磁気共鳴イメージング装置
【課題】体動補正が可能な磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】ステップS1において、トレーニングスキャンのタギングシーケンスTS1〜TSAにより得られたデータに基づいて、変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を算出する。ステップS2において、本スキャンのナビゲータシーケンスNVにより得られた横隔膜位置に基づいて、n回目の位相エンコーディングの際の変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する。ステップS3において、ステップS2で算出した変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)と、本スキャンのイメージングシーケンスにより得られたk空間のデータS(t,n)とに基づいて、画像データf(x,y)を算出する。
【解決手段】ステップS1において、トレーニングスキャンのタギングシーケンスTS1〜TSAにより得られたデータに基づいて、変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を算出する。ステップS2において、本スキャンのナビゲータシーケンスNVにより得られた横隔膜位置に基づいて、n回目の位相エンコーディングの際の変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する。ステップS3において、ステップS2で算出した変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)と、本スキャンのイメージングシーケンスにより得られたk空間のデータS(t,n)とに基づいて、画像データf(x,y)を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体動を補正するための磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の呼吸による体動アーチファクトを低減するために、患者に息止めを指示し、患者が息止めをしている間に撮影を行う場合がある。しかし、この方法では、息止めが困難な患者に対しては十分に体動アーチファクトを低減することができない。そこで、呼吸同期法によって撮影を行う方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-034485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、体動アーチファクトを低減するために、呼吸が安定しているときにデータを収集している。したがって、呼吸が安定している間にデータを収集した後、再び呼吸が安定するまではデータを収集することができず、撮影時間が長くなるという問題があり、この問題を解決することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
位相エンコード方向に勾配磁場を印加し、被検体の体動に伴って変位する所定の部位を撮影するための本スキャンを実行する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の部位にタグが付されたタギング画像のデータを収集するためのトレーニングスキャンを実行するスキャン手段と、
前記タギング画像のデータに基づいて、前記所定の部位の変位量を算出する第1の変位量算出手段と、
前記第1の変位量算出手段により算出された前記所定の部位の変位量に基づいて、前記本スキャンのn回目の位相エンコードにおける前記所定の部位の変位量を算出する第2の変位量算出手段と、
前記第2の変位量算出手段が算出した前記所定の部位の変位量と、前記本スキャンにより得られるk空間のデータとに基づいて、前記所定の部位の画像データを算出する画像データ算出手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0006】
タギングデータのタグの歪を解析することにより、所定の部位がどれだけ変位しているかが分かるので、体動補正をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【図2】被検体13を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
【図3】撮影部位を概略的に示す図である。
【図4】トレーニングスキャンの説明図である。
【図5】横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量を算出するときの説明図である。
【図6】横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量を示す図である。
【図7】本スキャンの説明図である。
【図8】MRI装置1の処理フローの一例を示す図である。
【図9】2箇所の基準位置uref1およびuref2を設け、各基準位置uref1およびuref2においてタギングシーケンスを実行する例を示す図である。
【図10】第2の実施形態において、トレーニングスキャン時における横隔膜の変位を表すグラフである。
【図11】本スキャンにおける横隔膜の変位と、横隔膜位置の許容範囲AWとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施するための形態について説明するが、発明を実施するための形態は、以下の形態に限定されることはない。
【0009】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置1は、磁場発生装置2と、テーブル3と、クレードル4と、受信コイル5などを有している。
【0010】
磁場発生装置2は、被検体13が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は、周波数エンコード方向、位相エンコード方向、およびスライス選択方向に勾配磁場を印加する。また、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0011】
クレードル4は、テーブル3からボア21に移動できるように構成されている。クレードル4によって、被検体13はボア21に搬送される。
【0012】
受信コイル5は、被検体13の胸部から腹部にかけて取り付けられている。受信コイル5は、撮影部位からの磁気共鳴信号を受信する。
【0013】
MRI装置1は、更に、シーケンサ6、送信器7、勾配磁場電源8、受信器9、中央処理装置10、入力装置11、および表示装置12を有している。
【0014】
シーケンサ6は、中央処理装置10の制御を受けて、後述するトレーニングスキャンおよび本スキャン(図2参照)を実行するための情報を送信器7および勾配磁場電源8に送る。具体的には、シーケンサ6は、中央処理装置10の制御を受けて、RFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を送信器7に送り、勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を勾配磁場電源8に送る。
【0015】
送信器7は、シーケンサ6から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0016】
勾配磁場電源8は、シーケンサ6から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0017】
受信器9は、受信コイル5で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、中央処理装置10に伝送する。
【0018】
中央処理装置10は、シーケンサ6および表示装置12に必要な情報を伝送したり、受信器9から受け取った信号に基づいて画像を再構成するなど、MRI装置1の各種の動作を実現するように、MRI装置1の各部の動作を総括する。中央処理装置10は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置10は、第1の変位量算出手段101、第2の変位量算出手段102、および画像データ算出手段103を有している。
【0019】
第1の変位量算出手段101は、トレーニングスキャン(図2参照)により得られたタギング画像のデータに基づいて、所定の部位の変位量を算出する。
【0020】
第2の変位量算出手段102は、第1の変位量算出手段101により算出された所定の部位の変位量に基づいて、本スキャン(図2参照)のn回目の位相エンコードにおける所定の部位の変位量を算出する。
【0021】
画像データ算出手段103は、第2の変位量算出手段102が算出した所定の部位の変位量と、本スキャンにより得られるk空間のデータとに基づいて、所定の部位の画像データを算出する。また、画像データ算出手段103は、タギング画像のデータも算出する。
【0022】
中央処理装置10は、第1の変位量算出手段101、第2の変位量算出手段102、および画像データ算出手段103の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0023】
入力装置11は、オペレータ14の操作に応答して種々の命令を中央処理装置10に入力する。表示装置12は種々の情報を表示する。
【0024】
尚、磁場発生装置2と、シーケンサ6と、送信器7と、勾配磁場電源8とを合わせたものが、課題を解決するための手段に記載されたスキャン手段に相当する。
磁気共鳴イメージング装置1は、上記のように構成されている。
次に、被検体13を撮影するときに実行されるスキャンについて説明する。
【0025】
図2は、被検体13を撮影するときに実行されるスキャンの説明図、図3は、撮影部位を概略的に示す図である。
【0026】
第1の実施形態では、トレーニングスキャンおよび本スキャンが実行される。
トレーニングスキャンは、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を決定するために実行されるスキャンである。変位量Δx(u,x,y)、Δy(u,x,y)については、後述する。
【0027】
トレーニングスキャンでは、タギングシーケンスTSa(a=1〜A)と複数のデータ収集シーケンスDSとの組合せSetが、複数回実行される。タギングシーケンスTSaは、イメージング領域Rimにタグを付するためのシーケンスである。データ収集シーケンスDSは、タグが付されたイメージング領域Rimからk空間のデータを収集するためのシーケンスである。
【0028】
