説明

磁気温熱療法のための超音波モニタリングおよびフィードバック

超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の方法およびシステムであって、該方法は:関心のある組織(121)に対応する超音波データの基準セットを収集する段階と;関心のある組織(121)に複数の磁性ナノ粒子(210)を加える段階と;温熱療法を開始するために一組の動作パラメータに基づいて電磁場を加える段階と;前記関心のある組織(121)に対応する超音波データのもう一つのセットを収集する段階と;超音波データの前記基準セットと、超音波データの前記もう一つのセットとに基づいて温度変化を決定する段階とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波測定技法を使って磁気温熱療法(magnetic hyperthermia)をモニタリングし、制御する方法論およびシステムに向けられる。
【背景技術】
【0002】
温熱療法は、古代ギリシアから実施されてきた古くからの治療法である。温熱療法は、悪性腫瘍、組織その他を完全に加熱し、好ましくは隣接する非癌性細胞を損なうことなく、悪性腫瘍を殺す方法である。
【0003】
磁気温熱療法は、磁鉄鉱(Fe3O4)のような磁性微粒子(ナノ粒子)を内部加熱要素として使い、該磁性微粒子を時間変化する磁場によって加熱する方法である。さらに、治療効果を上げ、悪性腫瘍組織を一様に加熱するため、磁性微粒子として磁性の磁鉄鉱が使われる。それは、磁性材料を悪性腫瘍細胞の表面と格別の親和性をもつ膜で被覆することによって調製される標的向きにされた磁鉄鉱粒子を含む。これらの粒子は、抗体‐受容体相互作用を使って、あるいはイオン電荷によって、病理の特定の分子バイオマーカーを標的とすることができる。
【0004】
加熱は、磁気ヒステリシス損または摩擦損のためである。そのような加熱は、凝固壊死を誘発することによって、あるいは細胞の化学療法もしくは放射線療法のようなさらなる治療への感受性を高めることによって、癌細胞を殺すまたは組織を切除するために温熱療法のために用いられうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気ヒステリシス損に起因する組織における加熱または温度上昇は、多数の因子に依存する込み入った過程であり、該因子は、加えられる磁場、組織内での空間的な変化、ナノ粒子の数および磁気的性質、組織熱属性および血液灌流を含む。温熱療法が効果的であるためには、ある熱投下量当量の細胞曝露時間(thermal dosage equivalent cell exposure time)が達成されなければならない。典型的には、投下量が低い温熱療法は、43°Cでの累積当量時間t43<50分に対応し、高投下量または壊死投下量はt43>50〜100分に対応する。残念ながら、生物物理学的パラメータの多くがきわめて変わりやすく、温熱療法に応答して変わるので(特に血流による熱対流)、温度上昇、対応する熱投下量および腫瘍破壊および/または組織損傷の広がりを先験的に予測する、信頼できる確立された手段はない。熱電対を使った温度測定は侵襲的であり、よって生体内状況については避けるべきである。磁気共鳴温度測定は高価で、また、温熱療法を誘発するためのAC電磁場が撮像手続に影響する可能性もあり、ずっと重要なことに、MRIからの撮像用磁場が温熱療法に深い影響を与えてしまう。
【0006】
磁気温熱療法に関連するもう一つの問題は、特定部位に標的を絞ることは、その標的化剤、局部的な病理および血流条件に依存して数分またはそれ以上かかることがあるということである。特定の時点において十分に標的が絞られたかどうか、よって所望の温熱療法を達成するために意図された部位に十分な磁性粒子が蓄積したかどうかを予測するのは難しい。したがって、磁場を開始するための適切な時間は前もってよく知られていない。さらに、磁場振幅(amplitude)および処置時間は、標的とされた領域における適切な熱投下量(所望の組織の加熱/処置)に達するよう制御される必要がある。したがって、好ましくは別の非侵襲的な撮像モダリティを使って、温熱療法熱パターンをモニタリングする必要がある。さらに、温熱療法の施与(dosing)を容易にするため、空間時間的測定を用いて磁気パワーが調整されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な実装によれば、超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の方法がここに開示される。該方法は:関心のある組織に対応する超音波データの基準セットを収集する段階と;関心のある組織に複数の磁性ナノ粒子を加える段階と;温熱療法を開始するために一組の動作パラメータに基づいて電磁場を加える段階と;前記関心のある組織に対応する超音波データのもう一つのセットを収集する段階と;超音波データの前記基準セットと、超音波データの前記もう一つのセットとに基づいて温度変化を決定する段階とを有する。
