、信号の位相変化量が大きくなっている期間または血流の流速が十分に速くなっている期間にイメージングデータが収集されるように撮影条件としてトリガーを設定すれば、常に良好な強度で血流からの信号を収集することができる。
【0048】
そこで、イメージングスキャンにおいて血流からの信号強度または信号の位相変化量が十分に大きくなっているか否か、または血流の流速が十分に速くなっているか否かを判定してトリガー信号を発生するための閾値がプローブデータに基づいて閾値設定部40Cにおいて決定される。閾値の決定は、閾値設定部40Cがプローブデータの信号値に基づいて、例えば相対的に信号強度が大きい期間を検出することにより自動的に行うようにすることもできる。一方、プローブデータを表示装置34に表示させて、ユーザが入力装置33の操作により手動で閾値を設定できるようにしてもよい。
【0049】
図6(B)に示す例では、信号強度が相対的に大きいと判定される範囲の上限側の閾値Th_1および下限側の閾値Th_2が決定されている。
【0050】
一方、図6(C)に示すようにイメージングシーケンス設定部40Bによりイメージングスキャン用のシーケンスが設定される。図6(B)に示すようにイメージングデータの収集に適しているタイミングであるか否かを判定するための閾値が決定されると、閾値を撮影条件の1つとして図6(C)に示すイメージングスキャン用のシーケンスを実行することが可能となる。
【0051】
図6(C)に示すようにイメージングスキャン用のシーケンスは、プローブシーケンスが一定の期間で繰り返し実行され、プローブシーケンスにおいて収集されたデータに対する閾値判定の結果に応じてプローブシーケンスの後にイメージングシーケンスが実行されるシーケンスとされる。ただし、イメージングスキャン用に繰り返されるプローブシーケンスは、閾値を用いた判定に必要なk空間上における1ライン分または数ライン分のデータのみを収集する非ダイナミックなデータ収集を行うシーケンスとされる。つまり、プローブシーケンスは必要なデータのみを収集するデータ収集時間が100〜200μs程度の短いシーケンスとされ、イメージングシーケンスの実行期間が確保される。
【0052】
そして、トリガー生成部40Dは、血流信号の強度、信号の位相変化量または血流の流速が閾値の範囲内となった場合にイメージングデータの収集開始のトリガー信号を発生させる。血流信号の強度に基づいてトリガーを発生させる場合には、トリガー生成部40Dは、プローブシーケンスの実行によって得られる血流からの信号をk空間データベース42から取得する。そして、トリガー生成部40Dは、信号の強度が上限側の閾値Th_1と下限側の閾値Th_2との間にあると判定した場合には、イメージングデータの収集開始のトリガー信号を発生させる。
【0053】
この結果、図6(C)に示すように、プローブシーケンスの実行によって得られる血流からの信号の強度が上限側の閾値Th_1と下限側の閾値Th_2との間にあると判定された場合には、プローブシーケンスに続いてイメージングシーケンスが実行される一方、血流からの信号の強度が上限側の閾値Th_1と下限側の閾値Th_2との間にないと判定された場合には、次のプローブシーケンスまでイメージングシーケンスが実行されないか、またはイメージングシーケンスが実行されるがデータ収集が行われない。後者の場合には、イメージングスキャン用のシーケンスは、リアルタイムに被検体Pの体動を補正する技術であるRMC (Realtime Motion Correction)のようにプローブシーケンスとイメージングシーケンスとを交互に繰り返すシーケンスとなる。
【0054】
このように、血流からの信号の強度が十分に大きくなる範囲を特定するための閾値をイメージングスキャンに先立って決定し、イメージングスキャンにおいて血流からの信号の強度が閾値で特定される範囲内となった場合にのみイメージングデータを収集することができる。このため、十分な強度の信号を収集して血管画像を安定して生成することが可能となる。
【0055】
また、血流の流速または血流信号の位相変化量に基づいてトリガーを発生させる場合には、トリガー生成部40Dは、プローブシーケンスとしてフローシーケンスまたはPCシーケンスを実行することによって得られる血流からの信号をk空間データベース42から取得し、血流の速度または血流信号の位相変化量を算出する。そして、トリガー生成部40Dは、血流の速度または血流信号の位相変化量が上限側の閾値Th_1と下限側の閾値Th_2との間にあると判定した場合には、イメージングデータの収集開始のトリガー信号を発生させる。
【0056】
このように、フローシーケンスまたはPCシーケンスをプローブシーケンスとしてイメージングスキャン中に血流の速度または血流信号の位相変化量を断続的にモニタリングし、撮影領域への血流のinflowが十分に大きいと考えられる流速が十分に速い速度範囲を指定してイメージングデータの収集を行うトリガーを発生させることができる。これにより、常に十分な量のフレッシュな血液が撮影領域に流入するタイミングでイメージングデータの収集を行うことが可能となり、安定した血管画像の描出を行うことができる。
【0057】
図7は図6に示すプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスのデータ収集領域の一例を示す図である。
【0058】
