説明

磁気記録再生装置

【課題】磁性層の厚さが異なる帯状磁気媒体を複数列を隙間なく又は近接させて備える可撓性磁気記録媒体に対して、簡易な磁気ヘッドとパッドローラの構成により、正確な記録再生と小型で安価な装置を提供する。
【解決手段】磁気記録部は厚さが異なる複数の磁性層を含み、磁気ヘッド1は前記複数の磁性層各々に対応して情報を記録再生する複数のコア部8、9を1つのヘッドケーシング2内に収容し、パッドローラ5は複数のコア部8、9の各々に対応する複数の別体ローラ3、4よりなり、複数の別体ローラ3、4は1つの支持軸10に回転可能に軸方向に規制部13によって規制、支持され且つ付勢手段11により、複数の磁性層を前記コア部8、9に密着させるように磁気ヘッド1側へ付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性磁気記録媒体に形成された磁気情報記録部に対して磁気情報の記録再生を行う磁気記録再生装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、磁気記録再生装置の磁気ヘッド及び該磁気ヘッドのコア部を押圧するパッドローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、可撓性磁気記録媒体とは、紙またはプラスチックなどの可撓性素材からなるシート状の磁気記録媒体である。例えば、回数券、商品券,金券、航空チケットとして一回限りの使用でその目的を終えるものや、クレジットカード、キャッシュカード、身分証明書用カードのように有効期間である限り半永久的に反復使用されるものの他、例えばテレフォンカードやオレンジカードなどのプリペイドカードのように各種サービスの代金決済などのため繰り返し使用されるものなど多様である。
【0003】
特に、可撓性磁気記録媒体の中でも磁気情報によるプリペイド機能を備えるプリペイドカードは、比較的安価に製造できることから市場に広く流通し様々な分野で利用拡大している。また、テレフォンカードやオレンジカード等の従来のプリペイドカードは、その磁気情報記録部に特定の商品サービスの対価としての交換価額に換算可能な磁気情報が記録された可撓性磁気記録媒体であったが、最近は商品サービスを限定しない汎用性ある貨幣価値そのものである電子マネーが記録された可撓性磁気記録媒体としてのプリペイドカードが登場している。
【0004】
しかし一方で、これら可撓性磁気記録媒体の情報漏洩による偽造などが社会問題となっており、セキュリティ性の高いシステムの構築が必要とされている。そのため、これらの可撓性磁気記録媒体には、特性の異なる磁気情報を記録する複数の磁気情報記録部を設けセキュリティ性を高めている。具体的には、貨幣価値情報が記録された磁気情報記録部である磁気ストライプの他に、カードの属性や使用状況マーク等のセキュリティ情報が記録された磁気情報記録部として磁気バーコード等を設け、磁気ストライプへの不正な記録再生を防止する手段としている。
【0005】
従来、このような可撓性磁気記録媒体に対して特性の異なる複数種類の磁気情報を記録再生する磁気記録再生装置は、磁気バーコード用、各種磁気ストライプ用等の磁気情報記録部の種類に応じて、各々別個に磁気ヘッド及び当該磁気ヘッドのコア部を押圧するパッドローラの組み合わせセットを複数組設け、それぞれ独立に作動する構成としている。例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2001−331903号公報
【0006】
また、従来は、可撓性磁気記録媒体上の磁気ストライプや磁気バーコード等は離間して配置されていたが、最近は、カード等媒体デザインの自由度を確保しつつ、特性の異なる複数種類の磁気情報によりセキュリティ性を維持するため、磁気バーコードや磁気ストライプ等の帯状の磁気情報記録部を複数列隙間なく近接させて備えるとともに、これら磁気情報記録部を形成する磁性層の磁性層の厚さを異ならせた可撓性磁気記録媒体が提案されている。その上、これら可撓性磁気記録媒体を普及汎用型のプリペイドカードとして一層普及させるため、一般小売店等の店頭に設置できる小型で安価な簡易型磁気記録再生装置が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の磁気記録再生装置では、情報記録部の種類に応じて、各々別個に磁気ヘッド及びパッドローラの組み合わせセットを複数組設けているので、装置が大型化しコストが掛かるという問題がある。その上、磁気情報記録部を隙間なく又は近接して複数列配置した可撓性磁気記録媒体に対応するためには、各磁気情報記録部に対応する磁気ヘッド及びパッドローラの複数のセットが互いに干渉しないように配置する必要があり、例えば可撓性磁気記録媒体の搬送方向に並べて配置する場合は、媒体搬送路が長くなるので媒体処理時間が長くなり、小売店の店頭等での使用に適さないという問題がある。