また、タギングシーケンスTSaが実行される前と、データ収集シーケンスDSが実行される前には、一回又は複数回のナビゲータシーケンスNTが実行される。ナビゲータシーケンスNTは、肝臓13a、横隔膜13b、および肺13cに跨る柱状のナビゲータ領域Rna(図3参照)をスライス選択し、ナビゲータ領域Rnaから、被検体の体軸方向に関する横隔膜13bの位置uを検出するのに必要なデータを収集するためのシーケンスである。
【0029】
図4は、トレーニングスキャンの説明図である。
図4(a)は、トレーニングスキャン時における横隔膜の変位を表すグラフである。
【0030】
グラフの横軸は時間を表し、グラフの縦軸は横隔膜位置uを示している。グラフの黒丸は、ナビゲータシーケンスNTにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0031】
トレーニングスキャンでは、イメージング領域Rimのタギング画像を作成するためのデータを収集する。図4(b)には、横隔膜が位置u’αに変位したときのイメージング領域Rimにおけるタギング画像TGαの概略図が示されており、図4(c)には、横隔膜が位置u’βに変位したときのイメージング領域Rimにおけるタギング画像TGβの概略図が示されている。以下に、タギング画像TGαのデータと、タギング画像TGβのデータとを収集する方法について説明する。
【0032】
トレーニングスキャンでは、ナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。第1の実施形態では、検出された横隔膜位置の時間変化に基づいて、横隔膜位置uが、減少から増大に変化したか否かを判断する。図4(a)では、時刻t1において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t1以降も、ナビゲータシーケンスNTによって横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置urefに変位したら、タギングシーケンスTS1を実行する。この場合、基準位置urefに対して許容範囲AWrefを予め決めておき、検出された横隔膜位置uが許容範囲AWrefに含まれている場合は、横隔膜は基準位置urefに変位したと判断して、タギングシーケンスTS1を実行する。タギングシーケンスTS1を実行することによりイメージング領域Rimにタグが付される。タギングシーケンスTS1を実行した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。横隔膜が、位置u’αに変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。この場合、位置u’αに対して許容範囲AWαを予め決めておき、検出された横隔膜位置uが許容範囲AWαに含まれている場合は、横隔膜は位置u’αに変位したと判断して、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS1でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’αに変位したときのk空間のデータDα1を収集することができる。
【0033】
k空間のデータDα1を収集した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。横隔膜が、位置u’βに変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。この場合、位置u’βに対して許容範囲AWβを予め決めておき、検出された横隔膜位置uが許容範囲AWβに含まれている場合は、横隔膜は位置u’βに変位したと判断して、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS1でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’βに変位したときのk空間のデータDβ1を収集することができる。
【0034】
k空間のデータDβ1を収集した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。そして、検出された横隔膜位置の時間変化に基づいて、横隔膜位置uが、減少から増大に変化したか否かを判断する。図4(a)では、時刻t2において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t2以降も、ナビゲータシーケンスNTによって横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置urefに変位したら、タギングシーケンスTS2を実行する。タギングシーケンスTS2を実行することによりイメージング領域Rimに再びタグが付される。タギングシーケンスTS2を実行した後、ナビゲータシーケンスNTによって再び横隔膜位置uを検出する。横隔膜が、位置u’αおよびu’βおよび変位したら、データ収集シーケンスDSを実行し、k空間のデータDα2およびDβ2を収集する。
【0035】
以下、同様の手順で、タギング画像TGαおよびTGβを作成するのに必要なk空間のデータが収集されるまでスキャンを実行する。したがって、タギング画像TGαおよびTGβを作成することができる。
【0036】
また、横隔膜位置uは時間とともに変位するので、イメージング領域Rimに付されたタグも、時間とともに歪んでいく。したがって、タギング画像TGαのタグと、タギング画像TGβのタグには、イメージング領域Rimにタグを付してからデータが収集されるまでの時間に応じた歪が生じる。尚、図4(b)および(c)では、説明の便宜上、タギング画像TGαおよびTGβには、歪のないタグが示されているが、実際には、タグには、イメージング領域Rimにタグを付してからデータが収集されるまでの時間に応じた歪が生じている。
【0037】
次に、図4(b)を参照しながら、イメージング領域Rim内の組織Tの変位について説明する。
【0038】
横隔膜の基準位置urefにおいて、イメージング領域Rim内の組織Tが、ピクセル位置P0=(x0,y0)に位置しているとする。しかし、横隔膜位置uが、位置u’αに変位すると、組織Tは、ピクセル位置P0=(x0,y0)から、ピクセル位置Pα=(xα,yα)に移動する。つまり、組織Tは、イメージング領域Rimにタグが付されてからデータが収集されるまでの間に、x方向に変位量Δxだけ変位し、y方向に変位量Δyだけ変位する(尚、z方向の変位は無視する)。また、変位量ΔxおよびΔyは、横隔膜位置u、ピクセル位置(x,y)に依存する値であるので、ΔxおよびΔyは、以下のように、u、x、およびyの関数として表すことができる。
Δx(u,x,y)、Δy(u,x,y)
【0039】
変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)の値は、タギング画像に付されたタグの歪を解析することによって算出することができる。例えば、横隔膜位置u=u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)を算出するには、タギング画像TGαに付されたタグの歪を解析すればよい。タギング画像TGαに付されたタグの歪を解析することによって、変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)を算出することができる。
【0040】
上記の説明では、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)を算出する例について説明したが、横隔膜位置u’βにおける変位量Δx(u’β,x,y)およびΔy(u’β,x,y)を算出する場合には、タギング画像TGβに付されたタグの歪を解析すればよい。タギング画像TGβに付されたタグの歪を解析することにより、横隔膜位置u’βにおける変位量Δx(u’β,x,y)およびΔy(u’β,x,y)を算出することができる。
【0041】
図4では、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)と、横隔膜位置u’βにおける変位量Δx(u’β,x,y)およびΔy(u’β,x,y)とを算出する例について説明している。しかし、タギングシーケンスを実行してからデータを収集するまでの時間を更に細かく規定することにより、横隔膜位置u’αおよびu’β以外の横隔膜位置における変位量も算出することができる。第1の実施形態では、横隔膜位置u’k(k=1〜z)における変位量を算出している(図5参照)。
【0042】
図5は、横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量を算出するときの説明図である。
例えば、横隔膜位置u=u’zにおける変位量Δx(u’z,x,y)およびΔy(u’z,x,y)を算出するには、横隔膜位置u’zおけるタギング画像の歪を解析すればよい。横隔膜位置u’zおけるタギング画像を作成するためのk空間のデータは、横隔膜が位置u’zに変位したときにデータ収集シーケンスDSを実行することにより、収集することができる。図6に、横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量をまとめて示す。
【0043】
トレーニングスキャンの後に、本スキャンが実行される(図2参照)。本スキャンでは、イメージングシーケンスISb(b=1〜B)が実行される。
【0044】
イメージングシーケンスISbは、イメージング領域Rim(図3参照)のk空間の各ラインのデータを収集するためのシーケンスである。第1の実施形態では、イメージングシーケンスISbは、グラディエントエコー系のシーケンスである。ただし、イメージングシーケンスISbは、スピンエコー系など、別のシーケンスを用いてもよい。位相エンコード数Nは、例えば、N=128である。
【0045】
また、イメージングシーケンスISbが実行される前に、一回又は複数回のナビゲータシーケンスNVが実行される。ナビゲータシーケンスNVは、トレーニングスキャンにおいて実行されるナビゲータシーケンスNTと同様に、ナビゲータ領域Rna(図3参照)から、横隔膜の位置uを検出するのに必要なデータを収集するためのシーケンスである。
【0046】
図7は、本スキャンの説明図である。
図7(a)は、横隔膜の変位を表すグラフである。
グラフの横軸は時間を表し、グラフの縦軸は横隔膜位置uを示している。グラフの黒丸は、ナビゲータシーケンスNVにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0047】
図7(b)は、横隔膜が基準位置urefに変位したときのイメージング領域Rimの画像の概略図であり、図7(c)は、n回目の位相エンコード(イメージングシーケンスISn)を実行したときのイメージング領域Rimの画像の概略図が示されている。