図7に示すように、ターゲット血管内の血流をイメージングするために、イメージング領域としてイメージングシーケンスのデータ収集領域を任意に設定することができる。これに対して、プローブシーケンスによるデータ収集領域を、少なくともターゲット血管を含む局所的な領域に設定することができる。これにより、プローブシーケンスによる血流情報収集の対象となる血液をイメージングシーケンスのデータ収集対象とすることができる。
【0059】
尚、プローブシーケンスによるデータ収集領域として複数の領域を設定することもできる。そして、複数の領域を流れる血流からの信号の強度、信号の位相変化量または血流の流速に基づいて適切な閾値を設定することができる。また、プローブシーケンスによるデータ収集領域は、イメージングシーケンスのデータ収集領域の内部または外部に設定することができる。ただし、プローブシーケンスの実行により励起された血液がイメージングシーケンスのデータ収集領域に存在すると、プローブシーケンスの実行により励起された血液からの信号がイメージングに悪影響を与える恐れがある。従って、図7に示すようにプローブシーケンスのデータ収集領域をイメージングシーケンスのデータ収集領域の外側、特にターゲット血管の下流側の十分に近い位置に設定することがイメージングに不要な信号を低減させる観点から望ましい。
【0060】
イメージングシーケンスは、血管画像を撮像するための任意のシーケンスとすることができる。例えば、TOF法によるFE系のシーケンス、定常自由歳差運動(SSFP: steady state free precession)シーケンスまたはFBI法によるFSE (fast spin echo)シーケンスやハーフフーリエ法を利用するFASE (fast asymmetric spin echoまたはfast advanced spin echo)シーケンスをイメージングシーケンスとすることができる。すなわち、撮像目的や励起範囲等の撮像条件に応じて適切なシーケンスがイメージングシーケンスとして用いられる。
【0061】
尚、イメージングシーケンスを、最初にk空間中心付近のk空間データから収集するシーケンスとすれば、k空間中心付近のk空間データを、プローブデータの収集タイミングにより近いタイミングで収集することができる。このため、低周波領域のデータをより適切なタイミングで収集することができる。
【0062】
SSFPシーケンスは、同一の励起角度(フリップ角)でRF励起パルスを一定かつ短い繰り返し時間(TR: repetition time)で印加し、スピンの磁化を横磁化も縦磁化も0でない定常状態にして画像データを得るシーケンスである。このため、SSFPシーケンスでは、スピンの定常状態を維持するためにTRを一定にすることが重要となる。これに対して、図6(C)に示すように一定の間隔でプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスを交互に繰り返すようにすることで、SSFPシーケンスをイメージングシーケンスとして用いた場合であってもスピンの定常状態を良好に維持することが可能となる。
【0063】
同様に、TRを一定に保つことが重要なFEシーケンスをイメージングシーケンスとして用いる場合にも、一定の間隔でプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスを交互に繰り返すようにすることで、TRを一定にすることができる。そして、TOF法による撮像の場合には、FEシーケンスを用いてより早いデータ収集タイミングでイメージングデータが収集され、血管画像としてT1強調画像を得ることができる。
【0064】
さらに、データ収集技術として、高速撮像法であるPI (parallel imaging)を併用することもできる。PIは、複数のコイル要素24cを用いてエコーデータを受信し、かつ位相エンコードをスキップさせることによって画像再構成に必要な位相エンコード数を減らす撮像法である。原理的には、位相エンコード数を、最大で画像再構成に必要な位相エンコード数のコイル要素24cの数分の1に減らすことができる。PIが行われる場合には、エコーデータの収集に用いるコイル要素24cの数や各コイル要素24cと撮影部位を関連付けた情報を始めとしてPIに必要な情報が撮影条件として設定される。
【0065】
このPIを併用することによってイメージングシーケンスの実行時間を短縮し、SSFPシーケンスやFEシーケンスをイメージングシーケンスとする場合には、血流の信号強度、血流信号の位相変化量あるいは血流の流速の時間変化の1周期分の時間よりもイメージングシーケンスの実行時間を十分に短くすることができる。従って、隣接するプローブシーケンス間においてデータ収集を行わない場合があっても、概ね血流の信号強度、血流信号の位相変化量あるいは血流の流速が閾値で定められる範囲内となる都度、イメージングデータの収集を行うことができる。すなわち、イメージングデータを収集しないプローブシーケンス間において、血流の信号強度、血流信号の位相変化量あるいは血流の流速が一旦閾値で定められる範囲内となった後に閾値で定められる範囲外に変化する場合は少ないと考えられる。
【0066】
ここで、閾値で定められる範囲として複数個所設定することもできる。
【0067】