【0008】
また、各々分離独立した磁気ヘッドとパッドローラのセットを媒体幅方向に並列配置し各磁性層に追従させ記録再生する場合は、可撓性磁気記録媒体上の各磁性層が隙間なく又は近接配置されているため、複数組の磁気ヘッド及びパッドローラの離間を極めて狭く設定・調整することは困難であり、その調整のため部品点数が増加するという問題がある。
【0009】
一方、小型化のために、磁気ヘッドやパッドローラを共通化する場合は、接して配列された厚さの異なる磁性層よりなる複数列の磁気情報記録部を備える可撓性磁気記録媒体の場合は、磁性層の厚さには5〜10μmの差があるため、厚い側の磁性層と磁気ヘッドのコアの接触が密になる一方で、薄い側の磁性層とコアとの間に間隔(スペーシング)が発生してしまい、磁気情報記録部と磁気ヘッドの接触が不安定になるので、磁気情報の正確な記録再生ができないというスペーシングロスが発生しこれを解消できないという問題がある。即ちスペーシングロスは、主に磁気バーコードやシリアル磁気コード等の磁気情報記録部を形成する各磁性層の厚さの差と媒体の変形に起因して、磁気ヘッドが磁性層上の磁力線の集中部における励起電流の検出が十分にできないという現象であり、一般にはパッドローラを磁気ヘッドに対して押圧付勢して対策されるが、隙間なく又は近接して配列された磁性層の厚さに差がある場合は、これのみでは解消し得ないのである。
【0010】
このようなスペーシングロスを防止する方法として、磁気ヘッドのコア部における磁性層の当接面を5〜10μm研磨することで、コア部ともう一方のコア部の間に間隔(スペーシング)相当の差を設け、可撓性磁気記録媒体を磁気ヘッドに押圧する際に、各磁性層とコア部を噛合させる方法がある。しかし、この方法では、高度精密なヘッドコアの研磨加工が必要であり、またそのための専用設備の投資等が必要となるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の課題は、磁気バーコードやシリアル磁気コード等の磁性層の厚さが異なる帯状の磁気情報記録部を複数列を隙間なく又は近接させて備える可撓性磁気記録媒体に対して、簡易な磁気ヘッドとパッドローラの構成により、正確な磁気情報の記録再生ができるとともに、小型で安価な磁気記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数の磁気情報記録部を有する可撓性磁気記録媒体に対して磁気情報を記録再生するために、前記磁気情報記録部各々に対応する磁気ヘッドとパッドローラを備え、前記パッドローラで前記磁気ヘッドに対して前記可撓性磁気記録媒体を付勢するようにした磁気記録再生装置において、前記磁気記録部は厚さが異なる複数の磁性層を含み、前記磁気ヘッドは前記厚さが異なる複数の磁性層各々に対応して磁気情報を記録再生する複数のコア部を1つのヘッドケーシング内に収容してなるとともに、前記パッドローラは前記複数のコア部の各々に対応する複数の別体ローラよりなり、該複数の別体ローラは1つの支持軸に回転可能に軸方向に規制部によって規制されながら支持され且つ付勢手段により、各々前記厚さが異なる複数の磁性層を前記コア部に密着させるように、前記可撓性磁気記録媒体を前記磁気ヘッド側へ付勢することを特徴としている。
【0013】
このように、磁気記録再生装置は、複数の異なる厚みをもつ磁気情報記録部を記録再生する複数のコア部を1つのヘッドケーシング内に収容するとともに、複数のコア部の各々に対応する複数の別体ローラを1つの支持軸より支持している。そのため、上記磁気情報記録部の厚みの差を、前記パッドローラと前記支持軸との嵌めあい公差で許容することができ、各パッドローラが互いに干渉せずに前記可撓性磁気記録媒体を前記磁気ヘッド側へ押圧、付勢することができる。
【0014】
これにより、複数の異なる厚みをもつ磁気情報記録部を記録再生するにも関わらず、限られた磁気記録再生装置内の空間に実質的に複数のパッドローラ及び磁気ヘッドを分離、配置するのと同様の構成を実現でき、尚且つ部品点数の増加と機構の複雑化を抑えることができる。また、短い媒体搬送路で短時間で媒体処理できる小型の磁気記録再生装置を構成することができる。
【0015】
その上、隙間なく又は近接して複数列配置した厚さの異なる複数の磁性層よりなる磁気情報記録部を有する可撓性磁気記録媒体であっても、別体ローラが厚さが異なる複数の磁性層各々に対応する複数のコア部を磁性層に対し確実に押圧し密着させるので、スペーシングロスが発生することもない。したがって、磁性層の厚さに関係なく、磁気情報記録部と磁気ヘッドの接触が安定することができるので、磁気情報の正確な記録再生ができる。