【0048】
横隔膜が基準位置urefに変位したときのイメージング領域Rimの位置(x,y)における画像データをf(x,y)とし(図7(b)参照)、n回目の位相エンコードにおけるイメージング領域Rimの位置(x,y)における画像データをgn(x,y)とする(図7(c)参照)。f(x,y)は、Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を用いて、以下の式(1)で表される。
gn(x,y)
=f(x+Δx(un,x,y),y+Δy(un,x,y)) ・・・(1)
ただし、un:n回目の位相エンコードの際の横隔膜位置
【0049】
gn(x,y)をフーリエ変換したものが、k空間のデータS(t,n)となるので、k空間のデータS(t,n)は、以下の式で表される。
【数1】
【0050】
尚、式(2)では、画像データf(x,y)をベクトルfで表し、体動補正を受けたフーリエ変換のカーネルを行列Kで表した。式(2)において、k空間のデータS(t,n)をベクトルSで表すと、以下の式が得られる。
f=K−1S ・・・(3)
【0051】
式(3)において、ベクトルSによって表されるk空間のデータS(t,n)は、本スキャンのイメージングシーケンスISbを実行することにより得られるデータである。また、逆行列K−1は、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)が分かれば、求めることができる。したがって、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を求めることができれば、式(3)により、ベクトルfで表される画像データf(x,y)を算出することができる。横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を求める方法としては、例えば、以下の2つの方法(1)および(2)が考えられる。
【0052】
(方法1)先ず、n回目の位相エンコードの際の横隔膜位置unを求める。横隔膜位置unを求める方法としては、例えば、ナビゲータシーケンスNVnにより検出された横隔膜位置uvnと、ナビゲータシーケンスNVn+1により検出された横隔膜位置uvn+1との平均値として求める方法や、横隔膜位置uvn又はuvn+1を、横隔膜位置unとして採用する方法が考えられる。
横隔膜位置unを求めた後、トレーニングスキャンにより求められた横隔膜位置u’k(k=1〜z)における変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)(図6参照)に基づいて、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する。算出方法としては、図6に示す変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)の中から、u’kがunに近い変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を用いて、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する方法が考えられる。図7(a)を参照すると、unは、横隔膜位置u’αとu’α−1との間に位置しているので、横隔膜位置u’αとu’α−1は、unに近い値を有している。したがって、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)と、横隔膜位置u’α−1における変位量Δx(u’α−1,x,y)およびΔy(u’α−1,x,y)とに基づいて、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出することができる。この場合、例えば、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)と、横隔膜位置u’α−1における変位量Δx(u’α−1,x,y)およびΔy(u’α−1,x,y)との平均値を、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)として算出することができる。尚、u’αとunとの差、およびu’α−1とunとの差に応じて、変位量Δx(u’α,x,y),Δy(u’α,x,y)、および変位量Δx(u’α−1,x,y),Δy(u’α−1,x,y)に重み付けしてもよい。重み付けられた変位量に基づいて、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出することにより、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)の値の精度を高めることができる。
【0053】
(方法2) 先ず、横隔膜位置unを求める(横隔膜位置unを求める方法は、方法1と同じでよい)。横隔膜位置unを求めたら、横隔膜位置u’1〜u’zの中で、unに一番近い横隔膜位置(ここでは、横隔膜位置u’αとする)における変位量Δx(u’α,x,y),Δy(u’α,x,y)(図6参照)を、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)として採用する。この場合、u’αとunとの差に応じて、変位量Δx(u’α,x,y),Δy(u’α,x,y)を重み付けしてもよい。
【0054】
したがって、図4〜図7を参照しながら説明したように、トレーニングスキャンと、本スキャンとを実行することにより、画像データf(x,y)が得られることがわかる。
【0055】
次に、画像データf(x,y)を算出するときのMRI装置1の処理フローについて説明する。
【0056】
図8は、MRI装置1の処理フローの一例を示す図である。
ステップS1では、画像データ算出手段103(図1参照)が、トレーニングスキャンにより得られたデータに基づいて、タギング画像を作成する。そして、第1の変位量算出手段101(図1参照)が、タギング画像に付されたタグの歪を解析することにより、変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を算出する(図6参照)。変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を算出した後、ステップS2に進む。
【0057】
ステップS2では、第2の変位量算出手段102(図1参照)が、本スキャンにおけるn回目の位相エンコーディングの際の変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する。変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)は、図7を参照しながら説明した方法で算出することができる。変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出した後、ステップS3に進む。
【0058】
ステップS3では、画像データ算出手段103が、ステップS2で算出した変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)と、本スキャンのイメージングシーケンスにより得られたk空間のデータS(t,n)とを、式(3)に代入する。これにより、画像データf(x,y)を得ることができる。
【0059】
第1の実施形態では、タギングデータに基づいて変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出するので、イメージング領域の各位置(x,y)がどれだけ変位したかを求めることができる。したがって、被検体の呼吸による体動アーチファクトが低減されたMR画像を得ることができる。
【0060】
また、本スキャンにおいては、体動が安定する期間を待たずにイメージングシーケンスを実行することができるので、スキャン時間を短縮することができる。更に、被検体は自由呼吸下で撮影をすることができるので、撮影中に、被検体に呼吸停止の指示をする必要もなく、被検体の負担を軽減することができる。
【0061】
更に、上記の説明では、コロナル画像の画像データについて説明されているが、本発明は、上記のサジタル画像、アキシャル画像、オブリーク画像など、任意の断面の画像データを算出する場合にも適用することができる。
【0062】
尚、図4および図5では、横隔膜が基準位置urefに変位したときにタギングシーケンスTSaおよびを実行している。しかし、横隔膜位置に対して複数の基準位置を設け、横隔膜が各基準位置に変位するたびにタギングシーケンスTSaを実行してもよい。以下では、横隔膜位置に対して2箇所の基準位置を設けた場合にタギングシーケンスTSaを実行する例について説明する。
【0063】
図9は、2箇所の基準位置uref1およびuref2を設け、各基準位置uref1およびuref2においてタギングシーケンスを実行する例を示す図である。
【0064】
図9において、グラフの横軸は時間を表し、グラフの縦軸は横隔膜位置uを示している。グラフの黒丸は、ナビゲータシーケンスNTにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0065】
基準位置uref1においてタギングシーケンスを実行する場合、先ず、横隔膜位置uが、減少から増大に変化したか否かを判断する。図9では、時刻t1において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t1以降も、ナビゲータシーケンスNTによって横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置uref1に変位したら、タギングシーケンスTS1を実行する。タギングシーケンスTS1を実行することによりイメージング領域Rimにタグが付される。タギングシーケンスTS1を実行した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uが、u’α1、u’α2、u’α3、およびu’α4に変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS1でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’α1、u’α2、u’α3、およびu’α4に変位したときのk空間のデータDα11、Dα21、Dα31、およびDα41を収集することができる。
【0066】