図8は、図5に示す撮像条件設定部40において設定されるプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスに基づくプレスキャンおよびイメージングスキャンの実行手順の別の例を示す図である。
【0068】
図8において(A)は、プローブシーケンスを用いたプレスキャンを、(B)は、プレスキャンにより取得された血流情報に基づいて閾値を設定した例を、(C)は、プローブシーケンスおよびイメージングシーケンスを交互に繰り返すイメージングスキャンを、それぞれ示す。また、図8(A), (B), (C)の横軸は時間を示し、図8(B)の縦軸は血流信号の強度または血流の速度を示す。尚、図8(B)の縦軸は血流信号の位相変化量としてもよい。
【0069】
図8(A)に示すように設定されたプローブシーケンスを実行すると図8(B)に示すようなプローブデータが得られる。そして、図8(B)に示すように、プローブデータの極大値近傍の範囲を定めるための上限側の閾値Th_h1および下限側の閾値Th_h2のみならず極小値近傍の範囲を定めるための上限側の閾値Th_l1および下限側の閾値Th_l2を設定することができる。
【0070】
そして、プローブデータの極大値近傍のみならず、プローブデータの極小値近傍に相当する血流の信号強度が低い範囲、血流信号の位相変化量が小さい範囲または血流の速度がゼロに近い値となる範囲においてもイメージングデータの収集が行われるようにトリガーを発生させることができる。
【0071】
そうすると、図8(C)に示すように、イメージングスキャンが実行される。すなわち、プローブシーケンスの実行によって得られる血流からの信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速がプローブデータの極大値に対して設定された上限側の閾値Th_1と下限側の閾値Th_2との間にあると判定された場合には、プローブシーケンスに続いて第1のイメージングシーケンスが実行される。また、プローブシーケンスの実行によって得られる血流からの信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速がプローブデータの極小値に対して設定された上限側の閾値Tl_1と下限側の閾値Tl_2との間にあると判定された場合には、プローブシーケンスに続いて第2のイメージングシーケンスが実行される。一方、血流からの信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速がプローブデータの極大値に対応する上限側の閾値Th_1と下限側の閾値Th_2との間およびプローブデータの極小値に対応する上限側の閾値Tl_1と下限側の閾値Tl_2との間のいずれにもない場合には、次のプローブシーケンスまでイメージングシーケンスが実行されないか、またはイメージングシーケンスが実行されるがデータ収集が行われない。
【0072】
第1のイメージングシーケンスは、血流信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速が大きい期間に実行されるため、第1のイメージングシーケンスを実行して得られるk空間データから画像データを再構成すると、血管が描出された画像データを得ることができる。一方、第2のイメージングシーケンスは、血流信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速が小さい期間に実行されるため、第2のイメージングシーケンスを実行して得られるk空間データから画像データを再構成すると、血管からの信号が抑制されたいわゆるBB (black blood)の画像データを得ることができる。
【0073】
つまり、図8に示すような撮影条件により、血管が描出された画像データと血管が描出されていない画像データの双方を得ることができる。さらに、血管が描出された画像データと血管が描出されていない画像データ間において差分処理を行えば、撮像目的でない不用な血管の画像については描出されず、ターゲット血管が選択的に強調された血管画像を生成することができる。
【0074】
ところで、FBI法によりFSEシーケンスやFASEシーケンスをイメージングシーケンスとして撮像を行う場合には、PIを併用してもイメージングシーケンスのTRが、1心拍程度から複数心拍程度に亘る場合がある。この場合、1心拍の期間に相当すると考えられるプローブデータの1周期に対してイメージングシーケンスのTRが十分に短くならない。従って、特にFSEシーケンスやFASEシーケンスのようにTRが長いシーケンスをイメージングシーケンスをとする場合に、1ライン分のk空間データを収集するプローブシーケンスとイメージングシーケンスを交互に実行すると、メージングデータを収集しないプローブシーケンス間において、血流の信号強度、血流信号の位相変化量あるいは血流の流速が一旦閾値で定められる範囲内となった後に閾値で定められる範囲外に変化してしまう場合が増加する恐れがある。つまり、メージングデータを収集しない期間が長くなり、撮像時間の長期化に繋がる恐れがある。
【0075】