【0016】
本発明においては、前記パッドローラは前記磁気ヘッド側に前記可撓性磁気記録媒体上に形成された第1の磁性層を付勢する第1の別体ローラと、前記第1の磁性層よりも厚さの薄い第2の磁性層を付勢する第2の別体ローラとを備え、該第2の別体ローラは前記第1の別体ローラ側に逃げ部が形成されていることが好ましい。この場合、前記第2の別体ローラの前記第1の別体ローラ側に逃げ部を形成することにより、可撓性磁気記録媒体を磁気ヘッドに押圧した際に発生する可撓性磁気記録媒体の変形量(媒体撓み)を逃げ部に逃がすことができる。このため、第2の磁性層とコア部を確実に接触させ、安定した磁気情報の記録再生が達成される。
【0017】
本発明においては、前記磁気ヘッドは、前記ヘッドケーシングに、前記可撓性磁気記録媒体上に形成された第1の磁性層に対向する第1のコア部と、前記第1の磁性層よりも厚さの薄い第2の磁性層に対向する第2のコア部とが並列配置され、該第1のコア部と該第2のコア部との間に凹部が形成されていることが好ましい。この場合、ヘッドケーシングの各コア部の間に凹部を設けることにより、可撓性磁気記録媒体が磁気ヘッドに接触しながら媒体搬送路を走行する際の可撓性磁気記録媒体と磁気ヘッドとの媒体当接面の接触面積を減少させ、接触抵抗が低下するため媒体走行時の負荷を低減させ、媒体が安定的に搬送されるので、磁気情報の記録再生を一層確実にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の磁気記録再生装置では、複数の異なる厚みをもつ磁気情報記録部を記録再生する複数のコア部を1つのヘッドケーシング内に収容するとともに、複数のコア部の各々に対応する複数の別体ローラを1つの支持軸より支持している。そのため、上記磁気情報記録部の厚みの差を、前記パッドローラと前記支持軸との嵌めあい公差で許容することができ、各パッドローラが互いに干渉せずに前記可撓性磁気記録媒体を前記磁気ヘッド側へ押圧、付勢することができる。これにより、複数の異なる厚みをもつ磁気情報記録部を記録再生するにも関わらず、限られた磁気記録再生装置内の空間に実質的に複数のパッドローラ及び磁気ヘッドを分離、配置するのと同様の構成を実現でき、尚且つ部品点数の増加と機構の複雑化を抑えることができる。また、短い媒体搬送路で短時間で媒体処理できる小型の磁気記録再生装置を構成することができる。
【0019】
その上、隙間なく又は近接して複数列配置した厚さの異なる複数の磁性層よりなる磁気情報記録部を有する可撓性磁気記録媒体であっても、別体ローラが厚さが異なる複数の磁性層各々に対応する複数のコア部を磁性層に対し確実に押圧し密着させるので、スペーシングロスが発生することもない。したがって、磁性層の厚さに関係なく、磁気情報記録部と磁気ヘッドの接触が安定することができるので、磁気情報の正確な記録再生ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係る磁気記録再生装置のパッドローラと磁気ヘッドの正面図であり、図2は図1の要部の断面拡大図である。図3は本発明の実施の形態に適するプリペイドカードの正面図であり、図4は図3のカード幅(短手)方向における断面の拡大図である。図5は本発明の実施の形態に係る磁気記録再生装置の概略構成を示す平面図である。図6は、図5に示す磁気記録再生装置の側面断面図である。
【0022】
(プリペイドカードの構成)
本形態に適用される可撓性磁気記録媒体としてのプリペイドカードを図3及び図4に示す。このプリペイドカード6には、図3に示すように、主要な磁気情報を記録、再生を繰り返し行うメイン磁気情報記録部60が設けられている。このメイン磁気情報記録部60は、磁気ストライプ601をはじめとする複数の磁気ストライプその他の磁気情報記録手段により構成されている。また、特性の異なる2列の磁気コード即ちシリアル磁気コード602及び磁気バーコード603が設けられている。更に、プリペイドカード6には、文字等を印刷し表示したキャラクタ印字表示部604、パンチ穴部605が等のスペースが設けられている。
【0023】
また、文字等のキャラクタ印字表示部604、パンチ穴部605、シリアル磁気コード602、磁気バーコード603及びメイン磁気情報記録部60等は、互いに重なり合って干渉することのないように配置されている。なお、これら情報の記録又は表示のプリペイドカード6上の配置は上記に限られるものではなく、用途に応じて磁気バーコードを複数箇所に設けたり、範囲の広狭変更したりすることが適宜可能である。