一方、基準位置uref2においてタギングシーケンスを実行する場合、先ず、横隔膜位置uが、増大から減少に変化したか否かを判断する。図9では、時刻t2において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t2以降も、横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置uref2に変位したら、タギングシーケンスTS2を実行する。タギングシーケンスTS2を実行することによりイメージング領域Rimにタグが付される。タギングシーケンスTS2を実行した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uが、u’β1、u’β2、およびu’β3に変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS2でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’β1、u’β2、およびu’β3に変位したときのk空間のデータDβ11、Dβ21、およびDβ31を収集することができる。
【0067】
以下、同様に、基準位置uref1およびuref2が検出されたらタギングシーケンスを実行し、横隔膜位置u’α1、u’α2、u’α3、およびu’α4におけるk空間のデータと、横隔膜位置u’β1、u’β2、およびu’β3におけるk空間のデータとを交互に収集する。このようにしてイメージング領域Rimからk空間のデータを収集してタギング画像を作成し、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を算出してもよい。ただし、基準位置uref1と基準位置uref2との間には位置のズレがあるので、基準位置uref2を基準にして算出された変位量は、基準位置uref1を基準にして算出された変位量に補正する必要がある。
【0068】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態では、本スキャンにより収集されたk空間のデータを取り直すか否かを決定する方法について説明する。尚、ハードウェア構成は、第1の実施形態と同じである。
【0069】
図10は、第2の実施形態において、トレーニングスキャン時における横隔膜の変位を表すグラフである。グラフの黒丸は、トレーニングスキャン時のナビゲータシーケンスNTにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0070】
トレーニングスキャンにより検出された横隔膜位置に基づいて、被検体13が息を吐き終わった時の横隔膜13bの位置である最大呼気位置Xeと、被検体13が息を吸い終わった時の横隔膜13bの位置である最大吸気位置Xiとを決定する。
【0071】
最大呼気位置Xeを決定する方法としては、例えば、検出された横隔膜位置の中で、座標が最大(座標の正負の取り方によっては最小)となる位置を、最大呼気位置Xeとして決定する方法が考えられる。また、最大吸気位置Xiを決定する方法としては、例えば、検出された横隔膜位置の中で、座標が最小(座標の正負の取り方によっては最大)となる位置を、最大吸気位置Xiとして決定する方法が考えられる。
【0072】
最大呼気位置Xeおよび最大吸気位置Xiを決定した後、最大呼気位置Xeおよび最大吸気位置Xiに基づいて、横隔膜の位置の許容範囲AWを設定する。AWの幅は、例えば、最大呼気位置Xeと最大吸気位置Xiとの間の範囲に設定したり、最大呼気位置Xe±ΔXe(ΔXe>0)と最大吸気位置Xi±ΔXi(ΔXi>0)との間の範囲に設定することができる。
以上のようにして、横隔膜の位置の許容範囲AWが設定される。
【0073】
本スキャンでは、横隔膜位置の許容範囲AWに基づいて、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータを取り直すか否かを決定する(図11参照)。
【0074】
図11は、本スキャンにおける横隔膜の変位と、横隔膜位置の許容範囲AWとの関係を示す図である。グラフの黒丸は、本スキャン時のナビゲータシーケンスNVにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0075】
n回目の位相エンコードにおける横隔膜位置unが、横隔膜位置の許容範囲AWに含まれている場合、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータは、k空間を埋めるデータとして採用される。一方、横隔膜位置unが、横隔膜位置の許容範囲AWからはずれた場合、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータは、イメージングシーケンスISn+d(d:1以上の整数)おいて、データが取り直される。図11では、n回目の位相エンコードにおける横隔膜位置unは、横隔膜位置の許容範囲AWに含まれているので、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータは、k空間を埋めるデータとして採用される。
【0076】
一方、x回目の位相エンコードにおけるイメージングシーケンスISxは、横隔膜位置の許容範囲AWから外れている。したがって、イメージングシーケンスISxで収集されたイメージングデータは、k空間を埋めるデータとして採用されず、イメージングシーケンスISx+d(d:1以上の整数)おいて、データが取り直される。したがって、第2の実施形態によれば、横隔膜位置の許容範囲AWにおけるデータのみを、k空間を埋めるデータとして採用することができ、体動アーチファクトが更に低減された画像を得ることができる。
【0077】
尚、本発明の実施に際しては、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することができる。
【0078】
第1および第2の実施形態では、横隔膜位置は、ナビゲータエコー法で算出しているが、ナビゲータエコー法の代わりに、ベローズを用いて横隔膜位置を算出してもよい。
【0079】
第1および第2の実施形態では、ナビゲータエコーは、被検体のイメージング領域の内側から収集されている。しかし、体動アーチファクトが十分に低減された画像を得ることができるのであれば、ナビゲータエコーは、イメージング領域の外側に存在する部位から収集してもよい。
【0080】
第1および第2の実施形態では、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を、横隔膜位置uの関数として求めている。しかし、イメージング領域Rimの位置(x,y)における変位量を求めることができるのであれば、横隔膜とは別の部位の位置の関数として、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を求めてもよい。
【0081】
また、第1および第2の実施形態では、式(3)に従って画像データf(x,y)を算出しているが、式(3)とは別の式に従って画像データf(x,y)を算出してもよい。
【0082】
更に、第1および第2の実施形態では、肝臓13aを撮影する例について説明されているが、被検体の体動に伴って変位する部位であれば、心臓などの他の部位であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 MRI装置
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 クレードル
5 受信コイル
6 シーケンサ
7 送信器
8 勾配磁場電源
9 受信器
10 中央処理装置
11 入力装置
12 表示装置
13 被検体
14 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、体動を補正するための磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の呼吸による体動アーチファクトを低減するために、患者に息止めを指示し、患者が息止めをしている間に撮影を行う場合がある。しかし、この方法では、息止めが困難な患者に対しては十分に体動アーチファクトを低減することができない。そこで、呼吸同期法によって撮影を行う方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-034485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、体動アーチファクトを低減するために、呼吸が安定しているときにデータを収集している。したがって、呼吸が安定している間にデータを収集した後、再び呼吸が安定するまではデータを収集することができず、撮影時間が長くなるという問題があり、この問題を解決することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
位相エンコード方向に勾配磁場を印加し、被検体の体動に伴って変位する所定の部位を撮影するための本スキャンを実行する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の部位にタグが付されたタギング画像のデータを収集するためのトレーニングスキャンを実行するスキャン手段と、
前記タギング画像のデータに基づいて、前記所定の部位の変位量を算出する第1の変位量算出手段と、
前記第1の変位量算出手段により算出された前記所定の部位の変位量に基づいて、前記本スキャンのn回目の位相エンコードにおける前記所定の部位の変位量を算出する第2の変位量算出手段と、
前記第2の変位量算出手段が算出した前記所定の部位の変位量と、前記本スキャンにより得られるk空間のデータとに基づいて、前記所定の部位の画像データを算出する画像データ算出手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0006】
タギングデータのタグの歪を解析することにより、所定の部位がどれだけ変位しているかが分かるので、体動補正をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【図2】被検体13を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
【図3】撮影部位を概略的に示す図である。
【図4】トレーニングスキャンの説明図である。
【図5】横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量を算出するときの説明図である。
【図6】横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量を示す図である。
【図7】本スキャンの説明図である。
【図8】MRI装置1の処理フローの一例を示す図である。