そこで、TRが長いシーケンスをイメージングシーケンスをとする場合には、プローブシーケンスの実行によって得られる血流の信号強度、血流信号の位相変化量あるいは血流の流速が閾値で定められる範囲内となるまで、繰り返し1ライン分または数ライン分のk空間データを収集するプローブシーケンスを繰り返すようにすることができる。換言すれば、1ライン分または数ライン分のk空間データをダイナミックに収集するプローブシーケンスを実行してイメージングスキャン中においてリアルタイムに血流の信号強度、血流信号の位相変化量あるいは血流の流速の時間変化をモニタリングし、所定の血流の信号強度、血流信号の位相変化量あるいは血流の流速となったタイミングでイメージングシーケンスが開始されるようにトリガーを生成することができる。
【0076】
図9は、図5に示す撮像条件設定部40において設定されるプローブシーケンスおよびイメージングシーケンスに基づくプレスキャンおよびイメージングスキャンの実行手順の更に別の例を示す図である。
【0077】
図9において(A)は、プローブシーケンスを用いたプレスキャンを、(B)は、プレスキャンにより取得された血流情報に基づいて閾値を設定した例を、(C)は、プローブシーケンスPを繰り返し所定の血流の信号強度や血流の流速となったタイミングでイメージングシーケンスI1, I2を開始するイメージングスキャンを、それぞれ示す。また、図9(A), (B), (C)の横軸は時間を示し、図9(B)の縦軸は血流信号の強度または血流の速度を示す。
【0078】
尚、図9(B)の縦軸は血流信号の位相変化量としてもよい。血流情報として基準となる信号と各時相における信号との差分をとることにより血流信号の位相変化量を求める場合には、イメージングシーケンスI1, I2が終わる度に、基準となる信号を新たに決定することが適切な値として血流情報を取得する観点から望ましい。例えば、繰り返し実行されるプローブシーケンスPのうち最初のプローブシーケンスPで得られる信号を基準となる信号に決定することができる。
【0079】
図9(A)に示すように設定されたプローブシーケンスを実行すると図9(B)に示すようなプローブデータが得られる。そして、図9(B)に示すように、プローブデータの極大値近傍の範囲を定めるための上限側の閾値Th_h1および下限側の閾値Th_h2のみならず極小値近傍の範囲を定めるための上限側の閾値Th_l1および下限側の閾値Th_l2を設定することができる。
【0080】
そして図9(C)に示すように、イメージングスキャンが実行される。すなわち、プローブシーケンスPの実行を繰り返し、あるプローブシーケンスPの実行によって得られる血流からの信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速がプローブデータの極大値に対して設定された上限側の閾値Th_1と下限側の閾値Th_2との間にあると判定された場合には、そのプローブシーケンスPに続いて第1のイメージングシーケンスI1が実行される。一方、プローブシーケンスPの実行によって得られる血流からの信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速がプローブデータの極小値に対して設定された上限側の閾値Tl_1と下限側の閾値Tl_2との間にあると判定された場合には、そのプローブシーケンスPに続いて第2のイメージングシーケンスI2が実行される。そして、第1のイメージングシーケンスI1および第2のイメージングシーケンスI2の実行後には、再びプローブシーケンスPの実行が繰り返される。このようなパルスシーケンスの制御を行うと、図9(C)に示すように単一または複数のプローブシーケンスPとイメージングシーケンスI1, I2とが交互に繰り返して実行されることとなる。
【0081】
このようなイメージングスキャンを行えば、イメージングデータを収集しない期間がプローブシーケンスPの実行期間のみとなるため、撮像時間の増加を抑制しつつ、適切なタイミングでイメージングデータを収集することができる。特に、FBI法は、血液のT2成分の磁化が回復するのを待って、所定スライスエンコード量分のエコーデータ(ボリュームデータ)を収集する3次元スキャンを実行することによりT2磁化成分を強調した血管画像データを得るものである。このため、FBI法では、イメージングシーケンスのTRが長くなり、複数心拍毎にイメージングデータを繰り返して収集する場合が多い。従って、FBI法による撮像には、図9に示すようなイメージングスキャンが適している。
【0082】
また、心臓の拡張期および収縮期に相当するそれぞれ対応すると考えられるプローブデータの極大値近傍の期間および極小値近傍の期間においてFBI法によりイメージングデータを収集して画像データをそれぞれ生成すれば、動脈からの信号が強調された血管画像データと動脈からの信号が抑制された血管画像を得ることができる。このため、これらの血管画像データに対する差分処理によって静動脈を分離した血管画像データを生成することが可能となる。
【0083】
尚、FBI法以外のMRAにおいて、図9に示すようにプローブシーケンスの実行によって得られる血流の信号強度、血流信号の位相変化量または血流の流速が閾値で定められる範囲内となるまで、繰り返しプローブシーケンスを繰り返すイメージングスキャンを行ってもよい。
【0084】
次に、コンピュータ32の他の機能について説明する。
【0085】