【0008】
本稿では、もう一つの実施形態において、超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御のためのシステムが開示される。該システムは:実質的に関心のある組織に配された複数の磁性ナノ粒子と;関心のある組織に対応する少なくとも温度測定データを与えるよう構成された超音波システムと;一組の動作パラメータに対応する電磁場を関心のある組織に加えるよう構成された磁気温熱療法システムと;前記超音波システムおよび前記磁気温熱療法システムと動作可能な通信状態にあり、関心のある組織に対応する前記少なくとも温度測定データに基づいて前記電磁場を加えるという前記磁気温熱療法システムへのコマンドを生成するよう構成されたコントローラとを有する。
【0009】
さらに本稿では、もう一つの例示的な実施形態において、超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御のためのシステムが開示される。該システムは:関心のある組織に対応する超音波データの基準セットを収集する手段と;関心のある組織に複数の磁性ナノ粒子を加える手段と;温熱療法を開始するために一組の動作パラメータに基づいて電磁場を加える手段と;前記関心のある組織に対応する超音波データのもう一つのセットを収集する手段と;超音波データの前記基準セットと、超音波データの前記もう一つのセットとに基づいて温度変化を決定する手段とを有する。
【0010】
また本稿では、さらにもう一つの例示的な実施形態において、超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の上記した方法をコンピュータに実装させる命令を含む機械可読コンピュータ・プログラム・コードをエンコードされた記憶媒体が開示される。
【0011】
さらに本稿では、もう一つの例示的な実施形態において、超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の上記した方法をコンピュータに実装させる命令を有するコンピュータ・データ信号が開示される。
【0012】
もう一つの実施形態では、超音波撮像を用いる磁気温熱療法の方法が開示される。該方法は:造影剤の複数の微小バブルの内側またはその上に複数の磁性ナノ粒子を埋め込み、前記複数の磁性ナノ粒子を関心のある組織に加え、関心のある組織に対応する超音波データを収集し、電磁場を加えて温熱療法を開始することを含む。
【0013】
本発明のさらにもう一つの実施形態では、超音波撮像を用いた磁気温熱療法のためのシステムが開示される。該システムは:造影剤の複数の微小バブルの内側またはその上に埋め込まれた複数の磁性ナノ粒子と、関心のある組織に対応する撮像データを提供するよう構成された超音波撮像システムと、関心のある組織に電磁場を加えるよう構成された磁気温熱療法システムとを含む。
【0014】
開示される方法論に関連する追加的な特徴、機能および利点は以下の詳細な説明を特に付属の図面とともに参照すれば明らかとなるであろう。
【0015】
開示される実施形態の作成および使用において当業者を補助するため、付属の図面が参照される。図面において、同様の参照符号は同様の符号が付けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ここで一つまたは複数の例示的な実施形態において述べられるように、本開示は有利には、磁気温熱療法の処置、特に温度上昇分布および影響を受ける組織における関連した累積熱投下量(cumulated thermal dose)を超音波ベースでモニタリングする方法および装置を許容し、容易にする。超音波が、哺乳類組織の、これに限られないが音速、減衰および周波数依存の波散乱係数を含む超音波属性に影響することはよく知られている。ある例示的な実施形態では、この温度依存性が、組織の温度上昇の2D/3Dの空間的マップを生成するために利用される。より特定的には、磁気温熱療法から帰結する磁場の印加によって誘起された加熱に対応する2D/3Dの空間的マップが計算できる。さらに、計算された温度プロファイルおよび受け取られた熱投下量は次いで、AC磁場の曝露時間、強度、周波数および空間位置を調整するための磁気システムへのフィードバックならびに注入された塊(bolus)の投下量(dosage)および組成の変化を与えるために用いられる。