【図9】2箇所の基準位置uref1およびuref2を設け、各基準位置uref1およびuref2においてタギングシーケンスを実行する例を示す図である。
【図10】第2の実施形態において、トレーニングスキャン時における横隔膜の変位を表すグラフである。
【図11】本スキャンにおける横隔膜の変位と、横隔膜位置の許容範囲AWとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施するための形態について説明するが、発明を実施するための形態は、以下の形態に限定されることはない。
【0009】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置1は、磁場発生装置2と、テーブル3と、クレードル4と、受信コイル5などを有している。
【0010】
磁場発生装置2は、被検体13が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は、周波数エンコード方向、位相エンコード方向、およびスライス選択方向に勾配磁場を印加する。また、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0011】
クレードル4は、テーブル3からボア21に移動できるように構成されている。クレードル4によって、被検体13はボア21に搬送される。
【0012】
受信コイル5は、被検体13の胸部から腹部にかけて取り付けられている。受信コイル5は、撮影部位からの磁気共鳴信号を受信する。
【0013】
MRI装置1は、更に、シーケンサ6、送信器7、勾配磁場電源8、受信器9、中央処理装置10、入力装置11、および表示装置12を有している。
【0014】
シーケンサ6は、中央処理装置10の制御を受けて、後述するトレーニングスキャンおよび本スキャン(図2参照)を実行するための情報を送信器7および勾配磁場電源8に送る。具体的には、シーケンサ6は、中央処理装置10の制御を受けて、RFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を送信器7に送り、勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を勾配磁場電源8に送る。
【0015】
送信器7は、シーケンサ6から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0016】
勾配磁場電源8は、シーケンサ6から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0017】
受信器9は、受信コイル5で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、中央処理装置10に伝送する。
【0018】
中央処理装置10は、シーケンサ6および表示装置12に必要な情報を伝送したり、受信器9から受け取った信号に基づいて画像を再構成するなど、MRI装置1の各種の動作を実現するように、MRI装置1の各部の動作を総括する。中央処理装置10は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置10は、第1の変位量算出手段101、第2の変位量算出手段102、および画像データ算出手段103を有している。
【0019】
第1の変位量算出手段101は、トレーニングスキャン(図2参照)により得られたタギング画像のデータに基づいて、所定の部位の変位量を算出する。
【0020】
第2の変位量算出手段102は、第1の変位量算出手段101により算出された所定の部位の変位量に基づいて、本スキャン(図2参照)のn回目の位相エンコードにおける所定の部位の変位量を算出する。
【0021】
画像データ算出手段103は、第2の変位量算出手段102が算出した所定の部位の変位量と、本スキャンにより得られるk空間のデータとに基づいて、所定の部位の画像データを算出する。また、画像データ算出手段103は、タギング画像のデータも算出する。
【0022】
中央処理装置10は、第1の変位量算出手段101、第2の変位量算出手段102、および画像データ算出手段103の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0023】
入力装置11は、オペレータ14の操作に応答して種々の命令を中央処理装置10に入力する。表示装置12は種々の情報を表示する。
【0024】
尚、磁場発生装置2と、シーケンサ6と、送信器7と、勾配磁場電源8とを合わせたものが、課題を解決するための手段に記載されたスキャン手段に相当する。
磁気共鳴イメージング装置1は、上記のように構成されている。
次に、被検体13を撮影するときに実行されるスキャンについて説明する。
【0025】
図2は、被検体13を撮影するときに実行されるスキャンの説明図、図3は、撮影部位を概略的に示す図である。
【0026】
第1の実施形態では、トレーニングスキャンおよび本スキャンが実行される。
トレーニングスキャンは、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を決定するために実行されるスキャンである。変位量Δx(u,x,y)、Δy(u,x,y)については、後述する。
【0027】
トレーニングスキャンでは、タギングシーケンスTSa(a=1〜A)と複数のデータ収集シーケンスDSとの組合せSetが、複数回実行される。タギングシーケンスTSaは、イメージング領域Rimにタグを付するためのシーケンスである。データ収集シーケンスDSは、タグが付されたイメージング領域Rimからk空間のデータを収集するためのシーケンスである。
【0028】
また、タギングシーケンスTSaが実行される前と、データ収集シーケンスDSが実行される前には、一回又は複数回のナビゲータシーケンスNTが実行される。ナビゲータシーケンスNTは、肝臓13a、横隔膜13b、および肺13cに跨る柱状のナビゲータ領域Rna(図3参照)をスライス選択し、ナビゲータ領域Rnaから、被検体の体軸方向に関する横隔膜13bの位置uを検出するのに必要なデータを収集するためのシーケンスである。
【0029】
図4は、トレーニングスキャンの説明図である。
図4(a)は、トレーニングスキャン時における横隔膜の変位を表すグラフである。
【0030】
グラフの横軸は時間を表し、グラフの縦軸は横隔膜位置uを示している。グラフの黒丸は、ナビゲータシーケンスNTにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0031】
トレーニングスキャンでは、イメージング領域Rimのタギング画像を作成するためのデータを収集する。図4(b)には、横隔膜が位置u’αに変位したときのイメージング領域Rimにおけるタギング画像TGαの概略図が示されており、図4(c)には、横隔膜が位置u’βに変位したときのイメージング領域Rimにおけるタギング画像TGβの概略図が示されている。以下に、タギング画像TGαのデータと、タギング画像TGβのデータとを収集する方法について説明する。
【0032】
トレーニングスキャンでは、ナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。第1の実施形態では、検出された横隔膜位置の時間変化に基づいて、横隔膜位置uが、減少から増大に変化したか否かを判断する。図4(a)では、時刻t1において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t1以降も、ナビゲータシーケンスNTによって横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置urefに変位したら、タギングシーケンスTS1を実行する。この場合、基準位置urefに対して許容範囲AWrefを予め決めておき、検出された横隔膜位置uが許容範囲AWrefに含まれている場合は、横隔膜は基準位置urefに変位したと判断して、タギングシーケンスTS1を実行する。タギングシーケンスTS1を実行することによりイメージング領域Rimにタグが付される。タギングシーケンスTS1を実行した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。横隔膜が、位置u’αに変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。この場合、位置u’αに対して許容範囲AWαを予め決めておき、検出された横隔膜位置uが許容範囲AWαに含まれている場合は、横隔膜は位置u’αに変位したと判断して、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS1でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’αに変位したときのk空間のデータDα1を収集することができる。
【0033】
k空間のデータDα1を収集した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。横隔膜が、位置u’βに変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。この場合、位置u’βに対して許容範囲AWβを予め決めておき、検出された横隔膜位置uが許容範囲AWβに含まれている場合は、横隔膜は位置u’βに変位したと判断して、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS1でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’βに変位したときのk空間のデータDβ1を収集することができる。
【0034】
k空間のデータDβ1を収集した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uを検出する。そして、検出された横隔膜位置の時間変化に基づいて、横隔膜位置uが、減少から増大に変化したか否かを判断する。図4(a)では、時刻t2において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t2以降も、ナビゲータシーケンスNTによって横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置urefに変位したら、タギングシーケンスTS2を実行する。タギングシーケンスTS2を実行することによりイメージング領域Rimに再びタグが付される。タギングシーケンスTS2を実行した後、ナビゲータシーケンスNTによって再び横隔膜位置uを検出する。横隔膜が、位置u’αおよびu’βおよび変位したら、データ収集シーケンスDSを実行し、k空間のデータDα2およびDβ2を収集する。