シーケンスコントローラ制御部41は、入力装置33からのスキャン開始指示情報を受けた場合に、撮影条件設定部40から取得したパルスシーケンスを含む撮影条件をシーケンスコントローラ31に与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース42に形成されたk空間に配置する機能を有する。このため、k空間データベース42には、生データがk空間データとして保存される。
【0086】
画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能と、再構成して得られた画像データを画像データベース44に書き込む機能を有する。このため、画像データベース44には、画像データが保存される。
【0087】
血流像作成部45は、画像データベース44から必要な画像データを読み込んで、差分処理等の画像処理や最大値投影(MIP: maximum intensity projection)処理等の表示処理を行うことによって表示用の血管画像データを生成する機能と、生成した血管画像データを表示装置34に与えることによって表示装置34に血管画像を表示させる機能とを有する。
【0088】
特にPIによりエコーデータが収集される場合には、複数のコイル要素24cに対応する複数の画像データが画像データベース44に保存されることとなる。そして、PIの条件に基づいて複数の画像データに対してPIにおける後処理であるunfolding処理を行って展開された画像データを生成する必要がある。このため、血流像作成部45には、PIのunfolding処理を行う機能も備えられる。尚、unfolding処理には、各コイル要素24cの感度分布データが用いられるため、感度分布データが血流像作成部45に保存される。
【0089】
(動作および作用)
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
【0090】
図10は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりTOF法により被検体Pの血管画像を撮像する場合の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0091】
まず、予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0092】
そして、ステップS1において、撮影条件設定部40においてプローブシーケンスを含むプレスキャン用の撮影条件が設定され、ダイナミックプローブスキャンが実行される。プローブシーケンスは、プローブシーケンス設定部40Aにおいて設定される。これにより血流信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速の時間変化を示すプローブデータが得られる。例えば、イメージング領域よりも下流側のターゲット血管を含む局所領域が励起され、ボリューム全体から血流信号が収集される。そして、血流信号の時間変化が観測される。プローブデータの詳細な収集の流れはイメージングデータの収集の流れと同様であり、後述する。
【0093】
次に、ステップS2において、閾値設定部40Cにおいてプローブデータの極大値近傍や極小値近傍の範囲を特定するための閾値が自動的に、またはユーザにより手動で設定される。
【0094】
次に、ステップS3において、イメージングスキャンが実行される。より具体的には、ステップS31において、プローブシーケンス設定部40Aにおいて設定されたプローブシーケンスが実行され、1ライン分のk空間データが収集される。そして、収集されたk空間データはk空間データベース42に保存される。
【0095】
次に、トリガー生成部40Dは、k空間データをk空間データベース42から取得して血流信号の強度を算出し、ステップS32において、血流信号の強度が閾値で特定される範囲内であるか否かを判定する。そして、血流信号の強度が閾値で特定される範囲内であると判定された場合には、トリガー生成部40Dは、ステップS33において、トリガー信号を生成する。
【0096】
そうすると、ステップS34においてTOF法によりイメージングデータを収集するイメージングシーケンスが実行される。例えばk空間をいくつかの領域に分割することによってセグメント化し、セグメントごとに順次k空間データを取り込んでいくセグメントk-space法によりイメージングデータが収集される。
【0097】
すなわち、トリガー信号が生成されると、撮影条件設定部40からシーケンスコントローラ制御部41にイメージングシーケンスが与えられる。そうすると、シーケンスコントローラ制御部41はイメージングシーケンスをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部41から受けたイメージングシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0098】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部41に与え、シーケンスコントローラ制御部41はk空間データベース42に形成されたk空間に生データを配置する。
【0099】
このようにして対応するセグメント内のイメージングデータが収集される。そして、全てのセグメントに対応するイメージングデータの収集が完了した場合には、ステップS35においてYESと判定される。一方、全てのセグメントに対応するイメージングデータの収集が完了していない場合には、ステップS35においてNOと判定され、再びステップS31からの手順に従って次のセグメントのイメージングデータの収集がYESと判定されるまで繰り返し実行される。