【0017】
図1は、ある例示的な実施形態に適応され、それとともに用いられうる、組織および造影剤を見ることのできる超音波測定および撮像システムを描いている。これに関し、超音波撮像システム100は、トランスデューサ102、RFスイッチ104、送信機106、システム・コントローラ108、アナログ‐デジタル変換器(ADC)110、時間利得制御増幅器112、ビーム形成器114、フィルタ116、信号プロセッサ118、ビデオ・プロセッサ120およびディスプレイ122を有しうる。トランスデューサ102は、RFスイッチ104に電気的に結合されうる。RFスイッチ104は、図のように、送信機106から結合される送信入力およびトランスデューサ102に電気的に結合されるトランスデューサ・ポートをもって構成されうる。RFスイッチ104の出力は、ADC110に電気的に結合され、その後時間利得制御増幅器112による処理にかけられうる。時間利得制御増幅器112はビーム形成器114に結合されうる。ビーム形成器114はフィルタ116に結合されうる。フィルタ116はさらに信号プロセッサ118に結合され、それがさらにビデオ・プロセッサ120におけるさらなる処理につながりうる。ビデオ・プロセッサ120は、ディスプレイ122への入力信号を供給するよう構成されうる。システム・コントローラ108は、送信機106、ADC110、フィルタ116ならびに信号プロセッサ118およびビデオ・プロセッサ120の両方に結合されうる。該さまざまな機器のそれぞれに必要なタイミング信号を与えるためである。
【0018】
当業者は理解するであろうように、システム・コントローラ108およびその他のプロセッサ、たとえばビデオ・プロセッサ120および信号プロセッサ118は、超音波撮像システム100の全体的な動作を協調させるために、一つまたは複数のプロセッサ、コンピュータおよびその他のハードウェアおよびソフトウェア・コンポーネントを含みうる。RFスイッチ104は、超音波撮像システム100の送信機106を、図1に示されている残りの要素からなる超音波応答受信および処理部から孤立させる。
【0019】
図1に示されているシステム・アーキテクチャは、送信機106内で生成される電子的な送信信号を提供する。該送信信号は、ここで超音波線115によって図示されている一つまたは複数の超音波圧力波に変換される。超音波線115が超音波照射の受容性のある組織層113に遭遇するとき、複数の送信イベントまたは超音波線115が組織113に浸透する。複数の超音波線115の大きさが組織113の減衰効果を超えている限り、複数の超音波線115は内部標的または関心のある組織121に到達する。内部標的または関心のある組織121は以下では関心のある組織と称する。当業者は、超音波インピーダンスの異なる組織間の組織境界または交わりが、複数の超音波線115の基本周波数の高調波において超音波応答を発達させることを認識するであろう。
【0020】
図1にさらに示されているように、そのような高調波応答は、超音波反射117によって描かれうる。横切る組織層113からの減衰効果を超える大きさの超音波反射117は、RFスイッチ104およびトランスデューサ102の組み合わせによってモニタリングされ、電気信号に変換されることができる。超音波反射117の電気的表現は、ADC110において受信されることができ、そこでデジタル信号に変換される。ADC110の出力に結合された時間利得制御増幅器112は、ある特定の超音波線115が組織層113を横切るのに必要とした総時間との関係で増幅を調整するよう構成されていてもよい。このようにして、比較的浅いオブジェクトから生成された超音波反射117が大きさにおいて、トランスデューサ102からさらに遠ざかった被照射オブジェクトから生成された超音波反射117を圧倒しないよう、一つまたは複数の関心のある組織121からの応答信号は利得補正されることになる。
【0021】
時間利得制御増幅器112の出力は、ビーム形成器114、フィルタ116および信号プロセッサ118を介してビーム形成され、フィルタ処理され、復調されうる。処理された応答信号は次いで、ビデオ・プロセッサ120に転送されうる。次いで応答信号のビデオ・バージョンがディスプレイ122に転送されうる。そこで応答信号画像が閲覧されうる。当業者はさらに、超音波撮像システム100が、一つまたは複数の画像および/またはオシロスコープ跡を、操作者にとって有用なその他の表にしたおよび/または計算された情報とともに生成するよう構成されていてもよいことを認識するであろう。
【0022】