【0024】
そして、プリペイドカード6は、図4に示すように、基材61の表面の全面に第1の磁性層としての高保磁力磁性層62が形成され、さらに、所定の領域には第2の磁性層としての低保磁力磁性層63が高保磁力磁性層62の上に形成されている。具体的には、シリアル磁気コード602は、この高保磁力磁性層62のカードが搬送される方向に沿う最端部に帯状に形成されている。このシリアル磁気コード602に隣接して、磁気バーコード603は、高保磁力磁性層62の上に、5〜10μm厚さの低保磁力の磁気層63を磁気インク印刷等適宜の方法でシリアル磁気コード602と平行に配列して形成されている。なお、カード幅(短手)方向において、シリアル磁気コード602の幅寸法は7.0±1.2mmであり、磁気バーコード603の幅寸法は5.5±0.5mmとなっており、これら2列の磁気コード即ちシリアル磁気コード602及び磁気バーコード603は接して隙間なく又は近接して配置されている。また、メイン磁気情報記録部60には、高保磁力磁性層62上の所定位置に適宜の磁気情報を記録して構成されている。特に、磁気ストライプ601は、磁気バーコード603から約5mm程度離間しこれと平行に設けられている。
【0025】
なお、このようなプリペイドカード6は、比較的小額の個人取引の決済手段として紙幣やコイン同様の頻度でまた比較的粗雑な取り扱いを受けるので、衝撃、カード曲げ、そして静電気に対し強い耐久性が要求される。そのため、好適なプリペイドカードとしては、厚さが0.18〜0.36mmで磁気情報によるプリペイド機能を備えPET(ポリエチレン・テレフテレート)を主材とするものであり、例えば、JISX6310に規定されるカードであって、その物理的特性、形状及び寸法がJISX6311に規定されるカードであるが、このJIS規格に規定するカードには限定されるものではない。
【0026】
(磁気記録再生装置の構成)
本形態に関わる磁気記録再生装置20は、プリペイドカード6のシリアル磁気コード602、磁気バーコード603及び磁気ストライプ601に対する磁気情報の記録又は再生を行うもので、図6に示すように、プリペイドカード6を装置内部に挿入案内するためのカード挿入口21と、装置内部においてプリペイドカード6がされる媒体搬送路としてのカード搬送路22と、プリペイドカード6を搬送する搬送手段としての搬送ローラ23、24、27を備えている。
【0027】
また、カード搬送路22にはプリペイドカード6に形成されたコード602と磁気バーコード603とに対して磁気情報の記録再生を行う磁気バーコードヘッド1、及び磁気ストライプ601に対して磁気情報の記録再生を行う磁気ヘッド15をそれぞれ含む磁気情報記録機構25を備えている。更に、磁気情報記録機構25よりカード搬送路22奥側には、プリペイドカード6のパンチ穴部605にパンチ穴を穿孔するパンチ機構26が配置されている。
【0028】
カード挿入口21は、プリペイドカード6の挿入を案内するように、装置奥側に向かって狭まる斜面により形成され、カード挿入口21の最奥口はプリペイドカード6の厚さ及び幅よりもわずかに大きく、高さ(カード厚さ方向)Hは0.5〜1mm程度に形成され、幅(カード幅方向)Wは約57.5mmに形成されている。
【0029】
また、カード挿入口21近傍の装置奥側には、カード幅の略中央位置に、プリペイドカード6の挿入時の搬送をガイドすると共に異物の挿入を防止する役割を果たす搬送ローラ27、27が上下に設けられている。なお、搬送ローラに代えて、適宜のシャッター開閉機構を設けることもできる。
【0030】
カード搬送路22は、カード挿入口21から装置の奥側に延びてプリペイドカード6が搬送される通路であり、搬送されるプリペイドカード6をガイド規制する上側の上フレーム28と、下側の下フレーム29と、搬送方向に向かって左右側の側辺部30、30とから形成されている。
【0031】
搬送手段としての搬送ローラ23、24は、図5に示すように、カード幅方向において、シリアル磁気コード602、磁気バーコード603及び磁気ストライプ601が形成されている側とは反対側に配置されている。また、搬送ローラ23、24は、カード搬送方向において、パンチ機構26を挟むように配置されるとともに、一方の搬送ローラ23は、磁気情報記録機構25の近傍に配置される。このような配置により、パンチ穴の穿孔や磁気情報の記録において、正確なカード搬送位置の制御を行うことができる。なお、カード搬送手段は、搬送ローラに限らず、搬送ベルトで挟持してカードを搬送する構成であっても、搬送ベルトとパッドローラの組み合わせであっても良く適宜の構成が可能である。