【0100】
また、ステップS32において、血流信号の強度が閾値で特定される範囲内でないと判定された場合には、トリガーの発生およびイメージングデータの収集が行われることなくステップS35の判定が行われる。
【0101】
ステップS35においてYESと判定されると、ステップS4において画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んで画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する。得られた画像データは、画像データベース44に保存される。
【0102】
次に、ステップS5において、血流像作成部45は、画像データベース44から画像データを読み込んで、表示用の血管画像データを生成する。そして生成された血管画像データが表示装置34に表示される。尚、PIが行われた場合には、複数のコイル要素24cに対応する複数の画像データに対するunfolding処理が実行される。
【0103】
このようして表示装置34に表示された血管画像は、血流信号の強度が極大値近傍となるタイミングにおいて収集されたイメージングデータから生成されているため、血管が良好に描出された画像となる。このため、診断に有用な血管画像を得ることができる。
【0104】
次にSSFPシーケンスにより血管画像をイメージングする例について説明する。
【0105】
図11は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりSSFPシーケンスをイメージングシーケンスとして差分処理を伴って被検体Pの血管画像を撮像する場合の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。尚、図10に示すステップと同等のステップには同符号を付して説明を省略する。
【0106】
血管画像を生成するために、血流信号が極大値となるタイミングで収集された画像データと極小値となるタイミングで収集された画像データとの差分処理行う場合には、ステップS2’において、プローブデータの極大値側および極小値側にそれぞれ閾値が設定される。
【0107】
そして、ステップS32の閾値判定において、血流信号の強度が極大値側の閾値で特定される範囲内と判定された場合には、ステップS33’において血流信号が極大値となる期間にイメージングデータ収集用のSSFPシーケンスを開始するためのトリガーが生成される。一方、ステップS32の閾値判定において、血流信号の強度が極小値側の閾値で特定される範囲内と判定された場合には、ステップS33’において血流信号が極小値となる期間にイメージングデータ収集用のSSFPシーケンスを開始するためのトリガーが生成される。
【0108】
次に、ステップS34’において、トリガーに従って、血流信号の強度が極大値側となる期間または血流信号の強度が極小値側となる期間においてイメージングデータ収集用のSSFPシーケンスが実行される。
【0109】
そして、全てのデータが収集されると、ステップS4’において、血流信号の強度が極大値側となる期間において収集されたイメージングデータから第1の画像データが再構成される一方、血流信号の強度が極小値側となる期間において収集されたイメージングデータから第2の画像データが再構成される。
【0110】
そして、ステップS5’において、第1の画像データと第2の画像データとの差分処理を含む血管画像データの生成処理が血流像作成部45において行われる。そして、生成された血管画像データが表示装置34に表示される。
【0111】
このように表示装置34に表示された血管画像は、血流信号の強度が極大となる期間において収集されたイメージングデータに基づく血管が描出された画像データと、血流信号の強度が極小となる期間において収集されたイメージングデータに基づく血管が抑制された画像データとの差分処理によって生成されたものである。このため、ターゲット血管が良好に強調された血管画像となる。このため、診断に有用な血管画像を得ることができる。
【0112】
次にFBI法により血管画像をイメージングする例について説明する。
【0113】
図12は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりFBI法により差分処理を伴って被検体Pの血管画像を撮像する場合の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。尚、図11に示すステップと同等のステップには同符号を付して説明を省略する。
【0114】
FBI法によるイメージングの場合には、イメージングシーケンスのTRがプローブデータの1周期分と同等かそれ以上となる。そこで、ステップS32”に示すように、イメージングスキャンにおけるプローブシーケンスによって収集された血流信号の強度が閾値で定まる範囲内とならない場合には、再びステップS31においてプローブシーケンスによる1ライン分のデータ収集が行われる。
【0115】
そして、ステップS32”において、プローブシーケンスによって収集された血流信号の強度が閾値で定まる範囲内であると判定された場合にのみステップ33’からの手順でFSEシーケンスやFASEシーケンス等のシーケンスによってイメージングデータが収集される。