図2は、ある例示的な実施形態とともに用いられうる簡略化された磁気温熱療法システム200を描いている。磁気温熱療法システム200は、これに限られないが、RF発生器204によって生成されるRF信号の周波数と、磁石/コイル208によって生成される特定の電磁場強度を達成するために必要とされる増幅器206の利得とを制御する制御ユニット202を含む。
【0023】
ある実施形態では、磁性ナノ粒子210が、超音波造影剤として使用される微小バブル(図示せず)内部に埋め込まれるか、その外側に取り付けられるかしうる。それは、標的化剤をもつ特定の部位への磁性粒子210の蓄積を超音波によってモニタリングすることが可能であるような仕方でである。別の実施形態では、リアルタイムの超音波データを使って、関心のある組織121における温度および熱投下量レベルを推定してもよい。計算された熱投下量は、次いで、磁気温熱療法制御システムにフィードバックを与えてさまざまな動作パラメータを調節するために利用されうる。動作パラメータは、これに限られないが、AC電磁場の電磁場強度、周波数、継続時間および空間分布を含む。任意的に、さらにもう一つの実施形態では、高い強度の超音波を使って、造影剤中の微小バブルを破壊して、温熱状態(hyperthermia)が達成されたのちに埋め込まれている薬物を放出してもよい。これにより、磁気温熱療法と薬物送達の機能および治療効果の組み合わせが与えられる。
【0024】
本発明において使われるべき磁性ナノ粒子210としては、電磁エネルギーを吸収して発熱反応を引き起こし、人体に無害である限り、いかなる物質を使ってもよい。人体によって吸収されにくい周波数をもつ電磁エネルギーを吸収することによって発熱反応を引き起こすものを使うのがとりわけ有利である。もちろん、電磁波の吸収効率がよいので強磁性微粒子が好ましくは使われる。たとえば、磁鉄鉱、フェライトなどといったセラミックまたはパーマロイのような強磁性金属によって例示されうる。さらに、上記した磁性微粒子210は望ましくは粒径約5マイクロメートル以下、より好ましくは約1マイクロメートル以下である。
【0025】
図3は、今度は参照符号300で表される、本発明のもう一つの例示的な実施形態に基づく、超音波測定および撮像システム100および磁気温熱療法システム200の統合を描いたブロック図である。ある例示的な実施形態では、制御ユニット302が、磁石/コイル208によって生成される特定の磁場強度を達成するためにRF発生器204によって生成されるRF信号の周波数を制御する。制御ユニット302はまた、熱投下量推定器304に接続され、これにデータを提供する超音波システム100をも制御する。熱投下量推定器304は、制御ユニット302へのフィードバックを提供し、制御ユニット302は今度は熱投下量推定器304に基づいて、AC磁場の磁場強度および周波数を制御する。熱投下量推定器304を制御ユニット302、超音波システム100および/または磁気温熱療法システム200とは別個のプロセスまたは機能として扱う例示的な実施形態が図示されているが、該機能性はどこに統合されていてもよい。たとえば、ある例示的な実施形態では、各システム100、200および熱投下量推定器のためのコントローラは単一のコントローラ、プロセスおよび関数に統合されうる。
【0026】
図1〜図3を続けると、ある例示的な実施形態では、超音波システム100のトランスデューサ102は好ましくは、磁気温熱療法過程の際になされる温度決定を容易にするためにアレイとして構成される。ある例示的な実施形態では、後方散乱された高周波(RF)信号がトランスデューサ102から収集される。超音波の飛行時間が組織113、121の温度とともに変わることが示されている。実際、音速および熱膨張の変化は、温度変化(ΔTで表す)に線形に比例し、比例定数は組織113、121の物理的属性によって決定される。したがって、ある基準状況と加熱相の間での、RF信号の測定された時間シフトは次いで、のちに特定されるように、磁気温熱療法をモニタリングおよび制御するために使用されうる。
【0027】
もう一つの実施形態では、制御ユニット302は、超音波フィードバックに基づいて、磁気コイルの空間位置を、関心のある組織121とよりよく整列するよう調整するよう構成されていてもよい。超音波撮像は、処置を必要としている関心のある組織121の位置についてのリアルタイム情報を提供できるので、AC磁石/コイル208は、特定の関心のある組織121を直接標的とするために位置を直され、動かされることができる。結果として、選択された事例では、AC電磁場にかけられる組織113の体積を減らすことが可能でありうる。結果として、温熱療法システム200に対するパワー要件および健全な組織への副作用が軽減または最小化されることができる。
【0028】