【0035】
以下、同様の手順で、タギング画像TGαおよびTGβを作成するのに必要なk空間のデータが収集されるまでスキャンを実行する。したがって、タギング画像TGαおよびTGβを作成することができる。
【0036】
また、横隔膜位置uは時間とともに変位するので、イメージング領域Rimに付されたタグも、時間とともに歪んでいく。したがって、タギング画像TGαのタグと、タギング画像TGβのタグには、イメージング領域Rimにタグを付してからデータが収集されるまでの時間に応じた歪が生じる。尚、図4(b)および(c)では、説明の便宜上、タギング画像TGαおよびTGβには、歪のないタグが示されているが、実際には、タグには、イメージング領域Rimにタグを付してからデータが収集されるまでの時間に応じた歪が生じている。
【0037】
次に、図4(b)を参照しながら、イメージング領域Rim内の組織Tの変位について説明する。
【0038】
横隔膜の基準位置urefにおいて、イメージング領域Rim内の組織Tが、ピクセル位置P0=(x0,y0)に位置しているとする。しかし、横隔膜位置uが、位置u’αに変位すると、組織Tは、ピクセル位置P0=(x0,y0)から、ピクセル位置Pα=(xα,yα)に移動する。つまり、組織Tは、イメージング領域Rimにタグが付されてからデータが収集されるまでの間に、x方向に変位量Δxだけ変位し、y方向に変位量Δyだけ変位する(尚、z方向の変位は無視する)。また、変位量ΔxおよびΔyは、横隔膜位置u、ピクセル位置(x,y)に依存する値であるので、ΔxおよびΔyは、以下のように、u、x、およびyの関数として表すことができる。
Δx(u,x,y)、Δy(u,x,y)
【0039】
変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)の値は、タギング画像に付されたタグの歪を解析することによって算出することができる。例えば、横隔膜位置u=u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)を算出するには、タギング画像TGαに付されたタグの歪を解析すればよい。タギング画像TGαに付されたタグの歪を解析することによって、変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)を算出することができる。
【0040】
上記の説明では、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)を算出する例について説明したが、横隔膜位置u’βにおける変位量Δx(u’β,x,y)およびΔy(u’β,x,y)を算出する場合には、タギング画像TGβに付されたタグの歪を解析すればよい。タギング画像TGβに付されたタグの歪を解析することにより、横隔膜位置u’βにおける変位量Δx(u’β,x,y)およびΔy(u’β,x,y)を算出することができる。
【0041】
図4では、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)と、横隔膜位置u’βにおける変位量Δx(u’β,x,y)およびΔy(u’β,x,y)とを算出する例について説明している。しかし、タギングシーケンスを実行してからデータを収集するまでの時間を更に細かく規定することにより、横隔膜位置u’αおよびu’β以外の横隔膜位置における変位量も算出することができる。第1の実施形態では、横隔膜位置u’k(k=1〜z)における変位量を算出している(図5参照)。
【0042】
図5は、横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量を算出するときの説明図である。
例えば、横隔膜位置u=u’zにおける変位量Δx(u’z,x,y)およびΔy(u’z,x,y)を算出するには、横隔膜位置u’zおけるタギング画像の歪を解析すればよい。横隔膜位置u’zおけるタギング画像を作成するためのk空間のデータは、横隔膜が位置u’zに変位したときにデータ収集シーケンスDSを実行することにより、収集することができる。図6に、横隔膜位置u’1〜u’zにおける変位量をまとめて示す。
【0043】
トレーニングスキャンの後に、本スキャンが実行される(図2参照)。本スキャンでは、イメージングシーケンスISb(b=1〜B)が実行される。
【0044】
イメージングシーケンスISbは、イメージング領域Rim(図3参照)のk空間の各ラインのデータを収集するためのシーケンスである。第1の実施形態では、イメージングシーケンスISbは、グラディエントエコー系のシーケンスである。ただし、イメージングシーケンスISbは、スピンエコー系など、別のシーケンスを用いてもよい。位相エンコード数Nは、例えば、N=128である。
【0045】
また、イメージングシーケンスISbが実行される前に、一回又は複数回のナビゲータシーケンスNVが実行される。ナビゲータシーケンスNVは、トレーニングスキャンにおいて実行されるナビゲータシーケンスNTと同様に、ナビゲータ領域Rna(図3参照)から、横隔膜の位置uを検出するのに必要なデータを収集するためのシーケンスである。
【0046】
図7は、本スキャンの説明図である。
図7(a)は、横隔膜の変位を表すグラフである。
グラフの横軸は時間を表し、グラフの縦軸は横隔膜位置uを示している。グラフの黒丸は、ナビゲータシーケンスNVにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0047】
図7(b)は、横隔膜が基準位置urefに変位したときのイメージング領域Rimの画像の概略図であり、図7(c)は、n回目の位相エンコード(イメージングシーケンスISn)を実行したときのイメージング領域Rimの画像の概略図が示されている。
【0048】
横隔膜が基準位置urefに変位したときのイメージング領域Rimの位置(x,y)における画像データをf(x,y)とし(図7(b)参照)、n回目の位相エンコードにおけるイメージング領域Rimの位置(x,y)における画像データをgn(x,y)とする(図7(c)参照)。f(x,y)は、Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を用いて、以下の式(1)で表される。
gn(x,y)
=f(x+Δx(un,x,y),y+Δy(un,x,y)) ・・・(1)
ただし、un:n回目の位相エンコードの際の横隔膜位置
【0049】
gn(x,y)をフーリエ変換したものが、k空間のデータS(t,n)となるので、k空間のデータS(t,n)は、以下の式で表される。
【数1】
【0050】
尚、式(2)では、画像データf(x,y)をベクトルfで表し、体動補正を受けたフーリエ変換のカーネルを行列Kで表した。式(2)において、k空間のデータS(t,n)をベクトルSで表すと、以下の式が得られる。
f=K−1S ・・・(3)
【0051】
式(3)において、ベクトルSによって表されるk空間のデータS(t,n)は、本スキャンのイメージングシーケンスISbを実行することにより得られるデータである。また、逆行列K−1は、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)が分かれば、求めることができる。したがって、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を求めることができれば、式(3)により、ベクトルfで表される画像データf(x,y)を算出することができる。横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を求める方法としては、例えば、以下の2つの方法(1)および(2)が考えられる。
【0052】
(方法1)先ず、n回目の位相エンコードの際の横隔膜位置unを求める。横隔膜位置unを求める方法としては、例えば、ナビゲータシーケンスNVnにより検出された横隔膜位置uvnと、ナビゲータシーケンスNVn+1により検出された横隔膜位置uvn+1との平均値として求める方法や、横隔膜位置uvn又はuvn+1を、横隔膜位置unとして採用する方法が考えられる。
横隔膜位置unを求めた後、トレーニングスキャンにより求められた横隔膜位置u’k(k=1〜z)における変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)(図6参照)に基づいて、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する。算出方法としては、図6に示す変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)の中から、u’kがunに近い変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を用いて、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する方法が考えられる。図7(a)を参照すると、unは、横隔膜位置u’αとu’α−1との間に位置しているので、横隔膜位置u’αとu’α−1は、unに近い値を有している。したがって、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)と、横隔膜位置u’α−1における変位量Δx(u’α−1,x,y)およびΔy(u’α−1,x,y)とに基づいて、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出することができる。この場合、例えば、横隔膜位置u’αにおける変位量Δx(u’α,x,y)およびΔy(u’α,x,y)と、横隔膜位置u’α−1における変位量Δx(u’α−1,x,y)およびΔy(u’α−1,x,y)との平均値を、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)として算出することができる。尚、u’αとunとの差、およびu’α−1とunとの差に応じて、変位量Δx(u’α,x,y),Δy(u’α,x,y)、および変位量Δx(u’α−1,x,y),Δy(u’α−1,x,y)に重み付けしてもよい。重み付けられた変位量に基づいて、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出することにより、変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)の値の精度を高めることができる。
【0053】