【0116】
このため、常に、血流信号の強度に基づいて適切なタイミングでイメージングデータを収集することが可能となり、その結果、ターゲット血管が良好に強調された血管画像を生成することができる。
【0117】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、ターゲットとなる血管からの血流信号の強度、血流信号の位相変化量または血流速等の血流情報に基づいて生成したトリガーを用いてイメージング用のデータを収集するようにしたものである。より具体的には、磁気共鳴イメージング装置20は、イメージングスキャン中に取得した血流の信号強度、血流信号の位相変化量または血流の速度が予め設定した閾値で特定される所定の範囲内となった場合にイメージングデータを収集するようにしたものである。
【0118】
(効果)
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、リアルタイムに取得した血流情報に応じてイメージングデータを適切なタイミングで収集することが可能となる。これにより、血管画像の描出性能を向上させることができる。この効果は、特にイメージングデータの収集タイミングが重要である非造影MRAを実行する場合に顕著となる。
【0119】
すなわち、従来は、ECG-prepスキャン等のプレスキャンを実行し、プレスキャンの実行時において適切と考えられるイメージングデータの収集タイミング(遅延時間)でイメージングデータの収集を行っているため、プレスキャンの実行時とイメージングスキャンの実行時とで血流の状態が変わった場合に適切なイメージングデータの収集タイミング(遅延時間)も変わってしまう恐れがある。
【0120】
これに対して、磁気共鳴イメージング装置20では、イメージングスキャンの実行中に断続的または連続的に観測したターゲットとなる血管の血流情報に基づいてイメージングシーケンスの開始に用いられるトリガーが生成されるため、イメージングスキャン実行中の被検体Pの状態に適応して、より良好なタイミングでイメージングデータを収集することができる。このため、従来から用いられて生きたプレスキャン法に代わる技術として期待される。そして、絶えず良好なタイミングでデータ収集を行うことにより、安定した血管画像の描出が可能となる。
【0121】
また、血流情報に基づいて任意のタイミングでトリガーを生成することができる。このため、血管部分の輝度を抑制したblack blood 画像を収集する場合であっても血流信号の強度が小さいタイミングや血流の速度が遅いタイミングでイメージングデータが収集されるようにトリガーを生成することによって安定したコントラストの画像を得ることができる。
【0122】
加えて、遅延時間を変えながら複数心拍に亘って実行されるECG-prep等のプレスキャンに比べて、プローブデータを収集するためのプレスキャンは短いため、撮像時間の短縮化に繋がる。
【0123】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20によれば、ECG同期が不要であり、FBI法のみならずTOF法等の様々なイメージング法に適用することができる。換言すれば、FBI法においてECG同期を不用にすることができる。
【符号の説明】
【0124】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイル
24 RFコイル
24a WBコイル
24b フェーズドアレイコイル
24c コイル要素
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
40 撮像条件設定部
40A プローブシーケンス設定部
40B イメージングシーケンス設定部
40C 閾値設定部
40D トリガー生成部
41 シーケンスコントローラ制御部
42 k空間データベース
43 画像再構成部
44 画像データベース
45 血流像作成部
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から磁気共鳴信号を収集することにより前記被検体の血流情報を取得し、前記血流情報に基づいてトリガーを生成するトリガー生成手段と、
前記トリガーを用いて前記被検体からイメージングデータを収集し、前記イメージングデータを用いて血流画像データを生成する血流画像生成手段と、
前記血流情報を取得するためのプローブシーケンスと前記イメージングデータを収集するためのイメージングシーケンスとを交互に繰り返して実行する制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記トリガー生成手段は、ターゲットとなる血管の血流からの信号の強度、前記血流からの信号の強度の絶対値または前記血流からの信号から生成される画像データの輝度値を前記血流情報として取得するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記トリガー生成手段は、ターゲットとなる血管の血流の速度を前記血流情報として取得するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記トリガー生成手段は、ターゲットとなる血管の血流からの信号