規定された機能および所望の処理とともにそのための計算(たとえば、超音波制御、磁気温熱療法制御など)を実行するために、制御ユニット302、202、システム・コントローラ108および他のプロセッサ、たとえばビデオ・プロセッサ120、信号プロセッサ118などは、これに限られないが、プロセッサ、コンピュータ、メモリ、記憶、レジスタ、タイミング、割り込み(interrupt(s))、通信インターフェースおよび入出力信号インターフェースなどならびにこれらのうち少なくとも一つを含む組み合わせを含みうる。さらに、制御ユニット302、202、システム・コントローラ108および他のプロセッサ、たとえばビデオ・プロセッサ120、信号プロセッサ118などは、熱投下量推定などを容易にするために必要とされるような超音波信号の精確なサンプリング、変換、収集または生成を可能にするための信号インターフェースを含みうる。制御ユニット302、202、システム・コントローラ108および他のプロセッサ、たとえばビデオ・プロセッサ120、信号プロセッサ118などの追加的な特徴は、ここで徹底的に議論される。また、いくつかの図面において例示的な実施形態を記述する目的のために機能性の特定の分割が描かれているが、そのような分割はあくまでも解説のためのものである。前記のさまざまなコントローラ、プロセッサなどのいずれの機能性も、開示される実施形態の実用を容易にするいかなる所望の仕方で分割および/または分散することも容易になしうる。
【0029】
さらに、制御ユニット202、302および/またはシステム・コントローラ108および他のプロセッサが、命令実行システム、装置またはデバイスによって、あるいはこれと関連して使用するための任意のコンピュータ可読媒体において具現されることのできる、論理的な機能を実装するための実行可能命令の順序付けられたリストを有するソフトウェアを含んでいてもよいことは認識されるであろう。該命令実行システム、装置またはデバイスは、コンピュータ・ベースのシステム、プロセッサを含むシステムまたは他のシステムといった、命令実行システム、装置またはデバイスから命令を取ってきて該命令を実行することができるものである。
【0030】
図4は、概括的に400として示されるある例示的な実施形態の方法論を例示するフローチャートを描いている。ある実施形態では、手順は、プロセス・ブロック402に描かれるように、埋め込まれた磁性ナノ粒子をもつ標的にされる造影剤を含む(たとえば静脈内か動脈内の)塊の投与をもって開始される。プロセス・ブロック404において描かれるように、基準超音波データ・セットが(可能性としては、そして好ましくは連続的に)取得される。超音波データ・セットは、これに限られないが、生のRFデータ・セットまたは信号処理されたAライン・データまたはBモード画像を含みうる。プロセス・ブロック406において描かれるように、温熱療法プロセスを開始するために、磁場強度および周波数などについての選択された初期パラメータ・セットを用いてAC磁場が加えられる。初期パラメータ・セットは所望の熱投下量に近い温熱療法を開始することが望まれるが、それは必須ではない。実は、有利には、開示される諸実施形態は、特に、初期の電磁場強度および周波数の選択の曖昧さに対処する。諸パラメータについて本質的には任意に低い設定から始めて、開示されるシステムの閉ループの性質が自動的に補償する。温度測定データが、より多い/少ない投下量が必要とされていることを示すとき、電磁場は自動的に調節される。この手法は、初期の電磁場強度および継続時間を選択するための、既存の温熱療法アプリケーションに内在的な曖昧さを、本質的に解消する。
【0031】
プロセス・ブロック406の磁場印加と実質的に並行して、プロセス・ブロック408で描かれるように超音波データが取得される。超音波データは、基準データ状態(単数または複数)とともに使われて、プロセス・ブロック410に描かれているように、温度分布、よって組織内での熱投下量の決定を容易にする。次いで組織中のさまざまな点について投下量レベルが計算される。投下が十分でない場合、磁場パラメータは調整され、判断・ブロック412およびプロセス・ブロック414に描かれるように、要求される投下量レベルが達成されるまでプロセスは続く。もちろん、投下量が十分であれば、磁場は除去され、プロセスは終了する。
【0032】
任意的に、さらにもう一つの例示的な実施形態では、磁性ナノ粒子は、超音波造影剤として使われる微小バブル中に埋め込まれることができる。微小バブルを破壊するようより高い強度の超音波音場が印加されて、それにより治療薬物が放出されてもよい。
【0033】
さらに、例示的な実施形態を記述するために個別的なセンサーおよび用語法が挙げられているが、そのようなセンサーは単に解説のために記述されているのであって、限定のためではない。数多くの変形、代替および等価物が本稿の開示を考察する者には明白であろう。