(方法2) 先ず、横隔膜位置unを求める(横隔膜位置unを求める方法は、方法1と同じでよい)。横隔膜位置unを求めたら、横隔膜位置u’1〜u’zの中で、unに一番近い横隔膜位置(ここでは、横隔膜位置u’αとする)における変位量Δx(u’α,x,y),Δy(u’α,x,y)(図6参照)を、横隔膜位置unにおける変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)として採用する。この場合、u’αとunとの差に応じて、変位量Δx(u’α,x,y),Δy(u’α,x,y)を重み付けしてもよい。
【0054】
したがって、図4〜図7を参照しながら説明したように、トレーニングスキャンと、本スキャンとを実行することにより、画像データf(x,y)が得られることがわかる。
【0055】
次に、画像データf(x,y)を算出するときのMRI装置1の処理フローについて説明する。
【0056】
図8は、MRI装置1の処理フローの一例を示す図である。
ステップS1では、画像データ算出手段103(図1参照)が、トレーニングスキャンにより得られたデータに基づいて、タギング画像を作成する。そして、第1の変位量算出手段101(図1参照)が、タギング画像に付されたタグの歪を解析することにより、変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を算出する(図6参照)。変位量Δx(u’k,x,y)およびΔy(u’k,x,y)を算出した後、ステップS2に進む。
【0057】
ステップS2では、第2の変位量算出手段102(図1参照)が、本スキャンにおけるn回目の位相エンコーディングの際の変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出する。変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)は、図7を参照しながら説明した方法で算出することができる。変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出した後、ステップS3に進む。
【0058】
ステップS3では、画像データ算出手段103が、ステップS2で算出した変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)と、本スキャンのイメージングシーケンスにより得られたk空間のデータS(t,n)とを、式(3)に代入する。これにより、画像データf(x,y)を得ることができる。
【0059】
第1の実施形態では、タギングデータに基づいて変位量Δx(un,x,y)およびΔy(un,x,y)を算出するので、イメージング領域の各位置(x,y)がどれだけ変位したかを求めることができる。したがって、被検体の呼吸による体動アーチファクトが低減されたMR画像を得ることができる。
【0060】
また、本スキャンにおいては、体動が安定する期間を待たずにイメージングシーケンスを実行することができるので、スキャン時間を短縮することができる。更に、被検体は自由呼吸下で撮影をすることができるので、撮影中に、被検体に呼吸停止の指示をする必要もなく、被検体の負担を軽減することができる。
【0061】
更に、上記の説明では、コロナル画像の画像データについて説明されているが、本発明は、上記のサジタル画像、アキシャル画像、オブリーク画像など、任意の断面の画像データを算出する場合にも適用することができる。
【0062】
尚、図4および図5では、横隔膜が基準位置urefに変位したときにタギングシーケンスTSaおよびを実行している。しかし、横隔膜位置に対して複数の基準位置を設け、横隔膜が各基準位置に変位するたびにタギングシーケンスTSaを実行してもよい。以下では、横隔膜位置に対して2箇所の基準位置を設けた場合にタギングシーケンスTSaを実行する例について説明する。
【0063】
図9は、2箇所の基準位置uref1およびuref2を設け、各基準位置uref1およびuref2においてタギングシーケンスを実行する例を示す図である。
【0064】
図9において、グラフの横軸は時間を表し、グラフの縦軸は横隔膜位置uを示している。グラフの黒丸は、ナビゲータシーケンスNTにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0065】
基準位置uref1においてタギングシーケンスを実行する場合、先ず、横隔膜位置uが、減少から増大に変化したか否かを判断する。図9では、時刻t1において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t1以降も、ナビゲータシーケンスNTによって横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置uref1に変位したら、タギングシーケンスTS1を実行する。タギングシーケンスTS1を実行することによりイメージング領域Rimにタグが付される。タギングシーケンスTS1を実行した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uが、u’α1、u’α2、u’α3、およびu’α4に変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS1でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’α1、u’α2、u’α3、およびu’α4に変位したときのk空間のデータDα11、Dα21、Dα31、およびDα41を収集することができる。
【0066】
一方、基準位置uref2においてタギングシーケンスを実行する場合、先ず、横隔膜位置uが、増大から減少に変化したか否かを判断する。図9では、時刻t2において、横隔膜位置uが、減少から増大に変化している。時刻t2以降も、横隔膜位置uを検出し、横隔膜が基準位置uref2に変位したら、タギングシーケンスTS2を実行する。タギングシーケンスTS2を実行することによりイメージング領域Rimにタグが付される。タギングシーケンスTS2を実行した後、再びナビゲータシーケンスNTを実行し、横隔膜位置uが、u’β1、u’β2、およびu’β3に変位したら、データ収集シーケンスDSを実行する。データ収集シーケンスDSを実行することにより、タギングシーケンスTS2でタグが付されたイメージング領域Rimから、横隔膜がu’β1、u’β2、およびu’β3に変位したときのk空間のデータDβ11、Dβ21、およびDβ31を収集することができる。
【0067】
以下、同様に、基準位置uref1およびuref2が検出されたらタギングシーケンスを実行し、横隔膜位置u’α1、u’α2、u’α3、およびu’α4におけるk空間のデータと、横隔膜位置u’β1、u’β2、およびu’β3におけるk空間のデータとを交互に収集する。このようにしてイメージング領域Rimからk空間のデータを収集してタギング画像を作成し、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を算出してもよい。ただし、基準位置uref1と基準位置uref2との間には位置のズレがあるので、基準位置uref2を基準にして算出された変位量は、基準位置uref1を基準にして算出された変位量に補正する必要がある。
【0068】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態では、本スキャンにより収集されたk空間のデータを取り直すか否かを決定する方法について説明する。尚、ハードウェア構成は、第1の実施形態と同じである。
【0069】
図10は、第2の実施形態において、トレーニングスキャン時における横隔膜の変位を表すグラフである。グラフの黒丸は、トレーニングスキャン時のナビゲータシーケンスNTにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0070】
トレーニングスキャンにより検出された横隔膜位置に基づいて、被検体13が息を吐き終わった時の横隔膜13bの位置である最大呼気位置Xeと、被検体13が息を吸い終わった時の横隔膜13bの位置である最大吸気位置Xiとを決定する。
【0071】
最大呼気位置Xeを決定する方法としては、例えば、検出された横隔膜位置の中で、座標が最大(座標の正負の取り方によっては最小)となる位置を、最大呼気位置Xeとして決定する方法が考えられる。また、最大吸気位置Xiを決定する方法としては、例えば、検出された横隔膜位置の中で、座標が最小(座標の正負の取り方によっては最大)となる位置を、最大吸気位置Xiとして決定する方法が考えられる。
【0072】
最大呼気位置Xeおよび最大吸気位置Xiを決定した後、最大呼気位置Xeおよび最大吸気位置Xiに基づいて、横隔膜の位置の許容範囲AWを設定する。AWの幅は、例えば、最大呼気位置Xeと最大吸気位置Xiとの間の範囲に設定したり、最大呼気位置Xe±ΔXe(ΔXe>0)と最大吸気位置Xi±ΔXi(ΔXi>0)との間の範囲に設定することができる。
以上のようにして、横隔膜の位置の許容範囲AWが設定される。
【0073】
本スキャンでは、横隔膜位置の許容範囲AWに基づいて、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータを取り直すか否かを決定する(図11参照)。
【0074】
図11は、本スキャンにおける横隔膜の変位と、横隔膜位置の許容範囲AWとの関係を示す図である。グラフの黒丸は、本スキャン時のナビゲータシーケンスNVにより検出された横隔膜位置uを表している。
【0075】
n回目の位相エンコードにおける横隔膜位置unが、横隔膜位置の許容範囲AWに含まれている場合、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータは、k空間を埋めるデータとして採用される。一方、横隔膜位置unが、横隔膜位置の許容範囲AWからはずれた場合、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータは、イメージングシーケンスISn+d(d:1以上の整数)おいて、データが取り直される。図11では、n回目の位相エンコードにおける横隔膜位置unは、横隔膜位置の許容範囲AWに含まれているので、イメージングシーケンスISnで収集されたイメージングデータは、k空間を埋めるデータとして採用される。
【0076】
一方、x回目の位相エンコードにおけるイメージングシーケンスISxは、横隔膜位置の許容範囲AWから外れている。したがって、イメージングシーケンスISxで収集されたイメージングデータは、k空間を埋めるデータとして採用されず、イメージングシーケンスISx+d(d:1以上の整数)おいて、データが取り直される。したがって、第2の実施形態によれば、横隔膜位置の許容範囲AWにおけるデータのみを、k空間を埋めるデータとして採用することができ、体動アーチファクトが更に低減された画像を得ることができる。