の時間的な位相変化量を前記血流情報として取得するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記トリガー生成手段は、各時相における信号と基準となる信号との間における位相の差分を前記位相変化量として取得するように構成される請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記トリガー生成手段は、時間的に隣接する信号間における位相の差分を前記位相変化量として取得するように構成される請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記トリガー生成手段は、前記イメージングデータの収集領域よりも下流側においてターゲットとなる血管を含む局所的な領域を励起することによって前記血流情報を取得するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記トリガー生成手段は、ターゲットとなる血管を含む局所的な領域を励起してphase contrast法によるシーケンスを用いて前記ターゲットとなる血管の血流の速度を前記血流情報として取得するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記トリガー生成手段は、前記血流情報を表す値に対して予め設定された閾値で特定される範囲内に前記血流情報を表す値があると判定される場合に前記トリガーを生成するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記トリガー生成手段は、ターゲットとなる血管を含む局所的な領域を励起してfield echo系またはspin echo系のシーケンスを用いてk空間の中心を通る1ライン分のk空間データを収集し、前記k空間データから得られる血流情報を表す値に対して予め設定された閾値で特定される範囲内に前記血流情報を表す値があると判定される場合に前記トリガーを生成するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記トリガー生成手段は、前記血流情報を表す値に対して予め設定された閾値で特定される極大値側の第1の範囲内に前記血流情報を表す値があると判定される場合には前記血流情報を表す値が極大値となる期間に実行すべき第1のイメージングシーケンス用のトリガーを生成する一方、前記血流情報を表す値に対して予め設定された閾値で特定される極小値側の第2の範囲内に前記血流情報を表す値があると判定される場合には前記血流情報を表す値が極小値となる期間に実行すべき第2のイメージングシーケンス用のトリガーを生成するように構成され、
前記血流画像収集手段は、前記第1のイメージングシーケンスによって収集された第1のイメージングデータと前記第2のイメージングシーケンスによって収集された第2のイメージングデータとの間において差分処理を行うことにより前記血流画像データを生成するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記トリガー生成手段は、前記磁気共鳴信号を一定の間隔で繰り返し収集し、前記磁気共鳴信号から得られる血流情報を表す値に対して予め設定された閾値で特定される範囲内に前記血流情報を表す値があると判定される場合に前記トリガーを生成する一方、前記範囲内に前記血流情報を表す値がないと判定される場合に前記トリガーを生成しないように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記トリガー生成手段は、前記磁気共鳴信号から得られる血流情報を表す値に対して予め設定された閾値で特定される範囲内に前記血流情報を表す値があると判定されるまで前記磁気共鳴信号を繰り返し収集し、前記範囲内に前記血流情報を表す値があると判定される場合に前記トリガーを生成するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記血流画像収集手段は、spin echo系のシーケンスを用いた非造影の3次元スキャンにより前記イメージングデータを収集することによりT2強調画像データとして前記血流画像データを生成するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記血流画像収集手段は、steady state free precessionシーケンスを用いて前記イメージングデータを収集するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記血流画像収集手段は、time of flight法により非造影でターゲットとなる血流にサチュレーションパルスを印加し、inflow効果を利用して撮像断面に流入する飽和した血液信号をfield echo系のシーケンスを用いて前記イメージングデータとして収集するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−63871(P2010−63871A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135298(P2009−135298)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】