【0034】
まとめると、開示される本発明は、有利には、実施形態によっては超音波温度検知およびフィードバックを含む、制御された磁気温熱療法を許可し、容易にする。さらに、開示されるシステムおよび方法論は、癌治療または超音波モニタリング療法の用途に特に向けられうる。たとえば、本発明の諸実施形態は、特定部位、特に標的とされる組織/腫瘍の感度が温熱療法適用によって高められているところでの標的化された治療薬物施与を含んでいてもよい。開示されるシステムおよび方法論は、磁気温熱療法の熱投下のために事実上制御されない「反復的(iterative)な」プロセスに頼っている操作者、特に医師に著しい恩恵を提供する。実際、開示されるシステムおよび方法論は、温熱療法プロセスのフィードバック制御に特に取り組む測定および制御手段を提供する。開示されるシステムおよび方法論のある追加的な利点は、磁気温熱療法が、より精確な温熱療法投下に基づいて実行でき、隣接する標的にされていない組織への影響が軽減された、低められた患者への投下量につながることができるということである。
【0035】
これまでの数多くの実施形態において記載されているシステムおよび方法論は、磁気温熱療法処置、特に影響を受ける組織における温度上昇分布の超音波ベースのモニタリングのための装置のためのシステムおよび方法を提供する。さらに、開示される発明は、それらのプロセスを実施するためのコンピュータ実装されるプロセスおよび装置の形で具現されてもよい。本発明は、フロッピー(登録商標)・ディスケット、CD-ROM、ハード・ドライブまたは他の任意のコンピュータ可読記憶媒体といった可触媒体306において具現された命令を含むコンピュータ・プログラム・コードの形で具現されることもでき、前記コンピュータ・プログラム・コードがコンピュータにロードされ、コンピュータによって実行されると、コンピュータが本発明を実施するための装置となるのでもよい。本発明はまた、記憶媒体に記憶されているか、コンピュータにロードされおよび/またはコンピュータによって実行されるか、あるいはデータ信号308として何らかの伝送媒体を通じて送信されるかにかかわらず、コンピュータ・プログラム・コードの形で具現されることもでき、該送信は変調された搬送波としてであってもなくてもよく、該伝送媒体を通じてというのは電気配線またはケーブルを通じて、光ファイバーを通じてまたは電磁放射を介してといったものであり、前記コンピュータ・プログラム・コードがコンピュータにロードされ、コンピュータによって実行されると、コンピュータが本発明を実施するための装置となるのでもよい。汎用マイクロプロセッサ上で実装されるとき、前記コンピュータ・プログラム・コード・セグメントは前記マイクロプロセッサを、特定の論理回路を作るように構成する。
【0036】
特に記されていない限り、類似の項目を表すための「第一」「第二」または他の同様の用語法の使用がいかなる特定の順序を指定することを意図したものでもないことは理解されるであろう。同様に、特に記されていない限り、「ある」または他の同様の用語法の使用は、「一つまたは複数」を意味することを意図されている。
【0037】
本発明について例示的な実施形態を参照して記述してきたが、当業者は、本開示はそのような例示的な実施形態に限定されず、本発明の範囲から外れることなくさまざまな変更をしてもよく、その要素について等価物をもって代替してもよいことは理解するであろう。さらに、本発明の教示に対して、その本質的な精神または範囲から外れることなく、特定の状況または物質に適応するためにさまざまな修正向上および/または変形がなされてもよい。したがって、本発明は、本発明を実行するために考えられている最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されることは意図されておらず、本発明は付属の請求項の範囲内にはいるあらゆる実施形態を含むことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のある例示的な実施形態に基づく超音波撮像システムを描いた図である。
【図2】ある例示的な実施形態とともに用いられうる磁気温熱療法システムを示す図である。
【図3】本発明のもう一つの例示的な実施形態に基づく、超音波測定および撮像システムと磁気温熱療法システムとの統合を描いたブロック図である。
【図4】ある例示的な実施形態に基づいて磁気温熱療法を制御するために超音波温度測定を用いる方法論のフローチャートを描いたブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の方法であって:
関心のある組織に対応する超音波データの基準セットを収集する段階と;