【0032】
さらに、図6に示すように、搬送ローラ24は、カード搬送路22の上側に配置された従動搬送ローラ24aと対向する駆動搬送ローラ24bの間にプリペイドカード6を挟んで搬送する。そして、下側の駆動搬送ローラ24bは図示しないプーリ及びベルトにより相互に連結されるとともに、駆動源のモータに連結され、上側の搬送ローラ24aは回転自在に設けられている。なお、図6には示していないが、搬送ローラ23は、搬送ローラ24と同様に、従動搬送ローラ、駆動搬送ローラを備えている。また、磁気ヘッド15には、そのコア部を押圧するパッドローラ16が形成されている。
【0033】
(磁気情報記録機構の構成)
磁気バーコードヘッド1は、ヘッドケーシング2内に第2のコア部8及び第1のコア部9を支持収納してなる。第2のコア部8はプリペイドカード6のシリアル磁気コード602に対する磁気情報の記録再生等を行うもので、第1のコア部9は磁気バーコード603に記録された磁気情報の記録再生等を行うようになっている。また、プリペイドカード6への磁気情報の記録再生作動の際に、シリアル磁気コード602及び磁気バーコード603に当接するコア部8及び9の当接面は同一平面内に設けられている。
【0034】
また、コア部8及び9の間には凹部7が設けられている。この凹部7によって、プリペイドカード6に対する磁気バーコードヘッド1の接触面積が小さくなるので、プリペイドカード6搬送時の摩擦を小さくでき、良好なカード搬送を実現できる。さらに、凹部7を設けることによって、プリペイドカード6と接触する磁気バーコードヘッド1のコア部8、9を含む接触部の幅を後述するパッドローラ5のフラット部(円柱部)の幅、即ち第2の別体ローラ3及び第1の別体ローラ4の幅の総和よりも狭くすることになるので、パッドローラ5がプリペイドカード6上のシリアル磁気コード602及び磁気バーコード603をコア部8、9に押圧させる接触圧を上昇させることができ、良好な磁気情報の読み取りを実現することができる。
【0035】
ここで、磁気バーコードヘッド1の加工について説明する。シリアル磁気コード602及び磁気バーコード603に当接するコア部8及び9の当接面は、同一平面を形成するように研磨加工されている。この研磨加工は、樹脂等によりヘッドケーシング2内にコア部8及び9をコア窓にコア部8及び9の当接面が臨むように固定した後に、ヘッドケーシング2を保持して同時に研磨するものである。また、凹部7は、ヘッドケーシング2をプレス等で成型する際に、前記のコア窓の間に同時に形成される。このように磁気バーコードヘッド1を加工する場合、スペーシングロス解消するためにコア部8とコア部9の高さにスペーシング相当の差(5〜10μm)を設けるようにコア研磨をするというような特別の高精度な加工は必要ない。そのため、コア部8、9の削磨を行う際、従来の設備でも容易に高度の削磨加工が可能であり、新規設備を必要としない。また、凹部7は、ヘッドケーシング2を成型する際にその金型で同時に加工成型されるので、ヘッドケーシング2への特別な追加工も不要である。
【0036】
次に、パッドローラ5は、支持軸10に回転自在に支持される別体ローラ3、4によって構成され、カード搬送路22の上フレーム28に取り付けられ、磁気バーコードヘッド1のカード搬送路22を挟んで対向する側に設けられている。第2の別体ローラ3と第1の別体ローラ4は、プリペイドカード6のシリアル磁気コード602と磁気バーコード603とを磁気バーコードヘッド1の第2のコア部8、第1のコア部9に対して押圧するようになっている。
【0037】
支持軸10は、軸両端が上フレーム28に設けた図示しないU字軸受けによって上下移動可能に、即ち磁気バーコードヘッド1に対して接近及び離間する方向に支持されるとともに、付勢部材11によってカード搬送路側に付勢されている。従って、パッドローラ5は、対向する磁気バーコードヘッド1に向けて一定の圧力で付勢されており、プリペイドカード6への磁気情報の記録再生作動の際には、シリアル磁気コード602及び磁気バーコード603に対し2つのコア部8、9を押圧して当接させることになっている。
【0038】
なお、本形態の付勢部材11は、1枚の板バネにより構成し、支持軸10の両端にバッド圧をかけ、第2の別体ローラ3、第1の別体ローラ4をパッドローラ5全体として、磁気バーコードヘッド1側へ付勢する付勢部材11としている。また、別体ローラを摩擦係数の低い樹脂材料により形成して、直接板バネで付勢する構成としても良い。付勢部材11としては、トーションバネ等の付勢部材を用いることもできる。
【0039】