【0077】
尚、本発明の実施に際しては、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することができる。
【0078】
第1および第2の実施形態では、横隔膜位置は、ナビゲータエコー法で算出しているが、ナビゲータエコー法の代わりに、ベローズを用いて横隔膜位置を算出してもよい。
【0079】
第1および第2の実施形態では、ナビゲータエコーは、被検体のイメージング領域の内側から収集されている。しかし、体動アーチファクトが十分に低減された画像を得ることができるのであれば、ナビゲータエコーは、イメージング領域の外側に存在する部位から収集してもよい。
【0080】
第1および第2の実施形態では、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を、横隔膜位置uの関数として求めている。しかし、イメージング領域Rimの位置(x,y)における変位量を求めることができるのであれば、横隔膜とは別の部位の位置の関数として、変位量Δx(u,x,y)およびΔy(u,x,y)を求めてもよい。
【0081】
また、第1および第2の実施形態では、式(3)に従って画像データf(x,y)を算出しているが、式(3)とは別の式に従って画像データf(x,y)を算出してもよい。
【0082】
更に、第1および第2の実施形態では、肝臓13aを撮影する例について説明されているが、被検体の体動に伴って変位する部位であれば、心臓などの他の部位であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 MRI装置
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 クレードル
5 受信コイル
6 シーケンサ
7 送信器
8 勾配磁場電源
9 受信器
10 中央処理装置
11 入力装置
12 表示装置
13 被検体
14 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相エンコード方向に勾配磁場を印加し、被検体の体動に伴って変位する所定の部位を撮影するための本スキャンを実行する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の部位にタグが付されたタギング画像のデータを収集するためのトレーニングスキャンを実行するスキャン手段と、
前記タギング画像のデータに基づいて、前記所定の部位の変位量を算出する第1の変位量算出手段と、
前記第1の変位量算出手段により算出された前記所定の部位の変位量に基づいて、前記本スキャンのn回目の位相エンコードにおける前記所定の部位の変位量を算出する第2の変位量算出手段と、
前記第2の変位量算出手段が算出した前記所定の部位の変位量と、前記本スキャンにより得られるk空間のデータとに基づいて、前記所定の部位の画像データを算出する画像データ算出手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1の変位量算出手段は、
前記タギング画像の各ピクセル位置ごとに前記変位量を算出する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記トレーニングスキャンおよび前記本スキャンでは、
前記被検体の体動に伴って変位する第1の部位の位置を検出するためのシーケンスが実行される、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1の変位量算出手段は、
前記所定の部位の変位量を、前記第1の部位の位置の関数として算出し、
前記第2の変位量算出手段は、
前記本スキャンのn回目の位相エンコードにおける前記所定の部位の変位量を、前記第1の部位の位置の関数として算出する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1の部位の位置の許容範囲を設定する許容範囲設定手段を有する、請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記トレーニングスキャンは、
前記所定の部位にタグを付すためのタギングシーケンスと、
タグが付された前記所定の部位からデータを収集するデータ収集シーケンスと、
前記第1の部位の位置を検出するためのナビゲータシーケンスと、を有する、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記本スキャンは、
位相エンコード方向に勾配磁場を印加し、前記所定の部位からk空間のデータを収集するためのイメージングシーケンスと、
前記第1の部位の位置を検出するためのナビゲータシーケンスと、を有する、請求項3〜6のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記所定の部位は肝臓である、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第1の部位は横隔膜である、請求項3〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記画像データ算出手段は、
前記本スキャンにより得られた前記所定の部位のk空間のデータと、体動補正を受けたフーリエ変換のカーネルの逆行列とに基づいて、前記所定の部位の画像データを算出する、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記画像データ算出手段は、
前記第2の変位量算出手段が算出した前記所定の部位の変位量に基づいて、前記体動補正を受けたフーリエ変換のカーネルの逆行列を算出する、請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記画像データ算出手段は、
前記トレーニングスキャンにより得られた磁気共鳴信号に基づいて、前記タギング画像のデータを算出する、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の磁器K表明イメージング装置。
【請求項1】
位相エンコード方向に勾配磁場を印加し、被検体の体動に伴って変位する所定の部位を撮影するための本スキャンを実行する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の部位にタグが付されたタギング画像のデータを収集するためのトレーニングスキャンを実行するスキャン手段と、
前記タギング画像のデータに基づいて、前記所定の部位の変位量を算出する第1の変位量算出手段と、
前記第1の変位量算出手段により算出された前記所定の部位の変位量に基づいて、前記本スキャンのn回目の位相エンコードにおける前記所定の部位の変位量を算出する第2の変位量算出手段と、
前記第2の変位量算出手段が算出した前記所定の部位の変位量と、前記本スキャンにより得られるk空間のデータとに基づいて、前記所定の部位の画像データを算出する画像データ算出手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1の変位量算出手段は、
前記タギング画像の各ピクセル位置ごとに前記変位量を算出する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記トレーニングスキャンおよび前記本スキャンでは、
前記被検体の体動に伴って変位する第1の部位の位置を検出するためのシーケンスが実行される、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1の変位量算出手段は、
前記所定の部位の変位量を、前記第1の部位の位置の関数として算出し、
前記第2の変位量算出手段は、
前記本スキャンのn回目の位相エンコードにおける前記所定の部位の変位量を、前記第1の部位の位置の関数として算出する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1の部位の位置の許容範囲を設定する許容範囲設定手段を有する、請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記トレーニングスキャンは、
前記所定の部位にタグを付すためのタギングシーケンスと、
タグが付された前記所定の部位からデータを収集するデータ収集シーケンスと、
前記第1の部位の位置を検出するためのナビゲータシーケンスと、を有する、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記本スキャンは、
位相エンコード方向に勾配磁場を印加し、前記所定の部位からk空間のデータを収集するためのイメージングシーケンスと、
前記第1の部位の位置を検出するためのナビゲータシーケンスと、を有する、請求項3〜6のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記所定の部位は肝臓である、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第1の部位は横隔膜である、請求項3〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記画像データ算出手段は、
前記本スキャンにより得られた前記所定の部位のk空間のデータと、体動補正を受けたフーリエ変換のカーネルの逆行列とに基づいて、前記所定の部位の画像データを算出する、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記画像データ算出手段は、
前記第2の変位量算出手段が算出した前記所定の部位の変位量に基づいて、前記体動補正を受けたフーリエ変換のカーネルの逆行列を算出する、請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記画像データ算出手段は、
前記トレーニングスキャンにより得られた磁気共鳴信号に基づいて、前記タギング画像のデータを算出する、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の磁器K表明イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【公開番号】特開2011−177245(P2011−177245A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42679(P2010−42679)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
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