関心のある前記組織に複数の磁性ナノ粒子を加える段階と;
温熱療法を開始するために一組の動作パラメータに基づいて電磁場を加える段階と;
前記関心のある組織に対応する超音波データのもう一つのセットを収集する段階と;
超音波データの前記基準セットと、超音波データの前記もう一つのセットとに基づいて温度変化を決定する段階とを有する方法。
【請求項2】
前記温度変化に基づいて、電磁場を加える前記段階に対応する投下量が不十分である場合には、前記一組の動作パラメータを調節し、該調節された一組の動作パラメータに基づいて別の電磁場を加え、
そうでない場合には、前記電磁場を加えることを終了させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
電磁場を加える前記段階が、ユーザーによって開始されるまたは前記決定に基づいて自動的に開始されるうちの少なくとも一方で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記磁性ナノ粒子を、超音波造影剤の複数の微小バブルの内側または上に埋め込むことをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
超音波造影剤の微小バブルを破壊するために高強度の超音波エネルギーを加える段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記超音波造影剤の前記微小バブルを介して薬または薬物を送達することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記電磁場を加える前記段階にかけられる組織の体積を減らすために前記電磁場を生成する手段の位置を直す段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
位置を直して前記体積を減らす前記段階が、該段階がなければ前記電磁場を加える前記段階のために要求されたはずのパワーの低下につながる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記位置を直すことが、前記関心のある組織との整列を高めるのを容易にする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御のためのシステムであって:
実質的に関心のある組織に配された複数の磁性ナノ粒子と;
前記関心のある組織に対応する少なくとも温度測定データを与えるよう構成された超音波システムと;
一組の動作パラメータに対応する電磁場を関心のある組織に加えるよう構成された磁気温熱療法システムと;
前記超音波システムおよび前記磁気温熱療法システムと動作可能な通信状態にあり、関心のある組織に対応する前記少なくとも温度測定データに基づいて前記電磁場を加えるという前記磁気温熱療法システムへのコマンドを生成するよう構成されたコントローラとを有する、システム。
【請求項11】
前記コントローラが、前記温度変化に基づいて、電磁場を加える前記段階に対応する投下量が不十分である場合には、前記一組の動作パラメータを調節し、該調節された一組の動作パラメータに基づいて別の電磁場を加えるという前記磁気温熱療法システムへの別のコマンドを生成し、
そうでない場合には、前記電磁場を加えることを終了させることをさらに含む請求項10記載のシステム。
【請求項12】
電磁場を加える前記段階が、ユーザーによって開始されるまたは前記超音波システムからのフィードバックに基づいて自動的に開始されるうちの少なくとも一方で行われる、請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記磁性ナノ粒子が、超音波造影剤の複数の微小バブルの内側または上に埋め込まれている、請求項10記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、超音波造影剤の微小バブルを破壊するために高強度の超音波エネルギーを加えるという前記超音波システムへのコマンドを生成する、請求項10記載のシステム。
【請求項15】
前記超音波造影剤の前記微小バブルが薬または薬物を送達するよう構成されている、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記電磁場にかけられる組織の体積を減らすために前記磁気温熱療法システムの前記電磁場を生成する手段が位置を直される、請求項10記載のシステム。
【請求項17】