パッドローラ5の別体ローラ3、4は、それぞれ独立の回転体であり、規制部13によって軸方向への位置ずれを規制されている。規制部13は、別体ローラ3、4が磁気バーコードヘッド1のコア部8、9に対向する位置に配置されるように位置ずれを防止するもので、搬送路22の上フレーム28に一体に設けられている。なお、支持軸10にEリング等により設けることもできる。要は、第2の別体ローラ3、第1の別体ローラ4の軸方向の幅と第2のコア部8、第1のコア部9の幅とを考慮して、シリアル磁気コード602及び磁気バーコード603への磁気情報の正常な記録再生が可能な範囲で別体ローラ3、4の位置ずれを防止できれば、規制部13はどのような構成であっても良い。
【0040】
別体ローラ3、4の回転軸方向の端面には別体ローラ3、4の本体よりも直径の小さいリング状の鍔部3a,4aが支持軸10周りに形成されており、別体ローラ3、4の間の鍔部3aにより別体ローラ3、4の相互の回転干渉を防止できる。また、規制部13と別体ローラ3、4との摩擦接触による回転への影響を防止することができる。なお、鍔部3a,4aは、別体ローラ3、4の少なくともひとつの各端面に設ければ十分機能するが、各端面に設けてもよい。
【0041】
次に、プリペイドカード6のシリアル磁気コード602を押圧する第2の別体ローラ3は、磁気バーコード603を押圧する第1の別体ローラ4側にプリペイドカード6を押圧した際に第1の別体ローラ3側に生じるカードの撓み部を逃がす逃げ部12が形成してある。本実施の形態では、逃げガタの総和寸法が磁気バーコードヘッド1の第2のコア部8の幅よりも大きくなるように、且つ第2の別体ローラ3に0.5〜1.0mm程度の面取りが逃げ部12として形成されている。なお、パッドローラ5の面取りは、第2の別体ローラ3のフラット部(円柱部)の厚さ寸法と別体ローラ3のスラスト媒体厚、媒体材質、チャンネルの間隔寸法からカードの変形量を総合的に考慮した上で設定することが好ましい。また、同様の逃げ部を別体ローラ4の別体ローラ3と対向する側にも補助的に設けることもできる。
【0042】
さらに、別体ローラ3、4の内径と支持軸10の外径の間には、公差0.01mmのガタを設けてあり、別体ローラ3と別体ローラ4の2つの別体ローラで最大0.02mmの公差を確保している。従って、薄い磁性層(第2の磁性層)シリアル磁気コード602と厚い磁性層(第1の磁性層)磁気バーコード603の磁性層厚さの差D(5〜10μm)を解消可能な範囲において、別体ローラ3と別体ローラ4が実質的に独立のパッドローラとして機能しリペイドカード6を押圧する。即ち、それぞれ別体ローラ3がシリアルバーコード602を、別体ローラ4が磁気バーコード603を各磁性層の厚さに追従して押圧するので、磁性層の厚さ差Dを解消し、スペーシングロスの発生を防止できる。
【0043】
磁気ヘッド15は、磁気ストライプ601に記録された磁気情報の記録再生を行うもので、プリペイドカード6の磁気情報の方式種類により多チャンネルヘッド等適宜の構成を選択できる。図6に示すように、この磁気ヘッド15とカード搬送路22を挟んで対向するようにパッドローラ16が配置されている。そして、パッドローラ16は、板バネ等の付勢部材11により磁気ヘッド15側に付勢され、プリペイドカード6の磁気ストライプ601を磁気ヘッド15に対し押圧している。また、パッドローラ16、パッドローラ5及び搬送ローラ23の従動ローラ23aは、同一直線上に各々が軸支されていることが望ましい。
【0044】
(カードの処理動作)
以上のように構成された磁気記録再生装置20におけるプリペイドカード6との処理動作を図5及び図6を用いて説明する。
【0045】
プリペイドカード6は、ユーザによってカード挿入口21からパッドローラ27にガイドされて磁気記録再生装置20の内部に挿入される。プリペイドカード6の先端が磁気バーコードヘッド1及び磁気ヘッド15及び搬送ローラ23の位置に到達すると図示しないセンサがプリペイドカード6の到達を検知して、搬送ローラ23が駆動され、磁気バーコードヘッド1及び磁気ヘッド15による磁気情報の記録再生処理が開始される。なお、プリペイドカード6は、手動挿入及び搬送ローラ23、24による搬送の間、搬送路22に沿って、上フレーム28と下フレーム29とによりカード厚さ方向の動きが規制され、且つカード搬送方向左右の側辺部30、30によりカード幅(短手)方向の規制を受けてガイドされる。
【0046】
磁気情報の記録再生処理は、まず、低保磁力の磁気層63で構成される磁気バーコード603に対する再着磁が磁気バーコードヘッド1のコア部9でなされ、そのバーコード情報の読取とともにシリアル磁気コード602の情報読取が磁気バーコードヘッド1のコア部8、9で行われる。これにより、図示しない上位装置等の情報処理処理装置によって、これら情報に基づきカード属性及びセキュリティ確保等の確認がなされ、取引の可否が判断される。