前記の位置を直して前記体積を減らすことが、そうされなければ前記電磁場のために要求されたはずのパワーの低下につながる、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記位置を直すことが、前記関心のある組織との整列を高めるのを容易にする、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御のためのシステムであって:
関心のある組織に対応する超音波データの基準セットを収集する手段と;
前記関心のある組織に複数の磁性ナノ粒子を加える手段と;
温熱療法を開始するために一組の動作パラメータに基づいて電磁場を加える手段と;
前記関心のある組織に対応する超音波データのもう一つのセットを収集する手段と;
超音波データの前記基準セットと、超音波データの前記もう一つのセットとに基づいて温度変化を決定する手段とを有するシステム。
【請求項20】
超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の方法をコンピュータに実装させる命令を含む機械可読コンピュータ・プログラム・コードをエンコードされた記憶媒体であって、前記方法が:
超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の方法であって:
関心のある組織に対応する超音波データの基準セットを収集する段階と;
関心のある前記組織に複数の磁性ナノ粒子を加える段階と;
温熱療法を開始するために一組の動作パラメータに基づいて電磁場を加える段階と;
前記関心のある組織に対応する超音波データのもう一つのセットを収集する段階と;
超音波データの前記基準セットと、超音波データの前記もう一つのセットとに基づいて温度変化を決定する段階とを有する、記憶媒体。
【請求項21】
超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の方法をコンピュータに実装させる命令を有するコンピュータ・データ信号であって、前記方法が:
超音波温度測定を使った磁気温熱療法制御の方法であって:
関心のある組織に対応する超音波データの基準セットを収集する段階と;
関心のある前記組織に複数の磁性ナノ粒子を加える段階と;
温熱療法を開始するために一組の動作パラメータに基づいて電磁場を加える段階と;
前記関心のある組織に対応する超音波データのもう一つのセットを収集する段階と;
超音波データの前記基準セットと、超音波データの前記もう一つのセットとに基づいて温度変化を決定する段階とを有する、コンピュータ・データ信号。
【請求項22】
超音波撮像を用いる磁気温熱療法の方法であって:
造影剤の複数の微小バブルの内側またはその上に複数の磁性ナノ粒子を埋め込む段階と;
前記複数の磁性ナノ粒子を関心のある組織に加える段階と;
前記関心のある組織に対応する超音波データを収集する段階と;
電磁場を加えて温熱療法を開始する段階とを含む方法。
【請求項23】
前記超音波データが、前記関心のある構造における前記複数の磁性ナノ粒子の濃度を示す画像を生成するために用いられる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記複数の微小バブルを破壊するよう高強度の超音波エネルギーを加えることによって、前記造影剤の前記複数の微小バブルを介して薬または薬物を送達することをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
超音波撮像を用いた磁気温熱療法のためのシステムであって:
造影剤の複数の微小バブルの内側またはその上に埋め込まれた複数の磁性ナノ粒子と;
前記関心のある組織に対応する撮像データを提供するよう構成された超音波撮像システムと;
前記関心のある組織に電磁場を加えるよう構成された磁気温熱療法システムとを含むシステム。
【請求項26】
前記撮像データが、実質的に前記関心のある組織に配されている前記複数の磁性ナノ粒子の存在を確かめるために用いられる、請求項25記載のシステム。
【請求項27】
前記微小バブルを破壊するよう高強度の超音波エネルギーを加えることによって前記造影剤の前記微小バブルを介して送達される薬または薬物をさらに含む、請求項25記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502395(P2009−502395A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524628(P2008−524628)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052371
【国際公開番号】WO2007/015179
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】