【0047】
プリペイドカード6に問題が発見されず取引が可能と判断された場合、更に、メイン磁気情報記録部60の磁気ストライプ601の貨幣価値や使用度数の残高やその他の磁気情報(以下「残高情報等」という)の読取が磁気ヘッド15によりなされる。この残高情報等は上位装置に送信されて所定の取引決済処理がなされた後、更新されて新たな残高情報等として磁気記録再生装置20に送信され、磁気ヘッド15によりプリペイドカード6の磁気ストライプ601に書き込まれる。このようなプリペイドカード6に対する記録再生がなされる間、搬送ローラ23は書込及び読取の工程に応じて適宜に順送及び逆送の作動を繰り返す。
【0048】
磁気ストライプ601に対する更新された残高情報等の書込が終了した後、プリペイドカード6は搬送ローラ23及び24により装置奥側のパンチ位置に挟持された状態で搬送され、パンチ機構26によって上位装置の指示または残高情報等の内容に従う所定の位置にパンチ穴を穿孔される。この穿孔の際に、プリペイドカード6は、搬送ローラ23及び24は挟持されているので、正確に位置決めされ位置ずれすることもない。
【0049】
プリペイドカード6は、以上のような記録再生等の処理が行われた後、搬送ローラ23及び24により、挿入口21に向かって返送され、ユーザに返却される。なお、プリペイドカード6のアプリケーションによっては、カード挿入口21に向かって返送されず更に次の処理のために装置奥側に搬送される場合もある。また、前述の磁気バーコード603及びシリアル磁気コード602の情報読取に基づくセキュリティ確保等の確認で取引が可能と判断された場合も、プリペイドカード6は搬送ローラ23によりユーザに返却されるか又は搬送ローラ23及び24により磁気記録再生装置20奥側の不正カード回収部や排出口に搬送される。
【0050】
(本形態の効果)
以上説明したように、本形態の磁気記録再生装置20では、磁気情報の記録再生処理がなされる際、プリペイドカード6の厚さの異なるシリアル磁気コード602と磁気バーコード603に対して、パッドローラ5の第2の別体ローラ3、第1の別体ローラ4がそれぞれ独立に押圧力を加えて、シリアル磁気コード602及び磁気バーコード603と対向する第2のコア部8、第1のコア部9とを確実に密着させるとともに、同一の支持軸10に対する第2の別体ローラ3、第1の別体ローラ4の取り付け公差が二つの磁性層602及び603の厚さの差Dによって生ずる間隔(スペーシング)を解消してスペーシングロスの発生を防止することができる。
【0051】
さらに、本形態では、第2の別体ローラ3、第1の別体ローラ4について、同一の付勢部材11と支持軸10を用いることにより、磁気記録再生装置20内の制限のある空間において、複数のパッドローラを分離、配置することを可能とし、尚且つ部品点数の増加と機構の複雑化を抑えることができる。
【0052】
また、本形態では、プリペイドカード6を別体ローラ3、4で磁気バーコードヘッド1のコア部8と9に押圧した際に、薄い磁性層(第2の磁性層)よりなるシリアル磁気コード602と厚い磁性層よりなる磁気バーコード603との間に生じるカードの撓みを、別体ローラ3に面取り形成された逃げ部12に逃がすことにより、シリアル磁気コード602と第2のコア部8との接触及び磁気バーコード603と第1のコア部9との接触を一層安定させることができる。
【0053】
本形態では、磁気バーコードヘッド1のコア部8、9の間に凹部7を設けることにより、プリペイドカード6が磁気バーコードヘッド1に接触しながらカード搬送路22を走行する際に、プリペイドカード6と磁気バーコードヘッド1の接触面積を少なくし接触抵抗を低下させることにより、磁気カード走行時の負荷を低減させることができる。さらに、凹部7を設けることによりプリペイドカード6に対するコア部8、9の接触面積をパッドローラ5の接触面積よりも小さくすることにより、パッドローラ5がプリペイドカード6のシリアルバーコード602及び磁気バーコード603をコア部8、9に圧接させる接触圧を上昇させ、良好な磁気情報の読み取りを実現することができる。
【0054】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例であるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形可能である。例えば、上述した形態においては、別体ローラ3の別体ローラ4と対向する側に逃げ部12が形成してあるが、段付きローラなどを用いカードの撓み部をパッドローラ部4側に逃がしても良い。
【0055】
さらに、本形態ではヘッドケーシング2に格納されるコア部はコア部8,9の2つであったが2つに限定されることはなく、またコア部に対応するパッドローラの数についても限定されるものではない。例えば、プリペイドカード6のレイアウト構成によって、磁気ストライプ601と磁気バーコード603の配置間隔が略5mm以下になるような場合は、磁気ヘッド15と磁気バーコードヘッド1並びにこれらに対向するパッドローラ5とパッドローラ16とを各々別個に形成することが困難であり、磁気ストライプ601、磁気バーコード603及びシリアルバーコード602に対応する一体型の磁気ヘッド及び3個の別体ローラによる構成とすることができる。この場合、略5mm以下の離間して配置される磁気ストライプ601と磁気バーコード603の間でも、隣接配置されたシリアルバーコード602と磁気バーコード603におけるスペーシングロスと同様の問題が発生する。しかし、本発明の適用によれば、そのスペーシングロスの発生を防止して、確実な磁気情報の記録再生を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係わるパッドローラおよび磁気バーコードヘッドの概要構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わるパッドローラがプリペイドカードを押圧した時の断面拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わるプリペイドカードの構成を示す平面図である。
【図4】図3に示すプリペイドカードのカード幅(短手)方向の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる磁気記録再生装置の構成を示す磁気記録再生装置上辺部からみた平面図である
【図6】図5に示す磁気記録再生装置のカード挿入口及びカード搬送路を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 磁気バーコードヘッド
2 ヘッドケーシング
3 第2の別体ローラ、
4 第1の別体ローラ
5 パッドローラ
6 プリペイドカード
7 凹部
8 第2のコア部
9 第1のコア部
10 支持軸
11 付勢部材
12 逃げ部
13 規制部
15 磁気ヘッド
20 磁気記録再生装置
62 第2の磁性層
63 第1の磁性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁気情報記録部を有する可撓性磁気記録媒体に対して磁気情報を記録再生するために、前記磁気情報記録部各々に対応する磁気ヘッドとパッドローラを備え、前記パッドローラで前記磁気ヘッドに対して前記可撓性磁気記録媒体を付勢するようにした磁気記録再生装置において、前記磁気記録部は、厚さが異なる複数の磁性層を含み、前記磁気ヘッドは、前記厚さが異なる複数の磁性層各々に対応して磁気情報を記録再生する複数のコア部を1つのヘッドケーシング内に収容してなるとともに、前記パッドローラは、前記複数のコア部の各々に対応する複数の別体ローラよりなり、該複数の別体ローラは、1つの支持軸に回転可能に軸方向に規制部によって規制されながら支持され且つ付勢手段により、各々前記厚さが異なる複数の磁性層を前記コア部に密着させるように、前記可撓性磁気記録媒体を前記磁気ヘッド側へ付勢することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記パッドローラは、前記磁気ヘッド側に前記可撓性磁気記録媒体上に形成された第1の磁性層を付勢する第1の別体ローラと、前記第1の磁性層よりも厚さの薄い第2の磁性層を付勢する第2の別体ローラとを備え、該第2の別体ローラは前記第1の別体ローラ側に逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記磁気ヘッドは、前記ヘッドケーシングに、前記可撓性磁気記録媒体上に形成された第1の磁性層に対向する第1のコア部と、前記第1の磁性層よりも厚さの薄い第2の磁性層に対向する第2のコア部とが並列配置され、該第1のコア部と該第2のコア部との間に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−127638(P2006−127638A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314481(P2004−314481)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】